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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/00 20250101AFI20250128BHJP
   H10F 10/14 20250101ALI20250128BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/04 400
H01L31/06 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022503216
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004154
(87)【国際公開番号】W WO2021171953
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020030874
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発、結晶Si太陽電池をベースとした複合型太陽電池モジュールの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】岡本 紳平
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】中野 邦裕
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030615(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056378(WO,A1)
【文献】特開2014-127552(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078669(WO,A1)
【文献】特開2017-135421(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158977(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0125964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の裏面側に交互に積層される帯状の第1半導体層および第2半導体層と、
前記第1半導体層および第2半導体層の裏面側の幅方向中央部に積層されるベース電極と、
前記ベース電極の裏面側に積層され、部分的に前記ベース電極を露出する内側開口を有する補助絶縁層と、
前記補助絶縁層の裏面側並びに前記第1半導体層および第2半導体層の前記ベース電極が積層されていない領域の裏面側に連続して積層され、前記内側開口と連通する裏側開口を有する主絶縁層と、
前記主絶縁層の裏面側並びに前記内側開口および前記裏側開口から露出する前記ベース電極の裏面側に連続して積層される集電体と、
を備える、太陽電池。
【請求項2】
前記主絶縁層は、前記補助絶縁層よりも高いアルカリ耐性を有する、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1半導体層および前記第2半導体層と前記ベース電極との間にそれぞれ介在する透明電極をさらに備える、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記透明電極の幅は、前記ベース電極の幅よりも小さい、請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記裏側開口の幅は、前記内側開口の幅よりも小さい、請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記主絶縁層の幅は、前記ベース電極の幅よりも大きい、請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
半導体基板の裏面に帯状の第1半導体層および第2半導体層を交互に形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側にベース電極形成材料を積層する工程と、
前記ベース電極形成材料の裏面側に、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の境界領域を露出させるよう第1レジストを積層する工程と、
前記第1レジストをマスクとするエッチングにより、前記ベース電極形成材料の前記第1レジストから露出する領域を除去する工程と、
前記第1レジストの裏面側並びに前記第1レジストから露出する前記第1半導体層および前記第2半導体層の裏面側に連続して、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の幅方向中央部を部分的に露出させるよう第2レジストを積層する工程と、
前記第2レジストをマスクとするエッチングにより、前記第1レジストの前記第2レジストから露出する領域を除去する工程と、
前記第1レジストを除去した領域に露出する前記ベース電極形成材料の裏面側および前記第2レジストの裏面側に連続して導電性ペーストを積層する工程と、
を備える、太陽電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池および太陽電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の裏面に交互に形成され、それぞれ第1方向に延びる複数の帯状の第1半導体層および第2半導体層と、第1半導体層および第2半導体層にそれぞれ積層される複数の帯状の第1ベース電極および第2ベース電極と、複数の第1ベース電極を接続するよう第1方向と交差する第2方向に延びる第1集電体および複数の第2ベース電極を接続するよう第2方向に延びる第2集電体と、を備えるバックコンタクト型の太陽電池が知られている。
【0003】
このような太陽電池において、第1ベース電極と第2集電体との短絡、および第2ベース電極と第1集電体との短絡を防止するために、第1ベース電極の第2集電体と交差する領域および第2ベース電極の第1集電体と交差する領域に絶縁材料を積層する構成も知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-3724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなバックコンタクト型の太陽電池において、集電効率を向上するために第1半導体層および第2半導体層の配設ピッチを小さくすると、第1ベース電極を被覆する絶縁材料が第2ベース電極に、第2ベース電極を被覆する絶縁材料が第1ベース電極に、それぞれ接触し得る。この場合、絶縁材料を硬化させるまでの間に、第1ベース電極および第2ベース電極の接続面上に絶縁材料から樹脂成分が染み出すおそれがある。このようにして第1ベース電極および第2ベース電極の接続面上に樹脂成分が存在すると、第1ベース電極と第1集電体との電気的接続および第2ベース電極と第2集電体との電気的接続が不確実となる。このような実情に鑑みて、本発明は、ベース電極と集電体との電気的接続が確実な太陽電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の裏面側に交互に積層される帯状の第1半導体層および第2半導体層と、前記第1半導体層および第2半導体層の裏面側の幅方向中央部に積層されるベース電極と、前記ベース電極の裏面側に積層され、部分的に前記ベース電極を露出する内側開口を有する補助絶縁層と、前記補助絶縁層の裏面側並びに前記第1半導体層および第2半導体層の前記ベース電極が積層されていない領域の裏面側に連続して積層され、前記内側開口と連通する裏側開口を有する主絶縁層と、前記主絶縁層の裏面側並びに前記内側開口および前記裏側開口から露出する前記ベース電極の裏面側に連続して積層される集電体と、を備える。
【0007】
上述の太陽電池において、前記主絶縁層は、前記補助絶縁層よりも高いアルカリ耐性を有してもよい。
【0008】
上述の太陽電池は、前記第1半導体層および前記第2半導体層と前記ベース電極との間にそれぞれ介在する透明電極をさらに備えてもよい。
【0009】
上述の太陽電池において、前記透明電極の幅は、前記ベース電極の幅よりも小さくてもよい。
【0010】
上述の太陽電池において、前記裏側開口の幅は、前記内側開口の幅よりも小さくてもよい。
【0011】
上述の太陽電池において、前記主絶縁層の幅は、前記ベース電極の幅よりも大きくてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る太陽電池製造方法は、半導体基板の裏面に帯状の第1半導体層および第2半導体層を交互に形成する工程と、前記半導体基板の裏面側にベース電極形成材料を積層する工程と、前記ベース電極形成材料の裏面側に、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の境界領域を露出させるよう第1レジストを積層する工程と、前記第1レジストをマスクとするエッチングにより、前記ベース電極形成材料の前記第1レジストから露出する領域を除去する工程と、前記第1レジストの裏面側並びに前記第1レジストから露出する前記第1半導体層および前記第2半導体層の裏面側に連続して、平面視で前記第1半導体層および前記第2半導体層の幅方向中央部を部分的に露出させるよう第2レジストを積層する工程と、前記第2レジストをマスクとするエッチングにより、前記第1レジストの前記第2レジストから露出する領域を除去する工程と、前記第1レジストを除去した領域に露出する前記ベース電極形成材料の裏面側および前記第2レジストの裏面側に連続して導電性ペーストを積層する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベース電極と集電体との電気的接続が確実な太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池を示す裏面図である。
図2図1の太陽電池のA-A線断面図である。
図3図1の太陽電池の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4A図3の太陽電池製造方法の第1の工程を示す断面図である。
図4B図3の太陽電池製造方法の第2の工程を示す断面図である。
図4C図3の太陽電池製造方法の第3の工程を示す断面図である。
図4D図3の太陽電池製造方法の第4の工程を示す断面図である。
図4E図3の太陽電池製造方法の第5の工程を示す断面図である。
図4F図3の太陽電池製造方法の第6の工程を示す断面図である。
図4G図3の太陽電池製造方法の第7の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池1の裏面図である。図2は、太陽電池1のA-A線断面図である。
【0017】
太陽電池1は、いわゆるヘテロ接合バックコンタクト型の太陽電池セルである。太陽電池1は、半導体基板10と、半導体基板10の裏面側(光の入射面と反対側)に、それぞれ第1方向に延びる帯状に形成され、第1方向と交差する第2方向に交互に設けられる複数の第1半導体層21および複数の第2半導体層22と、第1半導体層21および第2半導体層22の裏面側の幅方向(第2方向)中央部にそれぞれ第1方向に延びる帯状に積層される複数の第1透明電極31および複数の第2透明電極32と、第1透明電極31および第2透明電極32の裏面側に略全面にそれぞれ積層される複数の第1ベース電極41および複数の第2ベース電極42と、第1ベース電極41および第2ベース電極42の裏面側にそれぞれ積層され、部分的に第1ベース電極41および第2ベース電極42を露出する第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52と、第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の裏面側並びに第1半導体層21の第1ベース電極41が積層されていない領域および第2半導体層22の第2ベース電極42が積層されていない領域の裏面側に連続して積層される主絶縁層60と、主絶縁層60の裏面側および第1ベース電極41の露出している領域の裏面側に連続して積層される第1集電体71、並びに主絶縁層60の裏面側および第2ベース電極42の露出している領域の裏面側に連続して積層される第2集電体72と、を備える。
【0018】
半導体基板10は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板10は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板10は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板10の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0019】
第1半導体層21および第2半導体層22は、互いに異なる導電型を有する。例として、第1半導体層21はp型半導体から形成され、第2半導体層22はn型半導体から形成される。第1半導体層21および第2半導体層22は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0020】
第1半導体層21および第2半導体層22は、それぞれ第1方向に延びる帯状に形成される。太陽電池1では、複数の第1半導体層21および複数の第2半導体層22が第1方向と交差する第2方向に交互に設けられる。第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板10の略全面を覆うように配設されることが好ましい。第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板10内に発生したキャリアを誘引して電荷を収集する。
【0021】
第1透明電極31は、第1半導体層21と第1ベース電極41との間に介在し、第1ベース電極41と実質的に同一の平面形状を有する。また、第2透明電極32は、第2半導体層と第2ベース電極42との間に介在し、第2ベース電極42と実質的に同一の平面形状を有する。厳密には、第1透明電極31および第2透明電極32の幅は、積層されている第1ベース電極41または第2ベース電極42の幅よりも小さくてもよい。これにより、主絶縁層60が第1半導体層21と第1ベース電極41との隙間および第2半導体層22と第2ベース電極42との隙間に入り込むため、主絶縁層60が剥離しにくくなる。
【0022】
第1透明電極31および第2透明電極32は、第1半導体層21および第2半導体層22から集電し、第1ベース電極41および第2ベース電極42に電荷を供給する薄層である。また、第1透明電極31および第2透明電極32は、第1半導体層21および第2半導体層22と、第1ベース電極41および第2ベース電極42との材質の違い等によって生じる密着性の低下や界面における電気抵抗の増大を防止する中間層として機能する。
【0023】
第1透明電極31および第2透明電極32は、互いに接触しないよう、第2方向に第1半導体層21および第2半導体層22よりも小さい幅で、第1方向に第1半導体層21および第2半導体層22の略全長に亘って積層されている。
【0024】
第1透明電極31と第2透明電極32とは、同じ材料から形成することができる。第1透明電極31および第2透明電極32を形成する材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)等を挙げることができる。
【0025】
第1ベース電極41は、それぞれの第1透明電極31に第1方向に延びるよう積層され、第2ベース電極42は、それぞれの第2透明電極32に第1方向に延びるよう積層される。第1ベース電極41および第2ベース電極42は、第1透明電極31および第2透明電極32を介して第1半導体層21および第2半導体層22から電荷を取り出す。
【0026】
第1ベース電極41および第2ベース電極42は、例えば銅、ニッケル等の金属から形成することができる。
【0027】
第1補助絶縁層51は、部分的に第1ベース電極41を露出する第1内側開口53を有する。また、第2補助絶縁層52は、部分的に第2ベース電極42を露出する第2内側開口54を有する。第1補助絶縁層51の第2方向両側の側縁は、平面視で第1透明電極31および第1ベース電極41の側縁と略重なる。同様に、第2補助絶縁層52の第2方向両側の側縁は、平面視で第2透明電極32および第2ベース電極42の側縁と略重なる。
【0028】
第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の幅は、積層されている第1ベース電極41又は第2ベース電極42の幅よりも大きくてもよい。これにより、主絶縁層60が第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の両側部の表側に入り込むため、主絶縁層60が剥離しにくくなる。また、第1内側開口53および第2内側開口54は、図示するように閉じた開口であってもよいが、第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の側方に開口していてもよい。
【0029】
第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52は、第1透明電極31、第2透明電極32、第1ベース電極41および第2ベース電極42を浸食し、第1半導体層21および第2半導体層22を浸食しない薬液によって浸食されない樹脂組成物から形成することができ、印刷によって選択的に積層可能な材料から形成されることが好ましい。
【0030】
主絶縁層60は、第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52を被覆し、第1内側開口53とそれぞれ連通する複数の第1裏側開口61と、第2内側開口54とそれぞれ連通する複数の第2裏側開口62と、を有する。つまり、主絶縁層60は、第1ベース電極41の第1内側開口53から露出する領域および第2ベース電極42の第2内側開口54から露出する領域を実質的に被覆しない。主絶縁層60は、第1集電体71の第2半導体層22、第2透明電極32または第2ベース電極42との接触、並びに第2集電体72の第1半導体層21、第1透明電極31または第1ベース電極41との接触を防止する。
【0031】
第1裏側開口61および第2裏側開口62の幅(第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の幅と同じ方向の大きさ)は、連通している第1内側開口53又は第2内側開口54の幅よりも小さくてもよい。これにより、第1集電体71および第2集電体72の先端部の幅が、第1裏側開口61および第2裏側開口62の幅よりも大きくなるため、第1集電体71および第2集電体72が第1内側開口53および第2内側開口54から脱離すること、つまり第1集電体71および第2集電体72が剥離することを防止できる。
【0032】
主絶縁層60は、第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52を浸食し、第1ベース電極41および第2ベース電極42を浸食しない薬液によって浸食されない樹脂組成物から形成することができる。典型的には、主絶縁層60は、第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52よりも高いアルカリ耐性を有する。また、主絶縁層60は、印刷によって選択的に積層可能な材料から形成されることが好ましい。
【0033】
第1集電体71は、複数の第1ベース電極41の第1内側開口53および第1裏側開口61から露出する領域に接続される。このため、第1集電体71は、主絶縁層60の裏面側並びに第1内側開口53および第1裏側開口61から露出する第1ベース電極41の裏面側に連続して積層される。第2集電体72は、複数の第2ベース電極42の第2内側開口54および第2裏側開口62から露出する領域に接続される。このため、第2集電体72は、主絶縁層60の裏面側並びに第2内側開口54および第2裏側開口62から露出する第2ベース電極42の裏面側に連続して積層される。
【0034】
第1集電体71および第2集電体72は、複数の第1ベース電極41および複数の第2ベース電極42をそれぞれ接続する。また、第1集電体71および第2集電体72は、太陽電池1から電力を取り出すための端子としても使用できる。第1集電体71および第2集電体72は、例えば半田、導電性接着剤等によって形成することができる。
【0035】
図3に、太陽電池1の製造方法の手順を示す。図3の太陽電池製造方法は、本発明に係る太陽電池製造方法の一実施形態である。
【0036】
本実施形態の太陽電池製造方法は、半導体層形成工程(ステップS1)と、透明電極形成材料積層工程(ステップS2)と、ベース電極形成材料積層工程(ステップS3)と、第1レジスト積層工程(ステップS4)と、第1エッチング工程(ステップS5)と、第2レジスト積層工程(ステップS6)と、第2エッチング工程(ステップS7)と、導電性ペースト積層工程(ステップS8)と、を備える。
【0037】
ステップS1の半導体層形成工程では、図4Aに示すように、半導体基板10の裏面に帯状の第1半導体層21および第2半導体層22を交互に形成する。具体的には、第1半導体層21および第2半導体層22は、半導体基板10の裏面にマスクを形成し、例えばCVD等の成膜技術によって半導体材料を積層することによって順番に形成することができる。
【0038】
ステップS2の透明電極形成材料積層工程では、図4Bに示すように、半導体基板10の裏面側に、第1半導体層21および第2半導体層22を覆うよう、第1透明電極31および第2透明電極32を形成する透明電極形成材料30を積層する。透明電極形成材料30は、例えばCVD、スパッタリング等の成膜技術によって積層することができる。
【0039】
ステップS3のベース電極形成材料積層工程では、図4Cに示すように、半導体基板10の裏面側に透明電極形成材料30を覆うよう第1ベース電極41および第2ベース電極42を形成するベース電極形成材料40を積層する。ベース電極形成材料40は、例えばスパッタリング、メッキ等により積層することができる。
【0040】
ステップS4の第1レジスト積層工程では、図4Dに示すように、ベース電極形成材料40の裏面側に、平面視で第1半導体層21および第2半導体層22の境界領域を露出させるよう第1レジスト50を積層する。より詳しくは、第1レジスト50は、形成しようとする第1ベース電極41および第2ベース電極42と等しい平面形状を有するよう積層される。
【0041】
第1レジスト50は、例えばスクリーン印刷等の印刷技術を用いて選択的に積層することができる。第1レジスト積層工程では、第1レジスト50の材質に応じて加熱硬化(樹脂の重合)等の必要とされる処理が行われ得る。
【0042】
ステップS5の第1エッチング工程では、図4Eに示すように、第1レジスト50をマスクとする第1のエッチングにより、透明電極形成材料30およびベース電極形成材料40の第1レジスト50から露出する領域を除去する。第1エッチング工程で用いるエッチング液としては、例えば透明電極形成材料30がITOでベース電極形成材料40が銅の場合に、塩化第二鉄水溶液と塩酸との混合液、またはペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液と塩酸との混合液などを用いることができる。
【0043】
第1エッチング工程におけるエッチングの条件によっては、サイドエッチ効果により、第1透明電極31および第2透明電極32の幅が第1ベース電極41および第2ベース電極42の幅よりも小さくなったり、第1ベース電極41および第2ベース電極42が第1補助絶縁層51および第2補助絶縁層52の幅よりも小さくなったりすることがある。設計条件によっては、第1透明電極31および第2透明電極32の分離並びに第1ベース電極41および第2ベース電極42の分離を確実にするために、このようなサイドエッチ効果を積極的に生じさせてもよい。
【0044】
ステップS6の第2レジスト積層工程では、図4Fに示すように、第1レジスト50の裏面側並びに第1レジスト50から露出する第1半導体層21および第2半導体層22の裏面側に連続して、平面視で第1半導体層21および第2半導体層22の幅方向(第2方向)中央部を長手方向(第1方向)に部分的に露出させるよう、第2レジスト(太陽電池1で主絶縁層として使用される)60を積層する。
【0045】
第2レジスト60は、例えばスクリーン印刷等の印刷技術を用いて選択的に積層することができる。第2レジスト積層工程では、第2レジスト60の材質に応じて加熱硬化等の必要とされる処理が行われ得る。
【0046】
ステップS7の第2エッチング工程では、図4Gに示すように、第2レジスト60をマスクとする第2のエッチングにより、第1レジスト50の第2レジスト60から露出する領域を除去する。第2エッチング工程で用いるエッチング液としては、例えば第2レジスト60を溶解しない程度のpHを有するアルカリ性水溶液を用いることができる。
【0047】
本実施形態においては、第2レジスト60が、第1半導体層21および第2半導体層22の境界領域近傍の第1半導体層21および第2半導体層22を被覆しているので、第1レジスト50を除去するためのエッチング液が第1半導体層21および第2半導体層22に接触することを防止できる。これによって、第2エッチング工程において、第1半導体層21および第2半導体層22の溶解などによる太陽電池1の性能の低下を防止できる。
【0048】
第2エッチング工程におけるエッチングの条件によっては、サイドエッチ効果により、第1内側開口53および第2内側開口54の幅が第1裏側開口61および第2裏側開口62の幅よりも大きくなるこがある。設計条件によっては、第1ベース電極41と第1集電体71との接続性および第2ベース電極42と第2集電体72との接続性を向上するために、このようなサイドエッチ効果を積極的に生じさせてもよく、第1内側開口53および第2内側開口54の幅方向両側に第1レジスト50が残らないようにしてもよい。
【0049】
ステップS8の導電性ペースト積層工程では、第1レジスト50を除去した領域に露出する第1ベース電極41の裏面側および第2レジスト60の裏面側に連続して導電性ペーストを積層することにより、第1集電体71を形成するととともに、第1集電体71とは間隔を空けて、第1レジスト50を除去した領域に露出する第2ベース電極42の裏面側および第2レジスト60の裏面側に連続して導電性ペーストを積層することにより、第2集電体72を形成する。これによって、図2に示す太陽電池1が得られる。
【0050】
第1集電体71および第2集電体72を形成する導電性ペーストとしては、第1ベース電極41および第2ベース電極42との接続性および導電性に優れる第1集電体71および第2集電体72を形成することができる点で、半田粒子およびフラックスを含む半田ペーストが特に好適に用いられる。導電性ペーストの積層は、例えばスクリーン印刷等の印刷技術を用いて行うことができる。導電性ペースト積層工程では導電性ペーストを硬化して第1集電体71および第2集電体72を形成するために必要な処理、例えば半田ペーストの半田粒子のリフロー等を行ってもよい。
【0051】
ベース電極に集電体を接続する直前に意図しないベース電極との短絡を防止するためにソルダレジスト(絶縁層)の焼成を行う従来の製造方法では、ソルダレジストの樹脂成分が染み出してベース電極の表面に付着するおそれがあるが、本実施形態の太陽電池製造方法では、第2エッチング工程において、第1ベース電極41の第1集電体71が積層される領域および第2内側開口54および第2裏側開口62から露出する領域の樹脂成分を除去することができる。このため、導電性ペースト積層工程において形成される第1集電体71と第1ベース電極41との電気的接続、および第2集電体72と第2ベース電極42との電気的接続が確実であるため、本実施形態の太陽電池製造方法によって製造される太陽電池1は、電気抵抗が小さく、信頼性が高い。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、本発明に係る太陽電池は、透明電極を有しないものであってもよい。また、本発明に係る太陽電池は、上述した構成要素以外に、真性半導体層、パッシベーション層、反射防止膜、保護フィルム等のさらなる構成要素を備えてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 太陽電池
10 半導体基板
21 第1半導体層
22 第2半導体層
30 透明電極形成材料
31 第1透明電極
32 第2透明電極
40 ベース電極形成材料
41 第1ベース電極
42 第2ベース電極
50 第1レジスト
51 第1補助絶縁層
52 第2補助絶縁層
53 第1内側開口
54 第2内側開口
60 主絶縁層(第2レジスト)
61 第1裏側開口
62 第2裏側開口
71 第1集電体
72 第2集電体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G