(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】情報伝送システム、情報伝送方法、端末プログラムおよび基地局プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/18 20090101AFI20250128BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20250128BHJP
H04B 1/69 20110101ALI20250128BHJP
【FI】
H04W28/18
H04W4/38
H04B1/69
(21)【出願番号】P 2020197256
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-11-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月30日、令和2年度電気通信大学 情報理工学域II類情報通信工学プログラム 卒業論文中間発表会、▲鶴▼見康平、安達宏一、LoRaWANにおけるパケット型インデックス変調方式
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 総務省「環境ダイナミクスを活用したフレキシブルLPWAの研究開発」委託研究 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】安達 宏一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威生
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼見 康平
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼田 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 碧仁
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504916(JP,A)
【文献】国際公開第2020/113256(WO,A1)
【文献】特表2019-536390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間スロットにおいて、所定の周波数帯域を用いて、パケット情報を表すパケット信号を送信する端末と、
前記パケット信号の受信を行う基地局と
を備え、
前記端末は、
所定の送信データを生成
する演算装置と、
前記送信データを、時間情報および周波数情報の組み合わせとしての第1部分と、残る第2部分とに分割する情報分割部と、
前記時間情報に基づいて前記時間スロットを決定し、前記周波数情報に基づいて前記周波数帯域を決定する送信パラメータ決定部と、
前記第2部分に基づいて前記パケット情報を生成するパケット生成部と
を備え、
前記基地局は、
前記パケット信号の前記受信が行われた前記時間スロットに基づいて前記時間情報を算出し、
前記パケット信号の前記受信に用いられた前記周波数帯域に基づいて前記周波数情報を算出し、
前記パケット信号が表す前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とを対応付けて記憶し、
前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とに基づいて、前記送信データを復号
し、
前記送信パラメータ決定部は、前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記時間スロット及び前記周波数帯域を決定し、
前記パケット生成部は、前記第1部分、前記時間情報、前記時間スロット、前記周波数情報及び前記周波数帯域とは独立に前記パケット情報を生成する
情報伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報伝送システムにおいて、
複数の前記端末を備え、
前記複数の端末のそれぞれは、
互いに異なる端末IDを格納する記憶装置と、
前記端末IDを含む前記送信データを生成する
前記演算装置と
を備える
情報伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報伝送システムにおいて、
前記演算装置は、
前記送信データを、前記時間情報および前記周波数情報の組み合わせとしての
前記第1部分と、残る
前記第2部分とに分割する
前記情報分割部と、
前記時間情報に基づいて前記時間スロットを決定し、前記周波数情報に基づいて前記周波数帯域を決定する
前記送信パラメータ決定部と、
前記第2部分に基づいて前記パケット情報を生成する
前記パケット生成部と、
前記パケット情報をCSS(Chirp Spread Spectrum:チャープスペクトラム拡散)変調してパケット信号を生成するCSS変調部と
を備える
情報伝送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報伝送システムにおいて、
前記それぞれの端末は、
他の端末とは独立に前記パケット情報を送信する第1通信装置
をさらに備え、
前記基地局は、
前記複数の端末から送信される複数の前記パケット情報を受信する第2通信装置
を備える
情報伝送システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報伝送システムにおいて、
前記それぞれの端末の前記第1通信装置は、時刻合わせ信号を送信し、
前記第2通信装置は、前記それぞれの端末から前記時刻合わせ信号を受信し、
前記基地局は、前記時刻合わせ信号に基づいて前記それぞれの端末との時刻合わせを行う
情報伝送システム。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の情報伝送システムにおいて、
前記それぞれの端末は、
所定のパラメータを測定した結果を表す測定データを出力するセンサ装置
をさらに備え、
前記演算装置は、
前記測定データと、前記端末IDとに基づいて前記送信データを生成する
情報伝送システム。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の情報伝送システムにおいて、
前記基地局は、
前記パケット信号をCSS復調して前記パケット情報を生成するCSS復調部と、
前記パケット信号の受信が行われた前記時間スロットを表す前記時間情報と、前記パケット信号の受信が行われた前記周波数帯域を表す前記周波数情報とを検出する受信タイミング検出部と、
前記時間情報と前記周波数情報の前記組み合わせに基づいて、前記パケット情報とに付加されたインデックス情報を検出する送信インデックス検出部と、
前記パケット情報と前記インデックス情報を結合して前記送信データを復号する情報結合部と
を備える
情報伝送システム。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか一項に記載の情報伝送システムにおいて、
前記基地局は、
前記パケット情報の受信を行い、前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とを算出し、前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とを対応付けて記憶するゲートウェイと、
前記ゲートウェイに接続され、前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とに基づいて前記送信データを復号するサーバと
を備える
情報伝送システム。
【請求項9】
送信データを生成することと、
前記送信データを、時間情報および周波数情報の組み合わせとしての第1部分と、残る第2部分とに分割することと、
前記時間情報に基づいて時間スロットを決定することと、
前記周波数情報に基づいて周波数帯域を決定することと、
前記第2部分に基づいてパケット情報を生成することと、
前記時間スロットにおいて、
前記周波数帯域を用いて、前記パケット情報を表すパケット信号を送信することと、
前記パケット信号の受信を行うことと、
前記パケット信号の前記受信が行われた前記時間スロットに基づいて前記時間情報を算出することと、
前記パケット信号の前記受信に用いられた前記周波数帯域に基づいて前記周波数情報を算出することと、
前記パケット信号が表す前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とを対応付けて記憶することと、
前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とに基づいて、前記送信データを復号することと
を含
み、
前記時間スロットを決定することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記時間スロットを決定すること
を含み、
前記周波数帯域を決定することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記周波数帯域を決定すること
を含み、
前記パケット情報を生成することは、
前記第1部分、前記時間情報、前記時間スロット、前記周波数情報及び前記周波数帯域とは独立に前記パケット情報を生成すること
を含む
情報伝送方法。
【請求項10】
端末の演算装置に実行させることによって前記端末の機能を実現するためのプログラムであって、
前記機能は、
送信データを生成することと、
前記送信データを、時間情報および周波数情報の組み合わせとしての第1部分と、残る第2部分とに分割することと、
前記時間情報に基づいて時間スロットを決定することと、
前記周波数情報に基づいて周波数帯域を決定することと、
前記第2部分に基づいてパケット情報を生成することと、
前記時間スロットにおいて、
前記周波数帯域を用いて、前記パケット情報を表すパケット信号を送信することと
を含
み、
前記時間スロットを決定することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記時間スロットを決定すること
を含み、
前記周波数帯域を決定することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記周波数帯域を決定すること
を含み、
前記パケット情報を生成することは、
前記第1部分、前記時間情報、前記時間スロット、前記周波数情報及び前記周波数帯域とは独立に前記パケット情報を生成すること
を含む
端末プログラム。
【請求項11】
基地局の演算装置に実行させることによって前記基地局の機能を実現するためのプログラムであって、
前記機能は、
パケット信号の受信を行うことと、
前記パケット信号の前記受信が行われた時間スロットに基づいて時間情報を算出することと、
前記パケット信号の前記受信に用いられた周波数帯域に基づいて周波数情報を算出することと、
前記パケット信号が表すパケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とを対応付けて記憶することと、
前記パケット情報と、前記時間情報と、前記周波数情報とに基づいて、送信データを復号することと
を含
み、
前記送信データを復号することは、
前記時間情報及び前記周波数情報に基づいて、前記送信データのうち、第1部分を復号することと、
前記パケット情報に基づいて、前記送信データのうち、前記第1部分以外の第2部分を復号することと
を含み、
前記時間情報を算出することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記時間情報を算出すること
を含み、
前記周波数情報を算出することは、
前記第2部分及び前記パケット情報とは独立に前記時間情報を算出すること
を含み、
前記第2部分を復号することは、
前記第1部分、前記時間情報、前記時間スロット、前記周波数情報及び前記周波数帯域とは独立に前記第2部分を復号すること
を含む、
基地局プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報伝送システム、情報伝送方法、端末プログラムおよび基地局プログラムに関し、例えば、複数の端末から単独の基地局へ情報を伝送するための情報伝送システム、情報伝送方法、端末プログラムおよび基地局プログラムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
多数のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)端末から、それぞれ比較的少量のデータを、単独の基地局へ伝送する需要がある。例えば、それぞれの端末がセンサ装置で検出したセンサデータを基地局やゲートウェイなどに集約することで、それぞれのセンサデータのデータ量は比較的少なくても、集約した基地局では有意な統計的データが得られる。
【0003】
このようなIoT端末は、消費電力が少なく、かつ、長距離の伝送が可能である必要がある。そこで、LPWA(Low Power Wide Area:低電力広エリア)無線通信の規格として、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)などが開発されている。LoRaWANは、簡易なMAC(Medium Access Control:メディアアクセス制御)層アクセスプロトコルを利用し、低消費電力で長距離伝送が可能であることが知られている。
【0004】
その一方で、LoRaWANで複数の端末がそれぞれのパケットをゲートウェイに送信するとき、次のような課題が発生し得る。
【0005】
複数の端末が互いに独立にパケットを送信するとき、2つ以上のパケットが同時に送信されるパケット衝突が発生し得る。このとき、PDR(Packet Delivery Rate:パケット配信率)が低下する。
【0006】
DC(Duty Cycle:送信比率)による送信時間に制約がある。言い換えれば、伝送容量を拡大するために送信パケットの数を所定の閾値より増やすことが困難または不可能である。
【0007】
一般的に、各端末がパケット情報を送信してから次のパケット情報を送信するまでの時間間隔が比較的大きい。
【0008】
上記に関連して、非特許文献1(LoRa Alliance,Inc.、“LoRaWAN(TM) 1.0.3 Specification”、2018年、インターネット<URL:https://lora-alliance.org/sites/default/files/2018-07/lorawan1.0.3.pdf>)には、LoRaWANの仕様書第1.0.3版が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】LoRa Alliance,Inc.、“LoRaWAN(TM) 1.0.3 Specification”、2018年、インターネット<URL:https://lora-alliance.org/sites/default/files/2018-07/lorawan1.0.3.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
効率的な情報伝送を行うことが出来る情報伝送システム、情報伝送方法、端末プログラムおよび基地局プログラムを提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
一実施の形態によれば、情報伝送システム(1)は、端末(2)と、基地局(3)とを備える。端末(2)は、所定の時間スロットにおいて、所定の周波数帯域を用いて、パケット情報を表すパケット信号を送信する。基地局(3)は、パケット信号の受信を行う。端末(2)は、所定の送信データを生成する。端末(2)は、所定のデータに基づいて、パケット情報と、時間スロットを表す時間情報と、周波数帯域を表す周波数情報とを算出する。基地局(3)は、パケット信号の受信が行われた時間スロットに基づいて時間情報を算出する。基地局(3)は、パケット信号の受信に用いられた周波数帯域に基づいて周波数情報を算出する。基地局(3)は、パケット信号が表すパケット情報と、時間情報と、周波数情報とを対応付けて記憶する。基地局(3)は、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とに基づいて、送信データを復号する。
【0013】
一実施の形態によれば、情報伝送方法は、送信データを生成することと、送信データに基づいて、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とを算出することとを含む。情報伝送方法は、時間情報が表す時間スロットにおいて、周波数情報が表す周波数帯域を用いて、パケット情報を表すパケット信号を送信することをさらに含む。情報伝送方法は、パケット信号の受信を行うことをさらに含む。情報伝送方法は、パケット信号の受信が行われた時間スロットに基づいて時間情報を算出することをさらに含む。情報伝送方法は、パケット信号の受信に用いられた周波数帯域に基づいて周波数情報を算出することをさらに含む。情報伝送方法は、バケット信号が表すパケット情報と、時間情報と、周波数情報とを対応付けて記憶することをさらに含む。情報伝送方法は、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とに基づいて、送信データを復号することをさらに含む。
【0014】
一実施の形態によれば、端末プログラム(221)は、端末(2)の演算装置(21)に実行させることによって端末(2)の機能を実現するためのプログラムである。この機能は、送信データを生成することと、送信データに基づいて、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とを算出することとを含む。この機能は、時間情報が表す時間スロットにおいて、周波数情報が表す周波数帯域を用いて、パケット信号を表すパケット信号を送信することをさらに含む。
【0015】
一実施の形態によれば、基地局プログラム(321)は、基地局(3)の演算装置(31)に実行させることによって基地局(3)の機能を実現するためのプログラムである。この機能は、パケット信号の受信を行うことと、パケット信号の受信が行われた時間スロットに基づいて時間情報を算出することとを含む。この機能は、パケット信号の受信に用いられた周波数帯域に基づいて周波数情報を算出することをさらに含む。この機能は、バケット信号が表すパケット情報と、時間情報と、周波数情報とを対応付けて記憶することをさらに含む。この機能は、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とに基づいて、送信データを復号することをさらに含む。
【発明の効果】
【0016】
一実施の形態によれば、効率的な情報伝送を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施の形態による情報伝送システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による端末の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による基地局の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による情報伝送方法の一構成例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、チャープスペクトラム拡散変調について説明するためのグラフである。
【
図6】
図6は、一実施の形態によるパケット情報とシンボルについて説明するためのグラフである。
【
図7】
図7は、LoRaWANの伝送方法について説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態による情報伝送方法について説明するための図である。
【
図9】
図9は、LoRaWANと一実施形態による情報伝送方法を比較するシミュレーションの諸元の一例を示す表である。
【
図10】
図10は、LoRaWANの伝送方法によるシミュレーション結果の一例を示す表である。
【
図11】
図11は、一実施の形態による情報伝送方法によるシミュレーション結果の一例を示す表である。
【
図12】
図12は、シミュレーション結果を比較するグラフである。
【
図13】
図13は、シミュレーション結果を比較するグラフである。
【
図14】
図14は、シミュレーション結果を比較するグラフである。
【
図15】
図15は、シミュレーション結果を比較するグラフである。
【
図16】
図16は、一実施の形態によるゲートウェイの一構成例を示すブロック回路図である。
【
図17】
図17は、一実施の形態によるサーバの一構成例を示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による情報伝送システム、情報伝送方法、端末プログラムおよび基地局プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による情報伝送システム1は、複数の端末2A、2B、2C、2Dと、基地局3とを備える。端末2A、2B、2C、2Dを区別しないとき、これらを端末2と総称する。
【0020】
それぞれの端末2は、互いに独立して情報を送信する。言い換えれば、それぞれの端末2は情報を送信するときに互いに同期しない。基地局3は、端末2から送信された情報を受信する。
【0021】
図2に示すように、一実施の形態による端末2は、バス20と、演算装置21と、記憶装置22と、通信装置23と、センサ装置24とを備える。演算装置21、記憶装置22、通信装置23およびセンサ装置24は、バス20を介して通信可能に接続されている。
【0022】
演算装置21は、情報分割部211と、送信パラメータ決定部212と、CSS(Chirp Spread Spectrum:チャープスペクトラム拡散)変調部213と、パケット生成部214と、送信部215とを備える。記憶装置22は、端末2を識別するための端末IDを表す端末ID情報と、演算装置21によって実行されるための端末プログラム221とを格納している。複数の端末2のそれぞれの端末IDは、互いに異なる。端末プログラム221は、外部の記録媒体220から読み出されて記憶装置22に格納されていてもよい。記録媒体220は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0023】
演算装置21は、端末プログラム221を記憶装置22から読み出して実行することにより、情報分割部211、送信パラメータ決定部212、CSS変調部213、パケット生成部214および送信部215の機能をそれぞれ実現する。言い換えれば、情報分割部211、送信パラメータ決定部212、CSS変調部213、パケット生成部214および送信部215のそれぞれは、
図2では便宜上、演算装置21の構成要素として示されているが、演算装置21と端末プログラム221が協働して所定の機能を実現する機能部である。これらの機能の詳細については後述する。
【0024】
通信装置23は、基地局3との間で無線通信を行う。通信装置23は、基地局3が受信するためのパケット情報を送信し、また、基地局3から送信される時刻合わせ信号などの信号を受信する。記憶装置22に格納されている端末プログラム221は、通信装置23によって基地局3または他の外部装置から受信されたものであってもよい。
【0025】
センサ装置24は、周囲の状態を表す所望のパラメータを計測し、この計測の結果を表す測定データを出力する。一例として、センサ装置24は、周囲の気温を測定する気温センサ、周囲の湿度を測定する湿度センサ、周囲の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサ、などであってもよい。
【0026】
図3に示すように、一実施の形態による基地局3は、バス30と、演算装置31と、記憶装置32と、通信装置33とを備えている。演算装置31、記憶装置32および通信装置33は、バス30を介して通信可能に接続されている。
【0027】
演算装置31は、CSS復調部311と、送信情報検出部312と、受信タイミング検出部313と、送信インデックス検出部314と、情報結合部315とを備えている。記憶装置32は、演算装置31によって実行されるための基地局プログラム321を格納している。基地局プログラム321は、外部の記録媒体320から読み出されて記憶装置32に格納されていてもよい。記録媒体320は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0028】
演算装置31は、基地局プログラム321を記憶装置32から読み出して実行することにより、CSS復調部311、送信情報検出部312、受信タイミング検出部313、送信インデックス検出部314および情報結合部315の機能を実現する。言い換えれば、CSS復調部311、送信情報検出部312、受信タイミング検出部313、送信インデックス検出部314および情報結合部315のそれぞれは、
図3では便宜上、演算装置31の構成要素として示されているが、演算装置31と基地局プログラム321が協働して所定の機能を実現する機能部である。これらの機能の詳細については後述する。
【0029】
通信装置33は、端末2との間で無線通信を行う。通信装置33は、端末2から送信されるパケット情報を受信し、また、端末2に時刻合わせ信号などの信号を送信する。記憶装置32に格納されている基地局プログラム321は、通信装置33によって他の外部装置から受信されたものであってもよい。
【0030】
図4のフローチャートを参照して、一実施の形態による情報伝送方法の一構成例について説明する。
【0031】
ステップS01において、基地局3と各端末2との間で時刻合わせが行われる。一例として、端末2の演算装置21が時刻合わせ信号を生成し、通信装置23を用いて時刻合わせ信号を基地局3に送信する。基地局3の演算装置31は、通信装置33を用いて各端末2の時刻合わせ信号を受信し、各端末2との時刻合わせを行う。複数の端末2の間で時刻合わせを行う必要性はない。なお、時刻合わせを行う頻度は、端末2と基地局3が有する時計機能の精度に応じて、情報を伝送する所定の回数ごとに行ってもよい。
【0032】
ステップS02において、端末2の演算装置21が送信データを生成する。送信データには、センサ装置24による計測の結果を表す測定データと、端末2の端末IDを表す端末ID情報とが含まれる。言い換えれば、端末2の演算装置21は、測定データと端末IDに基づいて送信データを生成する。一例として、測定データと端末ID情報を所定の書式に従って結合することによって送信データを生成してもよい。センサ装置24による計測と、測定データの生成とは、ステップS02において実行されてもよいし、ステップS02の前に実行されていて測定データが記憶装置22に格納されていてもよい。
【0033】
ステップS03において、端末2の演算装置21がパケット情報、時間情報および周波数情報を算出する。なお、時間情報と周波数情報は、後述するように、インデックス情報を構成する。
【0034】
まず、情報分割部211が送信データを第1部分と第2部分とに分割する。一例として、情報分割部211は、送信データのうち、所定の第1メモリアドレスから所定の第1長さまでの第1部分を抽出して、時間情報と周波数情報を組み合わせたインデックス情報として記憶装置22に格納する。情報分割部211は、送信データのうち、第1部分を除いた第2部分を記憶装置22に格納する。
【0035】
次に、送信パラメータ決定部212は、端末2がパケット情報を送信する時間スロットである送信タイミングを、インデックス情報に含まれる時間情報に基づいて決定する。また、送信パラメータ決定部212は、パケット情報の送信に用いる周波数帯域である周波数チャネルを、インデックス情報に含まれる周波数情報に基づいて決定する。時間情報と送信タイミングとの対応関係と、周波数情報と周波数チャネルとの対応関係とについては、後述する。
【0036】
次に、パケット生成部214は、送信データの第2部分にヘッダ情報を追加するなどして、パケット情報を生成する。
【0037】
次に、CSS変調部213は、パケット情報をCSS変調してパケット信号を生成する。CSS変調については、後述する。
【0038】
ステップS04において、送信部215が通信装置23を用いてパケット情報を表すパケット信号を基地局3へ送信する。詳細には、送信部215が通信装置23を制御し、ステップS03で決定された送信タイミングに対応する時間スロットの間に、かつ、ステップS03で決定された周波数チャネルに対応する周波数帯域を用い、ステップS03で生成されたパケット信号を基地局3へ送信する。ここで、それぞれの端末2は他の端末2とは独立にパケット信号を基地局3へ送信する。
【0039】
ステップS05において基地局3の演算装置31が通信装置33を介してパケット信号を受信し、ステップS06において基地局3の記憶装置32がパケット情報、時間情報および周波数情報を記憶する。
【0040】
ここで、CSS復調部311は、受信したパケット信号をCSS復調し、CSS復調によって得られたパケット情報を記憶装置32に記憶する。受信タイミング検出部313は、パケット信号が受信された時刻と周波数チャネルを検出し、この時刻を表す時間情報と、この周波数チャネルを表す周波数情報とを記憶装置32に格納する。ここで、パケット情報と、時間情報と、周波数情報とは、互いに対応付けられて記憶装置32に格納される。
【0041】
ステップS07において、基地局3の演算装置31は、パケット情報、時間情報および周波数情報に基づいて送信データを復号する。
【0042】
ここで、送信インデックス検出部314は、時間情報と周波数情報の組み合わせに基づいて、時間スロットと周波数チャネルの組み合わせに対応するデータを算出して送信データの第1部分を復元する。送信インデックス検出部314は、このようにして、インデックス情報を得ることができる。送信情報検出部312は、復元されたインデックス情報をパケット情報に結合することによって、送信データを復号し、複合した送信データに基づいて測定データと端末IDを算出する。
【0043】
情報結合部315は、測定データと端末IDを対応付けて記憶装置32に格納する。
【0044】
ステップS07が完了すると、
図4のフローチャートは終了する。その後、フレーム期間ごとに複数の端末2から収集された測定データを処理することによって、端末2が分布する領域において測定された所望のパラメータの分布を解析することができる。また、複数の期間を跨いで複数の端末2から収集された測定データを処理することによって、端末2が分布する領域において測定された所望のパラメータの時間変化を解析することもできる。
【0045】
図5を参照して、CSS変調とCSS復調について説明する。CSS変調では、所定のビット数のバイナリデータを1つのチャープ信号シンボルに変換する。CSS復調では、CSS変調の逆変換を行う。以降、1つのチャープ信号シンボルで表すことのできる情報量のビット数を拡散率Sと記す。
【0046】
図5の例では拡散率S=2であり、2
S=2
2=4種類のチャープ信号シンボルが存在する。チャープ信号とは、時間とともに周波数が増加または減少する信号であり、時間軸上で所定のシンボル長T
Symbolを有するチャープ信号をチャープ信号シンボルと記す。
図5の例では、時刻T00から時刻T10までの波形を有するチャープ信号シンボルは、2ビットのデータ「00」に対応する。同様に、時刻T10から時刻T20までの波形を有するチャープ信号シンボルは2ビットのデータ「01」に対応し、時刻T20から時刻T30までの波形を有するチャープ信号シンボルは2ビットのデータ「11」に対応し、時刻T30から時刻T40までの波形を有するチャープ信号シンボルは2ビットのデータ「10」に対応する。
【0047】
時間軸上において、シンボル長TSymbolは2S個のチップ期間に等分され、それぞれのチップ期間の長さをチップ長TChipと記す。つまり、
TSymbol=2S×TChip
が成り立つ。一実施の形態において、1つのチャープ信号シンボルの周波数はそれぞれのチップ期間においては増加する一方で、連続する2つのチップ期間を区切る時刻においては周波数の瞬間的な減少が発生し得る。言い換えれば、CSS変調における1つのチップ信号シンボルは2S個のチップで構成されており、同じ波形を2S個のチップ期間の単位で巡回シフトすることによってSビットの情報を表現することができる。
【0048】
図5の例では、チップ長T
Chipはシンボル長T
Symbolの2
S=2
2=4等分した長さである。
図5の例では、2ビットのデータ「00」に対応するチャープ信号シンボルは、時刻T00から時刻T10までの期間で周波数が周波数F0から周波数F4へ増加する波形を有している。同様に、2ビットのデータ「01」に対応するチャープ信号シンボルは、時刻T10から時刻T11までの期間で周波数が周波数F3から周波数F4に増加し、時刻T11から時刻T20までの期間で周波数が周波数F0から周波数F3へ増加する波形を有している。2ビットのデータ「11」に対応するチャープ信号シンボルは、時刻T20から時刻T22までの期間で周波数が周波数F2から周波数F4に増加し、時刻T22から時刻T30までの期間で周波数が周波数F0から周波数F2へ増加する波形を有している。2ビットのデータ「10」に対応するチャープ信号シンボルは、時刻T30から時刻T33までの期間で周波数が周波数F1から周波数F4に増加し、時刻T33から時刻T40までの期間で周波数が周波数F0から周波数F1へ増加する波形を有している。
【0049】
チャープ信号シンボルの周波数が変化する範囲を帯域幅Wと記す。
図5の例では、周波数F0から周波数F4までの範囲が帯域幅Wである。一実施の形態において、チップ長T
Chipは、帯域幅Wの逆数である。つまり、
T
Chip=1/W
が成り立つ。
【0050】
図6を参照して、一実施の形態によるパケット情報の一構成例について説明する。
図6において、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図6に示すように、一実施の形態において、1つのパケット情報PはN個のチャープ信号シンボルS
1、S
2、…、S
N-1、S
Nで構成される。ここで、Nはパケット情報あたりのチャープ信号シンボル数であり、以下の数式のように求められる。
【数1】
ここで、nは1つのパケット情報のプリアンブルに用いられるチャープ信号シンボルの数であり、B
ohは1つのパケット情報のオーバーヘッドのサイズであり、B
plは1つのパケット情報のペイロードのサイズ、すなわち1つのパケット情報で伝送できるパケットデータ量であり、Rは誤り訂正符号の符号化率であり、Sは前述のとおり拡散率である。また、以下の関数はいわゆる天井関数であり、引数x以上で最小の整数を表す。
【数2】
【0051】
したがって、端末2から基地局3へ送信される1つのパケット情報の時間軸上の長さであるパケット長T
Packetは、以下の数式のように求められる。
【数3】
ここで、T
Symbolは前述のとおりシンボル長であり、Nは前述のとおりパケット情報あたりのチャープ信号シンボル数であり、前述のとおりSは拡散率であり、Wは前述のとおり帯域幅であり、nは前述のとおり1つのパケット情報のプリアンブルに用いられるチャープ信号シンボルの数であり、B
ohは前述のとおり1つのパケット情報のオーバーヘッドのサイズであり、B
plは前述のとおり1つのパケット情報のペイロードのサイズであり、Rは前述のとおり誤り訂正符号の符号化率である。
【0052】
図7と
図8を参照して、時間スロットと周波数帯域について説明する。
図7は、LoRaWANの伝送方法においてパケット情報P1およびP2を送信する時間スロットと周波数帯域の一例を示している。
図8は、一実施の形態による情報伝送方法においてパケット情報P1およびP2を送信する時間スロットと周波数帯域の一例を示している。
【0053】
図7と
図8に共通して、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表している。
図7と
図8に共通して、第1のパケット情報P1は、時刻T100から時刻T200までの時間フレームの間に、周波数F12から周波数F13までの周波数帯域を用いて送信されている。同様に、
図7と
図8に共通して、第2のパケット情報P2は、時刻T200から時刻T300までの時間フレームの間に、周波数F10から周波数F11までの周波数帯域を用いて送信されている。
【0054】
DCの制約により、
図7のLoRaWANによる伝送方法と、
図8の一実施形態による情報伝送方法とに共通して、端末2は1つのフレーム周期T
Frameの間に1つのパケット情報だけを送信することができる。
【0055】
ここで、パケット長T
Packetがフレーム周期T
Frameよりも十分に短いことに注目されたい。詳細には、
図8に示すように、パケット長T
Packetは、1つのフレーム周期T
Frameを複数の時間スロットに4等分した時間スロット周期T
Slot以下である。したがって、一実施の形態では、端末2が1つの時間フレームに含まれる複数の時間スロットのうちのどの時間スロットの間にパケット情報を送信したかを基地局3が検出することで、パケット情報に含まれない追加の情報を端末2から基地局3に伝送することが可能となる。
図8の例では、1つのフレームを4つの時間スロットに分割することで、2ビットのデータである「00」、「01」、「11」または「10」をパケット情報に追加して伝送することができる。
【0056】
同様に、1つのパケット情報が使用する帯域幅Wが、パケット情報の伝送に使用可能な周波数F10から周波数F14までの周波数帯域よりも十分に狭いことに注目されたい。詳細には、
図8に示すように、帯域幅Wは、周波数F10から周波数F14までの周波数帯域を4等分した周波数チャネルの帯域幅以下である。したがって、一実施の形態では、端末2が使用可能な周波数帯域に含まれる複数の周波数チャネルのうちのどの周波数チャネルを用いてパケット情報を送信したかを基地局3が検出することで、パケット情報に含まれない追加の情報を端末2から基地局3に伝送することが可能となる。
図8の例では、使用可能な周波数帯域を4つの周波数チャネルに分割することで、2ビットのデータである「00」、「01」、「11」または「10」をパケット情報に追加して伝送することができる。時間スロットと周波数チャネルの利用によって伝送される追加の情報をインデックス情報と記す。
【0057】
このように、一実施の形態では、1つのパケット情報で伝送できるパケットデータ量B
plに加えて、時間スロットと周波数チャネルで表されるインデックス情報のデータ量であるインデックスデータ量B
piを、端末2から基地局3に伝送することができる。ここで、インデックスデータ量B
piは、以下の数式で求められる。
【数4】
ここで、以下の関数はいわゆる床関数であり、引数x以下で最大の整数を表す。
【数5】
また、Kは利用可能な周波数チャネルの総数である。さらに、Mはフレーム期間ごとに利用可能な時間スロットの総数であり、以下の数式で求められる。
【数6】
ここで、T
Frameは前述のとおりフレーム周期であり、T
Slotは前述のとおり時間スロット周期であり、αはパケット長T
Packetと時間スロット周期T
Slotの比率を表す0より大きい任意の変数であり、T
Packetは前述のとおりパケット長である。
【0058】
したがって、一実施の形態では、端末2から基地局3に1つのパケット情報を伝送する際に伝送できる総データ量B
propは、以下の数式で求められる。
【数7】
ここで、B
plは前述のとおりパケットデータ量であり、B
piは前述のとおりインデックスデータ量であり、Kは前述のとおり利用可能な周波数チャネルの総数であり、Mは前述のとおりフレーム期間ごとに利用可能な時間スロットの総数である。
【0059】
以上のことを踏まえて、
図4のフローチャートについて説明を追加する。
【0060】
ステップS03において、送信データの第1部分としての時間情報のビット数はMに等しく、送信パラメータ決定部212は時間情報の内容に対応する時間スロットを送信タイミングとして決定する。同様に、送信データの第2部分としての周波数情報のビット数はKに等しく、送信パラメータ決定部212は周波数情報の内容に対応する周波数帯域を周波数チャネルとして決定する。
【0061】
ステップS07において、ステップS03とは反対に、受信タイミング検出部313は、受信タイミングである時間スロットに対応するデータを送信データの第1部分として用いる。また、周波数チャネルに対応するデータを送信データの第2部分として用いる。
【0062】
発明者らは、コンピュータ上のシミュレーションによって、本実施形態による情報伝送方法のLoRaWANによる伝送方法に対する優位性を検証した。このシミュレーションの諸元は、
図9の表に示したとおりである。一辺1km(キロメートル)四方の正方形の領域の中心に基地局3を配置し、この領域の範囲内のランダムな場所に100個の端末2をそれぞれ配置する。フレーム周期T
Frameごとにそれぞれの端末2がパケット情報の生起と送信を行う。送信されたパケット情報ごとに、基地局3におけるSNR(Signal-Noise Ratio:信号対雑音比)とSIR(Signal-Interference Ratio:信号対干渉比)の両方がそれぞれの閾値を上回った場合に、受信が成功したと判定する。このようなシミュレーションが、拡散率Sが7、8、9および10である場合のそれぞれにおいて、100回ずつ行われた。
【0063】
上記シミュレーションの結果は、LoRaWANについては
図10の表に示したとおりであり、本実施形態による情報伝送方法については
図11の表に示したとおりである。ここで、パケット配信率は、情報伝送における理論上の理想的なデータ量に対する、100回のシミュレーションによって得られた送信データ量の平均値の比率である。拡散率Sが7、8、9および10である場合のそれぞれにおいて、本実施形態による情報伝送方法のパケット配信率が、LoRaWANによる伝送方法のパケット配信率よりも高いことが確認された。
【0064】
図12、
図13、
図14および
図15は、本実施形態による情報伝送方法とLoRaWANによる伝送方法の間で上記のシミュレーション結果を比較するグラフである。
図12、
図13、
図14および
図15に共通して、横軸はパケットあたりの送信データ量をビット数で表し、縦軸はCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)を表し、破線のグラフはLoRaWANによる伝送方法のシミュレーション結果を示し、実践のグラフは本実施形態による情報伝送方法のシミュレーション結果を示す。
【0065】
図12に示すように、拡散率S=7の場合は、CDFが同じであれば、本実施形態による情報伝送方法による送信パケットのビット数はLoRaWANによる伝送方法の場合よりも約14ビット増加し、これは約1.2%の増加率に対応する。
【0066】
図13に示すように、拡散率S=8の場合は、CDFが同じであれば、本実施形態による情報伝送方法による送信パケットのビット数はLoRaWANによる伝送方法の場合よりも約14ビット増加し、これは約2.0%の増加率に対応する。
【0067】
図14に示すように、拡散率S=9の場合は、CDFが同じであれば、本実施形態による情報伝送方法による送信パケットのビット数はLoRaWANによる伝送方法の場合よりも約14ビット増加し、これは約4.9%の増加率に対応する。
【0068】
図15に示すように、拡散率S=10の場合は、CDFが同じであれば、本実施形態による情報伝送方法による送信パケットのビット数はLoRaWANによる伝送方法の場合よりも約15ビット増加し、これは約32.6%の増加率に対応する。
【0069】
このように、本実施形態による情報伝送方法では、LoRaWANによる伝送方法よりも伝送効率が向上する。その主な理由は、パケット情報に加えてインデックス情報を同時に伝送することにある。つまり、同じ条件で一度に伝送できる情報量を、インデックス情報の分だけ増大させることができる。
【0070】
もしくは、本来であればパケット情報として伝送される情報の一部をインデックス情報として伝送することにより、パケット情報がその分だけ少なくなり、パケット長TPacketがその分だけ短くなる。このことは、異なる端末2から送信されるパケットが衝突する確率を減少させ、伝送効率のさらなる向上にも繋がる。
【0071】
(第2の実施の形態)
上記の第1の実施の形態による基地局3の変形例として、本実施の形態では、基地局3がゲートウェイ3Aとサーバ3Bに分離している構成例について説明する。なお、本実施の形態による端末2は、第1実施の形態の場合と同様である。
【0072】
図16に示すように、ゲートウェイ3Aは、バス30Aと、演算装置31Aと、記憶装置32Aと、通信装置33Aとを備えている。演算装置31A、記憶装置32Aおよび通信装置33Aは、バス30Aを介して通信可能に接続されている。
【0073】
演算装置31Aは、CSS復調部311と、受信タイミング検出部313と、受信情報付加部316とを備えている。記憶装置32Aは、演算装置31Aによって実行されるためのゲートウェイプログラム321Aを格納している。ゲートウェイプログラム321Aは、外部の記録媒体320Aから読み出されて記憶装置32Aに格納されていてもよい。記録媒体320Aは、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0074】
演算装置31Aは、ゲートウェイプログラム321Aを記憶装置32Aから読み出して実行することにより、CSS復調部311、受信タイミング検出部313および受信情報付加部316の機能を実現する。言い換えれば、CSS復調部311、受信タイミング検出部313および受信情報付加部316のそれぞれは、
図16では便宜上、演算装置31Aの構成要素として示されているが、演算装置31Aとゲートウェイプログラム321Aが協働して所定の機能を実現する機能部である。
【0075】
通信装置33Aは、端末2との間で無線通信を行う。通信装置33Aは、端末2から送信されるパケット情報を受信し、また、端末2に時刻合わせ信号などの信号を送信する。なお、記憶装置32Aに格納されているゲートウェイプログラム321Aは、通信装置33Aによってサーバ3Bまたは他の外部装置から受信されたものであってもよい。
【0076】
CSS復調部311および受信タイミング検出部313は、それぞれ、
図3に示したCSS復調部311および受信タイミング検出部313と同様に機能する。すなわち、CSS復調部311は、
図4のフローチャートのステップS06において、受信した送信信号をCSS復調し、CSS復調によって得られたパケット情報を記憶装置32Aに記憶する。また、受信タイミング検出部313は、ステップS06において、パケット情報が受信された時刻と周波数チャネルを検出し、この時刻を表す時間情報と、この周波数チャネルを表す周波数情報とを記憶装置32Aに格納する。
【0077】
受信情報付加部316は、パケット情報に時間情報と周波数情報を付加して記憶装置32Aに格納する。通信装置33Aは、記憶装置32Aに収集されている、時間情報と周波数情報を付加したパケット情報を、フレーム周期TFrameごとにサーバ3Bに向けて送信してもよいし、サーバ3Bから送信される要求信号に応じて送信してもよい。
【0078】
図17に示すように、サーバ3Bは、バス30Bと、演算装置31Bと、記憶装置32Bと、通信装置33Bとを備えている。演算装置31B、記憶装置32Bおよび通信装置33Bは、バス30Bを介して通信可能に接続されている。
【0079】
演算装置31Bは、情報分割部317と、送信インデックス検出部314と、情報結合部315とを備えている。記憶装置32Bは、演算装置31Bによって実行されるためのサーバプログラム321Bを格納している。サーバプログラム321Bは、外部の記録媒体320Bから読み出されて記憶装置32Bに格納されていてもよい。記録媒体320Bは、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0080】
演算装置31Bは、サーバプログラム321Bを記憶装置32Bから読み出して実行することにより、情報分割部317、送信インデックス検出部314および情報結合部315の機能をそれぞれ実現する。言い換えれば、情報分割部317、送信インデックス検出部314および情報結合部315のそれぞれは、
図17では便宜上、演算装置31Bの構成要素として示されているが、演算装置31Bとサーバプログラム321Bが協働して所定の機能を実現する機能部である。
【0081】
通信装置33Bは、ゲートウェイ3Aとの間で無線通信を行う。通信装置33Bは、ゲートウェイ3Aから自動的に送信される、時間情報および周波数情報を付加されたパケット情報を受信して記憶装置32Bに格納する。または、通信装置33Bは、フレーム周期ごとにゲートウェイ3Aに要求信号を送信するなどして、その応答としてゲートウェイ3Aから送信される、ゲートウェイ3Aの記憶装置32Aに格納されている、時間情報および周波数情報を付加されたパケット情報を受信して記憶装置32Bに格納してもよい。なお、記憶装置32Bに格納されているサーバプログラム321Bは、通信装置33Bによって他の外部装置から受信されたものであってもよい。
【0082】
図4のフローチャートのステップS07において、情報分割部317は、時間情報および周波数情報を付加されたパケット情報を、時間情報、周波数情報およびパケット情報に分割して記憶装置32Bに格納する。また、送信インデックス検出部314は、時間情報に基づいて時間スロットに対応するデータを算出して送信データの第1部分を復元し、周波数情報に基づいて周波数チャネルに対応するデータを算出して送信データの第2部分を復元する。このようにして、送信インデックス検出部314は、インデックス情報を得ることができる。さらに、情報結合部315は、復元されたインデックス情報をパケット情報に結合することによって、送信データを復号し、複合した送信データと端末IDに基づいて測定データを算出し、測定データと端末IDを対応付けて記憶装置32Bに格納する。
【0083】
本実施の形態によるその他の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
以上に説明したように、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、効率的な情報伝送を行うことができる。
【0085】
以上、発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 情報伝送システム
2、2A~2D 端末
20 バス
21 演算装置
211 情報分割部
212 送信パラメータ決定部
213 CSS変調部
214 パケット生成部
215 送信部
22 記憶装置
220 記録媒体
221 端末プログラム
23 通信装置
24 センサ装置
3 基地局
3A ゲートウェイ
3B サーバ
30、30A、30B バス
31、31A、31B 演算装置
311 CSS復調部
312 送信情報検出部
313 受信タイミング検出部
314 送信インデックス検出部
315 情報結合部
316 受信情報付加部
317 情報分割部
32、32A、32B 記憶装置
320、320A、320B 記録媒体
321 基地局プログラム
321A ゲートウェイプログラム
321B サーバプログラム
33、33A、33B 通信装置
F0~F4 周波数
F10~F14 周波数
P、P1、P2 パケット情報
S1、S2、SN-1、SN チャープ信号シンボル
T00~T03、T10~T13、T20~23、T30~T33、T40 時刻
T100~T103、T200~T203、T300 時刻
W 帯域幅