(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/06 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
B29C65/06
(21)【出願番号】P 2021018018
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】仙石 大祐
(72)【発明者】
【氏名】日下 良太
(72)【発明者】
【氏名】三枝 祐樹
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0098334(US,A1)
【文献】特開2010-125627(JP,A)
【文献】特開2009-39988(JP,A)
【文献】特開2000-167931(JP,A)
【文献】特開平1-202333(JP,A)
【文献】特開2006-69133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工材の当接面に微小振動による摩擦熱を発生させて溶着する振動溶着装置における一方の加工材を保持する上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法であって、上側面をバイブレータヘッドに連結するヘッド側アダプタプレートと、下面側に上治具を連結する上治具側アダプタプレートとからなり、これらを分離可能に重合したアダプタプレートを用い、前記上治具に、ボルト挿通孔を穿設すると共に、該ボルト挿通孔の開口部にテーパーワッシャーを嵌合する一方、前記上治具側アダプタプレートに、前記上治具のボルト挿通孔と同一の位置に、これと中心が一致するボルト螺合用ナットを埋設し、更に、前記ヘッド側アダプタプレートに、前記上治具側アダプタプレートのボルト螺合用ナットと同一の位置に、これと中心が一致するボルト挿通孔を穿設し、先端部に、先端がテーパー状で、雄ねじ部分の谷の径と略同径の円柱状のガイド部を同心に穿設した連結ボルトを、前記上治具のボルト挿通孔に挿通させた後、前記上治具側アダプタプレートのボルト螺合用ナットに、円柱状のガイド部をガイドとして雄ねじ部分を螺入することを特徴とする振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法。
【請求項2】
連結ボルトの頭部側に、該連結ボルトと別体のテーパーワッシャーを外嵌してなる請求項1記載の振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の加工材の当接面に微小振動による摩擦熱を発生させて溶着する振動溶着装置においては、溶着の際に、一方の加工材を保持する上治具に相当な加速度が作用する。このため、上治具をバイブレータヘッドのバイブレータプレートに強固に固定しておくことが必要である。そして、この上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結固定は、一般的に多数の連結ボルトによる固定方法が採用されている。
【0003】
尚、
図9乃至
図12には、従来の振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法を示している。
【0004】
該図において、101は複数の加工材(図示せず。)に微小振動による摩擦熱を発生させて溶着する振動溶着装置におけるバイブレータヘッドである。そしてまた、該バイブレータヘッド101のバイブレータプレート102に、連結ボルト103をもって上治具104を連結固定しているものである。更に具体的には、バイブレータプレート102の下面側に上治具104を当接させ、該上治具104に穿設したボルト挿通孔104Aに、テーパーワッシャー104Bを介して挿通した連結ボルト103を、バイブレータプレート102に形成した雌ねじ孔102Aに螺合させたものである。尚、前記連結ボルト103は、頭部側をテーパー形状となしたものが用いられる。
【0005】
ところで、上治具は頻繁に交換する必要があるため、交換作業はできる限り迅速に行うことが要望される。しかし、上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結固定方法は、上記の通り連結ボルトを用いて行うものであることから、連結ボルトのねじ込み作業に手間どり、交換作業を効率良く行うことができなかった。
【0006】
即ち、連結ボルトを雌ねじ孔にねじ込むときに、連結ボルトが斜めに傾いた状態でねじ込むと、連結ボルトと雌ねじとの間にねじ山のかじりが発生し、これら連結ボルトと雌ねじが損傷することになる。
【0007】
このため、作業者は先ず手で慎重にねじ込み、正確にねじ山が噛み合っことを確認した上でインパクトレンチにより最後までねじ込むようにせざるを得なかった。したがって、一本の連結ボルトをねじ込むのにも相当な手間と時間がかかり、そしてまた、上治具の連結固定には中型クラスの振動溶着機においてさえ8~12本の連結ボルトが必要であり、よって一つの上治具の交換には多大な手間と時間を要するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、連結ボルトをねじ込むときにおいて、自然に該連結ボルトの中心が、これがねじ込まれる雌ねじの中心と一致するように構成した連結ボルトを用いることにより、連結ボルトの雄ねじ部と雌ねじの噛み合いの初期において、ねじ山のかじりを生ずることなく、正確に噛み合うことができるようになし、もって連結ボルトのねじ込みを、従来の如く噛み合わせる手作業を介することなく、最初から最後までインパクトレンチで行うことができ、上治具の交換作業に要する手間と時間を大幅に軽減することができると共に、タップによって形成する雌ねじに代えてボルト螺合用ナットを用いることにより、作業中のミス等によって雌ねじに不具合が生じた場合には、大きな部品を丸ごと交換することなく、この不具合の生じたボルト螺合用ナットの交換のみによってすぐに元の状態に復旧させることができるようになした振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して、本発明の要旨とするところは、複数の加工材の当接面に微小振動による摩擦熱を発生させて溶着する振動溶着装置における一方の加工材を保持する上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法であって、上側面をバイブレータヘッドに連結するヘッド側アダプタプレートと、下面側に上治具を連結する上治具側アダプタプレートとからなり、これらを分離可能に重合したアダプタプレートを用い、前記上治具に、ボルト挿通孔を穿設すると共に、該ボルト挿通孔の開口部にテーパーワッシャーを嵌合する一方、前記上治具側アダプタプレートに、前記上治具のボルト挿通孔と同一の位置に、これと中心が一致するボルト螺合用ナットを埋設し、更に、前記ヘッド側アダプタプレートに、前記上治具側アダプタプレートのボルト螺合用ナットと同一の位置に、これと中心が一致するボルト挿通孔を穿設し、先端部に、先端がテーパー状で、雄ねじ部分の谷の径と略同径の円柱状のガイド部を同心に穿設した連結ボルトを、前記上治具のボルト挿通孔に挿通させた後、前記上治具側アダプタプレートのボルト螺合用ナットに、円柱状のガイド部をガイドとして雄ねじ部分を螺入することを特徴とする振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法にある。
【0010】
また、上記構成において、連結ボルトの頭部側に、該連結ボルトと別体のテーパーワッシャーを外嵌するようになしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記の如き構成であり、上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結に、連結ボルトとして、これをねじ込むときにおいて、自然にその中心が、これがねじ込まれる雌ねじの中心と一致するように構成した連結ボルトを用いることにより、連結ボルトの雄ねじ部と雌ねじの噛み合いの初期において、ねじ山のかじりを生ずることなく、正確に噛み合うことができるようになしたものであるから、連結ボルトのねじ込みを、従来の如く噛み合わせる手作業を介することなく、最初から最後までインパクトレンチで行うことができるものである。したがって、上治具の交換作業に要する手間と時間を大幅に軽減することができるものである。
【0012】
また、上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結は、上治具のバイブレータプレートへの直接の連結ではなく、上側面をバイブレータヘッドに連結するヘッド側アダプタプレートと、下面側に該上治具を連結する上治具側アダプタプレートとからなり、これらを分離可能に重合したアダプタプレートを介して行うものであり、そして、従来のタップによって形成する雌ねじに代えてボルト螺合用ナットを用いるものであるから、作業中のミス等によって雌ねじに不具合が生じた場合には、アダプタプレートにおける上側のヘッド側アダプタプレートを外して、下側の上治具側アダプタプレートに埋設してある当該不具合の生じたボルト螺合用ナットを新しいものと交換し、その後再び上側のヘッド側アダプタプレートを重合して一体化することにより、大きな部品(上治具側アダプタプレート)を丸ごと交換することなく、不具合の生じたボルト螺合用ナットの交換のみで済むことになるものである。
【0013】
また、連結ボルトとして、従来の如き頭部側をテーパー形状となしたものに代えて、連結ボルト自体とは別体にテーパーワッシャーを作製し、該連結ボルトの頭部側に該テーパーワッシャーを外嵌するようになしたものを用いることにより、インパクトレンチによるねじ込み時における衝撃でテーパーワッシャーが変形や破損したときには、連結ボルト自体はそのままで、変形や破損したテーパーワッシャーの新しいものとの交換のみで済むことになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施した振動溶着装置におけるバイブレータヘッド部分の斜視図である。
【
図2】同上治具のアダプタプレートを介してバイブレータプレートへ連結する前の状態の斜視図である。
【
図3】同上治具を下面側に連結した状態のアダプタプレートの斜視図である。
【
図4】同上治具を下面側に連結した状態のアダプタプレートの部分拡大縦断面図である。
【
図5】同上治具を下面側に連結した状態のアダプタプレートの一部を断面で示した部分拡大斜視図である。
【
図8】上治具側バイブレータプレートのボルト螺合用ナットの埋設部分の拡大斜視図である。
【
図9】従来の振動溶着装置における上治具のバイブレータヘッドのバイブレータプレートへの連結方法の説明図である。
【
図10】上治具をバイブレータプレートに連結した状態の部分拡大縦断面図である。
【
図11】連結ボルトをボルト挿通孔に挿通した状態の上治具の部分拡大斜視図である。
【
図12】連結ボルトとテーパーワッシャーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図中、1は複数の加工材(図示せず。)に微小振動による摩擦熱を発生させて溶着する振動溶着装置におけるバイブレータヘッドである。
【0017】
2は該振動溶着装置におけるバイブレータヘッド1のバイブレータプレートである。また、該バイブレータプレート2には、後記アダプタプレートにおけるヘッド側アダプタプレートの上面に設けた連結突起を嵌合する連結孔3を穿設している。
【0018】
4は前記バイブレータヘッド1のバイブレータプレート2と後記上治具との間に介在し、上治具をバイブレータプレート2に連結するために用いるアダプタプレートである。
【0019】
また、該アダプタプレート4は、上面側を前記バイブレータプレート2に連結するヘッド側アダプタプレート5と、下面側に後記上治具を連結する上治具側アダプタプレート6とからなり、これらを分離可能に重合してなるものである。
【0020】
そして、これらヘッド側アダプタプレート5と上治具側アダプタプレート6は、連結ボルト(図示せず。)等の適宜の手段を用いて重合状態を保持するように構成され、下側に位置する上治具側アダプタプレート6に埋設した後記ボルト螺合用ナットのいずれかに不具合が生じてこれを交換する必要が生じた際には、両者を分離してこれを容易に行うことができるようになされている。
【0021】
また、上側に位置するヘッド側アダプタプレート5は、その上面に設けた連結突起5Aを前記バイブレータプレート2の連結孔3に嵌合し、バイブレータプレート2に密着した状態を連結ボルト(図示せず。)等の適宜の手段を用いて保持するように構成されている。
【0022】
また、前記上治具側アダプタプレート6には、後記上治具のボルト挿通孔と同一の位置に、これと中心が一致するボルト螺合用ナット7を埋設し、また、前記ヘッド側アダプタプレート5には、前記上治具側アダプタプレート6のボルト螺合用ナット7と同一の位置に、これと中心が一致するボルト挿通孔8を穿設している。
【0023】
9は一方の加工材(図示せず。)を保持する上治具である。また、該上治具9は、ボルト挿通孔10を穿設すると共に、該ボルト挿通孔10の開口部にテーパーワッシャー11を嵌合しているものであり、従来のものと同様である。
【0024】
12は連結ボルトである。また、該連結ボルト12は、先端部に、先端12A′がテーパー状で、雄ねじ部分12′の谷の径と略同径の円柱状のガイド部12Aを同心に突設してなるものである。また、該連結ボルト12の頭部側には、これと別体に作製したテーパーワッシャー13を外嵌している。
【0025】
而して、上記実施形態において、上治具9はアダプタプレート4を介してバイブレータヘッド1のバイブレータプレート2に連結するものであるが、前記アダプタプレート4は、常時バイブレータヘッド1のバイブレータプレート2に連結固定されており、上治具9のみを交換するものである。
【0026】
そして、上治具9を交換するときにおいて、別の上治具9を上治具側アダプタプレート6の下面側に連結するときには、連結ボルト12を、上治具9のボルト挿通孔10に挿通させた後、上治具側アダプタプレート6のボルト螺合用ナット7に螺合させるものであるが、該連結ボルト12は、前記の通り、先端部に、先端12A′がテーパー状で、雄ねじ部分12′の谷の径と略同径の円柱状のガイド部12Aを同心に突設してなるものであるから、上治具側アダプタプレート6のボルト螺合用ナット7に、円柱状のガイド部12Aをガイドとして雄ねじ部分12′を螺入することができ、もって連結ボルト12をねじ込むときにおいて、自然にその中心が上治具側アダプタプレート6のボルト螺合用ナット7の中心と一致し、これらの噛み合いの初期において、ねじ山のかじりが生ずることなく、正確に噛み合うことができるようになるものである。したがって、連結ボルト12のねじ込みを、従来の如く噛み合わせる手作業を介することなく、最初から最後までインパクトレンチで行うことができ、上治具の交換作業に要する手間と時間を大幅に軽減することができるものである。
【0027】
また、上治具9のバイブレータヘッド1のバイブレータプレート2への連結は、上治具9のバイブレータプレート2への直接の連結ではなく、上側面をバイブレータヘッド1に連結するヘッド側アダプタプレート5と、下面側に該上治具9を連結する上治具側アダプタプレート6とからなり、これらを分離可能に重合したアダプタプレート4を介して行うものであり、そして、従来のタップによって形成する雌ねじに代えてボルト螺合用ナット7を用いるものであるから、作業中のミス等によって雌ねじに不具合が生じた場合には、先ず、アダプタプレート4をバイブレータヘッド1のバイブレータプレート2から取り外し、次にアダプタプレート4における上側のヘッド側アダプタプレート5を外して、下側の上治具側アダプタプレート6に埋設してある当該不具合の生じたボルト螺合用ナット7を新しいものと交換し、その後再び上側のヘッド側アダプタプレート5を重合して一体化することにより、大きな部品(上治具側アダプタプレート6)を丸ごと交換することなく、不具合の生じたボルト螺合用ナット7の交換のみで済むことになるものである。尚、ボルト螺合用ナット7の交換後は再びアダプタプレート4をバイブレータヘッド1のバイブレータプレート2に連結固定しておくものである。
【0028】
また、連結ボルト12として、従来の如き頭部側をテーパー形状となしたものに代えて、連結ボルト12自体とは別体にテーパーワッシャー13を作製し、該連結ボルト12の頭部側に該テーパーワッシャー13を外嵌するようになしたものを用いることにより、インパクトレンチによるねじ込み時における衝撃でテーパーワッシャー13が変形や破損したときには、連結ボルト12自体はそのままで、変形や破損したテーパーワッシャー13の新しいものとの交換のみで済むことになるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 バイブレータヘッド
2 バイブレータプレート
3 連結孔
4 アダプタプレート
5 ヘッド側アダプタプレート
6 上治具側アダプタプレート
7 ボルト螺合用ナット
8 ボルト挿通孔
9 上治具
10 ボルト挿通孔
11 テーパーワッシャー
12 連結ボルト
12′ 連結ボルトの雄ねじ部分
12A 連結ボルトの円柱状のガイド部
13 テーパーワッシャー