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特許7626699ハーモニック反射器回路を備える緊急救助器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】ハーモニック反射器回路を備える緊急救助器具
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/82 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
G01S13/82 200
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021530833
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 SE2019051288
(87)【国際公開番号】W WO2020130913
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】1851646-8
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519424836
【氏名又は名称】レッコ インベスト アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グラネド,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】フォルセン,トマス
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06483427(US,B1)
【文献】特表2006-518247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0314423(US,A1)
【文献】特開2012-139493(JP,A)
【文献】特表2006-513594(JP,A)
【文献】特開2011-082658(JP,A)
【文献】米国特許第04331957(US,A)
【文献】米国特許第06060815(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03222167(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーモニック反射器回路を備える緊急救助器具であって、
整合回路を介して非線形回路に接続されたアンテナと、前記ハーモニック反射器回路を完全に又は部分的に包囲するケーシングと、を備え、
前記ハーモニック反射器回路は、受信周波数の信号を受信するように構成されているとともに、前記受信した信号を送信周波数で再送信するように構成されており、
前記送信周波数は、前記受信周波数の倍数であり、
前記ハーモニック反射器回路は
前記受信周波数が第1の周波数から第2の周波数までの間にあり、
前記第1の周波数は、少なくとも800MHzであり、
前記第2の周波数は、前記第1の周波数より少なくとも34MHz高く、
前記受信した信号は、利用可能な最大出力電力の少なくとも70%の出力電力にて前記送信周波数で再送信される、緊急救助器具。
【請求項2】
前記第1の周波数は、860.5MHzであり、
前記第2の周波数は、909.5MHzである、請求項1に記載の緊急救助器具。
【請求項3】
前記利用可能な最大出力電力は、前記アンテナにおける入射放射電力の少なくとも0.1%である、請求項1又は2に記載の緊急救助器具。
【請求項4】
前記送信周波数は、前記受信周波数の2倍である、請求項1から3の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項5】
金属膜を有する基板を備える、請求項1から4の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項6】
前記アンテナと前記整合回路の部品とは、前記金属膜に形成されている、請求項に記載の緊急救助器具。
【請求項7】
前記非線形回路としてダイオードを更に備える、請求項4又は5に記載の緊急救助器具。
【請求項8】
前記ケーシングは、1.6と15との範囲内の誘電率を有する材料を備える、請求項1から7の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項9】
前記ケーシングは、前記ハーモニック反射器回路の動作周波数範囲をシフトさせる材料を備える、請求項1から8の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項10】
前記動作周波数範囲は、液体中で前記緊急救助器具を少なくとも部分的に覆うことによってシフトされる、請求項に記載の緊急救助器具。
【請求項11】
前記ケーシングは、第1の状態と第2の状態とを有し、
前記動作周波数範囲は、前記第2の状態においては前記第1の状態と比べてシフトされる、請求項に記載の緊急救助器具。
【請求項12】
前記ケーシングは、第1の状態では第1の誘電率を有し第2の状態では第2の誘電率を有する材料を備え、
前記動作周波数範囲は、前記第2の状態では前記第1の状態と比べてシフトされ、
前記第1の状態は乾燥であり、前記第2の状態は湿潤である、請求項に記載の緊急救助器具。
【請求項13】
前記ケーシングは、革で作製される、請求項1から12の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項14】
前記ケーシングは、布で作製される、請求項1から12の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項15】
前記ケーシングは、プラスチックで作製される、請求項1から12の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【請求項16】
前記ケーシングは、靴である、請求項1から15の何れか一項に記載の緊急救助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ反射器を有する緊急救助器具に係り、特に、ハーモニックレーダ用のレーダ反射器を有する緊急救助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーモニックレーダを有する緊急救助器具は、長い間、世界中で調査及び救助活動に用いられてきた。ある典型的な雪崩の状況において、スキーヤーが雪崩で行方不明になり、救助チームがそのすぐ後に到着し、スキーヤーは反射器を有する緊急救助器具を装備している。救助チームは、ある送信周波数の信号を送信する検出器を装備している。スキーヤーの反射器がこの信号を受信すると、反射器は信号の周波数をその周波数の倍数に変換し、変換された信号を検出器に送り返す。つまり、検出器は第1の周波数で送信して第1の周波数の倍数で受信し、するとこの情報がスキーヤーの位置を判定するために用いられる。
【0003】
しかしながら、緊急救助器具の反射器の調整は、第1の周波数で受信し第1の周波数の倍数で送信するようにアンテナを調整することを伴う。また、従来の反射器は共振用ダイオードなどの非線形素子を使用するものであり、アンテナは、周波数変換及び変換された信号の再送信に十分な電力を提供するために、この素子と整合される必要がある。ハーモニック反射器の一例が米国特許第6456228B1号明細書に記載されている。この特許は、伝送線部によってハーモニック反射器の構成要素の整合のためのガイドラインを提供する。
【0004】
別の一例が、K.Rasilainen, J.Ilvonen及びV.ViikariによるIEEE Antennas and Wireless Propagation Letters, vol.14, no., pp.535~538, 2015.doi:10.1109/LAWP.2014.2370760の「Antenna Matching at Frequencies to Complex Load Impedance」に開示されている。
【0005】
上記に開示したような従来技術によれば、当業者は、単一周波数における反射電力に関して良好な効率を提供することに主に注力している。
【0006】
従来の反射器が様々な特性を有する緊急救助器具に設置される場合、反射器に対する物体の影響を最小化するために、妥協がなされなくてはならない。従来の反射器は、物体の典型的な電磁的環境向けに設計されている。したがって、従来の反射器は、スキーブーツ又はスキーヘルメットなど、同様の特性を有する物体に搭載されるように設計されている。
【0007】
欧州特許第1035418B1号明細書のような従来技術によれば、アンテナは誘電体に封入される。これは、反射器がスキーブーツの内部に搭載される又はスキーブーツの外部に取り付けられる場合の問題を解決する。
【0008】
しかしながら、既知の解決策は、物体と反射器との電磁的相互作用に起因する、サイズ及び特性が大きく異なる物体の検出に関する課題を示している。
【0009】
本発明はその課題を解決しようとするものである。
【発明の概要】
【0010】
上述の課題は、受信周波数の到来信号を受信周波数の倍数である送信周波数で反射するハーモニックレーダ反射器を有する緊急救助器具によって解決され、ここで、ハーモニックレーダ反射器は広帯域応答用に設計されている。
【0011】
従来技術のハーモニック反射器は狭帯域応答を提供する。これは、従来技術のハーモニック反射器は主に特定の受信周波数でのリターンロスを最小化するように調整されるという事実によるものであり、つまり、ハーモニックレーダに到来するエネルギの大部分は非線形素子に伝達される。ハーモニック反射器は狭帯域応答用に調整され得る。このことは更に、従来技術のハーモニック反射器は、取り付け対象の物体との電磁的相互作用に感応することを示唆している。
【0012】
従来技術のハーモニック反射器は、単一の一定の環境について性能を最大化するように設計されている。反射器は、異なる特性の環境に設置されると、性能が劣化するであろう。これは主に、電磁的特性の変化が異なるアンテナインピーダンスをもたらすことによるもので、その結果、反射器アンテナと非線形素子との整合が乏しくなる。
【0013】
本発明は、整合回路を介して非線形回路に接続されたアンテナを備えるハーモニック反射器回路と、ハーモニック反射器回路を完全に又は部分的に包囲するケーシングと、を有する緊急救助器具を提供するものであり、ハーモニック反射器回路は、受信周波数(fRX)の信号を受信するように構成されていると共に、その受信した信号を送信周波数(fTX)で再送信するように構成されており、送信周波数は受信周波数の倍数であり、受信周波数(fRX)は第1の周波数から第2の周波数までの間にあり、第1の周波数は少なくとも800MHzであり、第2の周波数は第1の周波数より少なくとも34MHz高く、受信した信号は、第1の周波数の倍数から第2の周波数の同じ倍数までの送信周波数範囲内にある周波数に対して利用可能な最大出力電力(Pmax)の少なくとも70%の出力電力(Pout)で送信周波数(fTX)で送信される。これにより、ハーモニック反射器回路の広帯域挙動によって、材料及びサイズが大きく異なる物体の検出が可能になる。変化した電磁的特性を有する環境において緊急救助器具を使用することは、性能を劣化させ得る。電磁的特性の変化に起因するこの劣化は異なるアンテナインピーダンスをもたらし、その結果、反射器アンテナと非線形素子との間のインピーダンス整合が乏しくなる。例えば、そのような変化した電磁的特性は、例えば様々な材料のケーシング内にハーモニック反射器回路を包囲することによるもの、ハーモニック反射器回路と救助チームによって送信される信号との間に異なる材料を有することによるもの、又は様々な湿度によるものであり得る。広帯域挙動を有するハーモニック反射器回路を利用することによって、緊急救助器具は、特定の受信周波数に合わせて調整された従来技術の器具では弱いであろう広いスパンの環境において検出され得る。例えば、広帯域挙動を有するハーモニック反射器回路を利用することによって、緊急救助器具はより頑丈になると共に、より数多くの種類のケーシング内及び状況において機能的になるであろう。これによってユーザの安全性を高めることができる。
【0014】
一態様によれば、第1の周波数は860.5MHzであり、第2の周波数は909.5MHzであってもよい。
【0015】
一態様によれば、利用可能な最大出力電力(Pmax)は、アンテナにおける入射放射電力(incoming radiated power)の少なくとも0.1%であってもよい。
【0016】
一態様によれば、利用可能な最大出力電力(Pmax)は、アンテナにおける入射放射電力の少なくとも0.01%であってもよい。
【0017】
一態様によれば、利用可能な最大出力電力(Pmax)は、アンテナにおける入射放射電力の少なくとも0.001%であってもよい。
【0018】
一態様によれば、利用可能な最大出力電力(Pmax)は、アンテナにおける入射放射電力の少なくとも0.0001%であってもよい。
【0019】
一態様によれば、送信周波数fTXは受信周波数fRXの2倍であってもよい。
【0020】
一態様によれば、ハーモニック反射器は金属膜を有する基板を備えていてもよい。
【0021】
一態様によれば、ハーモニック反射器は金属膜を有するフレキシブル基板を備えていてもよい。
【0022】
一態様によれば、アンテナと整合回路の部品とは金属膜に形成されていてもよい。
【0023】
一態様によれば、ハーモニック反射器は非線形素子としてダイオードを備えていてもよい。
【0024】
一態様によれば、ケーシングは1.6と15との範囲内の誘電率を有する材料を備えていてもよい。
【0025】
一態様によれば、ケーシングは1.6と4との範囲内の誘電率を有する材料を備えていてもよい。これは例えば、ポリウレタンフォーム、PVC、ベークライト、ポリスチレン、ポリビニル、ナイロン、及び/又はゴムなど、様々な可塑性材料であり得る。
【0026】
一態様によれば、ケーシングは3.8と14.5との範囲内の誘電率を有する材料を備えていてもよい。これは例えば、ケイ酸塩ガラス、溶融石英、ソーダ石灰シリカガラス、ナトリウムホウケイ酸ガラス、酸化鉛ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、及び/又は酸化ゲルマニウムガラスなど、様々なガラス材料であり得る。
【0027】
一態様によれば、ケーシングは80と81との範囲内の誘電率を有する材料を備えていてもよい。これは例えば、様々な状態の及び様々な添加物を有する水であり得る。
【0028】
一態様によれば、ケーシングは1と1.0006との範囲内の誘電率を有する材料を備えていてもよい。これは例えば、様々な状態もしくは圧力の及び様々な添加物を有する真空又は空気であってもよい。
【0029】
一形態によれば、ケーシングは、ハーモニック反射器回路の動作周波数範囲をシフトさせる材料を備えていてもよい。
【0030】
一態様によれば、ハーモニック反射器の動作周波数範囲は第1の周波数と第2の周波数との間にあってもよい。
【0031】
一態様によれば、ハーモニック反射器の動作周波数範囲は第1の周波数と第2の周波数との間の周波数のスパンであってもよい。
【0032】
一態様によれば、動作周波数範囲は液体中で緊急救助器具を少なくとも部分的に覆うことによってシフトされてもよい。
【0033】
一態様によれば、ケーシングは第1の状態と第2の状態とを有していてもよく、動作周波数範囲は第2の状態においては第1の状態と比べてシフトされる。
【0034】
一態様によれば、ケーシングは第1の状態では第1の誘電率を有し第2の状態では第2の誘電率を有する材料を備えていてもよく、動作周波数範囲は第2の状態では第1の状態と比べてシフトされ、第1の状態は乾燥であり第2の状態は湿潤である。
【0035】
一態様によれば、ケーシングは革で作製されてもよい。例えば、ケーシングは、着用物、衣類、もしくは付札又はその一部であってもよい。例えば、ケーシングは、ベルト、ブーツ、靴、ブレスレット、他の着用物、ペンダント、又は類似のものであってもよい。
【0036】
一態様によれば、ケーシングは布で作製されてもよい。例えば、ケーシングは、着用物、衣類、もしくは付札又はその一部であってもよい。例えば、ジャケット、スキージャケットウインドジャケット、ズボン、バックパック、又は類似のもの。
【0037】
一態様によれば、ケーシングはプラスチックで作製されてもよい。例えば、ケーシングは、着用物、衣類、もしくは付札又はその一部であってもよい。
【0038】
一態様によれば、ケーシングは靴であってもよい。ハーモニック反射器は、例えば、靴の外部に又は内部区画内に搭載され得る。ハーモニック反射器回路は、靴の一部として注型された固体であってもよい。靴は、例えば、ブーツ、ハイキング靴、スキーブーツ、及び/又は通常の靴であってもよい。
【0039】
一態様によれば、ケーシングは救命胴衣であってもよい。ハーモニック反射器回路は、例えば、救命胴衣の外部に又は内部区画内に搭載され得る。ハーモニック反射器回路は、救命胴衣の一部として注型された固体であってもよい。救命胴衣は膨張式又は固型式であり得る。
【0040】
一態様によれば、ケーシングはブレスレットであってもよい。ハーモニック反射器回路は、例えば、ブレスレットの外部に又は内部区画内に搭載され得る。
【0041】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の本発明の例示的な実施形態の詳細な説明において提示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以上のことは、添付図面に図示される、以下の例示的な実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。添付図面において、同じ参照符号は、様々な図の全てを通じて同一の部分を指す。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、その代わりに例示的な実施形態を説明することに主眼が置かれている。
【0043】
図1】検出器及びハーモニック反射器回路の概略図である。
図2】従来技術のハーモニック反射器からの反射電力を示すグラフである。
図3】取り付け対象の物体と相互作用する従来技術のハーモニック反射器回路の概略図である。
図4】本発明の一実施形態によるハーモニック反射器回路と検出器との概略図である。
図5】本発明の一実施形態によるハーモニック反射器によって提供される応答を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態によるハーモニック反射器回路の一実施形態である。
図7】本発明の一実施形態によるハーモニック反射器回路を有する緊急救助器具の一実施形態である。
図8】本発明の一実施形態によるハーモニック反射器回路を有する緊急救助器具の一実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、全体として101と指定されるハーモニック反射器回路と、全体として102と指定される検出器とを示す。
【0045】
検出器102は周波数fRXの信号S1を送信する。この信号S1はハーモニック反射器回路101によって受信され、ハーモニック反射器回路101によって変換されると共に周波数fTXの第2の信号S2として送信される。ハーモニック反射器回路101は到来信号S1をアンテナ103によって受信する。アンテナ103は、周波数fRx及び周波数fTXの両方についてアンテナ103と非線形回路105とのインピーダンス整合を提供する整合回路104に接続されている。インピーダンス整合は、それぞれが周波数fRXとfTXとの第1の信号S1から第2の信号S2への低損失での変換にとって不可欠である。
【0046】
図2には、ハーモニック反射器102からの典型的な応答が開示されている。第1の曲線201は周波数fcで送信された信号からの反射電力Pを示し、曲線201の帯域幅は、非線形回路105とアンテナ103との間のインピーダンス整合に依存すると共に、もちろんアンテナ103及び非線形回路105自体の帯域幅にも依存する。
【0047】
図3には、ハーモニック反射器回路101が接地平面301と共に示されている。接地平面301は、ヘルメット又は人間など、物理的な物体であってもよい。接地平面301は整合回路104の特性を変更するハーモニック反射器回路101への誘電結合を引き起こす。これは、周波数fcにおける反射電力が対応する曲線202上でPからP’へと減少することを意味する。従来技術のハーモニック反射器回路101においては、整合回路は、所定の距離及び所定の誘電環境の所定の接地平面に対する整合を提供するように構成される。例えば、ハーモニック反射器101は、スキーブーツ又はヘルメット、すなわち同じ規模程度で同様の誘電特性の接地平面への搭載用に寸法決めされる。つまり、1つの眼鏡に搭載された又は容器に搭載された従来のハーモニック反射器回路101は、部分的には接地平面及び周囲の誘電特性の大きな違いによって、反射電力Pに関して非常に異なる応答を提供するであろう。
【0048】
本発明の発明者たちは、接地平面の特性及び誘電特性の変化という問題が、様々な特性の物体からのハーモニックレーダ反射を検出するという課題に関係する主要な要因であるということに気が付いた。
【0049】
本発明の発明者たちは、特性が変化する物体からのハーモニックレーダ反射に関する上記の課題の解決策は、ハーモニック反射器回路101の帯域幅を増大させることによって提供されることに気が付いた。これは、反射ハーモニック電力Pが周波数fの関数として示されている図4を検討することによって理解できる。第1の曲線401は中心周波数fcを中心とする反射ハーモニック電力を示しており、この第1の曲線は従来技術の曲線201に比べてより大きな帯域幅を提供する。接地平面301が、接地平面からハーモニック反射器回路101への結合が第1の曲線401から中心周波数fc’を有する第2の曲線402へのシフトを引き起こすように設置されるものと仮定する。図4のy軸は周波数fRXの倍数である周波数fTXにおける反射電力を開示している。x軸は受信周波数fRXを示す。反射電力PはP’まで減少するが、これは図2に示される減少よりもずっと少ない。このことは、反射電力Pは接地平面301によって有意に影響されはしないことを意味する。
【0050】
図5には、送信周波数fTXにおける反射電力Pが、本発明によるハーモニック反射器回路101からの受信周波数fRXの関数として示されている。受信周波数(fRX)は第1の周波数f1から第2の周波数f2までの間にあり、第1の周波数f1は少なくとも800MHzである。第2の周波数f2は、第1の周波数より少なくとも34MHz大きい。受信した信号は、定義された電磁環境に対して利用可能な最大出力電力(Pmax)の少なくとも70%の出力電力(Pout)で送信周波数(fTX)で送信される。
【0051】
一実施形態においては、第1の周波数は860.5MHzであり、第2の周波数は909.5MHzである。
【0052】
図6には、全体として601と指定されたハーモニック反射器回路の一実施形態が、縮尺に合わせて上面図で描かれている。このハーモニック反射器回路601は、本実施形態においては基板の金属膜603にはんだ付けされた表面型ダイオード602である非線形回路を備えている。アンテナ及び整合回路は基板の金属膜603に一体的に形成されている。ハーモニック反射器回路601は縮尺に合わせて描かれている。つまり、図を測定及び縮尺することによって広帯域ハーモニック反射器回路601が実現される。
【0053】
図7には、ハーモニック反射器回路を有する緊急救助器具の一実施形態が示されている。図示される実施形態においては、緊急救助器具700は、ハイキングブーツの形状をしたケーシング703によって包囲された2つのハーモニック反射器回路701及び702を有している。緊急救助器具700は、代替的には、単一のハーモニック反射器回路又は複数のハーモニック反射器ユニットを有していてもよい。ハーモニック反射器ユニットは、例えば、ハイキングブーツのタンにハーモニック反射器ユニット701として及び/又はハイキングブーツのクォータにハーモニック反射器ユニット702として位置していてもよい。ハーモニック反射器ユニットは、ライニング、バックステイ、ヒール、ソール、バンプ、先芯、カウンタ、及び/又は類似のものなど、ハイキングブーツ又は靴の他の部分に位置していてもよい。
【0054】
図8には、ハーモニック反射器回路を有する緊急救助器具の一実施形態が示されている。図示される実施形態においては、緊急救助器具800は、救命胴衣の形状をしたケーシング803によって包囲されたハーモニック反射器回路801を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8