(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】発光素子及び表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 59/122 20230101AFI20250128BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20250128BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250128BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20250128BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20250128BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20250128BHJP
【FI】
H10K59/122
G02B5/20 101
G09F9/30 348A
G09F9/30 349B
G09F9/30 365
H10K50/15
H10K50/17
H10K59/38
(21)【出願番号】P 2021554365
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2020039057
(87)【国際公開番号】W WO2021085176
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019197494
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 智孝
(72)【発明者】
【氏名】引地 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】境 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】島山 努
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165629(JP,A)
【文献】特開2012-182121(JP,A)
【文献】特開2012-182120(JP,A)
【文献】特開2003-186423(JP,A)
【文献】特開2008-112658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
G02B 5/20-5/28
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に設けられた複数の第1電極と、
前記複数の第1電極のそれぞれを外部に露出する開口を有し、前記開口における内壁の厚み方向の中間位置に庇を有する絶縁層と、
前記開口を覆う有機層と、
前記有機層の前記第1電極とは逆側の面に配置された第2電極と
を備え
、
前記絶縁層は、下段絶縁層、中間絶縁層および上段絶縁層が積層されて形成され、
前記下段絶縁層は、前記第1電極の表面を外部に露出させる開口を有し、前記第1電極の周縁を表面から側面にかけて覆うように設けられ、
前記中間絶縁層は、前記下段絶縁層の開口から一定の距離離れた場所に外周が位置する開口を有し、
前記上段絶縁層は、前記中間絶縁層の開口の外周を一定の距離内側に縮めた形状となる開口を有し、
前記上段絶縁層の開口の端縁が、前記中間絶縁層の開口の端縁よりも内側に向かって張り出し、この張り出した部分が前記庇となる、
発光素子。
【請求項2】
前記庇は、テーパー状である請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記庇は、最大の厚みが前記内壁の厚みに比べて薄い又はテーパー角が所定角度以下である請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記絶縁層は、
前記厚み方向に複数の前記庇を有
する、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記内壁の傾斜により切断され
る電荷生成層を含む請求項
1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記庇の前記開口側の端部が、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記
下段絶縁層の開口側の端部に対して、前記開口の中央から離れる方向に所定距離離れる請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記庇の前記開口側の端部が、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記
下段絶縁層の開口側の端部と、前記開口の中央からの距離が一致する請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記庇の前記開口側の端部が、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記
下段絶縁層の開口側の端部よりも前記開口の中央に近くに存在する請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記庇よりも前記第1電極側に位置する領域が階段状である請求項1に記載の発光素子。
【請求項10】
前記絶縁層は、厚み方向の前記第1電極側の端部に下端層切断用庇を有する請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記発光素子は、複数並び、
前記庇は、前記発光素子間に複数配置される請求項1に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第1電極は、前記開口における前記絶縁層の前記庇よりも前記第1電極側に位置する領域に開口方向とは逆側の面が沈み込む請求項1に記載の発光素子。
【請求項13】
前記第1電極は、前記庇が前記第1電極から離れる方向に向くように、前記庇の間に挟まれる請求項1に記載の発光素子。
【請求項14】
基板と、
前記基板上に画素毎に設けられた複数の第1電極と、
前記複数の第1電極のそれぞれを外部に露出する開口を有し、前記開口における内壁の厚み方向の中間位置に庇を有する絶縁層と、
前記開口を覆う有機層と、
前記有機層の前記第1電極とは逆側の面に配置された第2電極と、
前記第2電極の前記有機層とは反対側の面に配置されたカラーフィルタ層と
を備え
、
前記絶縁層は、下段絶縁層、中間絶縁層および上段絶縁層が積層されて形成され、
前記下段絶縁層は、前記第1電極の表面を外部に露出させる開口を有し、前記第1電極の周縁を表面から側面にかけて覆うように設けられ、
前記中間絶縁層は、前記下段絶縁層の開口から一定の距離離れた場所に外周が位置する開口を有し、
前記上段絶縁層は、前記中間絶縁層の開口の外周を一定の距離内側に縮めた形状となる開口を有し、
前記上段絶縁層の開口の端縁が、前記中間絶縁層の開口の端縁よりも内側に向かって張り出し、この張り出した部分が前記庇となる、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画素塗り分けを行わないアクティブOLED(Organic Light-Emitting diode)パネルでは、抵抗の低い有機材料を適用する場合、有機材料を通じた画素間の電流リークである有機層リーク及び有機被膜性悪化部分のデバイスリークの課題が知られている。このようなリーク電流が発生すると、特定の画素を点灯させたときに隣接画素に電流が流れ、意図していない画素が発光してしまう。その結果、色域低下、色ズレ、発光効率低下又はコントラスト不足といった不具合が生じるおそれがある。
【0003】
この課題への対策として、抵抗の低い有機材料を画素間で切断するように画素分離用絶縁膜を配置して画素と画素とを絶縁して隔離する構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画素分離用絶縁膜を配置した従来技術では、有機膜、カソード電極膜及び保護膜のカバレッジが悪化し、発光特性が悪化するおそれがある。
【0006】
そこで、本開示では、発光特性を改善させることができる発光素子及び表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、複数の第1電極が、画素毎に設けられる。絶縁層は、前記複数の第1電極のそれぞれを外部に露出する開口を有し、前記開口における内壁の厚み方向の中間位置に庇を有する。有機層は、前記絶縁層の前記庇により切断された電荷生成層を含み、前記開口を覆う。第2電極は、前記有機層の前記第1電極とは逆側の面に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る発光素子の1つの実施例の図である。
【
図4】CGLにおけるリーク電流による影響を説明するための図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例1に係る画素分離用絶縁膜の断面の概要を表す図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例2に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。
【
図7】第1の実施形態の変形例3に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る画素分離用絶縁膜の断面図である。
【
図9】第2の実施形態の変形例に係る画素分離用絶縁膜の断面の概要を表す図である。
【
図10】第3の実施形態に係る画素分離用絶縁膜の断面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。
【
図12】第5の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図13】第6の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【
図14】第7の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
アクティブOLEDは高精細のため、画素塗り分けが難しい。このため、有機蒸着を行う際にはエリア成膜が行われる。この方法では、ホール移動度が高い有機層部分で隣接画素間のリーク電流が問題となる。リーク電流発生の主な原因には、有機層内のホール電子移動度の高い層における画素間での横方向へのリークや、有機被膜性悪化による層の薄い部分の電圧が低くなることによる縦方向へのリークがある。
【0011】
この対策のため、抵抗の低い有機材料を画素間で切断するように画素分離用絶縁膜を配置することが行われる。さらに、この画素間に配置された画素分離用絶縁膜のアノード部分をテーパー形状とし、そのテーパー角を高くすることでホール移動度の高い層を薄膜化させ移動度を下げてリークを抑制することが行われる。また、1層目HIL/HTLなどにおける電流のリークが遮断される。
【0012】
しかし、この技術では、有機層の有機構造を複数のスタックとする場合、2スタック以降の対策が難しい。2スタック以上の有機構造の場合、1層目HIL/HTLなどにおける電流のリークは遮断されるとしても、ホール電子移動度の高い層における電流のリークの遮断は困難である。また、1スタックの有機構造を有する有機層であっても、ホール移動度の高い層の膜厚設計値に制限が掛かり十分に薄くすることが困難となるおそれがある。その場合、ホール移動度が高い有機層でのリーク電流の発生を抑制することは困難であり、電気特性、発光特性及び信頼性などが悪化するおそれがある。
【0013】
[第1の実施形態に係る発光素子の構成]
図1は、第1の実施形態に係る発光素子の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る発光素子1は、アノード電極11、画素分離用絶縁膜12及び有機層13を有する。
【0014】
アノード電極11は、画素毎に電気的に分離して設けられると共に、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上では望ましい。また、アノード電極11は陽極として用いられることから、正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。
【0015】
このようなアノード電極11の積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)は、例えば30nm以上1000nm以下である。また、アノード電極11のピッチ(隣り合うアノード電極11同士の間の間隔)は、例えば200nm~1000nm程度である。アノード電極11の構成材料としては、クロム(Cr)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、銀(Ag)あるいはアルミニウム(Al)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。アノード電極11の表面には、インジウムとスズの酸化物(ITO)などの透明導電膜が設けられていてもよい。アノード電極11の厚みは、配線抵抗と反射率(表面ラフネス)のバランスにより適宜設定される。尚、いわゆるボトムエミッション方式(下面発光方式)の場合には、アノード電極11は透明導電膜により構成される。
【0016】
画素分離用絶縁膜12は、アノード電極11を画素毎に電気的に分離すると共に、アノード電極11と有機層13に接するカソード電極14との間の絶縁性を確保するためのものである。画素分離用絶縁膜12は、下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123が積層されて形成される。この画素分離用絶縁膜12が、「絶縁層」の一例にあたる。
【0017】
下段絶縁層121は、アノード電極11の表面(カソード電極14との対向面)を外部に露出させる開口を有し、アノード電極11の周縁を表面から側面(端面)にかけて覆うように設けられる。下段絶縁層121の開口は、カソード電極14との対向面からアノード電極11に向けて延びる内壁121Aがアノード電極11側に向けて開口が小さくなるようにテーパー状に形成される。
【0018】
中間絶縁層122は、下段絶縁層121のカソード電極14との対向面上に積層される。中間絶縁層122は、下段絶縁層121の開口の外周の各点から一定の距離を離して配置される。すなわち、中間絶縁層122は、下段絶縁層121の開口から一定の距離離れた場所に外周が位置する開口を有する。本実施の形態に係る中間絶縁層122の開口の内壁122Aは、厚み方向に向けてアノード電極11に対して垂直な面を有する。
【0019】
上段絶縁層123は、中間絶縁層122のカソード電極14との対向面上に積層される。上段絶縁層123は、内壁123Aがテーパー状となる開口を有する。上段絶縁層123の開口は、内壁123Aのアノード電極11側の外周が中間絶縁層122の開口の外周を一定の距離内側に縮めた形状となる。そして、上段絶縁層123の開口は、アノード電極11から離れる方向に向けて内壁123Aの外周が大きくなる。上段絶縁層123の内壁123Aの厚みを含めた箇所は、後述するように庇123Bとなる。すなわち、庇123Bは、テーパー状となる。
【0020】
ここで、上段絶縁層123のテーパー状の内壁123Aに対しては後述する有機層13の有機付き廻りが悪くなる。そこで、上段絶縁層123の庇123Bは、内壁121A、内壁122A及び内壁123Aを合わせた厚みに対して厚みを薄くする又はテーパー角を小さくすることが好ましい。これにより、内壁123Aに対しての有機層13の有機付き廻りを改善することができる。有機層13の有機付きを改善可能な最大の角度が「所定角度」の一例にあたる。なお、庇123Bは、厚みを薄くし、且つ、テーパー角を小さくしてもよい。
【0021】
下段絶縁層121の開口、中間絶縁層122の開口及び上段絶縁層123の開口により、画素分離用絶縁膜12の開口120が形成される。開口120は、発光素子1の発光領域を区画するものである。この開口120の平面形状は、特に限定されないが、例えば矩形状、正方形状または円形状等である。
【0022】
本実施の形態では、開口120の縁部において、上段絶縁層123の開口の端縁が、中間絶縁層122の開口の端縁よりも開口120の内側に向かって張り出し、この張り出した部分が庇123Bとなる。換言すると、開口120の縁部において、中間絶縁層122の内壁122Aが、上段絶縁層123の内壁123Aのアノード電極11側の端部の位置よりも後退して形成されている。
【0023】
庇123Bを設けることにより、後述するように、有機層13における第1OLED層131及びCGL132が切断される。そのため、庇123Bの厚み、長さ及びテーパー角を含む形状、並びに、中間絶縁層122の厚みを含む形状は、第1OLED層131及びCGL132を蒸着する際に、第1OLED層131及びCGL132のそれぞれが有機層カット部Pで切断されるように決定される。庇123Bの高さおよび幅は、上段絶縁層123及び中間絶縁層122のそれぞれの厚み、材料およびエッチング条件、開口120の幅、第1OLED層131及びCGL132の材料および厚み等に応じて、第1OLED層131及びCGL132を切断可能な値に設定される。
【0024】
また、本実施の形態では、開口120の縁部において、下段絶縁層121の開口の端縁が、上段絶縁層123の開口の端縁よりも開口120の内側に向かって張り出す。下段絶縁層121における内壁121Aのアノード電極11側の端部の位置と、上段絶縁層123における内壁123Aのアノード電極11側の端部の位置との距離Lは、ある程度距離を有することが好ましい。例えば、距離Lは、200nmとすることができる。この距離Lをある程度の長さ以上とすることで、画素エッジ縦リークを改善することができる。
【0025】
下段絶縁層121及び上段絶縁層123と中間絶縁層122とはそれぞれ、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンまたは酸化アルミニウム等の無機絶縁材料のうち、エッチング選択比を得ることが可能な、互いに異なる材料により構成されている。本実施の形態では、例えば、下段絶縁層121及び上段絶縁層123は酸化シリコン(SiO2)により形成され、中間絶縁層122は窒化シリコン(SiN)により形成される。ただし、下段絶縁層121及び上段絶縁層123と中間絶縁層122とにおいてエッチング選択比を得ることができればよく、下段絶縁層121と上段絶縁層123とは異なる材料を用いてもよい。また下段絶縁層121と上段絶縁層123との間でも、エッチング選択比を得ることが可能な材料を用いてもよい。このように、エッチング選択比を得ることが可能な材料を用いることで、下段絶縁層121及び上段絶縁層123と中間絶縁層122をそれぞれ所望の形状に加工することが容易となる。
【0026】
有機層13は、積層された第1OLED層131、CGL(Charge Generation Layer)132及び第2OLED層133を含む。有機層13は、図示しないが、他にも電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層及び正孔注入層などを含む。
【0027】
第1OLED層131は、青色発光層である。第1OLED層131は、電界をかけることにより、アノード電極11から注入された正孔の一部と、カソード電極14から注入された電子の一部とが再結合して、青色の光を発光する。第1OLED層131は、例えば、青色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含む。青色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。例えば、第1OLED層131は、DPVBiに4,4’-ビス[2-{4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成される。
【0028】
第1OLED層131は、例えば蒸着法により堆積されて形成される。庇123Bにおいて堆積することで、下段絶縁層121のカソード電極14側の表面上に、庇123B及び庇123Bに堆積された素子の陰になる領域が形成される。第1OLED層131は、その陰になった領域に堆積されなくなり、有機層カット部Pで切断される。このような、蒸着時に庇123B及び庇123Bに堆積された素子の陰になることで有機層が切断される現象は、「有機蒸着プロセスにおけるシャドーイング現象」と呼ばれる場合がある。
【0029】
CGL132は、キャリアを供給するために電導性の高い材料で形成される電荷発生層でありホール移動度の高い層である。CGL132は、第1OLED層131に電子を供給し、第2OLED層133に正孔を供給して、それぞれの等量の電荷量を供給することでCGL132内において等電位面を保つ。CGL132により発光効率が高まる。
【0030】
CGL132は、例えば蒸着法により堆積されて形成される。庇123B上に積層され第1OLED層131の上に堆積することで、CGL132も、下段絶縁層121のカソード電極14側の表面上の庇123B及び庇123Bに堆積された素子の陰になった領域に堆積されなくなり、有機蒸着プロセスにおけるシャドーイング現象により有機層カット部Pで切断される。
【0031】
第2OLED層133は、赤色及び緑色発光層である。第2OLED層133は、電界をかけることにより、アノード電極11から注入された正孔の一部と、カソード電極14から注入された電子の一部とが再結合して、赤色及び緑色の光を発光する。第2OLED層133は、例えば、赤色及び緑色発光材料,正孔輸送性材料,電子輸送性材料および両電荷輸送性材料のうち少なくとも1種を含む。赤色及び緑色発光材料は、蛍光性のものでも燐光性のものでもよい。
【0032】
第2OLED層133は、例えば蒸着法により堆積されて形成される。第2OLED層133は、庇123B上に積層されたCGL132及びアノード電極11上に積層されたCGL132のそれぞれの上に堆積する。CGL132は有機層カット部Pで切断されているが、その間隔は短い。そのため、庇123B上に積層されたCGL132の上に堆積する第2OLED層133と、アノード電極11上に積層されたCGL132の絵うに堆積する第2OLED層133とは、連結する。すなわち、第2OLED層133は、有機層カット部Pの開口を埋めて、連続した1つの層となる。
【0033】
有機層カット部Pの開口を埋めることで、画素分離用絶縁膜12と有機層13とに囲われた空隙Sが生成される。この空隙Sは、第2OLED層133が充填されてもよい。
【0034】
カソード電極14は、第2OLED層133のアノード電極11とは反対型の表面の全てを覆うように形成される。このカソード電極14は、例えば光透過性を有する導電膜、例えばITO,IZO,ZnO,InSnZnO,MgAg合金およびAg等の単層膜あるいはこれらのうちの2種以上を含む積層膜により構成されている。尚、ボトムエミッション方式の場合には、アノード電極11において列挙した材料と同様のものを用いることができる。
【0035】
このように、有機層13は、青色発光層である第1OLED層131と赤色及び緑色発光層である第2OLED層133とが積層され、それぞれで発生した光が混色することにより白色光を生じる。ただし、有機層13は、白色光を発生する構成となっていればこのような積層構造に限定されない。例えば、有機層13は、青色発光層と黄色発光層とが積層されたものであってもよいし、青色発光層と橙色発光層が積層されたものであってもよい。
【0036】
さらに、発光素子1を用いた表示装置について説明する。表示装置では、カソード電極14の第2OLED層133と反対側の面には、保護層が生成される。保護層は、窒化シリコン、酸化シリコンまたは金属酸化物などにより構成されている。さらに、表示装置では、保護層のカソード電極14と反対側には、カラーフィルタ層が生成される。カラーフィルタ層は、発光素子1で発生した白色光を、画素毎に赤色光、緑色光又は青色光として取り出す。カラーフィルタ層は、例えば、赤色フィルタ層、緑色フィルタ層、青色フィルタ層のいずれかが発光素子1に対向する位置に配置される。
【0037】
[製造方法]
発光素子1は、一般的な半導体プロセスを組み合わせることで製造される。以下に、発光素子1及び発光素子1を用いた表示装置の製造工程の一例の概略を説明する。
【0038】
基板上に駆動回路層を、MOSプロセスにより形成した後、全面に、例えば感光性樹脂を塗布する。この感光性樹脂に露光および現像を行い、所定の形状にパターニングして平坦化層を形成する。パターニングと同時に接続孔を形成した後、接続孔を導電材料により埋め込むことによりプラグを形成する。この後、金属層を、例えばスパッタ法により成膜した後、例えばウェットエッチングを行って、発光素子1毎(画素毎)に分離されたアノード電極11を形成する。
【0039】
次に、開口120及び庇123Bを有する画素分離用絶縁膜12を生成する。具体的には、まず、基板の全面にわたり、下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123を、この順に積層する。この際、下段絶縁層121として例えばSiONまたはSiNを、中間絶縁層122として例えばSiO2を、上段絶縁層123として例えばSiONまたはSiNを、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、それぞれ成膜する。
【0040】
次いで、積層した下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123のうち、例えばフォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより、第2絶縁層15Bのみを選択的に除去し、上段絶縁層123に開口を形成する。具体的には、例えば上段絶縁層123上にフォトレジストの成膜および露光(パターニング)を行う。この後、例えば異方性(または等方性)のドライエッチング(またはウェットエッチング)により、上段絶縁層123と中間絶縁層122との間でエッチング選択比の得られる条件を用いて、上段絶縁層123を中間絶縁層122の表面まで加工する。この際、上段絶縁層123の内壁123A、すなわち庇123Bがテーパー状となるようにエッチングを行う。ここで、上段絶縁層123の庇123Bは、開口120の内壁の厚さに対して薄く又はテーパー角を小さく形成されることが好ましい。上段絶縁層123の加工後、フォトレジストを剥離する。
【0041】
続いて、露出した中間絶縁層122を選択的に除去することにより、中間絶縁層122の開口を形成する。この際、例えば等方性のドライエッチングまたは等方性のウェットエッチングにより、中間絶縁層122と上段絶縁層123及び下段絶縁層121との間でエッチング選択比の得られる条件を用いて、中間絶縁層122を下段絶縁層121の表面まで加工する。これにより、中間絶縁層122の開口を形成すると共に、中間絶縁層122の内壁122Aの位置が、上段絶縁層123の内壁123Aの中間絶縁層122側の端部よりも後退し、庇123Bが形成される。
【0042】
続いて、露出した下段絶縁層121を選択的に除去することにより、開口120を形成する。この際、例えば等方性のドライエッチングまたは等方性のウェットエッチングにより、下段絶縁層121と中間絶縁層122との間でエッチング選択比の得られる条件を用いて、下段絶縁層121をアノード電極11の表面まで加工する。この際、下段絶縁層121の内壁121Aがテーパー状となるようにエッチングを行う。また、下段絶縁層121における内壁121Aのアノード電極11側の端部と上段絶縁層123における内壁123Aのアノード電極11側の端部との距離Lがある程度の長さを有するように形成される。
【0043】
その後、例えば真空蒸着法,スパッタ法,またはスピンコート法やダイコート法等のコーティング法により、正孔注入層及び正孔輸送層を、この順に基板の全面に成膜する。この際、正孔注入層は、画素分離用絶縁膜12の開口120に形成された庇123Bにより切断される。
【0044】
次に、第1OLED層131を、例えば真空蒸着法,スパッタ法,またはスピンコート法やダイコート法等のコーティング法により成膜する。このとき、第1OLED層131は、画素分離用絶縁膜12の開口120に形成された庇123Bにより切断される。
【0045】
次に、CGL132を、例えば真空蒸着法,スパッタ法,またはスピンコート法やダイコート法等のコーティング法により成膜する。このとき、CGL132は、画素分離用絶縁膜12の開口120に形成された庇123Bにより切断される。
【0046】
このように、本実施形態では、庇123Bによって、第1OLED層131及びCGL132を別途パターニングすることなく、アノード電極11毎に分離して形成することができる。
【0047】
次に、第2OLED層133を、例えば真空蒸着法,スパッタ法,またはスピンコート法やダイコート法等のコーティング法により成膜する。この場合、第2OLED層133は、庇123Bにより切断されることなく繋がった状態で形成される。第2OLED層133により第1OLED層131及びCGL132の切断部が埋められることで、空隙Sが形成される。
【0048】
次いで、例えば真空蒸着法またはスパッタ法等により、基板の全面に上述した材料よりなるカソード電極14を形成する。このように、アノード電極11上に、有機層13およびカソード電極14を、例えば真空雰囲気において連続して成膜することができる。また、有機層13およびカソード電極14がアノード電極11の直上の領域だけでなく、隣接するアノード電極11間(画素間)の領域にも形成された素子構造となる。このようにして、発光素子1が形成される。
【0049】
次に、例えばCVD法またはスパッタ法により、発光素子1の上に保護層が形成される。さらに、保護層上に接着層を介してカラーフィルタ層を有する封止用基板を貼り合わせる。これにより、発光素子1を有する表示装置が製造できる。
【0050】
図2は、第1の実施形態に係る発光素子の1つの実施例の図である。
図2に示すように、画素分離用絶縁膜12は、開口120を備えた下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123を有する。そして、中間絶縁層122を上段絶縁層123よりも開口120の中央に対して凹ますことで、庇123Bが形成される。この庇123Bを設けることで、
図2に示すように、第1OLED層131及びCGL132が切断される。また、
図2の実施例の場合、空隙Sが形成される。
【0051】
[作用、効果]
本実施形態の発光素子1では、駆動電流が注入される。この駆動電流が、アノード電極11及びカソード電極14を通じてCGL132を介して有機層13の第1OLED層131及び第2OLED層133に注入されることにより、正孔と電子とが再結合し、発光が起こる。
【0052】
第1OLED層131及び第2OLED層133の発生した光の混色により白色光が発生すると、アノード電極11及びカソード電極14間において繰り返し反射された後、カソード電極14、保護層、カラーフィルタを透過して取り出される。具体的には、有機層13から発生し、カソード電極14を通過した白色光は、カラーフィルタ層において、例えばRGB(Red Green Blue)の各色光に色分離される。即ち、発光素子1から発生した白色光のうち、赤色フィルタ層では赤色光が、緑色フィルタ層では緑色光が、青色フィルタ層では青色光が、それぞれ選択的に透過する。このようにして、R、G、Bの各色光を発する発光素子1の組を1つのピクセルとした画像表示が行われる。
【0053】
ここで、発光素子1を有する表示装置では、有機層13およびカソード電極14は、画素毎にパターニングされることなく連続的にベタ成膜される。
【0054】
ここで、
図3は、CGLが連続した発光素子の断面図である。発光素子2は、本実施例に係る発光素子1と同様に、アノード電極21、画素分離用絶縁膜22、第1OLED層23、CGL24、第2OLED層25及びカソード電極26を有する。ただし、画素分離用絶縁膜22は、開口の内壁の中間位置に庇を有さない構成である。そのため、
図3に示すように従来の発光素子2では、第1OLED層23及びCGL24は、アノード電極21毎(画素毎)に切断されない。そのため、ホール移動度の高い層であるCGL24において、隣接画素が電気的に接続状態になる。
【0055】
図4は、CGLにおけるリーク電流による影響を説明するための図である。断面301は、赤色フィルタ層27Aに対応するアノード電極21Aに電流が流れた場合の状態を表す。断面302は、緑色フィルタ層27Bに対応するアノード電極21Bに電流が流れた場合の状態を表す。断面303は、青色フィルタ層27Cに対応するアノード電極21Cに電流が流れた場合の状態を表す。
【0056】
断面301のように、アノード電極21A及びカソード電極26に電流が流れると、第1OLED層23における赤色フィルタ層27Aに対応する位置で発光が起こる。その後、CGL24を経由して第2OLED層25に電流が流れる。この際、CGL24において、隣接画素間で電流リークが発生する。そのため、緑色フィルタ層27B及び青色フィルタ層27Cの位置まで電流が流れ、第2OLED層25における赤色フィルタ層27A、緑色フィルタ層27B及び青色フィルタ層27Cに対応する位置で発光が起こる。これにより、赤色及び緑色の光が発生し赤色フィルタ層27Aにより赤色の光が取り出され、且つ、緑色フィルタ層27Bにより緑色の光が取り出される。
【0057】
また、断面302のように、アノード電極21B及びカソード電極26に電流が流れると、第1OLED層23における緑色フィルタ層27Bに対応する位置で発光が起こる。その後、CGL24を経由して第2OLED層25に電流が流れる。この際、CGL24において、隣接画素間で電流リークが発生する。そのため、赤色フィルタ層27A及び青色フィルタ層27Cの位置まで電流が流れ、第2OLED層25における赤色フィルタ層27A、緑色フィルタ層27B及び青色フィルタ層27Cに対応する位置で発光が起こる。これにより、赤色及び緑色の光が発生し赤色フィルタ層27Aにより赤色の光が取り出され、且つ、緑色フィルタ層27Bにより緑色の光が取り出される。
【0058】
また、断面303のように、アノード電極21C及びカソード電極26に電流が流れると、第1OLED層23における青色フィルタ層27Cに対応する位置で発光が起こる。その後、CGL24を経由して第2OLED層25に電流が流れる。この際、CGL24において、隣接画素間で電流リークが発生する。そのため、赤色フィルタ層27A及び緑色フィルタ層27Bの位置まで電流が流れ、第2OLED層25における赤色フィルタ層27A、緑色フィルタ層27B及び青色フィルタ層27Cに対応する位置で発光が起こる。これにより、青色フィルタ層27Cにより青色の光が取り出されるとともに、赤色及び緑色の光が発生し赤色フィルタ層27Aにより赤色の光が取り出され、且つ、緑色フィルタ層27Bにより緑色の光が取り出される。
【0059】
このように、従来の発光素子2では、印加画素以外の画素も励起発光してしまい、発光特性が悪化する。これに対して、本実施の形態では、画素分離用絶縁膜12の開口120の内壁の中間位置に庇123Bが設けられ、この庇123Bによって、第1OLED層131及びCGL132が切断されている。特に、CGL132が切断されることで、アノード電極11上に、有機層13およびカソード電極14を連続的にベタ成膜しつつも、隣接画素間において、CGL132が電気的に遮断される。
【0060】
画素毎に設けられたアノード電極11に庇123Bを設けた開口120を有する画素分離用絶縁膜12を備えることで、各画素間でCGL132を電気的に遮断することができる。これにより、全画素に有機層13を連続的にベタ成膜する構造において、電流リークを抑制することができる。これにより、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、電荷注入効率(ここでは正孔注入効率)が改善され、発光効率を向上させることができる。更に、隣接画素への電流リークが軽減されることから、混色の発生を抑制することもできる。
【0061】
(変形例1)
本変形例に係る発光素子1は、中間絶縁層122の形状が第1の実施形態と異なる。
図5は、第1の実施形態の変形例1に係る画素分離用絶縁膜の断面の概要を表す図である。
図5における断面201~204で表される画素分離用絶縁膜12は、それぞれ異なる中間絶縁層122の形状を有する。
【0062】
第1の実施形態に係る発光素子1では、中間絶縁層122の開口における内壁122Aは、アノード電極11の表面に対して垂直となるようなテーパー形状を有していた。以下では、第1の実施形態に係る発光素子1の画素分離用絶縁膜12の形状を標準形状と言う。
【0063】
これに対して、断面201における内壁122Aは、カソード電極14側からアノード電極11側に向けて開口が大きくなるようなテーパー形状、すなわち、庇123Bの逆テーパー形状を有する。この場合、中間絶縁層122の開口のカソード電極14側の端部位置は、上段絶縁層123の開口のアノード電極11側の端部の位置よりも開口の中央から離れた位置である。
【0064】
また、断面202における内壁122Aは、断面201と同様に庇123Bの逆テーパー形状を有する。ただし、この場合は、中間絶縁層122の開口のカソード電極14側の端部位置は、上段絶縁層123の開口のアノード電極11側の端部の位置に一致する。
【0065】
また、断面203における内壁122Aは、カソード電極14側からアノード電極11側に向けて開口が小さくなるようなテーパー形状、すなわち、庇123Bの順テーパー形状を有する。この場合、中間絶縁層122の開口のカソード電極14側の端部位置は、上段絶縁層123の開口のアノード電極11側の端部の位置よりも開口の中央から離れた位置である。
【0066】
また、断面204における内壁122Aは、開口の中央に対して凹面となる形状を有する。そして、
図5では、中間絶縁層122の開口のカソード電極14側の端部位置は、上段絶縁層123の開口のアノード電極11側の端部の位置に一致している。ただし、中間絶縁層122の開口のカソード電極14側の端部位置は、上段絶縁層123の開口のアノード電極11側の端部の位置よりも開口の中央から離れた位置であってもよい。
【0067】
本変形例に係る発光素子1は、断面201~204のいずれかを用いることができる。断面201~204の何れの形状であっても、有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により第1OLED層131及びCGL132は切断される。
【0068】
以上に説明したように、本変形例に係る発光素子1は、標準形状とは異なる形状の画素分離用絶縁膜12を有し、そのような画素分離用絶縁膜12であっても、CGL132は切断される。したがって、電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。このように、画素分離用絶縁膜12の形状は、庇123Bを設けることで有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象によりCGL132を切断できる形状であればとくに制限は無い。
【0069】
(変形例2)
図6は、第1の実施形態の変形例2に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。本変形例に係る発光素子1は、
図6に示すように、上段絶縁層123の開口側の端部から下段絶縁層121の開口側の端部までの距離が、
図1に示した画素分離用絶縁膜12よりも長く形成されている。
【0070】
このように、上段絶縁層123の開口側の端部から下段絶縁層121の開口側の端部までの距離を長くすることで、第2OLED層133、カソード電極14及び保護膜の被膜性の悪化を改善することができる。
【0071】
(変形例3)
図7は、第1の実施形態の変形例3に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。本変形例に係る発光素子1は、
図7に示すように、上段絶縁層123の厚みが、
図1に示した画素分離用絶縁膜12の上段絶縁層123の厚みよりも厚く形成されている。さらに、内壁123Aのテーパー角が
図1に示した画素分離用絶縁膜12の内壁123Aのテーパー角よりも小さい。
【0072】
このように、上段絶縁層123の厚みが厚い場合でも、内壁123Aのテーパー角を低角化することで、第1OLED層131及びCGL132が切断される。したがって、発光素子1の画素分離用絶縁膜12は、第1OLED層131及びCGL132を切断するために、上段絶縁層123を薄くするか、内壁123Aのテーパー角を低角化するかを選択することが可能である。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る発光素子1は、下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123に加えてさらに画素分離用絶縁膜12に層が追加されたことが第1の実施形態と異なる。本実施形態に係る発光素子1は、画素分離用絶縁膜12の形状以外は、
図1で示した構造と同様の構造を有する。
【0074】
図8は、第2の実施形態に係る画像分離用絶縁膜の断面図である。本実施形態に係る画素分離用絶縁膜12は、断面211で示すように、下段絶縁層121の下に、最下位絶縁層124を有する。画素分離用絶縁膜12の開口120は、最下位絶縁層124の開口を含んで形成される。
【0075】
最下位絶縁層124の開口における内壁は、下段絶縁層121の開口における内壁のアノード電極11側の端部よりも開口120の中央から遠い領域を有する。言い換えれば、最下位絶縁層124の開口における内壁は、下段絶縁層121の開口における内壁のアノード電極11側の端部よりも開口120の中央に対して凹んだ領域を有する。これにより、下段絶縁層121の一部が庇121Bとして形成される。
【0076】
庇121Bの高さは、平坦性の観点から、有機層13における第1OLED層131のアノード電極11側に配置された正孔注入層を切断し得る、可能な限り小さい値に設定されることが望ましい。庇121Bの高さおよび幅は、下段絶縁層121および最下位絶縁層124のそれぞれの厚み、材料およびエッチング条件、開口120の幅、正孔注入層の材料および厚み等に応じて、正孔注入層を切断可能な値に設定される。なお、最下位絶縁層124によって切断される層は、正孔注入層に限らず、有機層18の他の層を切断してもよい。
【0077】
最下位絶縁層124は以下の方法で形成される。下段絶縁層121が選択的に除去されることで開口が形成され最下位絶縁層124が露出する。続いて、露出した最下位絶縁層124を選択的に除去することにより、最下位絶縁層124の開口を形成する。この際、例えば等方性のドライエッチングまたは等方性のウェットエッチングにより、最下位絶縁層124と下段絶縁層121との間でエッチング選択比の得られる条件を用いて、最下位絶縁層124をアノード電極11の表面まで加工する。これにより、最下位絶縁層124の開口を形成すると共に、最下位絶縁層124の内壁の位置が、下段絶縁層121の最下位絶縁層124側の端部よりも後退し、庇121Bが形成される。この庇121Bが、「下端層切断用庇」の一例にあたる。
【0078】
有機層13の正孔注入層は、最下位絶縁層124が設けられて庇121Bが形成されることで、蒸着時の有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により切断される。すなわち、有機層13の正孔注入層は、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。ここで、本実施例では、庇121Bにより正孔注入層を切断したが、正極と負極が逆の構造であれば、庇121Bにより有機層13における電子注入層が切断される。すなわち、正孔注入層又は電子注入層は、有機層13の端に位置する層であり、アノード電極11側に位置する側が下端層となり、庇121Bで切断される。
【0079】
また、第1OLED層131及びCGL132は、第1の実施形態と同様に、庇123Bによる蒸着時の有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により切断される。
【0080】
このように、本実施形態に係る発光素子1は、画素毎に切断された正孔注入層を有する。各画素間で正孔注入層17を電気的に遮断することができる。よって、全画素に共通の発光層を有する素子構造において、電流リークを抑制することが可能となる。また、正孔注入層における電流リークを抑制できることから、正孔注入層の厚膜化が可能となるため、より一層の正孔注入効率ひいては発光効率の向上を実現できる。
【0081】
(変形例)
本変形例に係る発光素子1は、3段以上の発光層に対応する画素分離用絶縁膜12を有する。
図9は、第2の実施形態の変形例に係る画素分離用絶縁膜の断面の概要を表す図である。本実施例に係る発光素子1の画素分離用絶縁膜12は、断面212又は213で表される形状を有する。
【0082】
断面212を有する画素分離用絶縁膜12は、上段絶縁層123の上に第2中段絶縁層125及び第2上段絶縁層126を有する。第2中段絶縁層125の内壁は、第2上段絶縁層126の第2中段絶縁層125側の端部よりも開口120の中央から遠い位置にある。これにより、第2上段絶縁層126の一部は、庇126Bとして形成される。
【0083】
第2中段絶縁層125及び第2上段絶縁層126は、第1の実施形態において説明した中間絶縁層122及び上段絶縁層123の製造手順と同様の手順で製造される。
【0084】
この場合、有機層13は、3段のOLED層を有する。ここでは、3段のOLED層を、それぞれアノード電極11側から、1段目層、2段目層、3段目層という。また、1段目層と2段目層との間には第1CGLが積層され、2段目層と3段目層との間には第2CGLが積層される。
【0085】
1段目層と第1CGLは、庇123Bを設けたことによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。また、2段目層と第2CGLは、庇126Bを設けたことによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。
【0086】
断面213を有する画素分離用絶縁膜12は、上段絶縁層123の上に第2中段絶縁層125、第2上段絶縁層126、第3中段絶縁層127及び第3上段絶縁層128を有する。第2中段絶縁層125の内壁は、第2上段絶縁層126の第2中段絶縁層125側の端部よりも開口120の中央から遠い位置にある。これにより、上段絶縁層123の一部は、庇126Bとして形成される。また、第3中段絶縁層127の内壁は、第3上段絶縁層128の第3中段絶縁層127側の端部よりも開口120の中央から遠い位置にある。これにより、第3上段絶縁層128の一部は、庇128Bとして形成される。
【0087】
第2中段絶縁層125及び第2上段絶縁層126、並びに、第3中段絶縁層127及び第3上段絶縁層128は、第1の実施形態において説明した中間絶縁層122及び上段絶縁層123の製造手順と同様の手順で製造される。
【0088】
この場合、有機層13は、4段のOLED層を有する。ここでは、4段のOLED層を、それぞれアノード電極11側から、1段目層、2段目層、3段目層、4段目層という。また、1段目層と2段目層との間には第1CGLが積層され、2段目層と3段目層との間には第2CGLが積層され、3段目層と4段目層との間には第3CGLが積層される。
【0089】
1段目層と第1CGLは、庇123Bを設けたことによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。また、2段目層と第2CGLは、庇126Bを設けたことによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。また、3段目層と第3CGLは、庇128Bを設けたことによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11毎(画素毎)に切断される。
【0090】
ここで、本変形例では、3段のOLED層又は4段のOLED層を有する有機層13に対応する形状を有する画素分離用絶縁膜12を有する場合について説明したが、OLED層の段数に特に制限は無く、画素分離用絶縁膜12はOLED層の段数に合わせて庇が設けられればよい。
【0091】
以上に説明したように、本実施例に係る発光素子1は、3段以上の複数段のOLED層及びCGLを有する有機層13の各CGLを画素毎に切断する。これにより、CGLでの電流リークを抑えることができる。したがって、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0092】
ここで、本変形例では、切断対象とするCGLと同数の庇を有する画素分離用絶縁膜12について説明したが、CGLの中に庇を含む開口120における内壁の傾斜により切断されるCGLが存在する場合には、そのCGLに対応する庇は設けなくてもよい。すなわち、切断対象とするCGLに、開口120の内壁の傾斜により切断されるCGLが存在する場合、そのCGLの数を切断対象とするCGLの総数から減算した数の庇を画素分離用絶縁膜12に設ければよい。
【0093】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る画素分離用絶縁膜の断面図である。本実施形態に係る発光素子1の画素分離用絶縁膜12は、断面221~224のいずれかで表される構造を有する。本実施形態に係る発光素子1は、画素分離用絶縁膜12の形状以外は、
図1で示した構造と同様の構造を有する。
【0094】
断面221を有する画素分離用絶縁膜12は以下の構造を有する。下段絶縁層121は、開口が2段の階段状である。そして、下段絶縁層121は、カソード電極14側の段がアノード電極11側の断よりも開口の中心に対して凹むように形成される。さらに、下段絶縁層121におけるアノード電極11側の段の開口における内壁は、アノード電極11に向けて開口が小さくなるテーパー状である。
【0095】
断面222を有する画素分離用絶縁膜12は、下段絶縁層121と上段絶縁層123との開口の端部が一致するように配置されている。
【0096】
断面223を有する画素分離用絶縁膜12は、上段絶縁層123の開口の端部が、下段絶縁層121の端部よりも開口の中央に近い位置に配置されている。
【0097】
断面224を有する画素分離用絶縁膜12は、上段絶縁層123及び下段絶縁層121の開口における内壁が、アノード電極11に向けて開口が大きくなるテーパー状である。さらに、上段絶縁層123の開口の端部が、下段絶縁層121の端部よりも開口の中央に近い位置に配置されている。
【0098】
断面221~224のいずれかを有する画素分離用絶縁膜12を備えた本実施形態に係る発光素子1はいずれも画素分離用絶縁膜12の内壁の中間位置に庇123Bを有する。これにより、本実施例に係る発光素子1は、アノード電極11毎(画素毎)に切断されたCGL132を有するようになる。
【0099】
だだし、
図10で示したような構造は、有機膜付きが悪く、画素開口平坦部に対して薄い有機構造が発生し、その部分のOLED電圧が低くなり低電圧領域での有機デバイス縦方向の電流リークが発生するおそれがある。したがって、画素分離用絶縁膜12の段差部分に成膜される有機膜付きの悪化が許容される場合であれば、本実施例に係る発光素子1を用いて、電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0100】
(第4の実施形態)
第3の実施形態における断面221のように庇123B以外の形状を変形させることで、庇構造を設けたことによる有機蒸着でのシャドーイング現象による有機層13の切断状態を制御することができる。本実施形態に係る発光素子1は、断面221と同様に庇123B以外の部分の形状を変形させた画素分離用絶縁膜12を有する。本実施形態に係る発光素子1は、画素分離用絶縁膜12の形状以外は、
図1で示した構造と同様の構造を有する。
【0101】
図11は、第4の実施形態に係る画素分離用絶縁膜の断面を表す図である。本実施例に係る発光素子1は、断面231又は232のいずれかを有する画素分離用絶縁膜12を備える。
【0102】
断面231を有する画素分離用絶縁膜12は、
図8で示した断面211の下段絶縁層121の形状を
図10で示した断面211の下段絶縁層121と同様に変形させたものである。下段絶縁層121の形状を変形させることで、庇123Bより下の有機素子の堆積状態を変化させることができ、庇123Bの高さと有機層13の切断部分の関係性を変化させることができる。
【0103】
断面231を有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1では、庇121Bを設けたことによる有機蒸着でのシャドーイング現象により正孔注入層が切断される。さらに、下段絶縁層121の形状を変化させて有機層13の切断状態を制御することで、庇123Bを設けたことによる有機蒸着でのシャドーイング現象により、蒸着時に確実に第1OLED層131及びCGL132が切断される。すなわち、断面231を有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1は、確実にアノード電極11毎(画素毎)に切断された第1OLED層131及びCGL132を有する。
【0104】
断面232を有する画素分離用絶縁膜12は、
図9で示した断面212の上段絶縁層123及び第2上段絶縁層126の形状を
図10で示した断面211の上段絶縁層123と同様に変形させたものである。下段絶縁層121の形状を変形させることで、庇123Bより下の有機素子の堆積状態を変化させることができ、また、上段絶縁層123の形状を変形させることで、庇126Bより下の有機素子の堆積状態を変化させることができ、庇123B及び126Bの高さと有機層13の切断部分の関係性を変化させることができる。ここでは、有機層13が、1段目層、2段目層、3段目層と言う3段の発光層を有し、且つ、各層の間に第1CGL及び第2CGLが積層される場合で説明する。
【0105】
断面232を有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1では、庇123B及び126Bを設けたことによる有機蒸着でのシャドーイング現象により、1段目層、第1CGL、2段目層及び第2CGLが切断される。さらに、上段絶縁層123及び第2上段絶縁層126の形状を変化させて有機層13の切断状態を制御することで、蒸着時に確実に1段目層、第1CGL、2段目層及び第2CGLが切断される。すなわち、断面232を有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1は、3段の発光層を有する有機層13に対して、確実にアノード電極11毎(画素毎)に切断された1段目層、第1CGL、2段目層及び第2CGLを有する。
【0106】
ここでは、断面231又は232を有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1について説明したが、上述したように、
図10で示した断面211有する画素分離用絶縁膜12を備えた発光素子1でも、下段絶縁層121の形状を変化させて有機層13の切断状態を制御できる。
【0107】
以上に説明したように、本実施形態に係る発光素子1は、庇123B以外の形状を変形させることで、庇構造を設けたことによる有機蒸着でのシャドーイング現象による有機層13の切断状態を制御する。これにより、目的とする有機層13に含まれる層を確実に切断することができ、より確実に電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0108】
(第5の実施形態)
以上の各実施形態では、隣接するアノード電極11の間(画素間)において連続する1つの下段絶縁層121、中間絶縁層122及び上段絶縁層123を有する場合を想定して説明した。これに対して、本実施形態では、隣接するアノード電極11の間(画素間)に複数の中間絶縁層122及び上段絶縁層123を設ける。本実施形態に係る発光素子1は、
図1で示した構造と同様の構造を有する。
図12は、第5の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【0109】
下段絶縁層121は、隣接するアノード電極11の間に亘って連続して1つ配置される。すなわち、1つのアノード電極11の端部近傍の表面を覆う下段絶縁層121が延びて隣のアノード電極11の端部近傍までを覆う。
【0110】
中間絶縁層122は、
図12に示すように、隣接するアノード電極11の間に2つ配置される。
【0111】
また、上段絶縁層123は、各中間絶縁層122のカソード電極14側の面にそれぞれ個別に配置される。すなわち、上段絶縁層123も、隣接するアノード電極11の間に2つ配置される。
【0112】
この場合、第1OLED層131は、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象によりアノード電極11と隣接する上段絶縁層123との間で切断される。また、第1OLED層131は、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、隣接するアノード電極11の間に置かれた2つの上段絶縁層123と下段絶縁層121との間で切断される。
【0113】
また、CGL132も、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11と隣接する上段絶縁層123との間で切断される。また、CGL132も、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、隣接するアノード電極11の間に置かれた2つの上段絶縁層123と下段絶縁層121との間で切断される。
【0114】
第2OLED層133は、各画素間で切断されずに連続する層として形成される。
【0115】
以上に説明したように、本実施形態に係る発光素子1は、隣接するアノード電極11の間(画素間)に複数の中間絶縁層122及び上段絶縁層123が配置される。このように、隣接するアノード電極11の間で中間絶縁層122及び上段絶縁層123が途切れても、アノード電極11側に庇構造が存在すれば、発光素子1は、アノード電極11毎(画素間毎)に切断されたCGL132を有することができる。したがって、本実施形態に係る発光素子1も、電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0116】
(第6の実施形態)
本実施形態に係る発光素子1は、下段絶縁層121を設けないことが実施例1と異なる。本実施形態に係る発光素子1は、下段絶縁層121以外は、
図1で示した構造と同様の構造を有する。
図13は、第6の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【0117】
本実施形態に係る発光素子1は、下段絶縁層121が配置されない。すなわち、1つのアノード電極11の端部の側面と隣のアノード電極11の端部の側面との間に平坦な絶縁層が配置され、アノード電極11の端部近傍の表面は覆われない。
【0118】
中間絶縁層122は、
図12に示すように、隣接するアノード電極11の間を覆う平坦な絶縁層の上に配置される。また、上段絶縁層123は、各中間絶縁層122のカソード電極14側の面に配置される。
【0119】
この場合、第1OLED層131は、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、上段絶縁層123によるアノード電極11と隣接する上段絶縁層123との間で切断される。また、CGL132も、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、アノード電極11と隣接する上段絶縁層123との間で切断される。
【0120】
第2OLED層133は、各画素間で切断されずに連続する層として形成される。
【0121】
以上に説明したように、本実施形態に係る発光素子1は、下段絶縁層121を有さず、中間絶縁層122及び上段絶縁層123が、アノード電極11の間に配置される。このように、下段絶縁層121を設けなくても、アノード電極11側に庇構造が存在すれば、発光素子1は、アノード電極11毎(画素間毎)に切断されたCGL132を有することができる。したがって、本実施形態に係る発光素子1も、電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0122】
(第7の実施形態)
本実施形態に係る発光素子1は、アノード電極11を挟んで中間絶縁層122及び上段絶縁層123が配置される。本実施形態に係る発光素子1は、有機層13の構造は
図1で示した構造と同様の配置を有する。
図14は、第7の実施形態に係る発光素子の断面図である。
【0123】
本実施形態に係る発光素子1は、
図14に示すように、アノード電極11の側面に密着させて、中間絶縁層122及び上段絶縁層123が配置される。中間絶縁層122及び上段絶縁層123は、隣接するアノード電極11の間に開口を有する。
【0124】
中間絶縁層122の開口側の端部は、上段絶縁層123の開口における内壁のアノード電極11側の端部よりも開口の中央から遠い位置にある。これにより、アノード電極11から外側、言い換えれば隣接するアノード電極11に向けて庇123Bが形成される。
【0125】
この場合、第1OLED層131は、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、上段絶縁層123とアノード電極11の間を覆う絶縁層との間で切断される。また、CGL132も、庇123Bによる有機蒸着プロセスでのシャドーイング現象により、上段絶縁層123とアノード電極11の間を覆う絶縁層との間で切断される。
【0126】
第2OLED層133は、各画素間で切断されずに連続する層として形成される。
【0127】
以上に説明したように、本実施形態に係る発光素子1は、アノード電極11を挟むように中間絶縁層122及び上段絶縁層123が配置され、庇123Bがアノード電極11の外側に向けて形成される。このように、アノード電極11を挟むように中間絶縁層122及び上段絶縁層123を配置した場合であっても、発光素子1は、アノード電極11毎(画素間毎)に切断されたCGL132を有することができる。したがって、本実施形態に係る発光素子1も、電流リークを抑えて、印加画素以外の画素における励起発光を抑制することができ、発光特性を改善することができる。
【0128】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、異なる実施形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0129】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0130】
なお、本技術は以下のような構成を取ることもできる。
(1)
画素毎に設けられた複数の第1電極と、
前記複数の第1電極のそれぞれを外部に露出する開口を有し、前記開口における内壁の厚み方向の中間位置に庇を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記庇により切断された電荷生成層を含む前記開口を覆う有機層と、
前記有機層の前記第1電極とは逆側の面に配置された第2電極と
を備えた発光素子。
(2)
前記庇は、テーパー状である(1)に記載の発光素子。
(3)
前記庇は、最大の厚みが前記内壁の厚みに比べて薄い又はテーパー角が所定角度以下である(2)に記載の発光素子。
(4)
前記絶縁層は、複数の前記庇を有し、
前記電荷生成層は、前記庇に対応して同数存在し、対応する各前記庇によりそれぞれが切断される(1)~(3)のいずれか一つに記載の発光素子。
(5)
前記絶縁層は、前記内壁の傾斜により切断される前記電荷生成層を含む(4)に記載の発光素子。
(6)
前記庇の前記開口側の端部は、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記絶縁層の開口側の端部に対して、前記開口の中央から離れる方向に所定距離離れる(1)~(5)のいずれか一つに記載の発光素子。
(7)
前記庇の前記開口側の端部が、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記絶縁層の開口側の端部と、前記開口の中央からの距離が一致する(1)~(5)のいずれか一つに記載の発光素子。
(8)
前記庇の前記開口側の端部が、前記庇よりも前記第1電極側に位置する前記絶縁層の開口側の端部よりも前記開口の中央に近くに存在する(1)~(5)のいずれか一つに記載の発光素子。
(9)
前記絶縁層は、前記庇よりも前記第1電極側に位置する領域が階段状である(1)~(8)のいずれか一つに記載の発光素子。
(10)
前記絶縁層は、厚み方向の前記第1電極側の端部に下端層切断用庇を有する(1)~(9)のいずれか一つに記載の発光素子。
(11)
前記発光素子は、複数並び、
前記庇は、前記発光素子間に複数配置される(1)~(10)のいずれか一つに記載の発光素子。
(12)
前記第1電極は、前記開口における前記絶縁層の前記庇よりも前記第1電極側に位置する領域に開口方向とは逆側の面が沈み込む(1)~(10)のいずれか一つに記載の発光素子。
(13)
前記第1電極は、前記庇が前記第1電極から離れる方向に向くように、前記庇の間に挟まれる(1)~(10)のいずれか一つに記載の発光素子。
(14)
基板と、
前記基板上に画素毎に設けられた複数の第1電極と、
前記複数の第1電極のそれぞれを外部に露出する開口を有し、前記開口における内壁の厚み方向の中間位置に庇を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記庇により切断された電荷生成層を含む前記開口を覆う有機層と、
前記有機層の前記第1電極とは逆側の面に配置された第2電極と、
前記第2電極の前記有機層とは反対側の面に配置されたカラーフィルタ層と
を備えた表示装置。
【符号の説明】
【0131】
1 発光素子
11 アノード電極
12 画素分離用絶縁膜
13 有機層
14 カソード電極
121 下段絶縁層
121A 内壁
121B 庇
122 中間絶縁層
122A 内壁
123 上段絶縁層
123A 内壁
123B 庇
131 第1OLED層
132 CGL
133 第2OLED層
P 有機層カット部
S 空隙