(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】放射線カメラ
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20250128BHJP
G01T 1/16 20060101ALI20250128BHJP
G01T 1/164 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
G01T7/00 B
G01T1/16 A
G01T1/164 A
G01T1/164 C
(21)【出願番号】P 2022534014
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024444
(87)【国際公開番号】W WO2022004688
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2020114954
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山谷 泰賀
(72)【発明者】
【氏名】カン ハンギュ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-080992(JP,A)
【文献】特開平06-011573(JP,A)
【文献】特表2019-501371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0293068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0204646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する放射線をコリメートするコリメータと、
前記コリメータを通過した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する発光部と、を備え
、
前記放射線検出部は、複数の放射線検出素子により構成されており、前記発光部は複数の発光素子により構成されており、前記複数の放射線検出素子の各々と前記複数の発光素子の各々とが対応づけられており、前記複数の発光素子の各々は、前記対応づけられた放射線検出素子が検出する放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する、
放射線カメラ。
【請求項2】
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向に沿って隣接して配列されている、請求項
1に記載の放射線カメラ。
【請求項3】
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、一体化されている、請求項
2に記載の放射線カメラ。
【請求項4】
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向と交差する方向に隣接して配列されている、請求項
1に記載の放射線カメラ。
【請求項5】
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、離間して配列されている、請求項
4に記載の放射線カメラ。
【請求項6】
前記放射線検出素子を前記コリメータに近い側で支持し、前記発光素子を前記放射線検出素子よりも前記コリメータから遠い側で支持する支持部を有し、前記支持部は、複数の前記発光素子の発光面にそれぞれ対向し、複数の前記放射線検出素子間の隙間に対向して設けられた複数の貫通穴を有する、請求項
5に記載の放射線カメラ。
【請求項7】
前記複数の放射線検出素子及び前記複数の発光素子が、それぞれ平面状又は曲面状に配列されている、請求項
2から
6のいずれか1項に記載の放射線カメラ。
【請求項8】
前記コリメータは、ピンホールコリメータ、パラレルホールコリメータ、集光多孔コリメータ、及び発散多孔コリメータのうちの少なくともいずれかである、請求項1から
7のいずれか1項に記載の放射線カメラ。
【請求項9】
前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出するように前記発光部を制御する制御部を更に備える、請求項1から
8のいずれか1項に記載の放射線カメラ。
【請求項10】
前記制御部は、前記放射線検出部が検出した前記放射線の強度に基づいて、前記発光部の発光時間又は発光強度を調節する、請求項
9に記載の放射線カメラ。
【請求項11】
入射する放射線をコリメートするコリメータと、
前記コリメータを通過した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する発光部と、を備え、
前記放射線検出部は、1つ又は複数の放射線検出素子により構成されており、前記発光部は1つ又は複数の発光素子により構成されており、前記1つ又は複数の放射線検出素子の各々と前記1つ又は複数の発光素子の各々とが対応づけられており、前記1つ又は複数の発光素子の各々は、前記対応づけられた1つ又は放射線検出素子が検出する放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出し、
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向に沿って隣接して配列されている、
放射線カメラ。
【請求項12】
入射する放射線をコリメートするコリメータと、
前記コリメータを通過した放射線を検出する放射線検出部と、
前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する発光部と、を備え、
前記放射線検出部は、1つ又は複数の放射線検出素子により構成されており、前記発光部は1つ又は複数の発光素子により構成されており、前記1つ又は複数の放射線検出素子の各々と前記1つ又は複数の発光素子の各々とが対応づけられており、前記1つ又は複数の発光素子の各々は、前記対応づけられた1つ又は放射線検出素子が検出する放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出し、
前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向と交差する方向に隣接して配列されている、
放射線カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線、X線、消滅放射線などを対象とした放射線カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の化合物を取り込みやすいがん細胞、又は特定の大きさの化合物が留まりやすい組織が知られている。そのようながん細胞又は組織の位置を特定するため、放射性核種を含む化合物を患者に投与し、ガンマカメラでその位置を特定することが行われている。例えば、99mTcを含む化合物製剤を患者に投与し、その化合物が集積したリンパ節を特定して郭清(かくせい)する方法が知られている。非特許文献1には、この方法を実施するため、センチネルリンパ節へのがん転移の有無を手術中に判断することができる可搬型ガンマカメラが開示されている。
【0003】
また、非特許文献2には、プロジェクタを内蔵した手持ち式イメージング装置が開示されている。このイメージング装置は、手術部位からのインドシアニングリーンの近赤外蛍光を検出するカメラを有し、近赤外蛍光が検出された部位にプロジェクタから光が投影されるように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】横山邦彦, 利波紀久, 津川浩一郎, 三輪晃一, "センチネルリンパ節のアイソトープ検出法," 日獨医報, 第46巻, 第2号, pp.212-217, 2001.
【文献】Chenmeng Li, Peng Liu, Pengfei Shao, Jing Pei, Yingrui Li, Timothy M. Pawlik, Edward W. Martin, Ronald X. Xu, “Handheld projective imaging device for near-infrared fluorescence imaging and intraoperative guidance of sentinel lymph node resection”, Journal of Biomedical Optics, Vol. 24(8), 080503, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示されたガンマカメラは、検出された放射線の強度分布の画像が別体のディスプレイ上に表示されるため、表示された画像と手術部位との位置関係を把握しにくい。一方、非特許文献2に開示されたイメージング装置は、近赤外蛍光が検出された部位に光を投影することを目指している。しかし、このイメージング装置では、近赤外蛍光を検出するカメラの光軸とプロジェクタの光軸とが一致していない。そのため、正しい位置に光が投影されるように、イメージング装置の位置によって投影位置を校正するための距離センサと校正計算プログラムを必要とする。しかし、距離センサ自体の大きさに加え、刻々と変わる距離に応じて校正計算をリアルタイムに行うための高性能プロセッサ、さらにその冷却機能・電源供給機能が必要になり、装置が大型化してしまう虞がある。
【0006】
本発明の一態様は、放射線源に向けて可視光を投影できる、放射線カメラの位置による投影方向の校正を行う必要のない放射線カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る放射線カメラは、入射する放射線をコリメートするコリメータと、前記コリメータを通過した放射線を検出する放射線検出部と、前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する発光部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、放射線源に向けて可視光を投影できる、放射線カメラの位置による投影方向の校正を行う必要のない放射線カメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガンマカメラの機能を概念的に示す図である。
【
図2】
図2(a)は本発明の実施形態1に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図、
図2(b)はその変形例に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図、
図2(c)は変形例のガンマカメラの放射線検出素子の斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るガンマカメラの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図と先端部の部分拡大図である。
【
図5】
図5(a)は実施形態2に係るガンマカメラの形状の一例を示す斜視図、
図5(b)はガンマカメラの他の形状例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図である。
【
図7】
図7(a)から(c)は、本発明の実施形態3に係るガンマカメラの動作を示す概略図、
図7(d)はそのフローチャートである。
【
図8】
図8(a)は本発明の実施形態4に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図、
図8(b)はその動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態5に係るガンマカメラの構成を示す概略縦断面図である。
【
図10】
図10(a)から(j)は、本発明の実施形態6に係る放射線検出素子とレーザ発光素子の配列例を示す概略縦断面図である。
【
図11】
図11(a)は実施形態6に係るガンマカメラの制御フローの一例、
図11(b)はそのガンマカメラの構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12(a)は本発明の実施形態7に係るガンマカメラの概略縦断面図、
図12(b)はその制御フローである。
【
図13】実施形態7に係るガンマカメラの放射線検出素子とレーザ発光素子の配列を示す平面図である。
【
図14】実施形態7に係るガンマカメラの放射線検出素子とレーザ発光素子の配列を示す斜視図である。
【
図15】実施形態7に係るガンマカメラにおける、ガンマ線の入射軸と射出するレーザ光軸とのずれ角度の好ましい範囲を示す図である。
【
図16】
図16(a)は本発明の実施形態8に係るガンマカメラの遮蔽体の斜視図、
図16(b)はその縦断面図である。
【
図17】
図17(a)は本発明の実施形態9に係るガンマカメラの遮蔽体の一形態例、
図17(b)は他の形態例を示す縦断面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係るガンマカメラの医療への適用例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ガンマカメラの機能)
まず、本発明の実施形態における放射線カメラの一例としてのガンマカメラの機能について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における、医療用のガンマカメラの機能を概念的に示す図である。
図1に示すガンマカメラは、対象(例えば人体)の放射線源からの放射線(例えばガンマ線)を検出し、検出したガンマ線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する医療用ガンマカメラである。このような構成により、対象において放射線源が存在する位置に可視光が照射される。これにより、ガンマカメラの操作者は、対象において放射線源が存在する位置を目視により容易に把握することが可能になる。
図1に示す例では、放射線源(以下単に「線源」とも称する。)は対象の内部に存在するが、線源は対象の表面に存在してもよい。ガンマ線は一般に線源から不特定の方向に射出されるが、ガンマカメラはガンマ線の入射方向を決定し、その入射方向の逆方向に向けて可視光を射出できるように構成されている。以下、このような機能を実現するためのガンマカメラの具体的な構成例について説明する。なお、「入射方向の逆方向に向けて」とは、入射軸に一致する逆方向だけではなく、入射軸に対してある程度の角度だけずれた逆方向も含む意味である。この射出角度の精度は、例えば放射線の入射角度の検出精度と同程度の精度であることが好ましい。なお、放射線カメラは、ガンマ線、X線、消滅放射線などを対象とした放射線カメラである。
【0011】
〔実施形態1〕
(ガンマカメラ1の構成及び動作)
次に、本発明の実施形態1に係るガンマカメラ1(特許請求の範囲における「放射線カメラ」の一例)について、図面を参照して説明する。
図2は、実施形態1に係るガンマカメラ1とその変形例に係るガンマカメラ1Aの構成を示す概略縦断面図である。
図2(a)に示すように、ガンマカメラ1は、筐体9と、筐体9の一端部に設けられた遮蔽体8を備える。なお、以下においては図面の上下方向を便宜的にガンマカメラ1の上下方向として説明する。遮蔽体8は、上部8Aは円錐形で下部8Bが円筒形である。なお、遮蔽体8の形状は、矩形状であってもよい。例えば、上部8Aが角錐形で、下部8Bは角柱形であってもよい。遮蔽体8は、ガンマ線を遮蔽するため、鉛又はタングステン等の密度の大きな材料を用いて所定の厚さで形成されている。所定の厚さとは、所定のエネルギーのガンマ線を遮蔽することができる厚さである。本実施形態に係るガンマカメラ1は、例えば
99mTcから放射される約140keVのガンマ線を検出することを目的としている。そのため、遮蔽体8は、140keVのガンマ線を遮蔽できる厚さに設計されている。遮蔽体8は、入射するガンマ線をコリメートするために、先端部8Cに微小な開口であるピンホール8D(特許請求の範囲における「コリメータ」の一例)が形成されている。ピンホール8Dは、上方向から入射するガンマ線Rのみを通過させるように、細孔状に形成されている。
【0012】
ガンマカメラ1は、放射線検出部と発光部とを備えている。放射線検出部は、遮蔽体8の内部に設けられた1つの放射線検出素子13により構成されており、発光部は、遮蔽体8の内部に設けられた、放射線検出素子13に対応する1つの発光素子14により構成されている。本実施形態では、発光素子14がピンホール8Dに近い側に配置され、放射線検出素子13がピンホール8Dから遠い側に配置されている。発光素子14と放射線検出素子13とは、この順でガンマ線Rの進行方向に沿って(つまり上下に)隣接して配列されている。ガンマ線の進行方向とは、ピンホール8Dに近い側(発光素子14側)からピンホール8Dから遠い側(放射線検出素子13側)に向かう方向である。また、「隣接して」とは、接して隣接する場合と離間して隣接する場合とを含む。つまり、発光素子14と放射線検出素子13とは、接して配置されていてもよく、離間して配置されていてもよい。また、発光素子14と放射線検出素子13とを接して配置する場合、両者を直接積層してもよく、他に、発光素子14と放射線検出素子13との間にガンマ線Rを透過する支持部材などのスペーサを介在させても良い。
【0013】
放射線検出素子13の種類は特に限定されないが、シンチレーション検出素子又は半導体検出素子等の小型の検出素子であることが好ましい。シンチレーション検出素子としては、CsI(Tl)シンチレータ、NaI(Tl)シンチレータ等を用いることができる。半導体検出素子としては、CdTe半導体検出素子、CZT半導体検出素子、Si半導体検出素子、Ge半導体検出素子等を用いることができる。放射線検出素子13は、放射線のエネルギーを電気信号に変換して出力するが、エネルギーを電気信号に変換する構成は公知の構成を用いることができるため、その図示と説明は省略する。発光素子14の種類は特に限定されないが、可視光(以下、単に「光」とも称する。)を射出する例えば発光ダイオード(Light Emitting Diode, LED)を用いることができる。
【0014】
前述のように、ガンマカメラ1では放射線検出素子13の上に発光素子14が配列されている。従って、
図2(a)に示すように、ピンホール8Dに入射して通過したガンマ線Rは発光素子14を透過して放射線検出素子13に到達する。しかし、例えば
99mTcから放射されるガンマ線Rのエネルギーは約140keVであり、発光素子14を容易に透過することができ、ガンマ線Rの検出効率に影響を与える虞は少ない。
【0015】
制御部16は、筐体9の内部であって遮蔽体8の外部に配置されている。制御部16を筐体9の内部に備えることで、可搬性が向上する。なお、放射線検出素子13、発光素子14、及び制御部16を一体化させることで、よりコンパクトな構成とすることができる。
図3に示すように、制御部16は、放射線検出素子13がガンマ線を受けて出力する電気信号を受信し、その電気信号の受信を契機に、発光素子14を所定の時間だけ励起させて光Lを射出(発光)させる制御を行う。発光素子14を長時間発光させると、放射線の強度(計数率又は空間線量率)が強い場合に光Lが重なって連続的に投影され続けるため、好ましくない。一方、発光時間があまり短いと、目視しにくくなるため、ある程度の発光時間が必要である。そのため、適切な目視が可能となるように、制御部16は、放射線の強度に基づいて、発光時間を調節できるように構成してもよい。また、制御部16は、発光時間に代えて、又は加えて発光強度(輝度)を調節できるように構成してもよい。制御部16は、MPU(Micro Processing Unit)又はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、各種プログラム及びデータを記憶したメモリとを含む。又は、制御部16は、プロセッサとして、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用プロセッサを用いてもよい。
【0016】
図2に戻り、発光素子14から射出された光Lは、ピンホール8Dを介してガンマ線Rの入射方向の逆方向に向いた光Lのみが外部に発出される。その結果、線源に対応する対象の位置に光Lが投影される。線源に対応する位置とは、線源が対象の表面にある場合は、その線源の位置であり、線源が対象の内部にある場合は、線源と発光素子14とを結ぶ線分が対象の表面と交わる位置である。
【0017】
以上のように、放射線検出素子13は、ピンホール8Dを通過したガンマ線Rを検出し、発光素子14は、そのガンマ線Rの入射方向の逆方向に向けて可視光Lを射出する。射出された可視光Lは、線源に向かって照射され、線源に対応する対象の位置に投影される。
【0018】
この構成を本実施形態のように医療用のガンマカメラに適用した場合、患部の位置を皮膚上に可視化することができる。具体的には、医療用のガンマカメラ1は、例えば99mTcから放射されるガンマ線を検出して、その入射方向の逆方向に向けて光を射出することができる。例えば、99mTcを含むアルブミン、フチン酸等の標識化合物を乳がん患者に投与すると、標識化合物は乳がんの患部に集積する。そこで、医師がガンマカメラ1を用いて診断すると、99mTcから放射されるガンマ線の線源の方向にガンマカメラ1から光が射出される。つまり、標識化合物が集積した患部に向けてガンマカメラ1からの光が患者の皮膚上に直接投影され、可視化される。そのため、医師は患部の位置を視覚的に把握することができる。また、ガンマカメラ1は、手術中にも使用でき、その場合は、臓器の表面上に患部の位置を可視化することができる。
【0019】
患部が人体の内部にある場合は、ガンマカメラ1のピンホール8Dと患部とを結ぶ線が皮膚と交わる位置に光が投影される。ガンマカメラ1の位置を変えて患部の位置を診断することにより、患部の位置が内部にあってもその位置を把握することができる。
【0020】
従来技術では、検出した放射線の入射軸と投影する光の投影軸が一致しないため、光を投影する位置によって複雑な校正演算が必要である。しかし、ガンマカメラ1によれば、ガンマカメラ1の位置による投影方向の校正を行うことなく、放射線源に向けて可視光を投影することができる。
【0021】
(変形例)
上記の実施形態1では、発光素子14が放射線検出素子13の上に配置されている。しかし、
図2(b)に示すように、発光素子14と放射線検出素子13とを逆に配置してもよい。
図2(b)に示す例では、放射線検出素子13を遮蔽体8の内部に配置し、発光素子14を遮蔽体8の下部の筐体9の内部に配置している。
図2(c)に示すように、放射線検出素子13の中央部分に円筒状の開口13Aを設けており、発光素子14は、開口13Aを通じて光を射出する。なお、発光素子14も遮蔽体8の内部に設けてもよい。このような構成でも実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0022】
上記の実施形態1では、制御部16を筐体9の内部に設けた。しかし制御部16も遮蔽体8の内部に設けてもよい。また、発光素子14はレーザ発光素子でもよい。なお、本実施形態では「ガンマカメラ」を例示しているが、前述のように検出する放射線は必ずしもガンマ線でなくともよい。例えば、ベータ線又は各種のエネルギーレベルの電磁波を検出して光をその逆方向に向けて射出する構成としてもよい。その場合は、放射線検出素子13を適宜放射線の検出に適した構成のものに変更して用いる。
【0023】
〔実施形態2〕
(ガンマカメラ2の構成)
次に、本発明の実施形態2に係るガンマカメラ2について、図面を参照して説明する。
図4は、実施形態2に係る医療用のガンマカメラ2の構成を示す概略縦断面図である。
図4に示すように、ガンマカメラ2は、遮蔽体10の内部に放射線検出部12と制御部16を備える。遮蔽体10は、ガンマカメラ2の筐体を兼ねており、上部10Aは円錐形で下部10Bが円筒形である。遮蔽体10は、実施形態1の遮蔽体8と同様、先端部10Cにガンマ線をコリメートするための微小な開口であるピンホール11(特許請求の範囲における「コリメータ」の一例)が形成されている。ガンマカメラ2のピンホール11は、広角度からのガンマ線をコリメートするように形成されている。遮蔽体10の材質及び厚さは、実施形態1で説明したとおりである。
【0024】
放射線検出部12は、複数の放射線検出素子13(特許請求の範囲における「放射線検出部」の一例)を含む。複数の放射線検出素子13は、遮蔽体10の下部10Bの横断面形状に合わせて、円形の平面上に規則正しく配列されている。放射線検出素子13は、実施形態1と同様、シンチレーション検出素子又は半導体検出素子等が好ましい。
【0025】
遮蔽体10の先端部10Cには、
図4中の拡大図に示すように、発光素子14と反射部15とを含む発光部が配置されている。発光素子14は、ピンホール11の開口端部10Dの一か所に配置されている。反射部15は、開口端部10Dの、発光素子14に対向する位置に配置されている。発光素子14は、例えば、光Lを反射部15に向けて射出する発光ダイオードである。発光素子14は、放射線検出素子13がガンマ線を検出すると、所定の時間だけ反射部15に向けて光Lを射出するように制御部16によって制御される。反射部15は、平面状の反射板15Aとそれを駆動する駆動部15Bとから構成されている。駆動部15Bは、例えば反射板15Aを直交する2軸方向に旋回させて、反射板15Aの向きを任意に変えることができる圧電アクチュエータである。駆動部15Bは、制御部16により駆動制御される。本実施形態では、発光素子14から出射される光Lを反射する反射板15Aの向きは、複数の放射線検出素子13のそれぞれの位置と対応している。
【0026】
(ガンマカメラ2の動作)
ガンマ線が放射線検出素子13によって検出されると、検出された放射線検出素子13の位置とピンホール11の位置とから、検出されたガンマ線の入射方向が決定される。つまり、検出された放射線検出素子13とピンホール11とを結ぶ線が、ガンマ線の入射方向となる。制御部16は、放射線検出素子13からの信号を受信すると、ガンマ線を検出した放射線検出素子13に応じて駆動部15Bを駆動する。具体的には、制御部16は、駆動部15Bを駆動して、ガンマ線の入射方向と逆方向に光Lが反射されるように反射板15Aの向きを変更させる。その後、発光素子14を所定の時間だけ発光させる。発光素子14を長時間発光させると、ガンマカメラ2を移動させた後も光Lが射出され続けるため、好ましくない。一方、発光時間があまり短いと目視しにくくなるため、ある程度の発光時間が必要である。また、放射線の強度(計数率又は空間線量率)が大きい場合、発光時間が重なってしまい、位置による線源の強さが分別できなくなる虞もある。そのため、適切な目視が可能となるように、発光時間をユーザが調節できるように構成してもよい。また、発光時間に代えて、又は加えて発光強度(輝度)をユーザが調節できるように構成してもよい。
【0027】
以上の構成により、ガンマカメラ2は、実施形態1と同様の効果が得られる。つまり、以上の構成によれば、ガンマカメラの位置によって投影方向の校正を行うことなく、放射線源に向けて可視光を投影することができる。さらに、複数の放射線検出素子13を備えることにより、ピンホール11を通過した放射線を放射線検出素子13が検出した場合に、ピンホール11とその放射線検出素子13との位置から放射線の入射方向を容易に決定することができる。その放射線の入射方向の逆方向に向けて発光素子14から可視光を射出させることができる。
【0028】
(変形例)
実施形態2では、遮蔽体10は
図5(a)に示すように、下部は円筒形であり、上部は円錐形である。しかし遮蔽体10の形状は限定されない。例えば、
図5(b)に示すように、遮蔽体10の形状は矩形状でもよい。つまり、遮蔽体10の下部は角柱形で、上部は角錐形でもよい。また、上記の例では、発光素子14と反射部15は遮蔽体10の先端部10Cに配置されているが、その位置は限定されない。前述のようにガンマ線の入射方向はガンマ線を検出した放射線検出素子13の位置によって決まるので、その方向に向けて光が射出されるように構成しておけばよく、発光部の配置位置は限定されない。また、発光素子14と反射部15を別の位置に配置しておき、遮蔽体10の先端部10Cから射出されるように光を導光してもよい。
【0029】
実施形態2では、遮蔽体10はガンマカメラ2の筐体を兼ねている。しかし筐体を遮蔽体10と兼用しないで別に構成してもよい。その場合、制御部16は筐体部の内部に配置してもよい。
【0030】
〔実施形態3〕
(ガンマカメラ3の構成)
次に、実施形態3に係る医療用のガンマカメラ3について、図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、以下の各実施形態において、それまでの実施形態で説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
図6は、ガンマカメラ3の構成を示す断面縦概略図である。
図6に示すように、ガンマカメラ3は、実施形態1で説明した遮蔽体10と同様の円筒形の遮蔽体20を備える。遮蔽体20は、先端部にピンホール11(特許請求の範囲における「コリメータ」の一例)を有する。遮蔽体20は、内部に複数の放射線検出素子13と複数の発光素子30と制御部16とを備える。
【0031】
複数の放射線検出素子13と複数の発光素子30とは、ガンマ線の進行方向に沿った方向に隣接して配列されている。本実施形態において、放射線検出素子13と発光素子30とは、図面の上下方向に隣接して配列されている。本実施形態では、放射線検出素子13と発光素子30の数は同じであり、1つの放射線検出素子13の上に1つの発光素子30が配列されている。なお、上下方向に隣接して配列された放射線検出素子13と発光素子30とは、互いに対応づけられている。発光素子30は、上方向に向けて光を射出するように配置されている。射出された光は、ピンホール11によってコリメートされるため、発光素子30は、指向性のある光を射出する必要はない。発光素子30の発光面と放射線検出素子13の検出面とは、形状と大きさが幾何学的に相似していることが好ましく、同等であることがより好ましい。これにより、投影光の分布と線源の分布とをより一致させることができる。
【0032】
(ガンマカメラ3の動作)
ガンマカメラ3の動作について、
図7を参照して説明する。
図7(d)に示すフローチャートに示すように、本実施形態では、放射線検出素子13によってガンマ線が検出されると(ステップS71)、制御部16は、対応する発光素子30を発光させる(ステップS72)。これにより、放射線検出素子13によって例えば体内に存在する線源(患部)50からのガンマ線が検出されると、線源50に対応する位置の皮膚51に光が投影される。
【0033】
より具体的には、
図7(a)に示すように、ピンホール11を通過して入射したガンマ線は、放射線検出素子13で検出される。制御部16は、放射線検出素子13からガンマ線の検出信号を受信すると、
図7(b)に示すように、ガンマ線を検出した放射線検出素子13に対応する発光素子30から所定時間だけ可視光を射出させる。所定時間だけ可視光を射出する理由、及び所定の発光時間を調節できるようにしてもよいことは実施形態1、2と同様である。
図7(c)に示すように、発光素子30から上方向に射出された光は、ピンホール11によってコリメートされて、入射したガンマ線の入射方向と逆方向に向いた光だけが外部に射出され、リンパ節等の線源50に対応する位置の皮膚51に投影される。この動作が、各々の放射線検出素子13とそれに対応する発光素子30で繰り返される。
【0034】
ガンマ線の進行方向に沿った方向に隣接して放射線検出素子13と発光素子30とを重ねた構成により、発光素子30を発光させるだけで、ピンホール11から入射するガンマ線の入射方向と逆方向に向けて、外部に光を射出させることができる。そして、ガンマ線を放射する標識化合物が集積した線源(患部)50に向けてガンマカメラ3からの光が患者の皮膚51上に直接投影され、可視化される。これによって、医師は患部50の位置を視覚的に把握することができる。なお、手術中に使用される場合には、皮膚51の代わりに臓器の表面の場合もあり得る。
【0035】
ガンマカメラ3では、放射線検出素子13の上に発光素子30が隣接して配列されている。従って、入射したガンマ線は発光素子30を透過して放射線検出素子13に到達する。しかし前述のように、例えば99mTcから放射されるガンマ線のエネルギーは約140keVであり、発光素子30を容易に透過することができ、ガンマ線の検出効率に影響を与える虞は少ない。
【0036】
実施形態3に係るガンマカメラ3では、実施形態2のガンマカメラ2に比べて、発光素子30の数は多くなるが、発光素子14から出射した光Lを反射する反射板15Aを、駆動部15Bを用いて駆動させる必要がない。対応する放射線検出素子13と発光素子30とを放射線の進行方向に沿って隣接して配列するという簡易な構成によって、入射した放射線の逆方向に向けて光を射出させることが容易となる。つまり、放射線検出素子13の各々に対応する発光素子30から光を射出させるだけで、入射した放射線の逆方向に向けて光を射出させることが可能となる。なお、実施形態1、2で示した変形例は、実施形態3においても適宜適用可能である。
【0037】
〔実施形態4〕
次に、実施形態4に係るガンマカメラ4の構成と動作について、
図8を参照して説明する。
図8(a)に示すように、ガンマカメラ4は、実施形態3と同様の遮蔽体20を有する。ガンマカメラ4は、遮蔽体20の内部に、放射線検出素子13とレーザ発光素子32(特許請求の範囲における「発光部」の一例)を有する。放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、ガンマ線の進行方向に沿って隣接して配列されている。放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、同じ数で対応して配列されている。レーザ発光素子32は、可視レーザ光をピンホール11の方向に向けて射出するように配置されている。
【0038】
図8(b)のフローチャートに示すように、制御部16は、放射線検出素子13からガンマ線の検出信号を受信すると(ステップS81)、ガンマ線を検出した放射線検出素子13に対応するレーザ発光素子32から所定時間だけ可視光を射出させる(ステップS82)。このフローチャートが、対応する放射線検出素子13とレーザ発光素子32との間で繰り返される。
【0039】
ガンマカメラ4によれば、実施形態3における指向性のない発光素子30を、指向性のあるレーザ発光素子32に代えることで、より明るい光を投影することができる。なお、レーザ発光素子32は指向性が高いため、レーザ光の射出方向を精度よくピンホール11に向けて配置することが好ましい。具体的には、レーザ発光素子32の発光面はそれぞれピンホール11に向かうように調整されており、かつ発光面の中心は、それぞれの放射線検出素子13の検出面中心とピンホール11を結ぶ線分上にあることが好ましい。
【0040】
以上の構成のガンマカメラ4により、実施形態3に係るガンマカメラ3と同様の効果を得ることができる。また、ガンマカメラ4によれば、実施形態3のガンマカメラ3に比べて、投影する光の明るさを強くすることができる。なお、実施形態1、2で示した変形例は、実施形態4においても適宜適用可能である。
【0041】
〔実施形態5〕
次に、実施形態5に係るガンマカメラ5について、
図9を参照して説明する。ガンマカメラ5は、実施形態3と同様の遮蔽体20を有する。ガンマカメラ5は、遮蔽体20の内部に、放射線検出素子13とレーザ発光素子32を有する。
図9に示すように、放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、ガンマ線の進行方向に沿って隣接して配列されている。放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、同じ数で対応して配列されている。
【0042】
より具体的には、対応する放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、一体化されている。より具体的には、放射線検出素子13の検出面とレーザ発光素子32の発光面とが同じ方向を向くように、ガンマ線の進行方向に沿って一体化されている。そして一体化された放射線検出素子13とレーザ発光素子32が、ピンホール11に向けて配列されている。一体化した放射線検出素子13とレーザ発光素子32を予め製造しておくことで、それぞれをピンホール11の方向に向けて配列することが容易となる。なお、ガンマカメラ5の動作は、実施形態3で説明したガンマカメラ3の動作と同様である。
【0043】
以上の構成のガンマカメラ5により、実施形態3に係るガンマカメラ3と同様の効果を得ることができる。さらに、放射線検出素子13とレーザ発光素子32を一体化することで、両者をピンホール11の方向に向けて隣接して配列することが容易となる。なお、実施形態5以下の実施形態においては、発光素子としてレーザ発光素子32を用いて説明しているが、レーザ発光素子ではない発光素子を用いてもよい。また、実施形態1、2で示した変形例は、実施形態5においても適宜適用可能である。
【0044】
〔実施形態6〕
次に、実施形態6として、放射線検出素子13とレーザ発光素子32の配列について、
図10を参照して説明する。ガンマカメラ4及びガンマカメラ5では、
図10(a)及び
図10(i)に示すように、レーザ発光素子32と放射線検出素子13とが同じ数だけ対応して、略平面上に配列されている態様を説明した。
【0045】
しかし、
図10(c)、(d)、(e)、(f)にそれぞれ示すように、レーザ発光素子32のピッチが放射線検出素子13のピッチと一致していなくてもよい。つまり、放射線検出素子13の数とレーザ発光素子32の数が一致していなくてもよい。例えば、
図10(c)、(d)に示すように、放射線検出素子13の数よりもレーザ発光素子32の数が多い場合は、1つの放射線検出素子13に対応する複数のレーザ発光素子32を予め決めておく。そして、対応する複数のレーザ発光素子32は、対応付けられた1つの放射線検出素子13とピンホール11とを結ぶ線と同じ方向に光を射出するように配置する。1つの放射線検出素子13でガンマ線を検出した場合は、その放射線検出素子13に対応付けられた複数のレーザ発光素子32を発光させるように制御される。
【0046】
逆に、
図10(e)、(f)に示すように、放射線検出素子13の数よりもレーザ発光素子32の数が少ない場合は、複数の放射線検出素子13に対応する1つのレーザ発光素子32を予め決めておく。そして、対応する1つのレーザ発光素子32は、対応付けられた複数の放射線検出素子13の検出面の中央付近とピンホール11とを結ぶ線と同じ方向に光を射出するように配置する。複数の放射線検出素子13のいずれかでガンマ線を検出した場合は、その放射線検出素子13に対応付けられた1つのレーザ発光素子32を発光させるように制御される。
【0047】
また、
図10(g)、(h)に示すように、放射線検出素子13がピクセル化されていなくてもよい。放射線検出素子13がピクセル化されていない場合は、
図11(a)のフローチャートに示す制御が行われる。つまり、制御部16は、放射線検出素子13からガンマ線の検出信号を受信すると(ステップS111)、放射線検出素子13のどの位置でガンマ線が検出されたかの演算を行う(ステップS112)。次に、制御部16は、そのガンマ線検出位置とピンホール11とを結ぶ線分に最も近い位置にあるレーザ発光素子32を決定する(ステップS113)。そして、制御部16は、決定したレーザ発光素子32を発光させる(ステップS114)。このような制御を行うガンマカメラ4、5のブロック構成図を
図11(b)に示す。
【0048】
また、
図10(b)、(d)、(f)、(h)に示すように、複数のレーザ発光素子32が、曲面状に配列されていてもよい。複数のレーザ発光素子32を配列した素子アレイを、光の発光面(射出方向)がピンホール11に向くように湾曲させておけば、効率よく光を外部に射出でき、またガンマカメラの製造組み立てが容易となる。また、これらの形態に代えて、又は加えて、複数の放射線検出素子13が、曲面状に配列されていてもよい(図示せず)。複数の放射線検出素子13を配列した素子アレイを、ガンマ線の検出面がピンホール11に向くように湾曲させておけば、ガンマ線の検出効率が増加する。
【0049】
また、
図10(j)に示すように、一体化されたレーザ発光素子32と放射線検出素子13が湾曲して配列されていてもよい。レーザ発光素子32と放射線検出素子13とを一体化することで、ガンマ線の検出効率と光の射出方向の精度を向上させることができる。また、レーザ発光素子32の発光面と放射線検出素子13の検出面の両方をピンホール11の方向に向けて配置することができ、ガンマ線の検出効率と外部への光射出効率の両方が増加する。また、ガンマカメラの製造組み立てが容易となる。
【0050】
以上のように、放射線検出素子13と当該放射線検出素子13に対応する発光素子32とを放射線の進行方向に沿って隣接して配置する形態は様々な種類がある。放射線検出素子13と当該放射線検出素子13に対応する発光素子32とが、離間して配列されていてもよく、接して配列されていてもよい。放射線検出素子13と当該放射線検出素子13に対応する発光素子32とを離間して配列することにより、両者の配列の自由度が向上する。したがって、ガンマカメラの構造設計の自由度が増加する。
【0051】
また、放射線検出素子13と発光素子32とが1対1で対応していなくてもよい。なお、少なくともレーザ発光素子32の発光面はピンホール11の方向に向けて配置することが好ましい。レーザ発光素子32が射出するレーザ光は指向性が高いためである。また、放射線検出素子13の検出面は必ずしもピンホール11の方向に向いていなくともよいが、できるだけピンホール11の方向に向けて配置することが好ましい。これにより、放射線検出素子13の検出効率を高めることができる。
【0052】
〔実施形態7〕
次に、実施形態7に係るガンマカメラ6について、図面を参照して説明する。
図12は、ガンマカメラ6の概略縦断面図とその制御フローである。
図13は、放射線検出素子13とレーザ発光素子32の配列を示す平面図である。
図14は、放射線検出素子13とレーザ発光素子32の配列を示す斜視図である。
【0053】
図12(a)に示すように、ガンマカメラ6では、放射線検出素子13はレーザ発光素子32よりもピンホール11に近い側に配列されている。レーザ発光素子32は、放射線検出素子13よりもピンホール11から遠い側に配列されている。対応する放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、ガンマ線の進行方向と交差する方向に隣接して配列されている。また、放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、離間して配列されている。
図12(b)に示すフローチャートについては後述する。
【0054】
放射線検出素子13とレーザ発光素子32の配列についてより詳細に説明する。
図13に示すように、放射線検出素子13とレーザ発光素子32とは、直交する二方向に、それぞれ距離L1及び距離L2だけずらして配列されている。ずらす方向は、ガンマ線の進行方向と交差する方向であり、本実施形態においては、ガンマ線の進行方向と直交する方向である。距離L1及び距離L2は、距離L1及び距離L2とも放射線検出素子13の各方向に沿った幅の2分の1以上である。このように配列することにより、放射線検出素子13を避けてレーザ発光素子32からレーザ光を射出することができる。また、放射線検出素子13をできるだけ密に配列することができ、検出位置の精度が向上する。ずらす量はより大きくてもよいが、その分検出効率又は検出の位置精度が低下する場合がある。
【0055】
上記の配列を容易に形成するため、
図12(a)、
図14に示すように、ピンホール11を中心とする球面状の支持部40を用いることが好ましい。支持部40は、湾曲した板状であり、放射線検出素子13をピンホール11に近い側で支持する。また、支持部40は、レーザ発光素子32を放射線検出素子13よりもピンホール11から遠い側で支持する。支持部40には、予めレーザ光Lを通す複数の貫通穴41が設けられている。貫通穴41は、複数のレーザ発光素子32の発光面にそれぞれ対向し、複数の放射線検出素子13の間の隙間に対向して設けられている。
【0056】
換言すれば、支持部40によって、放射線検出素子13の間の隙間からレーザ発光素子32がピンホール11に向かってレーザ光Lを照射できるように支持されている。支持部40を用いれば、複雑な光軸調整作業をすることなく、レーザ発光素子32からのレーザ光Lがピンホール11の穴を通るように配列させることができる。なお、
図14では、放射線検出素子13とレーザ発光素子32が支持部40から離間して配列されているように描画されているが、実際は
図12(a)に示すように接している。
【0057】
ガンマカメラ6は、レーザ発光素子32がガンマ線の入射方向に大型化してしまう場合に有効な態様の1つである。このように、放射線検出素子13とそれに対応するレーザ発光素子32とを交差する方向に隣接して配列することにより、放射線検出素子13とレーザ発光素子32の配列の自由度が向上する。したがって、ガンマカメラの構造設計の自由度が増加する。
【0058】
ガンマカメラ6は、放射線検出素子13とレーザ発光素子32とがガンマ線の進行方向と交差する方向に隣接して配列されているため、ガンマ線の入射軸とレーザの光軸とが若干ずれている。そのため、ガンマ線検出後、放射線検出素子13の近辺で対応する適切なレーザ発光素子32を選定する制御を行うことが好ましい。具体的には、
図12(b)に示すフローチャートのように、制御部16は、放射線検出素子13からガンマ線の検出信号を受信すると(ステップS121)、その放射線検出素子13に近い位置にあるレーザ発光素子32を選定する(ステップS122)。そして、制御部16は、選定したレーザ発光素子32を発光させる(ステップS123)。
【0059】
上述のフローチャートにおけるレーザ発光素子32の選定方法としては、(1)当該放射線検出素子13に隣接するすべてのレーザ発光素子32を選定する方法、(2)(たとえば右側など)当該放射線検出素子13に隣接する特定のレーザ発光素子32のみを選定する方法、あるいは(3)当該放射線検出素子13に隣接するレーザ発光素子32の中から、ランダムに1素子のみを選択する方法、等がある。
【0060】
本実施形態では、前述のように、原理的にガンマ線の入射軸とそのガンマ線に対応して射出されるレーザ光の光軸とが若干ずれる。そのため、レーザ光の投影位置も若干ずれる。しかし、ずれの原因となる放射線検出素子13(又はレーザ発光素子32)の大きさ(ガンマ線の進行方向と交差する方向の幅)が小さく、投影距離が小さいため、そのずれの大きさは小さい。そのため、投影される光の位置がずれても実用上は問題ない。なお、ガンマ線の入射軸と射出するレーザ光軸とのずれの角度は、ガンマ線の入射角度を検出する際の角度誤差と同程度の角度内であることが好ましい。具体的には、
図15に示すように、隣り合う放射線検出素子13どうしがピンホール11に対して見込む角度をθ1とした場合、ガンマ線Rの入射軸と射出するレーザ光軸Lとのずれの角度θ2は、θ1の半分以下であることがさらに好ましい。
【0061】
〔実施形態8〕
次に、実施形態8に係るガンマカメラの遮蔽体22について、図面を参照して説明する。
図16(a)は実施形態8に係る遮蔽体22の斜視図、
図16(b)はその縦断面図である。実施形態1から実施形態7で示したコリメータは、ピンホールコリメータである。それに対して、実施形態8に係る遮蔽体22は、
図16(a)、(b)に示すように、平行多孔(パラレルホール)コリメータを有する。この場合、複数設けられた孔部22Aがコリメータとなる。このように、本発明の実施形態においては、ピンホールコリメータに限らず、一般的な平行多孔コリメータも適用可能である。平行多孔コリメータの場合、孔部22Aの開口面積が広くなるほど、放射線検出感度が高まる。一方で、撮像・投影視野サイズと検出器サイズが一致するため、体外で使用する手持ちサイズの機器の場合に適用することが好ましい。このようなコリメータを用いた場合でも、入射した放射線の入射方向の逆方向に向けて光を射出することが容易に可能となる。
【0062】
〔実施形態9〕
次に、実施形態9に係るガンマカメラの遮蔽体23、24について図面を参照して説明する。実施形態9に係る遮蔽体23は、
図17(a)に示すように、集光多孔型のコリメータを有する。この場合、複数設けられた孔部23Aがコリメータとなる。この形態では、検出器部分のサイズよりも撮像・投影視野サイズが小さくなるが、拡大効果により放射線検出素子13の間隔よりも細かい空間分解能を得ることができる。また、
図17(b)に示すように、発散多孔型のコリメータを有する遮蔽体24を用いてもよい。この場合、複数設けられた孔部24Aがコリメータとなる。この形態では、検出器部分のサイズよりも撮像・投影視野サイズを大きくできるが、空間分解能は、放射線検出素子13の間隔よりも劣化してしまう。これらのコリメータ23A、24Aは、使用場所と使用目的によって適宜使い分けることが好ましい。このようなコリメータを用いた場合でも、入射した放射線の入射方向の逆方向に向けて光を射出することが容易に可能となる。
【0063】
(適用例)
上記の各実施形態のガンマカメラは、医療に適用することができる。
図18は、上記の各実施形態に係るガンマカメラの鏡視下手術またはロボット手術への適用例を示す概略図である。
図18に示すように、通常の鏡視下手術やロボット手術でポートに挿入する光学カメラや鉗子に加えて、上記各実施形態のガンマカメラを患部近くに挿入する。ガンマカメラは単独で患部表面に放射性薬剤の分布を投影するため、術者は通常の光学カメラの画像を通じて、患部表面に投影された放射性薬剤の分布状況を視認することができる。
【0064】
(変形例)
以上の各実施形態においては、医療用のガンマカメラを例にとって説明した。しかし、本発明の実施形態は必ずしも医療用でなくともよい。例えば、原子力発電所、放射性物質の使用施設、核燃料の加工施設、再処理施設等において、例えば汚染源の位置を確認するための放射線カメラとして構成してもよい。あるいは、空港や国境等での荷物中の放射性物質や核物質の有無などを監視するセキュリティ目的の放射線カメラとして構築してもよい。
【0065】
そのように構成することにより、例えば除染すべき個所を可視化することができる。この場合、発光素子は、検出した放射線の強度(エネルギー強度、計数率又は空間線量率)により、射出光の発光時間又は発光強度を変えて射出できるように構成してもよい。なお、線源までの距離が長くなるため、発光素子として指向性の高いレーザ発光素子を用いることが好ましい。また、検出したい線源の放射線エネルギー強度が広い範囲にわたる場合は、遮蔽体の厚さを最大エネルギーの放射線を遮蔽できる厚さに設定することが好ましい。
【0066】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る放射線カメラは、入射する放射線をコリメートするコリメータと、前記コリメータを通過した放射線を検出する放射線検出部と、前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する発光部と、を備える。
【0067】
上記の構成によれば、コリメータを通過した放射線を放射線検出部が検出した場合に、コリメータと放射線検出部との位置から放射線の入射方向が決定される。その放射線の入射方向の逆方向に向けて発光素子から可視光を射出させることによって、放射線カメラの位置による投影方向の校正を行う必要なく、放射線源に向けて可視光を投影できる。これにより、例えば患部の位置を皮膚上に可視化することができる。
【0068】
本発明の態様2に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出部は、1つ又は複数の放射線検出素子により構成されており、前記発光部は1つ又は複数の発光素子により構成されており、前記放射線検出素子と、当該放射線検出素子が検出する放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出する前記発光素子とが対応づけられていてもよい。
【0069】
上記の構成によれば、1つ又は複数の放射線検出素子と1つ又は複数の発光素子とを対応づけることにより、放射線の入射方向の逆方向に向けて発光部から可視光を容易に射出させることができる。
【0070】
本発明の態様3に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向に沿って隣接して配列されていてもよい。
【0071】
上記の構成によれば、放射線検出素子とそれに対応する発光素子とを放射線の進行方向に沿って隣接して配列することにより、射出する光の向きを入射した放射線の入射方向に容易に合わせることができる。
【0072】
本発明の態様4に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、一体化されていてもよい。
【0073】
上記の構成によれば、放射線検出素子とそれに対応する発光素子とを一体化することにより、放射線検出素子とそれに対応する発光素子とを容易に隣接して配列することができる。
【0074】
本発明の態様5に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、前記放射線の進行方向と交差する方向に隣接して配列されていてもよい。
【0075】
上記の構成によれば、放射線検出素子とそれに対応する発光素子とを放射線の進行方向と交差する方向に隣接して配列することにより、射出する光の向きを入射した放射線の入射方向に容易に合わせることができる。
【0076】
本発明の態様6に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出素子と当該放射線検出素子に対応する前記発光素子とが、離間して配列されていてもよい。
【0077】
上記の構成によれば、放射線検出素子とそれに対応する発光素子とを離間して配列することにより、放射線検出素子とそれに対応する発光素子の配列の自由度が増加する。したがって、放射線カメラの構造設計の自由度が増加する。
【0078】
本発明の態様7に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出素子を前記コリメータに近い側で支持し、前記発光素子を前記放射線検出素子よりも前記コリメータから遠い側で支持する支持部を有し、前記支持部は、複数の前記発光素子の発光面にそれぞれ対向し、複数の前記放射線検出素子間の隙間に対向して設けられた複数の貫通穴を有していてもよい。
【0079】
上記の構成によれば、複雑な光軸調整作業をすることなく、発光素子からの光がピンホールの穴を通るように配列させることができる。
【0080】
本発明の態様8に係る放射線カメラにおいて、前記複数の放射線検出素子及び前記複数の発光素子が、それぞれ平面状又は曲面状に配列されていてもよい。
【0081】
上記の構成によれば、放射線検出素子又は前記発光素子を平面状に配列することにより、製造が容易となる。また、放射線検出素子を曲面状に(つまり入射部に向けて)配列することにより、放射線の検出効率が増加する。また、前記発光素子を曲面状に配列することにより、発光した光を効率よく外部へ射出できる。
【0082】
本発明の態様9に係る放射線カメラにおいて、前記コリメータは、ピンホールコリメータ、パラレルホールコリメータ、集光多孔コリメータ、及び発散多孔コリメータのうちの少なくともいずれかであってもよい。
【0083】
上記の構成によれば、いずれを用いた場合でも、射出する光の向きを入射した放射線の入射方向に合わせることが容易に可能となる。
【0084】
本発明の態様10に係る放射線カメラにおいて、前記放射線検出部が検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出するように前記発光部を制御する制御部を更に備えていてもよい。
【0085】
上記の構成によれば、制御部を放射線カメラ内部に備えることで、可搬性が向上する。また、放射線検出部、発光部、及び制御部を一体化させることで、コンパクトな構成とすることができる。
【0086】
本発明の態様11に係る放射線カメラにおいて、前記制御部は、前記放射線検出部が検出した前記放射線の強度に基づいて、前記発光部の発光時間又は発光強度を調節してもよい。
【0087】
上記の構成によれば、放射性核種の集積量ががんの悪性度と相関している場合、放射線の強度の情報はがんの鑑別に役立つと考えられる。放射線の強度に基づいて発光時間又は発光強度を調節して放射線の強度を表示することにより、より詳細な情報を得ることができる。また、強度の異なる複数の放射線が検出される環境を測定する場合に、放射線源の位置に光を投影できるため、どの位置からどの程度の放射線が出ているかを直接認識することができる。
【0088】
また、本発明の一態様に係る放射線カメラの作動方法は、コリメートされた放射線を検出するステップと、検出した放射線の入射方向の逆方向に向けて可視光を射出するステップと、を含む。より具体的には、例えば、医療用の放射線カメラの作動方法は、生体内の特定部位に集積した放射性薬剤から放出されるガンマ線をコリメートして検出するステップと、検出したガンマ線の入射方向の逆方向に可視光を射出するステップと、を含む。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,2,3,4,5,6 ガンマカメラ(放射線カメラ)
8,10,20,22,23,24 遮蔽体
8A,10A 上部
8B,10B 下部
8C,10C 先端部
8D,11 ピンホール(コリメータ)
9 筐体
10D 開口端部
12 放射線検出部
13 放射線検出素子(放射線検出部)
14,30 発光素子(発光部)
15 反射部
15A 反射板
15B 駆動部
16 制御部
22A,23A,24A 孔部(コリメータ)
32 レーザ発光素子(発光部)
40 支持部
41 貫通穴
50 線源
51 皮膚