(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】エレベーターの表示装置
(51)【国際特許分類】
B66B 3/02 20060101AFI20250131BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20250131BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20250131BHJP
G09G 3/32 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
B66B3/02 B
F21V23/00 117
F21V23/00 140
G09G3/20 670J
G09G3/32 A
(21)【出願番号】P 2023092123
(22)【出願日】2023-06-05
【審査請求日】2023-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄介
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】横山 幸弘
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-351543(JP,A)
【文献】特開2011-126635(JP,A)
【文献】特開2000-132118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00-3/02
F21V23/00
G09G3/20
G09G3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場またはかご内に設けられ、行先階を含む表示をドットマトリクスLEDインジケーターで行うエレベーターの表示装置において、
前記ドットマトリクスLEDインジケーターの点灯制御を行うLED点灯制御機能と、
前記ドットマトリクスLEDインジケーターの周囲温度を測定する温度測定機能と、
前記温度測定機能が測定した周囲温度の平均値を算出する温度平均値算出機能と、
前記ドットマトリクスLEDインジケーターの基準温度における点灯時間と光度劣化の特性データを記憶した光度劣化データベースと、
前記点灯制御機能で点灯制御されたドット毎の点灯時間を記憶するLED点灯時間データ記憶部と、
前記周囲温度の平均値と、前記光度劣化の特性データと、ドット毎の前記点灯時間のデータとから、前記周囲温度の平均値に対応した現在の相対光度をドット毎に算出する光度算出機能と、
前記光度算出機能により
前記ドット毎に算出された相対光度の
最大値と最低値の比率が設定値以上となった場合に交換時期と判定する寿命判定機能と、
を備え
たエレベーターの表示装置。
【請求項2】
前記交換時期と判定した場合に、その結果を外部に通信する通信部を備えた請求項1に記載のエレベーターの表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたエレベーターの表示装置は、エレベーターの各乗り場、または、かご内に設けられた、かご位置および運転方向を表示するドット式LED表示器において、各ドットLED個別の点灯時間によりそれぞれのドットLED輝度の経年劣化を自動補正する手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエレベーターの表示装置では、周囲温度の影響が考慮されていないため、適切な表示装置の交換時期を判定できないという課題がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、周囲温度とドット毎の使用時間とを考慮した適切な表示装置の交換時期を判定することのできるエレベーターの表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの表示装置は、乗場またはかご内に設けられ、行先階を含む表示をドットマトリクスLEDインジケーターで行うエレベーターの表示装置において、ドットマトリクスLEDインジケーターの点灯制御を行うLED点灯制御機能と、ドットマトリクスLEDインジケーターの周囲温度を測定する温度測定機能と、温度測定機能が測定した周囲温度の平均値を算出する温度平均値算出機能と、ドットマトリクスLEDインジケーターの基準温度における点灯時間と光度劣化の特性データを記憶した光度劣化データベースと、点灯制御機能で点灯制御されたドット毎の点灯時間を記憶するLED点灯時間データ記憶部と、周囲温度の平均値と、光度劣化の特性データと、ドット毎の点灯時間のデータとから、周囲温度の平均値に対応した現在の相対光度をドット毎に算出する光度算出機能と、光度算出機能によりドット毎に算出された相対光度の最大値と最低値の比率が設定値以上となった場合に交換時期と判定する寿命判定機能と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、周囲温度とドット毎の使用時間とを考慮した適切な表示装置の交換時期を判定することのできるエレベーターの表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エレベーターのかご位置などを表示するためのエレベーターの表示装置の構成図である。
【
図2】ドットマトリクスLEDインジケーターの詳細を示す図である。
【
図3】ドットマトリクスLEDインジケーターの一般的な回路図である。
【
図4】実施の形態1に係るエレベーターの表示装置を示す図である。
【
図5】点灯時間と相対光度劣化の関係を示す図である。
【
図6】ドットマトリクスLEDインジケーターの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。以下に示す実施の形態に示した構成は、本開示に係る技術的思想の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示に記載の複数の技術的思想を組み合わせることも可能である。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略または変更することも可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、エレベーターのかご位置などを表示するためのエレベーターの表示装置の構成図である。操作盤1はエレベーターの乗場またはかごに設置される。操作盤1は、乗客が行先階などを指定するためのものである。インジケーター基板2は、乗場またはかごの操作盤1内に配置される。インジケーター基板2にはドットマトリクスLEDインジケーター3が実装されている。インジケーター基板2にはマイコン4が実装されている。マイコン4は、通信回路5及びマイコン4内の通信機能6により、エレベーター制御盤7との通信を行い、通信により得たエレベーターかご室位置情報を元に、マイコン4内のLED点灯制御機能8によりドットマトリクスLEDインジケーター3にかご位置を表示する。
【0011】
次に
図2について説明する。
図2は、ドットマトリクスLEDインジケーター3の詳細を示す図である。ドットマトリクスLEDインジケーター3は、マトリクス状に配置されたLED9と、トランジスタなどを使用したコモンドライバ回路10と、トランジスタなどを使用したセグメントドライバ回路12と、これらを制御するためのマイコン14とを備える。コモンドライバ回路10は、コモンセレクト信号11a~11gを出力する。セグメントドライバ回路12は、セグメント信号13a~13eを出力する。
【0012】
ドットマトリクスLEDインジケーター3は、コモンセレクト信号11a~11gを一定時間ごとに1ラインずつONし、そのコモンセレクト信号に対応したセグメント信号をONすることで数字あるいはアルファベットを表現するものである。例えば「1表示」であればコモンセレクト信号11a、11c~11gがONの時、セグメント信号13cのみON、コモンセレクト信号11bがONの時、セグメント信号13b及び13cをONすることでLEDを点灯させている。
図3はドットマトリクスLEDインジケーター3の一般的な回路図である。
【0013】
図4は、実施の形態1に係るエレベーターの表示装置を示す図である。本実施の形態のエレベーターの表示装置は、
図1と同様の構成に加えて、ドットマトリクスLEDインジケーター3の近傍に配置された温度センサ15を備える。また、マイコン4は、温度測定機能17と、温度平均値算出機能18と、点灯時間カウント機能21と、光度算出機能23と、寿命判定機能24とを備える。本実施の形態のエレベーターの表示装置は、温度センサ15に接続された温度測定回路16と、温度測定機能17により、ドットマトリクスLEDインジケーター3の周囲温度を測定する。さらに、温度測定機能17に接続された温度平均値算出機能18は、乗場またはかごの操作盤1が稼働を開始してからの測定温度の平均値を算出し、その値をメモリ19内部に周囲温度データ20として保存する。
【0014】
点灯時間カウント機能21は、稼働開始からの点灯時間をドット毎にカウントし、その値をメモリ19のLED点灯時間データ記憶部22に保存する。
図5は、点灯時間と相対光度劣化の関係を示す図である。メモリ19には
図5に示すような点灯時間と相対光度劣化の関係を示す光度劣化データベース26をあらかじめ保存しておく。このデータベースは標準温度(例えば25℃)と高温時(例えば85℃)の2パターンを保存しておく。
【0015】
周囲温度データ20の平均値と、LED点灯時間データ記憶部22に記憶されたデータと、光度劣化データベース26とを元に、光度算出機能23により、周囲温度に対応した現在の光度を算出する。そしてドット毎に算出した光度データを元に、寿命判定機能24により寿命を判定し、もし寿命に到達していたとしたら、通信機能6によりエレベーター制御盤7に情報を伝送し、寿命に到達したことを管理センターに発報してもよい。これにより、光度が低下していることを保守者が気づくことができ、適切な時期に保守交換を行うことが可能となる。この場合、通信機能6及びエレベーター制御盤7は、光度算出機能23により算出された相対光度が判定値を下回った場合に、その結果を外部に通信する通信部に相当する。
【0016】
以下にエレベーターの乗場またはかごの操作盤1が稼働し始めてから、ドットマトリクスLEDインジケーター3が寿命に至るまでの詳細を説明する。
【0017】
まず、最初に温度センサ15及び温度測定回路16及び温度測定機能17により、ドットマトリクスLEDインジケーター3の温度を測定し、測定した温度Ta1及び測定回数Nをメモリ19に保存しておく。そして一定時間後再度温度Ta2を測定しTa1に加算し、加算した値をTaとする。このTaを測定回数Nで除算することで、乗場またはかごの操作盤1の稼働開始からのドットマトリクスLEDインジケーター3の平均周囲温度を算出する。
【0018】
次に、周囲温度データ20の平均値と、LED点灯時間データ記憶部22に記憶されたデータと、光度劣化データベース26とから、光度算出機能23により光度を算出する方法を下記条件を仮定して説明する。
図6は、ドットマトリクスLEDインジケーター3の表示例を示す図である。
<条件>
・ドットマトリクスLEDインジケーター3の表示内容は「1」「2」「3」の3種類とする。(
図6)
・稼働開始からの稼働時間を5000時間と仮定する。
・稼働時間中のうち、「1」表示時間が75%、「2」及び「3」表示がそれぞれ15%、10%とする。
・上記条件より
図6の中央のドットであるLED25は「1」「3」表示において点灯するので、点灯時間は5000時間×85%=4250時間となる。
・算出した平均周囲温度は30℃とする。
なお、実際には点灯時間カウント機能21でカウントした値より光度を算出する。
【0019】
以上の条件により、
図6中のLED25の相対光度は以下の通り算出される。まず光度劣化データベース26から4250時間の時の相対光度を読み出す。
図5から周囲温度25℃の時は約86%、85℃の時は約73%となる。次に周囲温度が1℃上昇した場合に低下する相対光度値を(相対光度(25℃)86%-相対光度(85℃)73%)/(85℃-25℃)として算出すると、1℃あたり約0.22%相対光度が低下すると予想できる。周囲温度30℃の場合、0.22%×(30℃-25℃)=1.1%低下すると予想できるので、5000時間稼働時の周囲温度30℃における相対光度は84.9%と予測することが出来る。
【0020】
光度算出機能23は、上記と同様にして相対光度をドット毎に算出する。寿命判定機能24は、算出された相対光度が判定値(例えば80%)を下回った場合に交換時期と判定する。これにより、ドットマトリクスLEDインジケーター3の周囲温度と、ドット毎の点灯時間を考慮した寿命を判定できるので、寿命による交換時期を最適化することが可能となる。
【0021】
従来はドットによらず100%点灯として、また周囲温度は製品の仕様の上限(例:60℃)として寿命を設定していた為、上記条件で同様に算出すると、
図6中のLED25は5000時間の稼働時間であれば、78.4%と予想されていた。仮に相対光度が80%まで低下したときに寿命と判断するとすると、周囲温度とドットLED毎の点灯時間を考慮して算出した場合は約10,000時間が寿命になるが、考慮しない場合は約4,000時間となる。このように、本実施の形態であれば、寿命による交換時期を大幅に伸ばすことが可能となる。
【0022】
また、寿命の判断は一定の値を設定しても良いし、ドットLED毎の相対光度を比較して、その差が一定以上になった場合としても良い。例えば、ドット毎に算出された相対光度の最大値と最低値の比率が設定値(例えば2倍)以上となった場合に交換時期と判定するようにしてもよい。これにより、ドット毎の光度のばらつきが目立つようになる前に交換を推奨することができる。
【0023】
以上の構成、方法によりドットマトリクスLEDインジケーター3の周囲温度とドット毎の点灯時間を考慮した寿命をインジケーター基板2自身が判定できるようになることにより、寿命による交換時期を最適化することが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 操作盤、 2 インジケーター基板、 3 ドットマトリクスLEDインジケーター、 4 マイコン、 5 通信回路、 6 通信機能、 7 エレベーター制御盤、 8 点灯制御機能、 10 コモンドライバ回路、 11a~11g コモンセレクト信号、 12 セグメントドライバ回路、 13a~13e セグメント信号、 14 マイコン、 15 温度センサ、 16 温度測定回路、 17 温度測定機能、 18 温度平均値算出機能、 19 メモリ、 20 周囲温度データ、 21 点灯時間カウント機能、 22 点灯時間データ記憶部、 23 光度算出機能、 24 寿命判定機能、 25 LED、 26 光度劣化データベース