(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】中枢神経系に神経保護ポリペプチドを送達する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20250131BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250131BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20250131BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250131BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20250131BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20250131BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
A61K38/26 ZNA
A61K9/14
A61K9/22
A61K47/34
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/30
A61P25/32
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2019521018
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 US2017057606
(87)【国際公開番号】W WO2018075901
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505404220
【氏名又は名称】ペプトロン インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514124403
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン・ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ・ギュン
(72)【発明者】
【氏名】グレイグ,ナイジェル・エイチ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】伊藤 幸司
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520159(JP,A)
【文献】特表2010-522743(JP,A)
【文献】PEPTRON,”SR-Exenatide For the Treatment of Neurodegenedative Diseases”、[online]、2014年5月、[令和3年10月13日検索]、インターネット<URL:http://peptron.com/m/ds_imgs/sub03/SR-Exenatide_ND_June2014.pdf>
【文献】Clinical Trials,”Trial of Exenatide for Parkinson’s Disease(EXENATIDE-PD)”、[online]、2015年3月16日、[令和3年10月13日検索]、インターネット<URL:https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01971242?A=6&B=6&C=merged#StudyPageTop>
【文献】Alzheimer’s & Dementia、2010年、Vol.10、p.S38-S46
【文献】Therapeutic Research、2015年、Vol.36、No.5、p.497-502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream III)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法に用いられる制御放出調製物またはデバイスであって、
前記方法は、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを、前記神経保護ポリペプチドの持続放出を提供する前記制御放出調製物または前記デバイスを用いて、前記対象の全身循環血流に投与する工程であって、前記神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む、工程を含み、
前記神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、
前記制御放出調製物
または前記デバイスは、被覆材料及び生分解性ポリマーを更に含み、および
前記制御放出調製物
または前記デバイスは、
前記神経保護ポリペプチ
ドと生分解性ポリマーとを含む
コアを含む、制御放出微小球と、
前記
制御放出微小球を被覆する被覆層と
を含み、
前記生分解性ポリマーは、有効量の前記神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出を十分な時間にわたって実現するために、特定の粘度を有し、前記特定の粘度は、0.1~0.6dL/gであり、
前記生分解性ポリマーは、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、およびポリアルキルカーボネートからなる群より選択されるか、これらのポリマーの群から選択される2種以上のポリマーの共重合体もしくは単純な混合物であるか、前記ポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体であるか、または、糖と前記ポリマーもしくは前記共重合体とがカップリングしてなるポリマー-糖複合体であり;
前記被覆材料は、塩基性アミノ酸から選択される1種以上であり、
塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンからなる群から選択される1種以上であり;ならび
に
前記神経保護ポリペプチドの持続放出は、前記神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、前記対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への前記神経保護ポリペプチドの送達を増大させ
る、
前記制御放出調製物またはデバイス。
【請求項2】
エキセンジン-4類似体は、化学式Iで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 -Z
1
(化学式I)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluで あり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、Ala、またはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルであり、
Xaa22は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
Xaa27は、AlaまたはLysであり、
Xaa28は、AlaまたはAsnであり、かつ
Z
1
は、-OH、-NH
2
、Gly-Z
2
、Gly Gly-Z
2
、Gly Gly Xaa31-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z
2
、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z
2
であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、またはN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、Ser、またはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつ
Z
2
は、-OH、または-NH
2
であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、およびXaa28のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、またはTyrである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである);
あるいは、化学式IIで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 X
1
-Z
1
(化学式II)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、AlaまたはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアレイル-アルカノイルであり、
Xaa22は、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
X
1
は、Lys Asn、Asn Lys、Lys-NHε-R Asn、Asn Lys-NHε-R、Lys-NHε-R Ala、Ala Lys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアルキルアルカノイルであり、
Z
1
は、-OH、-NH
2
、Gly-Z
2
、Gly Gly-Z
2
、Gly Gly Xaa31-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z
2
、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z
2
、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z
2
であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、SerまたはTyrであり、かつ
Z
2
は、-OHまたは-NH
2
であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、およびXaa26のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、Tyr、または4-イミダゾプロピオニルである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)
請求項1に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項3】
前記制御放出調製物は、前記神経保護ポリペプチドの持効性調製物である、請求項1
または2に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項4】
前記制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における前記神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって継続する、請求項1
~3のいずれか一項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項5】
前記持効性調製物は、前記神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含む、請求項
3に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項6】
前記持効性調製物は、前記神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含む、請求項
3に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項7】
前記制御放出神経保護調製物の投与は、前記対象への前記制御放出神経保護調製物の注射を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項8】
前記対象への前記制御放出調製物の注射は、皮下注射である、請求項7に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項9】
前記制御放出調製物の投与は、先行する投与の実施から、約7~約21日後に(たとえば、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、または約21日に1回にて)実施される、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、前記制御放出調製物の持続放出を提供する、請求項1
~3のいずれか一項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、ポンプ(たとえば、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなど)である、請求項
3または10に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項12】
前記神経保護ポリペプチドは、前記デバイスを用いて、約1pM/kg/分~約30pM/kg/分(たとえば、約3pM/kg/分~約17.5pM/kg/分)の速度で投与される、請求項
3、10および11のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項13】
全身循環血流への前記神経保護ポリペプチドの投与は、前記対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する、請求項1~12のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項14】
前記CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症(CTE)、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項15】
前記制御放出調製物の投与により、または前記デバイスを用いた前記神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、血漿中の前記神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる、請求項1~14のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項16】
前記制御放出調製物の投与により、または前記デバイスを用いた前記神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における前記神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する、請求項1~15のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項17】
CSF中の前記神経保護ポリペプチドの濃度は、約10~約400pg/mLの範囲内である、請求項1~16のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項18】
安定状態での血漿中の前記ポリペプチドの濃度に対する、安定状態でのCFS中の前記ポリペプチドの濃度の比率は、約0.1%~約5%の範囲内である、請求項1~17のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【請求項19】
前記神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55からなる群より選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の制御放出調製物またはデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2016年10月20日付で提出された米国仮出願第62/410,748号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を引用により本明細書に援用する。
【0002】
政府による資金提供
本願を裏付ける研究は、米国保健福祉省長官が代表するところの米国によって実施されたものである。米国政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0003】
引用による援用
37C.F.R.§1.52(e)(5)にしたがって、電子ファイル(ファイル名:1568390_100WO2_Sequence_Listing_ST25.txt、サイズ:24.4KB、作成:2017年9月3日にPATENT-In 3.5およびChecker 4.4.0の使用により)に含まれる配列情報の全体を、引用により本明細書に援用する。
【0004】
背景
分野
本開示は、たとえばグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、エキセンジン-4、および/またはそれらのペプチド類似体などの、神経保護治療用ポリペプチドを含有する組成物に関する。特に、本開示は、神経変性状態を処置するために、血漿中の神経保護治療用ポリペプチドレベルを安定状態で維持し、これにより、血液脳関門(BBB)の通過による脳への送達を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、正常時に食物に応答して腸の神経内分泌細胞から分泌されるホルモンであるが、2型糖尿病の新たな処置としての利用が示唆されている(Gutniak et al.,1992;Nauck et al.,,1993)。GLP-1は、ベータ細胞によるインスリン放出を増加させ、この効果は、長期2型糖尿病患者においても見られる(Nauck et al.,,1993)。GLP-1は内因性インスリン分泌を刺激し、この刺激は、血中グルコースレベルが低下すると消失することから、GLP-1処置はインスリン療法よりも優れている(Nauck et al.,,1993;Elahi et al.,1994)。GLP-1は、インスリンの放出および合成を増大させ、グルカゴンの放出を阻害し、かつ胃内容排出を低減することによって、正常血糖となるよう促す(Nauck et al.,,1993;Elahi et al.,1994;Wills et al.,1996;Nathan et al.,1992;De Ore et al.,1997)。GLP-1は、プログルカゴンの翻訳後修飾産物である。GLP-1の配列ならびにその活性断片であるGLP-1(7-37)およびGLP-1(7-36)アミドの配列は、当技術分野において周知である(Fehmann et al.,1995)。GLP-1は糖尿病処置における治療剤として提案されてはいるが、生物学的半減期が短く(De Ore et al.,1997)、ボーラス皮下投与時においても生物学的半減期が短い(Ritzel et al.,1995)。GLP-1(およびGLP-1(7-36)アミド)の分解は、ひとつには、このポリペプチドを8位と9位のアミノ酸(アラニンおよびグルタミン酸)の間で切断する酵素ジペプチジルペプチダーゼ(DPP 1V)によるものである。
【0006】
エキセンジン-4は、ドクトカゲ(Gila monster lizard)の唾液腺において産生されるポリペプチドである(Goke et al.,1993)。エキセンジン-4のアミノ酸配列は、当技術分野において周知である(Fehmann et al.1995)。エキセンジン-4は、非哺乳類に特有の遺伝子産物であり、発現が唾液腺中に限定されるようではあるが(Chen and Drucker,1997)、GLP-1とのアミノ酸配列相同性が52%であり、哺乳類体内においてGLP-1受容体と相互に作用する(Goke et al.,1993;Thorens et al.,1993)。in vitroにおいて、エキセンジン-4は、インスリン産生細胞によるインスリン分泌を促進することが示されており、また、インスリン産生細胞によるインスリン放出を引き起こす効力は、等モル量のGLP-1の投与よりも高い。さらに、エキセンジン-4は、齧歯類およびヒトの両方においてインスリン放出を強く刺激して血漿グルコースレベルを低下させ、かつ、GLP-1よりも持効性が高い。しかしながら、エキセンジン-4は、哺乳類において天然に存在するわけではないため、哺乳類において、GLP-1にはない抗原特性を、ある程度有している可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように糖尿病においてインスリン産生が減少することの他にも、末梢神経障害と糖尿病とは相互に関連している。全糖尿病患者の20~30パーセントが最終的には末梢神経障害を発病する。さらに、アルツハイマー病患者は、心疾患、脳卒中、高血圧、および糖尿病を発病するリスクが高いという報告がある(Moceri et al.,2000;Ott et al.,1999)。したがって、糖尿病は、神経変性疾患にも関連する疾患である。
【0008】
GLP-1受容体は、齧歯類(Jin et al.1988,Shughrue et al.1996,Jia et al.2015)およびヒト(Wei and Mojsov 1995,Satoh et al.2000)の脳に存在する。この分布の化学的な構成は、概ね、視床下部、視床、脳幹、外側中隔、脳弓下器官、および最後野に限定されるようであり、一般的に、こうした脳室周囲領域のいずれにも多数のペプチド受容体が存在する。しかしながら、GLP-1の特異的結合部位は、低密度ではあるが、尾状核被殻、大脳皮質、および小脳にかけても検出されている(Campos et al.1994,Calvo et al.1995,and Goke et al.1995)。たとえば、Luら(2014)の報告によれば、GLP-1受容体の発現は、Mustela putorius furo(フェレット)の扁桃体、小脳、前頭皮質、海馬、視床下部、中脳、髄質、脳橋、線条、視床、および側頭皮質にみられる。GLP-1受容体の脳内発現レベルは、加齢の影響を受けない。
【0009】
さらに、GLP-1は、認知と挙動とに関与することが示されている。(During et al.2003)。実際、多くの研究によれば、GLP-1受容体作動薬が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、外傷性脳損傷、脳卒中、および末梢神経障害を含む神経変性疾患の新たな処置法であることが示唆されている。しかしながら、中枢神経系(CNS)関連疾患の処置に用いるためには、血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)への薬物送達が、大きな壁となる。たとえば、GLP-1の半減期は1~2分間と短く、また、不活性化に対する耐性を持たせる目的で作製されたGLP-1-トランスフェリン融合タンパク質(GLP-1-Tf)は半減期がおよそ2日とGLP-1よりも長くはなっているものの、BBB通過は達成されていない。Kimら(2010)およびMartinら(2012)。
【0010】
また、エキセンジン-4によれば、ロータロッド試験の結果がGLP-1-Tfよりも改善されることが示されており(Martin et al.2012)、エキセンジン-4は血中から脳内に入ることが知られているが、その流入速度は十分でない(Kastin AJ and Akeerstrom V,International Journal of Obesity(2003)27,313-318)。また、エキセナチドを、後処置とともに、MPTPパーキンソン病マウスモデルに1日1回7日間投与した結果、神経保護効果が見られないことが示されている(Liu et al.2015)。
【0011】
したがって、当技術分野において、神経変性状態を処置する方法が必要とされるとともに、血漿中の神経保護GLP-1受容体作動薬レベルを安定状態で維持し、これにより、BBBの通過による中枢神経系への薬物送達を促進かつ推進する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
本開示の一態様において、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法が提供される。この方法は、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、対象の全身循環血流に投与する工程であって、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む、工程を含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物または神経保護ポリペプチドの持続放出は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0013】
本開示の別の一態様において、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法が提供される。この方法は、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、対象の全身循環血流に投与する工程であって、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む、工程を含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物またはデバイスは、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0014】
本開示の一態様において、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法が提供される。この方法は、制御放出神経保護調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含む。一実施形態において、制御放出神経保護調製物は、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体(たとえば、エキセンジン-4類似体)からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0015】
特定の実施形態において、制御放出調製物は、神経保護ポリペプチドの持効性調製物である。
【0016】
他の実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含む。
【0017】
具体的な実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含む。
【0018】
追加的な実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって継続する。
【0019】
具体的な実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0020】
一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0021】
さらなる実施形態において、CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症(CTE)、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0022】
特定の一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、制御放出神経保護調製物の注射を含む。
【0023】
追加的な実施形態において、制御放出神経保護調製物の注射は、皮下注射である。たとえば、制御放出神経保護調製物の投与は、制御放出神経保護調製物の皮下注射を含んでよい。
【0024】
別の一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0025】
他の実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与により、対象の脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせにおける神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0026】
具体的な実施形態において、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約5~約400pg/mL(たとえば、約10~約400pg/mL)の範囲内である。
【0027】
追加的な一態様において、CNS関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法が提供される。この方法は、対象に、治療的有効量の制御放出神経保護調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含む。制御放出神経保護調製物は、GLP-1、エキセンジン(エキセンジン-4など)、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン(エキセンジン-4など)類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象のBBBの通過によるCNSの少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0028】
特定の実施形態において、制御放出調製物は、神経保護ポリペプチドの持効性調製物である。
【0029】
他の実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含む。
【0030】
追加的な実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含む。
【0031】
追加的な実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって継続する。
【0032】
具体的な実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0033】
具体的な一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0034】
一実施形態において、このCNS状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0035】
さらなる実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象への制御放出神経保護調製物の注射を含む。
【0036】
特定の実施形態において、対象への制御放出神経保護調製物の注射は、皮下注射である。
【0037】
追加的な実施形態において、制御放出調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0038】
いくつかの実施形態において、制御放出調製物の投与により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0039】
さらなる一態様において、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法が提供される。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0040】
さらに別の一態様において、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法が提供される。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0041】
一実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの持続放出の提供は、(1種または2種以上の)ポリペプチドの、デバイス(たとえば、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなど)による投与を含む。
【0042】
特定の実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドは、約1pM/kg/分~約30pM/kg/分(たとえば、約3pM/kg/分~約17.5pM/kg/分)の速度で投与される。
【0043】
他の実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続送達の提供は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0044】
具体的な実施形態において、CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0045】
一実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0046】
特定の実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0047】
さらに別の一実施形態において、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約5~約400pg/mLの範囲内である。
【0048】
いくつかの実施形態において、安定状態での血漿中のポリペプチドの濃度に対する、安定状態でのCFS中のポリペプチドの濃度の比率は、約0.1%~約5%の範囲内である。
【0049】
さらなる実施形態において、神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55からなる群より選択される。たとえば、神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55から選択されるアミノ酸配列を含んでよい。
【0050】
他の実施形態において、エキセンジン-4類似体は、化学式Iで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 -Z1
(化学式I)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、Ala、またはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルであり、
Xaa22は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
Xaa27は、AlaまたはLysであり、
Xaa28は、AlaまたはAsnであり、かつ
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、またはN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、Ser、またはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつ
Z2は、-OH、または-NH2であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、およびXaa28のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、またはTyrである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0051】
他の実施形態において、エキセンジン-4類似体は、化学式IIで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 X1-Z1
(化学式II)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、AlaまたはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり(ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアレイル-アルカノイルであり)、
Xaa22は、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
X1は、Lys Asn、Asn Lys、Lys-NHε-R Asn、Asn Lys-NHε-R、Lys-NHε-R Ala、Ala Lys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアルキルアルカノイルであり、
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、SerまたはTyrであり、かつ
Z2は、-OHまたは-NH2である)、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、およびXaa26のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、Tyr、または4-イミダゾプロピオニルである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0052】
添付の図面は、本明細書に組み込まれており、かつ本明細書の一部を構成しているが、これらの図面は、本開示の1つまたはいくつかの実施形態を例示するものであり、本開示の記載と合わせて、本開示の原理を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラットに持続放出エキセナチド(PT302)を2mg/kgで単回皮下投与した際の時間依存性のエキセナチド(エキセンジン-4)の血漿レベルを示すグラフである。
【
図1B】成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラットに持続放出エキセナチド(PT302)を2.4mg/kg、4.8mg/kg、または9.6mg/kgで単回皮下投与した際の時間依存性のエキセナチド(エキセンジン-4)の血漿レベルを示すグラフである。
【
図2】成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラットに持続放出エキセナチド(PT304)を4.0mg/kgの量で単回皮下注射した際の時間依存性のエキセンジン-4血漿レベルを示すグラフである。
【
図3】PT302またはPT304のいずれかを、記載された量および回数で投与した雄Sprague-Dawleyラットにおける、10週間にわたる、時間依存性のエキセンジン-4血漿レベルを示すグラフである。
【
図4A】実施例2の実験設計の概要を示す。Sprague-Dawleyラットに、6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与える前に、PT302を投与した。
【
図4B】PT302で前処置した6-OHDAラットのメタンフェタミン誘発性(meth誘発性)旋回挙動を示すグラフである。
【
図4C】PT302で前処置した6-OHDAラットにおけるエキセンジン-4の血漿レベルを示すグラフである。
【
図5A】実施例3の実験設計の概要を示す。Sprague-Dawleyラットに、6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与えた後、PT302を投与した。
【
図5B】PT302で後処置した6-OHDAラットのmeth誘発性旋回挙動を示すグラフである。
【
図5C】6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与えたラットに、ビヒクル(コントロール)(ラット#866、#883、および#886)およびPT302(ラット#881、#875、#882)を投与し、線条のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫組織化学的検査を実施した際の、代表的な顕微鏡画像である。各動物のエキセンジン-4血漿濃度(ng/ml)を示す。
【
図5D】
図5C中に記載および
図5Cに関連する免疫組織化学的検査において観察されたTH免疫反応性の定量結果を示すグラフである。
【
図5E】6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与えたラットに、ビヒクル(コントロール)(ラット#866、#883、および#886)およびPT302(ラット#881、#875、および#882)を投与し、黒質のTH免疫組織化学的検査を実施した際の、代表的な顕微鏡画像である。各動物のエキセンジン-4血漿濃度(ng/ml)を示す。
【
図5F】
図5E中に記載および
図5Eに関連する免疫組織化学的検査において観察されたTH免疫反応性の定量結果を示すグラフである。
【
図5G】ラットの脳の非傷害側において観察されたTH+ニューロンの代表的な顕微鏡画像である。
【
図5H】ラットの脳の非傷害側において観察されたTH+ニューロンの代表的な顕微鏡画像である。
【
図5I】6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与えたラットの脳の傷害側の黒質中にTH+ニューロンが存在しないことを示す、代表的な顕微鏡の画像である。
【
図5J】PT302で処置した6-OHDAラットの脳の代表的な画像である。
【
図5K】PT302で処置した6-OHDAラットの脳の代表的な画像である。
【
図5L】PT302で処置した6-OHDAラットの脳の代表的な画像である。
【
図5M】標準化TH免疫反応性とエキセンジン-4血漿レベル(線条における)との間に観察された有意な相関関係を示すグラフである。
【
図5N】エキセンジン-4血漿レベルと黒質におけるTH免疫反応性との間に観察された有意な相関関係を示すグラフである。
【
図6B】6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与えたラットの旋回行動が、エキセンジン-4およびPT302処置により低減される。
【
図6C】コントロール(偽)ラット、6-OHDAラット、エキセンジン-4処置6-OHDAラット、およびPT302処置6-OHDAラットの黒質の代表的な顕微鏡画像である。
【
図7B】一側性6-OHDA傷害ラットの旋回挙動が、PT302により有意に低減されたが、エキセンジン-4では、一側性6-OHDA傷害ラットの旋回挙動は低減されなかった。
【
図8B】MPTP処置マウスがワイヤから落下するまでの時間が、PT302により有意に増加するが、エキセンジン-4では、ワイヤから落下するまでの時間が増加しなかったことを示すグラフである。
【
図9B】軽度外傷性脳損傷(mTBI)を与えたマウスにおける新規物体認識が、持続放出エキセナチドにより有意に増加したことを示すグラフである。
【
図10A】エキセンジン-4血漿レベルがPT302投与後7日間持続し、さらに用量依存的であることを示すグラフである。
【
図10B】正常/コントロールマウスとmTBI投与マウスとの間に、PT302投与に由来するエキセンジン-4血漿レベルの有意差が観察されなかったことを示すグラフである。
【
図10C】持続放出エキセナチドの3つの異なる用量(PT302、0.024、0.12、および0.6mg/kg)が、血漿中において蓄積され得たこと、および、血漿中において時間依存的に維持され得たことを示すグラフである。
【
図11A】持続放出エキセナチド(PT302、0.024、0.12、および0.6mg/kg)により、mTBI投与マウスでは、新しい物体に対する選好性が高くなったが、これと比較して、未処置mTBI投与マウスでは、視覚記憶の欠損を呈し、かつ、新規物体近傍にいる時間が短くなったことを示すグラフである。評価は、mTBIの7日後に、新規物体認識パラダイムによって実施した。
【
図11B】未処置mTBI投与マウスにおいて観察されるmTBI空間記憶欠損が、持続放出エキセナチド(PT302、0.024、0.12、および0.6mg/kg)により寛解したことを示すグラフである。評価は、mTBIの7日後に、Y字迷路によって実施した。
【
図12A】持続放出エキセナチド(PT302、0.12および0.6mg/kg)により、mTBI誘発性マウスでは、新しい物体に対する選好性が高くなったが、これと比較して、未処置mTBI誘発性マウスでは、視覚記憶の欠損を呈し、かつ、新規物体近傍にいる時間が短くなったことを示すグラフである。評価は、mTBIの30日後に、新規物体認識パラダイムによって実施した。
【
図12B】未処置mTBI誘発性マウスにおいて観察されるmTBI空間記憶欠損が、持続放出エキセナチド(PT302、0.12および0.6mg/kg)により寛解したことを示すグラフである。評価は、mTBIの30日後に、Y字迷路によって実施した。
【
図13A】mTBI誘発性マウスの皮質、CA3、および歯状回において観察されるニューロンの減少を、持続放出エキセナチド(PT302、0.6mg/kg)により防止できたことを示す代表的な画像である。
【
図13B】
図13Aの代表的な画像に関連する大脳皮質のデータを定量化して示すグラフである。グラフは、mTBI誘発性マウスの大脳皮質において観察されるニューロンの減少を、持続放出エキセナチド(PT302、0.6mg/kg)により防止できたことを示す。
【
図13C】
図13Aの代表的な画像に関連するCA3のデータを定量化して示すグラフである。グラフは、mTBI誘発性マウスの海馬のCA3領域において観察されるニューロンの減少を、持続放出エキセナチド(PT302、0.6mg/kg)により防止できたことを示す。
【
図13D】
図13Aの代表的な画像に関連する歯状回のデータを定量化して示すグラフである。グラフは、mTBI誘発性マウスの海馬の歯状回領域において観察されるニューロンの減少を、持続放出エキセナチドにより防止できたことを示す。
【
図14A】ビヒクルまたは持続放出エキセナチド(0.6mg/kgまたは0.12mg/kg(PT302))を与えたコントロール(CTRL)およびmTBI投与マウスにおける、脳傷害に起因するニューロンの減少のマーカーであるFluoro-Jade(登録商標)C染色の、代表的な画像を示す。
【
図14B】
図14Aの代表的な画像に関連する海馬CA1領域のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスのCA1における、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少の大幅な増加が、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgでの投与により有意に低減されたことを示す。
【
図14C】
図14Aの代表的な画像に関連する海馬CA3領域のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスのCA3における、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少の大幅な増加が、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与により有意に低減されたことを示す。
【
図14D】
図14Aの代表的な画像に関連する歯状回のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスの歯状回における、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少の大幅な増加が、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与により有意に低減されたことを示す。
【
図14E】
図14Aの代表的な画像に関連する大脳皮質のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスの皮質における、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少の大幅な増加が、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgでの投与により有意に低減されたことを示す。
【
図15A】ビヒクルまたは持続放出エキセナチド(PT302)(0.6mg/kgまたは0.12mg/kg)を与えたコントロールおよびmTBI誘発性マウスにおける、ミクログリア活性化および神経炎症(外傷性脳損傷に起因)のマーカーであるイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA1)染色の、代表的な画像を示す。
【
図15B】
図15Aの代表的な画像に関連するCA1のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスのCA1中のIBA1+細胞において炎症誘発性サイトカインTNF-αが有意に増加したが、これが、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与によって有意に低減されたことを示す。
【
図15C】
図15Aの代表的な画像に関連するCA3のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスのCA3中のIBA1+細胞において炎症誘発性サイトカインTNF-αが有意に増加したが、これが、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与によって有意に低減されたことを示す。
【
図15D】
図15Aの代表的な画像に関連する歯状回のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスの歯状回中のIBA1+細胞において炎症誘発性サイトカインTNF-αが有意に増加したが、これが、持続放出エキセナチド(PT302)の0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与によって有意に低減されたことを示す。
【
図15E】
図15Aの代表的な画像に関連する大脳皮質のデータを定量化して示すグラフである。未処置mTBI誘発性マウスの皮質中のIBA1+細胞において炎症誘発性サイトカインTNF-αが有意に増加したが、これが、持続放出エキセナチドの0.6mg/kgまたは0.12mg/kgでの投与によって有意に低減されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
本開示は、本明細書中に記載される有効成分(たとえば、GLP-1、エキセンジン、ならびに、GLP-1およびエキセンジンの生理活性類似体または誘導体)の送達が驚くべきことに予期せずに増大したことに基づくものである。以下に記載される、本開示の好ましい実施形態の詳細な説明と本明細書中に含まれる実施例とを参照し、かつ、図面および図面前後の記載内容を参照すれば、本明細書に記載される内容について、より容易に理解できるであろう。
【0055】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法についての開示および記載に先立ち、本開示が、特定の合成方法、特定の処置計画、または具体的な精製手順に限定されず、したがって、言うまでもなく、多様であってよいということが理解される。また、本明細書中において専門用語を使用する目的は、具体的な実施形態を説明するためのみであって、限定を意図したものではないということも理解される。
【0056】
本明細書中において言及するすべての出版物、特許出願、特許、および他の先行技術文献の全体を、引用により本明細書に援用する。たとえば、米国特許第8,853,160号、米国特許第8,278,272号、米国特許第7,576,050号、米国特許第9,155,702号、国際特許公報第WO/2003/011892号、およびGuらの文献(Clinical Therapeutics.36(1):101-114(2014))の各々の全体を、あらゆる目的において、引用により本明細書に援用する。
【0057】
本明細書および付属の請求項において使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、特に記載がない限り、複数の意味も含む。したがって、たとえば、「ポリペプチド」という記載は複数種類のポリペプチドの混合物を含み、「医薬担体」という記載は2種以上の医薬担体の混合物を含む。
【0058】
本明細書中において、範囲は、「約」特定値~「約」別の特定値と表記され得る。このように範囲が表記されている場合、別の一実施形態において、上記特定値~上記別の特定値という範囲が含まれる。同様に、値の前に「約」がついた形で近似値として表記される場合、その特定値が別の実施形態を構成することが理解される。さらに、個々の範囲について、一方の端値は、もう一方の端値との関係においての意味を有し、かつ、もう一方の端値とは独立した形においても意味を有する、ということが理解される。本明細書中において使用する「約」は、所与の値±10%を指す。
【0059】
本明細書中およびその後に記載される請求項中において言及され得る多くの用語は、以下の意味を有するものと定義する。
【0060】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じてもよく生じなくてもよいということを意味する。この記載には、こうした事象または状況が生じる場合と生じない場合とが含まれる。
【0061】
本明細書全体において、「対象」は、個体を意味する、特定の実施形態において、対象は、霊長類などの哺乳類である。具体的な一実施形態において、対象はヒトである。したがって、「対象」は、ネコおよびイヌなどの飼い慣らされた動物、家畜(たとえば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、ならびに実験動物(たとえば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)を含んでよい。
【0062】
「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、特に記載されない限り、概ね、交換可能に使用する。特に記載がなければ、「ポリペプチド」および「ペプチド」はいずれも、ペプチド結合によって結合した天然または非天然のアミノ酸を指し得る。
【0063】
「安定状態」という用語は、薬物動態学における通常の意味で使用する。簡潔には、たとえば血漿または脳脊髄液(CSF)中の、安定状態での濃度とは、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドが投与される速度が、当該(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドが対象の体内から排出される速度に等しい場合の、血漿およびCSF中の濃度である。本開示に係る(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの安定状態での濃度を求めることは、当技術分野の当業者であれば、常套的に実施できる。
【0064】
「単離ポリペプチド」または「精製ポリペプチド」は、あるポリペプチドについて、そのポリペプチドが天然または培養下で通常結合している物質を、実質的に含まないことを意味する。本開示に係るポリペプチドは、たとえば、天然物(たとえば、哺乳類細胞)が入手できればその天然物からの抽出によって、または、当該ポリペプチドをコードする組換核酸からの(たとえば、細胞における、または無細胞翻訳系における)発現によって、または、当該ポリペプチドの化学合成によって得られてよい。また、ポリペプチドは、全長ポリペプチドの切断によっても得ることができる。ポリペプチドが大きな天然ポリペプチドの断片である場合、単離ポリペプチドは、断片化前の全長の天然ポリペプチドよりも短く、かつ、当該単離ポリペプチドには、断片化前の全長の天然ポリペプチドは含まれない。
【0065】
本開示は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法に関する。この方法は、制御放出神経保護調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含み、制御放出神経保護調製物は、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体(たとえば、エキセンジン-4類似体)からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0066】
図1A、
図1B、
図2、および
図3中に示すように、制御放出神経保護調製物により、動物モデルにおけるエキセナチドの血漿レベルが、より良好に維持される。さらに、
図7Bおよび
図8Bから、エキセナチドの制御放出調製物が、エキセナチド単独と比較して、神経保護効果および神経再生効果が高められた調製物および/または治療であることが示される。
【0067】
本開示は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達するための方法に関する。この方法は、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、対象の全身循環血流に投与することを含んでよく、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物、または神経保護ポリペプチドの持続放出は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0068】
また、本開示は、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法にも関する。この方法は、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを対象の全身循環血流に投与することを含んでよく、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物またはデバイスは、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0069】
特定の実施形態において、制御放出調製物は、神経保護ポリペプチドの持効性調製物である。持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含んでよい。たとえば、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含んでよい(詳細は下記に記載される)。追加的な実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって継続する。追加的な実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、有効成分の初期バーストを起こさずに(たとえば、有効成分の、有害な初期バーストなどの初期バーストを起こさずに)、ある期間にわたって継続する。具体的な実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0070】
一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。たとえば、CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択されてよい。
【0071】
制御放出神経保護調製物の投与は、制御放出神経保護調製物の注射を含んでよい。たとえば、制御放出神経保護調製物は、皮下注射されてよい。
【0072】
別の一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。たとえば、この、安定状態での血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約50~約4500pg/mL、約50~約4250pg/mL、約50~約4000pg/mL、約50~約3750pg/mL、約50~約3500pg/mL、約50~約3250pg/mL、約50~約3000pg/mL、約50~約2750pg/mL、約50~約2500pg/mL、約50~約2250pg/mL、約50~約2000pg/mL、約50~約1750pg/mL、約50~約1500pg/mL、約50~約1250pg/mL、約50~約1000pg/mL、約50~約750pg/mL、約50~約500pg/mL、約50~約250pg/mL、約250~約4500pg/mL、約250~約4250pg/mL、約250~約4000pg/mL、約250~約3750pg/mL、約250~約3500pg/mL、約250~約3250pg/mL、約250~約3000pg/mL、約250~約2750pg/mL、約250~約2500pg/mL、約250~約2250pg/mL、約250~約2000pg/mL、約250~約1750pg/mL、約250~約1500pg/mL、約250~約1250pg/mL、約250~約1000pg/mL、約250~約750pg/mL、約250~約500pg/mL、約500~約4500pg/mL、約500~約4250pg/mL、約500~約4000pg/mL、約500~約3750pg/mL、約500~約3500pg/mL、約500~約3250pg/mL、約500~約3000pg/mL、約500~約2750pg/mL、約500~約2500pg/mL、約500~約2250pg/mL、約500~約2000pg/mL、約500~約1750pg/mL、約500~約1500pg/mL、約500~約1250pg/mL、約500~約1000pg/mL、約500~約750pg/mL、約750~約4500pg/mL、約750~約4250pg/mL、約750~約4000pg/mL、約750~約3750pg/mL、約750~約3500pg/mL、約750~約3250pg/mL、約750~約3000pg/mL、約750~約2750pg/mL、約750~約2500pg/mL、約750~約2250pg/mL、約750~約2000pg/mL、約750~約1750pg/mL、約750~約1500pg/mL、約750~約1250pg/mL、約750~約1000pg/mL、約1000~約4500pg/mL、約1000~約4250pg/mL、約1000~約4000pg/mL、約1000~約3750pg/mL、約1000~約3500pg/mL、約1000~約3250pg/mL、約1000~約3000pg/mL、約1000~約2750pg/mL、約1000~約2500pg/mL、約1000~約2250pg/mL、約1000~約2000pg/mL、約1000~約1750pg/mL、約1000~約1500pg/mL、約1000~約1250pg/mL、約1250~約4500pg/mL、約1250~約4250pg/mL、約1250~約4000pg/mL、約1250~約3750pg/mL、約1250~約3500pg/mL、約1250~約3250pg/mL、約1250~約3000pg/mL、約1250~約2750pg/mL、約1250~約2500pg/mL、約1250~約2250pg/mL、約1250~約2000pg/mL、約1250~約1750pg/mL、約1250~約1500pg/mL、約1500~約4500pg/mL、約1500~約4250pg/mL、約1500~約4000pg/mL、約1500~約3750pg/mL、約1500~約3500pg/mL、約1500~約3250pg/mL、約1500~約3000pg/mL、約1500~約2750pg/mL、約1500~約2500pg/mL、約1500~約2250pg/mL、約1500~約2000pg/mL、約1500~約1750pg/mL、約1750~約4500pg/mL、約1750~約4250pg/mL、約1750~約4000pg/mL、約1750~約3750pg/mL、約1750~約3500pg/mL、約1750~約3250pg/mL、約1750~約3000pg/mL、約1750~約2750pg/mL、約1750~約2500pg/mL、約1750~約2250pg/mL、約1750~約2000pg/mL、約2000~約4500pg/mL、約2000~約4250pg/mL、約2000~約4000pg/mL、約2000~約3750pg/mL、約2000~約3500pg/mL、約2000~約3250pg/mL、約2000~約3000pg/mL、約2000~約2750pg/mL、約2000~約2500pg/mL、約2000~約2250pg/mL、約2250~約4500pg/mL、約2250~約4250pg/mL、約2250~約4000pg/mL、約2250~約3750pg/mL、約2250~約3500pg/mL、約2250~約3250pg/mL、約2250~約3000pg/mL、約2250~約2750pg/mL、約2250~約2500pg/mL、約2500~約4500pg/mL、約2500~約4250pg/mL、約2500~約4000pg/mL、約2500~約3750pg/mL、約2500~約3500pg/mL、約2500~約3250pg/mL、約2500~約3000pg/mL、約2500~約2750pg/mL、約2750~約4500pg/mL、約2750~約4250pg/mL、約2750~約4000pg/mL、約2750~約3750pg/mL、約2750~約3500pg/mL、約2750~約3250pg/mL、約2750~約3000pg/mL、約3000~約4500pg/mL、約3000~約4250pg/mL、約3000~約4000pg/mL、約3000~約3750pg/mL、約3000~約3500pg/mL、約3000~約3250pg/mL、約3250~約4500pg/mL、約3250~約4250pg/mL、約3250~約4000pg/mL、約3250~約3750pg/mL、約3250~約3500pg/mL、約3500~約4500pg/mL、約3500~約4250pg/mL、約3500~約4000pg/mL、または約3500~約3750pg/mLの範囲であってよい。
【0073】
上述されるように、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が安定状態で持続されることにより、対象の脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせにおける神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。たとえば、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約5~約400pg/mLまたは約10~約400pg/mLの範囲内であってよい。すなわち、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約10~約350pg/mL、約10~約300pg/mL、約10~約250pg/mL、約10~約200pg/mL、約10~約150pg/mL、約10~約100pg/mL、約10~約50pg/mL、約50~約400pg/mL、約50~約350pg/mL、約50~約300pg/mL、約50~約250pg/mL、約50~約200pg/mL、約50~約150pg/mL、約50~約100pg/mL、約100~約400pg/mL、約100~約350pg/mL、約100~約300pg/mL、約100~約250pg/mL、約100~約200pg/mL、約100~約150pg/mL、約150~約400pg/mL、約150~約350pg/mL、約150~約300pg/mL、約150~約250pg/mL、約150~約200pg/mL、約200~約400pg/mL、約200~約350pg/mL、約200~約300pg/mL、約200~約250pg/mL、約250~約400pg/mL、約250~約350pg/mL、約250~約300pg/mL、約300~約400pg/mL、約300~約350pg/mL、または約350~約400pg/mLの範囲内であってよい。
【0074】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、安定状態での血漿中のポリペプチドの濃度に対する、安定状態でのCFS中のポリペプチドの濃度の比率は、約0.1%~約5%の範囲内であってよい。たとえば、安定状態での血漿中のポリペプチドの濃度に対する、安定状態でのCSF中の濃度の比率は、本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1%、少なくとも約1.1%、少なくとも約1.2%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2.0%、約0.1%~約5%、約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、約0.5%~約5%、約0.5%~約4%、約0.5%~約3%、約0.5%~約2%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約1%~約2%、約2%~約5%、約2%~約4%、約2%~約3%、約3%~約5%、約3%~約4%、または約4%~約5%であってよい。
【0075】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、安定状態での血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度レベルにおけるパーセント変化(すなわち、安定状態到達後のパーセント変化)は、約80%以下(たとえば、約50%以下)であってよい。たとえば、安定状態での血漿レベルおよび/または濃度に到達した後に再投与が実施された場合、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度におけるパーセント変化は、約80%以下(たとえば、約50%以下)であってよい(たとえば、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度は、1回目の投与の約2、約3、約4、約5、または約6週間後に、安定状態になってよい)。たとえば、安定状態到達後における安定状態での血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度におけるパーセント変化は、たとえば、神経保護ポリペプチドが、先行する神経保護ポリペプチド投与から約28日以内(たとえば、約7、14、または約21日以内)に再投与された場合(たとえば、先行する(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの投与の約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、または約28日後に投与された場合)、約80%以下、約79%以下、約78%以下、約77%以下、約76%以下、約75%以下、約74%以下、約73%以下、約72%以下、約71%以下、約70%以下、約69%以下、約68%以下、約67%以下、約66%以下、約65%以下、約64%以下、約63%以下、約62%以下、約61%以下、約60%以下、約59%以下、約58%以下、約57%以下、約56%以下、約55%以下、約54%以下、約53%以下、約52%以下、約51%以下、約50%以下、約49%以下、約48%以下、約47%以下、約46%以下、約45%以下、約44%以下、約43%以下、約42%以下、約41%以下、約40%以下、約39%以下、約39%以下、約37%以下、約36%以下、約35%以下、約34%以下、約33%以下、約32%以下、約31%以下、約30%以下、約29%以下、約28%以下、約27%以下、約26%以下、約25%以下、約24%以下、約23%以下、約22%以下、約21%以下、約20%以下、約19%以下、約18%以下、約17%以下、約16%以下、約15%以下、約14%以下、約13%以下、約12%以下、約11%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、または約5%以下である。
【0076】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、調製物は、約7~約28日(たとえば、約7~約21日または約7日~約14日)に1回投与される。たとえば、調製物は複数回投与されてよく、この場合の投与間隔は、約7~約28日である(たとえば、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、または約28日に1回である)(たとえば、先行する投与の約7~約28日後に、次の投与が実施される)。調製物は、本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、複数回投与されてよく、この場合の調製物の投与間隔は、約7~約28日(たとえば、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、または約21日間隔(すなわち、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約26、約27、または約28日に1回という間隔)である。
【0077】
追加的な一態様において、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法が提供される。この方法は、対象に、治療的有効量の制御放出神経保護調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含み、制御放出神経保護調製物は、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチド単独と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0078】
具体的な一実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。たとえば、このCNS状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0079】
さらなる実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象への制御放出神経保護調製物の注射を含む。たとえば、制御放出神経保護調製物の投与は、対象への制御放出神経保護調製物の皮下注射を含む。追加的な実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって継続する。本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物は、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、有効成分の初期バー スト(たとえば、有害な初期バースト)を起こさずに、ある期間にわたって継続する。具体的な実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0080】
追加的な実施形態において、制御放出調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、上述される範囲内、たとえば約50~約4500pg/mLの範囲内で、安定状態となる。
【0081】
いくつかの実施形態において、制御放出調製物の投与により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0082】
さらなる一態様において、本開示は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過によるCNSの少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0083】
さらに別の一態様において、本開示は、CNS関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象のBBBの通過によるCNSの少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの持続放出の提供は、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドを、デバイス(たとえば、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなど)を用いて投与することを含む。
【0084】
(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチド(たとえば、制御放出神経保護調製物に含まれた形態のもの)は、約0.5pM/kg/分~約35pM/kg/分(たとえば、約3pM/kg/分~約17.5pM/kg/分)の速度で投与されてよい。たとえば、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドは、約0.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約30pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約25pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約22.5pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約20pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約17.5pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約15pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約12.5pM/kg/分、約0.5pM/kg/分~約10pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約30pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約25pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約22.5pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約20pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約17.5pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約15pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約12.5pM/kg/分、約1.5pM/kg/分~約10pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約30pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約25pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約22.5pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約20pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約17.5pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約15pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約12.5pM/kg/分、約2.5pM/kg/分~約10pM/kg/分、約5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約5pM/kg/分~約35pM/kg/分、約5pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約5pM/kg/分~約30pM/kg/分、約5pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約5pM/kg/分~約25pM/kg/分、約5pM/kg/分~約22.5pM/kg/分、約5pM/kg/分~約20pM/kg/分、約5pM/kg/分~約17.5pM/kg/分、約5pM/kg/分~約15pM/kg/分、約5pM/kg/分~約12.5pM/kg/分、約5pM/kg/分~約10pM/kg/分、約10pM/kg/分~約35pM/kg/分、約10pM/kg/分~約35pM/kg/分、約10pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約10pM/kg/分~約30pM/kg/分、約10pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約10pM/kg/分~約25pM/kg/分、約10pM/kg/分~約22.5pM/kg/分、約10pM/kg/分~約20pM/kg/分、約10pM/kg/分~約17.5pM/kg/分、約15pM/kg/分~約35pM/kg/分、約15pM/kg/分~約35pM/kg/分、約15pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約15pM/kg/分~約30pM/kg/分、約15pM/kg/分~約27.5pM/kg/分、約15pM/kg/分~約25pM/kg/分、約20pM/kg/分~約35pM/kg/分、約20pM/kg/分~約35pM/kg/分、約20pM/kg/分~約32.5pM/kg/分、約20pM/kg/分~約30pM/kg/分、または約25pM/kg/分~約35pM/kg/分の速度で投与されてよい。
【0085】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物または(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドは、デバイスによって投与されてよい。たとえば、デバイスは、制御放出調製物または(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドを収容し且つこれを送達する埋め込み型デバイスであってよい。デバイスは、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなどであってよい。本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、デバイスは埋め込み型デバイスであってよく、この埋め込み型デバイスは、制御放出調製物または(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドを、一定の流量、調整可能な流量、またはプログラム可能な流量において提供できるものであってよい。たとえば、米国特許第8,298,561 B2号または米国特許第8,940,316 B2号中に記載されるもののような浸透圧送達デバイスがあり、両特許の全体を引用により本明細書に援用する。
【0086】
本明細書中において使用する「浸透圧送達デバイス」という用語は、対象への1種以上の有益な剤(たとえば、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物)の送達に使用するデバイスを指し、このデバイスは、たとえば、内部空洞に(たとえば、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物を含有する)懸濁調製物が入っている容器(たとえば、チタン合金製)と、浸透圧剤調製物とを有する。内部空洞内に配置されたピストンアセンブリが、浸透圧剤調製物と懸濁調製物とを分けている。容器の第1の遠位端には、浸透圧剤調製物に隣り合うようにして、半透過膜が配置され、さらに、容器の第2の遠位端には、懸濁調製物に隣り合うようにして、流量調節器が配置されている(この流量調節器によって送達孔が画定されており、この送達孔を通って、デバイスから懸濁調製物が放出される)。浸透圧送達デバイスまたは浸透圧ポンプは、対象の体内の、たとえば皮下に、(たとえば、上腕の内側、外側、もしくは後ろ側、または腹部の領域に)埋め込まれてよい。
【0087】
本明細書中に記載される(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物は、デバイスによって投与されることにより、数週間、数か月間、または最長で約1年間といったように、長期間にわたって、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物の持続送達を提供してよい。このデバイスは、埋め込み型デバイスであってもよく、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物を、所望の流速において、所望の期間にわたって送達できる。(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物の、この埋め込み型の薬物送達デバイス内への導入は、従来の技術によって実施されてよい。
【0088】
(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物は、たとえば、浸透圧的、機械的、電気機械的、または化学的に駆動されるデバイスを使用して、送達されてよい。本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物は、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドによる処置を必要とする対象にとって治療的に有効である流速において、送達される。
【0089】
(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物は、約1週間超~約1年間以上(たとえば、約1か月間~約1年間以上、または約3か月間~約1年間以上)の範囲の期間にわたって送達されてよい。デバイスは、少なくとも1つの孔を有する容器を有していてよく、この孔を通って、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物が送達される。(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物は、容器の中に保管されてよい。本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、デバイスは、埋め込み型デバイスであってもよい浸透圧送達デバイスであり、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物の送達は、浸透圧によって推進される。いくつかの浸透圧送達デバイスまたは浸透圧ポンプおよびその部品が記載されている。たとえば、DUROS(登録商標)送達デバイスまたはこれに類似するデバイスが挙げられる(たとえば、米国特許第5,609,885号、第5,728,396号、第5,985,305号、第5,997,527号、第6,113,938号、第6,132,420号、第6,156,331号、第6,217,906号、第6,261,584号、第6,270,787号、第6,287,295号、第6,375,978号、第6,395,292号、第6,508,808号、第6,544,252号、第6,635,268号、第6,682,522号、第6,923,800号、第6,939,556号、第6,976,981号、第6,997,922号、第7,014,636号、第7,207,982号、第7,112,335号、および第7,163,688号、ならびに米国特許出願第2005-0175701号、第2007-0281024号、および第2008-0091176を参照、これらの全体を引用により本明細書に援用する)。
【0090】
DUROS(登録商標)送達デバイスは、典型的には、浸透圧機関と、ピストンと、薬剤調製物とを収容する円筒形容器からなる。この容器は、一端が速度制御透水膜で封じられ、他端が拡散調節部で封じられており、この拡散調節部を通って、薬剤調製物が薬剤容器から放出される。ピストンは、薬剤調製物と浸透圧機関とを隔てている。ピストンは、浸透圧機関区画内の水が薬剤容器中に流入するのを防ぐために、封止材を含んでいる。拡散調節部は、体液が、薬剤調製物(たとえば、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物)と共に、孔から薬剤容器中に流入するのを防止するよう設計されている。
【0091】
DUROS(登録商標)デバイスは、浸透の原理に基づいて、所定の速度で治療剤を放出する。細胞外液が、半透過膜を通ってDUROS(登録商標)デバイス内の塩型機関(salt engine)中に直接流入すると、塩型機関が拡張して、ピストンを、ゆっくりした一定の送達速度で推進する。ピストンの動きによって、薬剤調製物(たとえば、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物)が、孔または出口穴を通って、所定の剪断速度で放出される。本発明の任意の態様または実施形態において、DUROS(登録商標)デバイスの容器中に、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物が導入されており、このデバイスは、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物を、対象に対し、長期間(たとえば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12か月間)にわたって、所定の、治療的有効な送達速度において、送達できる。
【0092】
任意の埋め込み型デバイスを、本開示の実施において使用してよく、この任意の埋め込み型デバイスは、一定の流量、調整可能な流量、またはプログラム可能な流量において化合物を提供できるレギュレータ式埋め込み型ポンプを含んでいてよい。
【0093】
本開示に係る送達デバイスにおいて使用する(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物の量は、所望の治療成果の達成のために治療的有効量の剤を送達するのに必要とされる量である。実際には、この量は、たとえば、剤の種類、送達部位、状態の重症度、および所望の治療効果などの可変要因に依存して、変動してもよい。典型的には、浸透圧送達デバイスが有する、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドまたは制御放出調製物を収容するための有益剤用チャンバの容積は、約100μl~約1000μl(たとえば、約120μlおよび約500μlまたは約150μlおよび約200μl)である。
【0094】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、浸透圧送達デバイスは、対象の体内の、たとえば皮下に、埋め込まれる。このデバイスは、片腕または両腕(たとえば、上腕の内側、外側、または後ろ側)に、または腹部に挿入されてよい。たとえば、このデバイスは、腹部の、肋骨より下でベルトラインより上の領域の皮膚の下に埋め込まれてよい。1つ以上の浸透圧送達デバイスを腹部に挿入できるよう、複数の位置を提供する目的で、腹部の壁を以下のように四半分4つに分けてよく、その4つとは、右肋骨より下に5~8センチメートルかつ正中線より右に約5~8センチメートルにわたって延在する右上の四半分と、ベルトラインより上に5~8センチメートルかつ正中線より右に5~8センチメートルにわたって延在する右下の四半分と、左肋骨より下に5~8センチメートルかつ正中線より左に約5~8センチメートルにわたって延在する左上の四半分と、ベルトラインより上に5~8センチメートルかつ正中線より左に5~8センチメートルにわたって延在する左下の四半分とである。こうすることによって、1つ以上のデバイスを1つ以上の場合に埋め込むために使用できる複数の位置が提供される。
【0095】
他の実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続送達の提供は、対象における、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0096】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0097】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0098】
神経保護ポリペプチド
神経保護ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、または配列番号55からなる群より選択されるアミノ酸を有してよい。神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55から選択されるアミノ酸配列を含んでよい。さらに、神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55から選択されるアミノ酸配列からなっていてよい。
【0099】
「GLP-1または(もしくは)エキセンジン-4の類似体」は、作動薬特性を示す(すなわち、GLP-1またはエキセンジン-4の1種以上の生物学的活性を示す)、改変されたGLP-1および/またはエキセンジンアミノ酸配列を意味する。このような改変には、GLP-1中に存在する1つ以上のアミノ酸残基とエキセンジン-4中に存在する1つ以上のアミノ酸残基とを含むキメラポリペプチドが含まれる。また、上記の改変には、GLP-1もしくはエキセンジン-4のいずれか一方またはそのキメラポリペプチドのトランケーションも含まれる。たとえば、トランケーション型キメラポリペプチドとして、エキセンジン-4 7-36において36位のGがGLP-1の36位のRで置き換えられたものが挙げられる。本開示に係るポリペプチドは、GLP-1またはエキセンジン-4と比較して機能活性が顕著に低下しない程度の、GLP-1またはエキセンジン-4のアミノ酸配列における、1つ以上のアミノ酸の追加(すなわち、挿入または付加)、アミノ酸の欠失、または置換を含む。たとえば、欠失とは、本発明において定義される分化誘導活性を与えるのに必須ではないアミノ酸の欠失であってよく、置換とは、保存的(すなわち、塩基性、親水性、または疎水性のアミノ酸を、こうした性質が同じであるアミノ酸で置換すること)であってもよく、または非保存的であってもよい。保存的置換とは、置換されたアミノ酸の構造的特性または化学的特性が、参照配列中の対応するアミノ酸の構造的特性または化学的特性と類似する置換である。例として、保存的アミノ酸置換は、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンなどの脂肪族または疎水性アミノ酸1つを別の脂肪族または疎水性アミノ酸1つで置換すること、セリンおよびトレオニンなどのヒドロキシ含有アミノ酸1つを別のヒドロキシ含有アミノ酸1つで置換すること、グルタミン酸またはアスパラギン酸などの酸性残基1つを別の酸性残基1つで置換すること、アスパラギンおよびグルタミンなどのアミド含有残基1つを別のアミド含有残基1つで置き換えること、フェニルアラニンおよびチロシンなどの芳香族残基1つを別の芳香族残基1つで置き換えること、リシン、アルギニン、およびヒスチジンなどの塩基性残基1つを別の塩基性残基1つで置き換えること、ならびに、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、およびグリシンなどの小アミノ酸1つを別の小アミノ酸1つで置き換えることに関与する。したがって、GLP-1およびエキセンジン-4のアミノ酸配列を改変および変更することが望ましい場合には、改変および変更してよく、その場合にも、類似する特徴を有するタンパク質が得られるということが理解される。GLP-1のアミノ酸配列またはエキセンジン-4アミノ酸配列(またはその元となる核酸配列)には、生物学的有用性または活性を顕著に低下させない程度に、かつ、できればこうした有用性または活性を増大させるように、種々の変更がなされてよい。
【0100】
本明細書中において、GLP-1、またはエキセンジン-4、またはこれらと実質的に相同するアミノ酸配列を有するポリペプチドに関して用いられる「断片」または「トランケーション」という用語は、GLP-1、エキセンジン-4、またはこれらと実質的に相同するアミノ酸配列を有するポリペプチドのいずれかが有する、少なくとも5つの連続するアミノ酸からなるポリペプチド配列を意味し、このポリペプチド配列は、インスリン分泌機能を有する。
【0101】
上記以外の改変には、D-エナンチオマーが含まれる。アミノ酸残基の、天然に存在する少なくとも1つのL型立体配置が、そのアミノ酸残基のD型立体配置で置き換えられたものである。
【0102】
本開示は、横方向スペーサなどのスペーサの使用を意図している。「横方向スペーサ」という用語は、化学結合によってアミノ酸配列中に組み込まれる化合物と定義される。この化合物は、2つ以上のアミノ酸残基の間の距離を長くすることによって、この化合物が組み込まれた位置またはその近傍において当該アミノ酸配列が切断(たとえば、DPP 1Vにより切断)されにくくする、または切断されないようにするものである。たとえば、アミノ酸残基AおよびBと横方向スペーサXとを有する配列A-X-Bは、横方向スペーサを有さない配列(A-B)と比較して、酵素によって配列が切断されにくい、または切断されない。たとえば、横方向スペーサとして、1~4つの化合物がアミノ酸配列中に組み込まれてよい。したがって、種々の実施形態において、1、2、3、または4つの化合物が挿入される。
【0103】
一般的に、横方向スペーサは、アミノ酸とペプチド結合を形成できる任意の化合物である。すなわち、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシ基(CO2)とを含有し、このカルボキシ基は、カルボン酸またはそのエステルもしくは塩であってよい。一実施形態において、横方向スペーサは、式H2N-R1-CO2H(I)を有し、式中、R1は、置換もしくは未置換の、分枝状もしくは直鎖状の、炭素数1~20の、アルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基、または置換もしくは未置換の炭素数3~8のシクロアルキル基、または置換もしくは未置換の炭素数6~20のアリール基、または置換もしくは未置換の炭素数4~20のヘテロアリール基を含む。別の一実施形態において、R1は、式(CH2)nで表されてよく、式中、nは1~10である。一実施形態において、R1は、(CH2)3(3-アミノプロピオン酸)または(CH2)5(6-アミノヘキサン酸)である。
【0104】
本開示は、少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む制御放出調製物の投与を含む方法を提供する。ポリペプチドは、改変されたGLP-1またはエキセンジン(たとえば、エキセンジン-4)の配列、またはその類似体もしくは誘導体であって、GLP-1の7番目および8番目の残基に相当するアミノ酸残基の間にスペーサが配置されたもの(たとえば、Ahaスペーサを有するGLP-1の場合、「GLP-1 Aha8」と称される)、または、GLP-1の8番目および9番目の残基に相当するアミノ酸残基の間にスペーサが配置されたもの(たとえば、Ahaスペーサを有するGLP-1の場合、「GLP-1Aha9」と称される)を含んでよい。横方向スペーサは、一実施形態において、1つ以上のアミノプロプリオニック酸残基である。一実施形態において、スペーサは、6-アミノヘキサン酸スペーサであり、この6-アミノヘキサン酸スペーサは、6-アミノヘキサン酸残基を4つ未満含む。ポリペプチドは、たとえば、GLP-1 7-36の7番目の残基と8番目の残基との間に1つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたもの(すなわち、GLP-1 Aha8)を含んでよい、または、GLP-1 7-36の8番目の残基と9番目の残基との間に1つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたものを含んでよい。ポリペプチドは、GLP-1 7-36の7番目の残基と8番目の残基との間に2つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたもの(すなわち、GLP-1 Aha8)を含んでよい、または、GLP-1 7-36の8番目の残基と9番目の残基との間に2つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたものを含んでよい。ポリペプチドは、たとえば、GLP-1 7-36の7番目の残基と8番目の残基との間に3つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたもの(すなわち、GLP-1 Aha8)を含んでよい、または、GLP-1 7-36の8番目の残基と9番目の残基との間に3つ以上の6-アミノヘキサン酸残基が含まれたものを含んでよい。
【0105】
他の実施形態において、本開示に係るポリペプチドは、GLP-1の等モル量と同等のインスリン分泌効果を有する、または、一実施形態において、エキセンジン-4の等モル量と同等のインスリン分泌効果を有する。「同等の効果」とは、GLP-1またはエキセンジン-4の効果の約10~15%の効果を意味する。別の一実施形態において、ポリペプチドは、GLP-1またはエキセンジン-4のいずれかのインスリン分泌効果を超えるインスリン分泌効果を有する。GLP-1またはエキセンジン-4が有する「効果を超える」とは、GLP-1またはエキセンジン-4と比較してインスリン分泌効果が増大していること、たとえば、その増大の幅がGLP-1またはエキセンジン-4の効果の約10%よりも大きいこと、を意味する。したがって、一実施形態において、本開示に係るポリペプチドは、GLP-1またはエキセンジン-4と同程度の効力を有し、別の一実施形態において、本開示に係るポリペプチドは、GLP-1よりも高い効力を有し、かつ、任意に、エキセンジン-4よりも高い効力を有する。他の実施形態において、本開示に係るポリペプチドは、GLP-1よりも持効性が高い。さらなる一実施形態において、ポリペプチドは、少なくともエキセンジン-4と同程度の持効性を有する。他の実施形態において、ポリペプチドは、エキセンジン-4よりも持効性が高い。「~よりも持効性が高い」とは、ポリペプチドが、GLP-1またはエキセンジン-4よりも、少なくとも1種の分解酵素に対する耐性が高いことを意味する。たとえば、本開示に係るポリペプチドは、GLP-1よりも、かつ、任意に、エキセンジン-4よりも、酵素ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPPIV)による分解に対する耐性が高い。1つ以上の分解酵素に対するこうした耐性は、分解産物の量(たとえば、N-末端分解産物の量)または切断されていないポリペプチドの量を検出することによって、直接調べることができる。代替的には、1つ以上の分解酵素に対するこうした耐性は、本開示に係るポリペプチドの投与後における、インスリン分泌効果の経時的減少を調べることによって、間接的に検出されてよい。たとえば、本開示に係るポリペプチドを分解酵素が切断するにつれて、単回投与後に、血漿インスリンレベルが低下するであろう。追加的な実施形態において、この低下の速度は、GLP-1の場合よりも遅いと考えられ、かつ/または、おそらくはエキセンジン-4の場合よりもさらに遅いと考えられる。
【0106】
本開示に係るポリペプチドは、当技術分野において通常の知識を有する者に広く周知される、溶液法および固相法などの複数の化学的ポリペプチド合成技術のうち、任意の技術によって調製してよい。固相合成とは、ポリペプチド配列のC-末端アミノ酸を不溶性担持体に付着させ、続いて、当該配列の残りのアミノ酸を連続的に付加するものであり、この方法は、ポリペプチドの調製を目的とした合成方法の1つである。固相合成技術は、Merrifield et al.,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2156(1963)によって記載されている。固相ペプチド合成を実施するための多くの自動システムが市販される。
【0107】
固相合成は、ポリペプチドのカルボキシ末端(すなわち、C-末端)から開始し、保護されたアミノ酸を、そのカルボキシ基を介して、適切な固体担持体にカップリングさせることによって実施する。使用する固体担持体は、当該カルボキシ基に結合できるものであって、かつ、ペプチド合成手順で使用する試薬に対して実質的に不活性であるものであれば、特徴として重要ではない。たとえば、アミノ基が保護されたアミノ酸を、ベンジルエステル結合を介してクロロメチル化樹脂もしくはヒドロキシメチル樹脂に付着させることによって、または、アミド結合を介してベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂もしくはp-メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂に付着させることによって、出発原料を調製してよい。固体担持体として使用するのに適切な材料は、当技術分野における知識を有する者に広く周知されており、そうした材料には、クロロメチル樹脂またはブロモメチル樹脂などのハロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、4-(a-[2,4-ジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノメチル)フェノキシ樹脂などのフェノール樹脂、およびtert-アルキルオキシカルボニルヒドラジド化樹脂などが含まれるが、これらに限定されない。このような樹脂は、市販されており、その調製方法は、当技術分野において通常の知識を有する者に周知である。
【0108】
ペプチドの酸型は、固体担持体としてベンジルエステル樹脂を使用する固相ペプチド合成手順によって調製してよい。対応するアミドは、固体担持体としてベンズヒドリルアミンまたはメチルベンズヒドリルアミン樹脂を使用することによって、生成してよい。当業者であれば、BHAまたはMBHA樹脂を使用する場合には、この固体担持体からの当該ペプチドの切り離しを無水フッ化水素酸処理によって実施すると、末端アミド基を有するペプチドが生成されることを、認識できるであろう。
【0109】
合成に使用する各アミノ酸のα-アミノ基は、カップリング反応の実施中、反応性α-アミノ官能基を巻き込んだ副反応が生じるのを防ぐために、保護されているべきである。反応性の側鎖官能基(たとえば、スルフヒドリル、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシなど)をさらに含有するアミノ酸については、当該部位における化学反応がペプチド合成中に生じるのを防ぐために、適切な保護基で保護されていなければならない。保護基は、当技術分野における知識を有する者に広く周知される。たとえば、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Vol.3:Protection of Functional Groups in Peptide Synthesis(Gross and Meienhofer(eds.),Academic Press,N.Y.(1981))を参照のこと。
【0110】
適切に選択したα-アミノ保護基であれば、カップリング反応中にα-アミノ官能基を不活性化でき、カップリング後は、側鎖保護基の除去が生じない条件の下で容易に除去でき、ペプチド断片の構造を変化させず保持でき、かつ、カップリング直前の活性化によるラセミ化を防止できる。同様に、側鎖保護基は、合成中に側鎖官能基を不活性化できるものを選択しなければならず、α-アミノ保護基を除去する際の条件下で安定でなければならず、かつ、ペプチド合成終了後には、ペプチドの構造を変化させない条件の下で除去できなければならない。
【0111】
アミノ酸のカップリングは、当技術分野における知識を有する者に周知の様々な技術によって、実施してよい。典型的な方法では、アミノ酸を誘導体に変換することにより、そのカルボキシ基と、ペプチド断片の遊離N-末端アミノ基との反応を生じやすくするか、または、たとえばN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)などの、好適なカップリング剤を使用する。多くの場合、こうしたカップリング反応の触媒として、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使用する。
【0112】
一般的に、ペプチドの合成は、まず、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)などの保護基でN-アミノ位が保護されたC-末端アミノ酸を、固体担持体にカップリングさせることによって、開始する。Fmoc-Asnをカップリングさせる前に、Fmoc残基をポリマーから切り離す必要がある。たとえば、Fmoc-Asnは、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を用い、約25℃で、約2時間かけて、撹拌しながら、4-(a-[2,4-ジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノ-メチル)フェノキシ樹脂にカップリングさせることができる。Fmoc保護アミノ酸を樹脂担持体にカップリングさせた後、20%ピペリジン含有DMFを用いて、室温において、α-アミノ保護基を除去する。
【0113】
α-アミノ保護基の除去後、残ったFmoc保護アミノ酸を、段階的に、望ましい順序で、カップリングさせる。適切に保護されたアミノ酸が、複数の供給元から市販される(たとえば、Novartis(スイス)またはBachem(Torrance、CA))。アミノ酸を1つ1つ段階的に付加する代わりに、1つより多いアミノ酸からなる、適切に保護されたペプチド断片を、「伸長中の」ペプチドにカップリングさせてもよい。適切なカップリング試薬の選択は、上述されるように、当技術分野における知識を有する者に広く周知される。
【0114】
保護されたアミノ酸またはアミノ酸配列の各々を、過剰量で、固相反応器中に導入し、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン(CH2Cl2)、またはそれらの混合物を媒体として、カップリングを実施する。カップリングが不完全である場合には、N-アミノ基の脱保護および次のアミノ酸の付加まで、カップリング反応を繰り返してよい。カップリング効率の監視を、当技術分野における知識を有する者に広く周知される複数の手段によって、実施してよい。カップリング効率を監視する方法は、ニンヒドリン反応であってよい。ペプチド合成反応は、Biosearch 9500(商標)合成装置(Biosearch、San Raphael、CA)などの、市販される複数のペプチド合成装置を用いて、自動的に実施してよい。
【0115】
ペプチドを切断してよく、保護基の除去は、無水液状フッ化水素(HF)中、アニソールおよび硫化ジメチルの存在下、約0℃において、約20~約90分間、たとえば60分間、不溶性の担体もしくは固体担持体を撹拌することによって実施してもよいし、または、選択した保護基に応じて、樹脂1mg/10mLをトリフルオロ酢酸(TFA)中に懸濁した懸濁液に、臭化水素(HBr)を連続して60~360分間、ほぼ室温で通気することによって実施してもよいし、または、固相合成に使用した反応カラム中で、固体担持体を、90%トリフルオロ酢酸と5%水と5%トリエチルシランとを使用して、約30~約60分間インキュベートすることによって実施してもよい。また、当技術分野における知識を有する者に広く周知される他の脱保護方法を使用してもよい。
【0116】
ペプチドを、当技術分野における知識を有する者に広く周知されるペプチド精製手段によって、反応混合物から単離および精製してよい。たとえば、ペプチドを、逆相HPLC、ゲル浸透、イオン交換、サイズ排除、アフィニティ、分配、または向流分配などの、周知のクロマトグラフィー法によって、精製してよい。
【0117】
また、神経保護ポリペプチドの調製を、たとえば組換え技術などの、他の手段によって実施してもよい。適切なクローニングおよびシーケンシング技術の例と、当業者が多くのクローニング実習を実施するのに十分な説明とについては、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning-A Laboratory Manual(2nd ed.)Vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY,(Sambrook)を参照のこと。
【0118】
たとえば、制御放出調製物中において使用する(1種または2種以上の)エキセンジン誘導体は、化学式Iで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩であってよい:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 -Z1
(化学式I)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、Ala、またはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルであり、
Xaa22は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
Xaa27は、AlaまたはLysであり、
Xaa28は、AlaまたはAsnであり、かつ
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、またはN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、Ser、またはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつ
Z2は、-OH、または-NH2であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、およびXaa28のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、またはTyrである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0119】
いくつかの実施形態において、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、およびN-アルキルアラニンのN-アルキル基は、たとえば炭素原子1~約6個または炭素原子1~4個を有する、低級アルキル基を含んでよい。化学式Iで表される化合物は、1998年11月13日付提出のPCT出願番号第PCT/US98/24273号(発明の名称「新規エキセンジン作動薬化合物」、その全体を、あらゆる目的において、引用により本明細書に援用する)の実施例1~89中に示される化合物(それぞれ化合物1~89)、ならびに、これらに対応する、同実施例104および105中に示される化合物を含んでよい。
【0120】
具体的な一実施形態において、化学式Iのエキセンジン誘導体は、化学式IのXaa1がHis、Ala、Norval、または4-イミダゾプロピオニルであるものを含んでよい。別の一実施形態において、化学式IのXaa1は、His、Ala、または4-イミダゾプロピオニルである。追加的な一実施形態において、化学式IのXaa1は、Hisまたは4-イミダゾプロピオニルである。
【0121】
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa2がGlyであるものであってよい。
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa3がAlaであるものであってよい。
【0122】
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa4がAlaであるものであってよい。
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa9がAlaであるものであってよい。
【0123】
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa14がLeu、ペンチルグリシン、またはMetであるものであってよい。
【0124】
化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa21がLys-NHε-Rであるものであってよく、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルである。
【0125】
一実施形態において、化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa25がTrpまたはPheであるものであってよい。
【0126】
別の一実施形態において、化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa6がAla、Phe、またはナフチルアラニンであり、Xaa22がPheまたはナフチルアラニンであり、かつXaa23がIleまたはValであるものであってよい。さらに、化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38が、独立して、Pro、ホモプロリン、チオプロリン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Z1が-NH2であってよく、かつZ2が-NH2であってよいものであってよい。
【0127】
他の実施形態において、化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa1がAla、His、またはTyrであり(たとえば、AlaまたはHisであり)、Xaa2がAlaまたはGlyであり、Xaa6がPheまたはナフチルアラニンであり、Xaa14がAla、Leu、ペンチルグリシン、またはMetであり、Xaa22がPheまたはナフチルアラニンであり、Xaa23がIleまたはValであり、Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38が、独立して、Pro、ホモプロリン、チオプロリン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39がSerまたはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつZ1が-NH2であってよいものであってよい。
【0128】
一実施形態によれば、化学式Iのエキセンジン誘導体は、Xaa1がHisまたはAlaであり、Xaa2がGlyまたはAlaであり、Xaa3がAla、Asp、またはGluであり、Xaa4がAlaまたはGlyであり、Xaa5がAlaまたはThrであり、Xaa6がPheまたはナフチルアラニンであり、Xaa7がThrまたはSerであり、Xaa8がAla、Ser、またはThrであり、Xaa9がAla、Asp、またはGluであり、Xaa10がAla、Leu、またはペンチルグリシンであり、Xaa11がAlaまたはSerであり、Xaa12がAlaまたはLysであり、Xaa13がAlaまたはGlnであり、Xaa14がAla、Leu、Met、またはペンチルグリシンであり、Xaa15がAlaまたはGluであり、Xaa16がAlaまたはGluであり、Xaa17がAlaまたはGluであり、Xaa19がAlaまたはValであり、Xaa20がAlaまたはArgであり、Xaa21がAlaまたはLeuであり、Xaa22がPheまたはナフチルアラニンであり、Xaa23がIle、Val、またはtert-ブチルグリシンであり、Xaa24がAla、Glu、またはAspであり、Xaa25がAla、Trp、またはPheであり、Xaa26がAlaまたはLeuであり、Xaa27がAlaまたはLysであり、Xaa28がAlaまたはAsnであり、Z1が、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38が、独立して、Pro、ホモプロリン、チオプロリン、またはN-メチルアラニンであり、Xaa39がSerまたはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつZ2が-OHまたは-NH2であり、ただし、Xaa3、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、およびXaa28のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつXaa1がHis、Arg、またはTyrである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つがAlaであってよいものであってよい。
【0129】
さらなる実施形態において、化学式Iの化合物は、PCT出願番号第PCT/US98/25728号中に記載される配列番号5~93のアミノ酸配列を有するもの、または米国仮出願第60/066,029号中に記載されるものを含んでよい(これらを引用により本明細書に援用する)。
【0130】
一実施形態によれば、Xaa14がLeu、Ile、Val、またはペンチルグリシンであり(たとえば、Leuまたはペンチルグリシンであり)、かつXaa25がAla、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンである(たとえば、Pheまたはナフチルアラニンである)化合物が提供される。これらの化合物は、in vitroおよびin vivoの両方において、かつ当該化合物の合成中において、酸化分解しにくいであろう。
【0131】
別の一態様において、エキセンジン誘導体は、化学式IIで表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含んでよい:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 X1-Z1
(化学式II)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、AlaまたはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり(ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアレイル-アルカノイルであり)、
Xaa22は、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
X1は、Lys Asn、Asn Lys、Lys-NHε-R Asn、Asn Lys-NHε-R、Lys-NHε-R Ala、Ala Lys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアルキルアルカノイルであり、
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、SerまたはTyrであり、かつ
Z2は、-OHまたは-NH2である)、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、およびXaa26のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、Tyr、または4-イミダゾプロピオニルである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0132】
特定の実施形態において、化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa1がHis、Ala、Norval、または4-イミダゾプロピオニルであるもの(たとえば、Xaa1がHis、4-イミダゾプロピオニル、もしくはAlaを含むもの、またはXaa1がHis、もしくは4-イミダゾプロピオニルを含むもの)を含んでよい。
【0133】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa2がGlyであるものであってよい。
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa4がAlaであるものであってよい。
【0134】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa9がAlaであるものであってよい。
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa14がLeu、ペンチルグリシン、またはMetであるものであってよい。
【0135】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa25がTrpまたはPheであるものであってよい。
【0136】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa6がAla、Phe、またはナフチルアラニンであり、Xaa22がPheまたはナフチルアラニンであり、かつXaa23がIleまたはValであるものであってよい。
【0137】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Z1が-NH2であるものであってよい。
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38が、独立して、Pro、ホモプロリン、チオプロリン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択されるものであってよい。
【0138】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa39がSerまたはTyrである(たとえば、Serである)ものであってよい。化学式IIのエキセンジン誘導体は、Z2が-NH2であるものであってよい。
【0139】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Z1が-NH2であるものであってよい。
化学式IIのエキセンジン誘導体は、Xaa21がLys-NHε-Rであるものであってよく、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状または分枝状のアルカノイルである。
【0140】
化学式IIのエキセンジン誘導体は、X1が、Lys Asn、Lys-NHε-R Asn、またはLys-NHε-R Alaであるものであってよく、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルである。
【0141】
さらなる実施形態において、化学式IIのエキセンジン誘導体は、WO99/025728中に記載される配列番号95~110で示されるアミノ酸配列を有する化合物を含んでよい。化学式IIのエキセンジン誘導体は、1998年11月13日付提出のPCT出願PCT/US98/24210(発明の名称「新規エキセンジン作動薬化合物」)中に記載される配列番号5~93で示されるアミノ酸配列を有する化合物を含んでよい。別の一態様において、化学式IIのエキセンジン誘導体は、WO99/007404中に記載される配列番号37~40で示されるアミノ酸配列を有する化合物を含んでよい。上記文献を、引用により本明細書に援用する。
【0142】
化学式IおよびII中に使用する省略形は、以下のとおりの意味である。
「ACN」および「CH3CN」は、アセトニトリルを指す。
【0143】
「Boc」、「tBoc」、および「Tboc」は、t-ブトキシカルボニルを指す。
「DCC」は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドを指す。
【0144】
「Fmoc」は、フルオレニルメトキシカルボニルを指す。
「HBTU」は、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3,-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェートを指す。
【0145】
「HOBt」は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物を指す。
「homoP」および「hPro」は、ホモプロリンを指す。
【0146】
「MeAla」および「Nme」は、N-メチルアラニンを指す。
「naph」は、ナフチルアラニンを指す。
【0147】
「pG」および「pGly」は、ペンチルグリシンを指す。
「tBuG」は、tert-ブチルグリシンを指す。
【0148】
「ThioP」および「tPro」は、チオプロリンを指す。
「3Hyp」は、3-ヒドロキシプロリンを指す。
【0149】
「4Hyp」は、4-ヒドロキシプロリンを指す。
「NAG」は、N-アルキルグリシンを指す。
【0150】
「NAPG」は、N-アルキルペンチルグリシンを指す。
「Norval」は、ノルバリンを指す。
【0151】
一実施形態において、エキセンジン断片または誘導体は、C-末端がアミド基で置換されていても置換されていなくてもよく、エキセンジン-4(1-28)(配列番号15)、エキセンジン-4(1-28)アミド、エキセンジン-4(1-30)(配列番号7)、エキセンジン-4(1-30)アミド、エキセンジン-4(1-31)(配列番号54)、エキセンジン-4(1-31)アミド、14Leu25Pheエキセンジン-4(配列番号55)、14Leu25Pheエキセンジン-4アミド、およびこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択されてよい。
【0152】
制御放出調製物
他の実施形態によれば、制御放出組成物または微小球は、有効成分として、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体を、エキセンジン(エキセンジン-4など)、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体(たとえば、エキセンジン-4類似体)と、生分解性ポリマーと、被覆材料とを含む、組成物または微小球100重量部に基づいて、約0.1~約10重量部(たとえば、約0.8~約6重量部)の量で含んでよい。たとえば、制御放出組成物または微小球は、エキセンジンもしくはその治療的に有効である類似体および/またはGLP-1もしくはその治療的に有効である類似体を、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体と、生分解性ポリマーと、被覆材料とを含む、組成物または微小球100重量部に基づいて、約0.1~約10重量部、約0.1~約9重量部、約0.1~約8重量部、約0.1~約7重量部、約0.1~約6重量部、約0.1~約6重量部、約0.1~約5重量部、約0.1~約4重量部、約0.1~約3重量部、約0.5~約10重量部、約0.5~約9重量部、約0.5~約8重量部、約0.5~約7重量部、約0.5~約6重量部、約0.5~約6重量部、約0.5~約5重量部、約0.5~約4重量部、約0.5~約3重量部、約1~約10重量部、約1~約9重量部、約1~約8重量部、約1~約7重量部、約1~約6重量部、約1~約6重量部、約1~約5重量部、約1~約4重量部、約1~約3重量部、約2~約10重量部、約2~約9重量部、約2~約8重量部、約2~約7重量部、約2~約6重量部、約2~約6重量部、約2~約5重量部、約2~約4重量部、約3~約10重量部、約3~約9重量部、約3~約8重量部、約3~約7重量部、約3~約6重量部、約4~約10重量部、約4~約9重量部、約4~約8重量部、約4~約7重量部、約5~約10重量部、約5~約9重量部、約5~約8重量部、約6~約10重量部、約6~約9重量部、または約7~約10重量部含んでよい。本開示に係る組成物または微小球に含まれるエキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の量が、上記範囲より少ない場合には、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の高い効果を得ることができない。また、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の量が、上記範囲より多い場合には、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の初期バーストが増大し、これにより、初期バーストに起因する副作用が生じる。したがって、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の量は、上記範囲内であることが好ましい。
【0153】
生分解性ポリマーは、人間にとって有害でないすべてのポリマーを指す。というのは、生分解性ポリマーは、体内に投与されると、ゆっくりと分解および排出され得るためである。生分解性ポリマーは、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、およびポリアルキルカーボネート、ならびに、1種以上のポリマーとポリエチレングリコール(PEG)との共重合体からなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、4、5、6種、またはそれ以上)を含んでよい。上記1種以上のポリマーは、共重合体または単純な混合物の形態であってよい。
【0154】
たとえば、生分解性ポリマーは、ラクチド:グリコリド比が1:1である、RG502H(IV=0.16~0.24dL/g)、RG503H(IV=0.32~0.44dL/g)、およびRG504H(IV=0.45~0.60dL/g)、ラクチド:グリコリド比が75:25であるRG752H(IV=0.14~0.22dL/g)といった、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、R202H(IV=0.16~0.24dL/g)およびR203H(IV=0.25~0.35dL/g)といったポリラクチド(PLA)(いずれも、提供元はEvnik、ドイツ)、ラクチド:グリコリド比が1:1である、5050DL 2A(IV=0.15~0.25dL/g)、5050DL 3A(IV=0.25~0.43dL/g)、および5050DL 4A(IV=0.38~0.48dL/g)といったポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(Evonik(Parsippany、NJ、米国)提供の共重合体)などからなる群より選択される1種以上であってよいが、同等のポリマーが、任意の適切な供給元から提供、入手されてもよい。
【0155】
さらなる実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリマー-糖複合体であってよい。このポリマー-糖複合体は、糖と、(1)ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、およびポリアルキルカーボネートからなる群より選択されるポリマー、(2)上記ポリマー群の中の少なくとも2種からなる共重合体、または(3)ポリエチレングリコール(PEG)と上記ポリマー群の中の1種との共重合体とが、カップリングしたものである。
【0156】
本開示の他の実施形態において、ポリマー-糖複合体は、糖の水酸基がポリマーで置換された複合体を指してよい。糖は、単位糖1~8個を有する単糖および多糖(各単位糖は水酸基3~6個を有する)と、水酸基3~6個を有し分子量が20,000以下である直鎖の糖アルコールとを含んでよい。この糖アルコールは、マンニトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、リビトール、およびキシリトールを含んでよい。ポリマーと糖とは、糖の3つ以上の水酸基においてカップリングしている。
【0157】
上記実施形態に係るポリマー-糖複合体は、糖とカップリングしている当該ポリマーのin vivo特性と類似するin vivo特性を有し、かつ、使用するポリマーの種類に応じて種々の分解速度を有し、かつ、体内で無害なポリマーおよび糖に分解されるため、生分解性ポリマーとして適切であってよい。一実施形態において、ポリマー-糖複合体は、PLA-グルコース複合体、PGA-グルコース複合体、またはPLGA-グルコース複合体であってよく、このPLGA-グルコース複合体は、以下の構造を有するものであってよい。
【0158】
【0159】
本開示に係る制御放出微小球において、その表面に形成される被覆層は、エキセンジンまたはGLP-1または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の初期バーストを効果的に制御できるため、過度の初期バーストに起因する副作用を防止する。生分解性ポリマーは、粘度制限なしに使用してよい。
【0160】
本開示に係る制御放出組成物/調製物において、生分解性ポリマーは、有効成分(エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体)を保護するマトリックスとしての役割を果たす。そのため、ポリマーの粘度が十分に低くないと、有効成分を効果的に保護できず、その結果、初期バーストが増大する。ポリマーの粘度が高過ぎると、放出される有効成分の総量が減少し、その結果、その生物学的利用能が減少する。本開示においては、生分解性ポリマーだけでなく、組成物中に含まれる被覆材料もまた、薬剤放出を制御する役割を果たしており、そのため、比較的低粘度の生分解性ポリマーを使用できる。したがって、薬剤の初期バーストを効果的に制御し、かつ、生物学的利用能を改善するために、生分解性ポリマーの固有粘度(IV)は、約0.1~約0.6dL/g(たとえば、約0.15~約0.31dL/gまたは約0.16~約0.24dL/g)であってよい。この固有粘度の測定は、生分解性ポリマーを濃度1%(W/V)でクロロホルム中に溶解したものについて、ウベローデ粘度計を用い、25℃±0.1℃において実施する。
【0161】
本開示に係る組成物、調製物、または微小球において、生分解性ポリマーは、放出中における有効成分の保護と放出速度の制御とを行なうマトリックスとしての役割を果たし、組成物または微小球中におけるその含有量は、有効成分(エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体)と、生分解性ポリマーと、被覆材料とを含む、組成物/調製物または微小球100重量部に基づいて、約85~約99.89重量部(たとえば、約91~約99重量部)であってよい。
【0162】
被覆材料は、過度の初期バーストを防止して、有効成分の生物学的利用能を増大させるために使用し、本開示に係る微小球において、被覆材料は、微小球の表面上に形成された被覆層の形態であってよい。被覆材料は、塩基性アミノ酸、ポリペプチド、および有機窒素化合物から選択される1種以上(たとえば、1、2、または3種)であってよい。この塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、およびこれらの誘導体を含んでよい。ポリペプチドは、アルギニン、リシン、およびヒスチジンから選択される1種以上(たとえば、1、2、または3種)を含むアミノ酸を2~10個(たとえば、アミノ酸を2~5個)を含んでよい。ポリペプチドは、酸性アミノ酸よりも塩基性アミノ酸を多く含んでよく、したがって、塩基性を呈してよい。たとえば、ポリペプチドは、L-Ala-L-His-L-Lys、L-Arg-L-Phe、Gly-L-His、Gly-L-His-Gly、Gly-L-His-L-Lys、L-His-Gly、L-His-Leu、L-Lys-L-Tyr-L-Lys、L-His-L-Val、L-Lys-L-Lys、L-Lys-L-Lys-L-Lys、およびL-Lys-L-Thr-L-Thr-L-Lys-L-Serなどであってよい。さらに、上記有機窒素化合物は、クレアチン、クレアチニン、および尿素などであってよい。
【0163】
本開示に係る組成物中に含まれる、または微小球を被覆する、被覆材料の含有量は、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体と、生分解性ポリマーと、被覆材料とを含む、組成物または微小球100重量部に基づいて、約0.01~約5重量部(たとえば、約0.015~約3重量部、約0.01~約4、約0.01~約3、約0.01~約2、約0.01~約4、約0.01~約2、約0.015~約5、約0.015~約4、約0.015~約2、約0.05~約5、約0.05~約4、約0.05~約3、約0.05~約2、約0.1~約5、約0.1~約4、約0.1~約3、約0.1~約2、約0.5~約5、約0.05~約4、約0.05~約3、約0.05~約2、約1~約5、約1~約4、約1~約3、約1.5~約5、約1.5~約4、約1.5~約3、約2~約5、約2~約4、約3~約5約3~約4、または約4~約5)であってよい。被覆材料の含有量が上記範囲より少ない場合には、薬剤放出を効果的に制御できず、また、被覆材料の含有量が上記範囲を超えて多い場合には、初期バースト制御効果のさらなる増大は得られない。
【0164】
本開示に係る制御放出微小球は、各々、被覆材料で被覆された滑らかな表面を有してよく、かつ、平均サイズが約1~約50μm(たとえば、約5~約30μm、約1~約40μm、約1~約30μm、約1~約20μm、約1~約10μm、約5~約50μm、約5~約40μm、約5~約30μm、約5~約20μm、約5~約10μm、約10~約50μm、約10~約40μm、約10~約30μm、約10~約20μm、約20~約50μm、約20~約40μm、約20~約30μm、約30~約50μm、約30~約40μm、または約40~約50μm)であってよい。微小球が滑らかな表面を有することによって、初期バーストが効果的に制御され、優れた生物学的利用能が得られる。
【0165】
従来の形態とは異なり、制御放出微小球、または本開示に係る組成物/調製物から調製される微小球は、被覆材料で被覆されており、これにより、従来の、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体を含有する微小球では達成不可能な、過度の/有害な初期バーストの防止と生物学的利用能の増大とが達成される。特に、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体の過度の/有害な初期バーストは、嘔吐、吐き気、および頭痛など種々の副作用を引き起こすため、初期バースト量を5%以下に低下させることは非常に重要である。制御放出微小球、または本開示に係る組成物(または調製物)から調製される微小球により、最初の24時間の放出量が、5%以下に低下する。エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体を含む制御放出微小球の投与に起因する副作用を低減するために、最初の1時間の初期バースト量は、約5%以下(たとえば、約4%以下、約3%以下、約2%以下、または約1%以下)であってよい。本開示に係る微小球は、その表面上に被覆材料の被覆層を含むため、初期バーストが効果的に制御されることにより過度の/有害な初期バーストに起因する副作用が起こらず、薬剤が持続的かつ十分に放出されることにより優れた生物学的利用能が得られる。
【0166】
本開示の一実施形態において、調製物または微小球は、さらに、保護コロイドおよび/または安定剤などの賦形剤を含んでよい。
【0167】
組成物または微小球は、さらに、ポリビニルアルコール、アルブミン、ポリビニルピロリドン、およびゼラチンなどから選択される1種以上の保護コロイドを含んでよい。保護コロイドには、微小球に含まれる有効成分の過度の/有害な初期バーストを防止する特別な効果はないが、微小球同士の凝集を防止して分散性を改善する役割を果たす。このような役割を考慮すると、保護コロイドの含有量は、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体と、生分解性ポリマーと、および被覆材料とを含む、組成物、調製物、または微小球の重量に基づいて、約0.02%(W/W)~約1.0%(W/W)(たとえば、約0.02%~約0.8%、約0.02%~約0.6%、約0.02%~約0.4%、約0.05%~約1.0%、約0.04%~約0.8%、約0.05%~約0.5%、約0.05%~約0.4%、約0.05%~約0.3%、約0.05%~約0.2%、約0.1%~約1.0%、約0.1%~約0.8%、約0.1%~約0.6%、約0.1%~約0.4%、約0.1%~約0.3%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約1.0%、約0.2%~約0.8%、約0.2%~約0.6%、約0.2%~約0.4%、約0.4%~約1.0%、約0.4%~約0.8%、約0.4%~約0.6%、約0.6%~約1.0%、約0.6%~約0.8%、または約0.8%~約1.0%)であってよい。
【0168】
また、凍結乾燥中の微小球の安定性を改善するために、本開示に係る組成物/調製物または微小球は、さらに、マンニトール、トレハロース、スクロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどから選択される賦形剤を、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体と、生分解性ポリマーと、被覆材料と含む、組成物または微小球の重量に基づいて、約5%(W/W)~約30%(W/W)の量、たとえば、約10%(W/W)~約20%(W/W)の量にて含んでよい。
【0169】
さらに、本開示に係る組成物、調製物、または微小球は、さらに、薬剤調製物中に従来使用される任意の添加剤および賦形剤を含んでよく、その種類および含有量は、関連技術における当業者であれば、容易に決定できる。
【0170】
本開示に係る方法において使用する、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体を含む制御放出微小球は、たとえば、微小球の調製中または調製後に微小球を被覆材料溶液中に懸濁して微小球の表面を被覆する方法などの、種々の制御放出微小球調製方法によって、調製してよい。微小球を調製する方法は、ダブルエマルション法(W/O/W法)、シングルエマルション法(O/W法)、相分離法、および噴霧乾燥法などにより実施してよい。
【0171】
具体的には、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン類似体を含む制御放出微小球を調製する方法は、有効剤および生分解性ポリマーを混合してW/O型エマルションまたは均質混合物を調製する工程と、このエマルションまたは均質混合物を被覆材料の水溶液中に添加することによって乳化させて、被覆層を形成する工程と、を含んでよい。
【0172】
より具体的に、ダブルエマルション法を用いる場合、この方法は、有効成分の水溶液と、生分解性ポリマーを有機溶媒中に溶解させたものと、を混合して乳化させて、一次エマルション(W/O型)を形成する工程と、このエマルションを被覆材料の水溶液中に懸濁してW/O/W型エマルションを形成する工程と、このW/O/W型エマルションを加熱することによって、溶媒を除去し、かつ、得られた微小球を硬化させる工程と、硬化させた微小球を回収して洗浄する工程と、得られた微小球を凍結乾燥させる工程とを含んでよい。有機溶媒は、生分解性ポリマーを溶解した後で水溶液と混合されることでエマルションを形成できる任意の有機溶媒であってよく、たとえば、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、およびメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上(たとえば、塩化メチレン)であってよい。この場合、被覆材料は、第2の水相(W/O/Wエマルションの外側の水相)中に含まれ、そのため、有機溶媒の除去後に、少なくとも1種の有効成分(たとえば、エキセンジン、GLP-1、または治療的に有効であるGLP-1類似体もしくはエキセンジン-4類似体、またはそれらの組み合わせ)と生分解性ポリマーとを含む微小球の外側に、被覆層が形成される。
【0173】
代替的に、シングルエマルション法を用いる場合、この方法は、有効成分と生分解性ポリマーとを有機溶媒中に溶解して均質混合物を形成する工程と、得られた混合物に、被覆材料を含有する水溶液を添加して、エマルションを形成する工程と、エマルションを加熱することによって、溶媒を除去し、かつ、得られた微小球を硬化させる工程と、硬化させた微小球を回収して洗浄する工程と、得られた微小球を凍結乾燥させる工程とを含んでよい。有機溶媒は、有効成分と生分解性ポリマーとを完全に混合して均質混合物を形成でき、かつ、水溶液と混合してエマルションを形成できる、任意の有機溶媒であってよい。たとえば、有機溶媒は、炭素原子1~5個を有するアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上と、クロロホルム、酢酸エチル、メチルエチルケトン、および塩化メチレンからなる群より選択される1種以上とを混合した混合溶媒、ならびに、たとえば、メタノールと塩化メチレンとを混合した混合溶媒であってよい。この場合、生分解性ポリマーと有効成分との均質混合物を乳化し、被覆材料を水溶液中に添加して有機溶媒を除去することにより、最終的に得られる微小球の表面に被覆層が形成される。
【0174】
制御放出微小球を調製する方法は、有効成分と生分解性ポリマーとを混合してエマルションまたは均質混合物を形成する工程と、得られたエマルションまたは均質混合物を固化して一次微小球を調製する工程と、得られた一次微小球を被覆材料の水溶液中に懸濁して、各微小球上に被覆層を形成する工程とを含んでよい。
【0175】
固化方法は限定されず、たとえば相分離法または噴霧乾燥法などの、関連技術において従来使用される任意の固化方法であってよい。より具体的には、固化工程において相分離法を用いる場合、この方法は、有効成分の水溶液と生分解性ポリマーを有機溶媒中に溶解させたものとを混合してエマルションを形成する、または有効成分と生分解性ポリマーとを混合溶媒中に混合して均質混合物溶液を形成する工程と、得られたエマルションまたは溶液にシリコン油などの油を添加して一次微小球を調製する工程と、たとえばエタノールとヘプタンとの混合溶媒などの、炭素原子1~5個を有するアルコールと炭素原子1~12個を有するアルカンとの混合溶媒のような、生分解性ポリマーにとっての非溶媒を添加することによって、微小球から有機溶媒を除去し、かつ、微小球を硬化させる工程と、得られた微小球を被覆材料の水溶液中に懸濁して、各微小球上に被覆層を形成する工程と、被覆層が形成された微小球を、回収、洗浄、および凍結乾燥させる工程とを含んでよい。
【0176】
有機溶媒は、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、およびメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、または4種)(たとえば、塩化メチレン)であってよい。混合溶媒は、炭素原子1~5個を有する少なくとも1種のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、4、5種、またはそれ以上)と、クロロホルム、酢酸エチル、メチルエチルケトン、および塩化メチレンからなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、または4種)とを混合したもの(たとえば、メタノールと塩化メチレンとの混合溶媒)であってよい。
【0177】
代替的に、噴霧乾燥法を用いる場合、この方法は、有効成分の水溶液と生分解性ポリマーを有機溶媒中に溶解したものとを混合してエマルションを形成する、または有効成分と生分解性ポリマーとを単独溶媒もしくは混合溶媒中に混合して均質混合物溶液を形成する工程と、得られたエマルションまたは溶液を噴霧乾燥させて一次微小球を調製する工程と、得られた一次微小球を被覆材料の水溶液中に懸濁して、各微小球上に被覆層を形成する工程と、被覆層が形成された微小球を洗浄および凍結乾燥させる工程とを含んでよい。
【0178】
有機溶媒は、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、およびメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、または4種)(たとえば、塩化メチレン)であってよい。単独溶媒は、氷酢酸およびギ酸からなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、4、または5種)であってよく、混合溶媒は、炭素原子1~5個を有する少なくとも1種のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上(たとえば、1、2、3、4種、またはそれ以上)と、クロロホルム、酢酸エチル、メチルエチルケトン、および塩化メチレンからなる群より選択される1種以上とを混合したもの(たとえば、メタノールと塩化メチレンとの混合溶媒)であってよい。
【0179】
上記方法は、さらに、従来の任意の方法によって保護コロイド材料を添加する工程を含んでよく、たとえば、微小球を被覆材料で被覆する工程において保護コロイド材料を添加してよい。
【0180】
水相または水溶液中に溶解させる被覆材料の濃度は、約0.01M~約1M(たとえば、約0.1M~約0.5M、約0.01M~約0.8M、約、約0.01M~約0.6M、約0.01M~約0.4M、約0.1~約1M、約0.1M~約0.8M、約、約0.1M~約0.6M、約0.1M~約0.4M、約0.2~約1M、約0.2M~約0.8M、約、約0.2M~約0.6M、約0.2M~約0.4M、約0.4~約1M、約0.4M~約0.8M、約、約0.4M~約0.6M、約0.6~約1M、約0.6M~約0.8M約、または約0.8M~約1M)であってよい。被覆材料の濃度が上記範囲より低いと、微小球の表面を被覆材料で完全に被覆することができず、被覆材料の濃度が上記範囲より高いと、被覆材料溶液が過飽和となるため、初期バーストを制御する効果を改善することができない。そのため、被覆材料の濃度は、上記範囲内であってよい。
【0181】
投与
本開示に係る制御放出組成物は、静脈内経路、皮下経路、筋肉内経路、および腹腔内経路などの、経口または非経口経路(たとえば、非経口経路)によって投与されてよい。したがって、本開示の一実施形態において、制御放出組成物または調製物は、分散溶液の形態で、注射溶液として投与されてよい。組成物の有効量は、対象の年齢、疾患の種類および重篤度、ならびに対象の状態に応じて適切に調整されてよく、組成物中の有効成分の量は、約0.01~約100μg/kg/日(たとえば、約0.1~約10μg/kg/日)であってよく、この量が、1回で、または複数回に分けて、投与されてよい。厳密な必要量は、ポリペプチドの種類に応じて、かつ、個々の対象に応じて、変動してよく、対象の種、年齢、全身状態、処置する疾患の重症度、使用する特定のポリペプチド、およびその投与様式などに依存して変動してよい。したがって、厳密な「インスリン分泌量」、または神経疾患もしくは損傷の処置に有用な量を特定することは不可能である。しかしながら、適切な量が、当技術分野の当業者により、常套的な実験法のみを用いることによって決定されてよい。
【0182】
当業者であれば、処置の有効性をどのように監視するか、および、その結果に応じて処置をどのように調整するかを認識できるであろう。たとえば、血中グルコースレベルを監視し、正常血糖であれば、処置の効果が最適に発揮されていると考えることができる。血中グルコースレベルが好ましいレベルよりも高い場合には、次いで、ポリペプチドの投与量を増やすべきであり、血中グルコースレベルが好ましいレベルよりも低い場合には、次いで、ポリペプチドの投与量を減らすべきである。
【0183】
化合物は、経口的、静脈内、筋肉内、腹腔内、局部的、経皮的、局所的、全身的、室内、脳内、硬膜下、またはくも膜下腔内に投与されてよい。当業者には、投与様式、薬理学的担体、または他のパラメータを変更してインスリン分泌効果を最適化するということが周知であろう。投与される有効化合物の量は、言うまでもなく、処置対象、対象の体重、投与の手法、および処方担当医師の判断に依存するであろう。
【0184】
意図される投与様式に応じて、医薬組成物の剤形は、たとえば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、またはゲル剤などの、固体、半固体、または液体であってよく、たとえば、正確な用量を単回投与するのに好適な単位剤形であってよい。上述されるように、組成物は、選択した薬剤の有効量と、薬学的に許容される担体との組み合わせを含み、さらに、組成物は、他の薬効剤、医薬剤、担体、佐剤、希釈剤などを含んでよい。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,latest edition,by E.W.Martin Mack Pub.Co.,Easton,PAを参照のこと。この文献には、ポリペプチドの調製物の調製と併せて用いてよい、典型的な担体と、従来の医薬組成物調製法とが開示されており、引用により本明細書に援用する。固体の組成物に関して、従来の非毒性の固形担体には、たとえば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウムなどが含まれる。液状の薬学的に投与可能な組成物は、たとえば、本明細書中に記載されるような有効化合物と任意の医薬佐剤とを、たとえば、水、生理食塩水水性デキストロース、グリセリン、およびエタノールなどの、賦形剤中に、溶解、分散などして、溶液または懸濁液を得ることによって、調製できる。投与する医薬組成物が、さらに、たとえば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム(triethanolamine sodium acetate)、オレイン酸トリエタノールアミンなどの、湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝剤といった非毒性の補助物質を、微量に含むことが望ましい場合には、これを含んでもよい。このような剤形を実際に調製する方法は、当業者にとっては、周知または明らかであろう。たとえば、上に参照した、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0185】
経口投与用としては、微細な散剤または顆粒剤に希釈剤、分散剤、および/または界面活性剤を含有させてもよく、微細な散剤または顆粒剤を、水もしくはシロップ中に存在させた形態で、または、乾燥させたものをカプセル剤もしくはサッシェ剤とした形態で、または、非水性溶液の形態で、または、懸濁剤を含有してよい非水性懸濁液の形態で、または、バインダおよび滑剤を含有してよい錠剤の形態で、または、水もしくはシロップ中に懸濁した懸濁液の形態であってよい。着香剤、保護剤、懸濁剤、増粘剤、もしくは乳化剤を含有することが望ましい場合、またはそれを含有する必要がある場合には、これらを含有してよい。特定の実施形態において、経口投与形態は、被覆されていてよい、錠剤または顆粒剤である。親の投与を実施する場合には、一般的に、注射を特徴とする投与を実施する。
【0186】
注射剤は、溶液もしくは懸濁液として、または、注射実施前に液体中に溶解もしくは懸濁するのに好適な固体形態として、またはエマルションとして、従来の形態で調製してよい。近年改変された、親の投与のための方法では、遅放または持続放出系を用いることにより、用量が一定レベルに維持される。たとえば、米国特許第3,710,795号を参照のこと(この特許を引用により本明細書に援用する)。
【0187】
局部投与用としては、皮膚表面に有効化合物を送達できるものであれば、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、またはゲル剤などを使用してよい。
【0188】
実施例
以下の実施例は、本明細書中で主張する化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法をどのように形成および評価するかを、当技術分野において通常の知識を有する者に対して、完全な形で開示し、説明する目的で提示するものであり、本開示の例を示すことを純粋に意図したものであって、本発明者らが認識する開示範囲の制限を意図したものではない。数値(たとえば、量、温度など)の正確さを期すことに努力を費やしたが、いくらかの誤差やずれが考慮されるべきである。
【0189】
統計:各値は、±S.E.Mを意味するものとして表す。コルモゴロフ・スミルノフ検定により、分布の正規性を求めた。結果部分に示すような統計的分析を、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定、フィッシャーの正確確率検定、または一方向および二方向ANOVAによって実施した。正規性の仮定から外れた場合には、順位に基づくANOVAを実施した。多重対比較はいずれも、事後的ニューマン・クールズ検定またはDunn検定によって実施した、統計的有意差は、p<0.05と定義した。
【0190】
実施例1. エキセンジン-4の薬物動態学および血漿中への持続放出。PT302は、エキセンジン-4の持続放出調製物であり、ポリマー(98%)とエキセンジン-4(2%)との混合物を含有する。エキセンジン-4の持続放出調製物(PT302)の注射後に、エキセナチドの血漿レベルを分析した。特に、PT302単回投与の薬物動態学について、成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラット6匹を用いて調べた。PT302を新たに希釈剤中に溶解し、2mg/kgを皮下投与した。注射の0時間、0.5時間、および1時間後、ならびに、注射後1、3、5、7、9、11、14、18、21、および26日目に、採血を行なった。エキセンジン-4の血漿レベルを、Peptron Exenatide EIA Kit(Peptron、Daejeon、韓国)を用いて定量した。そのデータを
図1A中に示す。図中、Cmaxは1.85ng/ml、Tmaxは12.5日、AUCは18.55ng
*d/mlである(値は、動物全6匹の個々のデータから計算した)。
図1A中に示すように、持続放出調製物PT302を単回皮下注射することによって、1~2週間の投与計画にて許容され得る長期的なエキセンジン-4血漿レベルが達成される。
【0191】
種々の用量(2.4mg/kg、4.8mg/kg、および9.6mg/kg)におけるPT302の単回投与の薬物動態学を、各群につき成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラット6匹を用いて調べた。PT302を新たに希釈剤中に溶解し、上述するとおりに皮下投与した。注射の0時間、0.5時間、および1時間後、ならびに、注射後1、3、7、10、14、17、21、24、28、および31日目に、採血を行なった。エキセンジン-4の血漿レベルを、上述するとおりに定量した。そのデータを
図1B中に示す。図中、2.4mg/kg投与でのCmaxは2.23ng/ml、Tmaxは14.83日、AUCは21.13ng
*d/mlであり、4.8mg/kg投与でのCmaxは5.21ng/ml、Tmaxは16.17日、AUCは49.46ng
*d/mlであり、9.6mg/kg投与でのCmaxは9.42ng/ml、Tmaxは17.17日、AUCは87.14ng
*d/mlである。
図1B中に示すように、持続放出調製物PT302を単回皮下注射することによって、投与したPT302の用量レベルに直接関連して、長期的なエキセンジン-4血漿レベルが達成される。
【0192】
PT304は、エキセンジン-4の持続放出調製物であり、ポリマー(96%)とエキセンジン-4(4%)との混合物を含有する。成体(9週齢)雄Sprague-Dawleyラット6匹に、エキセンジン-4の持続放出調製物(PT304)を注射した後、エキセナチドの血漿レベルを分析した。PT304を新たに希釈剤中に溶解し、4mg/kgを皮下投与した。注射の1時間および3時間後、ならびに、注射後1、4、7、11、14、18、21、25、28、32、35、39、および42日目に、採血を行なった。エキセンジン-4の血漿レベルを、Peptron Exenatide EIA Kitを用いて定量した。そのデータを
図2中に示す。図中、Cmaxは3.82ng/ml、Tmaxは14.17日、AUCは48.34ng
*d/mlである(値は、動物全6匹の個々のデータから計算した)。
図2中に示すように、持続放出調製物PT304を単回皮下注射することによって、2~4週間の投与計画にて許容され得る長期的なエキセンジン-4血漿レベルが達成される。
【0193】
PT302の薬物動態学を、10週間にわたって、各群につき成体(9週齢)Sprague-Dawleyラット10匹を用いて調べた。PT302を週1回2mg/kgずつ、またはPT304を隔週で4mg/kgずつの用量で、ラットに皮下注射した。PT302およびPT304は上述するとおりに調製し、1回目の注射の1時間および3時間後、ならびに、1回目の注射後1、3、5、7、10、14、21、28、35、42、49、56、63、70、77、84、および91日目に、採血を行なった。エキセンジン-4の血清レベルを、上述するとおりに定量し、
図3中に示す。週1回注射したラットは、Cmaxが5.27ng/ml、Tmaxが51.60日、AUCが236.42ng
*d/mLであり、隔週で注射したラットは、Cmaxが5.08ng/ml、Tmaxが47.89日、AUCが211.51ng
*d/mLであった。
【0194】
実施例2. 6-OHDAパーキンソン病ラットモデルにおける、Meth介在性旋回行動が、PT302での前処置により低減される。
【0195】
動物の処置を、ビヒクル(ラット9匹)、PT302を0.4mg/kg(低用量、ラット9匹)、またはPT302を2mg/kg(高用量、ラット10匹)にて、
図4A中に記載される日(すなわち、6-OHDAにより内側前脳束に一側性傷害を与える16日前および2日前、ならびに、傷害後12、26、および40日目)に実施した。
図4Aおよび
図4B中に示すように、傷害後20、30、および45日目に、ラットのmeth介在性旋回行動を調べ、47日目に安楽死させた。傷害は以下のように与えた。ラットを抱水クロラール(400mg/kg、腹腔内)により麻酔し、脳定位固定装置内に載置した。脳定位固定アームに保持したハミルトンマイクロシリンジを用いて、6-OHDA(2.76μg/μl×5μl、0.2mg/mlアスコルビン酸含有0.9%NaCl中)を、内側前脳束内(-4.4mm AP、ブレグマより1.2mm ML、頭蓋下に8.4mm)に、4分間かけて、片側注射した。脳定位固定装置に取り付けたマイクロマニピュレータを用いて、マイクロシリンジの位置を下げ、脳内において望ましい標的部位にくるようにした。注射速度(0.5μl/分)の制御には、シリンジポンプ(Micro 4、WPI、Sarasota、FL)を用いた。注射5分後に、注射針を抜いた。体液漏れを防ぐため、頭蓋穿孔にボーンワックス片を塗布した。傷を、縫合、またはクリップで留めた。サーミスタープローブにより体温を監視し、ヒーティングパッドを用いて、麻酔中の体温を37℃に維持した。麻酔から回復後、温度制御インキュベータを用いて、体温を37℃にてさらに3時間維持した。
【0196】
meth誘発性旋回挙動[Liu DM,Lin SZ,Wang SD,Wu MI,Wang Y.Xenografting human T2 sympathetic ganglion from hyperhidrotic patients partially restores catecholaminergic functions in hemi-Parkinsonian athymic rats.Cell Transplant 1999;8:563-91;and Luo Y,Hoffer BJ,Wang Y.Rotation,Drug-induced.In:Kompoliti K,Verhagen Metman L,editors.Encyclopedia of Movement Disorders.Oxford:Academic Press,2010.p 49-51]を、8-チャネルロトメータシステム(RotoMax、AccuScan Instruments社)を用いて評価した。以前に記載されたとおりに[Yin LH,Shen H,Diaz-Ruiz O,Backman CM,Bae E,Yu SJ,Wang Y.Early post-treatment with 9-cis retinoic acid reduces neurodegeneration of dopaminergic neurons in a rat model of Parkinson’s disease.BMC Neurosci 2012;13:120]、動物に、メタンフェタミン(2.5mg/kg)を、6-OHDA傷害の6日後に投与した。メタンフェタミンは、脳内におけるドーパミン放出を誘発する間接型作動薬である。黒質線条体ドーパミン作動系に6-OHDAを片側注射したラットを、PDモデルとして使用する。間接型ドーパミン作動薬(たとえば、メタンフェタミン)を投与した動物は投与後に同側旋回行動を示し、直接型ドーパミン作動薬(たとえば、アポモルフィン)を投与した動物は投与後に対側旋回行動を示す。こうした挙動は、線条体においてドーパミン作動性マーカーの発現が片側変化することに関連している。
【0197】
図4B中に示すように、PT302処置により、高用量および低用量の両方で、PT302処置群の旋回行動が、ビヒクル比較で有意に低減された(p=0.018、F2,87=4.309、低用量群についての二方向ANOVA)。事後的ニューマン・クールズ検定より、高用量のPT302がmeth介在性旋回行動を有意に減弱したことが示された(p=0.037)。したがって、ラット(特徴付けが十分になされたPD動物モデル)の内側前脳束の一側性6-OHDA傷害が挙動に及ぼす影響が、エキセンジン-4をPT302として持続的かつ安定状態で投与することによって、有意に抑制されており、神経保護活性が得られた。
【0198】
エキセンジン-4の血漿レベルを、上述するとおりに定量した。
図4C中に示すように、エキセンジン-4血漿レベルの平均は、高用量ラットにおいて30.845pg/ml(n=10)、低用量ラットにおいて8,990pg/ml(n=9)であった。しかしながら、外れ値のラットおよび測定値(ラット1、10、および12)を除外すると、エキセンジン-4血漿レベルの平均値は、高用量ラットにおいて5,596pg/ml(n=8)、低用量ラットにおいて574pg/ml(n=8)であった。
【0199】
実施例3. 6-OHDA傷害ラットにおいて、meth誘発性旋回挙動が、PT302での後処置により低減された。実施例2中に記載の、6-OHDAによるPD齧歯類モデルの内側前脳束一側性傷害と、高効力の薬剤による後処置とを、
図5Aのスキームに示すとおりに、組み合わせることができる。この場合には、齧歯類に、6-OHDAにより一側性傷害を与え(0日目)、その6日後に処置を開始する。このPD齧歯類モデルは、処置前に既にドーパミン作動性細胞死が開始かつ進行しているため、処置がより困難である。ラット19匹に対し、上述するとおりに傷害を与えた。上述するとおりに、meth誘発性旋回行動について調べ、旋回回数が300回/時間を超えた動物を2群に分けることによって、処置開始前のビヒクル群とPT302群との旋回挙動数が同数となるようにした。
図5A中に概要を示すように、meth誘発性旋回行動について、傷害の6、20、30、および45日後に調べた。動物(成体雄Sprague-Dawleyラット、入手時月齢2か月)を、6-OHDA傷害後6、20、および34日目に、ビヒクル(皮下、n=11)またはPT302(100mg/kg、エキセンジン-4を2.0mg/kg含有、皮下、n=8)により処置した。PT302の調製は、上述するとおりに実施した。傷害後47日目に、動物を安楽死させた。血液および脳の試料を採取し、血漿を分離して保存した(-80℃)。採取血漿中のエキセンジン-4を測定した。
【0200】
図5B中に示すように、一側性6-OHDA傷害ラットのmeth誘発性旋回挙動が、PT302により、ビヒクルコントロールと比較して、有意に低減された(p=0.032、二方向ANOVA)。
【0201】
免疫組織化学的検査により、THを調べた。具体的には、脳全体から、厚さ25μmの連続するクライオスタット切片をカットした。切片6個中1個の割合で、TH検査用に染色した。染色のばらつきを制御する目的で、各バッチに、すべての実験群の検体を含め、1つのネットウェルトレイ中で、同じ条件下において一緒に反応させた。切片を0.1Mリン酸緩衝液(PB)中ですすぎ、4%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.3% Triton x-100の0.1M PB溶液を用いてブロッキングした。次いで、一次抗体(マウス抗THモノクローナル抗体、4%BSAおよび0.3%Triton x-100の0.1M PB溶液中に希釈、濃度1:100;Chemicon、Temecula、CA)中において、17~19時間、4℃において、切片をインキュベートした。次いで、切片を0.1M PB中ですすぎ、二次抗体中において1時間インキュベートし、続いて、アビジン-ビオチン-西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体と共に1時間インキュベートした。切片をスライドガラス上に載せ、カバースリップをかぶせた。コントロールの切片は、一次抗体なしでインキュベートした。
【0202】
線条におけるTH免疫反応性をImageJによって測定し、前交連の見える脳切片を3つ選択して、それらの平均値を求めた。中脳全体にわたって(ブレグマから-4.2mm~-6.0mm)、360μm毎に、黒質におけるTH免疫反応性を測定した。動物1匹につき、脳切片合わせて5つを使用した。黒質の体積を、カヴァリエリの方法(Cavalieri’s method)によって分析した。
【0203】
線条における6-OHDA介在性ドーパミン作動性神経変性が、PT302により低減された。ビヒクル投与ラット3匹(#866、883、886)およびPT302投与ラット3匹(#881、875、882)について、代表的な線条体TH免疫染色結果と血漿エキセンジン-4レベルとを、
図5C中に示す(同じ動物のエキセンジン-4の血漿濃度を定量したものを、
図5C中に記載する)。
図5D中に示すように、ビヒクル投与動物における線条体のTH免疫反応性が、6-OHDA注射によって有意に低減され、一方、傷害線条におけるTH免疫反応性が、PT302によって有意に増加した(
*p<0.001、二方向ANOVA)。L=傷害側、non-L-非傷害側、veh=ビヒクル投与動物、PT=PT302。
【0204】
黒質におけるTH免疫反応性をImageJによって測定し、前交連の見える脳切片を3つ選択して、それらの平均値を求めた。ビヒクル投与動物(ラット#866、#883、#886)またはPT302投与動物(ラット#881、#875、#882)について、代表的なTH免疫染色結果を
図5E中に示す(同じ動物のエキセンジン-4の血漿レベルも記載する)。ブレグマから-4.2mm~-6mmについて、360um毎に、黒質におけるTH免疫反応性を定量したものを、
図5F中に示す。ビヒクル投与動物における黒質のTH免疫反応性が、6-OHDA注射によって有意に低減され、一方、傷害黒質におけるTH免疫反応性の喪失が、PT302によって有意に抑制された(
*p<0.001、二方向ANOVA)。L=傷害側、non-L-非傷害側、veh=ビヒクル投与動物、PT=PT302
PT302後処置により、傷害黒質のTH+ニューロンが保護される。脳の切片を作製し、上述するとおりに免疫組織化学的検査を実施した。脳の非傷害側に、TH+ニューロンが見られた(
図5Gおよび
図5H)。脳の傷害側の黒質には、TH+ニューロンも繊維もほとんど見られなかった(ラット#886、
図5I)。PT302処置により、TH+ニューロンの一部が保護された(
図5J、
図5K、および
図5L)。
【0205】
THニューロンにおけるエキセンジン-4介在性保護と、血漿エキセンジン4レベルとが関連する。
図5Mは、同じ動物における標準化線条体TH(すなわち、傷害側/非傷害側)免疫反応性と血漿エキセンジン4レベルとの間に見られた有意な相関関係を示す(p=0.002、R=0.663)。
図5Lは、血漿エキセンジン4レベルと、傷害側の黒質におけるTH免疫反応性との間に観察された有意な相関関係を示す(p<0.001、R=0.842)。
【0206】
実施例4. 6-OHDA PDラットモデルにおける、Meth介在性旋回行動が、PT302での前処置により低減される。
図6A中に示すように、上述するとおり、6-OHDA傷害の7日前および7日後に、Ex-4(5μg/kg、BID)またはPT302(0.4mg/kg)により、動物の皮下に処置を実施した。この実験において使用したエキセンジン-4用量である5μg/kg BIDは、人間に対して使用できる用量よりも高く(下記表1を参照)、この用量よりも低い約1μg/kg BIDは、人間に対する用量と、この実験で使用したPT302用量とのいずれとも同等である。Ex-4(5μg/kg、BID)処置およびPT302(0.4mg/kg)処置のいずれによっても、6-OHDA傷害ラットにおける旋回行動が有意に低減された(Ex-4群についてp=0.005、PT302群についてp=0.002)(
図6B)。
【0207】
エキセンジン-4またはPT302のいずれかでの前処置により、黒質における6-OHDA介在性ドーパミン作動性神経変性に対する保護が得られた。ビヒクル、Ex-4(5μg/kg、BID)、またはPT302(0.4mg/kg)を投与した、偽動物および6-OHDA傷害動物についての、代表的なTH免疫反応性結果を、
図6C中に示す。傷害側のTH免疫反応性が、6-OHDA注射によって有意に低減された(
図6C中、ipsiで示す)。黒質における代表的なTH免疫反応性を定量したものを、
図6D中に示す。6-OHDA傷害側のTH免疫反応性の喪失が、PT302およびEx-4での処置によって有意に低減された(評価は、TH免疫反応性を、コントロール非傷害側(contra)の免疫反応性に対する、同じ動物の傷害側(ipsi)の免疫反応性のパーセント比率で表すことによって実施した)。
【0208】
実施例5. 6-OHDAパーキンソン病ラットモデルにおける、Meth介在性旋回行動が、PT302での後処置により低減される。上述するとおり、6-OHDA傷害後に、Ex-4(1μg/kg、2日目からBID)またはPT302(0.4mg/kg、2日目に1回)により動物を処置し、傷害後9日目に、meth介在性旋回挙動について調べた(
図7A)。
図7B中に示すように、一側性6-OHDA傷害ラットにおける旋回挙動が、PT302によって有意に低減された(p=0.0075)。これとは対照的に、エキセンジン-4では、一側性6-OHDA傷害ラットにおける旋回挙動が低減されなかった。したがって、6-OHDAラットPDモデルにおいて、エキセンジン-4を、人間に対する用量と同等(ラットに対して1μg/kg、BID)で使用しても、meth誘発性旋回行動の抑制効果はないが、PT302を、人間に対する用量に相当する用量で使用すると、効果があることが立証された。エキセンジン-4の用量を、人間に使用可能な用量より高い用量(5μg/kg、BID、実施例4に示す)と同等にまで増やすと、エキセンジン-4でも、6-OHDA誘発性の異常を抑制できた。これに対し、PT302の、臨床用量相当用量と同等の用量は、実施例4および5の両方において、有利な作用を呈している。
【0209】
実施例6. MPTP PDマウスモデルにおける、毒素誘発性挙動欠陥が、PT302での後処置により改善された。上述するとおり、MPTPによるパーキンソン症候群の誘発後に、Ex-4(16.7ug/kg、6日目からBID)またはPT302(0.6mg/kg;6、20、および34日目)により、動物を処置した(
図8A)。具体的には、MPTPを1日1回30mg/kg、5日間、全身投与することにより、パーキンソン症候群を誘発した。たとえば、Filichia E,Hoffer B,Qi X,Luo Y.Inhibition of Drp1 mitochondrial translocation provides neural protection in dopaminergic system in a Parkinson’s disease model induced by MPTP.Sci Rep.2016;6:32656を参照のこと。1回目のMPTP投与の1日後に、Ex-4またはPT302のいずれかによる処置を開始し、これを18日間継続した。選択した用量である、Ex-4(16.7ug/kg、BID、皮下)およびPT302(0.4mg/kg、単回皮下投与)は、処置18日間に送達かつ提供されるEx-4量がそれぞれ601.2ug/kgと600ug/kg未満とであるという点で、同等であった。18日目に、ワイヤグリップ試験によって、全群の動物の運動協調を評価した。ワイヤグリップ試験(四肢グリップ持久力(paw grip endurance;PaGE)法およびグリップ力記録(grip force-recording)試験としても知られる)は、運動力の指標として用いられることが多い。PaGEは、マウスのグリップ強度を評価するために設計されたものであり、グリップ強度により、運動能力の低下が示され得る。本明細書中において、PaGEは、Jessica ALらによる記載にしたがって実施した(Jessica A.L.Hutter-Saunders,Howard E.Gendelman,R.Lee Mosley.Murine Motor and Behavior Functional Evaluations for Acute 1-Methyl-4-Phenyl-1,2,3,6-Tetrahydropyridine(MPTP)Intoxication.J Neuroimmune Pharmacol.2012;7(1):279-288)。簡潔には、各マウスを、従来の齧歯類収容用ケージから出して、ワイヤリッドの上に載せ、リッドを穏やかに振とうすることによってマウスが掴むようにし、リッドを裏返す(180度)。マウスの両後肢が離れるまでの待ち時間を、秒単位で測定した。各マウスにつき試験を3回、任意に最長240秒まで実施し、落下するまで、または両後肢が離れるまでの最長の待ち時間を記録した(Jessica,et al.2012)。
【0210】
図8B中に示すように、ドーパミン作動性細胞毒素MPTPを投与した結果、グリップ試験における待ち時間が有意に短くなった(MPTPの94.5秒に対し、MPTPなしコントロール群の集約は148.3秒、p=0.02)。MPTP処置マウスがワイヤから落下するまでの時間が、PT302によって有意に長くなったが(118.3秒、コントロール群の集約値との統計的差異はない)、エキセンジン-4(1日2回投与、人間によるバイエッタ(Byetta、すなわち即時放出Ex-4)服用に類似する手法にて)では、MPTP処置マウスの毒素誘発性挙動欠陥は抑制されなかった(72.9秒、コントロール群の集約値に対してp+0.01)(
図8B:全群につき、マウス数は7~10匹)。
【0211】
実施例7. 持続放出エキセンジン-4を使用した中枢神経系へのEx-4送達は、脳脊髄液中におけるエキセンジン-4治療有効量の達成に有効である。エキセンジン-4(注射およびミニポンプ)およびエキセンジン-4持続放出調製物(PT302)を、本実験に用いた成体雄Sprague-Dawleyラット(9週齢)に対して、表1中に記載するとおりに投与した。1回目のエキセンジン-4注射投与後14日目に、エキセンジン-4レベル測定のために、血液および脳脊髄液(CSF)を採取した。エキセンジン-4の血漿レベルおよびCSFレベルの定量を、上述するとおりに実施した。表2中に示すとおり、持続放出調製物群およびミニポンプ投与エキセンジン-4群では、血漿およびCSF中にエキセンジン-4が検出されたが、1日2回(BID、即時放出)エキセンジン-4群では、CSF中のエキセンジン-4は検出限界未満であった。この結果とは対照的に、同じエキセンジン-4群の血漿中には、エキセンジン-4が高レベルで検出された。用量3.5~15pM/kg/分のポンプ投与エキセンジン-4群で、CSFレベル/血漿レベルの比率が0.0081(または0.81%)~約0.0412(または4.12%)、平均が0.018(または1.8%)であることが観察された。同様に、PT302を0.46~2.0mg/kg/14日で投与した動物において、CSF/血漿レベル比率が0.0117(または1.17%)~約0.016(または1.6%)であった。このデータから、エキセンジン-4の持続放出によって、さらに高レベルのエキセンジン-4がCNS中に提供されることが示される。
【0212】
【0213】
【0214】
実施例8. 軽度外傷性脳損傷(mTBI)マウスを持続放出エキセナチドで処置することにより、新規物体認識が改善される。以前に記載されたとおり(Tweedie et al.2007)、落錘式衝撃装置を使用して、頭部に損傷を与えた。当該装置は、金属チューブ(長さ90cm、内径1.3cm)と、このチューブの下に配置された、マウス頭部を支えるためのスポンジとからなる。マウスを、イソフルラン吸入により軽く麻酔して、装置の下に置いた。金属製の錘(30グラム)をチューブ頂部から落下させて、マウス頭部の側頭側の、眼の端と耳との間に打ち当てた。損傷直後に、マウスを元のケージに戻して、回復させた。マウスは、この頭部損傷処置に十分耐えることができ、この処置により、損傷側の海馬および大脳皮質にニューロンの減少が広がり、これに伴って、視覚および空間記憶試験において認知障害が生じる(Deselms H,Maggio N,Rubovitch V,Chapman J,Schreiber S,Tweedie D,Kim DS,Greig NH,Pick CG.Novel pharmaceutical treatments for minimal traumatic brain injury and evaluation of animal models and methodologies supporting their development.J Neurosci Methods.2016;272:69-76)。
【0215】
頭部損傷の1時間後に、上述するとおり、持続放出PT302を投与した(0.6mg/kg、皮下)(
図9A)。損傷後7日目に、マウスを新規物体認識パラダイム試験に供した。この試験は、齧歯類における再認記憶の評価に慣例的に使用される試験である。負傷させていない齧歯類は、先天的に、新規物体が近傍にあればそれを探索するという傾向を示す。マウスがこの挙動特性を有しているために、視覚再認記憶機能の評価が可能となっている。おそらく、より重要なことには、この挙動特性を有しているために、この先天的行動に対して種々の刺激が及ぼす影響の評価が可能となっている。この試験では、2つの実験を実施する。第1の実験では、動物に、規定時間(5分間)にわたり、2つの物体を調べさせる。第1の実験の24時間後に実施する第2の実験では、動物に、第1の実験で与えたものと同じ物体と、動物にとって新しい物体との、2つの物体を与える。第2の実験において、マウスに、この2つの物体を5分間探索させる。識別選好指数を計算し、これを用いて、動物の再認記憶を評価する。この指数の計算は、以下のとおり実施する。動物が新規物体近傍にいる時間から、動物が既知物体近傍にいる時間を差し引き、これを、動物が新規物体近傍にいる時間と、既知物体近傍にいる時間との合計で割る(Dix SL,Aggleton JP.Extending the spontaneous preference test of recognition:evidence of object-location and object-context recognition.Behav.Brain Res.1999;99:191-200)。
図9B中に示すように、エキセナチド投与により、mTBIマウス(n=5)における新規物体認識が、未処置mTBIマウス(n=7)と比較して、有意に増加し、これにより、PT302処置マウスではmTBI誘発性の視覚認識異常が抑制されたことが示される。
【0216】
実施例9. 正常ICRマウスにおける血漿エキセンジン-4レベルの検査。正常ICRマウスにおいて、PT302(0.1、0.3、0.6、1.0、および2.0mg/kg)皮下投与の7日後に、エキセンジン-4血漿濃度を測定した。エキセンジン-4の血漿レベルを、上述するとおりに定量した。注射の7日後まで、血漿エキセンジン-4レベルが持続し、用量依存的に累積して約4000pg/mlとなる(
図10A)。
【0217】
実施例10. 正常マウスおよび外傷性脳損傷マウスにおける血漿エキセンジン-4レベルの検査。正常マウスおよびTBIモデルマウスにおいて、PT302(0.6mg/kg)皮下投与の7日後に、エキセンジン-4血漿レベルを測定した。エキセンジン-4の血漿レベルを、上述するとおりに定量した。正常マウスとTBI誘発性マウスとの間に、エキセンジン-4血漿レベルの差異は観察されなかった(
図10B)。
【0218】
実施例11. 持続放出エキセナチドにより、エキセンジン-4血漿レベルが長期間維持される。正常ICRマウスに、PT302の単回皮下注射を、3種の異なる用量で実施した(0.024mg/kg、0.12mg/kg、および0.6mg/kg)。1回目の注射の0時間、0.5時間、および1時間後、ならびに、1、3、7、14、および21日目に、血漿測定用の採血を行なった。エキセンジン-4の血漿濃度を、上述するとおりに定量した。
図10C中に示すように、PT302単回投与により、エキセンジン-4血漿レベルが、20日より長く維持された。
【0219】
実施例12. 外傷性脳損傷の7日後における、新規物体と、迷路の新しいアームとに対する認識が、持続放出エキセナチドによって有意に増大する。上述するとおりに頭部に損傷を与え、速やかにマウスを元のケージに戻して、回復させた。TBI誘発の1時間後に、単回注射により、PT302(0.024mg/kg、0.12mg/kg、および0.6mg/kg)をマウス皮下に投与した。mTBIの7日後に、挙動を評価した(新規物体認識およびY字迷路試験)。Y字迷路パラダイムは、新規環境に対する自発性探索および応答と、空間的作動記憶機能とを評価する目的で、一般的に使用される(Deselms,et al.,2016)。試験装置は、複数の同一の黒色プレキシガラス製アーム(8×30×15cm)でできており、これらアームが、中心から120度の角度で、中心点から延在している。マウスに視覚記憶アンカー(visual memory anchor)を与える目的で、各アームの内部には、アーム毎に異なる空間的手がかりが備えられている。典型的には、2つの実験を2~3分間隔で実施するが、ここでは、これらの実験を5分間隔で実施した。第1の実験では、実施の度に、どのアームから出発するかを無作為に選択する。動物1匹をY字迷路環境の中心点に載せ、第1の実験を実施する5分間の間に、残りの2つのアームのうち1つを無作為に閉鎖し、第2の実験を実施する2分間の間に、3つのアーム全てを開放して、探索させる。第2の実験中にマウスが各アームの中で探索した時間の合計を、記録する。混乱することのないよう、実験と実験の間に、T字迷路を入念に清掃する。以前に探索した既知のアームの中にいた時間に対する、以前に探索していない新規のアームの中にいた時間、すなわち、((新しいアームの中にいた時間)-(既知のアームの中にいた時間))/((新しいアームの中にいた時間)+(既知のアームの中にいた時間))を用いて、動物処置群同士の間に挙動の差異があるかどうかを評価する。
【0220】
ビヒクル処置mTBIマウスは視覚記憶の欠損を呈し、コントロールマウスと比較して、新規物体近傍にいる時間が短かった(p<0.001)(
図11A)。mTBI誘発の1時間後に、PT302単回皮下注射により、用量0.12mg/kg(p<0.05)および0.6mg/kg(p<0.01)で処置したマウスは、未処置mTBIマウスと比較して、新しい物体に対する選好性が高いことが観察された(
図11A)。
【0221】
mTBI投与マウスは著しい空間記憶異常を呈し、偽(コントロール)動物と比較して、Y字迷路の新しいアームの中にいる時間が短かった(p<0.001)(
図11B)。mTBI誘発の1時間後に、PT302単回皮下注射を、用量0.12mg/kgおよび0.6mg/kgで実施することにより、未処置mTBIマウスと比較して、mTBI空間記憶欠損が寛解された(p<0.01)(
図11B)。[F(4,50)=4.83、p=0.002、フィッシャーの最小有意差法、事後的]。
【0222】
全ての群について、高架式十字迷路の開放アームの中にいた時間はほぼ等しく、不安様挙動の点で各群を区別することは不可能であった(
図11C)。重要なことには、これにより、不安様挙動が、先に実施した新規物体認識およびY字迷路パラダイムにおける交絡因子ではなかったということが示された(p>0.05)[F(4,36)=0.28、p=0.89]。
【0223】
実施例13. 外傷性脳損傷の30日後における、新規物体と、迷路の新しいアームとに対する認識が、持続放出エキセナチドによって有意に増大する。上述するとおりに頭部に損傷を与え、速やかにマウスを元のケージに戻して、回復させた。TBI誘発の1時間後に、単回注射により、PT302(0.6mg/kg)をマウス皮下に投与した。mTBIの30日後に、挙動を評価した(新規物体認識およびY字迷路試験)。
【0224】
ビヒクル処置mTBIマウスは視覚記憶の欠損を呈し、コントロールマウスと比較して、新規物体近傍にいる時間が短かった(p<0.001、
図12A)。mTBI誘発の1時間後に、PT302の単回皮下注射により、用量0.12mg/kgまたは0.6mg/kgで処置したマウスは、mTBIマウスと比較して、新しい物体に対する選好性が高いことが観察された(それぞれp<0.01およびp<0.001、
図12A)。
【0225】
mTBI投与マウスは著しい空間記憶異常を呈し、偽/コントロール動物と比較して、迷路の新しいアームの中にいる時間が短かった(p<0.001、
図12B)。mTBI誘発の1時間後に、PT302単回皮下注射を、用量0.6mg/kgで実施することにより、mTBI単独と比較して、mTBI空間記憶欠損が寛解された(p<0.01、
図12B)。
【0226】
全ての群について、迷路の開放アームの中にいた時間はほぼ等しく、不安様挙動の点で各群を区別することは不可能であった(
図12C)。このことから、不安様挙動が、先に実施した新規物体認識およびY字迷路パラダイムにおける因子ではなかったということが示された(p>0.05)。
【0227】
実施例14. マウスの側頭皮質領域および海馬領域における、外傷性脳損傷後のNeuN免疫反応性の低下が、PT302投与により防止された。NeuNは、成熟ニューロンマーカーであり、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少を調べる目的で使用できる。規定された脳領域におけるNeuN細胞を評価するために、マウスを過剰量のケタミン+キシラジン投与により麻酔し、速やかに、生理的緩衝生理食塩水、続いて4%パラホルムアルデヒド(PFA、0.1Mリン酸緩衝液中、pH7.4)により、経心腔的灌流した。脳を取り出して、一晩固定し(0.1Mリン酸緩衝液中4%PFA、pH7.4)、次いで、30%スクロース中に48時間置いた。クライオスタットにより冠状断(30μm)を作製して、凍結保護物質中に置き、使用時まで-20℃において保存した。その後、皮質切片5つおよび海馬切片5つを、リン酸緩衝生理食塩水(PBST)中の0.1%Triton X-100と10%正常ウマ血清と共に、25℃において1時間インキュベートすることにより、ブロッキングした。次いで、一次抗体であるマウス抗ニューロン核抗体(NeuN;1:50、Millipore、Danvers、MA、米国、Cat#MAB3377)を、PBSTおよび2%正常ウマ血清中に溶解し、切片と共に4℃において48時間インキュベートした。PBST中ですすいだ後、DyLight(商標)594標識AffinityPureロバ抗ウサギIgG抗体およびDyLight(商標)488標識AffinityPureロバ抗マウスIgG抗体(1:300;Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME、米国)と共に、25℃において1時間、切片をインキュベートした。PBST中ですすいだ後、切片を乾燥ゼラチン被覆スライドガラス上に載せ、×20および×63のレンズを備えたZeiss LSM 510共焦点顕微鏡(Carl Zeiss、Jena、ドイツ)により、蛍光を評価した。1つの脳について切片3~5つを使い、海馬および側頭皮質中の、規定された視野1402または4402μMにおける平均細胞数を計算した。免疫組織化学用スライドガラスの免疫蛍光は盲検法により評価し、ネガティブコントロール切片の作製の際には、慣例的に、一次抗体を除去した。色の定量化の分析は、Imarisプログラムにより実施した(Bitplane AG、Zurich、スイス)。
【0228】
図13Aは、mTBIの30日後の、コントロールマウス、未処置mTBIマウス、およびPT302処置mTBIマウス(mTBIの1時間後に0.6mg/kg)の、皮質、CA3、および歯状回における、NeuN(赤、色評価時)陽性ニューロンの代表的な画像を示す。
図13B、
図13C、および
図13Dの棒グラフは、皮質、CA3、および歯状回のそれぞれにおいて生存ニューロンを定量したものを示す。定量化は、偽コントロール群、mTBI群、およびmTBI+PT302 0.6mg/kg群において抗NeuN陽性染色されたニューロンの数を用いて実施した(
**p<0.01、
***p<0.001)。値は、平均±SEMである。エキセンジン-4をPT302として持続放出により投与すると、外傷性脳損傷に起因して観察されるニューロンの減少が防止された。
【0229】
実施例15. mTBIマウスにおける変性ニューロンの数が、PT302投与により減少した。Fluoro-Jade(登録商標)Cは、損傷した変性脳ニューロンを標識する蛍光染色であり、外傷性脳損傷に起因するニューロンの減少を調べる目的で使用できる。イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA1)は、ミクログリアにおいて特異的に発現しており、活性化ミクログリアにおいて上方調節されている。これを、神経炎症のマーカーとして使用できる。マウスを安楽死させ、その脳を、上述するとおり、免疫組織化学的分析の実施用に調製した。海馬および頭頂皮質の冠状断(40μm)をクライオスタットにより作製し、凍結保護物質溶液中に回収した。頭頂皮質に加えて、海馬由来のCA1、CA3、および歯状回についても分析を実施した。
【0230】
FluoroJade C染色を実施するために、脳切片を、まず、1%NaOH含有の80%エタノール溶液中に5分間浸漬した。70%エタノール中において2分間すすいだ後、蒸留水中において洗浄し、次いで0.06%過マンガン酸カリウム溶液中において10分間インキュベートした。水洗後、スライドガラスをFJC染色溶液(蒸留水中のFJC0.01%保存液4mlを0.1%酢酸96mlに添加して得られる)中においてインキュベートし、10分間染色した。蒸留水で3回洗浄した後、スライドガラスをスライドガラスウォーマーで十分に風乾し、キシレン中で透徹し、DPXを用いてカバースリップをかぶせた。FV 1000MPE Olympus共焦点顕微鏡を用いて、両半球の各領域において、Fluorojade C陽性細胞を計数した。
【0231】
IBA1/TNF-αの二重標識を実施するために、切片を、IBA1抗体(ヤギ抗IBA1ポリクローナル抗体 1:200、Abcam、米国)およびTNF-α抗体(TNF-αウサギ抗TNF-αポリクローナル抗体 1:800、Abbiotec、米国)と共に、48時間インキュベートした。PBS洗浄後、切片を、IBA1の二次抗体と共にインキュベートし、TNF-αシグナルを増大させるために、ビオチン標識IgG(IgG(H+L)ビオチン-ヤギ抗ウサギ 1:500、Invitrogen、米国)およびストレプトアビジン-フルオレセイン(1:200、Vector、UK)を用いた3段階検出を実施した。
【0232】
IBA1およびTNFαの定性および定量分析を、Olympus共焦点レーザ走査顕微鏡FV 1000MPEを用いて実施した。Z系列画像をImageJ 1.47vで処理し、共局在因子の体積を、Imaris 7.4.2で以下のように測定した。各データセットについて、ソフトウェアにより、共局在化チャネル(colocalization channel)を自動的に構成した。最終層において、各動物の各半球における各脳領域(CA1、CA3、DG、および皮質)の標的領域を選択し、標的要素の体積を計算し、合計して、体積/μm3で表した。
【0233】
図14A中に示すように、mTBI損傷後、すべての調査対象領域(海馬についてCA1、CA3、DG、および外側皮質)において、コントロールと比較して、Fluoro-Jade陽性ニューロン数の大幅な増加が観察された(CA1についてp<0.05;CA3、DG、およびCTXについてp<0.001;それぞれ、
図14A、および
図14B、
図14C、および
図14D、ならびに
図14E)。用量0.6mg/kgでのPT302処置により、すべての調査対象領域において、mTBI誘発性神経変性の影響が打ち消され(CA3およびDGについてp<0.01、
図14Cおよび
図14D;CTXおよびCA1についてp<0.05、
図14Eおよび
図14B)、PT302用量0.12mg/kgにより、CA3領域において著しい効果が見られた(p<0.05)。
【0234】
図15A中に示すように、mTBI損傷後、ビヒクルコントロールと比較して、すべての分析対象領域においてIBA1免疫反応性が増大した(CA1についてp<0.05;CA3、DG、およびCTXについてp<0.001)。コントロール群においては、ミクログリア細胞の細胞体が小さくなり、突起が長く細くなって、休止形態を呈した(
図15A)。mTBI損傷後、ミクログリアは、細胞本体が大きくなって突起が短く太くなることを特徴とする活性化形態を呈した(
図15A)。PT302により、いずれの用量においても、ミクログリアの活性化が阻害され、PT302 0.6mg/kgはすべての脳領域において効果があった(CTXについてp<0.001、CA1およびCA3についてp<0.001、DGについてp<0.05)。
【0235】
炎症誘発性サイトカインTNF-αに対する免疫反応性が、mTBI傷害群のIBA1+細胞のすべての分析対象領域において増加した(DGについてp<0.05;CA1についてp<0.01;CA3および皮質についてp<0.001;それぞれ、
図15D、
図15B、
図15C、および
図15E)。用量0.6および0.12mg/kgでのPT302投与により、IBA1/TNF-α IR共局在化体積のレベルが、海馬および皮質の両方において低減された。
【0236】
具体的な実施形態
本開示の一態様は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法を提供する。この方法は、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、対象の全身循環血流に投与することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物または神経保護ポリペプチドの持続放出は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0237】
本開示の別の一態様は、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法を提供する。この方法は、神経保護ポリペプチドの持続放出または持続送達を提供する制御放出調製物またはデバイスを用いて、治療的有効量の神経保護ポリペプチドを対象の全身循環血流に投与することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物またはデバイスは、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0238】
本開示の一態様は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む制御放出調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0239】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物は、神経保護ポリペプチドの持効性調製物である。
【0240】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物は、有効量の神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出を十分な時間にわたって(たとえば、有効成分の、有害な初期バーストなどの初期バーストを起こさずに)実現するために、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含む。
【0241】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0242】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含む。
【0243】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含む。
【0244】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0245】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0246】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、制御放出神経保護調製物の注射を含む。
【0247】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の注射は、皮下注射である。
【0248】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0249】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与により、対象の脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせにおける神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0250】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約5~約400pg/mLの範囲内である。
【0251】
本開示のさらなる一態様は、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドを含む治療的有効量の制御放出神経保護調製物を、対象の全身循環血流に投与することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0252】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物は、神経保護ポリペプチドの持効性調製物である。
【0253】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物は、特定の粘度を有する生分解性ポリマーと、被覆材料とをさらに含み、有効濃度における神経保護ポリペプチドの生物学的利用能および持続放出が、ある期間にわたって(たとえば、有効成分の、有害な初期バーストなどの初期バーストを起こさずに)継続する。
【0254】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドと生分解性ポリマーとを含むコアを含む、制御放出微小球と、コアを被覆する被覆層とを含む。
【0255】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のためのデポー剤調製物を含む。
【0256】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、持効性調製物は、神経保護ポリペプチドの持続放出のための組成物を含む。
【0257】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0258】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、CNS関連状態は、パーキンソン病(PD)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症、薬物嗜癖、アルコール嗜癖、神経変性状態、脳の炎症、アルツハイマー病(AD)、多系統萎縮症、ハンチントン病、慢性外傷性脳症、運動ニューロン疾患(たとえば、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA))、脳血管性認知症、レビー小体型認知症(DLB)、混合型認知症、前頭側頭型認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、正常圧水頭症、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0259】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与は、対象への制御放出神経保護調製物の注射を含む。
【0260】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、対象への制御放出神経保護調製物の注射は、皮下注射である。
【0261】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0262】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0263】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、調製物は、7~21日に1回(たとえば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日に1回)投与される。
【0264】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、調製物の投与は、先行する投与の実施の約7~約21日後に、2回目の投与が実施される(たとえば、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、または約21日に1回)。
【0265】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、調製物が、先行する調製物投与から約28日以内(たとえば、約21または約14日以内)に再投与された場合、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度におけるパーセント変化は、約30%以下である。
【0266】
本開示の追加的な一態様は、対象の中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分に神経保護ポリペプチドを送達する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達および/または取り込みを増大させる。
【0267】
本開示のさらなる一態様は、中枢神経系(CNS)関連疾患を有する対象を処置する、またはCNS関連疾患の少なくとも1種の症状の低減を必要とする対象においてその症状を低減する方法を提供する。この方法は、GLP-1、エキセンジン-4、または治療的に有効であるGLP-1もしくはエキセンジン-4類似体からなる群より選択される少なくとも1種の神経保護ポリペプチドの持続送達を、対象の全身循環血流に対して提供することを含み、神経保護ポリペプチドは、GLP-1、エキセンジン-4、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種に結合する受容体に結合し、かつこれを活性化し、制御放出神経保護調製物は、神経保護ポリペプチドの速放調製物と比較して、対象の血液脳関門(BBB)の通過による中枢神経系(CNS)の少なくとも一部分への神経保護ポリペプチドの送達を増大させる。
【0268】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの持続放出の提供は、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドの、デバイス(たとえば、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなど)による投与を含む。
【0269】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、調製物が投与された場合(たとえば、7~28日に1回、または7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、もしくは28日に1回投与された場合)、安定状態到達後における安定状態での血漿中の神経保護ポリペプチド濃度におけるパーセント変化は、約80%以下(たとえば、約50%以下または約40%以下)である。
【0270】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドは、デバイス(たとえば、ポンプ、ミニポンプ、浸透圧ポンプ、浸透圧送達デバイス、輸液ポンプ、静脈内投与デバイス、蠕動ポンプ、または小型輸液ポンプなど)によって投与される。
【0271】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、(1種または2種以上の)神経保護ポリペプチドは、約1pM/kg/分~約30pM/kg/分(たとえば、約3pM/kg/分~約17.5pM/kg/分)の速度で投与される。
【0272】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出神経保護調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続送達の提供は、対象における少なくとも1種のCNS関連状態の少なくとも1種の症状を緩和する。
【0273】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、血漿中の神経保護ポリペプチドの濃度が、約50~約4500pg/mLの範囲内で安定状態となる。
【0274】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、制御放出調製物の投与または神経保護ポリペプチドの持続放出の提供により、脳脊髄液(CSF)、脳、またはそれらの組み合わせのうち少なくとも1種における神経保護ポリペプチドの濃度が、累積的に増加する。
【0275】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、CSF中の神経保護ポリペプチドの濃度は、約10~約400pg/mLの範囲内である。
【0276】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、安定状態での血漿中のポリペプチドの濃度に対する、安定状態でのCFS中のポリペプチドの濃度の比率は、約0.1%~約5%の範囲内である。
【0277】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、エキセンジン-4類似体は、化学式Iで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 Xaa27 Xaa28 -Z1
(化学式I)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、Ala、またはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイルであり、
Xaa22は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
Xaa27は、AlaまたはLysであり、
Xaa28は、AlaまたはAsnであり、かつ
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、またはN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、Ser、またはTyrであり(たとえば、Serであり)、かつ
Z2は、-OH、または-NH2であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、Xaa26、Xaa27、およびXaa28のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、またはTyrである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0278】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、エキセンジン-4類似体は、化学式IIで表される、またはその薬学的に許容される塩である:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 Xaa13 Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Ala Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25 Xaa26 X1-Z1
(化学式II)
(式中、
Xaa1は、His、Arg、Tyr、Ala、Norval、Val、Norleu、または4-イミダゾプロピオニルであり、
Xaa2は、Ser、Gly、Ala、またはThrであり、
Xaa3は、Ala、Asp、またはGluであり、
Xaa4は、Ala、Norval、Val、Norleu、またはGlyであり、
Xaa5は、AlaまたはThrであり、
Xaa6は、Ala、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa7は、ThrまたはSerであり、
Xaa8は、Ala、Ser、またはThrであり、
Xaa9は、Ala、Norval、Val、Norleu、Asp、またはGluであり、
Xaa10は、Ala、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン、またはMetであり、
Xaa11は、AlaまたはSerであり、
Xaa12は、AlaまたはLysであり、
Xaa13は、AlaまたはGlnであり、
Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Val、またはMetであり、
Xaa15は、AlaまたはGluであり、
Xaa16は、AlaまたはGluであり、
Xaa17は、AlaまたはGluであり、
Xaa19は、AlaまたはValであり、
Xaa20は、AlaまたはArgであり、
Xaa21は、Ala、Leu、またはLys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアレイル-アルカノイルであり、
Xaa22は、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert-ブチルグリシン、またはMetであり、
Xaa24は、Ala、Glu、またはAspであり、
Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr、またはナフチルアラニンであり、
Xaa26は、AlaまたはLeuであり、
X1は、Lys Asn、Asn Lys、Lys-NHε-R Asn、Asn Lys-NHε-R、Lys-NHε-R Ala、Ala Lys-NHε-Rであり、ここで、Rは、Lys、Arg、炭素数1~10の直鎖状もしくは分枝状のアルカノイル、またはシクロアルキルアルカノイルであり、
Z1は、-OH、-NH2、Gly-Z2、Gly Gly-Z2、Gly Gly Xaa31-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37-Z2、Gly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38-Z2、またはGly Gly Xaa31 Ser Ser Gly Ala Xaa36 Xaa37 Xaa38 Xaa39-Z2であり、
Xaa31、Xaa36、Xaa37、およびXaa38は、独立して、Pro、ホモプロリン、3Hyp、4Hyp、チオプロリン、N-アルキルグリシン、N-アルキルペンチルグリシン、およびN-アルキルアラニンからなる群より選択され、Xaa39は、SerまたはTyrであり、かつ
Z2は、-OHまたは-NH2であり、
ただし、
Xaa3、Xaa4、Xaa5、Xaa6、Xaa8、Xaa9、Xaa10、Xaa11、Xaa12、Xaa13、Xaa14、Xaa15、Xaa16、Xaa17、Xaa19、Xaa20、Xaa21、Xaa24、Xaa25、およびXaa26のうち、Alaであるものは3つを超えず、かつ
Xaa1がHis、Arg、Tyr、または4-イミダゾプロピオニルである場合、Xaa3、Xaa4、およびXaa9のうち少なくとも1つはAlaである)。
【0279】
本明細書中に記載される任意の態様または実施形態において、神経保護ポリペプチドは、配列番号1~55からなる群より選択される。
【0280】
本明細書中において引用される各文献を、引用により本明細書に援用する。実施例中と、特に指定される箇所とを除き、本記載中において物質などの量を特定しているすべての数値は、「約」という言葉をつけて改変されるものとして理解される。本明細書中に記載される上限値、下限値、範囲限界、および比率限界は独立して組み合わせてよいということが理解される。同様に、本開示に係る各要素の範囲および量を、他の任意の要素の範囲または量と共に使用することができる。
【0281】
当業者であれば、本明細書中に記載される具体的な実施形態および方法に対する多くの等価物が存在することを認識できるであろう、または、こうした等価物を、常套的な実験法のみを使用して確かめることができるであろう。こうした等価物は、以下の請求項の範囲に包含されることが意図される。
【0282】
本明細書中に記載される詳細な実施例および実施形態は、例示のみを目的として例として記載されるということが理解され、本開示を限定するものとは考慮されない。この点において様々な改変または変更が当業者には示唆されるであろうし、こうした改変または変更は、本願の思想および範囲に含まれ、付属の請求項の範囲内であるとして考慮される。たとえば、所望の効果を最適化する目的で成分の相対量が変更されてよく、追加の成分が添加されてよく、かつ/または、記載される成分の1つ以上が類似成分で置き換えられてよい。本開示に係るシステム、方法、およびプロセスに関連するさらなる有利な特徴および機能性が、付属の請求項から明らかとなるであろう。また、当業者であれば、本明細書中に記載される本開示の具体的な実施形態に対する多くの等価物が存在することを認識できるであろう、または、こうした等価物を、常套的な実験法のみを使用して確かめることができるであろう。こうした等価物は、以下の請求項の範囲に包含されることが意図される。
【0283】
参照文献
【0284】
【配列表】