IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエスの特許一覧

<>
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図1
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図2
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図3
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図4-4a
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図5
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図6
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図7
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図8
  • 特許-コアとシースを有する複合ヤーン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】コアとシースを有する複合ヤーン
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/04 20060101AFI20250128BHJP
   D02G 1/02 20060101ALI20250128BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20250128BHJP
【FI】
D02G3/04
D02G1/02 Z
D03D15/47
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020561079
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070393
(87)【国際公開番号】W WO2020021123
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】18186144.4
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アウズカラ
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ゼイレク
(72)【発明者】
【氏名】エスレフ トゥンサー
(72)【発明者】
【氏名】セダット デミルビューケン
(72)【発明者】
【氏名】エルケン エヴラン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184319(US,A1)
【文献】米国特許第04343334(US,A)
【文献】米国特許第04024895(US,A)
【文献】米国特許第03367095(US,A)
【文献】英国特許出願公告第00809321(GB,A)
【文献】特開2012-219405(JP,A)
【文献】特開平06-346332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00-3/48
D03D 15/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(2)及びシース(3)有する複合ヤーン(1)であって、前記コアがポリマー材料製の複数のコアファイバー(21)を含み、前記シース(3)は短繊維(3a)を含んでおり、
前記コアファイバーは、非エラストマーファイバーを含み、
前記コアファイバー(21)の量は、前記ヤーン(1)の総重量の35重量%~90重量%の範囲であり、
前記コアファイバー(21)は、仮撚加工されたファイバーであり、
前記コアはさらにエラストマー長繊維(22)を含み、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部はDTYヤーンであり、
前記コアファイバー(21)及び前記エラストマー長繊維は、少なくとも複数の接続点で互いに接続され、一緒に結合され、互いに付着しており、
前記コア(2)と前記シース(3)は前記コアを中心に一体に紡糸され、前記コア(2)が前記シースで完全に覆われており、
前記複合ヤーンは、ENISO2062の規格に従って測定して、10~25cN/texの引張強度を有することを特徴とする複合ヤーン。
【請求項2】
請求項1において、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部は、14デニール以下の線密度を有することを特徴とする複合ヤーン。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)は複数の長繊維を含むことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項4】
請求項3において、
前記複合ヤーンは、2~1160本の前記長繊維を含むことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項5】
請求項4において、
弾性特性を有する前記長繊維の量が、前記ヤーンの総重量の1%~60%の範囲であることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部は、前記コアファイバーの束として、又はコアヤーン(20)として提供されることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)は、ポリエステルポリマーおよび共重合体、ポリアミドポリマーおよび共重合体、並びにそれらの混合物から選択される材料からなることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記ヤーン(1)の撚り倍数は、1.2~5.5の範囲であり、
前記撚り倍数は、次の式から取得され、
撚り/インチ=撚り倍数×√イングリッシュコットンナンバー
前記撚り/インチの値は、次の式で計算される、
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
ことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の複合ヤーン(1)を含むことを特徴とする織物(100)又は物品(101)。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の前記ヤーン(1)の製法であって、
ポリマー材料で作られた複数のコアファイバー(21)のコア(2)を提供するステップと、
前記コア(2)を覆うために非弾性短繊維のシース(3)を提供するステップと、
長繊維と前記シース(3)の前記短繊維とを一緒に紡糸して、前記短繊維を含むシース(3)で前記コア(2)を完全に覆う紡糸ステップとを含み、
提供される前記コアファイバーは、非エラストマーファイバーを含み、前記コアはさらにエラストマー長繊維(22)を含み、
前記コアファイバー(21)の総量は、前記ヤーン(1)の総重量の少なくとも35重量%~90重量%の範囲であり、前記コアファイバー(21)は、仮撚加工されたファイバーであり、前記コアファイバー(21)の少なくとも一部はDTYヤーンであり、
前記DTYヤーンおよび前記エラストマー長繊維(22)は、それらを制限手段(51)に通して供給することによって、一体に押し付けられ、前記DTYヤーンと前記エラストマー長繊維は、複数の点で接合され、一緒に結合され、互いに付着しており、
前記コア(2)と前記シース(3)は前記コアを中心に一体に紡糸され、前記コア(2)が前記シースで完全に覆われており、
前記複合ヤーンは、ENISO2062の規格に従って測定して、10~25cN/texの引張強度を有することを特徴とするヤーンの製法。
【請求項11】
請求項10に記載の複合ヤーン(1)の製法であって、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部は、14デニール以下の線密度を有することを特徴とする複合ヤーンの製法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の複合ヤーン(1)の製法であって、
前記コアファイバー(21)は、複数の連続長繊維を含んでいることを特徴とする複合ヤーンの製法。
【請求項13】
請求項12に記載の複合ヤーン(1)の製法であって、
前記コアファイバー(21)及び前記エラストマー長繊維(22)は、共押出しによって、前記紡糸ステップの前に一体に組み合わされることを特徴とする複合ヤーンの製法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項において、
前記紡糸ステップでは、前記ヤーンは、1.2~5.5の範囲の撚り倍数を備えており、
前記撚り倍数は、次の式から取得され、
撚り/インチ=撚り倍数×√イングリッシュコットンナンバー
前記撚り/インチの値は、次の式で計算されることを特徴とするヤーンの製法。
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項において、
前記コア(2)と前記シース(3)は、リング精紡機によって結合され、
前記リング精紡機は、前記シース(3)のための1つ又は2つ以上の粗糸の供給源を備えていることを特徴とするヤーンの製法。
【請求項16】
請求項15において、
前記リング精紡機は、前記粗糸に張力を生じさせる第1のガイドと、前記第1のガイドに対して位置をずらして設けられた第2のガイドとを備えており、前記位置のずれを使用して前記コアを常に前記ヤーンの中心に保つことを特徴とするヤーンの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアファイバー、及びこのコアファイバーを包む、すなわち覆うシースファイバーを有する複合ヤーンに関する。
より詳細には、本発明は、コアファイバーとシースファイバーを有し、コアが複数のコアファイバーを含み、好ましくは複合ヤーンとして弾性特性を有する複合ヤーンに関する。本発明のヤーンは、特にデニム衣服を含む、カジュアル、スポーツ関係及び快適性に富む衣服の製造に適している。
【背景技術】
【0002】
本発明の技術分野において、ポリマー長繊維を含むコアを有するヤーンが知られている。特許文献1は、最も好ましくはスパンデックス及び/又はラストール長繊維である、少なくとも1種の弾性長繊維を有するコアと、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びこれらの混合物の仮撚加工されたポリマー又はコポリマーからなる非弾性の長繊維とを含むヤーンを開示している。特許文献1によると、仮撚加工制御された長繊維が、弾性長繊維に緩く巻き付けられている。
【0003】
本出願人の名義の出願である特許文献2は、複合伸縮性コア及び綿繊維のシースを有する伸縮性ヤーンを開示している。この伸縮性コアは、それぞれが異なる弾性を有する第1及び第2の長繊維を含み、第1の長繊維はエラストマーであり、第2の長繊維は、弾性が限定されたポリエステル系(共)重合体である。この第2のポリエステル系(共)重合体ファイバーは、前記伸縮性コアの60~90重量%(w/w)の範囲にある。
【0004】
特許文献3は、二成分ポリエステル長繊維及びエラストマーファイバーを有するコアスパンヤーンを開示している。弾性コアがグリニング(grinning)しないように、ポリエステル長繊維には、ポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(テトラメチレンテレフタレート)のいずれかが含まれ、エラストマーファイバーはスパンデックスを含んでいる。
二成分ポリエステル長繊維は、1.01~1.30の比率で引き伸ばされ、エラストマーファイバーは、元の長さの2.50~4.50倍まで引き伸ばされる。
特許文献4は、仮撚加工されたモノフィラメントコア及び短繊維シースを有するコアヤーンを開示している。このコアは、2~20デニールの繊度を有し、短繊維で撚られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】EP 3208371A1
【文献】US 2013/0260129A1
【文献】US 2008/0318485A1
【文献】US 2008/0299855A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合弾性コアを有する既知のヤーン、特に伸縮性ヤーンの問題は、ファイバーのシースを介したコアのいわゆる「グリニング」、すなわち表面化、を回避するために大量の綿を使用しなければならないことである。短繊維、特に綿繊維を大量に使用することはコストがかかる。
特に、布の見栄えを良くするために、一定数の長い綿繊維を使用することが知られており、これは高価である。また、高度に撚られた短いファイバーを使用すると、ヤーンが「巻き毛」になり、凹凸が生じる可能性がある。そのため、このヤーンから得られた布の見た目が悪くなる。
【0007】
公知の技術のヤーンに関する別の問題は、綿花栽培には大量の水が必要であり、また綿を染色するのに大量の水及びエネルギーが必要であるため、大量の綿の使用は環境に優しいものではないことである。
【0008】
本発明の目的の1つは、上記の問題を解決し、優れた外観を有し、かつ低コストで、必要とされる優れた弾力性のある合成コアを有するヤーン及び布を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、ファイバーシース、好ましくは綿糸のシースによって完全に覆われた合成コアを有するヤーンであって、コアが、特に使用後に、ファイバーを通して表面から見えることのないヤーンを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、柔らかな手触りがあり、使用者にとって快適なヤーン及び布を提供することである。本発明のさらなる目的は、環境に優しく、安価に製造できるヤーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これら及び他の目的は、本願の特許請求の範囲の1つ又は複数の請求項に記載の糸、物品、および方法によって達成される。
【0012】
特に、本発明は、独立請求項に記載されたヤーン、物品、及び方法に関する。また、本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明の1つの態様は、1つのコアと1つのシースを有する複合ヤーンに関する。前記コアは、ポリマー材料で作られた少なくとも1つの、好ましくは複数のファイバーを含み、前記コアのファイバーの総量は、前記複合ヤーンの総重量の少なくとも35重量%の量だけ存在する。好ましい実施形態を、従属請求項に記載してある。
【0014】
本発明の一態様によれば、コアファイバーは、14デニール以下、好ましくは10デニール以下の線密度を有し、より好ましくは、線密度は、0.2~8デニールの範囲にある。
可能な態様によれば、コアファイバーのデニールは2~8デニールである。
好ましいコアファイバーは長繊維である。好ましくは、コアには少なくとも12本の長繊維がある。
【0015】
前記コアファイバーは、好ましくは、非エラストマーファイバーからなり、このコアの非エラストマーファイバーの幾つかは弾性を有していても良い。
エラストマー長繊維を前記コアに追加し、前記非エラストマーコアファイバーと組み合わせることもできる。従って、前記コアファイバーの上記の比率は、前記コア中に存在する前記非エラストマーファイバーのみを指している。言い換えれば、前記コアに存在する前記非エラストマーファイバーは、前記ヤーンの総重量の少なくとも35重量%である。
【0016】
本発明によれば、従来技術による対応のヤーンよりも少ないシースファイバーを有する、複合ヤーンを提供することができる。より詳細には、本発明のヤーンで使用されるシースファイバーの量は、従来技術による対応する平均的なヤーンで必要とされるシースファイバーの量よりも約30~40%少なくすることができる。
シースファイバーの量の削減は、複数の利点をもたらす。その第一は、ヤーン製造プロセスの持続可能性である。すなわち、従来技術よりも綿含有量が少ないヤーンは、必要な綿の量が少なくて良く、従って綿の栽培に使用される水が少ないため、節水につながる。また、より少ない量の綿(又は他のシースファイバー)を染色するため、染色プロセスに使用するのに必要な染料の量が少なくなる。そのため、ヤーンの乾燥プロセスもまた短くて良く、従来技術と比較して、必要なエネルギーが少なくなる。
【0017】
さらに、本発明のヤーンは、コアに使用されるファイバーの量が多いにもかかわらず、コアヤーンが実質的に表面に出ないため、非常に良好な外観を有する。さらに、既知の技術(より長い綿繊維を使用した)よりも高い割合の短いファイバーをシースに使用することが可能であることが分かった。
【0018】
本発明の一態様によれば、シースは綿100%でも良い。シースファイバーの10%~90%が綿糸である他の実施形態が可能である。シースの残りの部分は、他の市販のファイバーを含んでいても良い。
綿糸は、通常の綿糸、消費前の綿糸、又は消費後の綿糸でも良い。これにより、水を節約し、ヤーン生産の持続可能性を高めることができる。
【0019】
綿以外の他のファイバーを、シースに使用することもできる。一例として、人工ファイバー(好ましくはセルロース系)、例えば、レーヨンとそのバリエーション(モーダル、リヨセル、キュプロ、ビスコース)を使用することができる。リネン、麻、ラミー、カポック等の天然ファイバーも使用できる。考えられる解決策によれば、羊毛、絹、カシミア等の動物ファイバーも使用できる。
【0020】
驚くべきことに、ある量の短繊維を用いて上記のコアファイバーを撚る又は紡糸すると、その結果、撚られたコアファイバーがシースに使用されるファイバーを内側に閉じ込めるコア、すなわちコアファイバーの一部を保持するコアを有するヤーンが得られることが見出された。特に、コアのより小さな長繊維が、シースのファイバーをより良く保持する。
【0021】
特に、好ましい態様によれば、複合ヤーン1のASTM5647規格による毛羽立ち指数は、好ましくは1~20、より好ましくは5~20である。
【0022】
毛深いヤーンで作られた衣服は柔らかく快適であることがわかっている。毛深い複合ヤーンを得るための好ましい方法は、リング精紡機又はサイロ紡績プロセス(すなわち、シース用の2つの粗糸源を用いたリング精紡機)を使用することである。リング(及びサイロ)紡績は、例えば、エアジェット紡績又はオープンエンド紡績において、より柔らかいヤーンを提供することも見出された。
【0023】
可能な態様によれば、複合ヤーンの引張強度は、10~25cN/tex、より好ましくは、23cN/tex未満、さらにより好ましくは20cN/tex未満である。引張強度はENISO 2062に従って測定される。
【0024】
ENISO2062で測定される複合ヤーンの破断点伸びは、好ましくは3%~50%、より好ましくは、15%~35%である。
【0025】
複合ヤーンの番手は、好ましくは、Ne 3/1~Ne 100/1、より好ましくは、Ne 5/1~Ne 80/1である。
【0026】
本発明はまた、製造プロセスにおいて以下の利点をもたらす。
【0027】
ボールワーピングステップ:100万メートルのヤーンの生産を考慮すると、製造される布のロープの破断率は10~20%減少する可能性があり、付着したパイルの量は5~10%減少する。ロープ染色に送られる折れ端は5%減少する可能性がある。
【0028】
ロープ染色ステップ:布の染色に使用する水の量を30~45%減らすことができる。水の使用量が少ないため、使用する薬品や染料の量が5~35%削減される。ヤーンの乾燥が容易になり、蒸気の使用量を30~50%削減できる。
【0029】
リビーム:このヤーンは、同じ番手、同じ材料で作られた綿の割合が高い既知のヤーンと比較して、より高い破断強度を持っている。
そのため、10破断率は10~35%増加する可能性がある。ヤーン強度がより高くなる結果として、10破断率(つまり、100万メートルのヤーンの生産で考慮される破断率)は、5~25%減少する可能性がある。ヤーン同士の摩擦も減少し、リード領域での綿ベースの破損が15~30%減少する。ヤーン切れが減少するため、ロストエンドの問題も軽減される。
【0030】
サイジング:本発明のヤーンの特性により、サイジングエリアで発生する可能性のあるヤーン切れは、5~25%削減できる。ヤーン切れの数を減らすことで、織りセクションで欠けている先端の数を10~20%減らすことができる。サイジングステップに使用される化学物質の量も8~35%削減できる。ヤーンの乾燥に使用される蒸気消費量は30~50%削減できる。飛散するファイバーが減少するため、障害スコアは5~8%減少する可能性がある。
【0031】
本発明の一態様によれば、コアファイバーは、少なくとも1つ、好ましくは複数の長繊維(すなわち、連続ファイバー)を含んでいる。
本発明の好ましい実施形態では、全てのコアファイバーは長繊維である。しかしながら、幾つかの実施形態では、コアは、典型的には長繊維を切断及び結合することによって得られる複数の短繊維の束も含むことができる(又は、複数の短繊維の束からなる)。
【0032】
連続コアファイバーは、単一の長繊維、複数の長繊維の単一の束、又は1つ又は複数のヤーンを形成するためにすでに組み合わされた長繊維でも良い。
特に、複数の長繊維は、DTYヤーンとしてコアに提供することができる。知られているように、DTYはDraw Textured Yarnの略である。既知のDTYヤーンが市場で入手可能である。結果として、一態様によれば、本発明の複合ヤーンのコアを提供するために、1つ又は複数のDTYヤーンが、使用される。
【0033】
DTYヤーンの可能な製造プロセスによれば、POY(部分的に配向されたヤーン)は、異なる速度で回転する異なる2つの後続のシャフトに供給され、その結果、POYが延伸される。特に、第2のシャフトの速度は、常に、特定のヤーン及びプロセスに必要な延伸比の係数によってより高速になっている。
2つのシャフトの間に配置された一連の回転摩擦板等の摩擦装置は、ヤーンに(仮)撚りを与える。その結果、ヤーンは同時に撚られ延伸される。2つのシャフトの間にヤーンヒーターがあり、ヤーンが熱硬化する温度に加熱する。ヒーターの直後には通常、冷却プレートがあり、撚りを恒久的に熱硬化させるために、ヤーンを実質的に低い温度に冷却する必要がある。
ヤーンが2番目のシャフトから出ると、DTYヤーンの各単一長繊維は3次元の螺旋の形状になろうとする。その結果、ボリュームのあるバルクストレッチヤーンができあがる。
【0034】
言い換えれば、DTYヤーンの好ましい製造プロセスに従って、THUT(撚り-加熱-撚り解除設定)の操作が連続的に実行される。ヤーンは供給パッケージから取り出され、制御された張力で加熱ユニットを通過し、仮撚スピンドル、又は通常はアグリゲートと呼ばれる回転ディスクのスタックである摩擦面を通過し、一連の巻き取りロール通過し、そして、 巻き取りパッケージに供給される。
この撚りは、ヒーターチューブの作用によってヤーンにセットされ、その後、スピンドル又はアグリゲートの後に除去され、その結果、螺旋状のばねを形成可能な複数の長繊維のグループがもたらされる。なお、DTYヤーンを得るための当技術分野で知られている他のプロセスも可能である。
【0035】
同様に、切断された長繊維は、単一の束の一部でも良く、又はそれらは、2つ以上の束の一部でも良い。
【0036】
好ましくは、コアファイバーは仮撚加工されている。この仮撚加工は、長繊維ごとに個別に行うことができ、又は、より一般的には、その長繊維が複数の長繊維の束の一部である場合、この複数の長繊維を仮撚加工することができる。
一例として、連続したファイバー(すなわち長繊維)又は短繊維(例えば長繊維を切断することによって得られる)を使用してヤーンを形成することができ、そのようなヤーンに対して仮撚加工を行うことができる。言い換えれば、複数の仮撚加工されていない長繊維を使用してヤーンを形成し、そのようなヤーンをその後に仮撚加工することもできる。
このヤーンのコアファイバーは、「仮撚加工されたファイバー」の定義に含まれる。同様に、複数の(仮撚加工された又は仮撚加工されていない)長繊維を短いファイバー(短繊維)に切断することができ、これらの短いファイバー使用してヤーンを製造し、その後仮撚加工することができる。このヤーンのファイバーは、「複数の仮撚加工されたファイバー」の定義に含まれる。
【0037】
前記コアファイバーは、好ましくは、非エラストマーファイバーからなる。
エラストマー長繊維を前記コアに追加し、前記非エラストマーコアファイバーと組み合わせることもできる。すなわち、可能な実施形態によれば、コアは、非エラストマーコアファイバーおよびさらなるエラストマー長繊維を含んでいても良い。
【0038】
コアの非エラストマーヤーンは、弾性特性を有していても良い。すなわち、前記複合ヤーンの前記コアは、弾性特性を有する異なる長繊維を含むことができる。これは、前記コアファイバーの一部である非エラストマー長繊維(すなわち連続コアファイバー)、並びに前記エラストマー長繊維でも良い。
【0039】
「弾性特性を有する長繊維」という言葉は、エラスタンの長繊維等のエラストマー長繊維、及び、弾性非エラストマー長繊維(例えば、T400長繊維)を意味する。適切なエラストマー長繊維の破断点伸びは、200%以上、好ましくは400%以上、典型的には200%~600%である。
このエラストマー長繊維の量は、ヤーンの総重量の1%~20%、より好ましくは1.5%~10%の範囲が良い。弾性特性を有する複数の長繊維を、一体に組み合わせることもできる。好ましいエラストマー長繊維は、エラスタン、ポリウレタン尿素系ファイバー、ラストール、ダウXLA(登録商標 Dow XLA)である。
弾性特性を有する長繊維は、非エラストマー長繊維でも良く、好ましくは、15~50%の破断点伸びを有するものが良い。弾性非エラストマー長繊維に好ましいファイバーは、T400(ポリエステルのコポリマー、弾性マルチエステル)、PBTファイバー、及び、PBT-PTT、PET-PTT、PET-PTMT等の他の接合ヤーンである。弾性特性を有する長繊維の総量は、複合ヤーンの重量の1~60%、好ましくは10~45%である。
【0040】
コアファイバーに好ましい合成ファイバーは、PP、PET、PA6、及びPA6,6である
【0041】
上記の非エラストマー長繊維の破断点伸びは、DIN ISO 2062で測定でき、エラストマー長繊維については、BISFA、露出したエラスタンヤーンの試験方法、第6章によりテストできる。
非エラストマー長繊維の回復性は、少なくとも80%、できればファイバーの93%、最も好ましくは少なくとも96%又は97%以上である。この回復性は、0.2cN/tex(センチニュートンテックス)の引張強度と3%の伸びにおける、DIN 53835パート3で測定される。
【0042】
本発明で使用するのに適したエラストマー長繊維は、「ライクラ」(Lycra)という商標で市販されており、通常は、複数の長繊維が押し出しにより一体化された1つの束の形で市販されている。好ましい1つの実施形態では、前記エラストマー長繊維は、分離された複数の長繊維の1つの束として提供されている。
このタイプのエラストマー長繊維の詳細は、本出願人の名前で出願された同時係属中の欧州特許出願EP19169983.4に開示されている。
簡単に言えば、ある態様においては、1つの複合ヤーンは、少なくとも2つの「単一の弾性長繊維」を含んでいる。この「単一の弾性長繊維」という定義は、それらが、連続的に接続された長繊維の同じ弾性束の一部ではないことを意味している。実際、弾性ファイバー要素について、ある量の複数の長繊維を一緒に束ねて、所望の厚さに生成できることが知られている。これは、例えば、1つのスパンデックスヤーンは、長繊維の束であり、このスパンデックスヤーンは、それらの表面の自然な粘着性のために互いに接着する複数のより小さな個々の長繊維で構成できるものであることが知られているからである。
一方、「単一の弾性長繊維」とは、1つのモノ長繊維ヤーンを意味する。本発明の可能な態様によれば、複数の「単一の弾性長繊維」は、まず束に包装され、次に、互いに疎結合されて、ヤーンを製造するための後続のプロセスステップにおいて分離される(そして「単一の長繊維」になる)こととなる。
【0043】
コアの総番手は、好ましくは5デニール~1000デニールより、好ましくは50デニール~300デニールである。
【0044】
コアの破断点伸びは、好ましくは5%~160%、より好ましくは10%~50%である。
【0045】
本発明の一態様によれば、連続コアファイバー及びエラストマー長繊維は、既知の方法で、好ましくは、混合、撚り、又は共押出しによって、少なくとも複数の接続点で一緒に組み合わされる。
エラストマー長繊維は、好ましくは、コアファイバーと組み合わされる前に引き伸ばし又は伸長され、引き伸ばし比は、1.5~5.5、より好ましくは2.5~5.5である。
【0046】
本発明の一態様によれば、連続コアファイバー及びエラストマー長繊維は、長繊維の「共押出し」によって、好ましくは張力がかけられた状態で、連続的又は実質的に連続的な方法で一緒に接続される。
共供給としても知られる「共押出し」の間、(張力がかかった状態の)ファイバーの束は、制限手段を通過した後も付着したままになる程度にファイバーを一緒に付着させる制限手段を介して強制的に供給(一緒に供給)される。共押出しされた長繊維は、好ましくは、共押出ステップの直後にシースの長繊維と共に紡糸される。
【0047】
本発明の一態様によれば、コアは、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも15の連続コアファイバー、すなわちコア長繊維を含んでいる。
【0048】
本発明の実施形態では、コアファイバー(エラストマーファイバーを除く)の量は、ヤーン、すなわちシースを含む完全ヤーンの総重量の少なくとも35重量%であり、完全ヤーンの重量の90%という多さでも良い。
好ましくは、コアファイバーの量は、最終ヤーンの少なくとも37重量%又は38重量%である。好ましくは、コアファイバーの量は、最終ヤーンの35~73重量%、より好ましくは、コアは、最終ヤーンの重量の37~53重量%、又は、最終ヤーンの重量の38~49重量%の範囲にある。
【0049】
本発明の一態様によれば、コアファイバーは、ポリプロピレン、ポリエステルのポリマー及びコポリマー、ポリアミドのポリマー及びコポリマー、並びにそれらの混合物から選択される1つ又は複数の材料から作製される。
【0050】
本発明の一態様によれば、複合糸の撚り倍数は、1.2~3.5、好ましくは1.6~3.3、より好ましくは2.2~2.9の範囲である。
【0051】
特に、複合ヤーンの撚りは、シースの長繊維をコアと組み合わせるのに役立つ。これは、コアを覆うために必要なシースファイバーの量を減らすのに役立ち、コアの長繊維の上記の「グリニング」を防ぐ。また、短いファイバーを使用して、複合ヤーンに触れる使用者(特に、上記のヤーンを含む衣服の着用者)に「ふわふわ」感を提供する複合ヤーンを得ることができる。
【0052】
この撚り倍数は、次の式から取得できる。
【0053】
撚り/インチ=撚り倍数×√英国式綿番手
【0054】
ここで、1インチ(25.4mm)あたりの撚りの値は、次の式で計算できる。
【0055】
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
【0056】
本発明の一態様はまた、上記の態様の1つ又は複数による複合ヤーンを含む布に関する。
【0057】
本発明の一態様は、そのような布を含む物品に関するものであり、その物品は好ましくは衣服である。
【0058】
本発明の一態様はまた、上記本発明の1つ又は複数の態様における複合ヤーンを製造する方法に関するものであり、ポリマー材料で作られた複数のコア繊維を含むコアを提供するステップと、前記コアを覆うために非弾性短繊維のシースを提供するステップと、前記コアのフィラメントと前記シースの短繊維とを一緒に紡糸するステップを含んでいる。コアファイバーの総量は、複合ヤーンの総重量の少なくとも35重量%である。
【0059】
「スピニング」又は「撚り」という言葉は、コアをシースの短繊維と組み合わせる既知のプロセスを指している。
このプロセスには、コアファイバーをスライバー又はシースファイバーの束の上に又は隣接して配置し、コアとファイバーを撚ることが含まれる。前に説明したように、好ましい紡糸方法には、リング精紡機(またサイロ紡糸も)が含まれる。
【0060】
本発明の一態様によれば、エラストマー長繊維は、1.5~5.5の引き伸ばし比に引き伸ばされる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の複合ヤーンの第1の実施形態の概略図である。
図2】本発明の複合ヤーンの別の実施形態の概略図である。
図3】「共押出し」方式の概略図である。
図4】本発明による複合ヤーンを含む織物で得られた物品の概略図である。
図4A図4の概略拡大詳細である。
図5】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、1つの可能な実施形態を示す図である。
図6】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、別の実施形態を示す図である。
図7】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに別の実施形態を示す図である。
図8】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに別の実施形態を示す図である。
図9】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、非限定的な図面を参照して、本発明を、さらに詳細に説明する。本発明の1つの実施形態による複合ヤーン1は、コア2とシース3を有し、このシースは、通常は短繊維3aを含んでいる。このコア2は、少なくとも1つ、好ましくは複数の、コアファイバー21を含んでいる。
【0063】
このコアファイバー21は、好ましくは、連続した繊維、すなわち、(図1に概略的に示されているように)長繊維である。本発明の他の実施形態では、コアファイバー21は、また、例えば、長繊維を切断して得られる短繊維の束を含んでいる(又は短繊維の束のみ)ものでも良い。
本発明の一つの実施形態によれば、コアファイバー21は、長繊維と短繊維の束の両方を含んでいても良い。
【0064】
コアファイバー21の線密度は、好ましくは14デニール以下、より好ましくは10デニール以下、さらにより好ましくは0.2~8デニールである。
【0065】
コアファイバー21の好ましい材料は、ポリエステルのポリマー及びコポリマーである。他の適切なポリマーは、ポリアミドである。
コアファイバー21の代表的な材料は、ポリエステルのポリマー及びコポリマーである。すなわち、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)PTMT(ポリテトラメチレンテレフタレート)、又は、ポリエステルのコポリマーであるPTT/PET、PTT/PBT、PTMT/PETである。
代表的なポリアミド(すなわちナイロン)は、PA6(ポリアミド)、PA6,6又はナイロンのコポリマーである。材料として、またアクリルポリマー及びポリアクリロニトリルも挙げられる。
コアファイバーとしてより好ましい合成ファイバーは、PP、PET、PA6、およびPA6,6である。ただし、上記のリストに明示的に記載されていない他の合成材料をコアファイバーに使用することも排除されない。コアファイバーは、通常、非エラストマーである、すなわち、それらは、エラストマーヤーンを含まない。
【0066】
複合ヤーン1にシース3を提供するために使用される適切な短繊維3aは、当技術分野で知られている。それらには、例えば、綿、レーヨンとその市販のバリエーション(モーダル、リヨセル、キュプロ、ビスコース)、リネン、麻、ラミー、カポック、ウール、シルク、カシミア等がある。
【0067】
コアファイバー21の量は、複合ヤーン1の総重量の少なくとも35重量%である。
【0068】
本発明の実施形態では、コアファイバー21の量は、複合ヤーン1の総重量の少なくとも35重量%である。本発明の実施形態では、コアファイバー21の量は、複合ヤーン1の総重量の90重量%にもなることがある。好ましくは、コアファイバー21の量は、最終複合ヤーンの少なくとも37重量%又は38重量%である。好ましくは、コアファイバーの量は、最終ヤーンの35重量%~73重量%、より好ましくは、コアは、ヤーンの重量の37重量%~53重量%、又は38重量%~49重量%の範囲にある。
【0069】
図1に概略的に示される実施形態では、コアファイバーの少なくとも一部は、ファイバーの束として、又はコアヤーン20、例えば、FDYヤーンとして提供することもできる。
他の実施形態、例えば、コア2がファイバー及び/又はヤーン20の2つ以上の束を含む実施形態も可能である。さらに、コアファイバー21は、FDYヤーンの一部ではない連続コアファイバーの一般的な束でもよい。
好ましくは、一態様によれば、コア2は、連続したファイバー、すなわちコア長繊維、特に少なくとも1つの連続コアファイバーを含み、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも15の連続コアファイバー21を含んでいる。連続した長繊維の数は、好ましくは1160未満である。
【0070】
コアの総番手は、好ましくは5~1000デニール、より好ましくは50~300デニールである。
各コアファイバー21の破断時の伸びは、好ましくは15~50%、コアヤーンの破断点伸びは、好ましくは5%~160%、より好ましくは10%~50%である。
【0071】
本発明の可能な実施形態によれば、コア2(従って、複合ヤーン1)は、エラストマーファイバーを含まない(エラストマーヤーンの定義については、たとえばASTM D4849を参照)。言い換えれば、コア2(従って、複合ヤーン1)は、本質的に非エラストマーファイバーからなっている。これらのファイバーの幾つかは弾力性があってもよい。
【0072】
異なる可能な実施形態によれば、コア2は、少なくとも1つのエラストマー長繊維22を含んでいる。可能な実施形態によれば、複合ヤーン1のコア2は、少なくとも2つの単一の弾性長繊維22、すなわち、少なくとも2つの異なるモノフィラメントヤーンを含んでいる。
【0073】
図2に、エラストマー長繊維22が、点線で示されている。これは、読者がエラストマー長繊維22を識別できるようにするための表示である。実際のエラストマー長繊維22のサイズおよび配置は、図に示されているものではない。
【0074】
前記の通り、コアファイバー21は、非エラストマー連続ファイバー(すなわち、非エラストマー長繊維)を含んでいてもよい。コアは、さらに、エラストマー長繊維22を含んでいても良い。すなわち、コアは、弾性特性を有する異なる長繊維を含むことができる。
前述のように、コアファイバー21の上記の比率(「少なくとも35%」、「少なくとも37%又は38%」、「35%~73%の範囲」等)は、コア2に存在する非エラストマーファイバーを指す。言い換えると、コア2の非エラストマーファイバー(すなわち、コアファイバー21)は、複合ヤーンの総重量の少なくとも35%である。好ましい範囲は以前に述べた通りである(「少なくとも37%又は38%」、「35%~73%の範囲」等)。
【0075】
弾性特性を有する長繊維の総番手は、好ましくは5~500デニール、より好ましくは20~240デニールである。
【0076】
本発明の実施形態では、連続コアファイバー21及びエラストマー長繊維22は、複数の点で互いに接続されている。可能な実施形態では、連続コアファイバー21及びエラストマー長繊維22が、混合、撚り、又は共押出しによって接続される。これらの技術は当技術分野で知られている。
【0077】
図3は、ファイバー又はコアヤーン20(例えば、FDYヤーン)の束及びエラストマー長繊維22の「共押出し」又は「同時供給」方法を概略的に示す図である。説明を簡単にするために、DTYヤーンを参照するが、以下の説明は、一般に、仮撚加工された長繊維の束にも当てはまる。DTYヤーン20およびエラストマー長繊維22は、(好ましくは張力がかけられた状態で)制限手段51を介して供給され、この制限手段を出た後も一体に付着したままとなる程度に互いに付着して互いに接続される。
より詳細には、図3は、「V」字型の制限手段51を有するロール50を示している。ファイバー又はコアヤーン20の束及びエラストマー長繊維22は、ロール50に供給され、「V」字型の制限手段51の底部に押し込まれ、そこでそれらは互いに接続される、すなわち、ファイバー又はコアヤーン20の束及びエラストマー長繊維22は、少なくとも複数の点で接続され、その結果、それらは、シース3によって覆われた実質的に完成したコア2としてロール50から出る。
【0078】
例示的な実施形態によれば、複合ヤーン1(すなわち、シース3によって覆われたコア2)は、複合ヤーン1の撚りレベルを、従来技術と比較して、低く保つことができる。より詳細には、複合ヤーンは、好ましくは、1.2~5.5、好ましくは1.2~3.5の撚り倍数で撚られる。
前記撚り倍数は、さらに1.6~3.3であることが好ましく、さらに、2.2~2.9であることが好ましい。この低レベルの撚りにより、光の反射に優れ、鮮やかな色の、非常に柔らかな布になる。前に説明したように、この撚り倍数は、次の式から取得できる。
【0079】
撚り/インチ=撚り倍数×√英国式綿番手
【0080】
ここで、1インチ(25.4mm)あたりの撚りの値は、次の式で計算できる。
【0081】
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
【0082】
さらに、低撚糸とその製造方法の詳細については、本願の出願人の名義の欧州特許出願EP3064623(A2)を参照できる。この出願の教示は、参照により本願の明細書に組み込まれる。
【0083】
以下の比較例に示すように、低撚りを使用することにより、従来技術に対してより粗いヤーン、すなわち従来技術に対してより大きな寸法のヤーンを提供することが可能である。
比較のために、3つのヤーンを用意した。ヤーンAは本発明によるヤーンであり、一方、ヤーンB及びCは、先行技術による100%リング紡糸綿ヤーンであった。各ヤーンのデータは表の通りである。
【0084】
【表1】


【0085】
表からわかるように、本発明によるヤーンAは、ヤーンBよりも大きな直径を有する。ヤーンBは、ヤーンAと同じ番手(すなわち、14/1 NE)の一般的な100%綿糸である。ヤーンAの直径はヤーンCの直径に近い。つまり、ヤーンCは、ヤーンAよりも重い一般的な100%綿糸である(14/1 NE 対 8/1 NE)。
【0086】
各ヤーンの直径は、ウスターテスター4(USTER TESTER4)により測定した。
【0087】
前に論じたように、複合ヤーン1は典型的には柔らかい。柔らかな感触を与えるのに役立つ可能性のある要因は、ヤーンの毛羽立ちである可能性がある。
【0088】
毛羽立ちを測定するための可能な方法は、ASTM5647規格に開示されている。複合ヤーンのASTM5647規格による毛羽立ち指数は、好ましくは1~20、より好ましくは5~20である。よく知られているように、毛羽立ち指数Hは、ヤーンの長さ1cmの測定フィールド内の突出したファイバーの全長に対応する。
【0089】
本発明の可能な実施態様として、複合ヤーンの引張強度は、5~160cN/tex、好ましくは10~25cN/tex、より好ましくは23cN/tex未満、さらにより好ましくは20cN/tex未満である。この引張強度は、EN ISO2062の規格に従って測定される。
【0090】
複合ヤーンの破断点伸びは、EN ISO 2062で測定して、3%~50%、より好ましくは15%~35%である。
【0091】
複合ヤーンの番手は、好ましくは、Ne 3/1~Ne 100/1、より好ましくは、Ne 5/1~Ne 80/1である。
【0092】
本発明のヤーンは、上記の特徴の組み合わせでもよい。
【0093】
一般に、複合ヤーン1の製造中に、少なくとも1つ、好ましくは複数のコアファイバー21を含むコアが提供される。前述のように、コアはまた、エラストマー長繊維22を含んでいても良い。
【0094】
コアファイバー21及びエラストマー長繊維22は、好ましくは、複数の点で互いに結合される。
【0095】
連続コアファイバー21及びエラストマー長繊維22は、例えば、混合、撚り、又は、(図4に概略的に示されているように)「共押し出し」によって、一体に接続することができる。
【0096】
形成されたコアは、既知の方法によって、好ましくはリング精紡機又はサイロ紡糸機によって、シース3によって覆われる。
【0097】
特に、シース3は、製造の最終段階で、コアファイバー21の重量が複合ヤーン1の重量の少なくとも35%になるようにして、提供される。
【0098】
製造の最終段階で、複合ヤーン1を使用して、布100を提供することができる。布100は、織られるか又は編まれてもよい。布100は、本発明による複合ヤーン1のみを使用することにより、又は本発明の複合ヤーン1と異なるヤーンと組み合わせることにより製造することができる。
【0099】
このような布100は、好ましくは衣服である物品101を製造するために使用することができる。一例として、図4では、複合ヤーン1は、デニム織物100の製造に使用されており、これは、次に、ズボンを製造するのに使用されている。
【0100】
最終的な布100に対して異なる処理を実行することができる。一実施形態では、布100をエンボス加工して、三次元のデザインとすることができる。
【0101】
布に化学処理を施して、セルロースファイバー(の一部)を溶解し、布100上にデザイン又はパターンを得ることができる。この技術は、当技術分野では「バーンアウト」又は「デボレ」として知られている。
【0102】
最終的な布100に対する特別の効果は、コアファイバーとシースファイバーとの間で異なる色を使用することによって得ることができる。
【0103】
好ましい実施形態では、複合ヤーン1は、リング精紡機により得られる。
特に、好ましい実施形態は、複合ヤーン1が、単一の粗糸(通常は綿粗糸)に結合されたコア2によって得られるものである。これは、コア2のセンタリングが良くなり(すなわち、グリニングの低減)、従って、より柔らかく、(外観の点で)より魅力的なヤーンを提供できる。ただし、後で詳しく説明するように、2つ以上の異なる粗糸を使用することもできる。
【0104】
図5及び図6は、本発明による代表的な複合ヤーン1を製造するためのリング精紡装置の一実施形態を示している。
【0105】
コア2はボビン6から取り出され、コアヤーン2を真っ直ぐに整列させるために、ヤーンに低い予張力を与えるのに使用される2つの予張力バー10の間に案内される。これは、コア2が、2つの異なる長繊維を混合することによって得られるものである場合に、非常に役立つ。
コア2は、予張力バー10から、重り12が配置されている2つの張力ローラー11へ供給される。コア2は、張力ローラー11に対するコアヤーンの自由な動きを回避するために、駆動ローラーと重り12との間に案内される。なお、張力ローラー11と重り12との組み合わせの代わりに、コアヤーン2に制御された速度を与えるための他の適切な手段、例えば、当技術分野で知られている引き伸ばしローラー等の手段を使用することもできる。
【0106】
上に開示された配置の利点は、主に、同じ装置を使用して標準的なエラスタンコアヤーンを準備できるということにある。この場合、エラスタンファイバーは、重り12の代わりに張力ローラー11上に配置されたパッケージに装填される。
【0107】
第1の引き伸ばし装置(11、12)から、コア2(好ましくは平坦なヤーン、例えば長繊維の束又はヤーン20)が、ローリングガイド13に導かれ、そこから、綿粗糸8用の複数の引き伸ばしローラーの最前線のカップルである、引き伸ばしローラー14へ導かれる。この引き伸ばしローラー14は、当技術分野でそれ自体が知られている。
【0108】
綿粗糸8は、スプール7から、予張力バー(ローラー)10、張力ローラー11を経て、第1のガイド15及び第2のガイド16に案内される。
図6に示されるように、ガイド15は、粗糸に張力を生じさせ、粗糸を固定位置に保ち、粗糸が自由に動くことを回避するために、第2のガイド16に対して装置の前部に対してずらされている。
【0109】
ガイド16から、綿粗糸8が引き伸ばしローラー14に送られる。この引き伸ばしローラー14は、コア2と綿粗糸8に共通である。
【0110】
本発明によれば、コア2は、綿粗糸と結合される前に張力がかけられ、この張力又は伸びは、張力ローラー11と引き延ばしローラー14との速度差、すなわち張力ローラー11と最終段の引き伸ばしローラー14との速度差によって得られる。最終段のローラー14は、複合コア2に延伸比を与える。
【0111】
この延伸比は、ローラー14の速度と張力ローラー11の速度の比として計算される。なお、これらの速度は、各ローラーの表面上の角速度である。
【0112】
予張力バー10も、必要な延伸比の取得に寄与することに留意すべきである。追加の予張力バー10は、コア2の整列及びわずかな張力を提供する。従って、さらなるストレッチステップを助けるので、延伸比をさらに増加させるのに有用である。これにより、コア2が、非常に高い精度で、最終ヤーン1の中心に保持されるという効果が得られる。
【0113】
第1のガイド15及び第2のガイド16の互い違いの位置のずれを使用することにより、綿粗糸を常に同じ位置に送り、長期間の生産中、綿粗糸の移動を防ぐこともできる。綿粗糸8の位置を維持するためのより良い制御とコア2の高張力の組み合わせにより、コア2を常にヤーン1の中心に保ち、コアを短繊維3で完全に覆うことができる。
【0114】
引き伸ばしローラー14から出る最終ヤーン1の2つの部分は、ガイド17を経て紡績装置18に供給され、一緒に紡糸される。この紡績装置18は、当技術分野でそれ自体が知られており、一つの実施形態では、リング、トラベラー、及びスピンドルを含んでいる。
【0115】
生産された複合ヤーンは、特に、横糸として、伸縮性のあるデニム織物や衣服の生産に使用できる。デニムを製造する機械及び方法は当技術分野で周知であり、一例として、モリソン繊維機械又はスルザー機械又はそれらの改変を使用して、優れた弾性及び優れた伸縮回復性を備えたデニム織物を製造することができる。
【0116】
図7及び図8は、本発明による複合ヤーン1の製造のための、他の可能な装置200及び製造方法の例を示す。
これらの実施形態では、シース3は、2つの異なる粗糸から作製され、それらは、それらの経路の一部について、別々に処理され、その後、組み合わされてシースを形成する。同様の方法は、当技術分野では「サイロ紡糸」として知られている。より多くの粗糸を伴うさらなる実施形態も可能である。
【0117】
コア2は、ポリエステル長繊維21及びエラストマー長繊維22としてのエラスタンを含んでいる。ポリエステル21は、ボビン201から供給され、第1の引き伸ばしが加えられる管202を通過する。管202の出口のローラー203によって、さらなる引き伸ばしを加えることができる。
【0118】
エラスタン22はボビン204から供給され、ローラー205に導かれ、そこでポリエステル21と組み合わされてコア2を形成する。一例として、ローラー205は、図3に示される種類のものでも良い。
【0119】
シース3は、スプール206a、206bから供給される2つの綿粗糸8a、8bによって提供される。綿粗糸8a、8bは、(図8によく示されているように)、例えば、1つ又は複数の引き伸ばしローラー207によって別々に引き伸ばされる。
【0120】
コアヤーン2は、引き伸ばしローラー208に導かれ、そこで綿粗糸8a、8bも供給される。
【0121】
コアヤーン2と綿粗糸8a、8bは、次に、紡績装置210によって紡糸される。
【0122】
好ましくは、紡績装置210の前に、コアヤーン2と綿粗糸8a、8bの束は、さらに、図7に拡大して示した好ましい実施形態に示される、引き伸ばし及び圧縮装置209を通過する。
この実施形態では、引き伸ばし及び圧縮装置209は、2つの圧縮ローラー209aを含み、その間で、コアヤーン2、綿粗形8a、8bの束(図7の拡大詳細ではより明確にするために示されていない)がプレスされる。各圧縮ローラー209は、エンドレスベルト209bを駆動する。
複数のベルト209bは、これらのベルト209b間のヤーン2、8a、8bの束用の通路209cを規定するために、互いに向き合っている。この種の引き伸ばし及び圧縮装置は、当技術分野では「ダブルエプロン引き伸ばしシステム」として知られている。
【0123】
一般に、ヤーン2、8a、8bの束は、引き伸ばし及び圧縮装置209によって案内及びプレスされ(例えば、図示の実施形態のベルト209bによる通路209cにおいて)、ヤーン2、8a、8bの束、すなわちコアヤーン2のポリエステル21及びエラスタン22、並びにシース3を形成する粗糸8a、8bの全ての構成要素に対して、均一なプレス及び引き伸ばしを与える。
【0124】
前と同じように、コア2は、最終ヤーン1のシース3に対して中心になるように引き伸ばされ、案内される。
【0125】
他の実施形態では、引き伸ばし及び圧縮装置209は省略されてもよい。
【0126】
さらに、可能な実施形態では、複合ヤーン1の単一の粗糸リング精紡を実行するために、2つの綿粗糸8a、8bのうちの1つが省略される(又はいかなる場合でも使用されない)。
【0127】
1つの例として、図9は、綿粗糸8用の単一の供給源7であるスプールを備え、圧縮装置209を備えていないリング精紡装置の実施形態を示している。他の要素は、図7及び図8のものと同様であり、同じ参照数字で示されている。
【0128】
本発明について、以下の実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0129】
織物Xは、本発明によるヤーンを使用して準備され、比較ヤーンXcompは、先行技術によるヤーンを使用して準備されたものである。サンプルの横糸の組成は、表1の「ヤーン組成」の列に記載されている。
縦糸の組成は、エラスタンが存在せず、綿の量が前記エラスタンの量だけ増加することを除いて、横糸の組成と同じである。
織物XのヤーンのPES(ポリエステル長繊維)コアは、36本の長繊維で形成されたコアファイバーの150デニールの束であり、各長繊維は4.5デニールの長繊維である。
【0130】
この織物の引裂き及び引張強度を評価するために、織物の試験を実施した。引張強度はASTMD5034でテストされ、標準ASTMD1424が織物の引裂き評価するために使用された。
【0131】
テスト結果は次の表1に纏められている。表1の数値からわかるように、本発明による織物の性能が20%以上向上していることがわかる。
【0132】
【表2】

【符号の説明】
【0133】
1 複合ヤーン
2 コアヤーン
3 シース
3a 短繊維
6 ボビン
7 スプール
8 粗糸
8a 綿粗糸
8b 綿粗糸
10 予張力バー
11 張力ローラー
12 重り
13 ローリングガイド
14 引き伸ばしローラー
15 第1のガイド
16 第2のガイド
17 ガイド
18 紡績装置
20 コアヤーン
21 ポリエステル長繊維(ポリマーコアファイバー)
22 エラスタン(エラストマー長繊維)
50 ロール
51 「V」字型の制限手段
100 布(デニム織物)
101 物品
200 装置
201 ボビン
202 管
203 ローラー
204 ボビン
205 ローラー
206a スプール
206b スプール
207 引き伸ばしローラー
208 引き伸ばしローラー
209 引き伸ばし及び圧縮装置
209a 圧縮ローラー
209b エンドレスベルト
209c 通路
210 紡績装置
図1
図2
図3
図4-4a】
図5
図6
図7
図8
図9