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特許7626640金属物質判別方法、金属物質判別装置および学習済みモデルの生成方法
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  • 特許-金属物質判別方法、金属物質判別装置および学習済みモデルの生成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】金属物質判別方法、金属物質判別装置および学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021045832
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144704
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀平
(72)【発明者】
【氏名】森 剛志
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240832(JP,A)
【文献】特開2019-190891(JP,A)
【文献】特開2021-039084(JP,A)
【文献】特開2008-014652(JP,A)
【文献】国際公開第96/000381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G06T 7/00- 7/90
G01M 11/00-11/08
G01B 11/00-11/30
H01L 21/64-21/66
H05K 3/00
H05K 13/00
G01R 31/28-31/3193
G06N 20/00-20/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明方法が異なる複数の照明(但し、透過照明を除く)の各照明下で前記検査対象物を撮像する撮像工程と、
検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する金属物質判別方法であって、
前記検査対象物を撮像した撮像画像を取得する画像取得工程と、
前記撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成するチャンネル画像生成工程と、
学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とを教師データとしてディープラーニングさせた学習済みモデルを用いて、前記検査対象物の前記チャンネル画像から、前記検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別するとともに、異物とされた金属物質または非金属物質の種別や名称を判別する判別工程とを実施し、
前記チャンネル画像生成工程では、各照明下で撮像した撮像画像ごとに前記複数のチャンネル画像を生成することを特徴とする金属物質判別方法。
【請求項2】
前記複数の照明のうちの1つは、同軸落射照明であることを特徴とする請求項に記載の金属物質判別方法。
【請求項3】
検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する金属物質判別装置であって、
照明方法が異なる複数の照明(但し、透過照明を除く)の各照明下で前記検査対象物を撮像する撮像手段と、
前記検査対象物を撮像した撮像画像を取得する画像取得手段と、
前記撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成するチャンネル画像生成手段と、
学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とを教師データとしてディープラーニングさせた学習済みモデルを用いて、前記検査対象物の前記チャンネル画像から、前記検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを
判別するとともに、異物とされた金属物質または非金属物質の種別や名称を判別する判別手段とを備え
前記チャンネル画像生成手段は、各照明下で撮像した撮像画像ごとに前記複数のチャンネル画像を生成することを特徴とする金属物質判別装置。
【請求項4】
検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別するための学習済みモデルの生成方法であって、
学習用の金属物質および学習用の非金属物質を撮像する学習用撮像工程と、
前記学習用撮像工程で撮像された撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成する学習用チャンネル画像生成工程と、
学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とに、金属または非金属のラベルと、金属物質または非金属物質の種別または名称のラベルとを付したものを教師データとしてディープラーニングさせ、前記学習済みモデルを生成するモデル生成工程とを実施し、
前記学習用撮像工程では、照明方法が異なる複数の照明(但し、透過照明を除く)の各照明下で学習用の金属物質および学習用の非金属物質を撮像し、
前記学習用チャンネル画像生成工程では、各照明下で撮像した撮像画像ごとに前記複数のチャンネル画像を生成することを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項5】
前記複数の照明のうちの1つは、同軸落射照明であることを特徴とする請求項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属物質判別方法、金属物質判別装置および学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物に存在する異物等の物質が金属物質であるか否かを判別する金属物質判別方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-62237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された検査方法(金属物質判別方法)では、部品(検査対象物)にX線を照射した際に発生する蛍光X線を観測し、検査対象物の含有元素を定性分析または定量分析することで、検査対象物に存在する物質が金属物質であるか非金属物質であるかを判別するため、工程が煩雑になるという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを簡易な工程で判別することができる金属物質判別方法、金属物質判別装置および学習済みモデルの生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る金属物質判別方法は、検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する金属物質判別方法であって、前記検査対象物を撮像した撮像画像を取得する画像取得工程と、前記撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成するチャンネル画像生成工程と、学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とを教師データとしてディープラーニングさせた学習済みモデルを用いて、前記検査対象物の前記チャンネル画像から、前記検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する判別工程とを実施する。
【0007】
本発明の一態様に係る金属物質判別方法において、照明方法が異なる複数の照明の各照明下で前記検査対象物を撮像する撮像工程を実施し、前記チャンネル画像生成工程では、各照明下で撮像した撮像画像ごとに前記複数のチャンネル画像を生成することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る金属物質判別方法において、前記複数の照明のうちの1つは、同軸落射照明であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る金属物質判別装置は、検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する金属物質判別装置であって、前記検査対象物を撮像した撮像画像を取得する画像取得手段と、前記撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成するチャンネル画像生成手段と、学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とを教師データとしてディープラーニングさせた学習済みモデルを用いて、前記検査対象物の前記チャンネル画像から、前記検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別する判別手段とを備えている。
【0010】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法は、検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを判別するための学習済みモデルの生成方法であって、学習用の金属物質および学習用の非金属物質を撮像する学習用撮像工程と、前記学習用撮像工程で撮像された撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、前記撮像画像を前記チャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像を生成する学習用チャンネル画像生成工程と、学習用の金属物質の前記チャンネル画像と、学習用の非金属物質の前記チャンネル画像とを教師データとしてディープラーニングさせ、前記学習済みモデルを生成するモデル生成工程とを実施する。
【0011】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記学習用撮像工程では、照明方法が異なる複数の照明の各照明下で学習用の金属物質および学習用の非金属物質を撮像し、前記学習用チャンネル画像生成工程では、各照明下で撮像した撮像画像ごとに前記複数のチャンネル画像を生成することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記複数の照明のうちの1つは、同軸落射照明であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、検査対象物を撮像すれば、その撮像画像から異物が金属物質であるか否かを判別することができるので、元素の定性分析や定量分析を行わなくてよく、検査対象物に存在する異物が金属物質であるか否かを簡易な工程で判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る金属物質判別システムの説明図。
図2】一実施形態に係る金属物質判別方法の説明図。
図3】一実施形態に係る学習済みモデルの生成方法の説明図。
図4】一実施形態に係る金属物質判別方法の説明図。
図5】変形例に係る金属物質判別システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[装置構成]
図1において、金属物質判別装置EAは、検査対象物WK(図2参照)に存在する異物FS(図2参照)が金属物質であるか否かを判別する装置であって、パーソナルコンピュータやサーバ等のコンピュータにより構成されている。
金属物質判別装置EAは、記憶手段10と、処理手段20と、操作手段30とを備え、撮像手段40と、出力手段50とで金属物質判別システムEA1を構成している。
【0016】
記憶手段10は、メモリやハードディスク等により構成され、金属物質判別装置EAおよび金属物質判別システムEA1を制御する各種プログラムを記憶している。また、記憶手段10は、検査対象物WKに金属物質が含まれているか否かを判別するための学習済みモデルを記憶している。
【0017】
処理手段20は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Central Graphics Processing Unit)等のプロセッサにより構成され、画像取得手段21と、異物抽出手段22と、チャンネル画像生成手段23と、判別手段24とを備えている。
画像取得手段21は、検査対象物WKを撮像した撮像画像を撮像手段40から取得する。
異物抽出手段22は、画像取得手段21で取得された撮像画像から、検査対象物WKに本来存在しない異物FSを検出し、当該撮像画像から異物FS部分の撮像画像を抽出する。
チャンネル画像生成手段23は、撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、撮像画像をチャンネル成分ごとの画像に変換した複数のチャンネル画像RC、GC、BC(図2参照)を生成する。例えば、撮像画像で用いられる色空間がRGB(赤、緑、青)であれば、1つの撮像画像から、R(赤)、G(緑)、B(青)の各々のカラーチャンネル画像からなる3つのチャンネル画像RC、GC、BCが生成され、撮像画像で用いられる色空間がCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)であれば、1つの撮像画像から、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各々のカラーチャンネル画像からなる3つのチャンネル画像RC、GC、BCが生成される。なお、撮像画像のチャンネル成分とは、撮像画像で用いられる色空間の座標成分である。
判別手段24は、記憶手段10に記憶された学習済みモデルを用いて、チャンネル画像RC、GC、BCから、検査対象物WKに存在する異物FSが金属物質であるか否かを判別する。
【0018】
操作手段30は、キーボード、操作パネル、タッチパネル、マウス、各種スイッチ、音声入力操作用のマイク等により構成され、各種操作による操作信号を金属物質判別装置EAに入力可能とされている。
【0019】
撮像手段40は、カメラ、撮影機、撮像機能付き顕微鏡、イメージングセンサ等により構成され、撮像画像を処理手段20に送信可能となっている。
【0020】
出力手段50は、ディスプレイやパネル等の表示装置や、表示灯やスピーカー等の報知装置等により構成され、金属物質判別装置EAによる判定結果を画面に出力したり、点灯や音等で出力したりするようになっている。
【0021】
[学習済みモデル]
学習済みモデルは、学習用の金属物質のチャンネル画像RC、GC、BCと、学習用の非金属物質のチャンネル画像RC、GC、BCとを教師データとしてディープラーニング(深層学習)させたものであり、図3に示す以下の手順で生成される。
【0022】
先ず、学習用に様々な種類、組成、形状の金属物質および非金属物質を用意し、これらの金属物質および非金属物質を各々撮像する(ステップST11)。撮像は、単一の照明方法を選択し、その照明下で行ってもよいし、複数の照明方法を選択し、各照明下で行ってもよい。照明方法としては、透過照明、同軸落射照明、側射照明、可変照明等が例示できる。本実施形態の場合、1つの金属物質および非金属物質に対して、リング照明を用いた側射照明下での撮像と、同軸落射照明下での撮像とを行う。
【0023】
次いで、ステップST11で撮像された撮像画像からその複数のチャンネル成分を分離して抽出し、撮像画像から複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成する(ステップST12)。撮像画像から複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成する理由としては、金属物質の写り方、例えば、金属特有の光沢の写り方がチャンネル画像RC、GC、BCごとに異なるため、撮像画像そのものよりもチャンネル画像RC、GC、BCを教師画像とした方が、判別に利用できる情報が増え、判別精度が高くなるからである。
本実施形態の場合、側射照明下での撮像画像からR、G、Bのチャンネル成分を分離して抽出し、撮像画像をR、G、Bのチャンネル成分ごとのカラーチャンネル画像に変換して、3つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成する。また、同軸落射照明下での撮像画像からも同様に3つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成する。即ち、側射照明下での3つのチャンネル画像RC、GC、BCと、同軸落射照明下での3つのチャンネル画像RC、GC、BCとからなる、合計6つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成する。生成した各チャンネル画像RC、GC、BCには、金属または非金属のラベルを付しておく。
【0024】
その後、学習用の金属物質のチャンネル画像RC、GC、BCと、学習用の非金属物質のチャンネル画像RC、GC、BCとを教師データとしてディープラーニングさせ、撮像画像を入力、異物FSが金属物質であるか否かの判別結果を出力とする学習済みモデルを生成する(ステップST13)。本実施形態の場合、ディープラーニングのアルゴリズムには、畳み込みニューラルネットワークを使用する。
【0025】
[金属物質判別方法]
以上の金属物質判別装置EAを備えた金属物質判別システムEA1の場合を例として、図4に示す以下の手順で実施される金属物質判別方法を説明する。
先ず、金属物質判別システムEA1に対し、当該金属物質判別システムEA1の使用者(以下、単に「使用者」という)が、操作手段30を介して自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、検査対象物WKを所定の位置に配置すると、処理手段20が撮像手段40を駆動し、図2に示すように、検査対象物WKを撮像する(ステップST21)。撮像は、学習済みモデルの作成時と同じ照明方法または特徴が類似する照明方法を用いた照明下で行う。本実施形態の場合、リング照明を用いた側射照明60A下での撮像と、同軸落射照明60B下での撮像とを行う(図2参照)。
【0026】
その後、画像取得手段21は、撮像手段40から検査対象物WKの撮像画像を取得する(ステップST22)。次に、異物抽出手段22は、ステップST22で取得された撮像画像中の検査対象物WKに、異物FSが存在するか否かを判定する(ステップST23)。この際行う異物検出の手法としては、撮像画像に二値化処理を施した上でブロブ解析を行ったり、検査対象物WKの良品の撮像画像に基づいて差分フィルタ処理を行ったり、機械学習による判定モデルを用いたりする等、各種の技術が利用可能であり、特に限定されない。そして、ステップST23で異物FSがないと判定された場合、ステップST21に戻り、次の検査対象の検査に移る。
【0027】
一方、ステップST23で異物FSがあると判定された場合、異物抽出手段22は、ステップST22で取得された撮像画像から異物FS部分の撮像画像を抽出する(ステップST24)。次いで、チャンネル画像生成手段23は、異物FS部分の撮像画像から複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成する(ステップST25)。本実施形態の場合、チャンネル画像生成手段23は、側射照明60A下での撮像画像からR、G、Bの3つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成するとともに、同軸落射照明60B下での撮像画像からR、G、Bの3つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成する(図2参照)。その後、判別手段24は、学習済みモデルを用いて、チャンネル画像RC、GC、BCから異物FSが金属物質であるか否かを判別し、判別結果を出力手段50に出力する(ステップST26)。次に、出力手段50は、判別結果を表示装置に表示したり、報知装置を点灯したり、報知装置から音を出したりして使用者に知らせる(ステップST27)。
【0028】
[判別例]
学習用の金属物質として、アルミニウム、銅、鉛、スズ、亜鉛、SUS316L(ステンレス鋼)、SUS410L(ステンレス鋼)、真鍮を、学習用の非金属物質として、ポリイミドフィルム、ジルコニアビーズ、フェノール樹脂片、紙片を用意し、リング照明による側射照明下で各物質をデジタル顕微鏡で撮像した。また、同軸落射照明下でも、これらの金属物質および非金属物質をデジタル顕微鏡で撮像した。そして、各物質に対する側射照明下での撮像画像と、同軸落射照明下での撮像画像との各々から3つ、合わせて6つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成し、各チャンネル画像RC、GC、BCに金属または非金属のラベルを付した上で、畳み込みニューラルネットワークにより学習済みモデルを作成した。この学習済みモデルを用いて検証用の検査対象物WKについて判別を行ったところ、95%以上の予測精度となり、良好な結果が得られた。
【0029】
また、撮像時の照明方法をリング照明による側射照明のみとし、上記金属物質および上記非金属物質をデジタル顕微鏡で撮像した撮像画像からR、G、Bの3つのチャンネル画像RC、GC、BCを生成し、これらのチャンネル画像RC、GC、BCから学習済みモデルを作成した。この学習済みモデルを用いて検証用の検査対象物WKについて判別を行ったところ、予測精度がわずかに低下したものの、やはり95%以上の予測精度となり、良好な結果が得られた。
【0030】
以上のような実施形態によれば、検査対象物WKを撮像すれば、その撮像画像から異物FSが金属物質であるか否かを判別することができるので、元素の定性分析や定量分析を行わなくてよく、検査対象物WKに存在する異物FSが金属物質であるか否かを簡易な工程で判別することができる。
【0031】
また、照明方法が異なる複数の照明の各照明下で撮像した撮像画像ごとに、複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成するため、判別に利用できる情報が増え、判別精度を高めることができる。
【0032】
また、撮影に利用する複数の照明のうちの1つが同軸落射照明であるため、金属の特徴が撮像画像に反映されやすくなり、判別精度をより高めることができる。
【0033】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0034】
例えば、記憶手段10は、金属物質判別装置EAに内蔵されていてもよいし、金属物質判別装置EAに外付けするタイプであってもよい。
【0035】
処理手段20は、図5に示すように、画像取得手段21で取得した撮像画像からディープラーニングによって学習済みモデルを生成するモデル生成手段25を備え、モデル生成手段25で生成された学習済みモデルを用いて、判別手段24で異物FSが金属物質であるか否かを判別してもよい。即ち、学習用の金属物質および非金属物質を撮像手段40で撮像した撮像画像を画像取得手段21で取得し、チャンネル画像生成手段23で当該撮像画像から複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成し、モデル生成手段25で複数のチャンネル画像RC、GC、BCを用いて学習済みモデルを生成してもよい。この場合、異物FS部分の撮像画像から生成した各チャンネル画像RC、GC、BCに金属または非金属のラベルを付す操作を、操作手段30から行ってもよい。
画像取得手段21は、検査対象物WKの撮像画像を撮像手段40から直接取得してもよいし、撮像手段40から直接取得しなくてもよく、例えば、撮像手段40による撮像画像が蓄積されたサーバやデータベース等の画像蓄積手段から撮像画像を取得してもよい。
チャンネル画像生成手段23は、異物FS部分を抽出した撮像画像でなく、撮像手段40で撮像された撮像画像そのものから複数のチャンネル画像RC、GC、BCを生成してもよい。この場合、異物抽出手段22は、チャンネル画像RC、GC、BCから異物FS部分を抽出し、判別手段24は、異物FS部分を抽出したチャンネル画像RC、GC、BCから異物FSが金属物質であるか否かを判別してもよい。
判別手段24は、検査対象物WKに存在する異物FSが金属物質であるか否かを判別するとともに、異物FSとされた金属物質または非金属物質の種別や名称を判別し、それらの判別結果を出力手段50に出力してもよい。この場合、学習用の金属物質および非金属物質の各チャンネル画像RC、GC、BCに金属または非金属のラベルと、金属物質や非金属物質の種別や名称のラベルとを付して、学習済みモデルを作成してもよい。
【0036】
操作手段30は、金属物質判別装置EAから分離可能に構成されていてもよいし、分離不能に構成されていてもよい。
操作手段30は、金属物質判別装置EAに備わっていてもよいし、備わっていなくてもよく、備わっていない場合、金属物質判別装置EAと、撮像手段40と、出力手段50とで金属物質判別システムEA1を構成してもよいし、金属物質判別装置EAと通信可能な外部の入力装置からの操作信号を金属物質判別装置EAに入力してもよい。
【0037】
撮像手段40は、金属物質判別装置EAに備わっていてもよいし、金属物質判別システムEA1に備わっていてもよいし、金属物質判別装置EAや金属物質判別システムEA1に備わっていなくてもよく、備わっていない場合、金属物質判別装置EAや金属物質判別システムEA1と通信可能な外部の撮像装置での撮像画像を画像取得手段21で取得するようにしてもよい。
【0038】
出力手段50は、金属物質判別装置EAに備わっていてもよいし、金属物質判別システムEA1に備わっていてもよいし、金属物質判別装置EAや金属物質判別システムEA1に備わっていなくてもよく、備わっていない場合、金属物質判別装置EAや金属物質判別システムEA1と通信可能な外部の出力装置に判定結果を出力してもよい。
【0039】
学習済みモデルの作成を行うディープラーニングのアルゴリズムとしては、畳み込みニューラルネットワーク以外にも、ディープニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク等が利用でき、特に限定されない。
【0040】
検査対象物WK、異物FS、金属物質および非金属物質の種別、材質、形状、大きさ等は、特に限定されることはない。例えば、検査対象物WKは、コンデンサや抵抗器等の電子部品、負極材や正極材等の電池用材料、パーソナルコンピュータやプリンタ等の精密機器部品などであってもよいし、回路基板やMLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor)のように複数の部材で組み立てられたものであってもよいし、導電性テープや絶縁性テープのような単独の部材であってもよい。また、異物FSは、検査対象物WK内に混入したものであってもよいし、検査対象物WKに付着したものであってもよい。また、金属物質としては、鉄、アルミニウム、ステンレス、鉛、スズ、亜鉛、金、銀、銅、ニッケル等、任意のものを対象とすることができ、非金属物質としては、樹脂、プラスチック、木材、ガラス、セラミックス、陶器、布、紙、繊維等、金属以外の任意の物質を対象とすることができる。
【0041】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、画像取得工程は、検査対象物を撮像した撮像画像を取得する工程であればどのような工程でもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【符号の説明】
【0042】
EA…金属物質判別装置
10…記憶手段
20…処理手段
21…画像取得手段
22…異物抽出手段
23…チャンネル画像生成手段
24…判別手段
30…操作手段
40…撮像手段
50…出力手段
BC…チャンネル画像
FS…異物
GC…チャンネル画像
RC…チャンネル画像
WK…検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5