(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20250128BHJP
E03C 1/05 20060101ALI20250128BHJP
【FI】
E03C1/042 B
E03C1/05
(21)【出願番号】P 2021087659
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤則
(72)【発明者】
【氏名】長江 拓磨
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-253077(JP,A)
【文献】特開平10-299052(JP,A)
【文献】特開2014-035051(JP,A)
【文献】実開昭52-091652(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管への接続部と吐水口とを連通する通水路を内部に有する通水部材と、
前記通水部材を収納するカバーと、を備え、
前記通水部材は前記接続部を前記給水管に接続する際に工具を掛ける工具掛け部を有し、
前記工具掛け部を幅方向に向けた状態で、前記工具掛け部の端部は前記カバーよりも幅方向外側に位置し、
前記工具掛け部を前記幅方向に向けた状態で、上下方向の少なくとも一方において前記カバーよりも上又は下方に端部が位置するカバー保護部を有
し、
前記工具掛け部と前記カバー保護部との間に前記カバーが位置することを特徴とする水栓。
【請求項2】
給水管への接続部と吐水口とを連通する通水路を内部に有する通水部材と、
前記通水部材を収納するカバーと、を備え、
前記通水部材は前記接続部を前記給水管に接続する際に工具を掛ける工具掛け部を有し、
前記工具掛け部を幅方向に向けた状態で、前記工具掛け部の端部は前記カバーよりも幅方向外側に位置し、
前記工具掛け部を前記幅方向に向けた状態で、上下方向の少なくとも一方において前記カバーよりも上又は下方に端部が位置するカバー保護部を有
し、
前記カバー保護部の端部は平坦な面となっていることを特徴とする水栓。
【請求項3】
給水管への接続部と吐水口とを連通する通水路を内部に有する通水部材と、
前記通水部材を収納するカバーと、を備え、
前記通水部材は前記接続部を前記給水管に接続する際に工具を掛ける工具掛け部を有し、
前記工具掛け部を幅方向に向けた状態で、前記工具掛け部の端部は前記カバーよりも幅方向外側に位置し、
前記工具掛け部を前記幅方向に向けた状態で、上下方向の少なくとも一方において前記カバーよりも上又は下方に端部が位置するカバー保護部を有
し、
前記カバー保護部は前記通水部材とは別体に形成されていることを特徴とする水栓。
【請求項4】
前記カバー保護部は軸線方向において前記工具掛け部と重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1
ないし請求項3のいずれか一項に記載の水栓。
【請求項5】
前記平坦な面は前記幅方向に対して傾斜する傾斜面となっている請求項
2に記載の水栓。
【請求項6】
前記カバー保護部の端部は平坦な面となっている請求項1又は
3に記載の水栓。
【請求項7】
前記カバー保護部は前記通水部材とは別体に形成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓、特にカバーを有する水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より水栓として自動水栓が知られている。この自動水栓は電源(電池)、検知センサ、電磁弁、通水部材等を備えており、さらにこれらを内部に収納するカバーを備えている。
【0003】
また、自動水栓は壁面等に配置された給水管に接続して使用するため、通水部材には接続部が形成されており、給水管とこの接続部との接続作業が必要となる。具体的には、給水管には雌ネジが形成されており、自動水栓の通水部材の接続部には雄ネジが形成されており、両者を螺合により接続する。
【0004】
ここで、給水管と接続部との接続作業は工具(例えばモンキーレンチ)を使用して行うため、自動水栓の通水部材には作業時に工具を掛けるための工具掛け部が形成されている。この工具掛け部はカバーよりも幅方向外側に突出しており、工具を工具掛け部に掛けた状態で工具がカバーに当たらないようにし、工具とカバーとの接触を防止している(特許文献1の
図4に記載の吐水部5、ただし、工具掛け部には部材番号は付与されていない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、
図8(a)に示すように、工具はいわゆるコ字状となっており、工具を工具掛け部に掛けた状態では工具がカバーの上部に対向して位置する部分がある。また、自動水栓の接続作業は回転動作を伴うため工具に力を掛ける方向が一定ではなく、工具を工具掛け部に掛けた状態で工具と水栓とが意図せずに相対移動することがある。具体的には、
図8(a)に示す状態から工具がカバーに対して図中下方(矢印方向)に移動すると
図8(b)に示すようにカバーに接触してしまうことになる。特に、接続作業の終盤では工具に掛ける力はより大きくなるため、工具がカバーに接触する勢いが強くなり、その衝撃によってはカバーが変形してしまうことがある。そうすると、変形したカバーと内部に収納された部材とが干渉してカバーの脱着が困難になることがある。なお、このことは自動水栓に限らず、内部に通水部材を収納するカバーを備えた水栓に当てはまる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、給水管と接続部との接続作業時に工具とカバーとの意図しない接触を防ぐ水栓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための水栓は、給水管への接続部と吐水口とを連通する通水路を内部に有する通水部材と、前記通水部材を収納するカバーと、を備え、前記通水部材は前記接続部を前記給水管に接続する際に工具を掛ける工具掛け部を有し、前記工具掛け部を幅方向に向けた状態で、前記工具掛け部の端部は前記カバーよりも幅方向外側に位置し、前記工具掛け部を前記幅方向に向けた状態で、上下方向の少なくとも一方において前記カバーよりも上又は下方に端部が位置するカバー保護部を有することを特徴とする。
【0009】
前記水栓において、前記カバー保護部は軸線方向において前記工具掛け部と重なる位置に形成されている。
前記水栓において、前記カバー保護部の端部は平坦な面となっている。
【0010】
前記水栓において、前記平坦な面は前記幅方向に対して傾斜する傾斜面となっている。
前記水栓において、前記カバー保護部は前記通水部材とは別体に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給水管と接続部との接続作業時に工具とカバーとの意図しない接触を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3(a)はカバー本体の底面図、
図3(b)は同平面図、
図3(c)は同側面図。
【
図4】
図4(a)は接続部材の平面図、
図4(b)は同側面図、
図4(c)は同背面図。
【
図5】
図5(a)は支持部材の平面図、
図5(b)は同側面図、
図5(c)は同背面図。
【
図6】
図6(a)は組付け状態の基端側平面図、
図6(b)は同側面図、
図6(c)は同背面図。
【
図7】工具を使用した本実施形態の自動水栓の取り付けの説明図。
図7(a)は工具がカバー保護部に接触していない状態、
図7(b)は工具がカバー保護部に接触した状態。
【
図8】工具を使用した従来の自動水栓の取り付けの説明図。
図8(a)は工具がカバーに接触していない状態、
図8(b)は工具がカバーに接触した状態。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した自動水栓1の一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
図1に壁に取り付けられた自動水栓1を斜め下前方から見た斜視図を示す。自動水栓1は洗面台や流し台の壁に設置された給水管(図示しない)に接続し、給水源からの上水(以下、単に「水」という)を吐水する。また、自動水栓1の下方には吐水された水を受ける洗面台やシンク等(図示しない)が配置されている。
【0014】
図1に示すように、自動水栓1は、壁に取り付けられた状態でほぼ全体が円筒形状のカバー2に覆われており、その先端側下方に検知センサ41及び吐水口532が配置されている。また、カバー2には略円錐形の化粧スリーブ3が外嵌されてカバー2の基端を覆っている。自動水栓1はセンサ検知式であり、検知センサ41が吐水口532の下方に位置する手等を検知すると水が吐水され、検知しなくなると吐水は停止される。
【0015】
自動水栓1及び自動水栓1を構成する各部材において、
図1及び
図2にそれぞれ先端(側・方)と基端(側・方)、上(側・方)と下(側・方)、幅方向を規定している。具体的には先端(側・方)と基端(側・方)とは円筒状をなすカバー2の伸びる方向であり、この方向を軸線方向ともいう。なお、後述する接続ネジ部511の中心軸511sの方向は軸線方向と平行である。また、軸線方向及び上下方向に直交する方向(
図4(c)、
図5(c)、
図6(c)の左右方向)を幅方向という。
【0016】
図2に自動水栓1の分解斜視図を示す。自動水栓1は、カバー2と、化粧スリーブ3と、弁駆動ユニット4と、通水部材5と、支持部材6と、を主構成とする。カバー2はカバー本体21と蓋カバー22とから構成されており、カバー2の内部に弁駆動ユニット4、通水部材5及び支持部材6を収納することができる。カバー本体21はステンレス等の金属にて形成されており、両端が開口した円筒状をなす。蓋カバー22はカバー本体21の外径と同じ直径を有する円板形状をなし、カバー本体21の先端開口に着脱可能となっている。
【0017】
図3(a)ないし(c)に示すように、カバー本体21の周面には複数の開口(切り欠き含む)が形成されている。まず、
図3(a)に示すように、カバー本体21の先端側下方には先端から順に矩形状をなすセンサ用開口211、円形をなす吐水口用開口212が形成されている。さらに、カバー本体21の基端側にも周方向に亘って複数の開口が形成されている。
【0018】
図3(a)に示すように、カバー本体21の基端側下部には止水弁用開口213が形成されている。止水弁用開口213はカバー本体21の基端縁214から先端に向かって切り欠かれたU字状をなしている。
図3(b)に示すように、カバー本体21の基端側上部には保護部用開口215が2箇所形成されている。2つの保護部用開口215はカバー本体21の基端縁214から先端に向かって切り欠かれた幅方向に長い長方形状をなし、平面視(裏面視)でカバー本体21を幅方向に二分割する線(
図3(a)、
図3(b)に破線で示す)に対して対称に形成されている。カバー本体21において2つの保護部用開口215の間の先端側には上部貫通孔216が形成されている。
【0019】
図3(c)に示すようにカバー本体21の基端両側面には掛け部用開口217がそれぞれ形成されている。2つの掛け部用開口217はカバー本体21の基端縁214から先端に向かって切り欠かれた略正方形状をなし、平面視(裏面視)でカバー本体21を幅方向に二分割する線(
図3(a)、
図3(b)に破線で示す)に対して対称に形成されている。カバー本体21において各掛け部用開口217の先端側にはそれぞれ側部貫通孔218が形成されている。なお、
図1、
図2に示すようにカバー本体21のセンサ用開口211の開口縁には樹脂製の保護カバー219が装着される。
【0020】
弁駆動ユニット4は、検知センサ41、制御部を有する制御基板42、図示しない電源等がユニット構造になったものであり、自動水栓1の吐水制御等をするものである。なお、弁駆動ユニット4はカバー本体21の内部に収納されるため、上部が半円筒状をなしている。検知センサ41は手等を検知するものであり、弁駆動ユニット4の先端下方に配置されている。カバー2に収納された状態では
図1に示すようにセンサ用開口211に対向して位置する。制御部を有する制御基板42は検知センサ41の検知結果に基づいて弁ユニット52の弁開閉を制御するものである。電源は検知センサ41等に駆動電力を供給するものであり乾電池で構成されている。
【0021】
通水部材5は自動水栓1において給水管からの水を吐水する通水路を形成するものである。通水部材5は基端から順に、接続部材51、弁ユニット52、吐水部材53によって構成される。
【0022】
図4(a)に接続部材51の平面図、
図4(b)に同側面図、
図4(c)に同背面図を示す。なお、各図に破線で図示しているのはカバー2である。接続部材51は自動水栓1を給水管に接続し、給水管からの水を弁ユニット52へ送る通水路が形成された部材であり、真鍮等の金属にて形成されている。接続部材51は基端側から接続ネジ部511、接続部材本体512、取付部513が一体に形成されている。
【0023】
接続ネジ部511は外周に雄ネジ514を有する筒状をなし、内部は通水路となっている。なお、接続ネジ部511の雄ネジ514を給水管にねじ込む際の回転中心を中心軸511sといい、
図4(a)、
図4(b)に長破線で示し、また
図4(c)に点で示す。接続ネジ部511の先端には内部に通水路を有する接続部材本体512が位置する。接続部材本体512には自動水栓1を給水管に接続する際に工具、例えばモンキーレンチの両あごを掛ける工具掛け部515が形成されている。
【0024】
図4(a)に示すように、工具掛け部515は平面視にて幅方向両外側に向けて突出する構成であり、同平面視にて中心軸511sに対して線対称に形成されている。また、
図4(b)にも示すように、工具掛け部515の幅方向両端の端部は平坦な掛け面515aとなっている。両掛け面515a間の距離はカバー本体21の幅、より具体的には軸線方向において工具掛け部515と重なる位置にあるカバー2の幅よりも長くなっている。掛け面515aは、
図4(b)に示す側面視にて中心軸511sに対して線対称に形成されている。
【0025】
さらに、
図4(c)に示すように、背面視において工具掛け部515は中心軸511sを基準として180度の間隔をもって幅方向両外側に向けて突出する構成をなす。このため、接続部材51をカバー2に収納した状態では、工具掛け部515は幅方向両外側に向いた状態となり、両掛け面515aはともにカバー2の掛け部用開口217から突出して位置する。また、工具掛け部515の基端面515bはカバー2の基端縁214と略面一となる。
【0026】
図4(b)、
図4(c)に示すように、接続部材本体512の下方には止水弁516が装着されており、接続部材51内の通水路を開閉することができる。
また、
図4(a)に示すように接続部材本体512の上面には上部ネジ孔517が上方向を向いて形成されており、
図4(b)に示すように接続部材本体512の両側面のうち工具掛け部515の先端側には側部ネジ孔518が幅方向外側を向いて形成されている。
【0027】
接続部材本体512の先端には略円筒状をなす取付部513が軸線方向に突出形成されており、内部には接続ネジ部511及び接続部材本体512と連通する通水路が形成されている。
【0028】
図2に示す弁ユニット52は内部に図示しない通水路を有し、その流路中に図示しない開閉弁が配置されている。開閉弁は電磁弁にて構成されており弁駆動ユニット4によって開閉制御される。吐水部材53は、合成樹脂で形成されたエルボ状の吐水管531と、金属にて形成された吐水口532とを有する。吐水管531は内部に通水路が形成されており、吐水管531の基端が弁ユニット52の先端に接続され、また吐水管531の先端には円筒状の吐水口532が着脱可能である。
【0029】
図5(a)に支持部材6の平面図、
図5(b)に同側面図、
図5(c)に同背面図を示す。なお、各図に破線で図示しているのはカバー2である。支持部材6は、弁駆動ユニット4及び通水部材5の支持体となるものであり、弁駆動ユニット4及び通水部材5をそれぞれ支持ないし装着した状態でカバー2内に収納可能となっている。支持部材6は熱可塑性樹脂にて一体成形されている。
【0030】
支持部材6には先端側に平面視で矩形枠状の支持枠61が形成されており、この支持枠61に上方から弁駆動ユニット4を設置可能である。また、支持部材6の基端側は全体が上向き円弧となる半円筒状をなして、下方が空洞となった装着部62が形成されており、
図2に示すように下方から通水部材5を装着可能である。装着部62の基端側の上面外周はカバー本体21の内周面形状に沿った上向き半円状に形成されており、その基端上面には自動水栓1を給水管に接続する際に工具が接触可能なカバー保護部63が一体に形成されている。
【0031】
カバー保護部63は装着部62の基端上面から上方に伸びる直方体状をなしている。カバー保護部63は支持部材6を幅方向に二分割する中心線(
図5(a)、(c)に破線で示す)に対して対称に2つの突起を有し、これを一対として形成されている。カバー保護部63の各突起は平面視で幅方向に長い長方形状をなし、カバー保護部63の端部となる上端の保護面63aはそれぞれ平坦な面となっている。一方、2つの保護面63aは平行な面ではなく、互いに近接する部分ほど高さが高い傾斜面となっている。
【0032】
また、カバー保護部63は、支持部材6をカバー2に収納した状態で保護面63aの最も低い部分(幅方向の外側部分)がカバー2の保護部用開口215から上方に突出する。かつ、保護面63aの最も低い部分(幅方向の外側部分)は、カバー2の外周面上端、より具体的には軸線方向において工具掛け部515と重なる位置にあるカバー2の上端よりも上方に位置する。ここで、カバー2の上方とは工具掛け部515の掛け面515aに垂直でありカバー2の外周面に接する仮想面(
図6(c)の一点鎖線参照)よりも上方を意味する。また、カバー保護部63の基端面63bはカバー2の基端縁214と略面一となる。支持部材6の上面においてカバー保護部63の間の先端側には貫通孔64が形成されている。
【0033】
次に、自動水栓1の組付けについて説明する。まず支持部材6に対して弁駆動ユニット4及び通水部材5を組み付ける。弁駆動ユニット4は支持部材6の先端側の支持枠61に上方から組み付け、通水部材5は支持部材6基端の装着部62に下方から組み付ける。また、あわせて必要な配線を行う。
【0034】
図6(a)にカバー2に弁駆動ユニット4、通水部材5及び支持部材6を組み付けて収納した状態の基端側平面図、
図6(b)に同側面図、
図6(c)に同背面図を示す。なお、弁駆動ユニット4は図示されていない。
図6(a)、
図6(c)に示すように、工具掛け部515はカバー2の掛け部用開口217に遊嵌状態で位置する。工具掛け部515の両掛け面515a間の距離は、軸線方向において工具掛け部515と重なって位置するカバー2の外周面の幅よりも長いため、工具掛け部515の両掛け面515aはカバー2の外周面よりも幅方向外側に突出して位置する。また、工具掛け部515の基端面515bはカバー2の基端縁214と略面一となる。
【0035】
また、カバー保護部63はカバー2の上面側において保護部用開口215に遊嵌状態で位置する。カバー保護部63の両保護面63aは最も低い部分(幅方向の外側部分)でも軸線方向において工具掛け部515と重なる位置にあるカバー2の上端よりも上方に位置する。また、カバー保護部63の基端面63bはカバー2の基端縁214と略面一となる。このため、工具掛け部515の掛け面515aとカバー保護部63の保護面63aとは軸線方向において重なった部分に位置する。
【0036】
言い換えれば、
図6(a)に示す平面視において工具掛け部515の両掛け面515aを結ぶ仮想帯上にカバー保護部63の保護面63aの少なくとも一部が位置する。このため、工具から見て、工具を工具掛け部515に掛けた状態で工具に対向する位置にカバー保護部63の保護面63aが位置することとなる。さらに、接続ネジ部511は、カバー2の基端縁214よりも基端側に突出して位置する。なお、接続部材51に装着された止水弁516はカバー2の止水弁用開口213に位置してカバー2の下方に突出する。また、接続部材本体512の上部ネジ孔517はカバー2の上部貫通孔216及び支持部材6の貫通孔64と対向し、接続部材本体512の側部ネジ孔518はカバー2の側部貫通孔218と対向する。そして、カバー2の上部貫通孔216とカバー2の側部貫通孔218にそれぞれネジ7を差し込んでカバー2と通水部材5と支持部材6とを固定する。
【0037】
次に、自動水栓1を給水管に接続する際の作用について説明する。なお、この状態では吐水口532及び化粧スリーブ3はまだ取り付けられていないが、以下の給水管への接続工程の説明の便宜上、自動水栓1と表現する。
【0038】
まず、
図7(a)に示すように、自動水栓1の基端に位置する接続ネジ部511を給水管にあてがい工具を工具掛け部515の掛け面515aに掛け止めた状態とする。その状態で工具とともに自動水栓1を回転させて、接続ネジ部511を給水管にねじ込んでいく。なお、ねじ込み当初は工具を使用せず手でねじ込み、ねじ込みがきつくなった状態から工具を使用してもよい。工具により自動水栓1をねじ込んでいると、順次ねじ込みに要する力が大きくなっていくため、工具への力の掛け具合や方向によっては工具が意図せずにカバー2側に移動することがある。しかし、工具に対向する位置にはカバー2よりも上方にカバー保護部63の保護面63aが存在する。このため、
図7(b)に示すように、工具はカバー2に接触するより先にカバー保護部63の保護面63aに接触し、工具が意図せずに工具掛け部515と移動した場合でも工具とカバー2との接触は回避される。
【0039】
そして、工具による接続ネジ部511の給水管へのねじ込みが完了し、化粧スリーブ3を装着し、吐水口532を装着すれば、自動水栓1の設置は完了する。なお、化粧スリーブ3の内面には図示しない当接部が設けられている。この当接部は化粧スリーブ3を装着した状態でカバー保護部63の側面に当接し、化粧スリーブ3の中心軸511sを中心とした回転が規制されて位置決めされる。また、自動水栓1を外す作業は上記接続作業の逆の手順で行えばよく、このときも工具が意図せずにカバー2側に移動しても、上記同様に工具がカバー2に接触するより先にカバー保護部63の保護面63aに接触し、カバー2を保護することができる。
【0040】
上記実施形態の自動水栓1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、工具掛け部515を幅方向に向けた状態で工具掛け部515の端部である掛け面515aはカバー2よりも幅方向外側に位置している。また、工具掛け部515を幅方向に向けた状態で、カバー2よりも上方に端部となる保護面63aが位置するカバー保護部63を有する。このため、自動水栓1の接続作業の際に工具掛け部515と工具とが相対移動した場合でも、工具はカバー2よりも先にカバー保護部63の保護面63aに接触し、工具とカバー2との意図しない接触を防ぐことができる。
【0041】
(2)カバー保護部63は軸線方向において工具掛け部515と重なる位置に形成されている。このため、工具を工具掛け部515に掛けた状態で工具に対向する位置にカバー保護部63があるため、工具とカバー2との接触を防ぐことができる。
【0042】
(3)カバー保護部63の上端は保護面63aとなっている。このため、広い範囲で工具からカバー2を保護することができる。
(4)カバー保護部63の保護面63aは幅方向に対して傾斜する傾斜面となっており、特に対をなす保護面63aの両内側が上方に高くなっている。このため、両保護面63aのうち高い内側が工具に当たり易くなり、保護面63aが変形しても、高さの低い外側に向かって変形しやすくなるため、カバー保護部63が潰れ難くなる。カバー保護部63及びその保護面63aは支持部材6を幅方向に二分割する中心線に対して対称であるため、工具は対をなす保護面63aのうち最も高い両内側に中心軸511sと平行に線接触する。このため、工具が保護面63aに面接触する場合に比して工具を締め付ける際のトルクが保護面63aに伝わりにくく、カバー保護部63の変形を抑制することができる。
【0043】
(5)カバー保護部63は通水部材5とは別体に形成されている。このため、工具と接触してカバー保護部63が変形した場合に、通水部材5とは別に交換することができる。
(6)カバー保護部63はカバー2の保護部用開口215に遊嵌状態で位置する。このため、工具と接触してカバー保護部63が変形した場合でも、変形後のカバー保護部63がカバー2の保護部用開口215と接触しにくい。
【0044】
(7)カバー保護部63は熱可塑性樹脂に一体成形された支持部材の一部として形成されている。このため、工具がカバー保護部63に接触した場合にはカバー保護部63が変形してその衝撃を吸収することができ、通水部材5への衝撃を緩和することができる。
【0045】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・支持部材6にカバー保護部63を形成したが、カバー保護部63は支持部材6に限らず接続部材51に形成してもよい。
【0046】
・また、カバー保護部63を別体として接続部材51や支持部材6から独立した構成としてもよい。例えば、接続部材本体512の上部ネジ孔517に頭部の高さが高いネジ部材やボルト部材を使用し、これを上部ネジ孔517にねじ込んだ状態でカバー2よりも高くなるようにし、このネジ部材やボルト部材をカバー保護部63としてもよい。この場合、カバー2の上部貫通孔216はネジ部材やボルト部材の頭部を遊嵌できる大きさとし、カバー保護部63であるネジ部材やボルト部材に工具が接触した際にカバー2にその衝撃が伝わらないようにする。なお、この場合、カバー2と接続部材51との上面がなくなるためネジ7による固定を別途行うことが好ましい。
【0047】
・カバー保護部63の対の保護面63aは傾斜面ではなく平行面でもよい。また、保護面63aは平坦な面ではなく湾曲していたり凹凸状等でもよい。工具がカバー2よりも先にあたるものであればよい。
【0048】
・カバー保護部63を2つ一対として形成したが1つでもよい。カバー保護部63の保護面63aがカバー2の外周面より上方に位置すればよい。
・工具掛け部515を幅方向に向けた状態で、カバー2よりも上方に位置するカバー保護部63を設けたが、カバー2の上方ではなく下方に設けてもよい。すなわち、カバー保護部63をカバー2の下端よりも下方に突出する形態としてもよい。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記カバー保護部は、熱可塑性樹脂にて形成されていることを特徴とする。従って、この(a)に記載の発明によれば、カバー保護部が工具と接触した際にカバー保護部が変形して衝撃を吸収し、水栓に衝撃が伝達しにくくなる。
【符号の説明】
【0050】
1…自動水栓(水栓)、2…カバー、4…弁駆動ユニット、5…通水部材、6…支持部材、63…カバー保護部、63a…保護面(カバー保護部63の端部)、511…接続部、515…工具掛け部、515a…掛け面(工具掛け部の端部)、532…吐水口。