(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】麺類および製麺用穀粉組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20250128BHJP
【FI】
A23L7/109 A
(21)【出願番号】P 2020006696
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】笛田 秀人
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-055843(JP,A)
【文献】特開平09-271339(JP,A)
【文献】特開2019-118318(JP,A)
【文献】特開平05-137527(JP,A)
【文献】特開2011-254805(JP,A)
【文献】でん粉の麺用途における最近の動向,農畜産業振興機構[オンライン],[2024年7月30日検索],インターネット: <URL: https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000031.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、アセチル化澱粉
(アセチル化酸化澱粉を除く)およびα化澱粉を含有し、たん白質含量が4.5質量%以上である製麺用穀粉組成物であって、
α化澱粉の含有量が穀粉組成物全体の4~35質量%であり、α化澱粉の溶液粘度が
75~410mPa・sであり、
ここで、α化澱粉の溶液粘度が、固形分として1.2gのα化澱粉に2.4gのエタノールを添加して撹拌した後、合計30.0gになるように水を加えてさらに撹拌し、ラピッドビスコアナライザー(RVA)を用いて、25℃で30分間保持した後に160rpmで測定した粘度である、上記穀粉組成物。
【請求項2】
たん白質含量が15質量%以下である、請求項1に記載の穀粉組成物。
【請求項3】
前記α化澱粉の溶液粘度が
100~370mPa・sである、請求項1または2に記載の穀粉組成物。
【請求項4】
前記アセチル化澱粉が、アセチル化タピオカ澱粉を含む、請求項1~3のいずれかに記載の穀粉組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の穀粉組成物を原料とする麺類。
【請求項6】
前記麺類が乾麺である、請求項5に記載の麺類。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の穀粉組成物を原料として製麺することを含む、麺類の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の穀粉組成物を原料として製麺することを含む、前記α化澱粉を用いない場合と比較して麺類の茹で上がり時間を短縮する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類および麺類を製造するための穀粉組成物に関する。また、本発明は、麺類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類に澱粉類を配合することが知られている。例えば、特許文献1には、たん白質含量が低い麺類に澱粉を配合することによって、生地粘度を調整して製麺性などを改善することが記載されている。また、特許文献2には、小麦粉やグルテンを含まない麺にα化澱粉を使用することによって、ロール式製麺機で良好に製麺できることが記載されている。さらに、特許文献3には、麺類にアセチル化酸化澱粉を配合することによって麺の茹で上がりを改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-327424号公報
【文献】特開2019-118318号公報
【文献】特開2011-254805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に記載されているように、アセチル化酸化澱粉などを麺類に配合することによって麺の茹で上がりを改善することが知られている。ところが、多量の澱粉類を麺類に添加した場合、麺中の小麦由来のたん白質含量が低くなるため、乾燥時に落麺などが発生して製品歩留まりが低下することがある。これを改善するために粉末グルテンを添加することもあるが、早茹でという観点では粉末グルテンの添加は逆効果である。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明の目的は、茹で上がりの早い麺類を効率的に製造する技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題について鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の粘度特性を有するα化澱粉を麺類に配合することによって、茹で上がりの早い麺類を効率的に製造することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
これに限定されるものでないが、本発明は、下記の発明を包含する。
[1] 小麦粉およびα化澱粉を含有し、たん白質含量が4.5質量%以上である製麺用穀粉組成物であって、α化澱粉の含有量が、穀粉組成物全体の4~35質量%であり、α化澱粉の溶液粘度が50mPa・s以上であり、ここで、α化澱粉の溶液粘度が、固形分として1.2gのα化澱粉に2.4gのエタノールを添加して撹拌した後、合計30.0gになるように水を加えてさらに撹拌し、ラピッドビスコアナライザー(RVA)を用いて、25℃で30分間保持した後に160rpmで測定した粘度である、上記穀粉組成物。
[2] たん白質含量が15質量%以下である、[1]に記載の穀粉組成物。
[3] [1]または[2]に記載の穀粉組成物を原料とする麺類。
[4] 前記麺類が乾麺である、[3]に記載の麺類。
[5] [1]または[2]に記載の穀粉組成物を原料として製麺することを含む、麺類の製造方法。
[6] [1]または[2]に記載の穀粉組成物を原料として製麺することを含む、麺類の茹で上がり時間を短縮する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、茹で上がりの早い麺類を効率的に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一つの態様において、本発明は製麺用の穀粉組成物に関する。本発明の穀粉組成物は、小麦粉とα化澱粉を含有し、麺類を製造するために用いられ、好ましい態様において粉体の形態である。
【0010】
小麦粉
本発明に係る製麺用穀粉組成物は、小麦粉を含有する。本発明に係る穀粉組成物に用いる小麦粉は、目的の麺類の種類に応じて適宜に選択され、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉などから選ばれる1種または2種以上の小麦粉を使用することができる。また、原料となる小麦の産地や品種などは特に限定されず、例えば、硝子質小麦であっても粉状質小麦であってもよく、普通系小麦であっても二粒系小麦であってもよい。本発明においては、1種の小麦から小麦粉を製造することもできるし、2種以上の小麦を組み合わせて小麦粉を製造することもできる。本発明においては全粒粉を用いてもよい。小麦粉は一般的な方法で製造することができるが、例えば、常法にしたがって精選した小麦粒を、加水・調質(テンパリング)した後、必要に応じて、ブレーキング工程、グレーディング工程、ピュリフィケーション工程などを行い、必要に応じて、粉砕機を用いて粒径を調整することができる。
【0011】
本発明に係る穀粉組成物は、好ましい態様において、穀粉組成物に対して50~80質量%の小麦粉を含有し、より好ましくは52~75質量%、さらに好ましくは55~73質量%の小麦粉を含有する。
【0012】
本発明において小麦粉の灰分は特に限定されず、製造する麺類の特性を踏まえて選択すればよい。好ましい態様において、本発明に係る小麦粉の灰分は0.90%以下であり、より好ましくは0.85%以下、さらに好ましくは0.80%以下であり、0.70%以下としてもよい。
【0013】
α化澱粉
本発明に係るα化澱粉は、下記の方法で測定したRVA粘度が50mPa・s以上である。このような粘度特性を有するα化澱粉を麺類に配合することによって、α化澱粉が適度に水分を保持することにより良好な生地が得られ、効率的に麺類を製造することが可能になる。α化澱粉のRVA粘度は、低すぎると本発明の効果が得られにくくなり、高すぎると水分を保持しすぎるため生地がべたつき、製麺しにくくなる。α化澱粉のRVA粘度は、50~430mPa・sであることが好ましく、50~410mPa・sであることがより好ましい。本発明に係るα化澱粉のRVA粘度は、75~390mPa・sとしてもよく、100~370mPa・sや125~350mPa・sとしてもよい。
【0014】
(α化澱粉の溶液粘度の測定方法)
固形分として1.2gのα化澱粉に2.4gのエタノールを添加して撹拌した後、合計30.0gになるように水を加えてさらに撹拌し、ラピッドビスコアナライザーを用いて、25℃で30分間保持した後の粘度を160rpmで測定する。
【0015】
本発明においてα化澱粉の含有量は、穀粉組成物全体の4~35質量%である。α化澱粉の含有量は、多すぎても少なすぎても本発明の効果が得られにくくなる。α化澱粉の含有量は、穀粉組成物全体の5~30質量%が好ましく、5.5~20質量%がより好ましく、6~15質量%がさらに好ましい。
【0016】
本発明で用いるα化澱粉は、上記の所定の粘度特性を有していれば、どのような澱粉に由来するものであってもよく、物理的または化学的加工を施した加工澱粉であってもよい。本発明における澱粉は、例えば、小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉などの麦類澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、およびアミロメイズ澱粉から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。
【0017】
また、本発明に係るα化澱粉は、α化されていれば、他の加工を組み合わされたα化澱粉であってもよい。本発明に係るα化澱粉は、例えば、酸化;酸処理;アセチル化などのエステル化;リン酸化;ヒドロキシプロピル化などのエーテル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋などの架橋、などの加工がなされていてよい。
【0018】
製麺用穀粉組成物
本発明に係る穀粉組成物は、たん白質含量が4.5%以上である。たん白質含量が少なすぎると、本発明の効果を得られにくくなる。好ましい態様において、穀粉組成物のたん白質含量は5%以上であり、5.5%以上としてもよい。たん白質含量の上限は特に制限されないが、例えば、15%以下としてもよく、10%以下や8%以下としてもよい。
【0019】
本発明において、麺類の原料粉となる穀粉組成物に含まれる小麦粉およびα化澱粉以外の材料は特に制限はない。本発明に係る穀粉組成物は、小麦粉以外の穀粉、α化澱粉以外の澱粉などを含んでいてよい。小麦粉以外の穀粉としては、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、およびホワイトソルガム粉、それらを加熱処理して得られる加熱穀粉から選ばれる1種または2種以上の穀粉類を使用することができる。また、小麦のふすまを含んでもよい。α化澱粉以外の澱粉としては、例えば、小麦澱粉、大麦澱粉、ライ麦澱粉、エンバク澱粉などの麦類澱粉、トウモロコシ澱粉、米澱粉、豆類澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、ヒシ澱粉、クリ澱粉、サゴ澱粉、ナガイモ澱粉、レンコン澱粉、クワイ澱粉、ワラビ澱粉、ユリネ澱粉、およびアミロメイズ澱粉から選ばれる1種又は2種以上を原料として、α化以外の加工を施した加工澱粉などが挙げられる。ここで、澱粉は物理的または化学的に加工することができ、例えば、酸化;酸処理;アセチル化等のエステル化;リン酸化;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化;リン酸架橋、アジピン酸架橋などの架橋、などの加工をすることができる。
【0020】
本発明の製麺用穀粉組成物は、副原料をさらに含んでいてよい。本発明で用いられる副原料としては、例えば、大豆たん白質、小麦たん白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳などのたん白質素材;動植物油脂、粉末油脂などの油脂類;かんすい、食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料などが挙げられる。本発明では、目的とする麺の種類に応じて、これら副原料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0021】
麺類
本発明に係る麺類とは、中華麺やスパゲッティ、マカロニなどのパスタ類に用いられる麺線や麺帯はもちろん、餃子やしゅうまいなどに用いられる麺皮を包含する概念である。また、本発明の麺類の種類に特に制限はなく、例えば、中華麺、焼きそば、うどん、そば、冷麺、およびパスタ類などの麺線や麺帯はもちろん、餃子やしゅうまい、ワンタン、ラビオリなどに用いられる麺皮が挙げられる。本発明に係る麺類として、例えば、パスタ(スパゲッティ、スパゲッティーニ、カッペリーニ、タリアテッレ、フェットチーネ、リングイーネ、パッパルデッレ、ラザニア、ラビオリなど)、うどん、そば、そうめん、ひやむぎ、冷麺などが挙げられる。特にうどんは、麺線が太く、一般的に茹で上がるのに時間がかかるため、本発明が有効である。
【0022】
また、本発明に係る麺類は、調理前の麺類と調理済の麺類の両方を包含する概念である。調理済の麺類を調製する場合は、麺帯や麺線などの未調理の麺類を、湯の中で茹でるなどして調理すればよい。麺類の調理方法は特に制限されないが、茹でて調理することはもちろん、油ちょうや蒸し、電子レンジなどによって調理してもよく、喫食可能になるまで麺類をα化すればよい。また、麺類の形態に特に制限はなく、例えば、生麺、半乾燥麺、乾麺、茹で麺、蒸し麺、冷蔵麺(チルド麺)、冷凍麺、即席麺、調理麺、LL(ロングライフ)麺などであってもよい。本発明は、乾燥工程における落麺を抑制する効果が高いことから、乾麺であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る麺類は、上述した穀粉組成物から製造される。本発明において、麺生地は、通常の麺生地の調製方法に準じて調製することができる。例えば、穀粉組成物に、水、塩などを配合して混練し、麺生地を調製することができる。また、中華麺の麺生地を調製する場合には、さらに、かん水などを配合してもよい。
【0024】
穀粉組成物と水との混合比は、麺類の種類にもよるが、通常は、穀粉組成物100質量部に対し、水20~50質量部とすることが好ましく、水25~45質量部とすることがより好ましい。当該質量比において、製麺用穀粉組成物に含まれる水分は「水」ではなく「穀粉組成物」を構成するものとする。
【0025】
本発明に係る麺類は、圧延製麺、ロール式製麺、押出式製麺などの公知の製麺方法によって製造することができる。本発明の一つの態様において、麺生地は、圧延され、所望の厚さの麺帯とされる。当該圧延は、麺生地を圧延ロールに通すことで行われる。次いで、製麺機などを用いて麺帯を切り出して麺線とし、この麺線を所望の長さに切断することにより生麺を得ることができる。また、型抜き機などを用いて麺帯から麺皮を得ることができる。
【0026】
本発明の一つの態様において、麺生地を引き伸ばしたり撚ったりして麺線を得てもよく、また、麺生地を穴などから押し出して麺類を製造してもよい。一般に、スパゲッティやマカロニなどの麺類は、麺生地を押し出して製造することが多い。また本発明においては、機械を用いて製麺してもよく、機械を用いずに手延べや手打ちによって製麺してもよい。
【0027】
例えば、上記生麺を茹でることによって茹で麺が得られ、蒸煮することによって蒸麺が得られ、調湿乾燥法などにより水分12~15%程度まで乾燥すれば乾麺が得られる。また、例えば、蒸煮又は茹で処理を行った後、フライ用バスケットあるいは乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、フライあるいは高温熱風乾燥処理すれば即席乾麺が得られる。
【0028】
1つの観点から、本発明は、上述の穀粉組成物を用いる麺類の製造方法である。さらに本発明は、上記した製麺用小麦粉または製麺用穀粉組成物を用いることによる、麺類の茹で上がり時間を短縮する方法と理解することもできる。本発明によれば、優れた麺類を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、具体例を挙げながら本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0030】
原材料
下記の実験では、下記のα化澱粉を使用した。
【0031】
【0032】
また、α化澱粉以外の原料としては、以下の材料を使用した。
・中力粉(めんのちから、昭和産業、たん白質含量:8.2%、灰分:0.35%)
・アセチル化澱粉(SF-800、昭和産業、タピオカ澱粉)
・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(SF-2800、昭和産業、タピオカ澱粉)
α化澱粉の溶液粘度(RVA粘度ともいう)は、下記の手順によって測定した。
(1) 固形分として1.2gのα化澱粉を容器に入れ、2.4gのエタノールを添加して薬さじで5回撹拌して溶解させ、合計30.0gになるように水を加え、さらに薬さじで5回撹拌する。
(2) 調製した溶液について、ラピッドビスコアナライザー(RVA4500、Perten Instruments社)を用いて、25℃で30分間保持した後の粘度を160rpmで測定する。
【0033】
実験1.麺の製造と評価
表2に示した配合で麺類用の生地を調製した。具体的には、水以外の原料をピンミキサーに入れ、撹拌しながら、原料粉100質量部に対して水28~42質量部を添加して、生地がそぼろ状になるまでミキシングして生地を調製した。加水量は各生地の状態を見て適宜調節した。
【0034】
次いで、ロール式製麺機を使用し、荒延1回、複合1回、圧延5回を経て、生地から厚さ2mmの麺帯を調製し、角10番の切刃を用いて麺線を切り出し、厚さ1.6mm、長さ1.5mの生麺(うどん)を調製した。1kgの生麺を竿に吊るした状態で乾燥室(温度25~40℃、湿度60~70%)に入れ、17時間乾燥させて、長さ22cmに切断し、乾麺を製造した。
【0035】
本実験において製造した乾麺について、最適な可食状態になるまでにかかる時間を測定した。具体的には、乾麺100gを2Lの沸騰水中に入れ、茹で始めて4分後から、30秒ごとに麺をひきあげて官能評価し、最適な可食状態になるまでにかかる時間を「茹で上がり時間」とした。また、製麺性、落麺の有無は、以下の基準で評価した。
(生麺の製造における製麺性)
○:良好に製麺できる
△:剥離・割れなどがあるが、製麺できる
×:製麺できない
(生麺を乾燥する際の落麺の有無)
○:落麺がない
△:やや落麺がある(全体の5%程度の落麺がある)
×:落麺が多く発生する(全体の10%以上の落麺がある)
【0036】
【0037】
表2の結果から明らかなように、たん白質含量が4.5%以上、かつ、α化澱粉を4~35%配合した麺用組成物から麺を製造することによって、茹で上がりの早い麺を効率的に製造することができた。
【0038】
一方、α化澱粉を配合しない試験例においては、生麺を乾燥する際に落麺が多く発生し、製造効率が悪かった。また、たん白質含量が3.7%である試験例1-7、α化澱粉の配合量が3%である試験例1-8、39%である試験例1-15は製麺性が極めて悪く製麺することができなかった。
【0039】
実験2.麺の製造と評価
表1に示した種々のα化澱粉を用いて、実験1と同様にして、表3の配合で麺を製造して評価した。また、比較例として、α化澱粉の代わりに、(α化していない)ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を用いて麺を製造して評価した。この実験においては、穀粉組成物のたん白質含量は6.0%とした。
【0040】
【0041】
表3の結果から明らかなように、RVA粘度が50mPa・s以上のα化澱粉を配合することによって、茹で上がりの早い麺を効率的に製造することができた(茹で上がり時間:5分30秒)。
【0042】
一方、α化澱粉であってもRVA粘度が50mPa・s未満のα化澱粉を配合した試験例2-10、試験例2-11は、製麺性が悪く、麺を製造することができなかった。また、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を配合した試験例2-12は、製麺性が極めて悪く、製麺することができなかった。