(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】含浸紙の重合装置
(51)【国際特許分類】
B32B 39/00 20060101AFI20250128BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20250128BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20250128BHJP
B32B 21/08 20060101ALI20250128BHJP
B05C 3/18 20060101ALI20250128BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20250128BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20250128BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
B32B39/00
B32B37/02
B32B29/00
B32B21/08 102
B05C3/18
B05C9/12
B05D1/18
B05D7/00 F
(21)【出願番号】P 2023024000
(22)【出願日】2023-02-20
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】522405565
【氏名又は名称】三和合板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】高松 守
(72)【発明者】
【氏名】原田 和典
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7212425(JP,B1)
【文献】特開平4-353446(JP,A)
【文献】特開2002-1749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05C 3/18
B05C 9/12
B05D 1/18
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段により所定の搬送方向に搬送される板状の基材に、流動性材料が含浸された含浸紙を重合する含浸紙の重合装置において、
搬送中の前記基材の上面側及び下面側にそれぞれ配設された主ローラ及び従ローラを有し、給紙ロールから繰り出された長尺の紙材を前記基材の上面に重ねた状態で上下から挟持する挟持手段と、
前記挟持手段の前記搬送方向の上流側であって前記紙材が重ねられる直前位置に、前記基材の幅にわたり前記流動性材料を供給して流動性材料溜り部を形成し該流動性材料溜り部を前記紙材が通過することにより前記流動性材料を含浸させて前記含浸紙を形成する含浸手段と、
前記挟持手段の前記搬送方向の下流側に設けられ、前記挟持手段の挟持により前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する押圧手段と、
前記挟持手段の前記搬送方向の下流側に設けられ前記押圧手段の押圧により前記含浸紙から前記基材の両側への前記流動性材料の染み出しを阻止する阻止手段と
を備え、
前記流動性材料は電子ビーム硬化特性による接着性を有し、
前記押圧手段は、前記搬送方向の下流側に向かうに連れて押圧力が大きくなることを特徴とする含浸紙の重合装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する複数の押圧ローラを備えることを特徴とする請求項1に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する押圧ベルトを備えることを特徴とする請求項1に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項4】
前記含浸紙は、前記流動性材料が含浸される以前の前記紙材に所定の印刷が施されて成ることを特徴とする請求項1に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項5】
前記押圧手段の下流側に設けられ、電子ビームの照射により、前記含浸紙に含浸された前記流動性材料を硬化させる硬化手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の含浸紙の重合装置。
【請求項6】
前記硬化手段の上流側に設けられ、前記流動性材料が含浸された前記含浸紙の上面に樹脂フィルムを積層する積層手段と、
前記積層手段の下流側に設けられ前記樹脂フィルムを剥離する剥離手段と
を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項7】
前記基材は、長尺の木質板から成り所定長さごとに分離可能に形成され、
前記剥離手段の下流側に設けられ、前記基材を前記所定長さで分離する分離手段を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項8】
前記阻止手段は、前記基材の両側における前記含浸紙の端縁部分の前記流動性材料を硬化させて前記含浸紙からの前記流動性材料の染み出しを阻止するものであることを特徴とする請求項1に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項9】
前記阻止手段は、前記押圧手段の押圧により前記含浸紙から前記基材の両側に染み出す前記流動性材料を回収するものであることを特徴とする請求項1に記載の含浸紙の重合装置。
【請求項10】
前記流動性材料は、バイオマス化が50%以上であることを特徴とする請求項5に記載の含浸紙の重合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送手段により所定の搬送方向に搬送される基材に、流動性材料が含浸された含浸紙を重合する含浸紙の重合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧板は、パーティクルボードやMDFなどの木質繊維板の基材の表面に所定の印刷が施された化粧紙貼着して製造される。具体的には、例えば特許文献1に記載のように、基材の上に、基材表面の平滑性向上のためのプライマー層、耐光性に優れる隠蔽層、絵柄が施された印刷層または転写層等の化粧紙などの繊維質材を含まない着色剤層、トップコート層用の紫外線硬化樹脂塗料層を順次塗布し、紫外線硬化樹脂塗料層上にプラスチックフィルムを載置した状態で、プラスチックフィルム上においてローラを転動させて紫外線硬化樹脂塗料を展延しながら脱泡し、プラスチックフィルム上から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂塗料を硬化させてトップコート層を形成し、その後プラスチックフィルムを剥離して化粧板を製造する方法がある。
【0003】
上記した特許文献1に記載の方法では、印刷層等の着色剤層、及び、トップコート層用の紫外線硬化樹脂塗料層が2つの塗布工程を経る必要があるため、印刷による所定デザイン画施された基材を得るのに工程が複雑化する。そこで、所定のデザイン印刷を施した繊維質材(化粧紙)を予め準備し、これに紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂などを含浸させて成る含浸紙を基材上に積層することで、工程数を削減することが考えられている。
【0004】
この場合、印刷が施された繊維質材(化粧紙)を、充填槽に充填した紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂の中に浸漬(いわゆるドブ漬け)することで、紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂を含浸させて含浸紙を形成し、基材に含浸紙を重ねて紫外線や電子ビームを照射することで、含浸紙に含浸された紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂を硬化させることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パーティクルボードやMDFなどの木質繊維板の基材の表面が無数の凹凸を有し、含浸紙自体も厚みが不均一であるため、このような凹凸を有する基材上に含浸紙を積層し、更に含浸紙に均一な厚みのプラスチックフィルムを積層した状態でローラを転動させて平滑にしたとしても、ある程度は含浸紙を平滑化できるものの、紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂を硬化させて得られる化粧板の表面を良好な鏡面状態に仕上げることができず、基材に積層した含浸紙の表面をより平滑にできる手法が望まれる。
【0007】
また、含浸紙上でローラを転動させたときに、ローラの押圧により含浸紙から紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂が染み出して基材の側面や、ローラやその周辺の部材などに付着するため、樹脂を硬化した後における見栄えの低下を招き、ローラやその周辺の部材に付着した紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂を除去する作業が必要になるという問題がある。加えて、紫外線硬化樹脂や電子ビーム硬化型樹脂をドブ漬けして含浸紙を形成する手法では、充填槽の清掃作業も必要になる。
【0008】
さらに、特に紫外線硬化樹脂の場合、紫外線硬化樹脂の硬化のために紫外線を照射したときに、印刷に使用する顔料・染料の特定の色によって紫外線が遮蔽されるため、紫外線硬化樹脂の内部まで紫外線が届かずに紫外線硬化樹脂を十分に硬化させることができないおそれがある。
【0009】
一方、近年ではポリプロピレン(PP)フィルムにグラビア印刷等により所定のデザインを印刷し、これに窒素ガス雰囲気中で電子ビームを照射して分子間の架橋などの変化を生じさせることによりPPフィルムを硬化させた後、基材上に硬化したPPフィルムを重ねて接着剤により接着することによりトップコート層を形成し、PPフィルムの厚みが均一なことから、より平滑度を高めて化粧板の鏡面状態に仕上げることも考えられている。しかしながら、この場合、PPフィルムの硬化のために電子ビームを照射する工程は窒素ガス雰囲気中で行う必要があるため、窒素ガスを充填する専用チャンバなどの特別な設備が必要になり、装置が大型化しかつ高価になるという不都合が生じる。
【0010】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、基材に重合する含浸紙の平滑度を上げることができ、優れた鏡面を有する基材に仕上げられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明に係る含浸紙の重合装置は、搬送手段により所定の搬送方向に搬送される板状の基材に、流動性材料が含浸された含浸紙を重合する含浸紙の重合装置において、搬送中の前記基材の上面側及び下面側にそれぞれ配設された主ローラ及び従ローラを有し、給紙ロールから繰り出された長尺の紙材を前記基材の上面に重ねた状態で上下から挟持する挟持手段と、前記挟持手段の前記搬送方向の上流側であって前記紙材が重ねられる直前位置に、前記基材の幅にわたり前記流動性材料を供給して流動性材料溜り部を形成し該流動性材料溜り部を前記紙材が通過することにより前記流動性材料を含浸させて前記含浸紙を形成する含浸手段と、前記挟持手段の前記搬送方向の下流側に設けられ、前記挟持手段の挟持により前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する押圧手段と、前記挟持手段の前記搬送方向の下流側に設けられ前記押圧手段の押圧により前記含浸紙から前記基材の両側への前記流動性材料の染み出しを阻止する阻止手段とを備え、前記流動性材料は電子ビーム硬化特性による接着性を有し、前記押圧手段は、前記搬送方向の下流側に向かうに連れて押圧力が大きくなることを特徴としている。
【0012】
また、前記押圧手段は、前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する複数の押圧ローラを備えるとよい。
【0013】
また、前記押圧手段は、前記基材の上面に重ねられた前記含浸紙を押圧する押圧ベルトを備えるとよい。
【0014】
また、前記含浸紙は、前記流動性材料が含浸される以前の前記紙材に所定の印刷が施されて成るとよい。
【0015】
また、前記押圧手段の下流側に設けられ、電子ビームの照射により、前記含浸紙に含浸された前記流動性材料を硬化させる硬化手段を更に備えるとよい。
【0016】
また、前記硬化手段の上流側に設けられ、前記流動性材料が含浸された前記含浸紙の上面に樹脂フィルムを積層する積層手段と、前記積層手段の下流側に設けられ前記樹脂フィルムを剥離する剥離手段とを更に備えるとよい。
【0017】
また、前記基材は、長尺の木質板から成り所定長さごとに分離可能に形成され、前記剥離手段の下流側に設けられ、前記基材を前記所定長さで分離する分離手段を更に備えるとよい。
【0018】
また、前記阻止手段は、前記基材の両側における前記含浸紙の端縁部分の前記流動性材料を硬化させて前記含浸紙からの前記流動性材料の染み出しを阻止するものであるとよい。
【0019】
また、前記阻止手段は、前記押圧手段の押圧により前記含浸紙から前記基材の両側に染み出す前記流動性材料を回収するものであるとよい。
【0020】
また、前記流動性材料は、バイオマス化が50%以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、含浸手段による流動性材料溜り部を紙材が通過することで含浸紙が形成されるとともに、挟持手段の主、従ローラにより挟持されることによって含浸紙が基材の上面に重合され、押圧手段により含浸紙が押圧され、この押圧手段の押圧力が搬送方向の下流側に向かうに連れて大きくなるため、基材に重合された含浸紙の平滑度合いを高めることができる。
【0022】
このとき、流動性材料が電子ビーム硬化特性による接着性を有するため、含浸紙に予め印刷によるデザインが施されていても、流動性材料を電子ビームの照射により硬化させる際に、紫外線硬化樹脂のように印刷用インクの特定の色により電子ビームが遮蔽されることはなく、流動性材料の深くまで電子ビームが届いて流動性材料を十分に硬化させることができる。
【0023】
また、電子ビーム照射によりポリプロピレン(PP)フィルムを硬化させる場合のような窒素充填用チャンバも不要になり、簡単な構成により、基材に重合する含浸紙の平滑度を上げることができ、優れた鏡面を有する基材に仕上げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る含浸紙の重合装置の一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明に係る含浸紙の重合装置を備えた化粧板の製造装置に係る一実施形態について、
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0026】
本実施形態における化粧板の製造装置1は、
図1に示すように構成されている。
図1において、2は所定長のパーティクルボード(PB)を材間無しで長尺に連結した状態で搬送される基材、3は複数の搬送ローラ4から成り基材2を
図1中の矢印で示す搬送方向に搬送する搬送手段、5は基材2の幅よりも少し幅広(
図3参照)でインクジェットプリンタやグラビア印刷機等の周知の印刷手段による所定デザインが印刷済みの長尺の紙材6が巻回された給紙ロール、7は挟持手段であり、給紙ロール5の下方に配置され、給紙ロール5から繰り出された紙材6を、搬送中の基材2の上面に重ねた状態で基材2の上、下それぞれから所定圧力で加圧する上面側の主ローラ7a及び下面側の従ローラ7bを備える。
【0027】
ここで、両ローラ7a,7bの軸方向の長さは、
図2に示すように基材2及び紙材6の幅よりも大きく設定されている。なお、基材2は、上記したパーティクルボード以外に、MDFと称される中密度繊維板であってもよい。
【0028】
また、
図1において、10は含浸手段であり、電子ビーム硬化特性による接着性を有する電子ビーム硬化樹脂から成る流動性材料が充填された材料槽11を備えるとともに、材料槽11に一端が接続され他端が挟持手段7の主ローラ7aの上流側(基材2の搬送方向の上流側)に配置された複数の供給パイプ12を備えており、挟持手段7の上流側の紙材6が重ねられる直前位置において基材2の上面に基材2の幅にわたって材料槽11内の流動性材料を供給して後述する流動性材料溜り部を形成する。
【0029】
さらに、
図1において、14は含浸手段10の材料槽11から供給される流動性材料が、基材2の幅以上に広がることを規制して基材2の幅に留めおく規制手段であり、
図2に示すように、挟持手段7の主ローラ7aの上流側に配置されて基材2の両端部上に載置され、かつ下流側の円弧状の端面が主ローラ7aの周面に沿うように配置された規制板15,15を備え、両規制板15,15は基材2の幅よりも狭い間隔であってその間隔を可変に設けられており、主ローラ7aの上流側(基材2の搬送方向の上流側)において、基材2、両規制板15,15及び基材2に重ねられる紙材6により囲まれる領域に流動性材料溜り部16が形成される。
【0030】
そして、この流動性材料溜り部16に材料槽11から供給された電子ビーム硬化樹脂から成る流動性材料が溜り、挟持手段7の主ローラ7aが
図1、
図2中の矢印方向へ回転することによって、基材2の上面及び紙材6の下面に流動性材料が幅方向にわたって付着し、紙材6の下面に流動性材料が塗布された状態で挟持手段7の両ローラ7a,7bの加圧力が制御されることで、紙材6の下面に塗布された流動剤材料が紙材6及び基材2の幅方向に広がって紙材6に含浸されて含浸紙6aが形成されると同時に基材2上に重合される。
【0031】
ここで、順次押圧力が大きくなる後述の押圧手段により流動性材料が含浸された含浸紙6aが押圧されることにより、
図3中のハッチングで示すように、基材2の幅方向に流動性材料が少なくとも基材2の全幅に広がるように、押圧手段18の押圧力を勘案して両規制板15,15の間隔を調整しておくのが望ましい。なお、流動性材料である電子ビーム硬化樹脂として、バイオマス化が50%以上のもので、例えば、ロジン系アクリレートをはじめとする特殊変性アクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を用いるとよい。
【0032】
さらに、
図1において、18は挟持手段7の下流側(基材2の搬送方向の下流側)に設けられた押圧手段であり、基材2の上下に配置された1組目のローラ18a,8b、及びこれら両ローラ18a,18bの下流側(基材2の搬送方向の下流側)に配置された2組前のローラ18c,18dを備え、挟持手段7により基材2の上面に重ねられた含浸紙6aを押圧することにより、基材2に重合された含浸紙6aに含浸された流動性材料が基材2の全幅に広がると同時に、含浸紙6aの表面の平滑度合いが高まる。
【0033】
このとき、1組目のローラ18a,8b、及び、2組目のローラ18c,18dの押圧力は、基材2の搬送方向の下流側に向かうに連れて大きくなる、つまり挟持手段7の主、従ローラ7a,7bの押圧力よりも押圧手段18の1組目の両ローラ18a,18bの押圧力の方が大きく、1組目の両ローラ18a,18bの押圧力よりも2組目のローラ18c,18dの方がより大きくなるように押圧力が設定されており、これにより順次押圧力を大きくすることで、含浸紙6aの表面の圧縮により平滑度がより一層高まる。
【0034】
例えば、基材2がパーティクルボードから成る場合、パーティクルボードの表面には無数の凹凸があり、含浸紙6aも厚さが不均一で表面が平滑ではないが、基材2に含浸紙6aが重合された状態で、挟持手段7の主、従ローラ7a,7b、押圧手段18の各組のローラ18a,18b及びローラ18c,18dの押圧力が順次大きくなることから、基材2に重合された含浸紙6aの表面の平滑度合いが高まり、後述する硬化工程等を経ることで、基材2に硬化した含浸紙6aが重合されて優れた鏡面を有する化粧板に仕上げられる。
【0035】
図1に戻って、19は押圧手段18の下流側(基材2の搬送方向の下流側)に設けられ押圧手段18の押圧により含浸紙6aから基材2の両側への流動性材料の染み出しや漏れを阻止する阻止手段であり、電子ビームを照射して硬化させる電子ビーム照射手段を備え、基材2よりも少し幅広の含浸紙6aの両端縁付近に電子ビームを照射し、含浸紙6aの両端縁から染み出す流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)を硬化させて、流動性材料の染み出しや漏れを阻止する。
【0036】
20は樹脂フィルムである所定厚さを有する透明なPETフィルムが巻回されたPETフィルムロール、21は積層ローラであり、PETフィルムロール20の下方に配置され、PETフィルムロール20から繰り出されたPETフィルム22を、搬送中の基材2の上面の含浸紙6aの上面に重ねた状態で、上下それぞれから所定圧力で押圧してPETフィルム22を含浸紙6aに積層する上面側の主ローラ21a及び下面側の従ローラ21bを備える。ここで、PETフィルムロール20及び積層ローラ21が本発明における「積層手段」に相当する。
【0037】
また、
図1において、23は電子ビーム照射手段から成る硬化手段であり、積層ローラ21の主ローラ21aの下流側(基材2の搬送方向の下流側)に配設され、基材2に重合された含浸紙6aにPETフィルム22越しに電子ビームを照射して、含浸紙6aに含浸された流動性材料である電子ビーム硬化樹脂を硬化させて含浸紙6aを基材2に接着する。
【0038】
24は硬化手段23の下流側(基材2の搬送方向の下流側)に配置され基材2上の硬化後の含浸紙6aに積層されたPETフィルム22を剥離する剥離ローラから成る剥離手段、25は剥離手段24により剥離されたPETフィルム22を巻き取って回収する巻取ロールである。
【0039】
ところで、含浸紙6aに含浸された流動性材料が電子ビーム硬化樹脂から成るため、紫外線硬化樹脂のように、含浸紙6aに印刷された所定デザインの特定の色によって電子ビームが遮蔽されることもなく、電子ビームは含浸紙6aに含浸された電子ビーム硬化樹脂(流動性材料)の奥深くまで届いて電子ビーム硬化樹脂(流動性材料)が確実に硬化することができる。さらに、PETフィルム22を重した状態で含浸紙6aの電子ビーム硬化樹脂(流動性材料)を硬化させることにより、硬化した含浸紙6aの表面を優れた鏡面に仕上げることができる。
【0040】
図1において、27は分離手段であり、剥離手段33の下流側(基材2の搬送方向の下流側)に設けられ、含浸紙6aが重合され硬化により接着された状態の基材2を所定長さで切断するカッター及びこれを上下動させるアクチュエータを備え、分離手段27により、基材2が所定長さに分離されて表面が鏡面を有する化粧板28が形成される。ここで、基材2の幅よりも幅広の含浸紙6aは、化粧板28を形成する際に削り取るなどして除去するとよい。
【0041】
なお、PETフィルム22として、一定厚で含浸紙6aに接触する下面が平坦なフィルムを使用することにより、含浸紙6aを硬化してその表面を鏡面に仕上げることができるが、PETフィルム22として、一定厚で含浸紙6aに接触する下面が細かな凹凸を有する粗面のフィルムを使用することにより、基材2に重ねられた含浸紙6aを硬化してPETフィルムを剥離することにより、含浸紙6aの上面を鏡面ではなく艶消し面に形成することもできる。
【0042】
次に、化粧板28を形成する各工程について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
図4に示すように、基材2の材間をゼロにし(ステップS1)、含浸手段10により、基材2の上面に材料槽11に充填された電子ビーム硬化樹脂から成る流動性材料を塗布し(ステップS2)、流動性材料を塗布した基材2に紙材6を重合して挟持手段7により上下から挟持して加圧することによって、流動性材料を紙材6に含浸させて含浸紙6aを形成し(ステップS3)、押圧手段18の各組のローラにより基材2に重合した含浸紙6aを順次押圧して平滑化する(ステップS4)。
【0044】
そして、阻止手段19により、押圧手段18の押圧力によって基材2の両側から染み出す含浸紙6aの流動性材料を硬化して染み出しや漏れを阻止した後(ステップS5)、基材2上の含浸紙6aにPETフィルム22を積層し(ステップS6)、硬化手段23により電子ビームを照射することによって含浸紙6aに含浸された流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)を硬化して含浸紙6aを基材2に接着する(ステップS7)。
【0045】
その後、剥離手段24によりPETフィルム22を剥離し(ステップS8)、分離手段27により、含浸紙6aが重合された状態の基材2を所定長さで分離し(ステップS9)、所定長さの化粧板28を形成して一連の工程を終える。
【0046】
したがって、上記した実施形態によれば、含浸手段10による流動性材料溜り部16を紙材6が通過することで含浸紙6aが形成され、その際に挟持手段7の主、従ローラ7a,7bにより挟持されることによって含浸紙6aが基材2の上面に重合され、押圧手段18により含浸紙6aが押圧されるときの押圧手段18の押圧力が搬送方向の下流側に向かうに連れて大きくなるため、基材2の表面に凹凸があっても基材2に重合された含浸紙6a表面の平滑度合いをより一層高めることができる。
【0047】
そのため、平滑化された含浸紙6aにPETフィルム22を積層して含浸紙6aに含浸された流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)を硬化させ、含浸紙6aを基材2に接着して得られる化粧板28を優れた鏡面に仕上げることができる。
【0048】
さらに、電子ビーム照射によりポリプロピレン(PP)フィルムを硬化させる場合のような専用チャンバも不要になることから、簡単な構成により、基材2に重合する含浸紙6aの平滑度を上げることができ、優れた鏡面を有する化粧板28に仕上げることが可能になる。
【0049】
また、含浸紙6aに含浸される流動性材料が電子ビーム硬化特性による接着性を有するため、含浸紙6aに予め印刷によるデザインが施されていても、流動性材料を硬化手段23による電子ビームの照射により硬化させる際に、紫外線硬化樹脂のように印刷用インクにより遮蔽されることがなく、流動性材料を十分にむらなく硬化させることができる。さらに、紙材6に事前に所定のデザインを施しておくことができるので、汎用性に優れる。
【0050】
また、規制手段14により、含浸手段10によって供給される流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)が、基材2の幅以上に広がるのを規制して基材2の幅に留めおくことができるため、流動性材料が基材2の幅から溢れ出すのを防止することができて、流動性材料の無駄をなくすことができる。このとき、両規制板15の間隔を調整することで、含浸紙6aの幅に応じ、押圧手段18により押圧した後の含浸紙6aに含浸された流動性材料を含浸紙6aの全幅に広げることができる。
【0051】
さらに、挟持手段7の主ローラ7aに流動性材料が直接触れることがないため、これらを清掃する必要がなく、また廃棄物が出ないので作業効率の向上を図ることができる。また、基材2が長尺のまま搬送手段3により搬送されつつ含浸紙6aが流動性材料の硬化によって基材2に接着されるため、いずれの工程においても流動性材料が基材2の両側に溢れ出す余地がなくなり、より効果的に流動性材料の無駄を防止することができる。
【0052】
また、PETフィルム22の含浸紙6a側の面を粗面にしておけば、鏡面ではなく艶消し面を有する化粧板28や、凹凸による所定のデザインを有する化粧板28を形成することもでき、デザイン性に優れ種々の用途に使用可能な化粧板を容易に形成することができる。
【0053】
また、流動性材料である電子ビーム硬化樹脂として、バイオマス化が50%以上のものを使用するため、従来のメラミン化粧板(低圧、高圧メラミン化粧板)の製造時のような電気消費量と石油由来樹脂の使用量を抑制することが可能になり、環境に優しい製造プロセスと製品を提供することが可能になり、SDGsの趣旨に合致する。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0055】
例えば、上記した実施形態では、化粧板の製造装置に本発明を適用した例を示したが、本発明の適用は化粧板の製造に限定されるものではない。
【0056】
また、阻止手段19は、上記した電子ビーム照射手段を備えたものに限らず、基材2の両側における含浸紙6aの端縁部分の流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)に、光重合開始剤を塗布するなどして添加し紫外線照射により硬化し易くする手段と、光重合開始剤を添加した染み出し後の流動性材料に紫外線を照射して硬化させる紫外線を照射する紫外線LEDとを備えたものであってもよい。
【0057】
こうすると、電子ビーム硬化樹脂は光重合開始剤が添加されていない点において紫外線硬化樹脂と異なるだけであることから、含浸紙6aの両端縁部分の流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)に、光重合開始剤を塗布するなどして添加し紫外線照射により硬化できるようにしておき、紫外線の照射により硬化させて含浸紙6aの両端縁からの流動性材料(電子ビーム硬化樹脂)の染み出しや漏れを阻止することができる。
【0058】
また、他の実施形態として、含浸手段10、挟持手段7、押圧手段18、阻止手段19、PETフィルムロール20、積層ローラ21の主ローラ21a、従ローラ21b、硬化手段23、剥離手段24及び巻取ロール25から成る構成を、基材2の搬送方向に複数段備えていてもよい。
【0059】
このとき、複数の含浸紙6aを基材2上に積層して接着することができ、各含浸紙6aに異なるデザインを施しておくことにより、デザインの組み合わせによって仕上がる化粧板28のデザインを多様化することができる。
【0060】
また、阻止手段19は上記した構成に限らず、押圧手段18の押圧により含浸紙6aから基材2の両側に押し当てられて、基材2の両側から染み出す流動性材料をはぎ取ってそれ以上の染み出しを阻止するへら状の部材や、基材2の幅以上にはみ出た含浸紙6aを染み出す流動性材料ごと切り取る手段、基材2の両側を転動して染み出す流動性材料を吸い取って染み出しを阻止するスポンジ状のローラを備えたものであってもよい。
【0061】
また、PETフィルム22に代えて、電子ビームが透過可能なその他の樹脂フィルムを積層するようにしてもよい。
【0062】
そして、搬送手段により所定の搬送方向に搬送される板状の基材に、流動性材料が含浸された含浸紙を重合する含浸紙の重合装置に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 …基材
3 …搬送手段
4 …搬送ローラ
6 …紙材
6a …含浸紙
7 …挟持手段
7a …主ローラ
7b …従ローラ
10 …含浸手段
16 …流動性材料溜り部
18 …押圧手段
19 …阻止手段
20 …PETフィルムロール(積層手段)
21 …積層ローラ(積層手段)
22 …PETフィルム(樹脂フィルム)
23 …硬化手段
24 …剥離手段
27 …分離手段
28 …化粧板