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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】横ビーム式透過型砂防堰堤の構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024163457
(22)【出願日】2024-09-20
【審査請求日】2024-09-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514328975
【氏名又は名称】嶋 丈示
(73)【特許権者】
【識別番号】398054845
【氏名又は名称】株式会社プロテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】嶋 丈示
(72)【発明者】
【氏名】西田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山本 満明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270333(JP,A)
【文献】特開2004-270329(JP,A)
【文献】実開昭61-002529(JP,U)
【文献】特開2017-008509(JP,A)
【文献】特開2022-040717(JP,A)
【文献】特開2024-143159(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2037464(KR,B1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2021-0002023(KR,U)
【文献】特開2003-138544(JP,A)
【文献】特開2009-243196(JP,A)
【文献】特開2006-328658(JP,A)
【文献】特許第7386371(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の支持基礎上に設置した透過捕捉体を具備し、前記透過捕捉体は支持基礎から離隔した位置に複数の横ビームを川幅方向に向けて並列に架設した透過構造のフィルタユニットと、前記支持基礎に立設し、フィルタユニットを支持するように複数の部材を組み合わせて形成した立体構造の支保柱体と、複数の横ビームの両端部を個別に固定可能な横ビームの位置決め装置とを具備した横ビーム式透過型砂防堰堤であって、
前記横ビームの位置決め装置が、横ビームの一部の周面を収容可能な複数の上向きの収容溝を形成した帯状の固定受板と、
前記横ビームの一部の周面を収容して拘束可能な下向きの収容溝を有し、前記固定受板の収容溝の開口部を個別に閉鎖可能な複数の拘束片と、
前記固定受板と拘束片の間を連結する着脱可能な連結素子とを具備し、
前記固定受板の上向きの収容溝と前記拘束片の下向きの収容溝が横ビームの端部の全周面を接面して把持可能であり、
前記拘束片を個別に着脱することで横ビームの単体を個別に着脱可能に構成したことを特徴とする、
横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項2】
前記固定受板の収容溝の両側に設けた連通孔と、前記拘束片の収容溝の両側に設けた連通孔に連結素子を挿通して前記横ビームの両端部を隣り合う前記位置決め装置に把持させたことを特徴とする、請求項1に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項3】
前記フィルタユニットは横ビームを斜めに配列して形成した傾斜捕捉面と、該傾斜捕捉面の裾部から上流側に向けて水平に形成した水平捕捉面とを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項4】
前記支保柱体を構成する斜柱の一部に一体に設けた固定受板の間に複数の横ビームを並設して傾斜捕捉面を形成するとともに、前記支持基礎から隆起して設けたコンクリート製の立上部の天端面に設けた別途の固定受板の間に複数の横ビームを並設して水平捕捉面を形成したことを特徴とする、請求項3に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項5】
前記横ビームの位置決め装置を構成する固定受板と拘束片が鋼板製であることを特徴とする、請求項1に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項6】
前記連結素子が連結ボルトまたは連結ピンであることを特徴とする、請求項1に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項7】
前記支保柱体が支持基礎に対し河川の下流側に向けて傾けて立設した斜柱と、前記斜柱を支えられるように支持基礎に対して傾けて立設した単数または複数の控柱とを具備することを特徴とする、請求項1に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【請求項8】
前記横ビームがコンクリート充填鋼管製であることを特徴とする、請求項1に記載の横ビーム式透過型砂防堰堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の横ビームを具備した透過型砂防堰堤に関し、特に横ビームの取付構造を改良した横ビーム式透過型砂防堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、複数の横ビームを具備した横ビーム式透過型砂防堰堤が開示され、特許文献3には、コンクリート製堤体の中央部に縦長の開口部(スリット)を設けたスリット式砂防堰堤が開示されている。
施設設計においては、対象とする土砂流出特性等を考慮して、これらの砂防堰堤のなかから適切な種類の透過型砂防堰堤を選定している。
【0003】
出願人は、河川の掃流区間において、河床に主堤として設置する横ビーム式透過型砂防堰堤と、横ビーム式透過型砂防堰堤の下流側に副堤として設置するスリット式透過型砂防堰堤とを組み合わせた砂防堰堤施設を先に出願した。
主堤である横ビーム式透過型砂防堰堤は、並列に配置する複数の横ビームと、複数の横ビームを支える支持枠体とを具備している。
この砂防堰堤施設は、主堤と副提が相乗的に機能するように、主提の水平捕捉面と、副提の堰部を略同じ高さに設定していて、本提の上流側手前で土砂を自然に堆積しつつ、堆積土砂が下流側へ向けて突発的に流下するのを抑制できる構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-328658号公報
【文献】特開2009-243196号公報
【文献】特開2003-138544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の横ビーム式透過型砂防堰堤にはつぎのような解決すべき課題を内包している。
<1>一般的に横ビームには、曲げ剛性に優れた鋼管(例えば直径500mm、全長10m)、またはモルタル充填鋼管が用いられていて、横ビーム1本の重量が数tにもおよぶ重量物である。
そのため、重量物の横ビームの設置作業を慎重に行うために作業効率が悪くなって、横ビームの現場組立て作業に多くの時間と労力を要していた。
<2>支持枠体の傾斜部に対して横ビームを多段的に架設する際に、作業中に誤って1本の横ビームが滑落すると、仮置き済みの横ビームが連鎖して滑落する危険がある。
重量物の横ビームが滑落すると大事故につながるため、その改善技術の提案が求められている。
<3>横ビーム式透過型砂防堰堤は、設置後の経年劣化に伴い、一部の横ビームが腐食する場合がある。
これまでの横ビーム式透過型砂防堰堤は、経年劣化した横ビームを個別に撤去して交換できないため、横ビームの交換作業に多くの時間と労力を要していた。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところはつぎの横ビーム式透過型砂防堰堤を提案することにある。
<1>横ビームを安全で、かつ、効率よく設置することができること。
<2>横ビームの部分的な交換を簡易に行えること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート製の支持基礎上に設置した透過捕捉体を具備し、前記透過捕捉体は支持基礎から離隔した位置に複数の横ビームを川幅方向に向けて並列に架設した透過構造のフィルタユニットと、前記支持基礎に立設し、フィルタユニットを支持するように複数の部材を組み合わせて形成した立体構造の支保柱体と、複数の横ビームの両端部を個別に固定可能な横ビームの位置決め装置とを具備した横ビーム式透過型砂防堰堤であって、前記横ビームの位置決め装置が、横ビームの一部の周面を収容可能な複数の上向きの収容溝を形成した帯状の固定受板と、前記横ビームの一部の周面を収容して拘束可能な下向きの収容溝を有し、前記固定受板の収容溝の開口部を個別に閉鎖可能な複数の拘束片と、前記固定受板と拘束片の間を連結する着脱可能な連結素子とを具備し、前記固定受板の上向きの収容溝と前記拘束片の下向きの収容溝が横ビームの端部の全周面を接面して把持可能であり、前記拘束片を個別に着脱することで横ビームの単体を個別に着脱可能に構成した。
本発明の他の形態において、前記固定受板の収容溝の両側に設けた連通孔と、前記拘束片の収容溝の両側に設けた連通孔に連結素子を挿通して前記横ビームの両端部を隣り合う前記位置決め装置に把持させて固定する。
本発明の他の形態において、前記フィルタユニットは横ビームを斜めに配列して形成した傾斜捕捉面と、該傾斜捕捉面の裾部から上流側に向けて水平に形成した水平捕捉面とを有する。
本発明の他の形態において、前記支保柱体を構成する斜柱の一部に一体に設けた固定受板の間に複数の横ビームを並設して傾斜捕捉面を形成するとともに、前記支持基礎から隆起して設けたコンクリート製の立上部の天端面に設けた別途の固定受板の間に複数の横ビームを並設して水平捕捉面を形成する。
本発明の他の形態において、前記横ビームの位置決め装置を構成する固定受板と拘束片が鋼板製である。
本発明の他の形態において、前記連結素子が連結ボルトまたは連結ピンである。
本発明の他の形態において、前記支保柱体が支持基礎に対し河川の下流側に向けて傾けて立設した斜柱と、前記斜柱を支えられるように支持基礎に対して傾けて立設した単数または複数の控柱とを具備する。
本発明の他の形態において、前記横ビームがコンクリート充填鋼管製である。

【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>複数の横ビームを設置するにあたり、横ビームを1本単位で組付けまたは1本単位で取り外しが可能な位置決め装置を使用することで、横ビームの設置面に勾配があっても横ビームを安全で、かつ効率よく設置することができる。
<2>横ビームを1本単位で組付け可能であるため、横ビームの組付作業中に、組付けを終えた他の横ビームが滑落する心配がない。
<3>横ビームが数tもの重量物であっても、透過捕捉体を構成するフィルタユニットを安全に組み立てることができる。
<4>特定の拘束片を取り外すだけの簡単な操作で以て、横ビームを1本単位で交換することができる。
特定の横ビームを交換するために、すべての拘束片を取りはずす必要がない。
<5>横ビームの位置決め装置を構成する固定受板と拘束片が鋼板製であるため、位置決め装置を低コストに製造できるうえに、固定受板廉の設置が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る横ビーム式透過型砂防堰堤(透過型砂防堰堤)を上流側か見た正面図
図2】透過型砂防堰堤を構成する透過捕捉体の斜視図
図3】横ビームの断面図
図4】組立中における透過捕捉体の側面図
図5】透過型砂防堰堤の施工方法の説明図
図6】透過捕捉体の組立て方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降に図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0011】
<1>横ビーム式透過型砂防堰堤の概要
図1~4を参照して説明する。本発明に係る横ビーム式透過型砂防堰堤(以下「透過型砂防堰堤」という)は、河床の支持基礎60上に設置した透過捕捉体10を具備する。
以降に透過型砂防堰堤について詳しく説明する。
【0012】
<2>支持基礎
河床にはコンクリート製の支持基礎60を構築する。
支持基礎60の川幅方向である左右両側には、コンクリート製の一対の側壁61を一体に立設する。
左右の側壁61の間には水通用開口部62を形成している。水通用開口部62は透過捕捉体10を設置可能な開放空間になっている。
【0013】
<3>透過捕捉体
透過捕捉体10は、複数の鋼材等の剛性部材を組み合わせて形成した透過式の骨組構造体であり、砂礫等の流下物を捕捉する機能を有している。
本例の透過捕捉体10では、複数の横ビーム40の集合体で構成した透過構造のフィルタユニット20と、フィルタユニット20をその背面側(下流側)から支持する支保柱体30と、複数の横ビーム40の両端部を個別に固定するための位置決め装置50とを具備する。
【0014】
<3.1>横ビーム
横ビーム40は断面形状が円形または角形を奏する高剛性の棒状物であり、河川を流下する土砂等の流下物を捕捉し得る構成となっている。
【0015】
図3にコンクリート充填鋼管製の横ビーム40の一例を示す。
この横ビーム40は鋼管製の外菅41と、外菅41内の長手方向に配置した複数の補強筋42と、補強筋42の内側に等間隔で配置した複数の鋼管製の内管43と、外菅41内に充填したモルタル等の固結材44を有している。
横ビーム40の径や全長は、適宜選択が可能であるが、実用上、横ビーム40の径は0.5m、全長は10mほどである。
【0016】
各内管43は、内部に固結材を充填せずに空洞のまま用いてもよいし、内部に固結材を充填して用いてもよい。
また横ビーム40は、充填鋼管製に限定されず、公知の剛性構造物が適用可能である。
【0017】
<3.2>フィルタユニット
フィルタユニット20は、水通用開口部62内に設置した横ビーム40製のフィルタ材である。
フィルタユニット20は、支持基礎60から離隔した位置で、複数の横ビーム40を支保柱体30の斜柱31に沿って斜めに配列して形成した傾斜捕捉面21と、支持基礎60から高さ方向に所定の距離を離隔した位置で、傾斜捕捉面21の裾部から上流側に向けて水平に形成した水平捕捉面22とを有する。
複数の横ビーム40の間には横長のスリット23を形成している(図2)。
スリット23の幅寸法は捕捉対象である流下物の種類に応じて適宜選択する。
【0018】
本例では、水平捕捉面22を構成する複数の横ビーム40を支持基礎60から隆起して設けた立上部63の天端面に支持させる形態について説明するが、支保柱体30を構成する斜柱31の途中から上流側へ向けて水平に張り出した鋼材に複数の横ビーム40を支持させて水平捕捉面22を形成してもよい。
【0019】
<3.3>支保柱体
支保柱体30は、フィルタユニット20を支持し得るように複数の鋼材等の剛性部材を組み合わせた形成した立体構造体である。
本例の支保柱体30は、支持基礎60に対して傾けて立設した斜柱31と、斜柱31を支えられるように、支持基礎60に対して傾けて立設した単数または複数の控柱32とを具備する。
斜柱31は河川の下流側に向けて傾斜し、複数の控柱32は河川の上流側に向けて傾斜する。
斜柱31の傾斜角度(勾配)は、傾斜捕捉面21の形成角度に応じて適宜選択が可能である。
【0020】
斜柱31と複数の控柱32は、圧縮強度と曲げ耐力に優れた剛性部材であり、例えば公知のモルタル充填鋼管を使用できる。
【0021】
斜柱31や控柱32は一本ものの柱体に限らず、複数の分割柱体をボルト等で繋ぎ合わせて構成してもよい。
【0022】
<3.4>横ビームの位置決め装置
本発明では、複数の横ビーム40の両端部を移動不能に固定するために位置決め装置50を使用する。
すなわち、位置決め装置50は、隣り合う斜柱31間と、隣り合う立上部63の天端面の間に架設した横ビーム40の両端部を位置決めすることが可能である。
【0023】
図4.6を参照して説明すると、位置決め装置50は、長手方向に沿って複数の収容溝51aを配列した帯状の固定受板51と、収容溝51aの開口部を個別に閉鎖可能な複数の拘束片52と、固定受板51と拘束片52の間を連結する着脱可能な連結素子53とを少なくとも具備する。
固定受板51と拘束片52は鋼板製が望ましい。
【0024】
<3.4.1>固定受板
帯状の固定受板51には、その長手方向に沿って複数の収容溝51aを形成している。
収容溝51aは横ビーム40を上方から落とし込んで収容可能なように、半円形の上向きの開口として形成されている。
固定受板51には、各収容溝51aの間の延出部に単数または複数の連結孔51bが形成してある。
【0025】
<3.4.2>拘束片
拘束片52は固定受板51と協働して横ビーム40を拘束して位置決めするための着脱式の押え部材である。
拘束片52は、半円形を呈する下向きの収容溝52aを有し、収容溝52aの両側の延出部に一対の連結孔52bが形成してある。
収容溝52aも横ビーム40を収容可能な半円形の開口として形成されている。
本例では拘束片52の全体形状がC字形を呈する形態について説明するが、拘束片52はコ字形でもよい。
【0026】
本発明では、拘束片52を用いて横ビーム40を個別に位置決めするようにした。
本発明が拘束片52を用いるのは、横ビーム40の設置作業を安全に行うためと、横ビーム40の個別交換をし易くするためである。
【0027】
<3.4.3>連結素子
連結素子53は、複数の拘束片52を固定受板51に連結するための着脱可能な連結部材である。
連結素子53はボルトとナットを組み合わせた連結ボルトを適用できるが、連結素子53は連結ピンを適用することも可能である。
【0028】
<3.4.4>位置決め装置の固定受板の取着位置
図4を参照して位置決め装置50の固定受板51の取着位置について説明する。
位置決め装置50の固定受板51は、斜柱31の一部と支持基礎60から隆起して形成した立上部63の天端面に取り付ける。
【0029】
固定受板51を斜柱31に取り付けるには、斜柱31の上流側の外周面に沿って固定受板51の収容溝51aを上向きにした状態で配置し、固定受板51の底面を溶接して斜柱31に固定する。
固定受板51は予め斜柱31に固着しておいてもよいし、現場で溶接して後付けしてもよい。
【0030】
固定受板51を立上部63に取り付けるには、固定受板51の底面に設けた基板54を立上部63の天端面に載せ、アンカーボルト等を用いて固定する。
【0031】
<4>横ビームのストッパ
横ビーム40は位置決め装置50により固定されるが、横ビーム40が延長方向(川幅方向)に盲動するときは、横ビーム40の両端部近くにストッパを設け、ストッパを位置決め装置50に当接させて横ビーム40のスライド方向へ向けた盲動を規制するようにしてもよい。
【0032】
[透過型砂防堰堤の構築方法]
つぎに透過型砂防堰堤の構築方法について説明する。
【0033】
<1>コンクリート打設工
図4,5を参照して説明すると、河床にコンクリートを打設して支持基礎60を構築するとともに、支持基礎60の川幅方向である左右両側に一対の側壁61を構築する。
【0034】
<2>支保柱体の設置工
支持基礎60を構築する際、支保柱体を構成する斜柱31と控柱32を支持基礎60に立設する。
すなわち、現場へ搬入した斜柱31および控柱32の下端部を支持基礎60に埋設するとともに、斜柱31および控柱32の下部を覆うようにコンクリート製の立上部63を構築する。
立上部63は、斜柱31および控柱32の立設位置に合わせて、河川の流れ方向に沿って細幅に形成する。
コンクリート製の立上部63は、横ビーム40の支持部材として機能することの他に、斜柱31および控柱32の防護部材としても機能する。
【0035】
立上部63の高さは適宜選択が可能である。
図示を省略するが、横ビーム式透過型砂防堰堤(主提)の下流側に、スリット式透過型砂防堰堤(副提)を配備する形態においては、横ビーム式透過型砂防堰堤の水平捕捉面22と、スリット式透過型砂防堰堤の堰部を略同じ高さに設定する。
【0036】
<3>横ビームの横架工
図2,4を参照しながら、支保柱体30の上流側に複数の横ビーム40を用いたフィルタユニット20の組立方法について説明する。
【0037】
<3.1>水平捕捉面の組立て
隣り合う各立上部63の天端面には帯状の固定受板51を水平に設置してある。
川幅方向に向けて隣り合う固定受板51の間に河川の幅方向に向けて横ビーム40を配置し、横ビーム40の両端部を隣り合う固定受板51の各収容溝51aに落とし込む。
横ビーム40の両端部を挟み込むように拘束片52を設置した後に、拘束片52と固定受板51の間を連結素子53で連結して、横ビーム40を1本単位で固定する。
水平に位置する固定受板51に沿って、複数の横ビーム40を横架することで水平捕捉面22を組立てる。
【0038】
<3.2>傾斜捕捉面の組立て
隣り合う各斜柱31には帯状の固定受板51が予め設置してある。
川幅方向に向けて隣り合う固定受板51,51の間に横ビーム40を配置し、横ビーム40の両端部を各収容溝51aに落とし込む。
横ビーム40の端部を挟み込むように拘束片52を設置し、拘束片52と固定受板51の間を連結素子53で連結する。
このように傾斜する固定受板51,51の間に、下段側から上段部へ向けて段階的に複数の横ビーム40を横架することで、傾斜捕捉面21を組立てる。
【0039】
図6を参照して傾斜捕捉面21の組立て方法の一例について説明する。
横ビーム40は固定受板51の下段側から上段へ向けて順次横架する。
図6(A),(B)は下位の収容溝51aに横ビーム40を収容した後に拘束片52を被せて挟持した形態を示している。
拘束片52はその両端を同時に固定受板51に連結してもよいが、図6(A)に示すように拘束片52の一方端を連結素子32を介して固定受板51に予め回動可能に枢支しておき、収容溝51aに収容した直後に拘束片52を回転させて拘束片52を横ビーム40に外装すると、横ビーム40を短時間のうちに固定することができる。
【0040】
下位の収容溝51aに横ビーム40の固定を完了したら、図6(C)に示すように、その上位の収容溝51aに対しても同様に別途の横ビーム40を収容して固定する。
【0041】
このように勾配のある固定受板51に対して、複数の横ビーム40を設置するにあたり、固定受板51の下段側から上段へ向けて段階的に設置するに際し、横ビーム40を1本単位で設置するので、横ビーム40を滑落させずに安全、かつ簡単に設置することができる。
傾斜捕捉面21の組立て作業中に誤って横ビーム40が滑落しても、組み付けを終えた他の横ビーム40が連鎖して滑落することがない。
【0042】
<4>透過捕捉体による土砂の捕捉作用
河川は、泥流、土、砂等の比較的粒径の細かい中小礫、微小礫や、流木、落石等を含む各種の流下物が流下する。
透過型砂防堰堤の上流側から下流側へ向けてこれらの流下物が流れると、流下物は透過型砂防堰堤の水通用開口部62を透過する。
この際、透過捕捉体10の上流側において、土砂等の流下物が堆積してその堆積量が徐々に増していく。
流下物の水位が上昇すると、透過捕捉体10のフィルタユニット20を構成する水平捕捉面22の横ビーム40によって土砂等の流下物が捕捉され、さらに傾斜捕捉面21を構成する複数の横ビーム40によって土砂等の流下物が捕捉される。
【0043】
土砂等の流下物を捕捉する際、横ビーム40に衝撃が加わるが、その衝撃力は横ビーム40および支保柱体30の剛性により支持される。
最終的に、衝撃力は支持基礎60を経て河床地盤で支持される。
【0044】
[横ビームの部分交換方法]
つぎに透過型砂防堰堤に設置した透過捕捉体10の横ビーム40を部分的に交換する方法について説明する。
すなわち、横ビーム40を部分的に交換する場合は、交換予定の横ビーム40の両端部の拘束片52を取り外した後に、特定の横ビーム40を抜き取る。
そして新たな横ビーム40に入れ替えた後に拘束片52を再び取り付けて、横ビーム40の交換作業を終了する。
特に、横ビーム40を1本単位で交換できるため、損傷していない他の横ビーム40の拘束片52を取り外す必要がない。
このように、鋼製の横ビーム40に腐食や損傷が発生した場合は、特定の拘束片52を着脱するだけの操作簡単な作業で以て、横ビーム40を短時間のうちに簡単な操作で交換することができる。
【符号の説明】
【0045】
10・・・・透過捕捉体
20・・・・フィルタユニット
21・・・・傾斜捕捉面
22・・・・水平捕捉面
23・・・・スリット
30・・・・支保柱体
31・・・・斜柱
32・・・・控柱
40・・・・横ビーム
41・・・・外菅
42・・・・補強筋
43・・・・内管
44・・・・固結材
50・・・・位置決め装置
51・・・・固定受板
51a・・・固定受板の収容溝
51b・・・連結孔
52・・・・拘束片
52a・・・拘束片の収容溝
52b・・・連結孔
53・・・・連結素子
54・・・・基板
60・・・・支持基礎
61・・・・側壁
62・・・・水通用開口部
63・・・・立上部
【要約】
【課題】横ビームを安全で、かつ、効率よく着脱できる、横ビーム式透過型砂防堰堤を提供すること。
【解決手段】コンクリート製の支持基礎60上に設置した透過捕捉体10を具備し、透過捕捉体10は支持基礎60から離隔した位置に複数の横ビーム40を並列に架設した透過構造のフィルタユニット20と、フィルタユニット20を支持する立体構造の支保柱体30と、複数の横ビーム40の両端部を個別に固定可能な横ビームの位置決め装置50とを具備し、横ビーム40の位置決め装置50が、横ビーム40を収容可能な複数の収容溝を形成した帯状の固定受板51と、横ビームを拘束可能な複数の拘束片52と、固定受板51と拘束片52の間を連結する着脱可能な連結素子とを具備し、拘束片52を個別に着脱することで横ビーム40の単体を個別に着脱可能に構成した。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6