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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】毛髪処理剤セット及び毛髪処理用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20250128BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20250128BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20250128BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/55
A61K8/64
A61K8/65
A61Q5/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021035854
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135797
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】渕上 幾太郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 佑香
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105168(JP,A)
【文献】特開2002-080320(JP,A)
【文献】特開2005-255655(JP,A)
【文献】特開2013-063948(JP,A)
【文献】特許第6815713(JP,B2)
【文献】特開2003-146844(JP,A)
【文献】特開2018-095605(JP,A)
【文献】特開2015-093855(JP,A)
【文献】特開2011-173864(JP,A)
【文献】特開2006-298822(JP,A)
【文献】特開2003-252730(JP,A)
【文献】特開平04-243812(JP,A)
【文献】特開2016-030722(JP,A)
【文献】特開2006-124312(JP,A)
【文献】特開2007-238579(JP,A)
【文献】米国特許第06106816(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性アクリル系ポリマーと、アニオン界面活性剤と、加水分解タンパク又はその誘導体と、を含む組成物Aと、
カチオン界面活性剤を含む組成物Bと、を備
前記誘導体は、シリル化、アシル化、及びカチオン化からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を施した加水分解タンパクである、
毛髪のうねりを改善するための毛髪処理剤セット。
ただし、毛髪に塗布する第1剤と、この第1剤を洗い流さずに塗布する第2剤とを有する二剤式毛髪処理剤であって、上記第1剤が、アニオン性多糖類、ノニオン性多糖類及び加水分解ケラチンが配合されたものであり、上記第2剤が、カチオン性界面活性剤が配合されたものであることを特徴とする二剤式毛髪処理剤を除く。
【請求項2】
前記アニオン界面活性剤は、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸である、請求項1に記載の毛髪処理剤セット。
【請求項3】
前記加水分解タンパクは、加水分解ケラチンである、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤セット。
【請求項4】
前記カチオン界面活性剤は、アルキル四級アンモニウム塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪処理剤セット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪処理剤セットの組成物Aとして使用するための毛髪処理用組成物であって、
前記毛髪処理用組成物は、
アニオン性アクリル系ポリマーと、アニオン界面活性剤と、加水分解タンパク又はその誘導体と、を含
前記誘導体は、シリル化、アシル化、及びカチオン化からなる群より選択される少なくとも1つの化学修飾を施した加水分解タンパクである、
毛髪処理用組成物。
ただし、アニオン性多糖類、ノニオン性多糖類及び加水分解ケラチンが配合された、二剤式毛髪処理剤の第1剤を除く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤セット及び毛髪処理用組成物に関する。より具体的に、本発明は、毛髪のうねりを改善することに適した、毛髪処理剤セット及び毛髪処理用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、シャンプー等の洗浄料を用いた洗髪及びドライヤーを用いた毛髪の乾燥によって、日常的に損傷を受けている。加えて、近年、ヘアスタイルの多様化によって、毛髪に対して、染色、脱色、及びパーマ施術等の化学処理を施すことが普及している。これらの化学処理によっても、毛髪は損傷を受ける。さらに、加齢によって、毛髪の質感が変化することが知られている。
【0003】
染色及び脱色等の化学処理による毛髪の損傷、熱及び摩擦等の物理処理による毛髪の損傷、並びに加齢による毛髪の質感の変化によって、毛髪は、うねった形状を有するようになる。このようなうねり毛が増加することによって、毛髪は、パサついたり広がったりする。加えて、うねり毛が増加することによって、毛髪全体の艶、毛髪の手触り、まとまり等の毛髪の質感が悪化する。
【0004】
上記した問題に対処するために、特定の化合物を含む毛髪処理剤が提案されている。例えば、特許文献1には、アスパルテーム成分を含有する毛髪処理剤組成物を使用して毛髪を硬化させることによって、毛髪のうねりを改善させることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、特定のカチオン化ポリマーを含有する第一剤と、特定のホスホリルコリン基含有重合体を含有する第二剤とを組み合わせた毛髪化粧料を使用することで、毛髪のうねりを改善させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-103882号公報
【文献】特開2017-190290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載された技術は、毛髪のうねりを抑制するために、毛髪処理剤を毛髪の表面に作用させることで毛髪を硬化させている。特許文献1及び2に記載された毛髪組成物によれば、毛髪が硬くなりやすい。加えて、毛髪の表面に付着した毛髪処理剤による効果は、持続性に乏しい。
【0008】
本発明は、毛髪のうねりを改善することに適した毛髪処理剤セット及び毛髪処理用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
アニオン性アクリル系ポリマーと、アニオン界面活性剤と、加水分解タンパク又はその誘導体と、を含む組成物Aと、
カチオン界面活性剤を含む組成物Bと、を備えた、
毛髪処理剤セットを提供する。
【0010】
本発明は、その別の側面から、
アニオン性アクリル系ポリマーと、アニオン界面活性剤と、加水分解タンパク又はその誘導体と、を含む、
毛髪処理用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による毛髪処理剤セット及び毛髪処理用組成物は、毛髪のうねりを改善することに適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
(組成物A)
本実施形態に係る組成物Aは、アニオン性アクリル系ポリマーを含む。アニオン性アクリル系ポリマーとは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルからなる群より選ばれる少なくとも1つをモノマーとして含むアニオン性のポリマー又はその塩であってもよい。アニオン性アクリル系ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルからなる群より選ばれる少なくとも1つをモノマーとして含むポリマー同士が架橋した構造を有していてもよい。
【0014】
アニオン性アクリル系ポリマーは、アニオン性官能基を有していてもよい。アニオン性官能基の例は、カルボキシ基、リン酸基、及びスルホン酸基である。
【0015】
アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルに含まれるアルキル基の炭素数は、特定の値に限定されず、10以上30以下であってもよい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0016】
アニオン性アクリル系ポリマーの例は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、カルボマー、アクリレーツコポリマー、ポリアクリル酸Na、及びアクリル酸アルキルコポリマーNaである。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとは、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキルとの共重合体を、ショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテル等のエーテルで架橋したポリマーを意味する。アクリル酸アルキル(C10-30)は、アクリル酸と炭素数10以上30以下のアルキル基とのエステルを意味する。アクリレーツコポリマーとは、アクリル酸アルキル(C1-4)、メタクリル酸アルキル(C1-4)、アクリル酸、及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも2つのモノマーで構成された共重合体を意味する。アニオン性アクリル系ポリマーとして、これらのアニオン性アクリル系ポリマーから選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0017】
組成物Aの総質量に対するアニオン性アクリル系ポリマーの含有量は、特定の値に限定されず、0.001質量%~2.0質量%、0.005質量%~1.5質量%、さらには0.01質量%~1.0質量%であってもよい。
【0018】
組成物Aは、アニオン界面活性剤を含む。アニオン界面活性剤を含むことによって、後述する加水分解タンパクを毛髪の内部に浸透させやすい。アニオン界面活性剤の例は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸、N-アシルグルタミン酸、アルキル硫酸塩、及びそれらの誘導体である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸の好ましい例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸に含まれるアルキル基の炭素数は、特定の値に限定されず、12以上22以下であってもよく、14以上20以下、さらには16以上20以下であってもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸の例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセテアリルエーテルリン酸、及びこれらの塩である。ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸の例は、ラウレス-2リン酸、ラウレス-4リン酸、ジラウレス-10リン酸、及びトリラウレス-4リン酸である。ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸の例は、セテス-10リン酸及びセテス-20リン酸である。ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸の例は、ステアレス-2リン酸及びステアレス-3リン酸である。ポリオキシエチレンセテアリルエーテルリン酸の例は、トリセテアレス-4リン酸である。N-アシルグルタミン酸及びその塩の例は、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸アルギニン、及びN-ミリストイルグルタミン酸ナトリウムである。アルキル硫酸塩の例は、ラウリル硫酸ナトリウム及びセチル硫酸ナトリウムである。これらのアニオン界面活性剤から選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0019】
アニオン界面活性剤の好ましい例は、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸である。アニオン界面活性剤として、炭素数が12以上22以下のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を用いることで、後述する加水分解タンパクを毛髪の内部により確実に浸透させやすくなる。その結果、毛髪のうねりの改善効果に加え、ツヤ、指通り等の毛髪の質感をより確実に向上させることができる。
【0020】
組成物Aの総質量に対するアニオン界面活性剤の含有量は、特定の値に限定されず、0.005質量%~8.0質量%、0.01質量%~6.0質量%、さらには0.05質量%~4.0質量%であってもよい。
【0021】
組成物Aは、加水分解タンパク又はその誘導体を含む。加水分解タンパク又はその誘導体は、毛髪の内部に浸透しやすいので、うねり毛に対して毛髪内部から改善することが可能になる。加えて、組成物Aに加水分解タンパク又はその誘導体が含まれることによって、毛髪の質感を向上させることができる。さらに、加水分解タンパク又はその誘導体とアニオン界面活性剤とが組成物Aに含まれることによって、加水分解タンパクは毛髪の内部により確実に浸透しやすくなる。このように、組成物Aに加水分解タンパク又はその誘導体が含まれることによって、毛髪のうねりに対する改善効果が得られ、かつ毛髪の質感も向上しやすい。
【0022】
加水分解タンパクとは、タンパク質を加水分解して得られるペプチド化合物である。加水分解タンパクは、例えば、天然由来のタンパク質の加水分解物(PPT)である。加水分解タンパクの例は、加水分解ケラチン、加水分解シルク、加水分解アーモンドタンパク、加水分解カゼイン、加水分解カラスムギタンパク、加水分解酵母タンパク、加水分解コラーゲン、加水分解コンキオリン、加水分解シロバナルーピンタンパク、加水分解ダイズタンパク、加水分解エンドウタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解乳タンパク、加水分解ハチミツタンパク、加水分解ヘーゼルナッツタンパク、加水分解ホホバタンパク、加水分解野菜タンパク、加水分解ローヤルゼリータンパク、加水分解コムギタンパク、及び加水分解コメタンパクである。これらの加水分解タンパクから選ばれる1つのみが用いられてもよく、2つ以上が併用されてもよい。
【0023】
加水分解タンパクの好ましい例は、加水分解ケラチンである。加水分解ケラチンは、毛髪の内部により確実に浸透しやすい。その結果、毛髪のうねりに対する改善効果をより確実に得ることができる。
【0024】
加水分解タンパク誘導体とは、加水分解タンパクに、シリル化、アシル化、カチオン化等の化学修飾を施したタンパクを意味する。シリル化加水分解タンパクの例は、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、加水分解ゴマタンパクPGプロピルメチルシランジオール、及び(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチンである。アシル化加水分解タンパクの例は、ラウロイル加水分解シルク、イソステアロイル加水分解シルク、ココイル加水分解ダイズタンパク、パルミトイル加水分解コムギタンパク、ココイル加水分解コラーゲン、ウンデシレノイル加水分解コラーゲン、イソステアロイル加水分解コラーゲン、及びロジン加水分解コラーゲンである。カチオン化加水分解タンパクの例は、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解シルク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解カゼイン、カチオン化加水分解コンキオリン、及びヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチである。これらの加水分解タンパク誘導体から選ばれる1つのみが用いられてもよく、2つ以上が併用されてもよい。
【0025】
加水分解タンパクの重量平均分子量は、特定の値に限定されず、100以上、さらには1000以上が好ましく、特に10000以上であってもよい。加水分解タンパクの重量平均分子量の上限値は、特定の値に限定されず、100000であってもよく、80000、さらには50000であってもよい。加水分解タンパクが適切な重量平均分子量を有することによって、毛髪のうねりに対する改善効果が顕著になる。
【0026】
組成物Aの総質量に対する加水分解タンパクの含有量は、特定の値に限定されず、0.005質量%~8.0質量%、0.01質量%~6.0質量%、さらには0.05質量%~4.0質量%であってもよい。
【0027】
組成物Aには、高級アルコールがさらに含まれていてもよい。高級アルコールを含むことによって、クリーム状の性状を有する組成物Aを得ることができ、毛髪の質感をより確実に向上させることができる。
【0028】
高級アルコールの炭素数は、特に限定されず、8以上30以下であってもよく、14以上22以下であってもよい。高級アルコールは、飽和アルコールであってもよく、不飽和アルコールであってもよい。高級アルコールの例は、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、オレイルアルコール、及びベヘニルアルコールである。これらの高級アルコールから選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0029】
組成物Aの総質量に対する高級アルコールの含有量は、特定の値に限定されず、0.01質量%~10.0質量%、0.05質量%~7.5質量%、さらには0.1質量%~5.0質量%であってもよい。
【0030】
組成物Aは、例えば、弱酸性から弱アルカリ性である。25℃における組成物AのpHは、例えば、5.0以上、5.5以上、さらには6.0以上であってもよく、8.0以下、さらには7.5以下であってもよい。組成物Aが適切なpHを有することによって、組成物Aに含まれているアニオン性アクリル系ポリマーは、優れた安定性を有しうる。加えて、組成物Aが適切なpHを有することによって、毛髪が損傷しにくく、毛髪の質感をより確実に向上させることが可能になる。
【0031】
組成物AのpHを調整するためのpH調整剤は、通常、毛髪処理剤に用いられるpH調整剤を使用できる。pH調整剤の例は、リン酸、乳酸、炭酸グアニジン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、セスキ炭酸塩、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、アンモニア、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、水酸化ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びリン酸水素二アンモニウムである。
【0032】
組成物Aの剤型は、特定の剤型に限定されず、公知の剤型を採用できる。好ましい剤型は、ゲル状、溶液状、クリーム状、又は乳液状であり、より好ましい剤型は、クリーム状である。組成物Aがクリーム状であると、うねりの改善効果をより確実に得やすくなるとともに、毛髪の質感をより確実に向上させることができる。
【0033】
上記したとおり、組成物Aは、アニオン性アクリル系ポリマー、アニオン界面活性剤、及び加水分解タンパクを含む。組成物Aに含まれる各成分の含有量の比率は、特定の値に限定されない。組成物Aにおいて、アニオン界面活性剤の含有量に対する加水分解タンパクの含有量の比は、質量基準で、0.05~20、さらには0.1~10であってもよい。組成物Aにおいて、アニオン界面活性剤の含有量に対するアニオン性アクリル系ポリマーの含有量の比は、質量基準で、0.01~10、さらには0.05~5であってもよい。組成物Aにおいて、加水分解タンパクの含有量に対するアニオン性アクリル系ポリマーの含有量の比は、質量基準で、0.01~10、さらには0.05~5であってもよい。
【0034】
(組成物B)
本実施形態に係る組成物Bは、カチオン界面活性剤を含む。カチオン界面活性剤を含有することによって、毛髪を柔らかくできるので、毛髪のうねりをより確実に改善できる。加えて、カチオン界面活性剤を含有することによって、毛髪の質感をより確実に向上させることができる。
【0035】
カチオン界面活性剤は、通常毛髪用の化粧料に使用されるカチオン界面活性剤であれば特定の種類に限定されない。カチオン界面活性剤の例は、アルキル四級アンモニウム塩、アルケニル四級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、及び脂肪酸アミドアミン塩である。アルキル四級アンモニウム塩の例は、セトリモニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ステアルトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムブロミド、ベヘニルトリモニウムクロリド、ベヘニルトリモニウムブロミド、ステアラルコニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムブロミド、ジベヘニルジモニウムクロリド、ジベヘニルジモニウムブロミド、ジセチルジモニウムクロリド、ジセチルジモニウムブロミド、ジラウリルジモニウムクロリド、ジラウリルジモニウムブロミド、ラウリルトリモニウムメトサルフェート、ミリスチルトリモニウムメトサルフェート、セチルトリモニウムメトサルフェート、ステアリルトリモニウムメトサルフェート、ベヘニルトリモニウムメトサルフェート、ラウリルトリモニウムエトサルフェート、ミリスチルトリモニウムエトサルフェート、セチルトリモニウムエトサルフェート、ステアリルトリモニウムエトサルフェート、及びベヘニルトリモニウムエトサルフェートである。アルケニル四級アンモニウム塩の例は、セチロキシプロピルトリモニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ベヘニロキシプロピルトリモニウムクロリド、ラウロキシプロピルトリモニウムブロミド、ミリスチロキシプロピルトリモニウムブロミド、セチロキシプロピルトリモニウムブロミド、ステアロキシプロピルトリモニウムブロミド、及びベヘニロキシプロピルトリモニウムブロミドである。アルキルアミン塩の例は、ラウラミドプロピルジメチルアミン、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジメチルアミン、オレアミドプロピルジメチルアミン、イソステアラミドプロピルジメチルアミン、アラキナミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミン、牛脂脂肪酸アミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、アラキナミドエチルジエチルアミン、及びベヘナミドエチルジエチルアミンである。脂肪酸アミドアミン塩の例は、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、及びベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミドである。
【0036】
これらのカチオン界面活性剤から選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0037】
組成物Bの総質量に対するカチオン界面活性剤の含有量は、特定の値に限定されず、0.01質量%~10.0質量%、0.05質量%~7.5質量%、さらには0.1質量%~5.0質量%であってもよい。
【0038】
組成物Bには、高級アルコールがさらに含まれていてもよい。高級アルコールを含むことによって、クリーム状の性状を有する組成物Bを得ることができ、毛髪の質感をより確実に向上させることができる。高級アルコールは、上記で説明したものを使用できる。
【0039】
組成物Bの総質量に対する高級アルコールの含有量は、特定の値に限定されず、0.01質量%~15.0質量%、0.1質量%~10.0質量%、さらには0.5質量%~7.5質量%であってもよい。
【0040】
組成物Bには、シリコーンがさらに含まれていてもよい。シリコーンを含むことによって、毛髪の手触りをより向上させることができる。
【0041】
シリコーンの例は、ジメチコン、ジメチコノール、及びアミノ変性シリコーンである。これらのシリコーンから選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0042】
アミノ変性シリコーンとは、シリコーン骨格に直接又は置換基を介してアミノ基が結合している構造を有するシリコーンである。アミノ変性シリコーンの例は、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、及びアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)である。
【0043】
シリコーンの好ましい例は、アミノ変性シリコーンである。アミノ変性シリコーンは、上記したとおりカチオン性の官能基を有しているので、毛髪の質感をより確実に向上させることができる。
【0044】
組成物Bの総質量に対するシリコーンの含有量は、特定の値に限定されず、0.01質量%~15.0質量%、0.1質量%~10.0質量%、さらには0.5質量%~5.0質量%であってもよい。
【0045】
組成物Bには、多価アルコールがさらに含まれていてもよい。多価アルコールによって、毛髪の保湿感をより向上させることができる。多価アルコールは、1つの分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物を意味する。
【0046】
多価アルコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、スピログリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、及びジグリセリンである。これらの多価アルコールから選ばれる1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
【0047】
組成物Bの総質量に対する多価アルコールの含有量は、特定の値に限定されず、0.01質量%~5.0質量%、0.01質量%~7.5質量%、さらには0.01質量%~10.0質量%であってもよい。
【0048】
組成物Bは、例えば、弱酸性である。25℃における組成物BのpHは、例えば、4.0以上、さらには4.5以上であってもよく、6.0以下、さらには5.5以下であってもよい。組成物Bが適切なpHを有することによって、組成物Bに含まれているカチオン界面活性剤は、優れた安定性を有しうる。
【0049】
組成物BのpHを調整するためのpH調整剤は、通常、毛髪処理剤に用いられるpH調整剤を使用できる。pH調整剤は、上記(組成物A)で記載したpH調整剤を使用できる。
【0050】
組成物Bの剤型は、特定の剤型に限定されず、公知の剤型を採用できる。組成物Bの剤型は、組成物Aの剤型と同じであってもよく、異なっていてもよい。好ましい剤型は、ゲル状、溶液状、クリーム状、又は乳液状であり、より好ましい剤型は、クリーム状である。組成物Bがクリーム状であると、毛髪のうねりに対する改善効果をより確実に得やすくなる。
【0051】
(その他の成分)
組成物A及びBは、上記した成分以外の任意の成分を含みうる。任意の成分は、公知の毛髪処理剤に含まれる成分でありうる。
【0052】
任意の成分の一例は、カチオン性ポリマーである。カチオン性ポリマーとは、例えば、分子内に、第四級アンモニウム基等のカチオン性の官能基を有するポリマーを意味する。カチオン性ポリマーは、典型的には、アミノ基又は第四級アンモニウム基を高分子鎖の側鎖に含むポリマーでありうる。カチオン性ポリマーの例は、カチオン化セルロース及び第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマーである。カチオン化セルロースの例は、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、及びポリクオタニウム-67である。第四級アンモニウム側鎖を有するビニル系又は(メタ)アクリル系ポリマー又はコポリマーの例は、ポリクオタニウム-37である。
【0053】
任意の成分の一例は、ノニオン界面活性剤である。ノニオン界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、ステアリン酸グリセリル、及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドである。
【0054】
上記したとおり、組成物Aには、アニオン界面活性剤及び加水分解タンパクが含まれている。これにより、毛髪の内部の損傷を修復できる。さらに、組成物Bに含まれるカチオン界面活性剤が作用することで、毛髪の内部に加水分解タンパクを定着させることが可能になる。その結果、毛髪からこれらの成分が流出しにくくなる。加水分解タンパクを含む毛髪処理剤セットで処理した毛髪は、毛髪のうねりに対して優れた改善効果を有しつつ、その効果の持続性にも優れる。
【0055】
また、組成物Aには、アニオン性アクリル系ポリマーが含まれている。そのため、アニオン性アクリル系ポリマーを毛髪に作用させることで、毛髪の表面の損傷を修復できる。これにより、毛髪の質感が向上する。本実施形態に係る毛髪処理剤セットによれば、毛髪の内部及び表面を修復することが可能になる。これにより、毛髪のうねりに対する改善効果が顕著になり、毛髪の質感も向上する。毛髪のうねりを改善する毛髪処理剤において、毛髪の表面だけでなく毛髪の内部をも修復する処理剤は、本発明者らが知る限り、これまでは知られていなかった。
【0056】
次に、毛髪処理剤セットによる毛髪処理方法について説明する。
【0057】
組成物A及びBを毛髪に接触させる方法は、特定の方法に限定されず、組成物A及びBを手で直接毛髪に塗布してもよく、コーム、ブラシ、刷毛、スプレー等の塗布器具を用いて毛髪に塗布してもよい。組成物A及びBは、乾燥した毛髪に対して塗布してもよく、濡れた毛髪に対して塗布してもよい。
【0058】
本実施形態に係る毛髪処理剤セットによる処理方法において、組成物Aによる毛髪処理と組成物Bによる毛髪処理との間に毛髪処理剤を除去する工程を含んでいてもよく、組成物Aを毛髪に接触させた後、組成物Aを除去することなく組成物Bを毛髪に接触させてもよい。組成物Bを毛髪に接触させた後、組成物Bを除去する工程を含んでいてもよく、組成物Bを除去する工程を含んでいなくてもよい。組成物A又はBを除する方法は、例えば、水洗により又はシャンプー等の洗浄剤を用いた洗髪により実施できる。
【0059】
本実施形態に係る毛髪処理剤セットによる処理方法において、組成物Aによる毛髪処理及び組成物Bによる毛髪処理の順番は、特定の順番に限定されない。組成物Aによる毛髪処理を施した毛髪に、組成物Bによる毛髪処理を施してもよく、組成物Bによる毛髪処理を施した毛髪に、組成物Aによる毛髪処理を施してもよい。組成物A及びBによる毛髪処理の回数も、特定の回数に限定されない。毛髪に対して、組成物A及びBを交互に作用させてもよい。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0061】
<組成物Aの調製>
アニオン性アクリル系ポリマーと、アニオン界面活性剤と、加水分解タンパクと、セテアリルアルコールとを、以下の表1~4に示す含有量で含む、実施例1~9及び比較例1~16に係るクリーム状の組成物Aを調製した。その後、クリーム状の組成物Aにアルギニンを加えて、25℃における組成物AのpHが7.0になるように調整した。表中の単位は、全て質量%である。各表の「成分」の欄における「-」の表記は、当該成分を含有していないことを意味する。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーは、Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製のPEMULEN TR-2を使用した。(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーは、SEPPIC社製のSIMULGEL NSを使用した。
【0062】
<組成物Bの調製>
カチオン界面活性剤、ステアリン酸グリセリル、ステアリル-10リン酸、ポリクオタニウム-10、又はポリクオタニウム-37と、セテアリルアルコールと、グリセリンとを、以下の表1~4に示す含有量で含む、実施例1~9及び比較例1~16に係るクリーム状の組成物Bを調製した。その後、クリーム状の組成物Bに乳酸を加えて、25℃における組成物BのpHが4.5になるように調整した。表中の単位は、全て質量%である。
【0063】
<評価>
準備した評価用毛束を温水にて水洗し、十分に湿らせた後、調製した実施例及び比較例に係る組成物A(1g)を毛束に均一に塗布した。続けて、この毛束に、調製した実施例及び比較例に係る組成物B(1g)を均一に塗布した。毛束を温水にて水洗することで組成物を洗い流し、タオルドライの後、ドライヤーで毛束を乾燥させた。乾燥後の毛束に対して、「うねりの改善」、「ツヤ」、「指通りのよさ」、及び「おさまりのよさ」を、美容従事者10名による官能評価を行った。評価は、「良い:5点,やや良い:4点,普通:3点,やや悪い:2点,悪い:1点」の5段階とし、美容従事者10名の平均値により、以下の基準に基づいて判定した。結果を表1~4に示す。
◎:大変優れている :平均値が4.5点以上
○:優れている :平均値が3.5点以上4.5点未満
△:劣っている :平均値が1.5点以上3.5点未満
×:大変劣っている :平均値が1.5点未満
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
各実施例では、毛髪のうねりに対して改善効果が得られた。加えて、各実施例では、毛髪の質感についても、良好な結果が得られた。特に、組成物Aに加水分解タンパクが含まれることにより、毛髪のうねりに対する改善効果が顕著になるとともに、毛髪の質感も向上した。一方、各比較例では、毛髪のうねりを十分に改善させることができなかった。加えて、各比較例では、毛髪の質感を向上させることができなかった。