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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】腸内環境改善用食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/18 20160101AFI20250131BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250131BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
A23L33/18
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/125
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019547032
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037395
(87)【国際公開番号】W WO2019070061
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2017195311
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(72)【発明者】
【氏名】亀山 恵司
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 桃香
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】宮久保 博幸
【審判官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-072993(JP,A)
【文献】特開2006-149371(JP,A)
【文献】特開2003-235492(JP,A)
【文献】特開2005-185270(JP,A)
【文献】特開2006-262895(JP,A)
【文献】特開平05-137533(JP,A)
【文献】特開昭62-074259(JP,A)
【文献】特開2011-178764(JP,A)
【文献】特開2007-022982(JP,A)
【文献】日本調理科学会誌,2013,Vol.46,No.4,pp.312-313
【文献】decoの小さな台所,2017.03.27[検索日 2022.08.24],インターネット:<URL:https://decokitchen.blog.jp/archives/18907886.html>
【文献】クックパッド レシピID:2249802,2013.06.30[検索日2022.08.24],インターネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/2249802>
【文献】Medical Science Digest,2016,Vol.42,No.6,pp.295-298
【文献】株式会社明治フードマテリア,メイオリゴ,2017.07,[検索日 2018.12.17],インターネット:<URL:https://www.meijifm.co.jp/products/material/oligo/meioligo/pdf/comparison.pdf>
【文献】J.Microbiol.Biotechnol.,2017,Vol.27,No.2,pp.412-415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる、腸内環境改善用食品であって、
該γ-ポリグルタミン酸が、約30~約5000個のグルタミン酸が結合したポリマーであり、
該オリゴ糖が、フラクトオリゴ糖、コーヒー豆マンノオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、およびガラクトオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1つであり、
該オリゴ糖と該γ-ポリグルタミン酸の重量比率(オリゴ糖:γ-ポリグルタミン酸)が1:0.1~3である、腸内環境改善用食品。
【請求項2】
オリゴ糖を含有する組成物が、液状の形態である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
液状の形態であるオリゴ糖を含有する組成物が、オリゴ糖を含有する液剤である、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
液状の形態であるオリゴ糖を含有する組成物が、オリゴ糖を含有する飲料である、請求項2に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内の乳酸菌、ビフィズス菌の増殖を促進して、腸内環境を改善する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
腸内の乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌の増殖を促進して、腸内環境を改善すること(腸内細菌叢の正常化)は、各種疾病の予防や健康維持増進のために重要である。
特許文献1には、γ-ポリグルタミン酸の便通改善効果が記載されている。非特許文献1には、γ-ポリグルタミン酸の乳酸菌増加効果が記載されている。オリゴ糖は、胃や小腸で消化・吸収されにくく、大腸まで届いて乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌の餌になることが知られている。しかし、γ-ポリグルタミン酸とオリゴ糖の併用により、単独の使用と比べて乳酸菌、ビフィズス菌が顕著に増加する事は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-22982号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】J. Microbiol. Biotechnol. (2017), 27(2), 412-415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、腸内の乳酸菌、ビフィズス菌の増殖を促進して、腸内環境を改善する食品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行ったところ、γ-ポリグルタミン酸とオリゴ糖の併用により、単独の使用と比べて乳酸菌およびビフィズス菌が顕著に増加することを見出した。本発明者らは、上記知見に基づき、さらに検討を行って本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記を提供する。
[1](1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる、腸内環境改善用食品。
[2]オリゴ糖を含有する組成物が、液状の形態である、上記[1]に記載の食品。
[3]液状の形態であるオリゴ糖を含有する組成物が、オリゴ糖を含有する液剤である、上記[2]に記載の食品。
[4]液状の形態であるオリゴ糖を含有する組成物が、オリゴ糖を含有する飲料である、上記[2]に記載の食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、γ-ポリグルタミン酸およびオリゴ糖を組み合わせて供給することによって、それぞれ単独で用いた場合に比べて、顕著に優れた乳酸菌、ビフィズス菌の増殖促進効果を有し、腸内環境を改善する機能を有する食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は試験例1(ヒト糞便懸濁液へのγ-ポリグルタミン酸およびフラクトオリゴ糖添加試験)の結果(平均値±標準誤差、n=6)を示す。
図2図2は試験例2(ヒト糞便懸濁液へのγ-ポリグルタミン酸および各種オリゴ糖添加試験)の結果(平均値±標準誤差、n=3)を示す。
図3図3は試験例3(ブタへのγ-ポリグルタミン酸およびフラクトオリゴ糖投与試験)の結果(平均値±標準偏差、n=3)を示す。
図4図4は試験例4(ブタへのγ-ポリグルタミン酸およびフラクトオリゴ糖投与試験)の結果(平均値±標準偏差、n=6、*:P<0.05、Student’s t-test)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の腸内環境改善用食品は、(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる。
本発明の食品は、(1)および(2)を組み合わせて用いる、(1)および(2)の併用食品である。
本発明の食品において、(1)および(2)は、同時に製剤化し、同一の製剤(食品)中に含有してもよく、(1)および(2)を別々に製剤化し、同時にあるいは時間差をおいて別々に、同一経路あるいは別経路にて、摂取されてもよい。すなわち、本発明の食品には、(1)および(2)を一つの製剤中に含有する食品、(1)および(2)を別々に製剤化して組み合わせて用いる食品が含まれる。
【0011】
本明細書において、食品とは、経口摂取し得るもの(医薬品を除く)を広く包含する概念であり、いわゆる「食べ物」のみならず飲料、健康補助食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、機能性表示食品)、サプリメントなどを含む。
【0012】
本明細書において、「腸内環境改善」とは、下部消化管に存在する乳酸菌および/またはビフィズス菌を相対的に増加させることをいう。相対的に増加させるとは、腸内細菌叢における乳酸菌および/またはビフィズス菌の優占化を促進することを意味する。腸内細菌叢における乳酸菌、ビフィズス菌の優占化は、糞便中の乳酸菌量、ビフィズス菌量を、定量PCRなどを用いて測定する事により確認できる。
本明細書において、「下部消化管」とは、回腸、盲腸、結腸、直腸を意味する。
【0013】
(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物
本発明において、(1)としては、γ-ポリグルタミン酸をそのまま用いること、またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物として用いることができる。
本発明において、γ-ポリグルタミン酸としては、好ましくは、D-グルタミン酸とL-グルタミン酸が約8:2の割合で混在して約30~約5000個結合したポリマー(高分子体)であるγ-ポリグルタミン酸が挙げられる。
γ-ポリグルタミン酸は、ポリグルタミン酸とも称される。
γ-ポリグルタミン酸は市販品(例えば、カルテイク(商品名)味の素社製)を用いることもできる。
【0014】
本発明におけるγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物は、形態は特に問わず、例えば、散剤、顆粒剤(細粒剤を含む)、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、液剤(例、溶液、懸濁液、乳液)、飲料、ゼリー、プリン、ヨーグルト、キャンディー、チューイングガムなどが挙げられる。これらは公知の方法で製造することができる。例えば、γ-ポリグルタミン酸を担体(例、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤)と混合し、食品製剤または医薬製剤の分野で公知の方法で散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等を製造することができる。また、γ-ポリグルタミン酸を、食品、飲料(例、水、ソフトドリンク)に添加、混合して製造することもできる。
【0015】
(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物
本発明において、(2)としては、オリゴ糖をそのまま用いること、またはオリゴ糖を含有する組成物として用いることができる。
本発明において、オリゴ糖としては、例えば、コーヒー豆マンノオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖が挙げられ、フラクトオリゴ糖、コーヒー豆マンノオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖が好ましい。オリゴ糖は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明におけるオリゴ糖を含有する組成物は、形態は特に問わず、例えば、散剤、顆粒剤(細粒剤を含む)、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、液剤(例、溶液、懸濁液、乳液、液体調味料(例、液体甘味料))、飲料、ゼリー、プリン、ヨーグルト、キャンディー、チューイングガムなどが挙げられる。中でも、液状の形態(例、液剤(例、溶液、懸濁液、乳液、液体調味料(例、液体甘味料))、飲料)が好ましい。
これらは公知の方法で製造することができる。例えば、オリゴ糖を担体(例、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤)と混合し、食品製剤または医薬製剤の分野で公知の方法で散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等を製造することができる。また、オリゴ糖を、食品、飲料(例、水、ソフトドリンク)に添加、混合して製造することもできる。また、オリゴ糖を含有する液体甘味料を食品、飲料に添加、混合して製造することもできる。
【0017】
上述の通り、本発明の食品には、上記(1)および(2)を一つの製剤中に含有する食品、および、上記(1)および(2)を別々に製剤化して組み合わせて用いる食品が含まれる。
【0018】
(1)および(2)を別々に製剤化して組み合わせて用いる食品として、例えば、(1)がγ-ポリグルタミン酸を含有する、顆粒剤、錠剤、ハードカプセル、またはソフトカプセルの形態であり、(2)がオリゴ糖を含有する飲料の形態であり、これらを組み合わせて用いる食品が挙げられる。
本発明において、(1)および(2)は、同時にあるいは時間差をおいて別々に、同一経路あるいは別経路にて、摂取されてもよい。具体的には例えば、γ-ポリグルタミン酸を含有するカプセル(例、ハードカプセル、ソフトカプセル)、顆粒剤、錠剤などを、オリゴ糖含有飲料と共に摂取されてもよい。
【0019】
(1)および(2)を一つの製剤中に含有する食品は、形態は特に問わず、例えば、散剤、顆粒剤(細粒剤を含む)、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、液剤(例、溶液、懸濁液、乳液、液体調味料(例、液体甘味料))、飲料、ゼリー、プリン、ヨーグルト、キャンディー、チューイングガムなどが挙げられる。これらは公知の方法で製造することができる。
【0020】
本発明の腸内環境改善用食品におけるγ-ポリグルタミン酸の摂取量は、成人(体重60kg)1日あたり、通常0.1~100g、好ましくは0.1~50g、より好ましくは1~20gである。
本発明の腸内環境改善用食品におけるオリゴ糖の摂取量は、成人(体重60kg)1日あたり、通常0.1~100g、好ましくは0.1~50g、より好ましくは1~20gである。
本発明の腸内環境改善用食品において、オリゴ糖とγ-ポリグルタミン酸の重量比率(オリゴ糖:γ-ポリグルタミン酸)は、好ましくは、1:0.05~20、より好ましくは、1:0.1~10、さらに好ましくは、1:0.1~5、よりさらに好ましくは、1:0.1~3、特に好ましくは、1:0.2~2である。
【0021】
本発明の食品は、ヒト、ヒト以外の動物(例えば、家畜、家禽、実験動物などの、哺乳動物、鳥類)が安全に摂取することができる。ヒト以外の動物に摂取させる形態としては、飼料中への添加であってもよい。
【0022】
本発明の別の態様としては、「(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる食品、並びに、腸内環境改善への使用に関する説明を記載した記載物を含む商業パッケージ。」、「(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる、腸内環境改善に用いられる旨の表示が付された食品。」、「(1)γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物、および(2)オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物を組み合わせてなる、腸内環境改善作用の増強用食品。」および「γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物である、オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物の腸内環境改善作用の増強用食品。」が挙げられる。「γ-ポリグルタミン酸またはγ-ポリグルタミン酸を含有する組成物」、「オリゴ糖またはオリゴ糖を含有する組成物」、「腸内環境改善」、「γ-ポリグルタミン酸の摂取量」、「オリゴ糖の摂取量」は、上記腸内環境改善用食品について説明した例示、定義と同じである。
【実施例
【0023】
以下、試験例、実施例、比較例、参考例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
略語は、以下を示す。
γ-PGA:γ-ポリグルタミン酸(Poly-γ-Glutamic Acid)
FOS:フラクトオリゴ糖
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
CMOS:コーヒー豆マンノオリゴ糖
IMOS:イソマルトオリゴ糖
GOS:ガラクトオリゴ糖
【0024】
[試験例1]ヒト糞便懸濁液へのγ-PGAおよびフラクトオリゴ糖添加試験
表1に示す実施例および比較例のPBS溶液を調製し、糞便培養用の培地とした。PBSのみの場合を陰性対照とした。γ-PGAは味の素社製ポリグルタミン酸「カルテイク」、FOSは、和光純薬社製フラクトオリゴ糖を用いた。
その後、ガラス製バイアル瓶にそれぞれ10mlずつ分注しオートクレーブ滅菌および嫌気化し、ブチルゴム栓で密閉した。糞便懸濁液は、20~40代の健常人6人(男3人、女3人)から糞便約10gを採取し、80mlの嫌気化されたPBSに懸濁することによって調製した。この糞便懸濁液をそれぞれのバイアル瓶に0.5mlずつ添加し、37℃のインキュベータ内に入れ1日1回転倒混和しながら4日間嫌気培養した。培養終了後、培養液の全量から遠心分離(8,000×g、5分)により腸内細菌ペレットを得た。このペレットからISOFECAL for BeadsBeat(ニッポンジーン社製)を用いてDNA抽出を行い、GeneAce SYBR qPCR Mix α(ニッポンジーン社製)を用いて定量PCRを行った。定量PCRは、95℃10分の後、95℃30秒と60℃60秒を45サイクル実施する条件で行った。乳酸菌群(主に、Lactobacillus spp.)の検出に用いた定量PCR用プライマーは、下記の通りである。
LAB-F:5’-AGCAGTAGGGAATCTTCCA-3’(配列番号:1)(Appl Environ Microbiol. 67(6):2578-2585, 2001)
LAB-R:5’-CACCGCTACACATGGAG-3’(配列番号:2)(Appl Environ Microbiol. 68(1):114-123, 2002)
【0025】
【表1】
【0026】
定量PCRによって得られた結果は、PBSのみ(陰性対照)を1とした場合の相対量を算出し、その結果をz-scoreで標準化した。
結果を図1に示す。データはz-scoreの平均値±標準誤差で示した(n=6)。有意差は陽性対照をコントロールとしDunnetの検定で求めた(*:P<0.05)。
その結果、γ-PGA単独の添加では、乳酸菌群の増殖は認められなかったが、0.5%FOSと共にγ-PGAを添加すると、FOS単独よりも顕著な乳酸菌群の増殖が濃度依存的に認められた。
このように、本発明においては、γ-PGAとオリゴ糖の組み合わせで、乳酸菌群の増殖について、相加効果を超える相乗効果が認められた。
【0027】
[試験例2]ヒト糞便懸濁液へのγ-PGAおよび各種オリゴ糖添加試験
表2に示す実施例および比較例のPBS溶液を調製し、糞便培養用の培地とした。PBSのみの場合を陰性対照とした。CMOSは、味の素ゼネラルフーヅ社製コーヒー豆マンノオリゴ糖、IMOSは、和光純薬社製イソマルトオリゴ糖、GOSは、和光純薬社製ガラクトオリゴ糖を用いた。
糞便培養および乳酸菌の検出は、試験例1と同様の方法で行った。
【0028】
【表2】
【0029】
定量PCRによって得られた結果は、PBSのみ(陰性対照)を1とした場合の相対量を算出し、その結果をz-scoreで標準化した。
結果を図2に示す。データはz-scoreの平均値±標準誤差で示した(n=3)。有意差は陽性対照をコントロールとしDunnetの検定で求めた(*:P<0.05)。
その結果、いずれのオリゴ糖においても、γ-PGAと組み合わせることによってオリゴ糖単独の場合よりも顕著な乳酸菌群の増殖が認められた。
このように、本発明においては、オリゴ糖の種類によらずγ-PGAとの組み合わせで、乳酸菌群の増殖について、相加効果を超える相乗効果が認められた。
【0030】
[試験例3]ブタへのγ-PGAおよびFOS投与試験
全国農業協同組合連合会より2~3ヶ月齢の雄性ブタ(ハイコープSPF豚LWD)6頭を購入し、平均体重が均一になる様に3頭ずつ2つの試験区に分け、3頭/ペンで4週間飼育した。それぞれの試験区には、1日2回、400g/頭のピグみらいCEX(全国農業協同組合連合会)を制限給餌した。それぞれの試験区には、表3に示す用量・方法で被験物質の投与を行った。γ-PGAは味の素社製ポリグルタミン酸「カルテイク」、FOSは、明治フードマテリア社製フラクトオリゴ糖「メイオリゴP顆粒」を用いた。投与開始から4週間経過後、盲腸を採材し、試験例1および2と同様の方法で、盲腸内容物中の乳酸菌を定量PCRで調べた。
【0031】
【表3】
【0032】
結果を図3に示す。データは比較例6の乳酸菌由来DNAコピー数を1とした場合の相対量で示した(平均値±標準偏差、n=3)。
その結果、γ-PGAとFOSの組み合わせによって、FOS単独の摂取よりもブタ腸内の乳酸菌を平均値で2倍程度増殖させる効果が確認できた。
【0033】
[試験例4]ブタへのγ-PGAおよびFOS投与試験
全国農業協同組合連合会より2~3ヶ月齢の雄性ブタ(ハイコープSPF豚LWD)24頭を購入し、平均体重が均一になる様に6頭ずつ4つの試験区に分け、3頭/ペンで4週間飼育した。それぞれの試験区には、1日2回、400g/頭のピグみらいCEX(全国農業協同組合連合会)を制限給餌した。それぞれの試験区には、表4に示す用量・方法で被験物質の投与を行った。γ-PGAは味の素社製ポリグルタミン酸「カルテイク」、FOSは、明治フードマテリア社製フラクトオリゴ糖「メイオリゴP顆粒」を用いた。投与開始から4週間経過後、盲腸を採材し、盲腸内容物中のビフィズス菌を定量PCRで調べた。定量PCRは、95℃10分の後、95℃30秒と60℃60秒を45サイクル実施する条件で行った。ビフィズス菌の検出に用いた定量PCR用プライマーは、下記の通りである。
g-Bifid-F:5’-CTCCTGGAAACGGGTGG-3’(配列番号:3)
g-Bifid-R:5’-GGTGTTCTTCCCGATATCTACA-3’(配列番号:4)
【0034】
【表4】
【0035】
結果を図4に示す。データは比較例7のビフィズス菌由来DNAコピー数を1とした場合の相対量で示した(平均値±標準偏差、n=6)。
その結果、γ-PGAとFOSの組み合わせによって、FOS単独の摂取よりもブタ腸内のビフィズス菌を平均値で10倍程度増殖させる効果が確認できた。特に、FOSの摂取量に対して半量のγ-PGAを追加摂取することによって、FOS単独の摂取よりも顕著なビフィズス菌の増加効果が認められた。
【0036】
本出願は、日本で出願された特願2017-195311を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
0007626363000001.app