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  • -γ-アミノ酪酸含有組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】γ-アミノ酪酸含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/17 20160101AFI20250128BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20250128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A23L33/17
A23L2/52
A23L2/00 F
A61K31/197
A61P3/02
A61P25/00
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023146336
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2023141354の分割
【原出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】503361813
【氏名又は名称】学校法人 中村産業学園
(73)【特許権者】
【識別番号】509181046
【氏名又は名称】学校法人西日本工業学園
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】原 由洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 唱乃
(72)【発明者】
【氏名】古賀 啓太
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨根 里穂
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
(72)【発明者】
【氏名】萩原 悟一
(72)【発明者】
【氏名】古門 良亮
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-061088(JP,A)
【文献】特開2018-020972(JP,A)
【文献】特開2021-136968(JP,A)
【文献】特開2021-132645(JP,A)
【文献】特開2006-273733(JP,A)
【文献】特開2007-063236(JP,A)
【文献】特開2005-082495(JP,A)
【文献】特開2005-013127(JP,A)
【文献】特開2003-252755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、対象において12~15HzのSMR波の優位な発生を誘導するための組成物であって、前記SMR波の優位な発生によってフロー(ゾーン)状態が誘導される、組成物。
【請求項2】
γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、eスポーツを実施する際のフロー(ゾーン)状態を誘導するための組成物。
【請求項3】
課題を実施する前に摂取されるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記フロー(ゾーン)状態が、少なくとも体感時間のゆがみによって定義される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記フロー(ゾーン)状態が、体感時間の短縮を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記課題がマルチタスクおよび/またはeスポーツを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
記eスポーツの実施の少なくとも約2時間前から直前までに摂取される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記課題の実施の少なくとも約2時間前から直前までに摂取される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記γ-アミノ酪酸の含有量が約10~約1000mgである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
前記γ-アミノ酪酸の摂取量が、1日あたり約10~約1000mgである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
経口的に摂取される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
飲料、食品、サプリメント、食品添加物、医薬部外品、または医薬品である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項13】
液体、粉剤、錠剤、またはカプセルの形態である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
エキサイティングな気持ちを誘導するための、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項15】
ポジティブな気持ちを誘導するための、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項16】
活気・活力感の低下を軽減するための、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項17】
精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するための、請求項1または2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ-アミノ酪酸(GABA)含有組成物に関し、特に、フロー(ゾーン)状
態を誘導するためのGABA含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に広く分布し、食品に添加してもその味を損ねることがないアミノ酸として、近
年、γ-アミノ酪酸(GABA、4-アミノ酪酸)が注目されている。GABAは哺乳類
の中枢神経系に多く存在する抑制性の神経伝達物質であり、興奮性神経伝達物質の過剰な
分泌を抑制して神経の興奮を鎮め、リラックス効果や抗ストレス作用を発揮することが知
られている。また、血圧降下作用やコレステロール低下作用、及び免疫力の低下抑制など
の多岐にわたる生理活性を有することが知られている。このGABAは野菜や穀物、ヒト
体内にも含まれているため、食品に添加しやすく、GABA含有チョコレートや、数多く
のサプリメントが販売されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、GABAが対象におけるフロー(ゾーン)状態を誘導し得ることを見出
した。
【0004】
したがって、本発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(項目1)
γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、対象におけるフロー(ゾーン)状態を誘導す
るための組成物。
(項目2)
課題を実施する前に摂取されるものであることを特徴とする、上記項目に記載の組成物

(項目3)
前記フロー(ゾーン)状態が、少なくとも体感時間のゆがみによって定義される、上記
項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記フロー(ゾーン)状態が、体感時間の短縮を含む、上記項目のいずれか一項に記載
の組成物。
(項目5)
前記課題がマルチタスクを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記課題がeスポーツ、VDT作業、デジタルワーク、およびゲームを含む、上記項目
のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
前記ゲームがTVゲーム、PCゲーム、および携帯端末ゲームを含む、上記項目のいず
れか一項に記載の組成物。
(項目8)
前記課題の実施の少なくとも約2時間前から直前までに摂取される、上記項目のいずれ
か一項に記載の組成物。
(項目9)
前記γ-アミノ酪酸の含有量が約10~約1000mgである、上記項目のいずれか一
項に記載の組成物。
(項目10)
前記γ-アミノ酪酸の摂取量が、1日あたり約10~約1000mgである、上記項目
のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
経口的に摂取される、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
飲料、食品、サプリメント、食品添加物、医薬部外品、または医薬品である、上記項目
のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13)
液体、粉剤、錠剤、またはカプセルの形態である、上記項目のいずれか一項に記載の組
成物。
(項目14)
エキサイティングな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物

(項目15)
ポジティブな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目16)
活気・活力感の低下を軽減するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するための、上記項目のいずれか一項に記
載の組成物。
(項目A1)
対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導するための方法であって、γ-アミノ酪酸(
GABA)を含有する組成物を該対象に投与する工程を含む、方法。
(項目A2)
前記組成物が、前記対象が課題を実施する前に投与されるものであることを特徴とする
、上記項目に記載の方法。
(項目A3)
前記フロー(ゾーン)状態が、少なくとも体感時間のゆがみによって定義される、上記
項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A4)
前記フロー(ゾーン)状態が、体感時間の短縮を含む、上記項目のいずれか一項に記載
の方法。
(項目A5)
前記課題がマルチタスクを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A6)
前記課題がeスポーツ、VDT作業、デジタルワーク、およびゲームを含む、上記項目
のいずれか一項に記載の方法。
(項目A7)
前記ゲームがTVゲーム、PCゲーム、および携帯端末ゲームを含む、上記項目のいず
れか一項に記載の方法。
(項目A8)
前記組成物が、前記対象が前記課題を実施する少なくとも約2時間前から直前までに投
与される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A9)
前記γ-アミノ酪酸の含有量が約10~約1000mgである、上記項目のいずれか一
項に記載の方法。
(項目A10)
前記γ-アミノ酪酸の投与量が、1日あたり約10~約1000mgである、上記項目
のいずれか一項に記載の方法。
(項目A11)
経口的に投与される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A12)
前記組成物が、飲料、食品、サプリメント、食品添加物、医薬部外品、または医薬品で
ある、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A13)
前記組成物が、液体、粉剤、錠剤、またはカプセルの形態である、上記項目のいずれか
一項に記載の方法。
(項目A14)
エキサイティングな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A15)
ポジティブな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A16)
活気・活力感の低下を軽減するための、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A17)
精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するための、上記項目のいずれか一項に記
載の方法。
(項目B1)
対象におけるフロー(ゾーン)状態を誘導するため、エキサイティングな気持ちを誘導
するため、ポジティブな気持ちを誘導するため、活気・活力感の低下を軽減するため、な
らびに/または精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するための組成物であって、
γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、組成物。
(項目B2)
対象におけるフロー(ゾーン)状態を誘導するための、上記項目に記載の組成物。
(項目B3)
対象におけるエキサイティングな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に
記載の組成物。
(項目B4)
対象におけるポジティブな気持ちを誘導するための、上記項目のいずれか一項に記載の
組成物。
(項目B5)
対象における活気・活力感の低下を軽減するための、上記項目のいずれか一項に記載の
組成物。
(項目B6)
対象における精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するための、上記項目のいず
れか一項に記載の組成物。
【0005】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さら
に組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および
利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0006】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の
項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、GABA含有組成物を摂取することにより、対象においてフロー(ゾー
ン)状態を誘導することができるため、認知能力や思考能力を必要とする作業を効率的に
行うことができ、日常生活においても利用価値が高い。
【0008】
また本発明の組成物により、対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導することができ
、これにより、対象において生産性や作業効率が向上し、タスクの品質が高まり、ストレ
スや心理的な負荷を軽減し、および/または充実感や達成感を獲得することができること
となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるゲーム試験、被験飲料の摂取、およびVASアンケートの実施タイミングを示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態におけるゲーム試験とVASアンケートの結果を示すグラフである。ゲームソフトとしては「GHOST SQUADTM」(セガ)を用いた。
図3図3は、本発明の一実施形態におけるゲーム試験とVASアンケートの結果を示すグラフである。ゲームソフトとしては「TIME CRISIS 4」(バンダイナムコゲームス)を用いた。
図4図4は、本発明の一実施形態におけるゲーム試験と被験飲料の摂取の実施タイミングを示す模式図である。
図5図5は、本発明の一実施形態におけるゲーム試験の結果を示すグラフである。
図6図6は、本発明の一実施形態において、プラセボ、GABA、またはカフェインを摂取した場合の体感時間のゆがみを示す結果である。図6AがGABAを摂取した場合、図6Bがカフェインを摂取した場合の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の
表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、
特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本
明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味
で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細
書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者に
よって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含め
て)が優先する。
【0011】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適
宜説明する。
【0012】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
本明細書において、「フロー(ゾーン)状態」とは、中覚醒領域の脳波が優位な状態を
いい、例えば脳波としてSMR(Sensory Motor Rhythm)波が発生している状態をいう
。中覚醒領域の脳波には、SMR波(12~15Hz)の他に、ハイアルファ波(10~
12Hz)、ローベータ波(15~18Hz)などがあり、リラックスと集中のバランス
がとれたSMR波を頂点とした場合、よりリラックスし、覚醒が下がればハイアルファ波
、より集中し、覚醒が高まればローベータ波となる。SMR波が発生すると、フローやゾ
ーンにいる感覚を持ちやすいことが知られている(K.Ueda, Y. Imamura and T. Ibaraki,
TechRxiv.Preprint, doi:10.36227/techrxiv.14787879.v1 (2021).)。脳波の測定は周
知の測定手法を用いることができ、例えばfMRI、NIRS、侵襲式、MEG、EEG
などの各種方式の脳波測定装置を用いて測定することができる。
【0014】
フロー(ゾーン)状態になると、集中力が高まり、特定の動作や作業などを行う際に、
通常の意識状態より深い集中状態にいることができる。フロー(ゾーン)状態については
、JeLA会誌Vol.9/2009.5「効果的e-Learningのためのフロー
理論の応用」を参照することができる。本明細書においてフローおよびゾーンは同義であ
る。フロー(ゾーン)状態にあるかどうかは、脳波の測定以外に、体感時間のゆがみによ
って評価することもできる。被験者が特定の動作や作業などを行う際に、実際の動作ない
し作業時間よりも、被験者が感じた時間が短い場合に、当該被験者はフロー(ゾーン)状
態にあるということができる。
【0015】
本明細書において、「体感時間のゆがみ」とは、時間的経験と実際の経過時間とが一致
しないことをいい、例えば、被験者が特定の動作や作業などを行う際に、実際の動作ない
し作業時間よりも、被験者が感じた時間が短い場合をいう。例えば、実際の動作ないし作
業時間に対して、体感時間として約99%未満、約98%未満、約97%未満、約96%
未満、約95%未満、約94%未満、約93%未満、約92%未満、約91%未満、約9
0%未満、約89%未満、約88%未満、約87%未満、約86%未満、約85%未満、
約84%未満、約83%未満、約82%未満、約81%未満、約80%未満、約75%未
満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、または約50%未満と
感じる場合に、体感時間のゆがみが生じているということができる。
【0016】
本明細書において、「eスポーツ」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広
義には、電子機器を用いて行う競技を意味する。狭義には、「eスポーツ」は、コンピュ
ーターゲームまたはビデオゲームを使った勝負をスポーツ競技として捉える際のその勝負
のことを意味する。eスポーツの競技は、スポーツゲームのみならず、シューティングゲ
ーム、シミュレーションゲーム、格闘ゲーム、レーシングゲーム、パズルゲーム、カード
ゲーム、RPGを含むが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において、「VDT作業」とは、ディスプレイ、キーボード等のVDT(Vi
sual Display Terminals)を使用した作業をいう。
【0018】
本明細書において、「デジタルワーク」とは、主にコンピュータやインターネットを活
用した作業のことをいう。具体的なデジタルワークには、例えば、電子メールやチャット
などのコミュニケーションツールを使ったコミュニケーション、データ処理やデータベー
ス管理、ウェブサイトやアプリケーションの開発、オンラインマーケティング、デジタル
コンテンツの制作などが含まれる。
【0019】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示の
よりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべ
きでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜
改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも
使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明の一局面において、γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、対象におけるフロ
ー(ゾーン)状態を誘導するための組成物が提供される。
【0021】
γ-アミノ酪酸(GABA)は野菜や穀物など、自然界に広く分布するアミノ酸である
ため、本発明の一実施形態においては、GABAは飲食品に使用可能なものであれば特に
由来等は制限されるものではない。例えば、GABAを含有する植物の抽出物または精製
物等を用いてもよく、またはグルタミン酸を含有する原料にグルタミン酸脱炭酸酵素また
は乳酸菌等の当該酵素を有する微生物等を添加して得られる発酵物から調製することもで
きる。GABA含有製品や市販品のGABAについても、本発明の組成物による効果を損
なわない範囲において本発明の組成物に用いることができる。
【0022】
一実施形態において、本発明の組成物は、対象が摂取することで、対象においてフロー
(ゾーン)状態を誘導することができる。対象におけるフロー(ゾーン)状態は、当該対
象が、特定の動作や作業を行う際に誘導され得、当該特定の動作や作業には、当該対象に
対する課題であってもよい。
【0023】
一実施形態において、課題としては、対象において少なくとも一定の集中力が必要なも
のであればよく、例えば、eスポーツ、VDT作業、デジタルワーク、およびゲーム(T
Vゲーム、PCゲーム、および携帯端末ゲームなど)などが挙げられる。課題とは、特定
の目標を達成するために行われる問題解決のプロセスであり得、学校や職場などの環境で
与えられるものに限らず、自主的に取り組むものも含まれる。課題は、個人が自己成長や
学習を促進するために設計され、一般的にはある目的を達成するための特定のタスクや活
動を含むことができる。
【0024】
一実施形態において、課題はシングルタスクであってもよいし、またはマルチタスクで
あってもよい。一実施形態において、マルチタスクとは、対象が同時に複数の作業、動作
、課題、および/またはタスクなどを実行することが含まれる。例えば、VDT作業の場
合、シングルタスクおよびマルチタスクとしては、それぞれ以下の作業や動作などを挙げ
ることができる。
<シングルタスク>
・タイピングゲーム(単純なデータの入力の繰り返し)
・的を撃つだけのシューティングPCゲーム(片手でマウスを左クリックするだけ。キー
ボードによる武器の切り替え、視野の切り替え、前後左右の移動、ジャンプ、しゃがむな
どの移動、弾のリロード操作を含まないゲームなど)
<マルチタスク>
・シューティングゲーム
シューティングを行うと同時に、武器の切り替え、弾のリロード、前後左右への移動、
視野の切り替え、MAPの確認を同時並行で行う作業など
・レースゲーム
アクセル、ブレーキや、左右の方向決定を同時に行うなど
【0025】
また他の実施形態において、VDT作業以外のタスクの場合、シングルタスクおよびマ
ルチタスクとしては、それぞれ以下の作業や動作などを挙げることができる。
<シングルタスク>
・クレペリン検査(単純な足し算の繰り返し)など
<マルチタスク>
・車の運転:ハンドル操作、ウィンカー等の操作、足元の操作、他車・信号・人を見ての
判断など
・ピアノ演奏:左右で異なる動き、足元の操作など
【0026】
eスポーツとは、コンピューターゲーム、ビデオゲーム(PC(Personal Computer)
、家庭用ゲーム機、モバイルアプリケーション、VRなど、使用する機器に限定されない
ゲーム)を競技として行うものである。eスポーツの中には、例えば、実際のスポーツ競
技をゲーム化したもの、新たに創作された仮想上のスポーツ競技をゲーム化し、人間のプ
レイヤによって操作されるものも含まれる(対戦の場合、対戦相手はコンピュータのシミ
ュレーションであってもよい)。また、バーチャルスポーツとは、現実に行われているス
ポーツ競技を模した、または新たに創作された仮想上のスポーツ競技を、コンピュータの
シミュレーションにより、一定のルールとアルゴリズムのもとで仮想的に行われるもので
ある。このバーチャルスポーツは、現実に行われているスポーツ競技の選手等を模したデ
ータ上の仮想上のプレイヤや、一定のルールのもとユーザにより生成されたデータ上の仮
想上のプレイヤが、コンピュータのシミュレーションにより競技を行うように構成されて
いる。
【0027】
一実施形態において、eスポーツのゲームジャンルは特に限定されず、任意のゲームジ
ャンルであってよい。例えば、格闘ゲーム、スポーツゲーム、シューティングゲーム、レ
ースゲーム、パズルゲーム、言葉遊びゲーム、カードゲーム、ボードゲーム、ロールプレ
イングゲーム又はシミュレーションゲーム等であってもよい。また、eスポーツは、個人
戦であってもよいし団体戦であってもよい。また、人間同士がプレイヤとして対戦するも
のであってもよいし、人間とコンピュータ(例えば、AI又はロボット等)とが対戦する
ものであってもよい。
【0028】
VDT作業とは、ディスプレイ、キーボード等のVDT(Visual Displa
y Terminals)を使用した作業のことをいう。またデジタルワークとは、主に
コンピュータやインターネットを活用した作業のことをいう。VDT作業やデジタルワー
クには、長時間の画面を見ることが含まれるため、目の疲れやストレスの原因となること
がある。本発明の組成物は、対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導することで、VD
T作業やデジタルワークにおける疲れやストレスの軽減効果も得ることができる。
【0029】
一実施形態において、ゲームにはTVゲーム、PCゲーム、および携帯端末ゲームなど
の任意の電子機器を用いて行うものが含まれる。ゲームジャンルは特に限定されず、例え
ば、格闘ゲーム、スポーツゲーム、シューティングゲーム、レースゲーム、パズルゲーム
、言葉遊びゲーム、カードゲーム、ボードゲーム、ロールプレイングゲーム又はシミュレ
ーションゲーム等であってもよい。本発明の組成物は、対象がゲームを行う際にフロー(
ゾーン)状態に誘導することができ、これにより、当該ゲームにおいてスコアを向上させ
たり、効率的な進行を達成することができる。
【0030】
一実施形態において、本発明の組成物は、対象が課題を実施する前に摂取されるもので
あり、本発明の組成物の効果が得られるように摂取され得る。本発明の組成物は、対象が
課題を実施する少なくとも約5時間前~約1分前まで、または直前までに摂取され得、摂
取タイミングの上限(最長時間)としては、例えば対象が課題を実施する少なくとも約1
時間前、約2時間前、約3時間前、約4時間前、約5時間前、約6時間前、または約7時
間前に摂取され得、摂取タイミングの下限(最短時間)としては、例えば対象が課題を実
施する少なくとも約50分前、約45分前、約40分前、約35分前、約30分前、約2
5分前、約20分前、約15分前、約10分前、約5分前、約4分前、約3分前、約2分
前、約1分前、または直前に摂取され得る。摂取タイミングは任意のこれらの下限と上限
との間の数値の範囲であり得る。課題を実施する前に本発明の組成物を摂取することによ
り、対象が当該課題を実施する際に、フロー(ゾーン)状態を誘導することができる。一
実施形態において、課題を実施するどのくらい前に本発明の組成物を摂取すればよいかは
、課題の種類、内容、または難易度、対象の状態や性質、または目的のフロー(ゾーン)
状態の深度などによって適宜設定することができる。
【0031】
本発明の組成物は、対象が摂取することで、対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導
することができる。「ゾーン」という用語は、通常、競技やパフォーマンスの文脈で使用
され得、例えば、スポーツ選手が試合中に「ゾーン」に入るということは、彼らが非常に
集中しており、行為と意識とが融合し、自分自身と周りとの境界が曖昧になり、最高のパ
フォーマンスを発揮できる状態にあることを意味する。ゾーンに入ることで、スポーツ選
手は、自己評価の低下や心配事の影響を受けず、最高の運動能力を発揮することができる
。「フロー」という用語は、一般的に創造的な活動や生産的な仕事の文脈で使用され得、
例えば、芸術家が制作活動中に「フロー」に入るということは、彼らが自分の創造的な能
力を最大限に発揮している状態にあることを意味する。フローに入ることで、芸術家は、
周囲の気配りや他の外的な干渉に関心を払うことなく、最高の芸術的表現を実現すること
ができる。ゾーンとフローの主な違いは、ゾーンが通常、競技やパフォーマンスに焦点を
当て、フローが創造的な活動や生産的な仕事に焦点を当てていることであるが、どちらの
概念も、高度な集中力と自己完結性の状態を表しており、個人が最高のパフォーマンスを
発揮することができる状態を示す。したがって、ゾーンとフローは、両方とも集中状態に
ついて説明する心理学的な概念であり、対象のカテゴリによって使い分けることもできる
が、本明細書においては特に断らない限り同義である。
【0032】
フロー状態やゾーン状態は、自己の能力に応じてある課題を実行する能力が向上する状
態とも表現することができる。すなわち、フロー状態やゾーン状態は、単に集中力が高い
状態とは異なり、課題に取り組むことが楽しく、自分自身のスキルが高まっていると感じ
ることができる。高い集中力がある場合でも、その状態がフロー状態やゾーン状態である
かどうかは、個人の感覚や経験によって異なり、また取り組む課題の内容や難易度によっ
ても異なる。
【0033】
理論に縛られるものではないが、本発明の組成物を摂取することにより、求心性迷走神
経を介して脳機能に影響を与え、交感神経や副交感神経のバランスを整えることが可能と
なる。これにより、副交感神経を亢進することができ、課題に取り組む際に、集中や緊張
状態が続き、脳が過活動になるのを防ぐことが可能となる。またGABAを摂取すること
でβ波の出現量を抑えることができることが知られており、本発明の組成物は、α波とβ波とのバランスを調節し、SMR波などの中覚醒領域の脳波が優位な状態を創り出すことが可能となる。
【0034】
一実施形態において、フロー(ゾーン)状態にあるかどうかは、少なくとも体感時間の
ゆがみによって評価することができ、被験者が特定の動作や作業などを行う際に、実際の
動作ないし作業時間よりも、被験者が感じた時間が長い、または短い場合に、当該被験者
はフロー(ゾーン)状態にあると定義することができる。体感時間のゆがみとは、実際の
時間と感じる時間が一致しない状態のことを指し、例えば、緊張状態や楽しい状態など、
人々が強い感情を経験すると、時間が速く過ぎたり、遅く過ぎたりすることがある。理論
に縛られるものではないが、これは、人々が時間の経過を認識する方法が、注意や思考な
どの要素によって影響を受けるためであり、注意や思考が高まると、人々はより注意を集
中し、より多くの情報を処理するため、時間が速く過ぎたり、遅く過ぎたりするように感
じる。本発明の組成物は、このような体感時間のゆがみを生じさせることを通じて、対象
におけるフロー(ゾーン)状態を誘導することができ、好ましくは対象が特定の課題を実
施する際にフロー(ゾーン)状態を誘導することができる。
【0035】
一実施形態において、体感時間が短縮する場合にフロー(ゾーン)状態にあるというこ
とができ、体感時間の短縮とは、時間の経過が同じであっても、時間が速く感じられるこ
とをいう。
【0036】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物におけるGABAの含有量は、その投与
方法などに応じて、本発明の組成物の効果が得られるような濃度または重量であれば特に
限定されるものではない。本発明の組成物におけるGABAの含有量は約10~約100
0mgが好ましく、含有量の下限としては、例えば約10mg以上、約30mg以上、約
50mg以上、約70mg以上、約100mg以上、約150mg以上、約200mg以
上、約300mg以上、約400mg以上、約500mg以上、約700mg以上であり
得、含有量の上限としては、例えば約1000mg以下、約800mg以下、約700m
g以下、約600mg以下、約500mg以下、約400mg以下、約300mg以下、
約200mg以下、約100mg以下であり得、含有量は任意のこれらの下限と上限との
間の数値の範囲であり得る。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、その形態に応じて、GABA以外に
、任意の添加剤や体内に摂取可能な組成物に使用可能な任意の成分を含有することができ
る。これらの添加剤及び成分の例としては、ビタミンEやビタミンC等を含むビタミン類
、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分、製剤化の際に配合される賦形剤、結
合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化
剤、着色剤、凝固剤、またはコーティング剤等が挙げられるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0038】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、GABAを含むものであればその形
態は特に限られるものではなく、例えば、医薬組成物、飲食品(特定保健用食品、栄養機
能食品、機能性表示食品等の機能性食品、健康補助食品、健康食品、サプリメント等を含
む。)、食品添加物、医薬部外品、または医薬品とすることもできる。
【0039】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は経口的に摂取することができ、経口剤
として用いる場合、その形態としては、例えば、錠剤(被覆錠剤を含む。)、カプセル剤
、粉末剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、粒状剤、粉末剤、丸状剤、ペースト状剤
、クリーム状剤、カプレット状剤、ゲル状剤、チュアブル状剤、スティック状剤等とする
ことができる。また、粉末形態や顆粒形態などの配合が容易な形態として調整してから、
他の医薬品の原材料としても用いることができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は非治療用途で用いることができ、本発
明の組成物を摂取させることにより、対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導する非治
療的な方法とすることもできる。このような方法には治療行為や医療行為は含まれず、ま
たその対象は特に制限されず、好ましくは健常人である。このような健常者に対して本開
示の組成物を摂取させることにより、フロー(ゾーン)状態を誘導することができる。ま
た、医薬品や医薬部外品として使用する場合には、フロー(ゾーン)状態の誘導などの効
能を訴求することもできる。
【0041】
本発明の組成物は治療用途で用いることができ、そのため本発明の他の局面において、
対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導するための方法であって、γ-アミノ酪酸(G
ABA)を含有する組成物を該対象に投与する工程を含む、方法が提供される。
【0042】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物に含まれるGABAの1日あたり、また
は1回あたりの摂取量は、組成物の形態、摂取方法、使用目的、および摂取対象の年齢、
体重、症状などによって適宜設定することができる。例えば、本発明の組成物に含まれる
GABAの効果をより顕著に発揮させる観点から、本発明の組成物に含まれるGABAの
1日あたりの摂取量が、約10mg/日以上となるように摂取することが好ましく、より
好ましくは約25mg/日以上、約50mg/日以上、約60mg/日以上、約80mg
/日以上、約100mg/日以上、約120mg/日以上、約150mg/日以上、約1
80mg/日以上、約200mg/日以上、約300mg/日以上、約400mg/日以
上、約500mg/日以上、約800mg/日以上、約1000mg/日以上となるよう
に摂取することができる。本発明の組成物に含まれるGABAの1日当たりの摂取量の上
限は、本発明の組成物によるフロー(ゾーン)状態の誘導効果を発揮することができる範
囲の量であれば、特に制限されるものではない。
【0043】
本発明の一実施形態において、本発明の方法の適用頻度、または本発明の組成物の摂取
頻度は、所望の摂取量範囲内において、1日に1回または複数回に分けて摂取してもよく
、また摂取期間も本発明の組成物によるフロー(ゾーン)状態の誘導効果を発揮すること
ができる範囲で適宜設定することができる。
【0044】
一実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるフロー(ゾーン)状態の誘導と
は独立して、対象におけるエキサイティングな気持ちを誘導するためのものとして提供す
ることができる。本発明の組成物を摂取することにより、被験者においてエキサイティン
グな気持ちを誘導させ、これにより課題に取り組む際にスコアを向上させたり、効率的な
進行を達成することができる。
【0045】
他の実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるフロー(ゾーン)状態の誘導
とは独立して、対象におけるポジティブな気持ちを誘導するためのものとして提供するこ
とができる。本発明の組成物を摂取することにより、被験者においてポジティブな気持ち
を誘導させ、これにより課題に取り組む際にスコアを向上させたり、効率的な進行を達成
することができる。
【0046】
他の実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるフロー(ゾーン)状態の誘導
とは独立して、対象における活気・活力感の低下を軽減するためのものとして提供するこ
とができる。本発明の組成物を摂取することにより、被験者において活気・活力感の低下
を軽減させ、これにより課題に取り組む際にスコアを向上させたり、効率的な進行を達成
することができる。
【0047】
他の実施形態において、本発明の組成物は、対象におけるフロー(ゾーン)状態の誘導
とは独立して、対象における精神的ストレスおよび/または疲労感を緩和するためのもの
として提供することができる。本発明の組成物を摂取することにより、被験者において精
神的ストレスおよび/または疲労感を緩和させ、これにより課題に取り組む際にスコアを
向上させたり、効率的な進行を達成することができる。
【0048】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上
」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つ
の値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体
が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0049】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に
、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的
のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は
、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲に
よってのみ限定される。
【実施例
【0050】
(実施例1:ゲーム試験1)
本実施例では、GABAを摂取した場合のゲームスコアの変化について確認した。
26~33歳の男女計10名(1回目試験)、26~33歳の男女計19名(2回目試
験)を被験者として、被験飲料を摂取した後のゲームの成績を評価した。試験デザインは
クロスオーバー試験とした。
【0051】
被験飲料は以下のとおりである。
・GABA水(PharmaGABA 200mg/350mL)
・Red Bull(登録商標)(アルギニン300mg・カフェイン100mg/25
0mL)
・水(250mL)
【0052】
ゲームとしては、1回目試験ではゲーム機:Wii(登録商標)(任天堂)、ゲームソ
フト:GHOST SQUADTM(セガ)を、2回目試験ではゲーム機:PlaySt
ation(登録商標)3(ソニー・コンピュータエンタテインメント)、ゲームソフト
:TIME CRISIS 4(バンダイナムコゲームス)をそれぞれ用いた。
【0053】
VAS調査については、「集中力・興奮・ポジティブシンキング」といった項目の体感
についてのアンケートをとることで実施した。Freyd M.らの方法に従い、100
mmの線分上左端を「全く感じない(=0mm)」、右端を「今までで最も感じる(=1
00mm)」とした。左端と、被験者が任意で×印をつけた線分上の位置との間の距離を
計測し、数値化した。被験飲料摂取直後の値から試験終了後の値の差をとることにより、
試験全体で感じた体感について評価を行った。
【0054】
また被験飲料の摂取、ゲーム実施、およびVASアンケートのタイミングは図1に示す
とおりである。
【0055】
1回目試験の結果を図2に示す。図2からわかるとおり、1回目試験では、水を摂取し
た群およびエナジードリンク(Red Bull)を摂取した群と比較して、GABAを
摂取した群のゲームスコアが向上する傾向を示し、またミスショット数も減少していた。
またアンケートの結果から、GABAを摂取した群では、ゲーム中に興奮状態にあり、ま
た前向きな気持ちになっていることがわかる。
【0056】
2回目試験の結果を図3に示す。図3からわかるとおり、2回目試験においても、水を
摂取した群およびエナジードリンク(Red Bull)を摂取した群と比較して、GA
BAを摂取した群のゲームスコアが向上する傾向を示し、また命中率が向上していた。ま
たGABAを摂取した群では、ゲーム中のミッション成功回数も向上していた。またアン
ケートの結果から、GABAを摂取した群では、ゲーム中に興奮状態にあり、また前向き
な気持ちになっていることがわかる。
【0057】
1回目試験および2回目試験ともに、GABAを摂取することにより、主観的な「ex
citing」のスコアが向上した。「exciting」のスコアが向上したことは、
一見、既に報告されている、GABA摂取による副交感神経が亢進するメカニズムと相反
するように見えるが、既知の報告においては、クレペリン検査等を用いた単純な計算問題
を課した被験者において、GABAを摂取することによりストレス・疲労感の軽減する効
果が得られるものである。一方で、本試験においては、毎秒異なる情報が提示され、毎秒
異なる操作を行う必要があるゲームを課して評価している。そのため、本試験のような次
々と情報処理を処理する状態においては、適度に興奮している状態が大事であると考えら
れる。つまり、GABAを摂取することにより、交感神経と副交感神経のバランスが良い
状態が形成された結果、「exciting」のスコアが向上したと考えられる。よって
、本試験の結果は、既存のGABAの効果と矛盾するものではない。
【0058】
(実施例2:ゲーム試験2)
本実施例では、GABAを摂取した場合の集中時間の変化について確認した。
スクリーニングにて、「ゲームで集中力が上昇する者」、かつ「試験食品を摂取した際
に集中力が上昇する余地がある者」の両方を満たす7名を被験者として、被験飲料を摂取
する前と後におけるゲーム中の集中力を評価した。試験デザインは単盲検クロスオーバー
試験とし、wash outは1日以上とした。
【0059】
被験飲料は以下のとおりである。
・Placebo飲料:0.6%砂糖水 250mL
・GABA飲料:GABA 100mg含有0.6%砂糖水 250mL
【0060】
ゲームとしては、携帯ゲーム(テトリス)を用いた。
【0061】
また被験飲料の摂取およびゲーム実施のタイミングは図4に示すとおりである。
【0062】
集中力の測定はJINS MEME ESを用いた。JINS MEME ESでは眼
電位から、まばたき、視線移動を捉え、集中力およびZoneを算出する。
【0063】
結果を図5に示す。図5からわかるとおり、GABAを100mg摂取すると、集中時
間合計の割合、およびZoneの割合がプラセボ群と比べて有意に増加した。これにより
、GABAにより集中力およびZoneが増加することが明らかとなった。
【0064】
(実施例3:時間間隔のゆがみの評価)
本実施例では、フロー(ゾーン)状態の特徴である時間間隔のゆがみが、GABA摂取
によって生じるかどうかを確認した。
【0065】
プラセボ、GABA、またはカフェインを摂取したうえで、約15分後に、タイピング
ゲームを計5分間行い、VASアンケートにより時間知覚評価を行った。詳細には、1回
目のタイピングゲームは約2分で終了し(前半試験)、終了次第スコアを記録し、2回目
(後半試験)のタイピングゲームを直ちにスタートした(インターバルは約10秒)。そ
の後、体感時間は実際の時間(5分間)と比べてどのように感じたかというアンケートを
行った。
【0066】
また集中力測定眼鏡(JINS MEME)を用いて、集中・深い集中状態の時間を計
測した。タイピングゲームの正確な入力数(回)、平均タイプ数(回)、ミスタイプ数(
回)を記録した。
【0067】
結果を図6Aおよび6Bに示した。この結果から、集中時間がプラセボ群と比べて増加
していることがわかる。またGABAを摂取すると、体感時間は実際の時間よりも短く感
じていることがわかる。これにより、GABAにより、体感時間のゆがみ、特に体感時間
の短縮が生じることが明らかとなった。
【0068】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は
、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明
細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書
に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであ
ることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、GABAを摂取することで、フロー(ゾーン)状態を誘導することがで
きるため、認知能力や思考能力を必要とする分野において有用である。
【要約】
【課題】 対象においてフロー(ゾーン)状態を誘導すること。
【解決手段】 本発明によれば、γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する、対象における
フロー(ゾーン)状態を誘導するための組成物が提供される。本発明の組成物は、対象が
特定の作業や動作を行う際にフロー(ゾーン)状態を誘導することができる。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6