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  • 特許-ステントグラフト 図1
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  • 特許-ステントグラフト 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ステントグラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20250128BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021543690
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031434
(87)【国際公開番号】W WO2021044858
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019160915
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/078218(WO,A1)
【文献】特開昭55-54950(JP,A)
【文献】特表2002-522155(JP,A)
【文献】特開平2-206457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04― 2/07
A61F 2/82― 2/97
A61L 27/00―27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントグラフトであって、
管状の皮膜部と、前記皮膜部の一面に縫合糸により縫合される骨格部と、を備え、
前記皮膜部は、
ポリエステル樹脂の繊維の織物からなる第1層と、
前記第1層よりも低い透液性を有し、PTFEで形成された膜体からなる第2層と、
前記第1層と前記第2層をシリコーンで接着する接着層と、を有する多層構造をなし、
前記第1層は、前記織物の互いに直交する経糸および緯糸により形成された前記繊維の隙間を有し、前記繊維の隙間に前記シリコーンが充填され、
前記縫合糸は、前記皮膜部の前記第1層では前記繊維の隙間を通り、前記第2層を貫通し、
前記皮膜部は、縫合で生じた前記第2層の開口を広げる力に対して、前記繊維の隙間に前記シリコーンが充填された状態の前記織物の経糸および緯糸が抵抗となる
ステントグラフト。
【請求項2】
前記織物は、平織り、綾織り、繻子織りのいずれかである
請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記皮膜部は、前記第1層が前記骨格部に臨むように取り付けられる
請求項1または請求項2に記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大動脈に生じた大動脈瘤や大動脈解離などの治療に用いられる管状治療具として、ステントグラフトが従来から知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
ステントグラフトは、例えば、金属線を用いた骨格部と、骨格部を被覆する皮膜部を含み、全体として管状の外形をなす。ステントグラフトは、血管内の所定位置において内側から径方向外側に外力が加えられることで拡張し、血管と密着した状態で血管内に留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6131441号公報
【文献】特許第5824759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントグラフトの皮膜部は、使用時において病変部位への血液の流入を抑制する上で透液性が低いことが好ましい。一方、骨格部に皮膜部を縫合で固定した場合、皮膜部の材料によっては縫合箇所で皮膜部に裂けや破れが生じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、低い透液性を確保しつつ、縫合での裂けや破れの生じにくいステントグラフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ステントグラフトであって、管状の皮膜部と、皮膜部の一面に縫合糸により縫合される骨格部と、を備え、皮膜部は、ポリエステル樹脂の繊維の織物からなる第1層と、第1層よりも低い透液性を有し、PTFEで形成された膜体からなる第2層と、第1層と第2層をシリコーンで接着する接着層と、を有する多層構造をなす。第1層は、織物の互いに直交する経糸および緯糸により形成された繊維の隙間を有し、繊維の隙間にシリコーンが充填される。縫合糸は、皮膜部の第1層では繊維の隙間を通り、第2層を貫通する。皮膜部は、縫合で生じた第2層の開口を広げる力に対して、繊維の隙間にシリコーンが充填された状態の織物の経糸および緯糸が抵抗となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低い透液性を確保しつつ、縫合での裂けや破れを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用した一実施形態のステントグラフトの斜視図である。
図2】皮膜部の構成を模式的に示す図である。
図3図1において破線で囲った部分の断面構造を模式的に示す図である。
図4図3のIIIb-IIIb線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
後述の各図では、管状治療具の一実施形態としてのステントグラフト10の構成例を模式的に表している。図面におけるステントグラフト10の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。
【0011】
図1は、一実施形態のステントグラフト10の概略構成を示す斜視図である。図1では、ステントグラフト10を血管内に留置させた状態(使用状態)を示している。
【0012】
図1に示すステントグラフト10は、血管用のステントグラフトであり、全体形状が管状をなしている。ステントグラフト10は、軸方向Axの両端部に設けられた開口が連通しており、使用状態において患者の血液が通過する管状流路を内部に有している。
図1の例では、直管形状のステントグラフト10を示している。もっとも、本実施形態のステントグラフト10は、例えば、弓状に湾曲した形状(例えば、患者の大動脈弓に対応した形状)であってもよく、捻れを有する形状であってもよい。
【0013】
ステントグラフト10は、拡張状態の形状が記憶された、いわゆる自己拡張型の構成を有する。ステントグラフト10は、図示しない筒状のシースに収容されて径方向内側に収縮された状態(不図示)で血管30内に導入される。ステントグラフト10は、血管30内の所定位置(例えば、大動脈瘤等が生じている病変部位31)に運ばれた後にシースから放出され、径方向外側に拡張する。拡張したステントグラフト10は、図1に示すように血管30の内壁と密着した状態で血管30内に留置される。
【0014】
図1に示すように、ステントグラフト10は、骨格部11と、骨格部11に固定された皮膜部12とを備えている。皮膜部12は、管状治療具用膜体の一例である。また、ステントグラフト10の軸方向Axの一端には、例えば金属骨格からなるベア部14が形成されている。
ベア部14は、ステントグラフト10の留置時に血管30の内壁との間で摩擦を生じさせ、ステントグラフト10の位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機能を担う。
【0015】
骨格部11は、例えば、金属細線(線材)が螺旋状に巻回されて形成されている。例えば、金属細線が山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら螺旋状に巻回されることで、骨格部11が形成されている。骨格部11の金属細線の断面形状は、例えば、円形又は楕円形である。
【0016】
骨格部11は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと自己拡張するように変形可能に構成される。
【0017】
骨格部11の金属細線を構成する材料としては、例えば、Ni-Ti合金(ニチノール)、コバルト-クロム合金、チタン合金、及びステンレス鋼等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。なお、骨格部11は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0018】
また、例えば、骨格部11の材料(ニチノール等)、骨格部11の金属細線の断面積及び断面形状(ワイヤ等の円線材、又は、レーザーカットによる角線材)、周方向における骨格部11の折り返し回数及び折り返し形状(山部の数及び山部の形状)、並びに、軸方向における骨格部11の螺旋ピッチ(ステントグラフト10の単位長さ当たりの骨格量)等は、留置される血管の径等に応じて適切な値に設定され得る。これらのパラメータに関する詳細な説明は省略する。
【0019】
皮膜部12は、上述の管状流路を形成する管状の可撓性の膜体であって、骨格部11の隙間部分を閉塞するように骨格部11に取り付けられている。本実施形態では、図1に示すように、皮膜部12は、骨格部11の内側に取り付けられている。また、ステントグラフト10の軸方向Axの両端部には、骨格部11を外側から部分的に覆う外側皮膜部12aが貼設されている。
外側皮膜部12aは、例えば、骨格部11の内側から外側に皮膜部12が折り返されて形成されても良い。あるいは、外側皮膜部12aは、皮膜部12を帯状に形成したものを骨格部11の外側から重ね合わせるようにして形成されてもよい。
【0020】
なお、外側皮膜部12aは、骨格部11を外側から全体的に覆うように、すなわち、2枚の皮膜部12を用いて骨格部11を内側と外側から挟み込んで覆うように取り付けられてもよい。
また、皮膜部12は、骨格部11の外側にのみ取り付けられていてもよい。
【0021】
本実施形態の骨格部11は、後述の図3図4で示すように、皮膜部12と糸13で縫い付けられている。なお、骨格部11と皮膜部12の固定方法は、例えば、接着、溶着、テープによる貼着などであってもよい。
【0022】
図2は、皮膜部12の構成を模式的に示す図である。また、図3は、図1において破線で囲った部分の断面構造を模式的に示す図である。図4は、図3のIIIb-IIIb線断面図である。
【0023】
皮膜部12は、繊維からなる第1層21と、第1層21よりも透液性の低い第2層22とが積層された多層構造の膜体である。また、第1層21と第2層22の間には、中間層として第1層21と第2層22を接着する接着層23が形成されている。
【0024】
第1層21は、例えば、繊維が網目状に配置された布地であり、生体適合性を有する繊維材料の織物、編物又は不織布で構成される。この第1層21は、糸13で縫合される部分の裂けや破れを抑制する機能を主に担う。第1層21の繊維材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
図3図4では、第1層21が織物で形成された例を模式的に示すが、上記のように皮膜部12は編物や不織布であってもよい。また、第1層21の織物の織り方は、平織り、綾織り、繻子織りのいずれでもよい。
【0025】
第2層22は、生体適合性を有する材料を延伸、圧延等することにより成形された非透液性のフィルムで構成される。第2層22の材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂等が挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0026】
第2層22は、ステントグラフト10の内側と外側の間での体液の漏れを抑制する機能を担う。ステントグラフト10の使用時にはステントグラフト10の内側に血液が流れるが、非透液性の第2層22があることで、ステントグラフト10の内側の血液がステントグラフト10の外側の病変部位31に流入することが抑制される。
なお、第1層21の布地には繊維の隙間に微細な孔が形成されるが、第2層22の表面には布地のような繊維の隙間がない。そのため、第2層22は、第1層21に比べると透液性が低くなる。
【0027】
接着層23は、第1層21の布地と第2層22を接着できるものであればよい。接着時に加熱を行う場合、接着層23には、第1層21および第2層22よりも低い融点の材料が用いられる。接着層23の材料としては、例えば、シリコーン、ウレタン、ポリエチレンなどが挙げられる。
一例として、第1層21の布地の少なくとも第2層22側の接着面にシリコーンをディッピング等により付着し、シリコーンが付着した第1層21の布地と第2層22のフィルムを重ねてから加熱することで、第1層21と第2層22をシリコーンで接着できる。
【0028】
なお、皮膜部12における接着層23は必須ではなく、第1層21と第2層22を接着以外の方法で固着してもよい。例えば、第1層21および第2層22のいずれかの表面に表面改質処理を施し、第1層21と第2層22との親和性を高めて両者を接合することで接着層23を省略してもよい。
【0029】
本実施形態においては、第1層21の布地と第2層22のフィルムを積層した多層構造の皮膜部12に骨格部11が縫合される。このとき、骨格部11と皮膜部12を縫合する糸13は、皮膜部12の第1層21では繊維の隙間を通り、皮膜部12の第2層22を貫通する。そのため、第2層22には、縫合で糸13を通したときに、図3図4に示すような開口15が形成される。
【0030】
ここで、使用時のステントグラフト10は径方向外側に拡張するので、使用時のステントグラフト10の皮膜部12には、周方向に伸張する力が作用する。
また、使用時のステントグラフト10に対して血管の脈動による周期的な振動が加わると、このような振動の影響で、ステントグラフト10の周面上で骨格部11と皮膜部12の位置ずれが生じうる。かかる位置ずれを生じさせる力により、骨格部11と皮膜部12を縫合する糸13と、皮膜部12の間にはせん断方向の力が作用する。
【0031】
皮膜部12に上記の力が複合的に作用すると、例えば、応力の集中しやすい第2層22の開口15の部分で裂けや破れが生じやすくなる。しかし、皮膜部12は、繊維からなる第1層21と、第2層22の多層構造であるので、第2層22の開口15を広げようとする力に対しては第1層21で網目状に配置されている繊維が抵抗となる。そのため、第2層22の開口15の周囲の強度が第1層21によって補われ、縫合による第2層22の裂けや破れが生じにくくなる。
【0032】
また、皮膜部12と骨格部11との位置関係は、第1層21が骨格部11に臨むように皮膜部12を取り付けてもよいし、第2層22が骨格部11に臨むように皮膜部12を取り付けてもよい。例えば、第2層22が内側となるように皮膜部12が取り付けられることで、第1層21よりも平滑で、且つ、抗血栓性が高い第2層22が血液と接しやすくなる。これにより、ステントグラフト10が血栓で閉塞し難くすることができる。特に、より閉塞しやすいと考えられる細径のステントグラフトで有用となる。
本実施形態では、図3図4に示すように、骨格部11の内側に、当該骨格部11に第1層21が臨むように皮膜部12が取り付けられている。
【0033】
上記のように、ステントグラフト10に対して血管の脈動による周期的な振動が加わることで、ステントグラフト10の周面上で骨格部11と皮膜部12の位置ずれが生じうる。しかしながら、第1層21が骨格部11に臨む場合、骨格部11には第1層21の布地が接触し、骨格部11と第2層22は直接接触しない。そのため、上記の骨格部11と皮膜部12の位置ずれが生じるときに、非透液性の機能を担う第2層22が骨格部11と擦れて摩耗することを抑制できる。
また、第1層21がステントグラフト10の外側に臨んでいる場合、第1層21の表面は繊維の凹凸により表面粗さが比較的大きいため、皮膜部12が平滑な面である場合と比べると骨格部11と皮膜部12の接触面積は低減する。そのため、血管の脈動等で骨格部11と皮膜部12の位置ずれが生じても、皮膜部12を摩耗しにくくできる。
【0034】
一方、図示は省略するが、骨格部11の内側に、当該骨格部11に第2層22が臨むように皮膜部12を取り付けると、第2層22がステントグラフト10の外周側に臨む。この場合、ステントグラフト10の使用時には、非透液性の機能を担う第2層22が血管の内壁に押し付けられて、血管の内壁と第2層22が密着しやすくなる。例えば、ステントグラフト10の端部においては血管の内壁と第2層22の隙間が生じにくくなるので、ステントグラフト10の端部からの病変部位31への血液の流入を一層抑制しやすくなる。
【0035】
以上のように、本実施形態のステントグラフト10は、管状の皮膜部12と、皮膜部12の一面に縫合される骨格部11と、を備える。皮膜部12は、繊維からなる第1層21と、第1層21よりも低い透液性を有する第2層22と、を有する多層構造の膜体である。
本実施形態によれば、低い透液性の第2層22を皮膜部12が有するので、ステントグラフト10の内側と外側の間での体液の漏れが抑制され、ステントグラフト10の内側の血液が外側の病変部位31に流入することを抑制できる。
また、皮膜部12は、繊維からなる第1層21と、第2層22の多層構造であるので、糸13を通すことで形成される第2層22の開口15を広げようとする力に対しては第1層21で網目状に配置されている繊維が抵抗となる。そのため、本実施形態によれば、縫合による第2層22の裂けや破れが生じにくくなる。
【0036】
また、本実施形態の多層構造を有する皮膜部12を備えたステントグラフト10によれば、布地のみやフィルム状の膜体のみで皮膜部を構成する場合と比べて、皮膜部12全体の厚さを小さくできる。
【0037】
一例として、布地のみで皮膜部を構成した場合には、透液性を低下させるには皮膜部を厚くする必要が生じる。
また、フィルム状の膜体のみで皮膜部を構成した場合、非透液性の確保は比較的に容易であるが、例えば骨格部と縫合すると、縫合箇所からの裂けや破れによって体液の漏れが生じる可能性がある。したがって、フィルム状の膜体のみで皮膜部を構成した場合にも、裂けや破れの防止のために皮膜部の厚さを厚くする必要が生じる。
上記のように皮膜部を厚くすると、管状治療具をシースに収納するときの収納性の悪化や、シースからの放出性の低下が懸念される。
【0038】
これに対し、本実施形態によれば皮膜部12を多層構造とし、裂けや破れに対する強度の確保を第1層21が担い、非透液性の確保を第2層22が担っている。そのため、第1層21と第2層22をそれぞれ厚くしなくてすむので、結果として皮膜部12の全体の厚さを小さくできる。これにより、本実施形態によれば、従来よりも細径のシースを利用したステントグラフト留置術が可能となり、手術の際の患者の負荷(侵襲性)を一層少なくすることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、第1層21が骨格部11に臨むように、皮膜部12が骨格部11の内側に取り付けられている(図3図4)。そのため、骨格部11は第1層21の布地と接触するが第2層22とは接触しないので、第2層22が骨格部11と擦れて摩耗することを抑制できる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、ステントグラフト10の軸方向Axの両端には骨格部11を外側から部分的に覆う外側皮膜部12aが形成されている(図1)。ここで、ステントグラフト10の外側皮膜部12aを、第2層22がステントグラフト10の外周側に臨むように配置することで、血管の内壁と第2層22が密着して血管の内壁と第2層22の隙間が生じにくくなる。これにより、ステントグラフト10の端部からの病変部位31への血液の流入を一層抑制しやすくなる。
【0041】
以上、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、皮膜部12として、第1層21と第2層22を1つずつ有する構成を説明したが、第1層21と第2層22のいずれかを複数有していてもよい。例えば、皮膜部12は、2つの第1層21の間に第2層22が配置された多層構造の膜体であってもよく、2つの第2層22の間に第1層21が配置された多層構造の膜体であってもよい。
【0043】
また、皮膜部12において、裂けや破れに対する強度の確保を担う第1層21は、皮膜部12の全体に配置されていなくてもよい。例えば、皮膜部12の周面において骨格部11の配置される位置に合わせて部分的に第1層21を設け、骨格部11の縫合箇所を部分的に補強するようにしてもよい。
【0044】
また、第1層21は、例えば、ポリエチレン(特に、分子量が100万~600万程度の超高分子ポリエチレン等)等の高分子化合物が含有されていてもよい。これにより、第1層21に滑り性を付与することができ、ステントグラフト10をシース内に装填するときやステントグラフト10をシースから放出するときの抵抗を下げることができる。また、第1層21の繊維の隙間に高分子化合物が充填されて塞ぐことで、第1層21の透液性を低下させるようにしてもよい。
【0045】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
10 ステントグラフト(管状治療具)
11 骨格部
12 皮膜部
12a 外側皮膜部
13 糸
21 第1層
22 第2層
23 接着層

図1
図2
図3
図4