(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】グループで展開する端末の地理的位置特定のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20250131BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20250131BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20250131BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G16Y10/40
G16Y40/60
(21)【出願番号】P 2020550681
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2019056917
(87)【国際公開番号】W WO2019180063
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-04
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】523231071
【氏名又は名称】ウナビズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】イソン,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,ルノー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥイブ,ソフィアーヌ
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】濱本 禎広
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-38302号公報(JP,A)
【文献】特開2016-181156号公報(JP,A)
【文献】特表2007-517203号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2015/188324号(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0184287号明細書(US,A1)
【文献】特開2005-331423号公報(JP,A)
【文献】特開2016-99313号公報(JP,A)
【文献】TANBO, Masaya 外3名,“Active RFID Attached Object Clustering Method Based on RSSI Series for FInding Lost Objects”, 2015 IEEE 2ND WORLD FORUM ON INTERNET OF THINGS (WF-IOT), 2015年12月14日, Pages 363-368, <URL: http://dx.doi.org/10.1109/WF-IoT.2015.7389081 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
G01S 19/00-19/55
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システム(60)の端末(70)のパネルから、「対象端末(70i)」と呼ばれる端末の地理的位置を推定する方法(10)であって、前記方法は、
前記パネルの前記端末(70)の各々に対して、予め定められた観察期間中に前記端末(70)によって前記端末(70)の少なくとも1つのセンサによって独立して測定された、
「時間署名」と呼ばれる、前記端末(70)の移動性段階を表す値を含む
データを決定する工程(52)と、
前記パネルの前記端末(70)の前記時間署名間の類似性基準の値を計算する工程(54)であって、2つの端末(70)に対して計算された前記類似性基準の値が、前記端末(70)が前記観察期間中に一緒に移動した確率を表す、計算する工程(54)と、
前記パネルの様々な前記端末(70)を、前記類似性基準の前記値に応じて様々なグループに分割する工程(56)と、
前記分割する工程(56)の後に、前記対象端末(70i)の前記地理的位置を、前記対象端末(70i)が属する、「対象グループ」と呼ばれる前記グループの少なくとも1つの他の端末(70)にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定する工程(44)と、
を含むことを特徴とする方法(10)。
【請求項2】
前記端末(70)の少なくとも1つのセンサによって測定される前記値は、
運動センサで測定される値、および/または、
温度センサで測定される値、および/または、
大気圧センサで測定される値、および/または、
光度センサで測定される値、および/または、
磁場センサで測定される値を含む、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
端末(70)の時間署名が、前記観察期間中に様々な時間にて、
「無線署名」と呼ばれる、前記端末(70)と、前記無線通信システム(60)の1つ以上の基地局(81)との間に存在する無線リンクの質を表す値を含む
データを更に含み、前記類似性基準は、前記移動性段階に対する類似性基準と、前記無線署名に対する類似性基準に従って決定される、請求項2に記載の方法(10)。
【請求項4】
測定された値に割り当てられた重み係数に応じて類似性基準が決定され、前記重み係数は、前記値が測定された時間と、前記対象端末(70i)の前記地理的位置を推定した(44)時間との間で経過した時間を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記パネルの様々な前記端末(70)を分割する前記工程(56)は、前記端末(70)が最大でも1つのグループに属するように実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記パネルの様々な前記端末(70)を分割する前記工程(56)は、前記端末(70)の各々が、属する確率の値に応じて前記グループの各々に属するように実施され、前記対象グループは、前記対象端末(70i)の前記属する確率の値が最大であるグループに対応する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記対象端末(70i)の前記地理的位置は、様々なグループに属する様々な端末(70)にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて、および、前記対象端末(70i)の前記様々なグループへの前記属する確率の値に応じて推定される、請求項6に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記地理的位置特定データは、端末(70)によって、前記端末の衛星測位システムによって得られる地理的位置の形態で提供される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項9】
前記地理的位置特定データは、
「無線署名」と呼ばれる、前記端末(70)と、前記無線通信システム(60)の1つ以上の基地局(81)との間に存在する無線リンクの質を表す値を含む
データの形で、端末(70)にとって利用可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項10】
端末(70)の地理的位置が、前記端末(70)の前記無線署名と、既知の地理的位置に関連する無線署名を含む基準セット(26)とに応じて推定され、前記対象端末(70i)の前記地理的位置は、前記対象グループの少なくとも1つの他の端末(70)の推定された前記地理的位置に応じて推定される、請求項9に記載の方法(10)。
【請求項11】
前記対象グループに属する前記端末(70)の前記無線署名に応じて、前記対象グループに対して
「仮想無線署名
」と呼ばれるデータが決定され、前記仮想無線署名に応じて、前記対象端末(70i)の位置が推定される、請求項9に記載の方法(10)。
【請求項12】
端末(70)の前記パネルは、前記無線通信システム(60)の前記端末(70)の中から選択するステップによって決定され、それにより、前記パネルの端末(70)が、前記対象端末(70i)もカバーしている前記無線通信システム(60)の少なくとも1つの基地局(81)によってカバーされる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項13】
端末(70)と、基地局(81)および前記基地局(81)に接続されたサーバ(82)を備えるアクセスネットワーク(80)とを備える無線通信システム(60)であって、前記システム(60)は、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って、端末(70)のパネルから、対象端末(70i)を地理的位置特定するための方法を実現するように構成されており、前記サーバ(82)は、
予め定められた観察期間中に端末(70)によって前記端末(70)の少なくとも1つのセンサによって独立して測定された、前記パネルの前記端末(70)の移動性段階を表す値を収集し、
測定された前記値を基礎にして、前記端末(70)に対する
「時間署名」と呼ばれる前記データを決定し、
2つの端末(70)に対して計算される類似性基準の値が、前記観察期間中に前記端末(70)が一緒に移動した確率を表すように、前記パネルの前記端末(70)の前記時間署名間の類似性基準の値を計算し、
前記パネルの様々な前記端末(70)を、前記類似性基準の前記値に応じて様々なグループに分割し、
前記端末の分割の後に、前記対象端末(70i)の前記地理的位置を、前記対象端末(70i)が属する、「対象グループ」と呼ばれる前記グループの少なくとも1つの他の端末(70)にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定する、
ように構成されている、無線通信システム(60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地理的位置特定(geolocation)の分野に関する。具体的には、本発明は、無線通信システムの端末を地理的位置特定するための方法およびシステムに関する。本発明は、グループで移動する性質を有する「モノのインターネット」(またはIoT)タイプのスマートオブジェクトの地理的位置特定に特に良好に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
過去数年にわたって、無線通信システムの使用が増加したことにより、当然ながら、対象物の地理的位置に基づき、例えば、ナビゲーション支援、交通管理、商品配送の追跡などに使用される、サービスの開発につながっている。
【0003】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などの衛星測位システムは、最もよく知られた地理的位置特定技術の1つである。これらシステムは、専用の衛星から送信される無線信号を受信端末で使用することに基づいている。衛星による地理的位置特定は特に精密であるが、これにはいくつかの欠点がある。具体的には、GPSレシーバをオブジェクトに組み入れることにより生じるコストおよび電力消費、ならびに閉じたゾーンにおける性能の欠如が挙げられる。
【0004】
端末が接続されているアクセスネットワークの基地局と交換される信号を基礎にして、端末を地理的位置特定するための他の技術が存在する。GSM(「広域デジタル移動通信システム」)などのセルラーネットワークでは、端末の位置を、端末が現在関連付けられている基地局の位置であるとして推定することが知られている。この方法は凡庸な地理的位置特定精度を有する。なぜなら、基地局のカバレッジゾーンが数キロメートル、または更には数十キロメートルの半径に達し得るからである。
【0005】
他の方法は、端末と基地局の間で交換される信号に対して到達時間、伝搬角度、または周波数差を計算することによって、端末をいくつかの基地局から隔てている距離を推定することを伴う。しかし、これら様々な方法は全て、特定のハードウェアおよびソフトウェアを必要とするという不利な点を有する。実際、それらの方法は一般に、端末の、および/または観測地点として機能する様々な基地局の同期を必要とする。更に、それらの方法は、マルチパス(遭遇した障壁上での反射、屈折および回折現象により、同じ無線信号がいくつかの経路を伝搬すること)と呼ばれる現象に特に敏感である。
【0006】
他の地理的位置特定方法は、端末と基地局との間で交換される信号の受信信号強度インジケータ(RSSI)レベルに基づいている。これらの方法は、セルラーネットワークタイプ(例えばGSM)の無線通信システムに特によく適している。それは、RSSI情報が通信システム自体によって使用されるので、通信システムにとってRSSI情報が直接利用可能だからである。これらの方法は、無線信号が大気中で減衰され、したがって受信機が受信する信号のRSSIレベルが、受信機を信号送信機から隔てている距離に応じて変化するという事実に基づいている。したがって、端末をその端末を取り囲む様々な基地局から隔てる距離を、基地局が測定するRSSIレベルを基礎にして推定することにより、三辺測量によって端末の地理的位置を決定することが可能である。RSSIレベルに基づく、三辺測量によるこのような地理的位置特定方法の欠点は、信号の減衰に影響を及ぼす多くのパラメータ(障害物、無線干渉、端末の移動など)により、RSSIレベルを基礎にして距離を決める関数が非常に複雑になるという事実に起因して、その精度が不足することである。
【0007】
したがって、RSSIレベルに基づく新たな地理的位置特定方法が開発された。これらの新たな方法は、機械学習技術に基づいている。具体的には、これは、較正段階の間に、システムの基地局のセットに対して既知の場所にある端末に対して測定されたRSSIレベルの全てに対応する無線署名を既知の地理的位置と関連付けるデータベースを作成することを伴う。次に、検索段階の間に、未知の位置にある端末に対して観測された無線署名がデータベースの全ての署名と比較されて、最も類似した署名に対応する位置を基礎にして端末の位置が推定される。
【0008】
較正段階を実施するために、通信システムの基地局に対して、様々な位置における地理的位置およびRSSIレベルを精密に提供するのに適合された装置を、カバーされる地理的ゾーンを横切って移動する車両の集団に搭載して配置することが知られている(この段階は「ウォードライビング(war-driving)」と呼ばれている)。地点の数が多いほど、地理的位置特定方法の性能は精度の観点でより良好になるが、較正段階はより長くなり、コストはより高くなる。
【0009】
無線署名を基礎にした、機械学習による地理的位置特定のためのそのような方法は、特に、カバーされる地理的ゾーンが広大な場合、例えば、国全体、または更には大陸をカバーしなければならない場合には、いくつかの不利な点を有する。第1の不利な点は、地理的位置特定精度に関する。実際、2つの隣接する地理的位置に対応する2つの無線署名が著しく異なること、または、2つの特に類似した無線署名が離れた2つの地理的位置に対応することが起こる。したがって、無線署名と、関連する地理的位置との間の関係を確立することは、このような状況によって発生するノイズにより困難になる。他の不利な点は、使用される機械学習アルゴリズムの複雑さに関する。実際、十分な精度を得るために、較正段階の間に、作成されるデータベースの中に多数の要素を挿入することが必要である。その上、カバーされるゾーンが広大な場合は、考慮すべき多数の基地局が存在する。これらの全てが、機械学習アルゴリズムの入力におけるデータを大幅に増加させること、したがって、容量および計算時間の制約を生成させることに寄与する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、無線通信システムの端末を地理的位置特定する方法を提案することによって、特に上で開示した、従来技術の不利な点の全てまたは一部を克服することであり、この方法の性能は、システムの端末がグループで移動し得るという考えに基づくことにより、精度および複雑さの点で改善される。
【0011】
端末の無線署名を用いてその地理的位置を推定する従来の地理的位置特定方法は、実際は、端末とアクセスネットワークとの間で交換される信号のRSSIレベルまたは伝搬時間などの、通信システムの端末とアクセスネットワークとの間に存在する関係に関する情報にだけに集中している。
【0012】
本発明によって提案される地理的位置特定方法が従来技術とは異なるのは、この方法が、例えば、特定の観察期間中に、その地理的位置の推定が求められる端末が他の端末と共にグループとして移動したかどうかを判定することを可能にする、システムの端末から来る情報を追加的に使用する点にある。この場合には、例えば、グループの他の端末と比較した情報を使用することにより、前述の端末の地理的位置を推定することができる。
【0013】
本発明は、決して限定するわけではないが、商品輸送の分野での使用に特に有利である。例えば、商品輸送のために使用されるパレットに無線通信システムの端末を備え付けて、端末の地理的位置特定ができるようにすることが可能である。このようなパレットは実際には、グループで移動するという特定の性質を有する。
【0014】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、無線通信システムの端末のパネルから、「対象端末」と呼ばれる端末の地理的位置を推定する方法を提案する。前述の方法は、
前述のパネルの各端末に対して、予め定められた観察期間中に端末によって端末の少なくとも1つのセンサによって独立して測定された、前述の端末の移動性段階を表す値を含む時間署名を決定する工程と、
パネルの端末の時間署名間の類似性基準の値を計算する工程であって、2つの端末に対して計算された類似性基準の値が、端末が観察期間中に一緒に移動したか、または同じ場所に位置していた確率を表す、計算する工程と、
パネルの様々な端末を、類似性基準の値に応じて様々なグループに分割する工程と、
対象端末の地理的位置を、対象端末が属する、「対象グループ」と呼ばれるグループの少なくとも1つの他の端末にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定する工程と、を含む。
【0015】
端末のパネルは、例えば、システムの端末の選択によって決定することができ、その選択においては、その端末が対象端末に近いこと(例えば、対象端末をもカバーする無線通信システムの少なくとも1つの基地局によって端末がカバーされる場合)、または、その端末が、類似点を有するいくつかの端末のグループに属する一定の性質を有することが演繹的に既知である。
【0016】
端末の時間署名は、運動センサなどの、端末のセンサを使用して、端末によって独立して測定される値のセットに対応する。
【0017】
「独立して」とは、時間署名を形成するために端末によって実施される端末の移動性段階を表す測定値が、別のデバイスの挙動に依存しないことを意味する。特に、RSSI測定は端末によって独立して実施される測定ではない。なぜなら、そのような測定は基地局などの他のデバイスによる信号の送信に依存するからである。他の実施例によれば、衛星測位システムの1つ以上の衛星によって送信される無線信号を基礎にして測定される地理的位置も、端末によって独立して実施される測定ではない。
【0018】
2つの端末に対する2つの時間署名が有意な類似点を有する場合は、問題の2つの端末が観察期間中に一緒に移動した可能性がある、または同じ場所に留まったままである可能性があることを意味する。
【0019】
パネルの様々な端末を様々なグループに分割することにより、その地理的位置の推定が求められる対象端末の地理的位置特定を改善することが可能になる。例えば、グループの端末のうちの1つがGPSレシーバを備えている場合は、実際、例えば、グループの端末のうちの少なくとも1つの地理的位置が精密に分かっている場合、前述の対象端末の地理的位置を推定することが可能である。他の実施例によれば、グループのいくつかの端末の推定された位置を相関させることにより、前述の端末の地理的位置を推定することが可能である。特定の場合には、地理的位置特定データ(例えばGPS位置、および/または推定された位置など)を、いくつかの異なるグループのいくつかの端末に対して相関させることにより、前述の対象端末の地理的位置を推定することが可能である。この地理的位置特定データは、地理的位置に直接は対応しないが、地理的位置を決定または推定することを可能にする情報(例えば、三辺測量法によって使用される、信号の伝搬時間またはRSSIレベル)であり得る点に留意すべきである。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で、または技術的に可能な全ての組み合わせに従って、更に含み得る。
【0021】
特定の実施形態では、端末の時間署名を決定するために測定される値は、
観察期間中に前述の端末の少なくとも1つのセンサによって測定された値、および/または、
観察期間中に様々な時間にて、無線通信システムの端末と1つ以上の基地局との間に存在する無線リンクの質を表す値を含む無線署名、を含む。
【0022】
特定の実施形態では、前述の端末の少なくとも1つのセンサによって測定された、端末の移動性段階を表す値は、
運動センサで測定される値、および/または、
温度センサで測定される値、および/または、
大気圧センサで測定される値、および/または、
光度センサで測定される値、および/または、
磁場センサで測定される値、を含む。
【0023】
実際、考慮される使用のタイプに従って、観察期間中に端末が一緒に移動したかどうかを決定するために、様々な環境データを使用することができる。例えば、2つの別個の端末に対して観察された環境条件が類似している場合、これは、前述の端末が、観察期間中に「同一位置にある」可能性があることを意味する。
【0024】
特定の実施形態では、端末の時間署名は、観察期間中に様々な時間にて、無線通信システムの端末と1つ以上の基地局との間に存在する無線リンクの質を表す値を含む無線署名を更に含み、類似性基準は、移動性段階に対する類似性基準と、無線署名に対する類似性基準に従って決定される。
【0025】
例えば、時間署名は、例えば、加速度計またはジャイロスコープなどの運動センサを使用して決定された、観察期間中における端末の移動性段階を表す値を含み得る。加えて、時間署名は、観察期間中に様々な時間にて決定された端末の無線署名を含み得る。2つの端末の時間署名が類似している場合、換言すれば、それらを形成する値および/または無線署名が類似性の一定の条件を満たす場合は、2つの端末はおそらく、観察期間中に一緒に移動した、端末の同じグループに属すると考えることができる。
【0026】
特定の実施形態では、測定された値に割り当てられた重み係数に応じて類似性基準が決定され、重み係数は、前述の値が測定された時間と、対象端末の地理的位置を推定した時間との間で経過した時間を表す。
【0027】
そのような構成により、時間署名の最近のデータに、より大きな重要性を与えることが可能になる。実際、例えば、観察期間の一部の間にだけ2つの端末が一緒に移動する場合、観察期間の終わりにおいて、すなわち対象端末の地理的位置の推定が実施される時において、問題の端末が一緒であるかどうか、すなわち問題の端末が同じグループに属すると考えるべきであるかどうかを決定するために、最近のデータに、より大きな重要性が与えられなければならない。
【0028】
特定の実施形態では、各端末が最大でも1つのグループに属するように、パネルの様々な端末の分割が実施される。
【0029】
そのような分割は、例えば、「ハードクラスタリング」として知られる、要素を一緒にグループ化するための方法によって実施される。この方法では、各要素は単一のグループに属するか、またはいずれのグループにも属さない(分離された要素)。
【0030】
特定の実施形態では、パネルの様々な端末の分割は、各端末が、属する確率の値に応じて各グループに属するように実施され、対象グループは、対象端末が属する確率の値が最大であるグループに対応する。
【0031】
そのような分割は、例えば、「ソフトクラスタリング」として知られる、より難しい要素をグループ化するための方法によって実施される。この方法では、各要素は、確率論的方法によって規定される一定程度は、いくつかのグループに属する。
【0032】
特定の実施形態では、対象端末の地理的位置は、様々なグループに属する様々な端末にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて、および、対象端末が様々なグループに属する確率の値に応じて推定される。
【0033】
特定の実施形態では、前記地理的位置特定データは、前記端末の衛星測位システムによって得られる地理的位置の形で、端末によって提供される。
【0034】
システムの特定の端末がGPSレシーバを備えている場合、対象端末が属する対象グループの端末のうちの1つによって提供されるGPS位置を使用して、または対象グループのいくつかの端末によって提供されるいくつかのGPS位置を使用して、または更にいくつかの異なるグループのいくつかの端末によって提供されるいくつかのGPS位置を使用して、対象端末の地理的位置を決定することが可能である。
【0035】
特定の実施形態では、地理的位置特定データは、端末と、無線通信システムの1つ以上の基地局との間に存在する無線リンクの質を表す値を含む無線署名の形で端末にとって利用可能である。
【0036】
特定の実施形態では、パネルの端末の地理的位置が、端末の無線署名と、既知の地理的位置に関連する無線署名を含む基準セットとに応じて推定される。したがって、対象端末の地理的位置は、対象グループの少なくとも1つの他の端末の推定された地理的位置に応じて推定される。
【0037】
この基準セットは、例えば、機械学習アルゴリズムにより使用される、基準要素を記憶するデータベースである。各基準要素は、したがって、一方では無線署名からなり、他方ではこの無線署名に関連する既知の地理的位置からなる一対の情報である。学習アルゴリズムは、前述の対象端末の無線署名を基礎にし、かつ基準データベースを使用して、対象端末の位置を推定することを可能にする。したがって、地理的位置特定方法の複雑さを減らすために、所与のグループの単一の端末の地理的位置を推定し、グループの全ての端末が同じ地理的位置を有すると考えれば十分であり得る。
【0038】
他の実施例によれば、地理的位置特定方法の精度を改善するために、グループの各端末の地理的位置、特に対象端末の地理的位置を精密化するために、対象グループのいくつかの端末の推定された地理的位置を相関させることが有利であり得る。
【0039】
特定の実施形態では、前述の対象グループに属する端末の無線署名に応じて対象グループに対して仮想無線署名が決定され、この仮想無線署名に応じて対象端末の位置が推定される。
【0040】
この場合、この実施形態は、例えば、対象グループのいくつかの端末の無線署名を相関させて、グループの全ての端末に帰属する、特に対象端末に帰属する地理的位置を推定するために使用される仮想無線署名を決定することを伴う。
【0041】
特定の実施形態では、端末のパネルは、無線通信システムの端末の中から選択するステップによって決定され、その決定は、パネルの端末が、対象端末もカバーしている無線通信システムの少なくとも1つの基地局によってカバーされるように行われる。
【0042】
第2の態様によれば、本発明は、端末と、基地局およびその基地局に接続されたサーバを備えるアクセスネットワークと、を備える無線通信システムに関する。前述のシステムは、前述の実施形態のいずれか1つに従って、端末のパネルからの対象端末の地理的位置特定のための方法を実現させる。前述のサーバは、
予め定められた観察期間中に端末によって端末の少なくとも1つのセンサによって独立して測定された、パネルの端末の移動性段階を表す値を収集し、
測定された値を基礎にして、端末に対する時間署名を決定し、
2つの端末に対して計算された類似性基準の値が、観察期間中に端末が一緒に移動した確率を表すように、パネルの端末の時間署名間の類似性基準の値を計算し、
パネルの様々な端末を、類似性基準の値に応じて様々なグループに分割し、
対象端末の地理的位置を、対象端末が属する、「対象グループ」と呼ばれるグループの少なくとも1つの他の端末にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定する、ように構成されている。
【0043】
本発明は以下の記載を解釈することで、よりよく理解されるであろうと考えられる。以下の説明は、何ら限定的ではない例として与えられ、
図1~
図7を参照して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】従来の地理的位置特定方法の主要なステップである。
【
図3】本発明による地理的位置特定方法の主要なステップである。
【
図4】端末によって決定された移動性段階の略図である。
【
図5】端末によって測定された大気圧の略図である。
【
図7】端末に対して決定された無線署名の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
これら図面において、図面にわたって同一の参照符号は、同一のまたは類似の要素を示す。明瞭化のために、示される要素は別途言及されない限り必ずしも同じ縮尺ではない。
【0046】
以下の説明は、実施例として、そして非限定的に、本発明のいくつかの実施形態について説明する。
【0047】
1.状況
本明細書の残りの部分では、非限定的に、無線通信システムのスマートオブジェクトタイプの端末が、その地理的位置を特定することを可能にする目的で、商品のパレットに固定されるケースを考慮している。そのようなパレットは一般に、パレットが備える商品の目的地に応じてグループで移動する。
【0048】
図1は、端末70と、例えばサーバ82に接続された複数の基地局81を備えるアクセスネットワーク80とを備える無線通信システム60を概略的に示す。
【0049】
端末70と基地局81とは、ラジオ信号の形でデータを交換する。「ラジオ信号」は、自由空間中を伝搬する電磁波を意味し、その周波数は通常のラジオ波(数ヘルツから数百ギガヘルツ)のスペクトルに含まれる。
【0050】
端末70と基地局81との間でのデータ交換は、例えば双方向性である。換言すれば、端末70は、上流リンクを介して基地局81にデータを送信し、この基地局81からこの端末70への下流リンクを介してデータを受信するように適合されている。
【0051】
しかし、他の実施例によると、上流リンクだけを介した、一方向性の交換を有することは除外されない。IoTタイプの使用の多くは、端末70によって送信されるデータの収集を伴い、各端末70と基地局81との間の上流リンクだけを介する交換により完全に対処している。
【0052】
非限定的な実施例によれば、無線通信システム60は超狭帯域である。「超狭帯域」(UNB)は、端末70によって送信される信号の瞬時周波数スペクトルが、2キロヘルツ未満、または更に1キロヘルツ未満の周波数幅を有することを意味する。このような配置は、そのような信号の送信が、IoTタイプの使用に特に適合する非常に低減された電力消費で実施され得るという点で特に有利である。
【0053】
各基地局81は、その範囲内にある端末70によって送信されるメッセージを受信するように適合されている。このように受信されたメッセージの各々は、例えばアクセスネットワーク80のサーバ82に伝達され、任意選択的に、他の情報、例えば、メッセージを受信した基地局81の識別子、メッセージを伝えている無線信号の質を表す値、メッセージが受信された中心周波数、メッセージが受信された日付などを伴う。サーバ82は、例えば、様々な基地局81から受信したメッセージの全てを処理する。
【0054】
「対象端末70i」と呼ばれる端末70の地理的位置を推定するために、例えば、端末の無線署名と、この端末の地理的位置との関係を確立することを追求する機械学習アルゴリズムに基づく地理的位置特定方法を使用することが知られている。サーバ82は、このような地理的位置特定方法を実現するために特に使用され得る。
【0055】
本明細書の残りの部分では、決して限定的でない実施例として、端末の無線署名と、この端末の地理的位置との関係を確立することを目指す機械学習アルゴリズムに基づくそのような既存の地理的位置特定方法を、本発明が改善するケースが考慮される。
【0056】
しかし、対象端末70iの位置を推定するための他の方法、特に、機械学習アルゴリズムに必ずしも基づくわけではない方法、例えば、信号の到達時間差(TDOA:Time Difference of Arrival)の計算を基礎にして地理的位置を決定することを可能にする三辺測量法が存在する点に留意されたい。本発明による方法は、そのような方法にも適用され得る。
【0057】
本明細書の残りの部分では、「地理的位置」は、緯度および経度にそれぞれ対応する2つの座標のセットを意味する。地理的位置を定めるための代替形態が可能であることに留意すべきである。例えば、平均海水面に対する高度に対応する第3の座標を考慮することもできる。
【0058】
端末70の無線署名は、例えば、この端末70からアクセスネットワーク80へのメッセージの送信中に決定される。例えば、無線署名は、前述のメッセージを受信した時点で、様々な基地局によって測定された受信平均電力(RSSI)のレベル(例えばデシベル単位で)に対応する値のセットを含む。例えば、端末70がかなり遠くにあり、基地局81の無線カバレッジ内にないためにメッセージを受信しなかった基地局81については、例えばデフォルト値である-160dBが使用される。
【0059】
無線署名を決定するための他の方法が可能であることに留意すべきである。例えば、メッセージの送信中に、端末70と基地局81の間に存在する無線リンクの質を表す他の値、例えば信号対雑音比(SNR:Signal-to-Noise Ratio)、またはチャネル品質指標(CQI:Channel Quality Indicator)を使用して、無線署名を決定することができる。他の実施例によれば、無線署名は、端末70と基地局81との間で交換されるメッセージを伝えている信号の伝搬時間を含み得る。無線署名を決定するための特定の方法の選択は、本発明の単なる代替的な実施形態である。
【0060】
対象端末70iの地理的位置を推定するために、地理的位置特定方法は、基準要素のセットを使用する。各基準要素は、地理的位置と関連した無線署名を含む。基準要素のセットを構築するために、例えば「較正端末70c」と呼ばれる、無線通信システム60の特定の端末70を使用することが可能であり、較正端末は、端末70cの地理的位置を高精度に得ることを可能にする位置特定システム、例えばGPSレシーバ、を有する。
【0061】
通常、この基準セットは、例えば、サーバ82内に記憶され機械学習アルゴリズムによって使用されるデータベースである。このデータベースに格納される各基準要素は、一方では無線署名からなり、他方ではこの無線署名に関連する既知の地理的位置からなる一対の情報である。基準要素の無線署名および既知の地理的位置は、較正端末70cを基礎にして得られる。したがって、機械学習アルゴリズムは、前述の対象端末70iの無線署名を基礎にし、かつデータベースを使用して、対象端末70iの位置を推定することを可能にする。
【0062】
図2は、そのような地理的位置特定方法10の主要なステップを示す。
【0063】
第1の較正段階20の目的は、カバーされる地理的ゾーンの、ある種の無線地図を生成させることである。この段階は、
地理的位置にそれぞれ関連する無線署名を決定するステップ22と、
得られた基準要素(無線署名、および地理的位置に関連する)を、基準要素のセット26に格納するステップ24と、を含む。
【0064】
無線署名を決定するステップ22は、例えば、較正端末70cにより、現在の地理的位置を含むメッセージを、無線通信システム60のアクセスネットワーク80へと送信することを伴う。
【0065】
このメッセージは、地理的位置特定方法10とは独立して送信され得ることに留意すべきである。例えば、そのメッセージは、現在の地理的位置を含む情報を遠隔で読み込むための通常のメッセージであって、地理的位置特定方法10の較正段階20に参加するという主要目標を有していない場合がある。
【0066】
したがって、前述のメッセージを含む信号を受信したアクセスネットワーク80の基地局81は、メッセージが受信されたRSSIレベルの測定を実施し、メッセージおよび付加的情報(RSSIレベル、メッセージ受信の日付、基地局の識別子など)をサーバ82に伝達する。
【0067】
サーバ82は、様々な基地局81によって測定されたRSSIレベルを収集し、それを、較正端末70cに対してこのように決定された無線署名に含める。
【0068】
無線署名の形成を考慮するための基地局の選択のために、いくつかの方法が可能である点に留意すべきである。第1の実施例によれば、無線通信システム60の全ての基地局が考慮される。他の実施例によれば、例えば限定された対象とする地理的ゾーンに応じて、考慮する基地局の数を限定することができる。
【0069】
サーバ82はまた、較正端末70cによって送信され、それを受信した基地局81によってサーバ82に伝達されたメッセージに含まれる現在の地理的位置の抽出を実施する。
【0070】
最後に、較正端末70cの地理的位置によって形成された一対の情報と、関連する無線署名とが、格納ステップ24により基準要素のセット26に加えられる。サーバ82は、例えば、基準要素をデータベースに記憶させるためのハードウェアおよびソフトウェア手段のセットを備える。
【0071】
特定の実施形態では、上述した較正段階20のステップは、有意な量の情報、すなわちカバーされるゾーンの精密な地図を含む基準要素のセット26を得るために、無線通信システム60の較正端末70cに対して、予め決められた持続時間、例えば数日、または更には数週間もしくは数か月にわたって繰り返される。一代替形態では、予め決められた数の基準要素がセット26において得られるまで、較正段階20のステップが繰り返される。
【0072】
好ましい実施形態では、基準データのセット26は、較正端末70cから来る新たな基準要素によって絶え間なく拡充される。
【0073】
その時、検索段階40は、
推定される地理的位置に位置する対象端末70iに対する無線署名を決定するステップ42と、
前述の対象端末70iの地理的位置を、決定された無線署名、および較正段階20の間に取得された基準要素のセット26を基礎にして推定するステップ44と、を含む。
【0074】
無線署名を決定するステップ42は、例えば、対象端末70iにより、メッセージを無線通信システム60のアクセスネットワーク80へと送信することを伴う。このメッセージは、端末を地理的位置特定する方法10とは独立して送信される任意のメッセージであり得る。例えば、このメッセージは、端末70の地理的位置特定とは関連のない情報の遠隔読み込みの目的で送信され得る。代替として、このメッセージは、端末70を地理的位置特定することを目標として、意図的に送信され得る。全ての場合について、メッセージの内容が、検索段階40において必ずしも重要であるとは限らない。
【0075】
較正段階20用に実施されるものと同様に、前述のメッセージを受信したアクセスネットワーク80の基地局81は、メッセージを伝えている信号のRSSIレベルの測定を実施する。
【0076】
したがって、サーバ82は、様々な基地局81によって測定されたRSSIレベルを収集し、それを、対象端末70iに対してこのように決定された無線署名に含める。
【0077】
したがって、メッセージを送信した対象端末70iの地理的位置の推定44は、一方では、基準要素のセット26を基礎にして、他方では、その地理的位置を推定しなければならない対象端末70iのために決定された無線署名を基礎にして、例えば、回帰機械学習アルゴリズムを使用して実施される。
【0078】
しかし、上述の地理的位置特定方法10は、地理的位置特定精度に関して凡庸な性能を有し、この方法は、特に、カバーされる地理的ゾーンが広大である場合には、例えば、国全体または大陸さえカバーしなければならない場合には、特に複雑である(すなわち、極めて大きな容量および計算時間を必要とする)。
【0079】
2.本発明の原理
地理的位置特定方法10の精度を改善し、かつ/または複雑さを単純化するために、本発明は、考慮されるシステムの端末70がグループで移動し得るという考えに基づいている。したがって、本発明は、対象端末70iを地理的位置特定する方法10を提案し、この方法は、特定の期間中に対象端末70iと一緒に移動した他の端末70によって提供される情報を利用する。
【0080】
図3は、本発明による地理的位置特定方法10の特定の実施形態の主要なステップを示す。
図3に示す様々なステップの順序は、図面の明瞭化のために情報提示の目的だけで与えられ、本発明に対して限定的であると考えてはならない点に留意する必要がある。
【0081】
問題の、および現在、例として記載されている地理的位置特定方法10については、較正段階20は、
図2を参照して上述したものと類似している。しかし、検索段階40は、端末70のグループを形成することを意図した追加ステップを含み、各グループは、対象端末70iの位置を推定した時間に至るまで、一定の現在の観察期間中に一緒に移動したと考えられる端末70を含む。
【0082】
検索段階40は、その地理的位置を推定することが望まれる対象端末70iに対して無線署名を決定するステップ42を含む。このステップは、
図2を参照して上述したステップに類似している。
【0083】
検索段階40はまた、無線通信システム60の端末70のパネルの各端末70に対して、時間署名を決定するステップ52を含む。端末70の時間署名は、過去の観察期間中に端末70によって端末70の少なくとも1つのセンサによって独立して測定された値を含み、その観察期間の持続時間は、考慮される使用に応じて予め定められている。これらの値は、端末70が移動した環境に関する、または前述の観察期間中に端末70が振る舞った挙動に関するデータに対応する。
【0084】
検索段階40はまた、パネルの端末70の時間署名間の類似性基準の値を計算するステップ54を含む。2つの端末70に対する2つの時間署名が有意な類似点を有する場合は、問題の2つの端末70が、観察期間中に、一緒に移動した可能性がある、または同じ場所に留まったままである可能性があることを意味する。
【0085】
検索段階40はまた、類似性基準に応じて、パネルの様々な端末70を様々なグループに分割するステップ56を備える。
【0086】
最後に、検索段階40は、対象端末70iの地理的位置を、対象端末70iが属する「対象グループ」と呼ばれるグループの少なくとも1つの他の端末70にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定するステップ44を含む。
【0087】
検索段階40の様々なステップを以下に詳細に述べる。
【0088】
3.時間署名の決定
考慮されるパネルの端末70の時間署名を決定するステップ52については様々な方法が可能である。
【0089】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、観察期間中の前述の端末70の移動性段階を表す値を含む。移動性段階は、例えば、加速度計などの、端末70の運動センサによって実施された測定値を用いて、または端末の環境の値(温度、大気圧、光度、磁場など)の測定を可能にするセンサを基礎にして決定される。
【0090】
「移動性段階」は、端末70が移動していると考えられる時間間隔を意味する。2つの連続した移動性段階は不動性段階によって隔てられ、不動性段階は端末が静止していると考えられる時間間隔に対応する。
【0091】
図4は、観察期間T
obs中の無線通信システム60の端末70の移動性段階を概略的に示す。観察期間T
obsは、例えば、対象端末70iの地理的位置が地理的位置特定方法10によって推定される時間に対応する時間t
0に先行する。時間t
0は一般に、対象端末70iによって送信されたメッセージの受信時間に対応し、そのメッセージを基礎にして、対象端末70iの無線署名が検索段階40のステップ42において決定される。
【0092】
図4の曲線90は、端末70の移動性段階を表す。曲線90が非ゼロの定数値(例えば値1)をとる場合、これは、端末70が移動している(端末70が移動性段階にある)ことを意味する。曲線が空値(値0)をとる場合、これは、端末70が不動である(端末70が不動性段階にある)ことを意味する。
【0093】
曲線90は、例えばサーバ82によって、アクセスネットワーク80へと送信されたメッセージ内で端末70によって伝えられた情報を使用して構築することができる。
【0094】
この目的のために、端末70は、運動センサ、例えば加速度計と、ソフトウェア(コンピュータプログラム製品)および/またはハードウェア(FPGAタイプの1つ以上のプログラム可能論理回路、および/または1つ以上のASICタイプの専用集積回路など)として構成された通常手段のセットとを備えて、端末70の移動性段階の、対応する開始時間および終了時刻を決定する。例えば、加速の測定はセンサによって反復的に行われ(例えば、数十ミリ秒~数百ミリ秒の期間で)、測定された値が予め定められた運動検出閾値よりも大きい場合、現在の検出時間が記憶され、前回の検出時間と比較される。2つの検出時間が、新たな移動性段階の予め定められた検出閾値よりも小さい持続時間によって隔てられている場合、2つの検出時間は、同じ移動性段階に属すると考えられる。しかし、2つの検出時間が、新たな移動性段階の検出閾値よりも大きい持続時間によって隔てられている場合、以前の検出時間は、移動性段階の終了時間に対応し、現在の検出時間は新たな移動性段階の開始時間に対応すると考えられる。
【0095】
端末70の移動性段階の開始時間および終了時間は、例えば、記憶され、次いで、端末70によってアクセスネットワーク80に反復的に送信されるメッセージにてサーバ82に送られる。このようなメッセージは例えば、周期的に、または新たな移動性段階の検出ごとに送信され得る。
【0096】
曲線90を基礎にして、サーバ82は、例えば値のセット(M1,M2,M3,…,ML)をサンプリングすることにより、観察期間Tobsにおける端末70に対する時間署名を決定することができる。サンプリング期間は、考慮される使用に関して、端末70の移動性段階の、および不動性段階の典型的な持続時間に応じて、好適な方法で選択される。固定された観察期間について、値の数Lが多いほど、端末70によって実施される移動に関する情報は多く、時間署名はより精密である。
【0097】
考慮されるパネルの全ての端末70に対して、同じ観察期間にわたって同じサンプリングを用いることにより、したがって、様々な端末70の時間署名を2者間で比較することが可能である。2つの端末70が類似した時間署名を有する場合、これは2つの端末が観察期間中に類似した移動性段階を有したことを意味し、その結果として、これは2つの端末が一緒に移動した可能性があることを意味する。
【0098】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、前述の端末70が曝されていた大気圧を表す値を含む。例えば、これらの値は端末70の大気圧センサによって測定される。
【0099】
図5は、対象端末70iの地理的位置を推定した時間t
0に先行する観察期間T
obs中に端末70が曝されていた大気圧の変化の曲線91を示す。
【0100】
曲線91は、例えば、大気圧測定を用いてサーバ82によって構築され、大気圧測定は端末70によって実施され、アクセスネットワーク80に反復的に送信されるメッセージにてサーバ82に送信される。
【0101】
曲線91を基礎にして、サーバ82は、例えば値のセット(P1,P2,P3,…,PK)をサンプリングすることによって、観察期間Tobsにおける端末70に対する時間署名を決定することができる。ここでも再び、サンプリング期間(したがって、観察期間Tobs中にサンプリングされた値の数K)は、考慮される使用に応じて好適な形で選択される。
【0102】
例えば、端末70を備える商品のパレットが飛行機によって輸送される場合、大気圧が低い(飛行機の高い高度のため)期間に対応する空中輸送段階と、大気圧がより高い期間に対応する地上段階とを区別することは関心の対象である。サンプリング期間は、したがって、空中輸送段階の、および地面段階の典型的な持続時間に応じて選択され得る。
【0103】
考慮されるパネルの全ての端末70に対して、同じ観察期間にわたって同じサンプリングを用いることにより、したがって、様々な端末70の時間署名を2者間で比較することが可能である。2つの端末70が類似した時間署名を有する場合、これは2つの端末が観察期間中に類似した空中輸送段階を有したことを意味し、その結果として、これは2つの端末が一緒に移動した可能性があることを意味する。
【0104】
曲線91を基礎にして時間署名を決定するための他の方法が可能であることに留意すべきである。例えば、観察期間Tobsを様々な時間間隔に切り分け、各間隔に対して値を、例えば、時間間隔にわたって曲線91がとる平均値、または最小値、または最大値を決定することが可能である。
【0105】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、この端末70が曝されている温度を表す値を含む。例えば、これらの値は端末70の温度センサによって測定される。
【0106】
図6は、対象端末70iの地理的位置を推定した時間t
0に先行する観察期間T
obs中に端末70が曝されてた温度の変化の曲線92を示す。
【0107】
曲線92は、例えば、温度測定を用いてサーバ82によって構築され、温度測定は端末70によって実施され、アクセスネットワーク80に送信されるメッセージにてサーバ82に送られる。
【0108】
曲線92を基礎にして、サーバ82は、例えば値のセット(T1,T2,T3,…,TM)をサンプリングすることによって、観察期間Tobsにおける端末70に対する時間署名を決定することができる。ここでも再び、サンプリング期間は、考慮される使用に応じて好適な形で選択される。
【0109】
例えば、端末70を備える商品のパレットが保冷車によって輸送される場合、温度が低い段階(パレットが冷蔵庫に、または保冷車に位置している)と、温度がより高い段階(パレットを保冷車に積み込み中、または保冷車から荷下ろし中)とを区別することが関心の対象である。したがって、サンプリング期間は、例えば、温度が高い段階の典型的な持続時間に応じて選択される。
【0110】
考慮されるパネルの全ての端末70に対して、同じ観察期間にわたって同じサンプリングを用いることにより、したがって、様々な端末の時間署名を2者間で比較することが可能である。2つの端末が類似した時間署名を有する場合、これは2つの端末が、観察期間中に類似した温度変化に曝されたことを意味し、その結果として、これは2つの端末が一緒に移動した可能性があることを意味する。
【0111】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、観察期間中の様々な時間にこの端末70に対して決定された無線署名を含む。
【0112】
図7は、対象端末70iの地理的位置を推定した時間t
0に先行する観察期間T
obs中に決定された無線署名S
A,S
B,S
C,…,S
Lを概略的に示す。各無線署名は、例えば、観察期間T
obs中の様々な時間において端末70によって送信されたメッセージを受信した時点で、無線通信システム60の基地局81によって実施されるRSSI測定を基礎にして決定される。
【0113】
例えば、観察期間T
obsを同一の持続時間を有するN個の時間間隔に分けることにより、そして、その時間間隔の各々に対して、その時間間隔に属する無線署名S
A,S
B,…,S
Lに応じて、無線署名S
1,S
2,…,S
Nを定義することにより、端末70に対して時間署名を決定することが可能である。無線署名S
1,S
2,…,S
Nの各構成要素は、例えば、対応する時間間隔に属する無線署名S
A,S
B,…,S
Lの対応する構成要素のRSSI値の平均(または最大、最小など)値として定義される。例えば、
図7では、観察期間T
obsの第3の時間間隔に対応する無線署名S
3は値のセット(RSSI
3,1,RSSI
3,2,…,RSSI
3,Q)を含み、各成分RSSI
3,iは、無線署名S
D、S
EおよびS
Fの対応するそれぞれの成分RSSI
D,i、RSSI
E,iおよびRSSI
F,iの平均に等しい。したがって、観察期間T
obs中の端末70に対する時間署名は、値のセット(S
1,S
2,S
3,…,S
N)である。S
iを決定するために用いる時間間隔の中央に位置する時間に対応する測定時間t
iは、例えば、各無線署名S
i,i∈{1…N}に関連する。
【0114】
考慮されるパネルの全ての端末70に対して同様にすることにより、したがって、様々な端末の時間署名を2者間で比較することが可能である。2つの端末が類似した時間署名を有する場合、これは2つの端末が、観察期間中に類似した無線条件に直面したことを意味し、その結果として、これは2つの端末が一緒に移動した可能性があることを意味する。
【0115】
無線署名S1,S2,…,SNを定めるために、別個の時間間隔を使用する代わりに、スライディングタイムウィンドウ機構を使用して、このスライディングウィンドウのいくつかの位置に対して、無線署名SA,SB,…,SLが関連するようにすることが可能であるという点に留意すべきである。したがって、時間署名の各無線署名S1,S2,…,SNが、スライディングウィンドウの位置と無線署名SA,SB,…,SLとの間のコンボリューションに対応する。
【0116】
端末70の時間署名を定義するために、光度レベル、磁場強度などの他の環境測定値を使用できることにも留意すべきである。時間署名を定義するための特定のタイプの測定の選択は、本発明の単なる代替的な実施形態である。
【0117】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、様々な環境測定値に対応する値のいくつかのセットの組み合わせである。例えば、端末70の時間署名は、
図4を参照して説明した値(M
1,M
2,M
3,…,M
L)、および
図7を参照して説明した値(S
1,S
2,S
3,…,S
N)の両方を含む。
【0118】
4.類似性基準の決定
考慮されるパネルの端末70の時間署名間の類似性基準の値を計算するステップ54については、様々な方法が可能である。
【0119】
端末70の時間署名が、観察期間T
obs中の、その端末70の移動性段階を表す、
図4を参照して記載した値(M
1,M
2,M
3,…,M
L)を含むケースを考える。注釈として、値M
iの各々は、端末70が時間t
iにて移動性段階にあるか否かに応じて、それぞれ1または0に等しい。
【0120】
AおよびBとして示され、それぞれが時間署名(M1,M2,…,ML)および(M1’,M2’,…,ML’)を有する2つの異なる端末70を考える場合、例えば、2つの時間署名間に、SIMM(A,B)として示される類似性基準を、以下の式で定義することが可能である。
【0121】
【0122】
D-1(Mi,Mi’)=C・Mi・Mi’(式3)
【0123】
式(3)において、Cは、例えば、SIMM(A,B)に関する数Lと、所望の大きさの程度(この場合、0とL×Cの間の値をとる)に応じて定義される定数である。
【0124】
式(2)において、tiは、測定値MiおよびMi’に関連する時間に対応する。したがって、用語Wiは、最近の測定値に、より大きな重要性を与える重み係数である。これは、2つの端末が観察期間の一部分だけを一緒に移動した場合に有利である。この場合、観察期間の終わりにおいて、すなわち対象端末70iの地理的位置の推定が実施される時間t0において、問題の端末が一緒であるか否か、すなわち問題の端末が同じグループに属すると考えるべきであるか否かを決定するために、最近のデータに、より大きな重要性が与えられなければならない。
【0125】
したがって、SIMM(A,B)についての値が大きいことは、観察期間Tobsにわたる端末AおよびBの時間署名が類似していることを意味し、このことは、端末AおよびBが観察期間中に、より具体的には観察期間の終わりの方で、一緒に移動した確率が高いことを意味する。
【0126】
ここで、端末70の時間署名が温度値を含む場合である
図6を参照して記載されるケースについて考える。例えば、2つの端末AおよびBの2つの時間署名間に、SIM
T(A,B)として示される類似性基準を、以下の式を用いて定義することが可能である。
【0127】
【0128】
式(6)における用語satは、2つの端末AおよびBに対して時間tiにおいて同じ温度が測定された場合に、0による除算を回避することを意図した小さい値を有する定数(問題の実施例については例えば0.5℃に等しい)である。
【0129】
ここで、端末70の時間署名が無線署名を含む場合である
図7に記載されるケースについて考える。例えば、AおよびBとして示され、それぞれが時間署名(S
1,S
2,…,S
N)および(S
1’,S
2’,…,S
N’)を有する2つの異なる端末70を考える。時間t
iにおいて決定された各無線署名S
iが、基地局81の番号Qによって測定されるRSSIレベルのセット(RSSI
i,1,RSSI
i,2,…,RSSI
i,Q)に対応する。
【0130】
例えば、2つの時間署名間に、SIMS(A,B)として示される類似性基準を、以下の式で定義することが可能である。
【0131】
【0132】
式(9)において、用語satは、0による除算を回避するために使用され、したがって、SIS(A,B)の値を限定する定数である。
【0133】
式(3)、(6)および(9)において、関数D-1は、時間署名の2つの構成要素を隔てる距離の逆数を表す。そのような距離を定義するために、他の関数を選択できることに留意すべきである。同様に、経過した時間に応じて重み係数Wiを定義するために、他の関数を選択できる。そのような選択は、本発明の単なる代替的な実施形態である。
【0134】
特定の実施形態では、端末70の時間署名は、端末70の移動性段階を表す値(例えば
図4を参照して記載されている値)と、観察期間中に様々な時間において決定された端末の無線署名(例えば
図7を参照して記載されている値)の両方を備える。したがって、類似性基準SIM(A,B)は、例えば、移動性段階に対する類似性基準SIM
M(A,B)の凸結合として、および無線署名に対する類似性基準SIM
S(A,B)の凸結合として定義され得る。
SIM(A,B)=β・SIM
M(A,B)+(1-β)・SIM
S(A,B)(式10)
【0135】
【0136】
式(11)において、Mは、端末AおよびBの移動性段階を表す時間署名内の値MiおよびMi’の数であり、bは正の定数値である。注釈として、値Miの各々は、端末70が時間tiにて移動性段階にあるか否かに応じて、それぞれ1または0に等しい。
【0137】
したがって、t0に近い時間において端末AおよびBが類似した移動性段階を有する場合は係数βはより大きな値をとり、逆の場合は低い値をとる。したがって、t0に近い時間において端末AおよびBが一緒に移動した場合は、βは、SIMS(A,B)と比較してSIMM(A,B)に、より大きな重要性を与えることにより、SIM(A,B)の計算における重み係数として機能する。これとは反対に、t0に近い時間において端末AおよびBが類似した移動性段階を有しなかった場合は、係数βは、SIMM(A,B)と比較してSIMS(A,B)に、より大きな重要性を与える。したがって、対象端末70iの位置を推定した時間t0に対して、端末が最近、類似した移動性段階を有したか否かに応じて、無線環境に関する類似性と比較して移動性段階に関する類似性に、より大きな、またはより小さな重要性を与えることが可能である。
【0138】
5.端末の分割
考慮されたパネルの端末70を、類似性基準、または以前に決定された基準に応じて、様々なグループに分割する56ステップ56については、様々な方法が可能である。
【0139】
このステップの目的は、対象端末70iの地理的位置を推定した時間t0に先行する観察期間Tobs中に一緒に移動した確率が高い端末のグループを決定することである。したがって、これは2者間の類似性の値が特に高い端末70をグループ化することを伴う。
【0140】
各グループの端末70が類似点を共有する(すなわち、同じグループの2つの端末間の類似性基準の値が比較的大きい)という意味で、考慮されるパネルの端末70を様々な均質のグループに分けるための既知の方法はいくつかある。
【0141】
例えば、「k-means」または「k-medoids」アルゴリズムなどの、いわゆる「セントロイド」法は、「中心点」と呼ばれる、考慮される測定値の空間の特定の点を定義し、中心点とグループの端末70との間の類似点を最大化する。このような方法は一般に、端末70を最大でも1つのグループと関連させる(ハードクラスタリング法)。ある端末70が、パネルの他の端末70と十分な類似性を有しない場合、その端末は、いかなるグループとも関連せず分離されたままである。
【0142】
一代替形態では、特定の分割方法は、ある端末70があるグループに属する確率に対応する一定の程度に応じて、その端末70を、いくつかのグループと関連させる(ソフトクラスタリング法)。
【0143】
端末70の時間署名が、移動性段階を表す値の組み合わせ、および無線署名の組み合わせなど、値の2つの独立したセットの組み合わせである実施形態では、分割を実施するために、いくつかの方法が可能である。
【0144】
第1の実施例によれば、式(10)に関して上記で定義したような、2つのセットを考慮した単一の類似性基準に従って、分割が実施される。
【0145】
第2の実施例によれば、各独立セットに対して、それに特有な類似性基準に従って分割を実施することができ、得られた様々な分割間でコンセンサスが得られる。
【0146】
第3の実施例は、各セットに特有な類似性基準に応じて実施される、分割間での「条件付き独立性」に基づいている。例えば、分割は、2つのセットのうちの1つに対して、それに特有な類似性基準SIM1を基礎にして実施される。例えば、端末Aに対して、ベクトルPA=(pA1,pA2,pA3,…,pAK)、が得られ、式中、pAiは、端末Aがインデックスiを有するグループに属する確率を表す。次いで、他のセットに特有な類似性基準SIM2がとる値は、得られた分割に応じて変更され、例えば以下の通りである。
【0147】
【0148】
式中、pcは予め定められた閾値である。次いで、基準SIM2に対してこのように修正された類似性値を基礎にして、最終的な分割が実施される。
【0149】
パネルの端末70の分割56を行うために上記で提示された方法は実施例として与えられたものであり、決して限定的ではない。他の方法が可能であり、特定の方法の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0150】
6.端末のパネルの決定
ステップ52、54および56において考慮されるパネルは、例えば無線通信システム60の端末70の選択によって決定することができ、その選択においては、その端末が対象端末70iに近い(地理的に言うと)こと、または、その端末が、いくつかの端末70のグループに属する一定の性質を有することが演繹的に既知である。
【0151】
特定の実施形態では、時間t0以前の端末70の最後のメッセージの送信中に、無線通信システム60の少なくとも1つの基地局81によってカバーされた端末70であって、基地局81が時間t0において対象端末70iもカバーするような、端末70だけが選択される。
【0152】
特定の実施形態では、BSは、時間t0において対象端末70iによって送信されたメッセージを受信したNbs基地局81のセットを示し、Nmvt(A)は観察期間Tobs中の端末Aの移動性段階の数を示し、例えば以下が定義される。
【0153】
【0154】
したがって、Ptot(A)が予め定められた閾値よりも大きい端末だけが、パネルにおいて選択される。
【0155】
式(13)において、RSSIX,bs bs∈BS、は、t0以前に端末Xによって送信された最後のメッセージに対して基地局bsによって測定されたRSSIレベルである。したがって、Pradio(A)は、端末Aの無線環境に近い無線環境を有する端末70を、システム60の他の端末70の中で発見する確率を表す値である。
【0156】
式(14)において、σは、例えば、値Nmvt(X)の標準偏差に対応する。したがって、Pmvt(A)は、期間Tobs中に、端末Aの移動性段階の数に近い移動性段階の数を有する端末70を、システム60の他の端末70の中で発見する確率を表す値である。
【0157】
したがって、式(15)によって定義される用語Ptot(A)は、システム60の他の端末70の中で、無線環境の観点で、および移動の観点で、類似した条件に曝された端末70を、端末Aが発見する性質を表す。換言すれば、Ptot(A)が大きいほど、端末Aをシステム60の他の端末70とグループ化できる確率は大きい。
【0158】
端末70のパネルを決定するために上記で提示された方法は実施例として与えられたものであり、決して限定的でないことに留意すべきである。したがって、特定の方法の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0159】
7.対象端末の地理的位置の推定
本発明による地理的位置特定方法10の検索段階40は、対象端末70iの地理的位置を、対象端末70iが属する「対象グループ」と呼ばれるグループの少なくとも1つの他の端末70にとって利用可能な地理的位置特定データに応じて推定するステップ44を含む。
【0160】
本明細書の残りの部分では、決して限定的でない実施例として、端末70の時間署名は、対象端末70iの位置を推定した時間t0に先行する観察期間Tobs中の、移動性段階を表す値と、その端末70の無線署名との組み合わせであると考えられる。有利には、時間t0は、不動性段階の間に、前述の対象端末70iによって送信されたメッセージがサーバ82によって受信された時間に対応すると考えられる。
【0161】
端末70のパネルが、上記の方法のうちのいずれか1つに従って決定されることも考えられる。
【0162】
式(10)によって上述したような類似性基準を使用して、パネルの端末70の分割を実施することも考えられる。
【0163】
パネルの端末70の地理的位置が、例えば、
図2を参照して説明したような従来の地理的位置特定アルゴリズムを使用して推定され得ることも考えられる。既に上述したように、地理的位置のそのような推定は、特に、カバーされる地理的ゾーンが広大である、ならびに/または端末および/もしくは基地局の数が多い場合に、複雑で比較的不正確な場合がある。
【0164】
明細書の残りの部分は、非限定的実施例として、得られた分割、および対象グループの、または更には他のグループの1つ以上の端末70によって提供された地理的位置特定データを使用して、対象端末70iの地理的位置を、より高い精度で、および/またはより低減された複雑さで推定するいくつかの方法を提示する。
【0165】
特定の実施形態では、地理的位置特定データは、GPSレシーバを備える較正端末70cによって提供されるGPS位置である。
【0166】
第1の実施例によれば、対象端末70iは単一のグループと関連しており(「ハードクラスタリング」法)、このグループに属する少なくとも1つの較正端末70cが、アクセスネットワーク80に送られるメッセージを介して、それ以降移動していない時間であるt0に先行する時間において、そのGPS位置を提供している。したがって、対象端末70iの地理的位置は、そのGPS位置と(またはグループにとって利用可能ないくつかのGPS位置の平均と)関連している。
【0167】
第2の実施例によれば、対象端末70iは、いくつかのグループと関連し、各グループに属する一定の確率を有しており(「ソフトクラスタリング」法)、地理的位置は、前述のグループの較正端末70cによって提供される少なくとも1つのGPS位置を基礎にして(または任意選択的に、グループにとって利用可能ないくつかのGPS位置を平均することにより)、各グループに帰属している。Xkは、グループkに帰属する地理的位置であり、xj
kは、グループkのjで示される較正端末70cのGPS位置であり、pjkは、端末jがグループkに属する確率である。したがって、iとして示される対象端末70iの位置Yiは、グループに帰属する地理的位置に応じて、および対象端末70iが様々なグループに属する確率に応じて、以下の式に従って決定される。
【0168】
【0169】
特定の実施形態では、地理的位置特定データは、
図2を参照して説明したような、従来の地理的位置特定アルゴリズムによって推定される端末70の地理的位置である。好ましくは、前述の地理的位置は、それ以降は端末70がもはや移動しなかった時間であるt
0に比較的近い時間に送信されたメッセージを基礎にして推定される。
【0170】
例えば、対象端末70iは単一のグループと関連しており(「ハードクラスタリング」)、対象端末70iの地理的位置は、このグループの他の端末70の1つ以上の推定された地理的位置に応じて決定され、これは、例えば、グループの様々な端末70の推定された地理的位置を平均化することにより実施され、任意選択的に、特定の推定された位置が、他の位置に対して異常と判断された場合に除去しながら、または、特定の推定された地理的位置を、関連する無線署名のRSSIレベルに応じて他の位置に対して優先させながら実施される。
【0171】
別の実施例によれば、対象端末70iは、いくつかのグループと関連し、各グループに属する一定の確率を有しており(「ソフトクラスタリング」)、地理的位置は、前述のグループの端末70の推定された地理的位置を基礎にして各グループに帰属しており、次いで、対象端末70iの地理的位置は、式(17)を用いて前述した方法に類似の方法によって推定される。
【0172】
特定の実施形態では、対象端末70iは単一のグループに関連し(「ハードクラスタリング」)、地理的位置特定データは端末70の無線署名である。好ましくは、前述の無線署名は、それ以降は端末70がもはや移動しなかった時間であるt0に比較的近い時間に送信されたメッセージを基礎にして決定される。したがって、例えば、無線署名の各成分を平均することにより、または各成分に対して無線署名の最大値をとることにより、対象端末70iが属するグループに対して仮想無線署名が決定される。したがって、対象端末70iの地理的位置は、仮想無線署名と、基準要素のセット26とを基礎にして従来方式で推定される。
【0173】
例えば、対象端末がパネルの他の端末70との十分な類似性を有しないために、対象端末70iがいかなるグループにも属さない非常に特殊なケースでは、分割に関する情報を利用しない地理的位置の凡庸な推定で十分であるはずであることに留意すべきである。
【0174】
8.結論
上述の説明は、その様々な特徴およびそれらの利点によって、設定された目的を本発明が実現することを明らかに示している。
【0175】
具体的には、本発明による地理的位置特定方法は、従来技術に従う方法と比較して、地理的位置特定精度に関して利点をもたらす。
【0176】
実際、特定の実施形態では、対象端末70iの位置は、対象端末70iが属するグループに属する較正端末70cの1つ以上のGPS位置を基礎にして直接決定され得る。
【0177】
他の実施形態では、対象端末の位置を推定するためにGPSデータを利用可能ではなく、したがって、無線署名を基礎にした従来の地理的位置特定方法によって推定された、システムの他の端末70の地理的位置を、例えば、地理的位置特定データとして使わなければならない。この場合でさえ、対象端末70iが属するグループに属する端末70が利用可能な様々な情報の相関によって、対象端末70iの地理的位置特定の精度は、従来の方法と比較して大幅に改善される。
【0178】
本発明は、カバーされる地理的ゾーンが広大である場合(例えば、都市、国、または更には大陸をカバーしなければならない場合)、および/または、端末の数が多い(例えば数千~数十万端末)場合、および/または、基地局の数が多い(例えば数十、または更には数百、または更には数千の基地局)場合に、特によく適する。
【0179】
地理的位置特定方法の複雑さも、時間および計算能力に関して改善される。例えば、グループの全ての端末70の地理的位置を、それら端末に、前述のグループに属する1つだけの端末またはいくつかの端末の地理的位置を基礎にして推定された同じ地理的位置(グループの地理的位置に対応する)を帰属させることにより、決定することが可能である。
【0180】
一般に、上記で考慮した実施形態は非限定的な例として説明され、その結果、他の代替形態が可能であることに留意すべきである。
【0181】
特に、端末70に対して無線署名を決定するためのいくつかの方法が存在する。すなわち、端末70と基地局81との間で交換される信号のRSSIレベルを基礎にする方法、端末70と基地局81との間で交換される信号の伝搬時間を基礎にする方法、などである。特定の方法の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0182】
また、端末70に対して時間署名を決定するためのいくつかの方法が存在する。特定のタイプの測定(移動性段階の検出、温度の値、圧力の値など)の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0183】
同様に、2つの時間署名間の類似性基準を決定するためのいくつかの方法が存在する。特定の方法の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0184】
類似性基準に従って端末70をいくつかのグループに分割するために、または分割される端末70のパネルを決定するために、いくつかの方法も可能である。ここでも再び、特定の方法の選択は本発明の単なる代替形態である。
【0185】
また、システムの特定の端末70によって提供される様々なタイプの地理的位置特定データが可能である。地理的位置特定データの実施例として端末70のGPS位置を挙げたが、他の地理的位置特定データが可能である。例えば、前述のアクセスポイントの地理的位置が既知である場合、端末70が接続されるWi-FiアクセスポイントのMAC(「媒体アクセス制御:Medium Access Control」)アドレスが地理的位置特定データの1つとして機能することができる。
【0186】
本発明の概念は、単一の対象端末70iの地理的位置特定を、時間経過と共に、システム60の他の端末70から独立して行う場合にも適用することができる。例えば、対象端末70iの移動性段階が、無線署名S1とS2がそれぞれ対応する2つの時間t1とt2の間に検出されないケースでは、2つの無線署名S1とS2が類似している場合、それら両方を使用して対象端末70iの同じ位置を推定することができる。拡張として、N≧2である無線署名Siのグループが類似しており時間tiにて決定され(インデックスiは1からNまで変化)、その間に対象端末70iが移動しなかった場合、このグループを使用することができる。そのような方法は、対象端末70iの地理的位置の推定の精度を改善すること、ならびに、過去に実施された推定を相関させることを可能にし得る。しかし、無線署名が類似していない場合、移動性段階が外れたと想定することができ、各無線署名に対して異なる地理的位置が推定されなければならない。
【0187】
本発明は一例として説明してきたが、同時に、ロジスティクスの分野において使用されるIoTタイプの無線通信システム60(IoT通信システム60の端末を備えるパレットの輸送)を考慮している。しかし、他の実施例によれば、モバイル電話通信ネットワークなどの他の無線通信システム、および、任意選択的に他の工業分野における他の使用を考慮することを除外するものではない。