IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧 ▶ 国立大学法人 千葉大学の特許一覧

特許7626385造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム
<>
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図1
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図2
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図3
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図4
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図5
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図6
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図7
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図8
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図9
  • 特許-造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20250128BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20250128BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20250128BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250128BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20250128BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020086703
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181170
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 航
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】津村 徳道
(72)【発明者】
【氏名】平井 経太
(72)【発明者】
【氏名】永沢 和輝
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079416(WO,A1)
【文献】特開2015-123685(JP,A)
【文献】特開2018-108725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形装置において造形する造形物を示す造形データを生成する造形データの生成方法であって、
前記造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定段階と、
前記着色構成決定段階で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記造形データを生成するデータ生成段階と
を備え、
前記着色領域は、前記造形物において光反射性を有する光反射領域の外側に形成され、かつ、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定段階は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定段階と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定段階と
を有し、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれは、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成される領域であり、
前記色決定段階において、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域に対し、互いに異なる色を決定することを特徴とする造形データの生成方法。
【請求項2】
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域の前記法線方向における厚さは、予め設定された一定の厚さであり、
前記透光性領域の前記法線方向における厚さは、可変であり、
前記透光性領域厚決定段階において、前記造形物において表現しようとする質感に応じて前記透光性領域の厚さを決定することを特徴とする請求項1に記載の造形データの生成方法。
【請求項3】
前記透光性領域厚決定段階において、前記透光性領域の厚さを指定する指示をユーザから受け付け、当該指示に基づき、前記透光性領域の厚さを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の造形データの生成方法。
【請求項4】
前記造形物において表現しようとする質感を示す質感パラメータを取得する質感パラメータ取得段階を更に備え、
前記透光性領域厚決定段階において、前記質感パラメータ取得段階で取得する前記質感パラメータに基づき、前記透光性領域の厚さを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の造形データの生成方法。
【請求項5】
前記造形装置は、造形の材料となるインクをインクジェットヘッドから吐出することで、前記着色領域及び前記光反射領域備える前記造形物を、積層造形法で造形し、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域は、前記複数色のカラーインクを用いて着色がされる領域であり、
前記透光性領域は、前記クリアインクを用いて形成される無色で透明な領域であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の造形データの生成方法。
【請求項6】
前記造形装置は、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれに着色する色の違いによって生じる前記複数色のカラーインクの使用量の変化を補填するように前記クリアインクを用いることで、位置によって前記法線方向における厚みに変化が生じないように、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域を形成することを特徴とする請求項5に記載の造形データの生成方法。
【請求項7】
前記着色領域は、前記透光性領域として、
前記第1カラー領域と前記第2カラー領域との間に形成される前記透光性領域である中間透光性領域と、
前記造形物において前記第2カラー領域よりも内側に形成される前記透光性領域である内側透光性領域と
を有し、
前記透光性領域厚決定段階において、前記中間透光性領域及び前記内側透光性領域のそれぞれの前記法線方向における厚さを決定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の造形データの生成方法。
【請求項8】
前記着色領域は、前記造形物において前記第1カラー領域よりも外側に形成される前記透光性領域である外側透光性領域を更に有し、
前記透光性領域厚決定段階において、前記外側透光性領域の前記法線方向における厚さを更に決定することを特徴とする請求項7に記載の造形データの生成方法。
【請求項9】
前記着色領域は、
前記造形物における前記第2カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第3カラー領域を更に有し、
前記透光性領域として、
前記第1カラー領域と前記第2カラー領域との間に形成される前記透光性領域と、
前記第2カラー領域と前記第3カラー領域との間に形成される前記透光性領域と
を含む複数の前記透光性領域を有し、
前記透光性領域厚決定段階において、前記複数の透光性領域のそれぞれの前記法線方向における厚さを決定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の造形データの生成方法。
【請求項10】
前記色決定段階において、前記造形物として造形する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づき、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の造形データの生成方法。
【請求項11】
前記色決定段階において、色素成分分離法により前記外観画像の色素成分を分離することで、前記対象物の内部の色に対応する内部色と、前記内部よりも前記対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定し、前記表面色に基づいて前記第1カラー領域の色を決定し、前記内部色に基づいて前記第2カラー領域の色を決定することを特徴とする請求項10に記載の造形データの生成方法。
【請求項12】
造形装置において造形する造形物を示す造形データを生成する造形データの生成方法であって、
前記造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定段階と、
前記着色構成決定段階で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記造形データを生成するデータ生成段階と
を備え、
前記着色領域は、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定段階は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定段階と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定段階と
を有し、
前記色決定段階において、前記造形物として造形する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づき、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定し、
かつ、色素成分分離法により前記外観画像の色素成分を分離することで、前記対象物の内部の色に対応する内部色と、前記内部よりも前記対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定し、前記表面色に基づいて前記第1カラー領域の色を決定し、前記内部色に基づいて前記第2カラー領域の色を決定し、
かつ、人間の肌の表面の色を示す前記外観画像を用い、色素成分分離法により、肌におけるメラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離し、前記メラニン成分に基づいて前記表面色を決定し、前記ヘモグロビン成分に基づいて前記内部色を決定することを特徴とする造形データの生成方法。
【請求項13】
造形物を造形する造形方法であって、
請求項1から12のいずれかに記載の造形データの生成方法によって前記造形データを生成する造形データ生成段階と、
前記造形データ生成段階で生成する前記造形データに基づいて前記造形物を造形する造形段階と
を備えることを特徴とする造形方法。
【請求項14】
造形装置において造形する造形物を示す造形データを生成する造形データ生成装置であって、
前記造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定部と、
着色構成決定部で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記造形データを生成する造形データ生成部と
を備え、
前記着色領域は、前記造形物において光反射性を有する光反射領域の外側に形成され、かつ、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定部は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定処理と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定処理と
を行うことで、前記着色領域の構成を決定し、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれは、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成される領域であり、
前記色決定処理において、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域に対し、互いに異なる色を決定することを特徴とする造形データ生成装置。
【請求項15】
造形装置において造形する造形物を示す造形データを生成する造形データ生成装置であって、
前記造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定部と、
着色構成決定部で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記造形データを生成する造形データ生成部と
を備え、
前記着色領域は、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定部は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定処理と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定処理と
を行うことで、前記着色領域の構成を決定し、
前記色決定処理において、前記造形物として造形する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づき、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定し、
かつ、色素成分分離法により前記外観画像の色素成分を分離することで、前記対象物の内部の色に対応する内部色と、前記内部よりも前記対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定し、前記表面色に基づいて前記第1カラー領域の色を決定し、前記内部色に基づいて前記第2カラー領域の色を決定し、
かつ、人間の肌の表面の色を示す前記外観画像を用い、色素成分分離法により、肌におけるメラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離し、前記メラニン成分に基づいて前記表面色を決定し、前記ヘモグロビン成分に基づいて前記内部色を決定することを特徴とする造形データ生成装置。
【請求項16】
造形物を造形する造形システムであって、
請求項14又は15に記載の造形データ生成装置と、
前記造形データ生成装置が生成する前記造形データに基づいて前記造形物を造形する造形装置と
を備えることを特徴とする造形システム。
【請求項17】
印刷装置において印刷する印刷物を示す印刷データを生成する印刷データの生成方法であって、
前記印刷物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定段階と、
前記着色構成決定段階で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記印刷データを生成するデータ生成段階と
を備え、
前記着色領域は、前記印刷物において光反射性を有する光反射領域の外側に形成され、かつ、前記印刷物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定段階は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定段階と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定段階と
を有し、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれは、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成される領域であり、
前記色決定段階において、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域に対し、互いに異なる色を決定することを特徴とする印刷データの生成方法。
【請求項18】
印刷装置において印刷する印刷物を示す印刷データを生成する印刷データの生成方法であって、
前記印刷物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定段階と、
前記着色構成決定段階で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記印刷データを生成するデータ生成段階と
を備え、
前記着色領域は、前記印刷物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定段階は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定段階と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定段階と
を有し、
前記色決定段階において、前記印刷物として印刷する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づき、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定し、
かつ、色素成分分離法により前記外観画像の色素成分を分離することで、前記対象物の内部の色に対応する内部色と、前記内部よりも前記対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定し、前記表面色に基づいて前記第1カラー領域の色を決定し、前記内部色に基づいて前記第2カラー領域の色を決定し、
かつ、人間の肌の表面の色を示す前記外観画像を用い、色素成分分離法により、肌におけるメラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離し、前記メラニン成分に基づいて前記表面色を決定し、前記ヘモグロビン成分に基づいて前記内部色を決定することを特徴とする印刷データの生成方法。
【請求項19】
印刷物を印刷する印刷方法であって、
請求項17又は18に記載の印刷データの生成方法によって前記印刷データを生成する印刷データ生成段階と、
前記印刷データ生成段階で生成する前記印刷データに基づいて前記印刷物を印刷する印刷段階と
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項20】
印刷装置において印刷する印刷物を示す印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、
前記印刷物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定部と、
着色構成決定部で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記印刷データを生成する印刷データ生成部と
を備え、
前記着色領域は、前記印刷物において光反射性を有する光反射領域の外側に形成され、かつ、前記印刷物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定部は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定処理と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定処理と
を行うことで、前記着色領域の構成を決定し、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれは、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成される領域であり、
前記色決定処理において、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域に対し、互いに異なる色を決定することを特徴とする印刷データ生成装置。
【請求項21】
印刷装置において印刷する印刷物を示す印刷データを生成する印刷データ生成装置であって、
前記印刷物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定部と、
着色構成決定部で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記印刷データを生成する印刷データ生成部と
を備え、
前記着色領域は、前記印刷物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、
着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、
前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域と
を有し、
前記着色構成決定部は、
前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定処理と、
前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定処理と
を行うことで、前記着色領域の構成を決定し、
前記色決定処理において、前記印刷物として印刷する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づき、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定し、
かつ、色素成分分離法により前記外観画像の色素成分を分離することで、前記対象物の内部の色に対応する内部色と、前記内部よりも前記対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定し、前記表面色に基づいて前記第1カラー領域の色を決定し、前記内部色に基づいて前記第2カラー領域の色を決定し、
かつ、人間の肌の表面の色を示す前記外観画像を用い、色素成分分離法により、肌におけるメラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離し、前記メラニン成分に基づいて前記表面色を決定し、前記ヘモグロビン成分に基づいて前記内部色を決定することを特徴とする印刷データ生成装置。
【請求項22】
印刷物を印刷する印刷システムであって、
請求項20又は21に記載の印刷データ生成装置と、
前記印刷データ生成装置が生成する前記印刷データに基づいて前記印刷物を印刷する印刷装置と
を備えることを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。また、このような造形装置では、例えば、造形物の表面に対して着色を行いつつ造形物の造形を行うことで、着色された造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-071282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、造形装置の用途の広がり等により、より高い品質での着色がされた造形物を造形することが望まれている。例えば、人間を示す造形物を造形する場合等において、人間の肌の質感等を高い品質で再現するように造形物の着色を行うこと等が望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形データの生成方法、造形方法、造形データ生成装置、造形システム、印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、造形物の表面に形成する着色領域について、従来の一般的な構成と同じように形成するのではなく、複数の層状の領域が重なる構成で形成することを考えた。また、この場合において、着色された複数のカラー領域を重ねることで、従来の構成と比べて多様な質感を表現できることに着目した。そして、鋭意研究により、このような複数の層状の領域の一部としてカラー領域よりも透光性が高い透光性領域を更に用い、かつ、透光性領域の厚さを可変にすることで、より多様な質感を表現できることを見出した。また、この場合、例えば、このような着色領域を備える造形物を示す造形データを生成して、その造形データに基づいて造形物の造形を行うことで、多様な質感を表現できる造形物を造形することができる。
【0006】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、造形装置において造形する造形物を示す造形データを生成する造形データの生成方法であって、前記造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を決定する着色構成決定段階と、前記着色構成決定段階で決定する前記着色領域の構成に基づいて前記造形データを生成するデータ生成段階とを備え、前記着色領域は、前記造形物の表面と直交する方向である法線方向に複数の層状の領域が重なる領域であり、前記複数の層状の領域として、着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域と、前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域と、前記造形物における前記第1カラー領域よりも内側において透明な材料を用いて前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域とを有し、前記着色構成決定段階は、前記第1カラー領域及び前記第2カラー領域のそれぞれの色を決定する色決定段階と、前記法線方向における前記透光性領域の厚さを決定する透光性領域厚決定段階とを有する。
【0007】
このように構成すれば、例えば、複数のカラー領域及び透光性領域が重なる着色領域を備える造形物を示す造形データを適切に生成することができる。また、このような造形データを用いて造形装置に造形を行わせることで、例えば、多様な質感を表現する造形物を造形装置に造形させることができる。更に、この場合において、透光性領域厚決定段階で透光性領域の厚さを決定することで、透光性領域の厚さを可変にすることができる。また、これにより、例えば、より多様な質感を表現する造形物を造形装置に造形させることができる。
【0008】
この構成において、透光性領域の透光性が第1カラー領域及び第2カラー領域よりも高いことについては、例えば、可視光領域の光に対する透光性が高いこと等と考えることができる。透光性領域としては、例えば、無色で透明な領域を形成することが考えられる。この場合、無色であることについては、例えば、意図的に着色を行っていないこと等と考えることができる。また、無色であることについては、例えば、色材を意図的に添加していない材料で形成されること等と考えることもできる。透光性領域については、可視光領域の光に対し、60%以上の透過率になるように形成することが好ましい。可視光領域の光に対する透光性領域の透過率は、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0009】
また、この構成において、造形装置で造形では、例えば、表面の少なくとも一部が着色された3次元(3D)の造形物を造形することが考えられる。この場合、造形物の表面については、例えば、外部から色彩が視認できる領域等と考えることができる。また、造形装置においては、例えば、平面状の媒体(メディア)の上に造形の材料を積層することで、媒体とつながった状態の造形物を造形すること等も考えられる。この場合、このような造形物について、例えば、2.5次元(2.5D)の造形物等と考えることもできる。
【0010】
また、この構成において、造形装置は、例えば、造形の材料となるインクをインクジェットヘッドから吐出することで、積層造形法で造形物を造形する。また、これにより、造形装置は、例えば、着色領域及び光反射領域を備える造形物を造形する。この場合、光反射領域については、例えば、着色領域の内側において光反射性に形成される領域等と考えることができる。また、この場合、造形装置は、第1カラー領域及び第2カラー領域として、例えば、複数色のカラーインクを用いて着色がされる領域を形成する。また、透光性領域として、例えば、クリアインクを用いて形成される無色で透明な領域を形成する。このように構成すれば、例えば、多様な質感を表現する造形物を造形装置において適切に造形することができる。
【0011】
また、より具体的に、この構成において、第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれについては、例えば、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成することが考えられる。この場合、造形装置は、例えば、第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれに着色する色の違いによって生じる複数色のカラーインクの使用量の変化を補填するようにクリアインクを用いることで、位置によって法線方向における厚みに変化が生じないように、第1カラー領域及び第2カラー領域を形成する。このように構成すれば、例えば、第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれに対し、様々な色での着色を適切に行うことができる。
【0012】
また、この場合、透光性領域については、例えば、クリアインクのみで形成することが考えられる。透光性領域に関し、無色であることについては、例えば、造形に求められる品質において実質的に無色であると見なせること等と考えることができる。また、造形物に求められる質感等によっては、クリアインク以外の色のインクを更に用いて透光性領域を形成すること等も考えられる。この場合、透光性領域の形成に用いるインクの量のうち、80%以上をクリアインクの割合(重量比での割合)にすることが好ましい。透光性領域におけるクリアインクの割合は、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。このように構成すれば、例えば、わずかに色をつけたほぼ透明な透光性領域を適切に形成することができる。
【0013】
また、この構成において、色決定段階では、例えば、第1カラー領域及び第2カラー領域に対し、互いに異なる色を決定する。このように構成すれば、例えば、多様な質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。また、これにより、例えば、造形物において多様な質感を適切に表現することができる。
【0014】
また、この構成において、透光性領域の法線方向における厚さについては、可変であると考えることができる。これに対し、第1カラー領域及び第2カラー領域の法線方向における厚さについては、例えば、予め設定された一定(固定)の厚さにすることが考えられる。また、この場合、透光性領域厚決定段階では、例えば、造形物において表現しようとする質感に応じて透光性領域の厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、所望の質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。また、この場合、第1カラー領域及び第2カラー領域を一定にした上で透光性領域の厚さを可変とすることで、例えば、より容易かつ適切に質感の調整等と行うことが可能になる。また、この構成において、透光性領域厚決定段階では、例えば、透光性領域の厚さを指定する指示をユーザから受け付け、当該指示に基づき、透光性領域の厚さを決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、ユーザの指示に基づいて、所望の質感を得るための透光性領域の厚さを適切に決定することができる。
【0015】
また、透光性領域厚決定段階では、例えば、透光性領域の厚さを指定するユーザの指示以外の方法で取得するパラメータ等に基づいて、透光性領域の厚さを決定してもよい。この場合、造形データの生成方法は、例えば、造形物において表現しようとする質感を示す質感パラメータを取得する質感パラメータ取得段階を更に備える。また、この場合、透光性領域厚決定段階では、例えば、質感パラメータ取得段階で取得する質感パラメータに基づき、透光性領域の厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、所望の質感に合わせた透光性領域の厚さを適切に決定することができる。質感パラメータ取得段階では、例えば、予め用意された質感パラメータを取得することが考えられる。この場合、例えば、造形物の形状を示す形状データ等と対応付けられた質感パラメータを取得することが考えられる。また、質感パラメータ取得段階では、例えば、質感の指定をユーザから受け付けることで設定される質感パラメータを取得してもよい。この場合、例えば、造形物を示すコンピュータグラフィック画像(CG画像)に対してユーザが設定する質感を示す質感パラメータを取得すること等が考えられる。
【0016】
また、この構成において、透光性領域については、例えば、第1カラー領域と第2カラー領域との間に形成することが考えられる。また、透光性領域について、例えば、第2カラー領域の内側に形成すること等も考えられる。これらのように構成すれば、例えば、多様な質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。また、透光性領域について、例えば、第1カラー領域の外側に形成すること等も考えられる。
【0017】
また、着色領域は、複数の透光性領域を有してもよい。この場合、着色領域は、透光性領域として、例えば、中間透光性領域及び内側透光性領域を有する。中間透光性領域については、例えば、第1カラー領域と第2カラー領域との間に形成される透光性領域等と考えることができる。内側透光性領域については、例えば、造形物において第2カラー領域よりも内側に形成される透光性領域等と考えることができる。また、この場合、透光性領域厚決定段階では、例えば、中間透光性領域及び内側透光性領域のそれぞれの法線方向における厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、より多様な質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。また、着色領域は、外側透光性領域を更に有してもよい。外側透光性領域については、例えば、造形物において第1カラー領域よりも外側に形成される透光性領域等と考えることができる。また、この場合、透光性領域厚決定段階では、例えば、外側透光性領域の法線方向における厚さを更に決定する。このように構成すれば、例えば、より多様な質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。
【0018】
また、着色領域は、第1カラー領域及び第2カラー領域以外のカラー領域を更に有してもよい。この場合、着色領域は、例えば、造形物における第2カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第3カラー領域を更に有する。また、この場合、それぞれの着色領域の間に透光性領域を形成することが考えられる。より具体的に、この場合、着色領域は、例えば、第1カラー領域と第2カラー領域との間に形成される透光性領域と、第2カラー領域と第3カラー領域との間に形成される透光性領域とを含む複数の透光性領域を有する。また、この場合、透光性領域厚決定段階では、例えば、複数の透光性領域のそれぞれの法線方向における厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、より多様な質感を表現する造形物を造形装置に適切に造形させることができる。また、着色領域は、4つ以上のカラー領域を有してもよい。
【0019】
また、この構成において、色決定段階では、第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれの色について、例えば、造形物として造形する対象物の外観の少なくとも一部を示す画像である外観画像に基づいて決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、対象物を表現する造形物を示す造形データを適切に生成できる。また、より具体的に、色決定段階では、例えば、色素成分分離法により外観画像の色素成分を分離することで、対象物の内部の色に対応する内部色と、内部よりも対象物の表面に近い部分の色に対応する表面色とを決定する。また、この場合、例えば、表面色に基づいて第1カラー領域の色を決定し、内部色に基づいて第2カラー領域の色を決定する。このように構成すれば、例えば、第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれの色を適切に決定することができる。
【0020】
また、更に具体的に、造形装置では、例えば、人間を示す造形物(フィギュア等)を造形することが考えられる。そして、この場合、例えば、人間の肌の表面の色を示す外観画像を用いることが考えられる。また、この場合、色決定段階では、外観画像に基づき、色素成分分離法により、例えば、肌におけるメラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離する。そして、例えば、メラニン成分に基づいて表面色を決定し、ヘモグロビン成分に基づいて内部色を決定する。このように構成すれば、例えば、人間の肌の質感を表現する場合における第1カラー領域及び第2カラー領域のそれぞれの色を適切に決定することができる。
【0021】
また、本発明の特徴については、必ずしも複数のカラー領域を形成する場合に限らず、着色領域において1つのカラー領域のみを形成する場合に着目して考えることもできる。また、本発明の特徴について、例えば、造形方法の特徴として考えることもできる。この場合、造形方法は、例えば、上記の造形データの生成方法によって造形データを生成する造形データ生成段階と、造形データ生成段階で生成する造形データに基づいて造形物を造形する造形段階とを備える。また、本発明の特徴として、上記と同様の特徴を有する造形データ生成装置や造形システム等を考えることもできる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、本発明の特徴については、例えば、立体物を造形する構成ではなく、2次元(2D)の画像を印刷する構成に適用して考えることもできる。この場合、上記における造形に関する事項について、印刷に関する事項に置き換えて考えることができる。より具体的に、この場合、造形装置に代えて印刷装置を用い、造形データに代えて印刷データを用いて、造形物に代えて印刷物を作成することが考えられる。また、この場合、本発明の特徴として、上記と同様の特徴を有する印刷データの生成方法、印刷方法、印刷データ生成装置、及び印刷システム等を考えることもできる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、例えば、造形物において多様な質感を適切に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る造形データの生成方法を実行する造形システム10について説明をする図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、造形システム10における造形実行部12の要部の構成の一例を示す。図1(c)は、造形実行部12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。
図2】造形実行部12において造形する造形物50の構成について説明をする図である。図2(a)は、造形物50の構成の一例を示す断面図である。図2(b)は、造形物50における着色領域154の構成の一例を示す。
図3】造形システム10において行う動作について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、造形システム10において造形物50を造形する動作の一例を示すフローチャートである。図3(b)は、着色構成決定部16が着色領域154の構成を決定する動作の一例を示すフローチャートである。
図4】クリア領域304a~cの厚さの決定の仕方について更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、クリア領域304a~cの厚さの決定の決定時にユーザに示す画面である領域操作画面の一例を示す。図4(b)は、領域操作画面において最初に表示する厚さの設定であるデフォルト設定の一例を示す。
図5図4と共にクリア領域304a~cの厚さの決定の仕方について更に詳しく説明をする図である。図5(a)、(b)は、ユーザの指示に応じてクリア領域304a~cの厚さの設定を変更する動作の例を示す。
図6】着色構成決定部16において複数のカラー領域302a、bの色を決定する動作について更に詳しく説明をする図である。
図7】本願の発明者らが行った実験の条件について説明をする図である。図7(a)は、評価対象として用いた試料の構成を示す。図7(b)は、主観評価に用いた形容詞対を示す。
図8】本願の発明者らが行った因子分析の結果を示すグラフである。
図9】着色領域154や造形物50の変形例について説明をする図である。図9(a)は、着色領域154の構成の変形例を示す。図9(b)は、造形物50の構成の変形例を示す。
図10】着色領域154を備える印刷物の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形データの生成方法を実行する造形システム10について説明をする図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。以下において説明をする点を除き、造形システム10は、公知の造形システムと同一又は同様の特徴を有してよい。
【0026】
本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形するシステムであり、造形実行部12、造形データ生成部14、及び着色構成決定部16を備える。造形実行部12は、造形システム10において造形物の造形を実行する構成であり、造形の材料としてインクを用い、インクの層を積層することにより、積層造形法で造形物を造形する。この場合、積層造形法については、例えば、複数の層を重ねて造形物を造形する方法等と考えることができる。造形物については、例えば、立体的な三次元構造物等と考えることができる。インクについては、例えば、機能性の液体等と考えることができる。また、本例において、インクは、造形の材料の一例である。インクについては、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。この場合、インクジェットヘッドとは、インクジェット方式で液体を吐出する吐出ヘッドのことである。
【0027】
また、本例において、造形実行部12は、互いに異なる色の複数色のインクを用いて、着色された造形物を造形する。このような造形実行部12としては、例えば、公知の造形装置を好適に用いることができる。より具体的に、造形実行部12としては、例えば、ミマキエンジニアリング社製の造形装置(3Dプリンタ)等を好適に用いることができる。また、本例において、インクとしては、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)を用いる。また、本例において、造形実行部12は、造形データ生成部14から受け取る造形データに基づき、造形の動作を実行する。造形データについては、例えば、造形装置において造形する造形物を示すデータ等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、造形データとしては、造形物を構成する各領域の構成等を示すデータを用いる。また、この場合、造形データは、少なくとも、造形物において着色がされる領域である着色領域の構成を示す。本例における着色領域の構成等については、後に更に詳しく説明をする。
【0028】
尚、上記の説明等から理解できるように、本例においては、造形実行部12について、造形装置の一例と考えることができる。また、造形システム10の構成によっては、造形システム10の全体について、造形装置の一例と考えることもできる。また、例えば、造形実行部12と造形データ生成部14とを合わせた部分について、造形装置の一例と考えることもできる。また、本例において、造形実行部12は、造形物の断面を示すスライスデータに基づいてインクを吐出することで、スライスデータに対応するインクの層を形成する。また、この場合において、積層方向における互いに異なる位置での造形物の断面を示すスライスデータに基づき、積層方向における造形物の各位置を構成するインクの層を形成する。積層方向については、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向等と考えることができる。
【0029】
造形データ生成部14は、造形実行部12へ供給する造形データを生成する構成であり、造形データを造形実行部12へ供給することで、造形実行部12において実行する造形の動作を制御する。造形データ生成部14としては、例えば、所定のプログラムに応じて動作するコンピュータ等を好適に用いることができる。また、造形データ生成部14は、造形実行部12において決定される着色領域の構成に基づき、造形データを生成する。より具体的に、本例において、造形データ生成部14は、造形実行部12において決定される構成の着色領域を有する造形物を示す造形データを生成して、造形データを造形実行部12へ供給することで、造形実行部12において決定される構成の着色領域を有する造形物を造形実行部12に造形させる。
【0030】
ここで、造形データ生成部14において生成する造形データについては、例えば、造形物の形状、及び造形物の各位置の色を示すデータ等と考えることができる。また、本例において、造形データは、造形物の各位置の色として、造形物の内部も含めて、造形物の全体の各位置の色を示す。また、上記において説明をしたように、本例において、造形実行部12は、スライスデータに基づき、造形物の造形を行う。この場合、造形データ生成部14は、例えば、造形データとして、スライスデータを生成する。造形データとしてスライスデータを生成することについては、例えば、造形実行部12において決定される構成について造形物の各位置の断面毎に示すデータを造形データとして生成すること等と考えることもできる。また、スライスデータについては、造形実行部12において生成すること等も考えられる。この場合、造形データ生成部14は、造形物の全体をまとめて示す造形データを生成する。また、造形実行部12は、例えば、造形データ生成部14から受け取る造形データを切り分けるスライス処理を行うことで、スライスデータを生成する。また、この場合、造形データ生成部14において生成する造形データについて、例えば、スライス処理を行う前の状態で造形物を示すデータ等と考えることができる。
【0031】
着色構成決定部16は、造形物における着色領域の構成を決定する構成であり、決定した着色領域の構成を造形データ生成部14へ伝えることで、決定した構成の着色領域を備える造形物を示す造形データを造形データ生成部14に生成させる。着色構成決定部16としては、例えば、所定のプログラムに応じて動作するコンピュータ等を好適に用いることができる。また、この場合、着色構成決定部16用のコンピュータとしては、例えば造形データ生成部14用とは異なる専用のコンピュータを用いてもよく、例えば造形データ生成部14用と共通のコンピュータ(1つのコンピュータ)を用いてもよい。また、本例において、着色構成決定部16は、所望の質感を表現するための着色領域の構成を決定する。着色構成決定部16において決定する着色領域の構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0032】
続いて、造形実行部12のより具体的な構成等について、更に詳しく説明をする。図1(b)は、造形実行部12の要部の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、造形実行部12は、公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形実行部12は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形実行部12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0033】
本例において、造形実行部12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)であり、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び造形制御部110を備える。ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、上記においても説明をしたように、本例において、造形物50の材料としては、紫外線硬化型のインクを用いる。この場合、紫外線硬化型のインクは、所定の条件に応じて硬化するインクの一例である。また、より具体的に、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、紫外線硬化型のインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲等に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の少なくとも一部を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0034】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50及びサポート層52を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。また、本例において、積層方向は、造形実行部12において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0035】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台104に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部102に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部106は、走査動作として、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査動作(Z走査)をヘッド部102に行わせる。主走査動作については、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作については、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作等と考えることもできる。本例において、走査駆動部106は、主走査動作の合間に、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。また、積層方向走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部102を移動させる動作のことである。走査駆動部106は、例えば、造形台104を積層方向へ移動させることで、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査動作を行わせる。また、これにより、走査駆動部106は、例えば、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。
【0036】
造形制御部110は、例えば造形実行部12のCPUを含む構成であり、造形実行部12の各部を制御することにより、造形実行部12における造形の動作を制御する。また、本例において、造形制御部110は、造形データ生成部14から受け取る造形データに基づき、造形実行部12において決定される構成の着色領域を備える造形物50が造形されるように、造形実行部12の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
【0037】
また、本例において、造形実行部12におけるヘッド部102は、例えば図1(c)に示す構成を有する。図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線光源204、及び平坦化手段206を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、図中に示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0038】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、白色のインクは、光反射性のインクの一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対してフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現については、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色法の可能な組み合わせで行う色の表現等と考えることができる。
【0039】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202kは、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドであり、着色に用いる複数色のインク(着色用の有色のインク)のそれぞれのインクを吐出する。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド202kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。この場合、YMCKの各色は、フルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、本例において、YMCKの各色のインクは、複数色の着色用の材料及び複数色の造形の材料の一例である。また、インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクについては、例えば、可視光に対して無色で透明(T)なインク等と考えることができる。
【0040】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型のインクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッドの並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化手段206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化手段206は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
【0041】
以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、例えば、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、例えば、造形物50を適切に造形できる。また、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0042】
続いて、本例の造形システム10において造形する造形物50の構成について、更に詳しく説明をする。図2は、造形実行部12(図1参照)において造形する造形物50の構成について説明をする図である。図2(a)は、造形物50の構成の一例を示す断面図である。図2(b)は、造形物50における着色領域154の構成の一例を示す図であり、着色領域154の断面の構成の一例を光反射領域152と共に示す。本例において、造形実行部12は、表面の少なくとも一部が着色された造形物50を造形する。この場合、造形物50の表面については、例えば、造形物50の外部から色彩を視認できる領域等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、造形実行部12は、例えば図中に示すように、光反射領域152及び着色領域154を備える造形物50を造形する。
【0043】
光反射領域152は、着色領域154の内側に形成され、少なくとも可視光を反射する光反射性の領域である。本例において、光反射領域152は、着色領域154により周囲を囲まれるように酸化チタン等の白色顔料を含む白色のインクで形成されることで、着色領域154の背景として機能する。また、本例において、光反射領域152は、造形物50の内部を構成する内部領域を兼ねた領域として形成される。造形物50の構成の変形例においては、光反射領域152とは別に内部領域を形成してもよい。この場合、光反射領域152について、内部領域と着色領域154との間に形成することが考えられる。また、内部領域については、インクジェットヘッド202s(図1参照)から吐出するサポート層52の材料以外の任意のインクで形成することが考えられる。
【0044】
着色領域154は、造形物50において着色がされる領域であり、着色用の複数色のインクを用いて造形物50の表面に形成されることで、様々な色に着色がされた状態で形成される。また、本例において、造形実行部12は、例えば、YMCKの各色のインク及びクリアインクを用いて、造形物50における着色領域154を形成する。造形実行部12は、着色用のインクとして、例えばW色のインク等を更に用いてもよい。また、本例において、造形実行部12は、例えば図2(b)に示すように、複数のカラー領域302及び複数のクリア領域304が重なる構成の着色領域154を形成する。複数のカラー領域302及び複数のクリア領域304のそれぞれは、図中に示すように、造形物50の表面と直交する方向である法線方向と平行な方向において重なる層状の領域である。
【0045】
この場合、層状の領域については、例えば、厚さが略一定であり、かつ、法線方向と直交する方向へ広がる領域等と考えることができる。また、厚さが略一定であることについては、例えば、求められる着色の品質等に応じた範囲で一定と見なせること等と考えることができる。また、法線方向については、例えば、造形物50の表面の各位置において表面と直交する方向等と考えることができる。また、図2(b)においては、図示の便宜上、法線方向が同じ方向に揃っている範囲について、着色領域154の構成の一例を図示している。しかし、実際の造形物50においては、造形物50の表面の位置によって、法線方向が変化することが考えられる。この場合、複数のカラー領域302及び複数のクリア領域304のそれぞれについて、例えば、造形物50の表面に沿って重なるように形成することで、法線方向と平行な方向において重ねることになる。
【0046】
また、本例において、着色領域154は、図中においてカラー領域302a及びカラー領域302bと区別して図示するように、2つのカラー領域302を有する。また、図中においてクリア領域304a、クリア領域304b、及びクリア領域304cと区別して図示するように、3つのクリア領域304を有する。カラー領域302aは、着色用の材料を用いて着色される第1カラー領域の一例である。カラー領域302bは、造形物における第1カラー領域よりも内側において着色用の材料を用いて着色される第2カラー領域の一例である。クリア領域304a~cは、透明な材料を用いて第1カラー領域及び第2カラー領域よりも透光性の高い状態で形成される透光性領域の一例である。また、クリア領域304a~cのうち、クリア領域304b、cは、造形物における第1カラー領域よりも内側に形成される透光性領域の一例である。これらのカラー領域302及びクリア領域304は、図中に示すように、光反射領域152の外側において、クリア領域304とカラー領域302とが交互に重なるように形成される。
【0047】
また、後に詳しく説明をするように、本例においては、クリア領域304a~cの厚さを可変にすることで、着色領域154において様々な質感を表現する。そのため、クリア領域304a~cのそれぞれの厚さについては、互いに異なっていてもよい。また、図中において網掛け模様を異ならせて示すように、本例においては、カラー領域302aの色と、カラー領域302bの色とを独立に決定することで、例えば、カラー領域302aの色とカラー領域302bの色とを異ならせる。カラー領域302a、bについては、例えば、個別に様々な色での着色を行って形成すると考えることもできる。また、この場合において、色の違いによってカラー領域302a、bの厚さに変化が生じないように、クリアインクを用いて、適宜インクの量の補填を行う。クリアインクを用いた補填については、例えば、カラー領域302a、bの色の違いによって生じる有色のインクの使用量の差に対する補填等と考えることができる。また、この場合、カラー領域302a、bについて、着色用の有色のインクとクリアインクとを用いて形成される領域等と考えることができる。また、カラー領域302a、bについて、例えば、複数色のカラーインクを用いて着色がされる領域等と考えることもできる。また、カラー領域302a、bについて、例えば、複数色のカラーインク及びクリアインクを用いて形成される領域等と考えることもできる。
【0048】
また、このような補填を行うことについて、例えば造形実行部12の動作に着目して考えると、例えば、カラー領域302a、bのそれぞれに着色する色の違いによって生じる複数色のカラーインクの使用量の変化を補填するようにクリアインクを用いる動作等と考えることができる。また、この場合、造形実行部12は、このような補填を行うことで、例えば、位置によって法線方向における厚みに変化が生じないように、カラー領域302a、bを形成する。このように構成すれば、例えば、カラー領域302a、bのそれぞれに対し、様々な色での着色を適切に行うことができる。また、この場合、クリアインクの補填量については、例えば、明るい色や薄い色での着色を行う場合により多くなると考えることができる。
【0049】
また、本例において、クリア領域304aは、第1カラー領域よりも外側に形成される透光性領域である外側透光性領域の一例である。クリア領域304bは、第1カラー領域と第2カラー領域との間に形成される透光性領域である中間透光性領域の一例である。クリア領域304cは、第2カラー領域よりも内側に形成される透光性領域である内側透光性領域の一例である。クリア領域304a~cについては、例えば、無色で透明な領域等と考えることができる。この場合、無色であることについては、例えば、意図的に着色を行っていないこと等と考えることができる。また、無色であることについては、例えば、色材を意図的に添加していない材料で形成されること等と考えることもできる。より具体的に、本例においては、クリアインクについて、色材を意図的に添加していない材料と考えることができる。また、造形実行部12は、クリアインクのみを用いてクリア領域304a~cのそれぞれを形成することで、無色で透明なクリア領域304a~cを形成する。クリア領域304a~cのそれぞれについては、可視光領域の光に対し、60%以上の透過率になるように形成することが好ましい。クリア領域304a~cのそれぞれの透過率については、例えば、クリア領域304a~cのそれぞれの厚さ(法線方向における厚さ)の全体での透過率等と考えることができる。クリア領域304a~cのそれぞれの可視光領域の光に対する透過率は、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0050】
また、クリア領域304a~cのそれぞれに関し、無色であることについては、例えば、造形に求められる品質において実質的に無色であると見なせること等と考えることができる。また、造形物に求められる質感等によっては、クリアインク以外の色のインクを更に用いてクリア領域304a~cの少なくとも一部を形成すること等も考えられる。この場合、例えば、クリア領域304a~cのいずれかとして、わずかに色をつけたほぼ透明な領域を形成することが考えられる。また、この場合、クリア領域304a~cのそれぞれの形成に用いるインクの量のうち、80%以上をクリアインクの割合(重量比での割合)にすることが好ましい。クリア領域304a~cのそれぞれにおけるクリアインクの割合は、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。このように構成すれば、例えば、クリア領域304a~cを適切に形成することができる。また、以上のようなカラー領域302a、b及びクリア領域304a~cを有する着色領域154を形成することで、例えば、着色領域154において多様な質感を表現することができる。また、これにより、例えば、造形実行部12において、多様な質感を表現する造形物50を適切に造形することができる。
【0051】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、造形実行部12は、積層造形法で造形物50の造形を行う。この場合、積層造形法での積層方向における上面側や下面側では、積層造形法で積層するそれぞれのインクの層(以下、造形単位層という)が重なる方向と、着色領域154におけるカラー領域302a、b及びクリア領域304a~cが重なる方向とが同じ方向になる。そして、この場合、カラー領域302a、b及びクリア領域304a~cのそれぞれについて、造形単位層の整数倍の厚さで形成することが考えられる。より具体的に、この場合、積層方向における上面側や下面側では、カラー領域302a、bのそれぞれについて、予め設定された一定の層数の単位造形層で形成することが考えられる。このように構成すれば、カラー領域302a、bのそれぞれの厚さについて、予め設定された一定(固定)の厚さにすることができる。また、この場合、例えば、カラー領域302a、bのそれぞれについて、1つの単位造形層で形成することが考えられる。この場合、カラー領域302a、bのそれぞれの厚さについて、単位造形層の厚さと同じになっていると考えることができる。また、厚さを可変にするクリア領域304a~cのそれぞれについては、n層(nは、0以上の整数)の単位造形層で形成することが考えられる。この場合、例えば、nを変数とすることで、クリア領域304a~cのそれぞれの厚さを様々に変化させることができる。また、この場合、クリア領域304a~cのそれぞれの厚さについて、単位造形層の厚さのn倍になっていると考えることができる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、造形物50の上面側及び下面側以外の部分において、着色領域154におけるカラー領域302a、b及びクリア領域304a~cは、造形物50の表面に沿って重なることになる。そして、この場合、造形の動作で実現可能な精度に応じて、カラー領域302a、b及びクリア領域304a~cのそれぞれについて、造形物50の上面側及び下面側での厚さと実質的に同じになるように形成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、法線方向においてカラー領域302a、b及びクリア領域304a~cが重なる着色領域154を適切に形成することができる。
【0053】
続いて、造形システム10において造形物50を造形する動作や、着色構成決定部16において着色領域154の構成を決定する動作等について、更に詳しく説明をする。図3は、造形システム10において行う動作について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、造形システム10において造形物50を造形する動作の一例を示すフローチャートである。
【0054】
本例の造形システム10において、造形物50の造形を行う場合、先ず、着色構成決定部16において、造形物50における着色領域154の構成を決定する(S102)。より具体的に、本例において、着色構成決定部16は、着色領域154の構成として、着色領域154におけるカラー領域302a、bの色、及びクリア領域304a~cの厚さを決定する。この場合、着色領域154における位置毎に、カラー領域302a、bの色、及びクリア領域304a~cの厚さを決定することが考えられる。また、本例において、ステップS102で着色構成決定部16が着色領域154の構成を決定する動作は、着色構成決定段階の動作の一例である。着色領域154の構成を決定する動作については、図3(b)を用いて、後に更に詳しく説明をする。
【0055】
また、着色構成決定部16において着色領域154の構成を決定した後には、決定された着色領域154の構成を反映するように、造形データ生成部14において、造形データを生成する(S104)。この場合、造形データ生成部14の動作について、例えば、着色構成決定段階で決定する着色領域154の構成に基づいて造形データを生成する動作等と考えることができる。また、本例において、ステップS104で造形データ生成部14が造形データを生成する動作は、データ生成段階の動作の一例である。
【0056】
また、より具体的に、ステップS104において、造形データ生成部14は、例えば、造形実行部12において造形しようとする造形物50の形状を示す形状データと、着色構成決定部16において決定した着色領域154の構成とに基づき、造形物50における光反射領域152及び着色領域154の各位置の色を示す造形データを生成する。また、上記においても説明をしたように、造形データ生成部14では、造形データとして、積層方向における各位置での造形物50の断面を示すスライスデータを生成することが考えられる。この場合、光反射領域152及び着色領域154の各位置の色を造形データが示すことについては、例えば、各断面の位置での光反射領域152及び着色領域154の各位置の色を各断面の位置に対応するスライスデータが示すこと等と考えることができる。
【0057】
また、ステップS104での造形データ生成部14の動作については、例えば、造形データを生成することで、造形実行部12において造形を行う造形物50の形状を決定していると考えることもできる。この場合、ステップS104において造形データ生成部14が造形データを生成する動作について、例えば、造形物50の形状を決定する形状決定段階の動作を兼ねていると考えることもできる。また、本例において、ステップS102及びステップS104において着色構成決定部16及び造形データ生成部14が行う動作は、造形データ生成段階の動作の一例である。また、この場合、造形データ生成部14と着色構成決定部16とを合わせた構成について、例えば、造形データ生成装置の一例と考えることができる。
【0058】
また、ステップS104において造形データが生成された後には、造形実行部12において、造形物50の造形を行う動作を実行する(S106)。この場合、造形実行部12は、造形データに基づいて複数のインクの層を重ねて形成することで、造形物50の造形を行う。また、本例において、ステップS106において造形実行部12が行う動作は、造形段階の動作の一例である。
【0059】
続いて、ステップS102において着色構成決定部16が着色領域154の構成を決定する動作について、更に詳しく説明をする。図3(b)は、着色構成決定部16が着色領域154の構成を決定する動作の一例を示すフローチャートである。本例において、着色領域154の構成を決定する場合、着色構成決定部16は、先ず、造形物50の形状を示す形状データと、造形物50の表面の色を示す表面色データを取得する(S202)。
【0060】
この場合、形状データとしては、例えば、公知の形式で立体的な形状を示すデータ(3Dデータ)等を用いることができる。また、この場合、例えば、造形実行部12の構成等に依存しない汎用の形式で立体的な形状を示す3Dデータ等を用いることができる。また、表面色データとしては、例えば、造形物の表面の各位置の色を示すデータを用いることができる。より具体的に、表面色データとしては、例えば、形状データが示す立体的な形状の表面に貼り付けられるテクスチャ画像のデータ等を好適に用いることができる。また、表面色データについては、例えば、造形物50における着色領域154の構成までは指定せずに、造形物50の表面の各位置の色を指定するデータ等と考えることもできる。
【0061】
また、本例において、表面色データとしては、外観画像を示すデータを用いる。この場合、外観画像とは、造形物50として造形する対象物(造形の対象物)の外観の少なくとも一部を示す画像のことである。また、表面色データが外観画像を示すことについては、例えば、表面色データが示す造形物50の表面の少なくとも一部の色が外観画像を構成すること等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、表面色データとしては、例えば、対象物の全体の外観を示す画像を用いる。また、対象物の外観については、例えば、対象物を撮影した写真に示される状態等と考えることができる。また、ステップS202において着色構成決定部16が取得する形状データ及び表面色データについては、例えば、造形システム10において造形しようとする造形物の基本構成を示す入力データ等と考えることもできる。
【0062】
また、ステップS202での動作に続いて、着色構成決定部16は、着色領域154における複数のカラー領域302a、bについて、それぞれの色を決定する(S204)。この場合、ステップS204で着色構成決定部16がカラー領域302a、bの色を決定する動作は、色決定段階の動作及び色決定処理の動作の一例である。また、より具体的に、本例において、着色構成決定部16は、形状データ及び表面色データに基づき、造形物50の表面における各位置に対し、法線方向に重なる複数のカラー領域302a、bのそれぞれについて、色を決定する。この場合、着色構成決定部16は、複数のカラー領域302a、bに対して、互いに異なる色を決定してよい。複数のカラー領域302a、bの色の決定の仕方については、後に更に詳しく説明をする。
【0063】
また、本例での着色領域154の構成を決定する動作において、着色構成決定部16は、更に、着色領域154における複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さ(法線方向における厚さ)を決定する(S206)。この場合、ステップS206で着色構成決定部16が複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する動作は、透光性領域厚決定段階の動作及び透光性領域厚決定処理の動作の一例である。
【0064】
また、本例において、着色構成決定部16は、造形物50において表現しようとする質感に応じて、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。また、より具体的に、この場合、着色構成決定部16は、例えば、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを指定する指示をユーザから受け付け、この指示に基づき、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、ユーザの指示に基づいて、所望の質感を得るためのクリア領域304a~cの厚さを適切に決定することができる。
【0065】
また、本例において、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さは、互いに独立に可変である。そのため、着色構成決定部16は、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さとして、互いに異なる厚さを決定してもよい。また、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さは、造形物50における位置によって異なっていてもよい。この場合、着色構成決定部16は、例えば、造形物50の位置毎にユーザが指定する厚さの指示に基づき、各位置での複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、造形物50の位置によって異なる質感を適切に表現することができる。また、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さについては、位置毎に可変にはせずに、造形物50単位で可変にしてもよい。この場合、着色構成決定部16は、例えば、造形物50の全体に対してユーザが指定する厚さの指示に基づき、各位置での複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。このように構成すれば、例えば、所望の質感に対応する複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さをより容易に決定することができる。クリア領域304a~cの厚さの決定の仕方については、後に更に詳しく説明をする。
【0066】
本例によれば、例えば、所望の質感を得るための着色領域154の構成を適切に決定することができる。また、この場合、着色構成決定部16は、例えば、決定した着色領域154の構成を示す情報を着色構成決定部16へ供給する。また、上記においても説明をしたように、本例においては、造形データ生成部14での造形データの生成時にも、形状データを使用する。そのため、着色構成決定部16は、決定した着色領域154の構成を示すデータと共に、形状データを造形データ生成部14へ供給する。このように構成すれば、例えば、着色構成決定部16において決定した着色領域154の構成を反映する造形データの生成を造形データ生成部14に適切に行わせることができる。また、造形データ生成部14において生成する造形データに基づいて造形実行部12に造形物50の造形を行わせることで、例えば、所望の質感が得られる造形物50の造形を造形実行部12に適切に行わせることができる。
【0067】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを可変にすることで、例えば、様々な質感を表現する造形物50を造形実行部12に造形させることができる。また、これにより、例えば、造形物50において多様な質感を適切に表現することができる。更に、この場合において、着色領域154における複数のカラー領域302a、bの厚さは一定(固定)として、クリア領域304a~cの厚さのみを可変にすることで、より容易かつ適切に質感の調整等と行うことが可能になる。更に、この場合、複数のカラー領域302a、bの色を互いに独立に設定することで、例えば、着色領域154において、より多様な質感を表現すること等が可能になる。
【0068】
続いて、クリア領域304a~cの厚さの決定の仕方等について、更に詳しく説明をする。図4及び図5は、クリア領域304a~cの厚さの決定の仕方について更に詳しく説明をする図である。図4(a)は、クリア領域304a~cの厚さの決定の決定時にユーザに示す画面である領域操作画面の一例を示す。図4(b)は、領域操作画面において最初に表示する厚さの設定であるデフォルト設定の一例を示す。図5(a)、(b)は、ユーザの指示に応じてクリア領域304a~cの厚さの設定を変更する動作の例を示す。
【0069】
上記においても説明をしたように、本例において、着色構成決定部16(図1参照)は、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを指定する指示をユーザから受け付け、この指示に基づき、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。そして、この場合、着色構成決定部16として用いるコンピュータのモニタや入出力装置等を用いたGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を介して、ユーザの指示を受け付けることが考えられる。また、この場合、例えば図4(a)に示す領域操作画面をモニタに表示することが考えられる。
【0070】
より具体的に、図4(a)に示す領域操作画面において、符号Spを付して透明保護と示す領域は、着色領域154におけるクリア領域304a(図2参照)に対応する領域である。符号S1cを付して第1カラーと示す領域は、カラー領域302a(図2参照)に対応する領域である。符号S1tを付して第1透明と示す領域は、クリア領域304b(図2参照)に対応する領域である。符号S2cを付して第2カラーと示す領域は、カラー領域302b(図2参照)に対応する領域である。符号S2tを付して第2透明と示す領域は、クリア領域304c(図2参照)に対応する領域である。また、領域操作画面において、符号S3を付して追加と示す領域は、新たに追加する領域を示す。符号Srを付して反射と示す領域は、光反射領域152を示す。また、符号Saを付して示すボタンは、領域に対する操作について、追加又は削除を指示するボタンである。符号Ssを付して示すボタンは、追加する領域について、カラー領域又はクリア領域(透明領域)のいずれであるかを切り替えるボタンである。
【0071】
また、領域操作画面において、各領域の横に示されている数値は、各領域の厚さを指定するユーザの指示を示している。このような領域操作画面を用いることで、着色領域154を構成する各領域等に対する厚さの指示をユーザから適切に受け付けることができる。また、ボタンSa及びSsを用いることで、例えば、領域の追加や削除に対するユーザの指示を適切に受け付けることができる。
【0072】
また、造形データ生成部14では、ユーザの指示を受け付ける前の領域操作画面において、例えば図4(b)に示すようなデフォルト設定の内容をユーザに表示することが考えられる。また、デフォルト設定としては、例えば、前回の設定での設定内容を用いること等も考えられる。また、造形データ生成部14は、ユーザの操作に応じて、例えば図5(a)、(b)に示すように、領域操作画面での表示内容を変化させる。
【0073】
例えば、図5(a)は、図4(b)に示すデフォルト設定に対し、透明保護領域であるクリア領域304aを削除し、第2透明領域であるクリア領域304cを追加する操作の例を示している。この場合、ユーザは、例えば、領域Spを選択してボタンSaを押すことでクリア領域304aを削除し、更に、追加領域S3を選択してボタンSsを押すことで、クリア領域304cを追加する。また、この場合、クリア領域304cの厚さについて、例えば図中において420μmを設定しているように、数値入力により指定する。
【0074】
また、図5(b)は、クリア領域304cの下に更にカラー領域302を追加し、その下に更にクリア領域304を追加する操作の例を示している。この場合、ユーザは、例えば、追加領域S3を選択してボタンSsを押すことで、新たなカラー領域302(第3カラー領域)を追加する。また、この場合、このカラー領域302の厚さについて、例えば図中において320μmを設定しているように、数値入力により指定する。そして、更に、例えば、追加領域S3を選択してボタンSsを押すことで、新たなクリア領域304(第3透明領域)を追加する。また、この場合、このクリア領域304の厚さについて、例えば図中において420μmを設定しているように、数値入力により指定する。本例によれば、例えば、領域の追加や削除に対するユーザの指示を適切に受け付けることができる。
【0075】
ここで、図4及び図5においては、説明の便宜上、図1~3を用いて説明をした具体的な造形物の構成とは異なる構成の造形物を造形する場合も考慮して、領域操作画面や操作の例を示している。また、領域操作画面に表示する事項や画面に対する操作については、造形物の構成等に応じて、適宜変更することが考えられる。より具体的に、例えば、上記においても説明をしたように、カラー領域302の厚さについては、可変にせずに、一定の固定の厚さにすることが考えられる。この場合、領域操作画面においても、カラー領域302の厚さについて、一定にすることが考えられる。また、例えば、上記においても説明をしたように、本例においては、光反射領域152について、造形物50の内部領域を兼ねた領域として形成することが考えられる。この場合、領域操作画面において、光反射領域152に関する項目の表示を省略してもよい。また、光反射領域152の厚さの指示については、例えば、必要な厚さの下限値として用いること等も考えられる。この場合、造形実行部12又は造形データ生成部14(図1参照)において、光反射領域152について必要な厚さが確保できるか否かの確認を行うこと等が考えられる。
【0076】
また、着色構成決定部16では、単に数値入力をユーザに行わせる方法以外の方法で、クリア領域304a~cの厚さを決定してもよい。この場合、着色構成決定部16では、例えば、造形実行部12において造形される造形物50の状態を予測したコンピュータグラフィック画像(CG画像)を作成して、ユーザに対して表示しつつ、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを指定する指示をユーザから受け付けること等が考えられる。この場合、例えば、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを変数として、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを変化させた場合に生じる造形物50の状態の変化をユーザに示すことで、所望の質感を得るためのクリア領域304a~cの厚さについて、ユーザに適切に判断させることができる。このように構成すれば、例えば、造形物50において表現しようとする質感に応じて、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを適切に決定することができる。
【0077】
また、着色構成決定部16は、例えば、クリア領域304a~cの厚さを指定するユーザの指示以外の方法で取得するパラメータ等に基づいて、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定してもよい。この場合、着色構成決定部16は、例えば、着色領域154の構成を決定する動作の中で、造形物50において表現しようとする質感を示す質感パラメータを取得する。質感パラメータを取得する動作については、例えば、質感パラメータ取得段階の動作等と考えることができる。また、着色構成決定部16は、例えば、ステップS206の動作の中で、質感パラメータを取得する動作を更に行ってもよい。この場合、例えば図4(b)に示した動作におけるステップS206での着色構成決定部16の動作について、質感パラメータ取得段階の動作の例を兼ねていると考えることができる。また、この場合、着色構成決定部16は、例えば、質感パラメータ取得段階の動作によって取得する質感パラメータに基づき、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定する。このように構成した場合も、例えば、所望の質感に合わせて、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを適切に決定することができる。
【0078】
また、このような質感パラメータを用いる場合、着色構成決定部16は、例えば、形状データ及び表面色データとは別に予め用意されたデータ等により、質感パラメータを取得することが考えられる。この場合、例えば、形状データ等と対応付けられた質感パラメータを取得することが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、形状データが示す立体的な形状の各位置における質感を示す質感パラメータ等を用いることが考えられる。また、質感パラメータとして、例えば、形状データが示す立体的な形状の全体の質感を示すパラメータを用いること等も考えられる。また、質感パラメータが示す質感としては、例えば、着色領域154において表現する透明感等を用いることが考えられる。この場合、透明感については、例えば、着色領域154に対する光の透過度合いを反映する質感等と考えることができる。また、このような質感については、例えば、半透明感等と考えることもできる。また、造形物50により表現する対象物等に応じて、質感パラメータが示す質感として、透明感以外の質感を用いることも考えられる。
【0079】
また、質感パラメータの取得については、着色構成決定部16において、ユーザの指示に基づいて取得してもよい。この場合、質感パラメータについて、例えば、質感の指定をユーザから受け付けることで設定されるパラメータ等と考えることができる。より具体的に、この場合、着色構成決定部16において、例えば、造形物50を示すCG画像をユーザに対して表示し、そのCG画像に対してユーザが設定する質感を示す質感パラメータを取得すること等が考えられる。このように構成した場合も、例えば、質感パラメータを適切に取得することができる。また、この場合、例えば、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さの指定をユーザに直接指定させるのではなく、所望の質感の指定をユーザに行わせることで、ユーザに試行錯誤等を行わせることなく、より容易かつ適切に複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを決定することができる。
【0080】
続いて、着色構成決定部16において複数のカラー領域302a、bの色を決定する動作について、更に詳しく説明をする。図6は、着色構成決定部16において複数のカラー領域302a、bの色を決定する動作について更に詳しく説明をする図である。
【0081】
上記においても説明をしたように、本例において、着色構成決定部16は、外観画像を示す表面色データに基づき、複数のカラー領域302a、bのそれぞれの色を決定する。この場合、外観画像としては、例えば、造形の対象物を撮影することで取得される撮影画像を用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、対象物の全体を撮影した画像を外観画像として用いることが考えられる。また、外観画像としては、対象物の全体を撮影した画像に限らず、対象物の一部を撮影した画像を用いてもよい。より具体的に、例えば、造形の対象物が人間である場合、人間の肌の一部を撮影した画像を外観画像として用いてもよい。また、この場合、表面色データとしては、例えば、人間の肌の一部を撮影した撮影画像に基づいて撮影箇所以外も含む対象物の全体の色を示すデータを用いることが考えられる。また、このような場合も、表面色データに基づいて複数のカラー領域302a、bの色を決定する動作について、外観画像に基づいて複数のカラー領域302a、bの色を決定する動作であると考えることができる。
【0082】
また、本例において、着色構成決定部16は、色素成分分離法により外観画像の色素成分を分離することで、複数のカラー領域302a、bのそれぞれの色を決定する。この場合、色素成分分離法による色素成分の分離については、公知の方法と同一又は同様に行うことができる。より具体的に、色素成分分離法による色素成分の分離については、例えば、津村らによる下記の論文に開示されている方法等で行うことが考えられる。
N. Tsumura, N. Ojima, K. Sato, M. Shiraishi, H. Shimizu, H. Nabeshima, S. Akazaki, K. Hori , Y. Miyake, “Image-based skin color and texture analysis/synthesis by extracting hemoglobin and melanin information in the skin,” ACM Transactions on Graphics(TOG), 2003.
【0083】
また、図6においては、人間を示す造形物(例えばフィギュア等)を造形実行部12で造形する場合に関し、複数のカラー領域302a、bの色の決定の仕方の一例を示している。この場合、例えば、造形物50の少なくとも一部において、造形の対象物となる人間の肌の色を表現する着色領域154を形成する。また、外観画像として、人間の肌の表面の色を示す画像を用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、外観画像の少なくとも一部として、人間の肌を撮影した画像を用いることが考えられる。また、本例において、着色構成決定部16は、色素成分分離法により、外観画像に基づき、対象物の内部の画像に対応する血管の画像(血管画像)と、対象物において表面により近い部分の画像に対応するシミの画像(シミ画像)とを決定する。この場合、血管画像については、例えば、血管に対応する色を反映した画像等と考えることができる。また、血管画像について、例えば、ヘモグロビン成分すなわち血液の色を反映した画像等と考えることもできる。シミ画像については、例えば、肌におけるシミに対応する色を反映した画像等と考えることができる。また、シミ画像については、例えば、メラニン成分すなわち色素沈着の色を反映した画像等と考えることもできる。また、本例において、着色構成決定部16は、血管画像に基づき、対象物の内部の色に対応する内部色を決定する。また、シミ画像に基づき、対象物において表面により近い部分の色に対応する表面色とを決定する。表面色については、例えば、内部色に対応する対象物の内部よりも対象物の表面に近い部分に対応する色等と考えることもできる。
【0084】
また、本例において、着色構成決定部16は、内部色及び表面色のそれぞれとして、造形の解像度単位等の詳細な単位毎ではなく、ある程度の広さの範囲毎に、色を決定する。より具体的に、例えば、人間の肌の色を表現する着色領域154を形成する場合、肌の部位毎に内部色及び表面色を決定することが考えられる。また、内部色及び表面色について、例えば、ユーザによって指定される領域毎に決定すること等も考えられる。これらの場合、例えば、造形物50の一部の領域に対してのみ、内部色及び表面色を決定してもよい。また、内部色及び表面色については、造形物50の全体に対して設定すること等も考えられる。また、内部色及び表面色については、対象物の内部や表面付近における所定の領域での平均的な色等と考えることもできる。
【0085】
また、人間の肌の色を表現する着色領域154を形成する場合、肌における真皮の部分の色に対応する内部色を用い、表皮の部分に対応する表面色を用いることが考えられる。また、真皮の部分の色については、例えば、肌において血液が含むヘモグロビンの色を反映した色になると考えられる。表皮部分の色については、例えば、肌におけるメラニン色素の色を反映した色になると考えられる。そのため、人間の肌の色を表現する着色領域154を形成する場合、本例の着色構成決定部16では、外観画像に基づき、色素成分分離法により、メラニン色素の色を反映する色素成分であるメラニン成分と、ヘモグロビンの色を反映する色素成分であるヘモグロビン成分とを分離する。この場合、例えば、R(赤)G(緑)B(青)信号を出力するRGBカメラで肌を撮影した画像(肌画像)を外観画像として用い、独立成分分析によってメラニン成分に対応する情報とヘモグロビン成分に対応する情報とを推定することで、メラニン成分の分布を示す画像であるメラニン成分画像と、ヘモグロビン成分の分布を示す画像であるヘモグロビン成分画像とを生成する。
【0086】
また、上記の説明等から理解できるように、本例において、着色構成決定部16は、メラニン成分画像として、シミ画像を生成する。また、ヘモグロビン成分画像として、血管画像を生成する。そして、着色構成決定部16は、シミ画像及び血管画像のそれぞれに基づき、表面色及び内部色のそれぞれを決定する。この場合、着色構成決定部16の動作について、例えば、メラニン成分画像及びヘモグロビン成分画像のそれぞれに基づいて表面色及び内部色のそれぞれを決定することで、メラニン成分に基づいて表面色を決定し、ヘモグロビン成分に基づいて内部色を決定すると考えることができる。このように構成すれば、例えば、人間の肌の色を表現する着色領域154を形成する場合において、内部色及び表面色を適切に決定することができる。また、本例において、着色構成決定部16は、更に、表面色に基づいてカラー領域302aの色を決定し、内部色に基づいてカラー領域302bの色を決定する。このように構成すれば、例えば、着色領域154における複数のカラー領域302a、bの色を適切に決定することができる。
【0087】
ここで、上記においても説明をしたように、内部色及び表面色については、例えば、対象物の内部や表面付近における所定の領域での平均的な色等と考えることもできる。そして、この場合、メラニン成分画像及びヘモグロビン成分画像について、画像内での局所的なメラニン成分やヘモグロビン成分の局所的な分布ではなく、内部色及び表面色を決定する範囲毎(領域毎)での平均的なメラニン成分又はヘモグロビン成分を示していると考えることができる。また、この場合、外観画像内での陰影の分布を示す陰影成分画像を更に作成して、陰影成分画像に基づき、メラニン成分画像及びヘモグロビン成分画像から陰影の影響を除去すること等も考えられる。
【0088】
また、上記においても説明をしたように、外観画像としては、RGBカメラで撮影を行うことで生成された画像を用いることが考えられる。この場合、外観画像について、例えば、加法混色法のRGB3原色で色を表現したRGB画像と考えることができる。また、この場合ヘモグロビン成分画像及びメラニン成分画像としても、RGB画像を生成することが考えられる。これに対し、本例において、造形実行部12は、着色用の有色のインクとして、加法混色法のRGBを減法混色法に変換した、YMCKの各色のインクを用いることが考えられる。
【0089】
また、この場合、着色構成決定部16では、例えば、ヘモグロビン成分画像及びメラニン成分画像のそれぞれが示す色に対し、RGBからYMCKへの変換を行うことで、内部色を決定する。また、この場合、造形実行部12において用いるインクの特性を考慮して、色の変換を行うことが好ましい。より具体的に、この場合、例えば、デバイスの特性として造形実行部12で用いるインクの特性を反映したICCプロファイル等を用いて、色の変換を行うことが考えられる。また、色の変換については、ICCプロファイルを用いる方法ではなく、例えば、機械学習によって予め作成した学習済モデルを用いて行うこと等も考えられる。この場合、例えば、造形実行部12において作成した様々な色の試料(サンプル)に対して測色を行い、試料の構成と測色結果との関係を学習モデルに学習させることで学習済モデルを作成することが考えられる。また、学習済モデルについては、多数の様々な色の試料を実際に作成して測色を行うのではなく、少数の試料に対する所定の測定と、コンピュータシミュレーションとを行うことで作成してもよい。この場合、例えば、造形実行部12において使用する各色のインクに対応する試料(インクサンプル)を作成して、各色のインクの特性を測定することが考えられる。また、各色のインクの特性に基づき、様々な色の仮想的な試料の構成に対してコンピュータシミュレーションにより測色結果を予測して、これらの関係を学習モデルに学習させることで学習済モデルを作成することが考えられる。
【0090】
続いて、上記において説明をした構成の着色領域154を用いることで表現できる質感等について、更に詳しく説明をする。図7は、本願の発明者らが行った実験の条件について説明をする図であり、様々な構成の着色領域154を用いることで表現できる質感等を確認するために行った様々な実験のうち、クリア領域304b、cの厚さと造形物50の質感との関係に関する評価(主観評価)を行う実験について、評価の条件を示す。図7(a)は、評価対象として用いた試料の構成を示す。図7(b)は、主観評価に用いた形容詞対を示す。
【0091】
上記においても説明をしたように、本例において造形実行部12で造形する造形物50における着色領域154は、複数のカラー領域302a、b及び複数のクリア領域304a~cを有する。また、この場合において、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを可変にすることで、様々な質感を表現する。また、より具体的に、この場合、複数のクリア領域304a~cのそれぞれの厚さを変化させることで、着色領域154に対する光の透過の仕方や着色領域154での光の反射のされ方に変化が生じると考えられる。また、その結果、例えば着色領域154の光沢感や透明感(半透明感)等に変化が生じると考えられる。
【0092】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、造形の対象物の内部色及び表面色に対応する色での着色がされる複数のカラー領域302a、bを重ねることで、対象物の色を表現する。そして、この場合、造形物50の表面に近い側のカラー領域302aよりも内側にあるクリア領域304b、cについて、透明感等の質感への影響が特に大きくなると考えられる。また、この場合、複数のカラー領域302a、bの間に形成されるクリア領域304bと、カラー領域302bと光反射領域152との間に形成されるクリア領域304cとの間で、質感への影響に仕方に違いが生じることも考えられる。そこで、本願の発明者らは、クリア領域304b、cのそれぞれの厚さを様々に異ならせた試料を作成して、主観評価を行うことで、着色領域154の構成と質感との関係を確認する評価を行った。
【0093】
この評価では、積層方向へ複数のカラー領域302a、b及び複数のクリア領域304a~cに対応するインクの層を重ねた9個の試料を作成した。また、それぞれの試料において、複数のカラー領域302a、bのそれぞれについては、人間の肌の色を表現するように、人間の肌における表面色及び内部色のそれぞれに対応する色で形成した。更に、これらの領域のうちで最も下になるクリア領域304cに対応するインクの層の下に、造形物50における光反射領域152に対応する白色のインクの層を形成した。また、クリア領域304b、cのそれぞれの厚さについては、クリア領域304b、cのそれぞれを形成するために重ねる造形単位層の層数を変化させることで、様々な厚さに設定した。より具体的に、この評価では、図7(a)においてクリア領域304b、cの厚さとして数字2、4、6で示すように、クリア領域304b、cのそれぞれの厚さについて、単位造形層の2倍、4倍、6倍の3種類の厚さに変化させた。そして、クリア領域304bの厚さとクリア領域304cの厚さとの可能な組み合わせにより、9種類の試料を作成した。また、カラー領域302a、bの色や厚さ等のクリア領域304b、cの厚さ以外の条件については、全ての試料で共通にした。
【0094】
また、この評価では、これらの試料に対し、図7(b)に示す形容詞対を用いて、主観評価を行った。また、より具体的に、主観評価の手法としては、SD法(セマンティック・ディファレンシャル法)を用いた。そして、20人の被験者により、図7(a)に示すそれぞれの試料に対し、図7(b)に示すそれぞれの形容詞について、当てはまる度合いが大きい程評価値が大きくなるように、1~5の5段階での評価を行った。また、この場合、対になっている2つの形容詞のいずれにも当てはまらない場合には、0と評価する。
【0095】
この主観評価により、例えば、クリア領域304b、cの厚さを変化させることで表現される質感に変化が生じることについて、具体的な形容詞と対応付けて確認を行うことができた。また、これにより、試料によって、評価値に違いが生じることが確認できた。また、本願の発明者は、試料によって質感に違いが生じることを数値によって表現するために、主観評価の結果を示す評価データに対して因子分析を行い、肌の所定の状態を示す肌パラメータを抽出し、更なる評価を行った。より具体的に、本願の発明者らは、上記において説明をした主観評価の結果を示す評価結果に対し、因子数を3つとして因子分析を行った。また、この因子分析では、実験の便宜上、9名分の被験者による評価結果に対して平均をとって、因子分析を行った。また、因子分析については、公知の機械学習ライブラリを用いて行った。
【0096】
図8は、本願の発明者らが行った因子分析の結果を示すグラフである。因子分析を行うことで、例えば、図中に肌らしさ因子群として示すような、肌の所定の状態を反映する因子群を考えることができる。また、この場合、例えば、グラフの縦軸に用いている第一因子を肌らしさ因子として用い、肌らしさ因子に属する項目について因子負荷量を用いた加重平均をとった値について、肌パラメータとして用いることができる。また、上記の主観評価に用いた9種類の試料に対し、肌パラメータを算出したところ、0~1.5程度の範囲で様々な値が算出された。この結果については、例えば、試料によって質感に違いが生じることを数値によって確認できたことを示すと考えることができる。
【0097】
続いて、上記において説明をした各構成に関する変形例の説明や、補足説明等を行う。上記においては、着色領域154の構成に関し、主に、着色領域154が2つのカラー領域302(カラー領域302a、b)を有する場合の構成について、説明をした。また、本願の発明者らは、様々な実験等により、2つのカラー領域302を有する着色領域154を用いることで、例えば、1つのカラー領域302のみを用いる場合と比べ、より多様な質感を適切に表現できることを確認した。また、この場合、より多くの数のカラー領域302を用いる場合と比べ、それぞれのカラー領域302の色について、より容易に決定することが可能になる。また、より多くの数のカラー領域302を用いる場合と比べ、例えば、着色領域154の全体での厚さを小さくすることで、色が暗くなること等を適切に防ぐこともできる。
【0098】
しかし、造形物50に求められる品質や質感等によっては、カラー領域302の数について、2つ以外の数にすること等も考えられる。この場合、着色領域154は、例えば、3つ以上のカラー領域302を有する。また、この場合、例えば、追加するカラー領域302とカラー領域302bとの間にも、クリア領域304を形成することが考えられる。このような構成については、例えば、3つ以上の複数のカラー領域302のそれぞれの間にクリア領域304を形成する構成等と考えることもできる。また、この場合、例えば、図5等を用いて上記においても説明をしたように、カラー領域302bの内側に更にカラー領域302(第3カラー領域)を追加することが考えられる。また、この場合、着色領域154の構成の決定時において、着色領域154における複数のクリア領域304のそれぞれについて、法線方向における厚さを個別に決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、着色領域154において、より多様な質感を表現することができる。また、3つ以上のカラー領域302を有する着色領域154の構成については、例えば、第1、第2、・・・、第N(Nは、3以上の整数)のN個のカラー領域302を有する構成等と考えることもできる。また、この場合、第1、第2、・・・、第Nのカラー領域302のそれぞれの間に、厚さを可変にするクリア領域304を形成すると考えることができる。
【0099】
また、造形物50に求められる品質や質感等によっては、カラー領域302の数について、図9(a)に示すように、1つのみにすること等も考えられる。図9は、着色領域154や造形物50の変形例について説明をする図である。図9(a)は、着色領域154の構成の変形例を示す。以下に説明をする点を除き、図9において、図1~8と同じ符号を付した構成は、図1~8における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
【0100】
本変形例において、着色領域154は、1つのカラー領域302と、複数(2つ)のクリア領域304a、bを有する。また、この場合、クリア領域304aは、造形物50(図2参照)において、カラー領域302の外側に形成される。クリア領域304bは、造形物50において、光反射領域152とカラー領域302との間に形成される。この場合も、例えば、クリア領域304a、bの厚さを可変にすることで、着色領域154において、様々な質感を表現することができる。
【0101】
また、造形実行部12(図1参照)においては、例えば図9(b)に示すように、いわゆる2.5次元(2.5D)の造形物50を造形すること等も考えられる。図9(b)は、造形物50の構成の変形例を示す。2.5Dの造形物については、例えば、平面状の媒体(メディア)60の上に造形の材料(例えば、インク)を積層することで造形を行う造形物50等と考えることができる。また、2.5Dの造形物については、例えば、媒体60とつながった状態の造形物等と考えることもできる。2.5Dの造形物を造形する場合にも、図示した構成のように光反射領域152及び着色領域154を備える構成で造形物50の造形を行い、かつ、上記において説明をした場合と同一又は同様の構成で着色領域154を形成することで、着色領域154において、様々な質感を表現することができる。
【0102】
また、上記において説明をした各構成については、更に様々な変形を行うこと等も考えられる。例えば、着色領域154におけるクリア領域304の数についても、上記において具体的に説明をした場合と異ならせてもよい。この場合も、クリア領域304の厚さを可変にすることで、様々な質感を表現することができる。また、上記においては、着色領域154におけるカラー領域302(カラー領域302a、b等)の厚さについて、主に、一定(固定)にする構成について、説明をした。しかし、造形物50に求められる品質や質感等によっては、カラー領域302の厚さについても、可変にしてもよい。このように構成すれば、例えば、より多様な質感を表現することが可能になる。
【0103】
また、上記においては、着色領域154で質感を表現する対象の例として、人間の肌の質感を表現する場合について、説明をしている。しかし、着色領域154で質感を表現する対象は、人間の肌以外の物の質感であってもよい。この場合も、例えば、対象物に内部色及び表面色に対応する色に着色される複数のカラー領域302a、bを用い、かつ、クリア領域304の厚さを可変にすることで、様々な対象物に関し、様々な質感を適切に表現することができる。また、上記においても説明をしたように、対象物に内部色及び表面色の決定時には、対象物の内部及び表面付近の色を示す画像(例えばヘモグロビン成分画像及びメラニン成分画像等)に対し、陰影成分画像を用いて、陰影の影響を除去することが考えられる。しかし、陰影成分画像については、例えば、このような目的以外の目的で使用すること等も考えられる。例えば、陰影成分画像について、対象物の表面における高さ情報を示すデータとして用いること等も考えられる。この場合、例えば、陰性成分画像に基づき、形状データの補正を行うこと等が考えられる。
【0104】
また、上記においては、着色領域154について、主に、造形システム10(図1参照)において造形実行部12で造形する造形物50が有する領域に関し、説明をした。しかし、上記において説明をした構成の着色領域154については、造形物50以外において用いること等も考えられる。この場合、例えば、2次元(2D)の画像を印刷することで作成する印刷物として、上記の構成の着色領域154を備える構成で作成すること等が考えられる。また、この場合、上記において説明をした造形に関する事項について、印刷に関する事項に置き換えて考えることができる。より具体的に、この場合、造形システム10に代えて印刷システムを用いることが考えられる。また、造形実行部12に代えて、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置を用いることが考えられる。また、造形データに代えて、印刷データを用いることが考えられる。
【0105】
また、この場合、印刷システムにおいて、例えば図10に示す構成の印刷物を作成することが考えられる。図10は、着色領域154を備える印刷物の構成の一例を示す。以下において説明をする点を除き、図10において、図1~9と同じ符号を付した構成は、図1~9における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、図示した構成において、印刷物については、例えば、媒体60上に着色領域154を形成することで作成する印刷の成果物等と考えることができる。この場合、媒体60としては、例えば印刷用紙やフィルム、布帛等の、公知の印刷媒体を好適に用いることができる。この場合、例えば、媒体60自体が白色であるか、媒体60上に光反射領域152を形成したものを用いること等が考えられる。また、着色領域154については、印刷実行部(印刷装置)で媒体60上に複数のインクの層を重ねるように印刷を行うことで形成することができる。
【0106】
また、この場合、造形物50に関して上記において説明をした着色領域154と同一又は同様の構成の着色領域154を媒体60上に形成することが考えられる。より具体的に、図示した構成において、着色領域154は、複数のカラー領域302a、b及び複数のクリア領域304a~cを有する。また、この場合、造形システム10における造形実行部12、造形データ生成部14、及び着色構成決定部16(図1参照)に対応する印刷実行部(印刷装置)、印刷データ生成部、及び着色構成決定部を備える印刷システムにおいて、印刷物を作成することが考えられる。また、この場合、造形物50における着色領域154の構成を決定する場合と同一又は同様にして、着色構成決定部において、印刷物における着色領域154の構成を決定することが考えられる。そして、着色構成決定部で決定した着色領域154の構成に基づき、印刷データ生成部において、印刷データを生成することが考えられる。そして、この印刷データに基づき、印刷実行部で印刷の動作を実行して、印刷物を作成することが考えられる。このように構成した場合も、例えば、着色領域154におけるクリア領域304の厚さを可変にすること等により、多様な質感を表現する印刷物を適切に作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、例えば造形データの生成方法等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0108】
10・・・造形システム、12・・・造形実行部、14・・・造形データ生成部、16・・・着色構成決定部、50・・・造形物、52・・・サポート層、60・・・媒体、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、110・・・造形制御部、152・・・光反射領域、154・・・着色領域、202・・・インクジェットヘッド、204・・・紫外線光源、206・・・平坦化手段、302・・・カラー領域、304・・・クリア領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10