(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20250131BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20250131BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20250131BHJP
G02B 27/48 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B6/42
H04N5/64 511A
G02B27/48
(21)【出願番号】P 2019160100
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【氏名又は名称】岸本 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100226470
【氏名又は名称】渡辺 由佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】有田 与希
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】喜々津 徳胤
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116075(JP,A)
【文献】特開平3-179314(JP,A)
【文献】特開2003-156698(JP,A)
【文献】特開2009-139940(JP,A)
【文献】特開2005-126448(JP,A)
【文献】特開平4-242715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/35,6/42
G02B26/00-26/08
G02B27/01-27/02,27/48
H04N5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の第1部位に設置されるレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光が入射する位置に一端が配置された光ファイバ
と、
前記光ファイバの他端と表示面の間に配置された画像表示素子と、
前記移動体の前記第1部位とは材質又は厚みが異なり、前記移動体が移動する際に前記
第1部位とは異なる振動をする第2部位に、該第2部位の振動が前記光ファイバの中間部
分に伝わ
った結果として使用者が画像中のスペックルを看取し得なくなるように該中間部分を固定する固定部とを備え、
前記画像表示素子は、透過型液晶パネルであり、前記光ファイバ内を伝播して前記光フ
ァイバから出射する前記レーザ光を通過させて、前記画像表示素子に表示された画像を虚
像として前記表示面に投影させることを特徴とする移動体搭載用画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、特に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display、「ヘルメットマウントディスプレイ」ともいう)やヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)等の、使用者の眼前に画像情報を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転翼機や航空機では、操縦者(使用者)が頭部に装着するヘルメットに設けられたバイザや、操縦者が眼前に装着するゴーグルや眼鏡等の被投影物に画像を投影することにより、操縦者の眼前に画像情報を表示するHMDが用いられている。このようなHMDとして、例えば、光源と、ヘルメットに固定された透過型液晶パネルから成る表示素子と、一端で光源から発した光を受光し他端から該光を該表示素子の背後に照射するように配置された光ファイバとを有するものが挙げられる。この構成によれば、光源から発した光を、光ファイバを通して表示素子の背後に照射し、表示素子を通過した光を被投影物に投影することにより画像情報を表示する。このように光ファイバを使用することにより、光源を、操縦者が装着するヘルメット等の装着物の外に設けることができ、画像表示装置の頭部装着部分の重量を軽減することができる。
【0003】
上記光源には、一般にレーザ光源が用いられる。レーザ光源は、生成する光(レーザ光)の波長のずれが小さいという点と、光源から光ファイバに光を効率良く導入することができるという点で、LED(発光ダイオード)等の他の光源よりも優れている。
【0004】
しかしながら、レーザ光源及び光ファイバを用いると、光ファイバを通過した光が干渉によって斑点状の干渉パターン(スペックル)が生成された状態で表示素子に照射され、被投影物に投影される画像にスペックルが重畳されてしまうという問題が生じる。このようなスペックルは、光ファイバを通過した複数の伝播モードの光がそれらの位相差に因って互いに干渉することによって生じる(特許文献1参照)。
【0005】
そこで、特許文献1には、画像表示装置に、光ファイバに振動を付与する振動発生装置を設けることが記載されている。これにより、光ファイバの位置が変動し、それによって各伝播モードの重み付けが変化するため、スペックルにも変動が生じる。そして、人が看取し得ない程の高い周波数でスペックルが変動すると、レーザ光が光ファイバ及び表示素子を通過して被投影物に投影された画像においてHMD使用者がスペックルを看取し得ないため、スペックルによる問題を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許公開公報第2010/0053729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような振動発生装置を用いる場合、当該振動発生装置を動作させるための電力が必要になるため、ランニングコストが増加する。
【0008】
ここまでは回転翼機及び航空機の操縦者が画像表示装置を使用する場合を例に説明したが、自動車や鉄道車両等、回転翼機及び航空機以外の人を搭乗させて移動する移動体の操縦者、あるいは、(回転翼機及び航空機、並びにそれら以外のものを含む)移動体に搭乗する操縦者以外の者(乗客等)が画像表示装置を使用する場合にも、同様の問題が生じる。また、上記の例では操縦者が装着するヘルメット等の装着物に画像を投影するHMDを例に説明したが、そのような装着物以外の、回転翼機や航空機の風防や自動車のフロントガラス等の被投影物に画像を投影することによって使用者の眼前に画像情報を表示するHUD等の画像表示装置にも、同様の問題が生じる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る移動体搭載用画像表示装置は、
移動体の第1部位に設置されるレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光が入射する位置に一端が配置された光ファイバと、
前記光ファイバの他端と表示面の間に配置された画像表示素子と、
前記移動体の前記第1部位とは異なる第2部位と前記光ファイバの中間部分を固定する固定部と
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る移動体搭載用画像表示装置では、光ファイバは、光源側の端部(前記一端)においては移動体の第1部位と同じ振動をし、中間部分では第2部位と同じ振動をする。これら第1部位と第2部位は移動体の異なる部位であるため、移動体が移動する際に互いに異なる振動をする。このように、光ファイバは端部と中間部分で異なる振動をするため、その形状(曲率)が変動し、光ファイバ内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、移動体搭載用画像表示装置の使用者がスペックルを看取し得なくなる。本発明に係る移動体搭載用画像表示装置によれば、中間部分に振動を付与するための電力が不要であるため、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る移動体
搭載用画像表示装置の第1実施形態を示す概略構成図。
【
図2A】光ファイバに振動が生成されていない場合に、光ファイバから出射したレーザ光の像を撮影した写真。
【
図2B】光ファイバに振動が生成されている場合に、光ファイバから出射したレーザ光の像を撮影した写真。
【
図3】本発明に係る移動体
搭載用画像表示装置の第2実施形態を示す概略構成図。
【
図4】第2実施形態の移動体
搭載用画像表示装置の変形例を示す概略構成図。
【
図5】本発明に係る移動体
搭載用画像表示装置の第3実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図5を用いて、本発明に係る移動体
搭載用画像表示装置(以下、「画像表示装置」と略記する)の実施形態を説明する。
【0019】
(1) 第1実施形態
(1-1) 第1実施形態の画像表示装置の構成
図1に、第1実施形態の画像表示装置10の概略構成を示す。この画像表示装置10は、レーザ光源11と、光ファイバ12と、中間加振部13と、画像表示素子14と、ハーフミラー15とを有している。
【0020】
レーザ光源11は筐体111内に収容されており、該筐体111は移動体の床91(前記第1部位に該当)に載置されている。筐体111内にはレーザ光源11の他に、レーザ光源11からのレーザ光を光ファイバ12の一方の端部(「第1端部121」とする)に導入する2枚のレンズ112、113が収容されている。筐体111には光ファイバ12の第1端部121付近の部分を挿入させる孔が設けられており、該孔に挿入された光ファイバ12は第1端部121がレンズ113に対向する位置に配置されるように筐体111に固定されている。
【0021】
光ファイバ12には、本実施形態ではマルチモードファイバを用いている。光ファイバにはマルチモードファイバの他にシングルモードファイバがあるが、マルチモードファイバの方がコアの径が大きく、より多くの光量の光を通過させることができる点で優れている。一方、マルチモードファイバは、複数の伝播モードの光が伝播することから、従来の画像表示装置においてスペックルが生じる主な要因となっていたものである。
【0022】
光ファイバ12の中間部分にある被固定部123は、移動体の側壁92(前記第2部位に該当)に接着剤で貼付されることによって固定されている。この接着剤が固化したものが中間加振部13である。中間加振部13は、側壁92に生じる振動を光ファイバ12の被固定部123に伝達させ、該被固定部123を加振する。なお、金具等の、接着剤が固化したもの以外の固定部材を中間加振部13として用いてもよい。
【0023】
画像表示素子14は透過型液晶パネルから成り、光ファイバ12の他方の端部(「第2端部122」とする)から出射する光の光路上に設けられている。第2端部122と画像表示素子14の間には、光ファイバ12から出射する光を平行光にするレンズ141と、レンズ141を通過した光を拡散(散乱)させる拡散板142が配置されている。画像表示素子14には、画像を表示させるための画像信号を画像表示処理装置(図示せず)から受信するための信号線143が接続されている。
【0024】
ハーフミラー15は、画像表示素子14の透過型液晶パネルを通過した光が投影されることにより、画像表示素子14に表示された画像を虚像として使用者に視認させるものである。本実施形態では、ハーフミラー15は、使用者(移動体の操縦者)が装着するヘルメットに設けられた略透明なバイザである。使用者は、ハーフミラー15を通して通常の視野に見える像に、画像表示素子14に表示された画像を虚像として重畳した像を視認する。なお、ハーフミラー15の代わりに不透明なミラーを用いたうえで、画像表示装置10にさらに、使用者の通常の視野に相当する画像を撮影するカメラを設け、該カメラで撮影される画像と、画像表示処理装置から供給される画像信号に基づく画像を重畳した画像を画像表示素子14に表示し、ミラーに投影することにより、この重畳した画像を虚像として使用者に視認させることも可能である。画像表示素子14とハーフミラー15の間には、画像表示素子14からの光をハーフミラー15に導入する表示光学系151が設けられている。
【0025】
光ファイバ12の第2端部122、レンズ141、拡散板142、画像表示素子14及び表示光学系151、並びに前述のハーフミラー15(
図1中に破線で囲んで示した各構成要素)は、ヘルメットに固定されている。
【0026】
光ファイバ12のうち、ここまでに述べた第1端部121、被固定部123及び第2端部122以外の部分は他の物に固定されておらず、外部から振動が付与されると当該部分が振動し、その振動に応じて変形する。
【0027】
(1-2) 第1実施形態の画像表示装置の動作
第1実施形態の画像表示装置10の動作を説明する。画像表示装置10を動作させる前に、使用者は、ヘルメットを頭部に装着する。使用者は、バイザ(ハーフミラー15)を通して外部を視認する。
【0028】
画像表示装置10は、移動体が移動している時に使用する。画像表示素子14には画像表示処理装置から信号線143を通して送信される画像信号に基づいて透過型液晶パネルに画像を表示する。それと共に、レーザ光源11はレーザ光を出射する。レーザ光は、レンズ112、113を通って第1端部121から光ファイバ12に入射し、光ファイバ12内を伝播した後、第2端部122から出射し、レンズ141及び拡散板142を通って画像表示素子14に入射する。そして、レーザ光は画像表示素子14の透過型液晶パネルを透過し、ハーフミラー15で反射する。これにより、画像表示素子14に表示される画像を虚像として使用者に視認させる。
【0029】
移動体が移動している時には、移動体の動力源(エンジン等)から発生する振動や、移動体が外部から受ける空気抵抗による振動、或いは自動車の場合には路面から受ける振動等によって、移動体の床91及び側壁92にも振動が生じる。光ファイバ12の第1端部121には、床91の振動が筐体111を介して伝達する。一方、光ファイバ12の中間部分の被固定部123には、側壁92の振動が中間加振部13により伝達する。ここで、床91と側壁92は材質や厚みが異なることから、互いに異なる振幅、周期及び/又は位相で振動する。そのため、第1端部121と被固定部123は互いに異なる振幅、周期及び/又は位相で振動する。そうすると、光ファイバ12の形状(曲率)が変動し、光ファイバ12内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、画像表示装置10の使用者が画像中のスペックルを看取し得なくなる。
【0030】
第1実施形態の画像表示装置10によれば、移動体に生じる振動を中間加振部13により光ファイバ12の中間部分に伝えることで該光ファイバ12を振動させるため、光ファイバ12を振動させるための電力が不要であり、ランニングコストを抑えつつレーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0031】
次に、光ファイバ12に振動が生成されていない場合と、振動が生成されている場合のそれぞれについて、光ファイバ12から出射されるレーザ光を観測した結果を示す。この実験では、第2端部122から出射されるレーザ光をスクリーン(画像表示装置10の構成要素ではなく、本実験のために第2端部122に対向して設けられたもの)に投影した像をカメラで撮影した。光ファイバ12には、実際に移動体の側壁92で生じた振動の代わりに、光ファイバ12の両端を固定したうえでやや弛ませ、該両端を結ぶ直線の周りに光ファイバ12の中間部分が回転移動するように(縄跳びの要領で)光ファイバ12全体を回転させることにより付与した。光ファイバ12の回転半径は最大の位置で6mm、回転周波数は2Hz以下とした。カメラの露光時間は、人が変化を認識することができる周期に対応する0.033秒(周期60Hz)とした。なお、通常、移動体の床91は重量物を支持するために強度を要することから、側壁92よりも振動し難い部材で作製されている。そのため、本実験では、床91の振動に起因する第1端部121の振動は、側壁92の振動に起因する被固定部123の振動よりも十分に小さいものとして無視し、第1端部121に付与していない。
【0032】
スクリーンに投影した像を撮影した写真を、光ファイバ12に振動が付与されていない場合については
図2Aに、光ファイバ12に振動が付与されている場合については
図2Bに、それぞれ示す。光ファイバ12に振動が付与されていない場合には、像の中に黒い斑点が見られるのに対して、光ファイバ12に振動が付与されている場合にはそのような斑点はほとんど見られない。従って、第1実施形態の画像表示装置10によれば、この実験で光ファイバ12に付与した振動と同程度の周波数及び振幅を有する移動体の側壁92の振動に基づいて被固定部123に振動が生じることにより、スペックルの影響の無い画像を表示することができる。
【0033】
(2) 第2実施形態の画像表示装置
(2-1) 第2実施形態の画像表示装置の構成
図3に、第2実施形態の画像表示装置20の概略構成を示す。この画像表示装置20は、レーザ光源11と、光ファイバ12と、発電部231と、中間加振部232と、充電池233と、画像表示素子14と、ハーフミラー15とを有している。レーザ光源11、光ファイバ12、画像表示素子14及びハーフミラー15の構成は、第1実施形態の画像表示装置10におけるそれらと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
発電部231と充電池233、及び充電池233と中間加振部232の間は、それぞれ電気的に接続されている。発電部231は移動体の側壁92に固定されており、側壁92から受ける機械的振動を交流電力に変換する圧電変換素子を有する。充電池233は、発電部231が発電した電力を充電する。中間加振部232は光ファイバ12の中間部分にある被固定部223に固定されており、充電池233から供給される直流電力を、所定の周波数を有する交流電力に変換する電力変換部と、該交流電力を機械的振動に変換する圧電変換素子とを有する。この所定の周波数は、それと同じ周波数の振動が光ファイバ12に付与されたときに、人がスペックルを看取し得なくなる程度の高い値に設定する。中間加振部232が有する圧電変換素子の機械的振動により、光ファイバ12の被固定部223を加振する。
【0035】
なお、充電池233を省略し、発電部231と中間加振部232を直接電気的に接続してもよい。この場合、発電部231で発電された電力によって、中間加振部232が有する圧電変換素子を機械的に振動させる。
【0036】
(2-2) 第2実施形態の画像表示装置の動作
第2実施形態の画像表示装置20の動作を説明する。画像表示装置20は、移動体が移動している時に使用する。第1実施形態の画像表示装置10と同様に、画像表示素子14の透過型液晶パネルに画像を表示すると共に、レーザ光源11からレーザ光を出射することにより、透過型液晶パネルに表示された画像がスクリーン15で反射する。これにより、画像表示素子14に表示される画像を虚像として使用者に視認させる。
【0037】
光ファイバ12の第1端部121には、移動体が移動する際に床91に生じる振動が筐体111を介して伝達する。一方、光ファイバ12の中間部分にある被固定部223には、側壁92の振動を発電部231によって電力に変換したうえで、この(本実施形態では、充電池233に充電されたうえで、該充電池233から供給される)電力により動作する中間加振部232により振動が付与される。これにより、第1端部121と被固定部223は互いに異なる振幅、周期及び/又は位相で振動するため、光ファイバ12の形状(曲率)が変動し、光ファイバ12内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。そのため、スペックルにも変動が生じ、画像表示装置20の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0038】
第2実施形態の画像表示装置20によれば、第1実施形態の画像表示装置10と同様に、光ファイバ12を振動させるための電力が不要であり、ランニングコストを抑えつつレーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0039】
さらに、充電池233を設けた場合には、発電部231で変換された電力を一旦充電池233で充電してから中間加振部232に供給するため、中間加振部232に安定した電力を供給することができ、光ファイバ12の中間部分を安定した振幅及び周波数で加振することができる。これにより、レーザ光の干渉による画像劣化への影響をより確実に抑えることができる。
【0040】
(3) 第2実施形態の変形例の画像表示装置
図4に、第2実施形態の変形例の画像表示装置30の概略構成を示す。この画像表示装置
30は、第2実施形態の画像表示装置20における中間加振部232の代わりに、以下のような中間加振部(捻り振動加振部)332を有する。この中間加振部332は、光ファイバ12の中間部分の一部である被把持部323を把持する把持部と、該把持部において光ファイバ12が延びる方向を軸として該光ファイバ12を回動させるモータと、該モータの回動を制御する制御部とを有する。モータ及び制御部は、充電池233から供給される電力によって動作する。制御部は、モータが所定角度だけ回動する毎に該モータの回動方向を逆転させるように制御する。
【0041】
この変形例の画像表示装置30では、側壁92の振動により発電部231が発電した電力を充電池233に充電し、充電池233から供給される電力によって、中間加振部332のモータが制御部による制御に従って、所定角度だけ回動する毎に回動方向が逆転するように動作する。これにより、光ファイバ12は、筐体111に固定された第1端部121やヘルメットに固定された第2端部122に対して、把持部において光ファイバ12が延びる方向を軸として回動する。この回動によって光ファイバ12には捻りが生じ、さらに所定角度だけ回動する毎に回動方向が逆転することにより、光ファイバ12に捻り振動が生じる。この捻り振動により、光ファイバ12の形状(曲率)が変動し、光ファイバ12内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、画像表示装置30の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0042】
この変形例の画像表示装置30によれば、第2実施形態の画像表示装置20と同様に、光ファイバ12を振動させるための電力が不要であり、ランニングコストを抑えつつレーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。さらに、光ファイバ12に捻り振動が生じることにより、往復運動の振動が生じる場合よりも光ファイバ12の形状の変化が大きくなるため、より確実に、使用者がレーザ光の干渉パターンを看取しないようにすることができる。
【0043】
なお、この変形例の画像表示装置30では、光ファイバ12の中間部分は、移動体の往復振動とは別の捻り振動が生じる。
【0044】
(4) 第3実施形態
(4-1) 第3実施形態の画像表示装置の構成
図5に、第3実施形態の画像表示装置40の概略構成を示す。この画像表示装置40は、レーザ光源11と、光ファイバ12と、制振材43と、画像表示素子14と、ハーフミラー15とを有している。レーザ光源11、光ファイバ12、画像表示素子14及びハーフミラー15の構成は、第1実施形態の画像表示装置10におけるそれらと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
制振材43はバネから成り、一方の端が移動体の床91に、他方の端が光ファイバ12の中間部分にある固定点423に、それぞれ固定されている。なお、制振材43はバネには限定されず、ゴムやウレタンフォームなどの弾性体であってもよい。
【0046】
(4-2) 第3実施形態の画像表示装置の動作
第3実施形態の画像表示装置40の動作を説明する。画像表示装置40は、移動体が移動している時に使用する。第1実施形態の画像表示装置10と同様に、画像表示素子14の透過型液晶パネルに画像を表示すると共に、レーザ光源11からレーザ光を出射することにより、透過型液晶パネルに表示された画像がハーフミラー15で反射する。これにより、画像表示素子14に表示される画像を虚像として使用者に視認させる。
【0047】
光ファイバ12の第1端部121には、移動体が移動する際に床91に生じる振動が筐体111を介して伝達する。一方、光ファイバ12の中間部分にある固定点423が制振材43により床91と接続されているため、光ファイバ12の固定点423及びその周囲は床91とは別の振動が可能な自由振動部分となっている。これにより、第1端部121と自由振動部分とで異なる振動をするため、光ファイバ12の形状(曲率)が変動し、光ファイバ12内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、画像表示装置40の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0048】
第3実施形態の画像表示装置40によれば、振動を付与するための電力が不要であるため、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0049】
(5) その他の変形例
本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の趣旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、第1実施形態の画像表示装置10では、光ファイバ12の中間部分の被固定部123を移動体の側壁92に固定したが、その代わりに、移動体の天井や、床91のうち筐体111から離れた位置に固定してもよい。同様に、第2実施形態及びその変形例の画像表示装置20、30では、発電部231を移動体の天井や、床91のうち筐体111から離れた位置に固定してもよい。
【0051】
第3実施形態の画像表示装置40では、制振材43であるバネの一方の端を移動体の床91に固定したが、側壁や天井等、床91以外の移動体の部分に固定してもよい。あるいは、制振材43の代わりに、光ファイバ12の中間部分に紐を結びつけ、紐の端を移動体の天井に固定してもよい。
【0052】
第3実施形態の変形例として、制振材43の代わりに、移動体の振動を受けて所定の固有振動数で振り子運動する振り子と、該振り子の振り子運動を捻り振動として前記光ファイバに伝達する機構を組み合わせたものを用いることができる。この構成によれば、第2実施形態の変形例の画像表示装置30と同様に、光ファイバ12を振動させるための電力が不要であり、ランニングコストを抑えつつレーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができるうえに、光ファイバ12に捻り振動が生じることによって往復運動の振動が生じる場合よりも光ファイバ12の形状の変化が大きくなるため、より確実に、使用者がレーザ光の干渉パターンを看取しないようにすることができる。
【0053】
上記各実施形態では、使用者が装着するヘルメットに設けられたバイザをハーフミラーとするHMDを例として説明したが、ゴーグル等のバイザ以外のものをハーフミラーとして用いてもよいし、移動体内に設置したハーフミラーを用いるHUDに本発明を適用してもよい。
【0054】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0055】
(第1項)
一態様の移動体搭載用画像表示装置は、
移動体の第1部位に設置されるレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光が入射する位置に一端が配置された光ファイバと、
前記光ファイバの他端と表示面の間に配置された画像表示素子と、
前記移動体の前記第1部位とは異なる第2部位と前記光ファイバの中間部分を固定する固定部と
を備える。
【0056】
第1項に記載の移動体搭載用画像表示装置では、光ファイバは、光源側の端部においては移動体の第1部位と同じ振動をし、中間部分では第1部位とは異なる第2部位と同じ振動をすることから、端部と中間部分で異なる振動をするため、その形状(曲率)が変動し、光ファイバ内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、移動体搭載用画像表示装置の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0057】
第1項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、中間部分に振動を付与するための電力が不要であるため、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0058】
(第2項)
他の一態様の移動体搭載用画像表示装置は、
移動体の第1位置に設置されるレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光が入射する位置に一端が配置された光ファイバと、
前記光ファイバの他端と表示面の間に配置された画像表示素子と、
前記移動体の振動を電力に変換する発電部と、
前記発電部の電力により前記光ファイバの中間部分を加振する中間加振部と
を備える。
【0059】
第2項に記載の移動体搭載用画像表示装置では、第1項に記載の移動体搭載用画像表示装置と同様の理由により、光ファイバが端部と中間部分で異なる振動をするため、その形状(曲率)が変動し、光ファイバ内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、移動体搭載用画像表示装置の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0060】
第2項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、中間部分に振動を付与するための電力が不要であるため、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0061】
(第3項)
第2項に記載の移動体搭載用画像表示装置において、さらに、前記発電部で変換された電力を充電し、充電した電力を前記中間加振部に供給する充電池を備える。
【0062】
第3項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、発電部で変換された電力を一旦充電池で充電してから中間加振部に供給するため、中間加振部に安定した電力を供給することができ、光ファイバの中間部分を安定した振幅及び周波数で加振することができる。これにより、レーザ光の干渉による画像劣化への影響をより確実に抑えることができる。
【0063】
(第4項)
第2項又は第3項に記載の移動体搭載用画像表示装置において、前記中間加振部は、前記光ファイバの中間部分に捻り振動を加える捻り振動加振部である。
【0064】
第4項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、光ファイバに捻り振動が生じることにより、往復運動の振動が生じる場合よりも光ファイバの形状の変化が大きくなるため、より確実に、使用者がレーザ光の干渉パターンを看取しないようにすることができる。
【0065】
(第5項)
さらに他の一態様の移動体搭載用画像表示装置は、
移動体の第1位置に設置されるレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光が入射する位置に一端が配置された光ファイバと、
前記光ファイバの他端と表示面の間に配置された画像表示素子と、
を備える移動体搭載用画像表示装置において、
前記光ファイバの中間部分に自由振動部分が設けられているものである。
【0066】
第5項に記載の移動体搭載用画像表示装置では、光ファイバはレーザ光源側の端部と自由振動部分とで異なる振動をするため、その形状(曲率)が変動し、光ファイバ内を伝播するレーザ光の各伝播モードの重み付けが変化する。これにより、スペックルにも変動が生じ、移動体搭載用画像表示装置の使用者がスペックルを看取し得なくなる。
【0067】
第5項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、自由振動部分に振動を付与するための電力が不要であるため、ランニングコストを抑えつつ、レーザ光の干渉による画像劣化への影響を抑えることができる。
【0068】
(第6項)
第5項に記載の移動体搭載用画像表示装置において、さらに、前記移動体の振動を捻り振動に変換して該自由振動部分に該捻り振動を付与する捻り振動加振部を備える。
【0069】
第6項に記載の移動体搭載用画像表示装置によれば、光ファイバに捻り振動が生じることにより、往復運動の振動が生じる場合よりも光ファイバの形状の変化が大きくなるため、より確実に、使用者がレーザ光の干渉パターンを看取しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0070】
10、20、30、40…画像表示装置
11…レーザ光源
111…筐体
112、113、141…レンズ
12…光ファイバ
121…第1端部
122…第2端部
123、223…被固定部
13、232、332…中間加振部
14…画像表示素子
142…拡散板
143…信号線
15…ハーフミラー
151…表示光学系
231…発電部
233…充電池
323…被把持部
423…固定点
43…制振材
91…床
92…側壁