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特許7626449イネ発芽体、イネ発芽体の栽培方法、およびイネ発芽体の栽培装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】イネ発芽体、イネ発芽体の栽培方法、およびイネ発芽体の栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/00 20060101AFI20250128BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20250128BHJP
   A01C 1/02 20060101ALI20250128BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20250128BHJP
   A01H 6/46 20180101ALN20250128BHJP
   A01H 5/06 20180101ALN20250128BHJP
   A01H 5/10 20180101ALN20250128BHJP
   A01H 5/12 20180101ALN20250128BHJP
【FI】
A01C1/00 F
A23L7/10 Z
A01C1/02 Z
A01G22/22 Z
A01H6/46
A01H5/06
A01H5/10
A01H5/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021125796
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020434
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-03-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・ウェブサイトのアドレス http://www.sasj.org/meeting/wm2020_autumn/index.html 掲載日 令和2年9月15日 ・刊行物名「Food science and Technology Research,Volume 27,Issue 3,p.341-349,2021」 発行日 令和3年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉村 美踏
(72)【発明者】
【氏名】北村 豊
(72)【発明者】
【氏名】助川 宏子
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-039087(JP,A)
【文献】特開2003-180276(JP,A)
【文献】特表2020-531051(JP,A)
【文献】特開2019-187394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/00- 1/08
A01H 1/00-17/00
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のイネ発芽体および包装材を含み、
前記複数のイネ発芽体は、表出した糠層または胚乳と葉を有し、
前記複数のイネ発芽体の全長が25ミリメートル以上または種子長の5倍以上であり、
前記複数のイネ発芽体が包装材により包装されている、イネ発芽体包装体。
【請求項2】
表出した糠層と葉を有する、請求項1に記載のイネ発芽体包装体
【請求項3】
第3葉が展開される前の状態である、請求項1または2に記載のイネ発芽体包装体
【請求項4】
前記葉が緑葉である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイネ発芽体包装体
【請求項5】
15ミリメートル未満または種子長の3倍未満の長さの根を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のイネ発芽体包装体
【請求項6】
乾燥重量100グラム当たり50ミリグラム以上のγ-アミノ酪酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のイネ発芽体包装体
【請求項7】
イネ発芽体包装体の製造方法であって、
糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を、第1葉が展開されるまで水中で栽培する栽培工程と、
栽培工程後のイネ発芽体を包装材によって包装する、包装工程と、を含む、イネ発芽体包装体の製造方法。
【請求項8】
前記栽培工程において、前記イネ発芽体に光を照射する、請求項7に記載のイネ発芽体包装体の製造方法。
【請求項9】
第3葉が展開される前に栽培を終了するものである、請求項7または8に記載のイネ発芽体包装体の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載のイネ発芽体包装体の製造方法で使用するためのイネ発芽体の栽培装置であって、
糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を水中に保持する機構を備え、
展開した葉を有するイネ発芽体を水中で栽培する、イネ発芽体の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネ発芽体、イネ発芽体の栽培方法、およびイネ発芽体の栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全粒穀物および野菜の摂取不足は、生活習慣病の重大なリスク要因になることが報告されている。玄米等の全粒穀物は、精製された穀物と比べて食べ難いこと、および、調理時間が長いこと等から消費量が増えていないのが現状であり、全粒穀物の摂取を促進する技術開発等が望まれている。
【0003】
例えば、3日程度水に浸して発芽させた玄米が発芽玄米という名称で市販されている。発芽玄米は玄米に比べて食べ易く、精白米と同等の調理時間で調理できることが知られている。特許文献1および非特許文献1には、数時間~3日程度水に浸すことによって発芽させたイネ科植物等の種子は、神経伝達物質として機能するγ-アミノ酪酸(GABA)が増加することが記載されている。また、非特許文献2および3には、96時間水に浸して発芽させた発芽玄米のGABA量が最も高く、栽培時間が96時間を超えると、GABA量が減少していくことが記載されている。また、特許文献2には、玄米等の穀物種子中のγ-アミノ酪酸を増強させる方法として、溶存酸素量が2mg/L以上の水または水溶液からなる動的液体中に穀物種子を配置して、24時間~144時間処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-280394号公報
【文献】特開2019-187394号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Saikusa et. al.,J.Agri.Food Chem.,1994
【文献】Caceres et. al.,Food Chem.,p.407-414,2014
【文献】Kamjijam et. al.,J.Cereal Science.,2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発芽玄米は玄米と比べて食べ易い一方、摂食には炊飯する必要がある。玄米の消費量を増加させるためには、容易に摂食でき、栄養素が豊富である玄米由来の食品の改良開発が望まれている。また、玄米の消費量を増加させるためには、玄米由来の食品の製造方法の簡便化も望まれる。
【0007】
また、カイワレ大根およびブロッコリースプラウト等の、野菜の種子から3日程度発芽させることによって得られる発芽野菜が市販されている。しかしながら、多くの発芽野菜は種子を摂食することは想定されていない。発芽野菜である大豆もやしは種子を摂食するが、緑葉を有さず、葉菜類に含まれるビタミンCおよびβ-カロテンの含有量が少ない。したがって、種子を含む全体を可食することができ、様々な栄養素が豊富である発芽野菜の実現には至っていない。
【0008】
本発明の一態様は、容易に摂食でき、栄養素が豊富であり、製造方法が簡便である、玄米等由来の食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、玄米を水中で特定の期間栽培して得られたイネ発芽体は、発芽玄米の特徴である豊富なγ-アミノ酪酸を有し、葉菜類に含まれるビタミンCおよびβ-カロテンも豊富に含むことを見出した。また、これまでの発芽野菜では実現することができなかった、種子、茎および葉をそのまま生で可食でき、さらにγ-アミノ酪酸、ビタミンCおよびβ-カロテンを豊富に含むイネ発芽体を見出した。
【0010】
さらに、当該イネ発芽体は炊飯する必要がなく、玄米および発芽玄米よりも調理が容易であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の一態様に係るイネ発芽体は、表出した糠層または胚乳と葉を有し、全長が25ミリメートル以上または種子長の5倍以上のイネ発芽体である。
【0012】
本発明の一態様に係るイネ発芽体の栽培方法は、糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を、第1葉が展開されるまで水中で栽培する栽培工程を含む、栽培方法である。
【0013】
本発明の一態様に係るイネ発芽体の栽培装置は、糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を水中に保持する機構を備え、展開した葉を有するイネ発芽体を水中で栽培する、栽培装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、容易に摂食でき、栄養素が豊富であり、製造方法が簡便である、玄米等由来の食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の栽培装置の保持機構の一例を示す図である。
図2】様々な培地で栽培したイネ発芽体(微酸性電解水を使用)のアミノ酸含有量を示したグラフである。
図3】様々な培地で栽培したイネ発芽体(蒸留水を使用)のアミノ酸含有量を示したグラフである。
図4】培地として微酸性電解水また蒸留水を使用したときのイネ発芽体のアミノ酸含有量を示したグラフである。
図5】各栽培期間におけるイネ発芽体の形態を示した図である。
図6】各栽培期間におけるイネ発芽体のアミノ酸含有量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔イネ発芽体〕
本実施形態に係るイネ発芽体は、表出した糠層または胚乳と葉を有し、全長が25ミリメートル(mm)以上または種子長の5倍以上である。すなわち、本実施形態に係るイネ発芽体は、籾殻を取り除いて糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を、少なくとも第1葉が展開されるまで栽培することによって得ることができる。イネ発芽体の栽培方法については後述する。
【0017】
イネ科イネ属植物の例として、栽培イネ(Oryza sativa)および野生イネ(Oryza officinalis)等が挙げられ、栽培イネが好ましい。また、イネ科イネ属植物の例として、水稲および陸稲等が挙げられ、水稲が好ましい。イネ科イネ属植物の種子の例として、糠層を表出させた玄米等が挙げられる。
【0018】
本明細書において、第1葉は鞘葉である。第2葉は鞘葉の次に展開された葉を指し、第3葉は第2葉の次に展開された葉を指す。ビタミンCおよびβ-カロテン等の含有量の点で、本実施形態に係るイネ発芽体が有する葉は緑葉であることが好ましい。
【0019】
栄養素の含有量および食し易さの点等で、本実施形態に係るイネ発芽体は、第3葉が展開される前の状態であることが好ましく、第2葉が展開される状態であることがより好ましい。
【0020】
第1葉を有し、第2葉が展開される前の状態のイネ発芽体の全長は、25mm以上、または、種子長の5倍以上である。
【0021】
食し易さの点等で、本実施形態に係るイネ発芽体の根の長さは、15ミリメートル(mm)未満または種子長の3倍未満の長さであることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係るイネ発芽体は、γ-アミノ酪酸(GABA)を豊富に含む。本実施形態に係るイネ発芽体に含まれるγ-アミノ酪酸の含有量は、イネ発芽体の乾燥重量100グラム(g)当たり、50ミリグラム(mg)以上であってもよく、100mg以上であってもよい。γ-アミノ酪酸は、イネ発芽体の芽・茎・葉の部分および種子の部分に含まれる。
【0023】
本実施形態に係るイネ発芽体はさらに、ビタミンCおよびβ-カロテンを豊富に含む。本実施形態に係るイネ発芽体に含まれるビタミンCの含有量は、イネ発芽体の芽、茎および葉100g当たり、20mg以上であってもよい。本実施形態に係るイネ発芽体に含まれるβ-カロテンの含有量は、イネ発芽体の芽、茎および葉100g当たり、0.6mg以上であってもよい。ビタミンCおよびβ-カロテンは、イネ発芽体の芽・茎・葉の部分に含まれる。
【0024】
本実施形態に係るイネ発芽体は、種子または芽・茎・葉の部分を食してもよいし、イネ発芽体の全体を食してもよい。γ-アミノ酪酸、ビタミンCおよびβ-カロテンのいずれも摂取できる点で、イネ発芽体の全体を食することが好ましい。本実施形態に係るイネ発芽体をそのまま生食で食してもよいし、加熱等調理して食してもよい。
【0025】
本実施形態に係るイネ発芽体は、鮮度の維持の点等で、空気と触れないように保存することが好ましい。空気と触れないようにイネ発芽体を保存する方法として、水中でのイネ発芽体の保存;不活性ガス中でのイネ発芽体の保存;脱酸素剤(例えば、三菱ガス化学社製エージレス)共にイネ発芽体を密封;等が挙げられる。
【0026】
本実施形態に係るイネ発芽体によって、安全かつ栄養のある食料の提供が実現でき、持続可能な農業を促進することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0027】
〔イネ発芽体包装体〕
本実施形態に係るイネ発芽体包装体は、複数のイネ発芽体と、包装材と、を含み、イネ発芽体が包装材により包装されている形態である。
【0028】
イネ発芽体包装体に使用する包装材の例として、パウチが挙げられる。また、包装材の材料の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリエチレンテレフタラート等が挙げられる。
【0029】
イネ発芽体の鮮度の維持の点等で、包装体中のイネ発芽体は空気に触れないことが好ましい。空気と触れないようにイネ発芽体を包装する方法として、水とイネ発芽体とを包装材による包装し、イネ発芽体(好ましくは、イネ発芽体全体)を水中に存在させること等が考えられる。水の例として、純水、微酸性電解水および一般的な水道水等が挙げられる。
【0030】
また、イネ発芽体を包装するときに不活性ガスを充填してもよく、または、脱酸素剤を挿入してもよい。
【0031】
イネ発芽体包装体におけるイネ発芽体の内容量は、例えば、イネ発芽体の流通単位に応じて設定されればよい。特に限定されないが、イネ発芽体の内容量は、例えば、数g~数kg(例えば10kg未満)の範囲内に設定される。数g~とは、例えば、1g以上、5g以上、10g以上、50g以上、100g以上、200g以上、300g以上等である。
【0032】
〔イネ発芽体の栽培方法〕
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培方法(以下、「本実施形態に係る栽培方法」と略記する場合がある)は、栽培工程を含む。
【0033】
(栽培工程)
栽培工程は、玄米等の糠層または胚乳を表出させたイネ種子を、第1葉が展開されるまで水中で栽培する。
【0034】
栽培工程において使用する水は、純水、微酸性電解水および一般的な水道水等が挙げられる。衛生面の点等で、栽培工程において使用する水は毎日交換することが好ましい。水を毎日交換することによって、イネ発芽体の栽培に必要な酸素濃度を確保することができる。
【0035】
栽培工程において使用する水の温度は適宜設定でき、例えば、20~30℃で栽培してもよい。また、光を照射する場合、照射時間および未照射時間それぞれで栽培温度を設定してもよい。栽培工程において使用する水のpHは適宜設定でき、例えば、5.0~7.0で栽培してもよい。栽培工程において使用する水には、微量必須元素および多量必須元素等の養分を添加しないで栽培してもよい。
【0036】
栽培工程の簡易化等のため、水を循環させないで栽培してもよい。また、酸素または空気のバブリング等を行わなくてもよい。さらに、GABA等の遊離アミノ酸を含む豊富な栄養素を有するイネ発芽体が得られる点で、栽培工程において、ウレタンおよびパルプ等の培地を使用せず、水のみでの栽培が好ましい。
【0037】
イネ発芽体の発芽に伴う酵素活性を抑制し、カビや好気性の腐敗菌を抑制する点等で、栽培工程において、イネ発芽体全体が空気に触れないことが好ましく、イネ発芽体全体が水中に存在することがより好ましい。
【0038】
栽培工程の期間は、イネ発芽体に含まれる栄養素の量および食し易さの点等で、第3葉が展開される前に栽培を終了する(イネ発芽体を収穫する)ことが好ましく、第2葉が展開される前に栽培を終了することがより好ましい。具体的には、栽培工程の期間は、5日以上19日以下が好ましく、6日以上16日以下がより好ましく、7日以上14日以下がさらに好ましい。
【0039】
栽培工程前に、糠層または胚乳を表出させたイネ種子を胚芽に損傷しない程度に洗浄または殺菌等することが好ましい。糠層または胚乳を表出させたイネ種子の洗浄は、例えば、水による洗浄等が挙げられる。栽培工程前に糠層または胚乳を表出させたイネ種子を洗浄することによって、イネ発芽体の生菌数の増加を抑制することができる。
【0040】
また、β-カロテンおよびビタミンC等を豊富に含む緑葉が得られる点で、栽培工程において、イネ発芽体に光を照射することが好ましい。照射する光は、自然光であってもよく、人工光であってもよい。光を照射する時間は、緑葉が得られる点で1日12時間以上であることが好ましい。
【0041】
(その他の工程)
本実施形態に係る栽培方法は、栽培工程以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程として、栽培を終了した(収穫した)イネ発芽体を洗浄する工程等が挙げられる。
【0042】
〔イネ発芽体の栽培装置〕
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培装置(以下、「本実施形態に係る栽培装置」と略記する場合がある)は、糠層または胚乳を表出させたイネ種子を水中に保持する機構を備え、展開した葉を有するイネ発芽体を水中で栽培する。
【0043】
(保持機構)
糠層または胚乳を表出させたイネ種子を水中に保持する機構(以下、「保持機構」と略記する)の一例について、図1を参照して説明する。
【0044】
図1に示すように、保持機構1は、複数個の区画2を備える。区画2は、糠層または胚乳を表出させたイネ種子を水中で保持することが可能であれば、区画の大きさおよび数は特に限定されない。イネ発芽体に光を照射する場合は、当該イネ発芽体の芽・葉・茎全体に光が当たるように区画の大きさを適宜変更すればよい。保持機構1の部材として黒色部材等が挙げられる。
【0045】
保持機構1の区画2について糠層または胚乳を表出させたイネ種子を1つ保持させてもよいし、複数個の種子を保持させてもよい。
【0046】
本実施形態に係る栽培装置は、保持機構1の他に、保持機構1を水中で保持する水槽;イネ発芽体に光を照射する光照射器;水温を調整する水温調整器;等を備えていてもよい。
【0047】
〔まとめ〕
本実施形態に係るイネ発芽体は、表出した糠層または胚乳と葉を有し、全長が25ミリメートル以上または種子長の5倍以上である。
【0048】
本実施形態に係るイネ発芽体は、表出した糠層と葉を有していてもよい。
【0049】
本実施形態に係るイネ発芽体は、第3葉が展開される前の状態であってもよい。
【0050】
本実施形態に係るイネ発芽体において、前記葉が緑葉であってもよい。
【0051】
本実施形態に係るイネ発芽体は、15ミリメートル未満または種子長の3倍未満の長さの根を有していてもよい。
【0052】
本実施形態に係るイネ発芽体は、乾燥重量100グラム当たり50ミリグラム以上のγ-アミノ酪酸を含んでいてもよい。
【0053】
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培方法は、糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を、第1葉が展開されるまで水中で栽培する栽培工程を含む。
【0054】
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培方法の栽培工程において、前記イネ発芽体に光を照射してもよい。
【0055】
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培方法において、第3葉が展開される前に栽培を終了してもよい。
【0056】
本実施形態に係るイネ発芽体の栽培装置は、糠層または胚乳を表出させたイネ科イネ属植物の種子を水中に保持する機構を備え、展開した葉を有するイネ発芽体を水中で栽培する。
【0057】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例
【0058】
[評価例1]スプラウト玄米(イネ発芽体)の培地の検討
玄米として、2018年の秋に収穫した茨城県常陸太田産の品種「ふくまる」を用いた。ふくまるは水稲品種である。玄米1000粒の重量は、22.1gであった。栽培に使用する水として、蒸留水(DW;distilled water)または微酸性電解水(SAEW;slightly acidic electrolyzed water)を使用した。微酸性電解水は、SAEW製造装置(SAEW、PURESTER ミュークリーンII、森永乳業株式会社製)を用いて製造した。微酸性電解水のACC(有効塩素濃度)は水質計(AQUAB AQ-202型、柴田科学株式会社製)で測定し、30.0±6.0ppmに設定した。微酸性電解水のpHはpHメーター(LAQUAact D-7、株式会社堀場製作所製)で測定し、6.00±0.20に設定した。
【0059】
玄米は、栽培前に20℃の微酸性電解水で洗浄した。キャップ付き広口250mL容ポリプロピレン容器に、玄米15gと20℃の微酸性電解水200mLを加え、50rpmで1分間撹拌した。微酸性電解水を入れ替えて、同じ操作をもう一度繰り返し、玄米の洗浄を行った。洗浄した玄米を、100mLの微酸性電解水を入れたガラスペトリ皿(直径9.5cm)に置き、自然光下で30℃の栽培ボックス中(電子発酵器、SK-10、大正電機社製)にて96時間栽培した。微酸性電解水は、1日1回交換した。
【0060】
イネ発芽体(以下、実施例においてイネ発芽体をスプラウト玄米と示す場合がある)の栽培用の培地は、以前の研究(Koyama and Hayashi, 2019; Kusano et al., 2001)を基に選択した。
・ウレタン(高さ2cm、水耕栽培培地;Genuine Memory Store JP)
・針葉樹パルプ(2.5g、エコ培地;田源株式会社製)
・滅菌済み籾殻(10.0g、茨城県常陸太田産の品種「ふくまる」由来)
・籾殻燻炭(10.0g、株式会社大宮グリーンサービス製)
・水(100mL、蒸留水または微酸性電解水)
水以外の全ての培地は、50mLの水と混ぜ、ガラス容器(長さ7cm、幅7cm、高さ4cm)に詰めた。そのため、水を含む培地の高さは、2cmであった。発芽を確認した30粒の玄米を、各培地に植え付けた。
【0061】
スプラウト玄米の穀粒を、植物生育インキュベーター(V11-S01-RGB、MRT株式会社製)内で8日間栽培した。明期12時間、暗期12時間の24時間サイクルとし、温度は明期が30℃、暗期が20℃とした。水は1日1回交換した。LEDの輝度は、量子センサー(Apogee MQ-200、APOGEE INSTRUMENT、USA)を使用して、352μmol/msに設定した。
【0062】
独立した実験を、培地および水の10種類の組み合わせ(5種の培地×蒸留水または微酸性電解水)を用いて3回行った。各栽培は、30穀粒を用いて2連で行い、合計180個のスプラウト玄米の穀粒を各組み合わせで調べた。
【0063】
<アミノ酸含有量の測定>
収穫したスプラウト玄米について、GABA(γ-アミノ酪酸)を含む24種のアミノ酸(遊離アミノ酸)の含有量を測定した。アミノ酸の抽出方法は、Moritaら(2017)による報告に従って行った。乾燥重量を測定したスプラウト玄米を、ミル(Silent Millser IFM-S30G、岩谷産業株式会社製)を用いて粉砕した。50mLプラスチックコニカルチューブにて、粉末試料1.0gと9mLの2%スルホサリチル酸溶液(試薬特級、富士フィルム和光純薬株式会社製)を混合し、25℃の温浴にて30分間撹拌した。その後、5500rpmで10分間遠心分離し、0.45μmフィルターを通して濾過をし、抽出物を得た。
【0064】
アミノ酸は、全自動アミノ酸分析機(JLC-500/V2、日本電子株式会社製)を用いて測定した。50μLの試料を使用し、ポストカラムニンヒドリン法を行った。ポストカラムニンヒドリン法は、クエン酸リチウム溶液中遊離アミノ酸用の高分離モードに設定した。各アミノ酸含有量は、標準試料のピーク面積と試料から得たピーク面積を比較することで算出した。標準試料は、アミノ酸混合標準液AN-2型とアミノ酸標準溶液B型を等量に混合したものを使用した(どちらも富士フィルム和光純薬株式会社製)。
【0065】
1つの測定は、各独立した実験について行い、3つの測定結果を、平均値/100g乾燥重量±標準偏差として示した。
【0066】
<統計解析>
統計解析ソフトウェアとしてSPSS version 25(IBM)を使用し、アミノ酸含有量の統計的有意差を算出した。分散分析は、各パラメーターに適した試験を選択し、Tukey-Kramer法、t検定およびKruskal-Wallis検定を用いた。すべての試験の有意の水準は、p<0.05とした。
【0067】
評価結果を図2および3に示す。図2は、栽培に使用する水として微酸性電解水を使用したときの各培地におけるスプラウト玄米のアミノ酸含有量、図3は、栽培に使用する水として蒸留水を使用したとき各培地におけるスプラウト玄米のアミノ酸含有量を示す。図の左側の縦軸はアミノ酸含有量を示し、右側の縦軸はGABA含有量を示す。また、図の横軸は、培地の種類を示す。測定したアミノ酸は、食品の機能(「嗜好」に関する第2次機能(Secondary function)、「生体調節」に係る第3次機能(Tertiary function))、フェノール関連(Phenol-related)、その他(Others)に分類し、それぞれの含有量を示す。
【0068】
第2次機能に係るアミノ酸には、グルタミン酸(Glu)、スレオニン(Thr)、セリン(Ser)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)およびアラニン(Ala)が含まれる。第3次機能に係るアミノ酸には、GABA、アルギニン(Arg)およびβ-アミノイソ酪酸(β-AIBA)が含まれる。フェノール関連アミノ酸には、フェニルアラニン(Phe)およびチロシン(Tyr)が含まれる。その他のアミノ酸には、ホスホセリン、タウリン、アスパラギン酸、α-アミノ酪酸、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、β-アラニン、モノエタノールアミン、オルニチン、ヒスチジンおよびリシンが含まれる。
【0069】
図2および3に示すように、培地として水(蒸留水または微酸性電解水)を使用したスプラウト玄米が遊離アミノ酸の総量が最も多いことが明らかとなった。GABAに関しては、培地として水を使用したときは、他の培地と比べて含有量が特に豊富に存在していることが分かった。
【0070】
[評価例2]培地として使用する水の検討
培地として使用する水として蒸留水または微酸性電解水を使用したときのスプラウト玄米に含まれる成分の比較を行った。評価例1と同様の手順で、玄米として「ふくまる」を用いて8日間栽培した。独立した実験を3回行い、各栽培は30穀粒を用いて3連で行った。
【0071】
評価結果を図4に示す。「Water (S)」が微酸性電解水を使用した結果、「Water (D)」が蒸留水を使用した結果である。図の左側の縦軸はアミノ酸含有量を示し、右側の縦軸はGABA含有量を示す。測定したアミノ酸は、食品としての機能ごとに第2次機能(Secondary function)アミノ酸、第3次機能(Tertiary function)アミノ酸、フェノール関連(Phenol-related)アミノ酸、その他のアミノ酸(Others)に分類し、それぞれの含有量を示す。
【0072】
図4に示すように、培地として微酸性電解水を使用したときのスプラウト玄米のGABA量は133mg/100gdw(一般的な玄米の17倍)であり、遊離アミノ酸総量は494mg/100gdw(一般的な玄米の14倍)であった。一方、培地として蒸留水を使用したときのスプラウト玄米のGABA量は89mg/100gdw(一般的な玄米の11倍)であり、遊離アミノ酸総量は441mg/100gdw(一般的な玄米の12倍)であり、微酸性電解水を使用したときと有意差はなかった。
【0073】
培地として微酸性電解水を使用したときのスプラウト玄米の芽の長さは、平均37.3mmであった。一方、培地として蒸留水を使用したときのスプラウト玄米の芽の長さは、平均34.8mmであり、微酸性電解水を使用したときの方が芽の長さが有意に長くなった。また、培地として蒸留水または微酸性電解水を使用したときの根はほとんど観察されなかった。
【0074】
また、培地として有効塩素濃度が43ppmである微酸性電解水を使用したスプラウト玄米と、有効塩素濃度が30ppmである微酸性電解水を使用したスプラウト玄米のスプラウト玄米の成分を比較した。有効塩素濃度が43ppmである微酸性電解水を使用したときの方がスプラウト玄米の遊離アミノ酸総量が多く、芽・葉部分の遊離アミノ酸総量は約2200mg/100gdwであった(栽培期間:8日間)。
【0075】
[評価例3]栽培日数の検討
スプラウト玄米の最適の形態を調べるため、様々な栽培段階におけるスプラウト玄米のアミノ酸含有量を調べた。栽培培地として微酸性電解水を用いて、以下の栽培期間を基に5段階のスプラウト玄米の評価を行った。
・G0(玄米)
・G1(発芽済み:芽の長さ、3mm;2~3日間栽培(発芽期間を含む))
・G2(不完全葉:芽の長さ、5~15mm;4日間栽培)
・G3(第1葉:芽の長さ、20~30mm;7日間栽培)
・G4(第2葉:芽の長さ、40~70mm;14~19日間栽培)
栽培期間以外は、評価例1と同様に行った。また、アミノ酸含有量の測定および統計解析も、評価例1と同様に行った。
【0076】
各栽培期間におけるスプラウト玄米の形態を、図5に示す。また、各栽培期間におけるスプラウト玄米のアミノ酸含有量を図6に示す。図6において、左側の縦軸はアミノ酸含有量を示し、右側の縦軸はGABA含有量を示す。また横軸は、各栽培期間を示す。測定したアミノ酸は、食品としての機能ごとに第2次機能(Secondary function)アミノ酸、第3次機能(Tertiary function)アミノ酸、フェノール関連(Phenol-related)アミノ酸、その他のアミノ酸(Others)に分類し、それぞれの含有量を示す。
【0077】
図5および6より、G3のスプラウト玄米およびG4のスプラウト玄米は豊富に遊離アミノ酸およびGABAを含むことが分かった。G3~G4の栽培期間(栽培期間:7~19日間)は、第1葉および第2葉が展開される期間に相当する。
【0078】
[評価例4]スプラウト玄米の生菌数の測定
栽培培地として微酸性電解水を用いて8日間栽培して得られたスプラウト玄米について、生菌数を測定した。栽培直後のスプラウト玄米(洗浄前)および栽培後1分間流水で洗浄したスプラウト玄米(洗浄後)について生菌数を測定した。2.5gのスプラウト玄米と22.5mLの滅菌生理食塩水(0.9%)を、滅菌したパドルブレンダー(BAGMIXER 100 MiniMix、フナコシ社製)に入れ、レベル6において90秒間処理した。処理後、1mLの上清を滅菌生理食塩水(0.9%)で希釈した。希釈液1mLをペトリフィルム(3M(商標)ACプレート、3M(商標)大腸菌/CCプレート、3M社製)に滴下して、生菌数ならびに大腸菌群(coliform)および大腸菌(E. coli)の存在の有無を測定した。
【0079】
また、滅菌したパドルブレンダーで処理後のサンプルを70℃の水浴中において20分間処理し、処理後の上清の生菌数(芽胞菌数)をコンパクトドライ(登録商標)試験キット(日水製薬社製)を使用して測定した。すべての培地は35℃において48時間培養した。各生菌数の測定において独立した実験を3回行った。
【0080】
洗浄前のスプラウト玄米の生菌数および大腸菌群(coliform)数はそれぞれ7.6logcfu/gおよび3.2logcfu/gであり、大腸菌(E. coli)および芽胞菌は検出されなかった。これらの結果は、市場に流通している発芽スプラウト(カイワレ大根またはブロッコリースプラウト等)の生菌数と同等であった。また、洗浄後のスプラウト玄米の生菌数は2.9logcfu/gであり、大腸菌群(coliform)、大腸菌(E. coli)および芽胞菌は検出されなかった。洗浄後のスプラウト玄米の生菌数は生鮮状態で可食するための指標である6.0logcfu/gを下回っていたため、スプラウト玄米を生食することは可能であることが分かった。
【0081】
[評価例5]スプラウト玄米の成分分析
玄米として、2020年度に収穫した茨城県常陸太田産の品種「ふくまる」を用いた。培地として、評価例1と同様の微酸性電解水を使用した。玄米を、評価例1と同様に洗浄した。
【0082】
栽培容器として、米粒1つがちょうど収まる穴(深さ7mm、上面5mm角、底面2mm角)を256穴備えた、黒色の容器を用いた。洗浄した玄米を栽培容器に播種し、栽培容器ごと微酸性電解水が500mL入った透明なガラス容器に設置した。1回の実験につき、1つ調整して栽培を行い、独立した実験を3回行った。栽培環境は、評価例1と同様であった。
【0083】
<ビタミンCの分析>
ビタミンC抽出手順は、一般社団法人農民連食品分析センターが報告した条件(https://earlybirds.ddo.jp/bunseki/topics/RQFlex/rqvc/rqvc1.html)に従い、以下の通りに行った。芽の長さが2cm以上7cm未満の収穫したスプラウト玄米の芽(3.0gまたは3.5g)を小さくカットした。カットした芽を6%メタリン酸水溶液15gと混合し、ミル(Silent Millser IFM-S30G、岩谷産業株式会社製)を用いて60秒間粉砕した。次に、ガーゼを用いてろ過し、抽出液とした。
【0084】
抽出液にビタミンC用試験紙(25-450mg/L用)を浸し、規定時間反応させた。その後、簡易反射式光度計(RQFlex Plus10、Merck KGaA)を用いて発色を測定した。1回の栽培実験で収穫したスプラウト玄米から抽出液を1試料準備し、1試料につき3回測定を行った。3回測定した平均値に希釈倍率を考慮し、ビタミンC含有量(mg/100g)を算出した。結果は、平均値含有量±標準偏差として示した。
【0085】
<β-カロテンの分析>
β-カロテンの抽出手順は、満田らが報告した簡易分別定量法(日本食品科学工学会誌、Vol.49、No.7、500-506, 2002)に従って、以下の通り行った。収穫した生鮮スプラウト玄米の芽(2.0g)を小さくカットした。カットした芽および8mLのアセトン(分光分析用、富士フィルム和光純薬株式会社製)を50mL容コニカルチューブに入れ、ホモジナイザー(ホモジナイザー NS―52K、株式会社マイクロテック・ニチオン製)を用いて粉砕した。その後、6000rpmで5分間遠心分離を行い、上澄みを0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過した。残渣に8mLまたは5mLのアセトンを加え、試料の色素が完全に溶出するまで同様の操作を繰り返した。得られた抽出液を100mLに定容し、分析用試料とした。
【0086】
分析方法は、永田らが報告した簡易分別定量法(日本食品科学工学会誌、Vol.54、No.7、351-355, 2007)に従い、以下の通りに行った。紫外可視分光光度計(V-550、日本分光株式会社製)を用いて、400~600nmの可視吸光スペクトルを測定した。443nm、492nmおよび505nmの吸光光度から、抽出液のβ-カロテン濃度(Cβ mg/L)を下記式(1)より求めた。算出した抽出液のβ-カロテン濃度から、スプラウト玄米のβ-カロテン含有量を求めた。
【0087】
β=-1.488A443+4.844A492-2.352A505+0.098
・・・(1)
ビタミンCおよびβ-カロテンの測定結果を表1に示す。表1に示すように、スプラウト玄米は豊富なビタミンCおよびβ-カロテンを有していることが分かった。
【0088】
【表1】
【0089】
また、常法に従い、スプラウト玄米の100g当たりのエネルギー量等を測定した。測定結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
[評価例のまとめ]
評価例1~5により、本発明のイネ発芽体の栽培方法によって、アミノ酸およびGABAが多く含まれるスプラウト玄米が得られることがわかった。さらに、スプラウト玄米は、緑葉を有しており、豊富なビタミンCおよびβ-カロテンを有することが分かった。したがって、スプラウト玄米は、発芽玄米および発芽野菜の栄養価を具備することが示された。
【0092】
評価例4より、スプラウト玄米は生食が可能であることが分かった。また、栽培期間が14日以内であるスプラウト玄米は種子(玄米)部分が柔らかく、短時間の調理(例えば、数十秒の炒め加熱)でも摂食可能であることが分かった。上述の通り、スプラウト玄米は栄養成分(ビタミンCおよびβ-カロテン)および機能性成分(GABA)が豊富であり、例えば、生活習慣病に対する機能性食品と利用できることが見出された。
【0093】
評価例1~5は「ふくまる」という品種を用いて評価を行ったが、「ふくまる」に代えて別の水稲品種である「コシヒカリ」でもスプラウト玄米を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の一態様によれば、発芽玄米よりも栄養・機能性成分が増強され、生食または短時間の調理で摂食可能なイネ発芽体を提供することができる。したがって、本発明によって、玄米の消費量の促進が可能になる。
【符号の説明】
【0095】
1 保持機構
2 区画
図1
図2
図3
図4
図5
図6