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特許7626512チューニング調整回路を有するワイヤレス給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】チューニング調整回路を有するワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20250128BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20250128BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
H02J50/12
H01F38/14
H02J7/00 301D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024566572
(86)(22)【出願日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2024015032
【審査請求日】2024-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2023069355
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518371951
【氏名又は名称】株式会社レゾンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】関沢 康史
(72)【発明者】
【氏名】原田 潔
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第7141156(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/068992(WO,A1)
【文献】特開2015-154525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H01F 38/14
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、
前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器と
からなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の受電回路部は、
前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサー
を有し、
前記給電器の前記給電回路部は、
前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、
前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すべくダイオードを含むスイッチ回路と、
前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、
前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、
前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路と
を有することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項2】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、
前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器と
からなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の受電回路部は、
前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサー
を有し、
前記給電器の前記給電回路部は、
前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、
前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、
前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、
前記給電器の入力電圧を安定化する電圧安定化回路と、
前記給電器の電圧を検知する電圧センサーと、
前記給電器の電流を検知する電流センサーと、
前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整するとともに、前記電圧センサー及び前記電流センサーの検知結果に基づいて前記電圧安定化回路を作動させる制御回路と、
前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路と
を有することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項3】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、
前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器と
からなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の前記受電回路部は、
前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーと、
前記受電コイルに発生した電流を整流する整流回路と、
周波数調整素子を有し、前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路と
を有し、
前記給電器の前記給電回路部は、
前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、
前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、
前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、
前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、
前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路と
を有することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、
前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器と
からなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の受電回路部は、
前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサー
を有し、
前記給電器の前記給電回路部は、
前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、
前記受電コイルに発生した電流を整流する整流回路と、
周波数調整素子を有し、前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路と
を有し、
前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、
前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、
前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、
前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記駆動パルス信号の周期が、前記受電側共振周期に一致するように調整した駆動パルス信号周期調整状態を維持する給電側チューニング調整回路と
を有し、
前記給電側チューニング調整回路が前記駆動パルス信号周期調整状態を維持している状態で前記フライバック切替スイッチをショートカット側として使用可能としたことを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
請求項3に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記給電器の前記給電回路部は、
入力電圧を上げ下げする給電器側電圧安定化回路と、
前記受電器の負荷状態に応じて変化が生じる、前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値の複数の閾値によって、前記駆動パルス信号を入力するタイミングを変化させ、前記給電側共振回路の共振周波数をずらす事で、給電能力を制御する給電能力制御回路と、
前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値が、所定の閾値を超えた場合には、前記給電器側電圧安定化回路を制御して、入力電圧を下げる給電器側電圧安定化回路制御回路と
を有し、
前記受電器の前記受電回路部は、
前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路によって、受電能力を制御する受電能力制御回路
を有し、
前記給電能力制御回路、前記給電側電圧安定化回路制御回路及び前記受電能力制御回路の複合制御によって、前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧を一定の電圧値を超えないようにすることを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
請求項4に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記給電器の前記給電回路部は、
入力電圧を上げ下げする給電器側電圧安定化回路と、
前記受電器の負荷状態に応じて変化が生じる、前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値の複数の閾値によって、前記駆動パルス信号を入力するタイミングを変化させ、前記給電側共振回路の共振周波数をずらす事で、給電能力を制御する給電能力制御回路と、
前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値が、所定の閾値を超えた場合には、前記給電器側電圧安定化回路を制御して、入力電圧を下げる給電器側電圧安定化回路制御回路と
を有し、
前記受電器の前記受電回路部は、
前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路によって、受電能力を制御する受電能力制御回路
を有し、
前記給電能力制御回路、前記給電側電圧安定化回路制御回路及び前記受電能力制御回路の複合制御によって、前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧を一定の電圧値を超えないようにすることを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に1記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態の場合、
前記受電側共振周期(t3)が、前記スイッチ回路のオフの時間、すなわち前記給電器の共振状態の時間(t2)に駆動状態の時間(t1)を合計した時間(t1+t2)に対して、0.9(t1+t2)=<t3=<1.1(t1+t2)が成立するように作用し、
前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードをショートカットする側に切り替えた状態の場合、
前記受電側共振周期(t3)が、前記給電器の共振状態の時間(t2)に対して、0.6(t2)=<t3=<1.1(t2)が成立するように作用することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態の場合、前記給電器の駆動時間、即ち駆動パルスをオンとする時間は、前記受電器の共振周波数の周期の40%以下とし、
前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードをショートカットする側に切り替えた状態の場合、 前記給電器の駆動時間、即ち駆動パルスをオンとする時間は、前記受電器の共振周波数の周期の50%以下とし、
当該範囲で、給電範囲、給電距離、給電コイル及び受電コイルの仕様を考慮した給電効率及び前記受電器の出力電力が高まる駆動時間になるように駆動時間を調整する駆動時間調整回路をさらに有することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載する並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記給電器の前記給電コイルは、1巻きから12巻き以下のコイルで構成されるものであり、当該給電コイルのコイルサイズは、前記受電器の前記受電コイルのサイズより大きいことを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項10】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記チューニング調整回路は、
前記給電器の前記給電コイルと、前記受電器の前記受電コイルとの結合係数Kが、K=0.3(30%)以下の範囲、又はそれに近づける結合係数Kで、所望する給電効率及び受電器の出力電力が所定以上になるように、給電範囲、給電距離、前記給電コイル及び前記受電コイルの仕様を定め、かつ給電効率が高まる駆動時間になるように、前記給電コイルのインダクタンスを調整することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項11】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の前記受電コイルは、
コイルの両端の2点及び巻き数の中間から引き出した1点の合計3点を接点としたコイルであり、引き出す巻き数比によって、出力される電圧値又は電流値を調整する事を特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【請求項12】
請求項11に記載した並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、
前記受電器の前記受電コイルは、コイルの両端の2点及び巻き数の中間から引き出した1点の合計3点を接点としたコイルであり、引き出す巻き数比に応じて形成された2つのα巻コイルを、重ね合わせ、一方の引き出し線同士を接続し、3点を接点とした受電コイルである事を特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電、とりわけ共振方式の誘導結合により給電するワイヤレス給電に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電の技術においては、種々の方法、方式に基づいた装置が、数多く提案されている。その中でも、電磁誘導を使った方法は、広く一般的に知られている。また、その中で、電磁誘導による共振の技術を用いた方法が代表的でありさまざまな名称で呼ばれている。本発明では、LC共振回路を用いた磁気結合を用いた技術を前提とする。
【0003】
特許文献1には、電磁界共振による結合で比較的遠距離に給電できるワイヤレス給電にあって、より幅広い周波数の利用拡大を可能とするワイヤレス給電の方法及び給電システムが開示されている。電磁界共振ワイヤレス給電方法は、送電デバイスの送電回路と受電デバイスの受電回路とが電磁界共振で結合されるワイヤレス給電にあって、送電デバイスを、電源2に異なる2つの周波数成分f1及びf2を用い、送電回路の共振周波数をf1及び/又はf2とし、送電回路の条件を周期的に変化させて電流又は電圧の安定しない電気的過渡状態とし、受電デバイスを、受電回路の共振周波数をうなり現象による(f2-f1)又は(f1+f2)とし、該(f2-f1)又は(f1+f2)の周波数による電力を負荷に供給することを特徴とするものである。
【0004】
特許文献2には、電力伝送デバイスとしてループコイルを用い、非常にシンプルなワイヤレス給電器が開示されている。送電装置に設けられている送電ループコイルは、直流電源から電気エネルギーを取り出して、周期的に変化する電磁界共鳴エネルギーを空間に発生させる。受電器に設けられている受電ループコイルは、周期的に変化する電磁界共鳴エネルギーを空間から電気エネルギーとして取り出して負荷に電力を供給する。送電ループコイルと受電ループコイルとは電磁界共鳴結合し、送電装置から受電器へワイヤレスで電力が給電される。
【0005】
特許文献3には、複数の中継装置を備えるワイヤレス給電システムであって、中継装置による電力の伝送効率の低下を抑制するワイヤレス給電システムが開示されている。給電される電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された前記電力を中継する複数の中継装置と、前記中継装置で中継された前記電力を受電する受電器と、前記中継装置を経由して前記送電装置から前記受電器に前記電力を伝送する複数の伝送経路において前記電力の伝送効率が最も高くなる前記伝送経路で電力伝送するように前記中継装置を制御する制御装置と、を備えるものである。
【0006】
特許文献4には、磁気共振型ワイヤレス給電システムの電力の伝送効率を上昇させる技術が開示されている。磁気共振型ワイヤレス給電システムは、交流電源と、交流電源に接続される電圧変換用コイルと、送電側LC回路と、受電側LC回路と、インピーダンス変換用コイルと、インピーダンス変換用コイルに接続される負荷と、負荷に並列に接続される伝送効率調整用コンデンサーとを備える。送電側LC回路は、電圧変換用コイルの近傍に配置され、電圧変換用コイルとの間の電磁誘導により励起される送電側コイル及び送電側コンデンサーを有する。受電側LC回路は、送電側コイルと共振する受電側コイル及び受電側コンデンサーを有する。インピーダンス変換用コイルは、受電側LC回路の近傍に配置され、受電側コイルとの間の電磁誘導により励起される。伝送効率調整用コンデンサーは、交流電源から負荷への電力の伝送効率を上昇させるような容量を有する。
【0007】
特許文献5には、磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器とからなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、前記受電器の受電回路部は、前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーを有し、前記給電器の前記給電回路部は、前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路とを有することを特徴とする並列共振回路のワイヤレス給電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-163647号公報
【文献】特開2017-028998号公報
【文献】特開2017-028770号公報
【文献】特開2014-176122号公報
【文献】特許第7141156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子機器には、バッテリーを内蔵して用いるものがある。そのようなバッテリーは、放電して消耗すると、充電する為に電子機器を専用充電器に取り付けて充電するのが一般的である。
また、昨今では、ワイヤレス給電を使ったバッテリーの充電方法が提唱されている。専用のコイルと電気回路を、給電側の充電装置、受電側の電子機器に備えて実現される。
【0010】
ワイヤレス給電のために、共振回路を用いることがある。給電器の側の共振回路は、直列共振回路とするか、並列共振回路とするかの選択がなされる。直列共振回路は、大容量のエネルギーを送りやすい反面、損失が大きい。一方、並列共振回路は、その逆であって、比較的小容量のエネルギーを送るのに用いられ、安定した共振状態を作りやすいという特徴を持つ。
従来の一般的なワイヤレス給電では、給電器側に直列共振回路を採用することが一般的であった。また、共振状態を検出して、周波数を調整することを行う方法がとられている。これは、受電器側の位置や姿勢によって、共振周波数が変動するからであると共に、受電装置のフェライトコイルは、非常に材料や巻き線の具合で、電気的性能にばらつきがある為に、共振周波数がずれると給電効率が悪くなる為に、給電器側で共振周波数を合わせる処理を行う。
本発明の発明者は、給電器側に並列共振回路を採用することを前提にして、特許文献5において、給電器側にチューニング調整回路を設けることを提案した。
【0011】
並列共振回路を用いて100ワット以上の様な高い電力のワイヤレス給電を行おうとする際に、共振状態で受電器側が無負荷又は軽負荷になると、給電コイル、受電コイル共に電圧が上昇してしまうために、受電器のDCDCコンバーターを破損させてしまうという課題がある。
本発明の課題は、受電器側の電圧(DCDCコンバーターへの入力電圧)を上昇させないワイヤレス給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、給電器側に並列共振回路を採用すると共に、給電器側の駆動電流を供給するにあたって共振方式とフライバック方式とを切り替える、給電器側の入力電圧の安定化を図る、受電側の共振周波数を調整する、そのタイミングや調整方法と、共振周波数の調整方法に工夫をすることにより、課題を解決した。
【0013】
本発明に係る並列共振回路のワイヤレス給電システムは、磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器とからなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、前記受電器の受電回路部は、前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーを有し、前記給電器の前記給電回路部は、 前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すべくダイオードを含むスイッチ回路と、 前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、 前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路とを有することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0014】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器とからなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、前記受電器の受電回路部は、 前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーを有し、前記給電器の前記給電回路部は、前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、前記給電器の入力電圧を安定化する電圧安定化回路と、前記給電器の電圧を検知する電圧センサーと、前記給電器の電流を検知する電流センサーと、前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整するとともに、前記電圧センサー及び前記電流センサーの検知結果に基づいて前記電圧安定化回路を作動させる制御回路と、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路とを有することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0015】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器とからなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、前記受電器の前記受電回路部は、前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーと、前記受電コイルに発生した電流を整流する整流回路と、周波数調整素子を有し、前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路とを有し、前記給電器の前記給電回路部は、前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記給電側共振周期と前記駆動パルス信号のパルス幅との合計が前記受電側共振周期に一致するように調整する給電側チューニング調整回路とを有することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0016】
磁束を発生する給電コイルと、該給電コイルに磁束を発生させるべく電力を供給する給電回路部とを有する給電器と、前記給電コイルから発せられた磁束を受け取る受電コイルと、電磁誘導により該受電コイルに発生したエネルギーを回収する受電回路部とを有する受電器とからなり、共振現象を用いた電磁誘導により、前記給電器から前記受電器へ電気的エネルギーを供給するワイヤレス給電システムであって、前記受電器の受電回路部は、 前記受電コイルとの組み合わせで受電側共振周期で共振するように受電側共振回路を形成する受電側共振用コンデンサーを有し、前記給電器の前記給電回路部は、前記給電コイルとの組み合わせで給電側共振周期で共振するように給電側並列共振回路を形成する給電側共振用コンデンサーと、前記受電コイルに発生した電流を整流する整流回路と、周波数調整素子を有し、前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路とを有し、前記給電器の給電コイルに対して、駆動電流を流すスイッチオン状態と、駆動電流を切るスイッチオフ状態とを、前記受電側共振周期を周期として、交互に繰り返すスイッチ回路と、前記スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチと、前記スイッチ回路に対して、オンとオフを制御する駆動パルス信号を入力し、当該駆動パルス信号を入力するタイミングを調整する制御回路と、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態で前記給電側共振用コンデンサーの容量又は前記給電コイルのインダクタンスの微調整を行い、前記駆動パルス信号の周期が、前記受電側共振周期に一致するように調整した駆動パルス信号周期調整状態を維持する給電側チューニング調整回路とを有し、前記給電側チューニング調整回路が前記駆動パルス信号周期調整状態を維持している状態で前記フライバック切替スイッチをショートカット側として使用可能としたことを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0017】
前記並列共振回路のワイヤレス給電システムであって、前記給電器の前記給電回路部は、入力電圧を上げ下げする給電器側電圧安定化回路と、前記受電器の負荷状態に応じて変化が生じる、前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値の複数の閾値によって、前記駆動パルス信号を入力するタイミングを変化させ、前記給電側共振回路の共振周波数をずらす事で、給電能力を制御する給電能力制御回路と、前記給電器の前記電圧センサーの電圧値、若しくは前記電流センサーの電流値が、所定の閾値を超えた場合には、前記給電器側電圧安定化回路を制御して、入力電圧を下げる給電器側電圧安定化回路制御回路とを有し、前記受電器の前記受電回路部は、前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧値がある閾値以上になった時に、前記周波数調整素子を活かすかショートカットするかを制御する受電側周波数調整回路によって、受電能力を制御する受電能力制御回路を有し、前記給電能力制御回路、前記給電側電圧安定化回路制御回路及び前記受電能力制御回路の複合制御によって、前記受電器の負荷状態に応じて生じる、前記受電器の前記整流回路から出力される電圧を一定の電圧値を超えないようにすることを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0018】
前記ワイヤレス給電システムであって、前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態の場合、前記受電側共振周期(t3)が、前記スイッチ回路のオフの時間、すなわち前記給電器の共振状態の時間(t2)に駆動状態の時間(t1)を合計した時間(t1+t2)に対して、0.9(t1+t2)=<t3=<1.1(t1+t2)が成立するように作用し、前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードをショートカットする側に切り替えた状態の場合、前記受電側共振周期(t3)が、前記給電器の共振状態の時間(t2)に対して、0.6(t2)=<t3=<1.1(t2)が成立するように作用することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0019】
前記ワイヤレス給電システムであって、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードを活かす側に切り替えた状態の場合、前記給電器の駆動時間、即ち駆動パルスをオンとする時間は、前記受電器の共振周波数の周期の40%以下とし、前記給電側チューニング調整回路は、前記フライバック切替スイッチを前記ダイオードをショートカットする側に切り替えた状態の場合、 前記給電器の駆動時間、即ち駆動パルスをオンとする時間は、前記受電器の共振周波数の周期の50%以下とし、当該範囲で、給電範囲、給電距離、給電コイル及び受電コイルの仕様を考慮した給電効率及び前記受電器の出力電力が高まる駆動時間になるように駆動時間を調整する駆動時間調整回路をさらに有することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0020】
前記ワイヤレス給電システムであって、前記給電器の前記給電コイルは、1巻きから12巻き以下のコイルで構成されるものであり、当該給電コイルのコイルサイズは、前記受電器の前記受電コイルのサイズより大きいことを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0021】
また、前記ワイヤレス給電システムであって、前記チューニング調整回路は、前記給電器の前記給電コイルと、前記受電器の前記受電コイルとの結合係数Kが、K=0.3(30%)以下の範囲、又はそれに近づける結合係数Kで、所望する給電効率及び受電器の出力電力が所定以上になるように、給電範囲、給電距離、前記給電コイル及び前記受電コイルの仕様を定め、かつ給電効率が高まる駆動時間になるように、前記給電コイルのインダクタンスを調整することを特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0022】
さらに、前記ワイヤレス給電システムであって、前記受電器の前記受電コイルは、コイルの両端の2点及び巻き数の中間から引き出した1点の合計3点を接点としたコイルであり、引き出す巻き数比によって、出力される電圧値又は電流値を調整する事を特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【0023】
さらにまた、前記ワイヤレス給電システムであって、前記受電器の前記受電コイルは、コイルの両端の2点及び巻き数の中間から引き出した1点の合計3点を接点としたコイルであり、引き出す巻き数比に応じて形成された2つのα巻コイルを、重ね合わせ、一方の引き出し線同士を接続し、3点を接点とした受電コイルである事を特徴とする。
これにより、共振の極大における電圧の上昇を避けることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のワイヤレス給電システムでは、給電器の駆動方法と、共振周波数の調整方法によって、給電器側に並列共振回路を採用したワイヤレス給電でありながら、電力が高出力のワイヤレス給電を実施する場合の受電器側の電圧の上昇を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のワイヤレス給電システムの基本回路構成図である。
図2】フライバック切替スイッチがOFFの場合の給電側の基本波形図である。
図3】フライバック切替スイッチがONの場合の給電側の基本波形図である。
図4】受電器の回路図(A)である。
図5】受電器の回路図(B)である。
図6】受電器の受電コイルの図である。
図7】周波数調整機能の説明図(A)である。
図8】周波数調整機能の説明図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のシステムを実現するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明にかかるワイヤレス給電システムの基本回路構成図を示した図である。
本発明にかかるワイヤレス給電システムは、給電器10と受電器2との組み合わせで構成される。給電器10から電気的エネルギーを受電器2に供給する。
図1に示すように、受電器2は、受電コイル1、受電側共振用コンデンサー3、整流回路4、バッテリー等の負荷5、受電側周波数調整回路8とから構成される。
受電側共振用コンデンサー3は並列に単数または複数のコンデンサーで構成されている。受電側周波数調整回路8は、コンデンサー若しくはインダクタ素子である周波数調整素子とFETのスイッチング素子とで構成される。
受電器2側の特徴的な点がいくつかある。
第一に、受電器2には、何等かのバッテリー等の負荷5を搭載する。
第二に、受電器2に設けられる受電コイル1と、給電器10の給電コイル11の大きさや素材、電気的仕様は、給電範囲、給電距離、給電能力に応じて設計される。
第三に、受電器2の受電コイル1と受電側共振用コンデンサー3は、いわゆる共振器(LC共振回路)の構成となり、所定の共振周波数で良い特性となる仕様の構成とする。(給電器の給電コイル11と給電側共振用コンデンサー14とについても同様である。)
第四に、受電器2が並列共振回路である場合の整流回路は、半波整流で良い。
本発明では、許容される共振周波数のずれ幅が大きい為、製造される電気的性能のばらつき、いわゆる歩留まりの課題に対しても、十分、現実的に対応可能である。よって、機種毎に、共振周波数を定めていく事も考えられる。
【0027】
給電器10は、給電コイル11、給電コイル11とともに共振回路を構成する共振用コンデンサー14、給電コイル11に電力をオン、オフするためのスイッチ回路12、スイッチ回路12を操作する制御回路17、電圧安定化回路19を有している。共振用コンデンサー14は並列に単数または複数のコンデンサーで構成されている。制御回路17には、スイッチのオン・オフのタイミングを作る周波数調整回路15(たとえばPLL回路を含む回路)が接続される。制御回路17に含まれる形で、共振状態を検出する共振状態センサー16がある。これは、例えば位相検波回路で構成される。共振状態センサー16には、電流センサー19と、電圧センサー20とが接続される。また、給電コイル11に電力を供給し、各回路に必要な電源を供給する電源18が給電器10には設けられる。
給電器10側の特徴を挙げる。
第一に、給電コイル11と共振用コンデンサー14とは、並列共振回路を構成する。
第二に、スイッチ回路は一つである。このスイッチをオンした時は駆動状態、オフした時は共振状態とする。
第三に、制御回路17により、周波数調整回路15のタイミングを使い、スイッチ回路14の制御を行い、駆動状態と共振状態のタイミング制御を行う。
第四に、共振状態(主に周波数のずれ)を検知する共振状態センサー16を有し、制御回路17は、共振状態センサー16の検知結果に基づいて、給電を停止する制御や共振周波数を調整する制御を行う。
【0028】
図1は、基本的な回路図(ブロック図に近い)を示している。基本的な回路では、給電コイル11が備わり、磁束を発生させ、電磁誘導を起こす。少なくとも給電器10の電気回路には、給電側共振用コンデンサー14と電源18が備わり、受電器2の受電コイル1に対し、一定の周波数による共振関係を作る。この時の周波数を共振周波数と称し、一般的には、人体に影響の少ない長波と言われる数十kHzから300kHzまでの周波数を使う。これを基準共振周波数とすれば、本発明において用いる基準共振周波数は、特に限定されるものではない。一方、後述の、給電器側の共振周波数と受電側の共振周波数は、通常ならば、同じ共振周波数に合わせるところ、所定のタイミング時間に基づいた、ずれた形での共振周波数とする点に、本発明の重要な特徴がある。
受電器2の位置関係や状態で、共振周波数に若干のずれが生じる。例えば、その受電器2の受電コイル1の位置や傾きで状況が変わってくる。そこで、給電コイル11から送出される磁束が届く範囲内に、受電コイル1が入れば、エネルギーを供給可能となる。この時、コイル巻き線同士の磁気結合状態は、その結合の度合いを示す係数を一般的に結合係数(K)という。本発明においては、給電効率を高める所定の結合係数の決め方に関しても特徴を有している。
磁束に受電コイル1が入ることは、共振周波数のずれという形で給電器10側に影響を与える。共振周波数がずれれば、エネルギー供給の効率が下がる。
そこで、ずれた周波数や位相を共振状態センサー16(たとえば、位相検波回路を含む回路)で検出し、その周波数や位相に応じて、給電コイル11の共振周波数の調整を行う。例えば、共振用コンデンサー14を変化させる事で調整ができる。
この調整とは、チューニングともいい、製造時に行うものと、動作時に調整回路によって自動で制御する方法があるが、総称として、チューニング調整回路と称する。共振用コンデンサーは単数または複数のコンデンサーで構成されているが、最も単純なチューニング方法は、予め幾種のコンデンサーを並列に接続しておいて、所定の共振周波数になる様に、製造時に不必要なコンデンサーをパターンカットして無効にし、共振周波数になる様に調整する方法がある。また、トリマーコンデンサー、バリコン等を配置して、調節つまみで、手動で調整する方法もある。
また、動作時に調整回路によって自動で制御する方法としては、予め幾種のコンデンサーとスイッチの対を並列に接続しておいて、調整回路が各コンデンサーに直列に接続されたスイッチを制御する事で、所定の共振周波数とする方法がある。また、別な方法としては、バリコンの調節つまみにサーボモーターを取り付けて、調整回路がサーボモーターを制御する事で、所定の共振周波数とする方法がある。
一方、受電側は、製造時に調節する方法を取るケースが多いが、予め、受電コイルのインダクタンスを測定しておいて、それに合わせたコンデンサーを、未実装部分に実装するという方法も、広義にチューニング調整回路と言える。
コンデンサーを並列に接続する事で、内部抵抗を軽減し、より発熱を抑える効果もある。
また、周波数調整回路15は、例えば、PLL(フェーズロックトループ)回路を内蔵した回路によって、駆動状態の時間を長くしたり、短くしたりする事で、給電能力(電力)の調整が可能である。場合によっては給電コイル11を複数持たせて切り替える事で共振周波数を変える事も考えられる。ここでも、周波数調整による最適な共振周波数の調整値は、後述の所定のタイミング時間に基づいた、ずれた形での共振周波数とするところが本発明の特徴である。
【0029】
周波数(又は位相)の調整には、様々な要素を加味する必要がある。したがって、マイクロコントローラ(プロセッサ、メモリ、周辺回路を含む集積回路)又はプログラマブルロジックデバイス(内部論理回路を定義・変更できる集積回路)などを用いて、プログラムによる制御を行う制御回路17を設けることが好ましい。制御回路17は、共振状態センサー16(位相検波回路)と接続されている。共振状態センサー16が周波数のずれや位相のずれを感知して、制御回路17にその信号を伝える。それにより、所定の受電器10以外の物体が近づいたときに、異常な周波数や位相を共振状態センサー16が検知して、その信号を制御回路17に伝えて、制御回路17が電源18に作用して給電を停止することが可能となる。
本発明のワイヤレス給電システムは、図1に示す基本回路により構成される。給電器10の共振用コンデンサー14の位置が、給電コイル11と並列に接続されている事である。この共振用コンデンサー14を配置している回路は、一般的に並列共振回路と称されている。一方、良く利用されているワイヤレス給電システムでは、直列共振回路を形成していて、この共振用コンデンサーの位置が、コイルと直列に配置されている。
この並列共振回路の場合、SW1をオンして安定的な共振状態になった後に、SW1をオフした場合、受電コイル1とコンデンサー3に蓄えられたエネルギーが放出する間、受電器2との共振状態を給電器10が続ける事が特徴である。ここで、給電コイル11と並列に接続されている共振状態センサー16が検出した共振状態の遷移を元に、制御回路17は、共振用コンデンサーや、周波数調整回路(PLL回路)15による駆動状態のタイミング制御を通して、適した周波数の電源供給を実現する。この共振状態センサー16は、共振状態を検出するセンサーであり、電圧・電流の遷移の検出及び共振周波数の位相検波などを検出する。
【0030】
図1の受電器2の共振周波数の位相のずれは、明確に知ることは難しい。しかし、共振状態センサー16から得られる、様々な状況をあらかじめシミュレートして、それに基づくプログラミングをすることにより、共振周波数を上げるか下げるかそのままにするかの単純な判断を下す処理をすることができる。そして、さらにその調整後の結果の遷移を検出することで、適合か不適合かを判断し、試行錯誤による制御をすることができる。
【0031】
また、制御回路17が制御して、共振用コンデンサー調整する場合、特殊な部品である、細かく制御できるバリコン(電極の一方を動かすことによって、電気容量を変えられるコンデンサー)などが理想的であるが、現在のところ、現実的な部品は少ない為、あえて、調整せずに、固定周波数として利用するとしても、十分、ニーズに応えられる仕様値を提示できる。
また、複数のコイルを切り替えてしまう方法も考えられる。
また、駆動時間を調整する事でも共振周波数を調整する事になる。
【0032】
図1のスイッチ回路12の詳細例は、NチャンネルのMOSFETとショットキーバリアダイオードで構成される。また、受電器2の整流回路4の詳細例では、コンデンサーと電圧安定化回路6と、ショットキーバリアダイオード7とで構成される。ショットキーバリアダイオード7は整流ダイオードであっても良い。そしてこれらは、一例であって、製品仕様によって、適した構成とする。
100ワット以上の様な高い電力のワイヤレス給電を実施する場合の受電器側の電圧の上昇を抑えるという課題を実現すべく、本発明の一つの特徴として、スイッチ回路12を校正するショットキーバリアダイオードを生かすか、ショートカットするかを切替えるフライバックスイッチを設けた。ショットキーバリアダイオード素子が生かされた場合、「共振方式」と称し、ショットキーバリアダイオード素子がショートカットされた場合「フライバック方式」と称する。フライバックスイッチ13(SW2)は、電子的なスイッチとして設けて切り替えることとしても良いし、ジャンパーピンなどによる手動でのショートでも良い。場合によっては、フライバック方式のみ使う場合は、ダイオードを実装せず、ショートパターンを実装するのでも良い。
共振方式の場合の給電側の基本波形図(SW2=OFFの場合)は、後述する図2の波形図となる。フライバック方式の場合、図3「給電側の基本波形図 SW2=ONの場合」の波形図となる。図2図3については、後に詳しく述べるが、共振方式の場合、給電範囲が、給電コイルの内径に、受電コイルの内径の一部が入っている事で給電が可能で、給電距離も大きく取れる。その一方、電圧制御が難しく、受電装置側が、無負荷や軽負荷になった時、または、給電距離が急激に変化した時に、共振の作用によって、暴走したように急激に電圧上昇がおきる事がある。
フライバック方式の場合、給電範囲が、給電コイルの内径に受電コイルが全て入る範囲で給電が可能で、給電範囲、給電距離とも、共振方式よりは小さい。その一方、電圧制御はやりやすく、受電装置側が、無負荷や軽負荷になった時に、電圧上昇は起きるものの、一定の法則性がある為、制御がやりやすい。
「共振方式」にて、給電器と受電器との最適な共振周波数のずれを、実測かシミュレーションで導き出す。その共振周波数に合わせて共振コンデンサーを実装することができる。このことは「フライバック方式」でも同様である。
また、本方式によれば、コイルにおけるインダクタンスは高くなくても良く、できれば、コイルは低抵抗であれば要件を満たすし、低損失などの効果も高い。そこで、1巻きから12巻き以下の巻き数で、低抵抗素材の線材と使ったコイルと、それに合わせた共振用コンデンサーとの組み合わせとする事で、より、効果を出す事が可能である。特に、給電器側の給電コイルにおいては、受電コイルより大きいサイズの、前記給電コイルとすれば、複数の受電器に対して、高い効率の給電が可能となる。
【0033】
100ワット以上の様な高い電力のワイヤレス給電を実施する場合の受電器側の電圧の上昇を抑えるという課題を実現すべく、本発明の特徴の一つとして、給電装置回路に、電圧安定化回路19を設けた。制御回路によって、電圧安定化回路(例えばDCDCコンバーター)を作用して、入力電圧を調整する事で、ワイヤレス給電の能力を操作する事ができる。入力電圧の操作によって、受電側が無負荷になった時に、給電装置のコイル電圧や給電装置の入力電流値の上昇があった場合、入力電圧を下げる事で、受電装置の出力電圧の上昇を止める事ができる。
【0034】
100ワット以上の様な高い電力のワイヤレス給電を実施する場合の受電器側の電圧の上昇を抑えるという課題を実現すべく、本発明の特徴の一つとして、受電器2の側に、周波数調整回路8を設けた。整流回路4から出力される電圧値(受電器の出力電圧)を、ある閾値以上になった時に、FETをONさせて、周波数調整素子を、活かすかショートカットするかを制御する。周波数調整素子は、コンデンサーか、インダクタ素子である。いずれも、並列共振回路として、投入される共振周波数に関わる素子となる。
FETをONさせて、周波数調整素子が通電する場合と、切断する場合でも、共振周波数が、前か後ろにずらす効果がある。一定の出力電圧から、FETをスイッチする事で、共振周波数がずれる為、給電能力が下がり、一定の電圧以上に上昇できない様に制御している。
【0035】
図2は、本発明の給電側の基本波形図(SW2=OFFの場合)を説明する図である。すなわち共振方式の波形図である。この図で、駆動電流の波形を省略した。また、共振コイル電流を省略し、受電コイル電圧を描いた。共振コイル電圧を省略し、給電コイル電圧を描くこととした。
図2において、スイッチ回路14の制御用のパルス波形が矩形の図形として描かれている駆動電圧パルス201がある。この駆動電圧パルス201は、図1の制御回路17からスイッチ回路12に与えられる信号の波形であり、まさしく、周波数調整回路15のタイミングから、制御回路17によって、スイッチ回路12を制御するために生成されるパルスである。駆動電圧パルス21がハイの時にスイッチオンとなる。つまり、スイッチオンの時、電源18の電力が、給電側共振コンデンサー14に供給されるので駆動状態となる。この駆動時間28(t1)を、駆動パルス幅25と称する。
スイッチがオフになり、駆動していない時間は、共振状態すなわち共振時間となる。共振時間29(t2)を給電側共振周期26(t2)と称する。
図1に示すように、給電コイル11と共振用コンデンサー14とが並列共振回路を構成する場合、駆動状態にあっても共振状態にあっても、給電器10が受電器2と共振状態にあれば、エネルギーを供給し続けると言って差し支えない。すなわち、受電側共振周期27(t3)は、給電器の共振状態の時間(t2)に駆動状態の時間(t1)を合計した時間が、 0.6(t1+t2)=<t3=<1.1(t1+t2)が成立するようにチューニング調整回路を調整する。
一方、給電器側から見ると、実際には、駆動状態の時にエネルギーが瞬時に供給される。
スイッチ回路14のスイッチをオンにしている、つまり駆動電圧パルス201を供給している間、給電コイル電圧203は、ゼロ値近傍にする(ゼロ値近傍になるタイミングで駆動電圧パルス201を供給するともいえる)。また、受電コイル電圧202は、駆動時間28の間、結果的に歪んだ波形を示している。駆動時間28の間では、給電コイル電圧203がゼロの状態で、駆動電流が流れている状態である。駆動電流は、図1のスイッチ回路12から給電側共振用コンデンサー14に至る途中の点の波形である。給電側共振コンデンサー14は、丁度、共振コイル電流の90度位相がずれた形で交流波形として表れるが、駆動電流は、共振コンデンサー14に蓄えられた電力エネルギーの一部が転じたものである。
電流が流れると、給電コイル11から出力される磁束に変換された形で、受電器2の受電コイル1に作用し、電磁誘導が起こりエネルギーを回収できるので、エネルギーがあたかも移動した様にみえる。この回収されたエネルギー量の減りが、受電コイル電圧202歪みとして観測される。
【0036】
一方、スイッチ損失の観点でも、本発明では優位性のある特徴を示している。駆動時間28の間では、給電コイル電圧203がゼロ近傍の状態であるが、この時に、スイッチ回路12のスイッチ切り替えが行われる際、電圧がかかっている場合には、いわゆるスイッチングによるスイッチング損失が発生する。電流と電圧の重なりによっておこるものなので、本発明では、給電コイル電圧203がゼロ近傍の状態でスイッチされる様にして、スイッチング損失が極小化するという効果を出している。更には、ここに流れる駆動電流は、給電コイル電流を超える事はない為、高電流のピーク波形を生じる事がない。結果的にスイッチング損失やストレスを抑えることが可能で、これらの損失は熱損失ともいえるので、熱が発生しにくい効果にもつながる。一般的な、電圧がゼロの状態で行なうスイッチング、ZVS方式に似ているが、本発明では、ワイヤレス給電の給電手段にうまく活用した新しい方式である。
尚、図2のグラフでは、給電コイル電圧203がゼロ値になる前に、駆動パルスがオンになっている。これは、スイッチングに遅延がある理由から、ゼロ値になる前、即ちゼロ値近傍で駆動パルスをオンにする。更に、若干、ゼロ値でないのは、スイッチング回路に抵抗値があり、その分、電圧として出てしまう。どちらにしても、本説明では、方式上の本質的な考え方を示した。
駆動時間28の駆動電圧パルス201の駆動パルス幅25の長さ、給電コイル電圧203の強さでもって、受電器2に供給する電力エネルギー、即ち、給電能力として現れる。つまり、受電器2に供給したい電力に応じて、大きくしたい場合は、駆動パルス幅25を長くする事と、給電コイル電圧203を大きくする事で実現する。小さくしたい場合は、その逆である。
但し、駆動パルス幅25を長くすると、受電器2の受電コイルとの結合が強まる事になり、強まりすぎると効率が悪くなる結果になる為に、ただ長くすれば良いわけではない。また、給電コイル電圧203の電圧を大きくする事は、各種電子部品の耐圧が必要になり、現実的でなくなる為、ある程度の限界がある。そこで、おのずと、受電器の欲しい電力の設計値の限界が決まってくる。駆動パルス幅25に加えて、給電コイル11と受電コイル1の仕様も、大きく関係するし、給電範囲や給電距離の仕様も関係するので、これらの総合的なパラメーターのバランスにより、給電コイル電圧203の電圧値と駆動パルス幅25の仕様を決める事になる。
【0037】
そして、駆動パルス幅の仕様が定まると、給電器10の給電コイル11と給電側共振用コンデンサー14との共振器としての設計値、即ち共振周波数を定める事ができる。給電器10の共振周波数は、給電側共振周期26の周期時間で定める。一方、受電器2においては、駆動パルス幅25と給電側共振周期26の周期時間を合算した受電側共振周期27の周期時間で定められる。この事から、本発明では、給電器10の共振周波数と、受電器2の共振周波数には、所定のずれをもって調整する事が、本発明の特徴となっている。
駆動時間28の駆動パルス幅25における、パルス幅の決め方に関して、受信器2の共振周波数、すなわち共振周期の約1/4以下のDuty比とすると、高い給電効率となる事がわかっている。給電能力(給電できる電力)は駆動パルス幅25がDuty比、約16%でほぼ最大になる。16%~25%は、電力消費は増えるが給電能力の上昇が少ない。また、低すぎても、給電能力は高まらない。結果的に、駆動パルス幅25を、約5%~16%のDuty比制御を行う事で、給電能力(給電できる電力)を低くしたり、高くしたり制御が可能となる。
例えば、受電器側の出力電力の情報、若しくは必要とする要求電力情報に応じて、Duty比を制御する事で、受電器側が必要とする電力に応じて、給電できる。
例えば、受電器がライト装置で光量の調整や、バッテリーの充電状態(満充電の時は電力は小さくなるなど)に応じて、Duty比で制御することができる。
駆動時間を延ばしすぎたり、結合係数が高い状態の場合には、共振状態の均衡が崩れる結果となり、例えば、共振コイル電圧が異常に高まったりして、電子部品を破損させる要因となる。本発明では、この結合係数を適切に定める事も重要な要素となっており、およそK=0.05~0.3(5%~30%)あたりが、効率良くエネルギーを送れる給電効率の範囲であるとしている。その中で、K=0.16(16%)あたりがピーク値を示している。逆に言えば、この結合係数になる様に、駆動パルス幅の仕様、給電コイル11と受電コイル1の仕様、給電範囲や給電距離の仕様を決めれば良いことになる。
また、結合係数は給電距離に大きく関わる。結合係数が高い程、給電効率が高くなる。給電効率が高い位置は、給電距離がゼロの時である。給電コイル11と受電コイル1の距離が近いと結合係数は高まり、遠いと小さくなる。本発明では、結合係数が割と低いK=0.05~0.3(5%~30%)あたりが、給電効率が高い為、給電コイル11と受電コイル1を一定の距離を置いたところに、高い給電効率とできる。
【0038】
図3は、本発明の給電側の基本波形図(SW2=ONの場合)の説明図である。すなわち、フライバック方式の波形図である。SW2=ONすると、ダイオードがショートカットされ、フライバック方式となる。SW2=OFFの共振方式の波形と比較すると、給電コイル電圧が、プラス方向しか現れない。駆動パルス幅25、駆動時間28を長くできる。基本的には、給電側共振周期26に対し最大半周期分弱、セットできる。
駆動時間(駆動パルス幅)が長い程、コイルに電流が流れる為、給電コイル11に磁束が発生し、共振状態にある受電器2の受電コイル1にも磁束が通る事で電流が流れる。但し、半周期分フルに駆動電圧パルス201をセットすれば良いかというと、そうとも言えない。一定の時間(幅)から、給電能力は頭打ちになる。よって、若干、半周期より短くする方が給電効率が良い。
フライバック方式の場合、給電側共振周期と受信側共振周期の関係は、共振時間と駆動時間との加算が受信側共振周期という関係にはならないが、共振方式で行うシミュレーションの最適値によって、共振状態の時間(t2)に駆動状態の時間(t1)を合計した時間(t1+t2)に対して、0.6(t1+t2)=<t3=<1.1(t1+t2)が成立するようにすれば良い。若しくは、駆動電圧パルス201の間隔が、給電側共振周期26となるが、これが受電側共振周期27に一致するように調整すれば良い。
【0039】
図4は、本発明の受電器の回路図Aの説明図である。受電コイル1の中点に接点、すなわち中点タップをもたせる回路であり、こうする事で、受電コイル電圧が低下し、その分、受電コイル電流が向上する。すなわち、給電能力を損なう事なく、受電装置の出力電圧を下げる事ができる。受電コイルの両端には、共振コンデンサーが並列に接続されている。コイルの両端のインダクタンスを測定し、所定の共振周波数に合わせたコンデンサー容量を選んで実装する。受電コイルの中点位置は、巻き数の中間点が好ましいが、あえてGND側に寄せると電流値が向上し、プラス側に寄せると、電圧値が向上する。どちらに寄せても、電圧×電流=電圧は、ほぼ近似値の中で、調整する事ができる。この回路図Aは、中点タップから引き出した線に、整流ダイオードをとりつけている回路となる。
【0040】
図5は、本発明の受電装置の回路図Bの説明図である。この回路図Bは、中点タップから引き出した線がGNDに落とされている特徴のある回路である。この場合、バッファとなっているコンデンサーのGNDと、中点タップのGNDを接続する必要がある。回路図Aとほぼ同等の効果がある。
【0041】
図6は、本発明の受電装置の受電コイルの説明図である。この受電コイルから中点タップをする場合、コイルの巻き数が中間点の位置から、リード線を取り付ける方法や、コイルを巻いている途中から、一旦引き出して、また巻き始めるなどすることで、この中点タップが実現できるが、双方とも、コイルを乗り越えて、中間タップの線を引き出さなければならない。そうすると、巻線コイルの乗り上げ分、コイルの高さが高くなり、製品の組込みに影響がある。そこで、α巻きの2つのコイルとした場合、以下の方法が理想的なコイルの巻き方となる。第一の層をα巻にする。第二の層をα巻にする。第一と第二の層のコイルのサイズと巻き数は同じ。次に、第一の層の片方と、第二の層の片方の引き出し線を合体させる。第一の層の巻線と、第二の層の巻線を重ね合わせる。こうする事で、中点タップの引き出し線が、コイルを乗り越えることなく、きれいにコイルを形成できる。尚、第一と第二の層の巻線を別々の巻線数として、いわゆる中点タップからの巻線比を変える事で、受電コイルから出力される電圧値及び電流値を変える事ができる。
【0042】
図7は、本発明の周波数調整機能の説明図である。並列共振回路の場合は、共振状態になればなるほど、コイルにかかる電圧が最大値に向上する。電圧が一定値以上にならない様にするには、直ちに、給電装置の入力電圧を下げる方法が必要である。本発明では、給電コイルの電圧と給電コイルの電流をみながら、電圧安定化回路19、例えばDCDCコンバーターを通して、入力電圧を上げ下げする様に制御する方法を提示している。
また、フライバック切替スイッチ13(SW2)をONして、ダイオードをショートする事で、電圧制御しやすいフライバック方式に切り替える方法を提示している。
更には、受電器2に、周波数調整回路8を設け、出力電圧が一定以上になると、周波数調整素子をONかOFFさせる事で、別の共振周波数へずらす方法を提示している。共振周波数がずれると、給電能力が下がるので、コイルの電圧、すなわち受電器2の出力電圧を低下させられる。
また、駆動電圧パルス時間(幅)を短くする事でも、給電コイルに流れる電流を下げる事になり、給電能力を下げる効果がある。
また、駆動電圧パルスの間隔を調整する事で、給電側の共振周波数を少し変化させる事ができる。これにより、共振周波数をずらす事で、給電能力を下げる効果がある。図7の「給電側の周波数調整切替」は、駆動電圧パルスの時間(幅)と間隔の調整によって実現する。
この電圧の上昇は、受電側に接続されたバッテリーなどの状態、一般的には満充電になると無負荷、若しくは軽負荷状態になるが、この時が、電圧が上昇するきっかけとなる。電圧が高くなりすぎると、受電装置に取り付けているDCDCコンバーターなどの最大入力電圧を超えてしまい破損の原因となる。また、高い入力電圧を持つDCDCコンバーターは、一般的にコストが高い為、これを採用するのは好ましくない。本発明によって、この問題を解決する事ができる。
この図7は、縦軸が受電装置の出力電圧、第二の縦軸が給電装置の入力電流値で、横軸が給電コイルと受電コイルとの距離となる。これは、横軸が右に行くほど、受電コイルが給電コイルに近づいていくときの状況を示している。
給電器には、少なくとも2種類の共振周波数を持つ。この時の共振周波数は、「給電側共振周期」にあたり、駆動電圧パルスの間隔で制御する。
本発明の周波数調整機能の説明図Aの、負荷がある場合、共振状態になるならば、その分、エネルギーとして電流値が流れる事になる。特に、受電装置に負荷がある場合は、給電装置の入力電流値が大きく流れて行く。まず、最初は、給電装置の共振周波数をずらした状態で給電する。この状態では、受電装置が無負荷の場合でも、一定値以上、受電コイルの電圧が高くならない周波数とする。
給電装置の入力電流値が設定電流値以上になった時、受電装置に負荷がある事を示しているので、給電装置の共振周波数を最適な周波数に変更する。次に、受電装置の受電装置の出力電圧が、設定電圧値以上になると、周波数調整回路によって、FETがONして、周波数調整素子の働きで、受電装置の共振周波数がずれる。この時に一定のヒステリシスをもたす回路にした方が良い。そうすると、受電能力が下がる事で、受電装置の出力電圧の上昇が小さくなる。
【0043】
図8は本発明の周波数調整機能の説明図Bの無負荷の場合についてである。
次に無負荷の時の動きだが、受電装置が無負荷の場合は、給電装置の入力電流値が小さくなる。設定電流値より越えない為、給電側の周波数調整切替は無い。給電装置の共振周波数をずらした状態のまま推移していく。受電装置が無負荷・軽負荷の場合、受電装置の出力電圧が負荷がある時より、急激に上昇する。受電装置の出力電圧が、設定電圧値以上になると、周波数調整回路によって、FETがONして、周波数調整素子の働きで、受電装置の共振周波数がずれる。これによって、受電能力が下がり、受電装置の出力電圧の上昇が小さくなる。それでも、一定の距離より近づくと、受電装置の出力電圧が急激に上昇する距離があり、ここまでを最適な距離をして定めれば良い。給電側、受電側とも、共振周波数のずれが大きくなる為、給電能力が最も下がる結果となり、電圧上昇を抑える事ができる。
本発明の構成では、共振周波数のずれによって起こる損失分は、フライバック方式においては、給電能力、若しくは受電能力下がるだけで、熱損失になっているわけではない。但し、受電装置のFETは、一定の発熱要因ではあるが、ONする場合の無負荷の時には、流れる電流が低いので、その影響は少ない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のワイヤレス給電システムは、並列共振回路ではワイヤレス給電は向かないとされていた定説に、解決の方法を提示するとともに、100ワット以上の様な高い電力の充電を実現することを可能にする画期的なものであり、電気バイク、電気自動車などの動力源として充電を必要とするあらゆる産業に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1 受電コイル
2 受電器
3 受電側共振用コンデンサー
4 整流回路
5 負荷
6 電圧安定化回路
7 ショットキーバリアダイオード
8 受電側周波数調整回路
10 給電器
11 給電コイル
12 スイッチ回路
13 フライバック切替スイッチ
14 給電側共振用コンデンサー
15 周波数調整回路
16 共振状態センサー
17 制御回路
18 電源
19 電圧安定化回路
20 電圧センサー
21 電流センサー
25 駆動パルス幅
26 給電側共振周期
27 受電側共振周期
28 駆動時間
29 共振時間
201 駆動電圧パルス
202 受電コイル電圧
203 給電コイル電圧
【要約】
[要約]
[課題]既存の電子機器を用いてワイヤレス充電をする。
[解決手段]給電器は、給電コイルを有する。受電器は、受電コイルと、受電回路部と、負荷とを有する。共振現象を用いた電磁誘導により、給電器から受電器へ電気的エネルギーを供給する。給電コイルに対して電源供給のオン(駆動状態)と、オフ(共振状態)とをスイッチ回路により、周期的に繰り返す。受電器の共振周波数は、およそ駆動状態の時間と共振状態の時間の合算された周期である。給電器の共振周波数は、およそ共振状態の時間の周期として、共振用コンデンサー及びコイルの調整をチューニング調整回路で行う。スイッチ回路内のダイオードを活かすか、ショートカットするかを切り替えるフライバック切替スイッチを設ける。入力電圧を安定化する電圧安定化回路を設ける。受電側周波数調整回路を設ける。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8