(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】純水用水の製造方法及び製造装置、純水製造方法及び純水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 9/00 20230101AFI20250128BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20250128BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20250128BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20250128BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20250128BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20250128BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20250128BHJP
C02F 1/70 20230101ALI20250128BHJP
【FI】
C02F9/00
B01D21/01 102
C02F1/42 A
C02F1/42 B
B01D61/58
C02F1/44 H
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C02F1/32
C02F1/52 Z
C02F1/70 Z
(21)【出願番号】P 2023131126
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】秋元 良裕
(72)【発明者】
【氏名】平原 裕也
(72)【発明者】
【氏名】飯山 真充
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175657(WO,A1)
【文献】特開平08-117747(JP,A)
【文献】特開2005-224761(JP,A)
【文献】特開平11-239789(JP,A)
【文献】特開平09-094585(JP,A)
【文献】特開2009-262122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00 - 21/34
B01D 61/58
C02F 1/00 - 1/78
C02F 9/00 - 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水用水の製造方法であって、
遊離塩素を含有する原水に、ポリ塩化アルミニウムを添加することで第1処理水を得る工程と、
第1処理水に、二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加して第2処理水を得る工程と、
第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜工程と、を有する製造方法。
【請求項2】
前記原水に、
塩基度が75%より大きいポリ塩化アルミニウムを添加することでマイクロフロックを含む第1処理水を得る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原水の濁度が、1NTU以上100NTU以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリ塩化アルミニウムが、塩化アルミニウム5水酸化物を含み、
前記塩化アルミニウム5水酸化物の添加量が、酸化アルミニウム(Al
2O
3)換算の濃度で、原水に対して0.25mg/L以上5mg/L以下となる量である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1処理水を、
砂ろ過、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過、精密ろ過(MF)装置及び限外ろ過から選ばれる1種以上によりろ過処理するろ過工程を有し、
前記ろ過工程で得た処理水に前記還元剤を添加する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記原水中の遊離塩素濃度が、0.1mg/L以上2mg/L以下 as Cl
2であり、前記還元剤の添加量が、二亜硫酸ナトリウムの量で、0.1mg/L以上5.0mg/L以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記逆浸透膜
工程の透過水の濁度が0.01以上0.4以下であり、アルミニウム濃度が、0.01mg/L以上0.04mg/L以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項8】
純水の製造方法であって、
遊離塩素を含有する原水に、ポリ塩化アルミニウムを添加することで第1処理水を得る工程と、
第1処理水に、二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加して第2処理水を得る工程と、
第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜工程と、を有する純水用水製造工程と、
紫外線酸化工程と、イオン交換工程と、をこの順に有する、
製造方法。
【請求項9】
純水用水の製造装置であって、
遊離塩素を含有する原水を供給する原水供給装置と、
ポリ塩化アルミニウムを原水に添加するポリ塩化アルミニウム供給装置と、
原水にポリ塩化アルミニウムが添加されて生成した第1処理水に二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加する還元剤供給装置と、
前記還元剤が添加されて生成した第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜装置と、
を有する製造装置。
【請求項10】
前記原水の濁度が、1NTU以上100NTU以下である、請求項
9に記載の製造装置。
【請求項11】
前
記ポリ塩化アルミニウムの塩基度が、75%より大きい、請求項
9又は1
0に記載の製造装置。
【請求項12】
前記ポリ塩化アルミニウムが、塩化アルミニウム5水酸化物を含み、
前記ポリ塩化アルミニウム供給装置は、原水に対して、酸化アルミニウム(Al
2O
3)換算の濃度で、0.25mg/L以上5mg/L以下となる量の塩化アルミニウム5水酸化物を供給する、請求項
9又は1
0に記載の製造装置。
【請求項13】
前記ポリ塩化アルミニウム供給装置と前記還元剤供給装置の間に、
砂ろ過装置、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置、精密ろ過(MF)装置及び限外ろ過装置から選ばれる1種以上を有する、
請求項
9又は1
0に記載の製造装置。
【請求項14】
請求項1
3に記載の純水用水の製造装置と、
紫外線酸化装置と、イオン交換装置と、をこの順に備える、純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水用水の製造方法及び製造装置、純水製造方法及び純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川水、井水、湖沼水等からの工業用水の製造、廃水処理等の水処理において、懸濁物質、溶存有機物、コロイダルシリカ等の懸濁物質を除去するために、凝集処理が行われている。この凝集処理においては、凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム(PAC)が使用されている。PACは、安価なこと、凝集のpH範囲が広いこと等の理由から、普及している。
【0003】
工業用水の製造、廃水処理におけるPACの使用方法としては、塩基度が比較的低い(75%以下の)PACを廃水に混和して懸濁物質の粗大凝集体を形成させて、この粗大凝集体をデッドエンドろ過により除去する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、この方法には、緩速ろ過装置が必須であるため、緩速ろ過装置の設置のための広大な敷地面積が必要となる。例えば、この方法で仮に100m3/hの原水を処理する場合、半径12mの円形の緩速ろ過装置の設置が必要となる。また、処理水をさらに処理する設備は想定されておらず、浄水場等のごく限られた設備以外では適用しにくい。したがって、純水や超純水の製造に適用することは困難である。
【0004】
そこで、PACを用いたマイクロフロック法も用いられている。これは、上水道水や工業用水道水等に直接PACを注入する、または、注入後急速攪拌をして、マイクロフロックを形成させ、これを、沈殿処理することなく、ろ過して除去する方法である(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
半導体や液晶等の製造工程で使用される純水や超純水の製造では、上水道水や工業用水道水等を原水として、前処理をした原水を逆浸透膜装置(RO)、限外ろ過装置(UF)等の膜処理装置に通水し、その後、イオン交換樹脂装置、紫外線照射装置等を組み合わせた処理が行われている。
【0006】
ここで、上記前処理では原水中に存在する生菌が増殖しスライムが発生する等のトラブルを防ぐため、次亜塩素酸などの塩素系殺菌剤を添加した上で処理することが一般的に行われる。しかし、この殺菌剤等に由来する遊離塩素(残留塩素ともいう)を含む原水を逆浸透膜処理すると、逆浸透膜の急速な劣化につながるため、逆浸透膜装置に供給する前に、還元剤で遊離塩素を分解することが行われている。そして、後段の生菌によるトラブルを防ぐため、還元剤添加の後には、遊離塩素系以外の酸化性殺菌剤を添加することが行われている。しかし、この方法においては、遊離塩素を完全に分解するために還元剤を過剰に添加するので、余剰の還元剤が生じ、これによって酸化性殺菌剤が分解消失する。酸化性殺菌剤の分解消失は、生菌によるバイオフィルムを招きやすいために、還元剤の余剰分だけ、酸化性殺菌剤を過剰に添加することも行われている。しかしながら、これらの方法では、還元剤や酸化剤の添加量の制御が煩雑であることや、還元剤や酸化剤の添加量が多くなるという課題がある。この課題に対しては、原水中の残留塩素濃度を測定する手段を設け、所定濃度の塩素が残留するように、薬注手段によって還元剤の薬注を制御する装置が知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
また、塩素系殺菌剤の代わりに、塩素系殺菌剤とスルファミン酸化合物の混合物を原水中の生菌の殺菌に用いることも試みられている。しかしながら、生菌の量が多い原水においては、塩素系殺菌剤とスルファミン酸化合物の添加量が多くなってしまい、結果的に、塩素系殺菌剤とスルファミン酸化合物の混合物中に微量含まれる遊離塩素が、原水中に残留するという課題もある(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-086149号公報
【文献】特開2022-165279号公報
【文献】特開2021-137710号公報
【文献】特開2010-202524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、純水や超純水の製造において、残留塩素を含む原水を逆浸透膜処理する場合には、酸化剤や還元剤の添加量の制御が煩雑であるという課題や、薬剤使用量の増加の課題がある。薬剤使用量の増加はコスト増大や環境負荷の課題につながる。
また、還元剤の過剰添加量を定量することが困難であり、このため最適な薬剤使用量を設定すること自体も困難であった。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、逆浸透膜の供給水への薬剤添加を効率的に行うことのできる、純水用水の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、逆浸透膜の供給水への薬剤添加を効率的に行うことのできる、純水製造方法及び製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態の製造方法、製造装置及び純水製造システムは次のものである。
[1]純水用水の製造方法であって、遊離塩素を含有する原水に、ポリ塩化アルミニウムを添加することで第1処理水を得る工程と、第1処理水に、二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加して第2処理水を得る工程と、
第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜工程と、を有する製造方法。
[2]前記原水に、高塩基度のポリ塩化アルミニウムを添加することでマイクロフロックを含む第1処理水を得る、[1]に記載の製造方法。
[3]前記原水の濁度が、1NTU以上100NTU以下である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記ポリ塩化アルミニウムの塩基度が、75%より大きい、[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記ポリ塩化アルミニウムが、塩化アルミニウム5水酸化物を含み、
前記塩化アルミニウム5水酸化物の添加量が、酸化アルミニウム(Al2O3)換算の濃度で、原水に対して0.25mg/L以上5mg/L以下となる量である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0011】
[6]前記第1処理水を、
砂ろ過、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過、精密ろ過(MF)装置及び限外ろ過から選ばれる1種以上によりろ過処理するろ過工程を有し、
前記ろ過工程で得た処理水に前記還元剤を添加する、[1]乃至[5]に記載の製造方法。
[7]前記原水中の遊離塩素濃度が、0.1mg/L以上2mg/L以下 as Cl2であり、前記還元剤の添加量が、二亜硫酸ナトリウムの量で、0.1mg/L以上5mg/L以下である、[1]乃至[6]に記載の製造方法。
[8]前記逆浸透膜装置の透過水の濁度が0.01以上0.4以下であり、アルミニウム濃度が、0.01mg/L以上0.04mg/L以下である、[1]乃至[6]に記載の製造方法。
【0012】
[9]純水の製造方法であって、遊離塩素を含有する原水に、ポリ塩化アルミニウムを添加することで第1処理水を得る工程と、第1処理水に、二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加して第2処理水を得る工程と、第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜工程と、を有する純水用水製造工程と、紫外線酸化工程と、イオン交換工程と、をこの順に有する、製造方法。
【0013】
[10]純水用水の製造装置であって、
遊離塩素を含有する原水を供給する原水供給装置と、
ポリ塩化アルミニウムを原水に添加するポリ塩化アルミニウム供給装置と、
原水にポリ塩化アルミニウムが添加されて生成した第1処理水に二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加する還元剤供給装置と、
前記還元剤が添加されて生成した第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜装置と、
を、を有する製造装置。
[11]前記原水の濁度が、1NTU以上100NTU以下である、[10]に記載の製造装置。
[12]前記高塩基度のポリ塩化アルミニウムの塩基度が、75%より大きい、請求項[10]又は[11]に記載の製造装置。
[13]前記ポリ塩化アルミニウムが、塩化アルミニウム5水酸化物を含み、前記ポリ塩化アルミニウム供給装置は、原水に対して、酸化アルミニウム(Al2O3)換算の濃度で、0.25mg/L以上5mg/L以下となる量の塩化アルミニウム5水酸化物を供給する、[10]乃至[12]のいずれかに記載の製造装置。
[14]前記ポリ塩化アルミニウム供給装置と前記還元剤供給装置の間に、
砂ろ過装置、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置、精密ろ過(MF)装置及び限外ろ過装置から選ばれる1種以上を有する、[10]乃至[13]のいずれかに記載の製造装置。
[15][10]乃至[14]のいずれかに記載の純水用水の製造装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置と、をこの順に備える、純水製造システム。
なお、「~」の符号はその前後の数値を含む数値範囲を示す。また、添加量はすべて有効成分を基準として記載する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆浸透膜の供給水への薬剤添加を効率的に行うことのできる、純水用水の製造方法及び製造装置を提供するこができる。
また、本発明は、逆浸透膜の供給水への薬剤添加を効率的に行うことで、長期にわたって高水質の純水を製造することのできる、純水製造方法及び製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の純水用水の製造方法に用いる製造装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す製造装置にさらに、混合槽を有する製造装置を模式的に示す図である。
【
図3】他の実施形態の純水用水の製造方法に用いる製造装置を模式的に示す図である。
【
図4】
図3に示す製造装置にさらに、混合槽を有する製造装置を模式的に示す図である。
【
図5】実施形態の純水用水の製造装置を用いた純水製造システムを模式的に示す図である。
【
図6】実施例で用いた純水用水の製造装置を模式的に示す図である。
【
図7】二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムを使用した実験例における原水pHと残留還元剤量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の純水用水の製造方法に用いる製造装置1を模式的に示す。製造装置1は、原水を供給する原水供給装置11と、ポリ塩化アルミニウム(以下、「PAC」ともいう。)を供給するポリ塩化アルミニウム供給装置12と、原水を移送する原水移送管13と、PACの添加された原水(第1処理水)を逆浸透膜処理する、逆浸透膜装置14を備えている。製造装置1は、さらに、逆浸透膜装置14への供給水に還元剤を添加する還元剤供給装置17と、還元剤の添加された供給水に酸化性殺菌剤を添加する殺菌剤供給装置18とを有している。逆浸透膜装置14の透過側には透過水の移送管15が接続されている。逆浸透膜装置14の濃縮側には、濃縮水の排出管16が接続されている。なお、殺菌剤供給装置18は必須ではなく、必要に応じて備えられる。
【0017】
製造装置1を用いた実施形態の純水用水の製造方法は次の通りである。まず、原水供給装置11から原水が、原水移送管13内に供給される。原水は、市水、工業用水等の都市用水、もしくは、河川水、湖水、地下水、井水等の自然水である。原水は、遊離塩素を含んでいる。または、原水移送管13による移送の途中等で遊離塩素が原水に添加される場合もある。原水の水質は、例えば、濁度が1NTU~100NTU、浮遊物質量(SS)が5mg/L~500mg/L、全有機炭素(TOC)が0.5mg/L~7mg/L、アルミニウム濃度が0.01mg/L~5mg/L、遊離塩素濃度が0.1mg/L~2mg/L as Cl2、pHは、4~9である。原水供給装置11は、例えば、原水を貯留する原水タンクと原水タンク内の原水を移送する給水ポンプを備えており、給水ポンプが原水タンク内の原水を原水移送管13内に供給する。なお、原水の水質に応じて、続く高塩基度PACの添加前の原水を前処理するため、前処理装置として(図示しない)プレフィルターを取り付けてもよい。また、必要に応じて原水のpHの調整のための、酸又はアルカリ注入設備を取り付けてもよい。
【0018】
次いで、ポリ塩化アルミニウム供給装置12が、原水移送管13内に、PACを添加する。ポリ塩化アルミニウム供給装置12は、例えば、PACを貯留する薬液タンクと薬液タンク内のPACを原水移送管13内に添加する薬注ポンプを備えており、薬注ポンプが、所定の濃度となるように薬液タンク内のPACを計量して原水移送管13内に添加する。これにより、第1処理水が生成する。
【0019】
このとき、PACの塩基度に応じて、pH調整装置(図示せず)が、pH調整剤である酸及びアルカリを原水に添加して、原水のpHを調整する。酸及びアルカリの添加は、いずれか一方であっても両方であってもよい。後述する低塩基度のPACを使用する場合には、pH調整装置がpH調整剤を原水移送管13内に添加することで、PACが添加される前の原水のpHが調整される。pH調整装置は、例えば、酸を貯留する酸貯留タンクと酸貯留タンク内の酸を原水移送管13内に添加する酸注入ポンプを備えている。また、pH調整装置は、アルカリを貯留するアルカリ貯留タンクと、アルカリ貯留タンク内のアルカリを原水移送管13内に添加するアルカリ注入ポンプを備えている。そして、酸注入ポンプ及びアルカリ注入ポンプが、原水が所定のpHとなるように酸貯留タンク内の酸及びアルカリ貯留タンク内のアルカリを計量して原水移送管13内に添加する。ここで用いられる酸は、代表的には硫酸であり、アルカリは、代表的には水酸化ナトリウム(水溶液)である。
【0020】
本実施形態におけるPACは、下記化学式(1)で示されるポリ塩化アルミニウムを含む。本実施形態のPACとしては、低塩基度のPACと高塩基度のPACのいずれを使用することもできる。本実施形態のPACとしては、低塩基度のPACと高塩基度のPACのいずれかを使用することが好ましい。低塩基度のPAC(以下、「低塩基度PAC」という。)を使用する場合には、上述したpH調整装置を設けて、原水のpHを調整することが好ましい。塩基度は、n/6×100(%)で算出される値である。
[Al2(OH)nCl6-n]m(1≦n≦5、m≦10) ・・・(1)
【0021】
低塩基度PACは、塩基度が好ましくは75%以下、より好ましくは、60%以上70%以下である。低塩基度PACは、例えば特開2009-203125号公報に記載された方法で製造することができる。低塩基度PACとしては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、2種以上の低塩基度PACの塩基度は同じであっても異なってもよいが、用いる低塩基度PACの塩基度がいずれも、75%以下であることが好ましく、60%以上70%以下であることがより好ましい。
【0022】
低塩基度PACの量は、原水中の濁度1NTUに対して、0.03mg/L as Al2O3以上であることが好ましい。具体的に、低塩基度PACの量は、原水の量に対して0.05mg/L as Al2O3以上5mg/L as Al2O3以下となる量であることが好ましく、0.1mg/L as Al2O3以上2mg/L as Al2O3以下となる量であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態において、PACとしては、高塩基度のPAC(以下、「高塩基度PAC」という。)を使用することが好ましい。高塩基度PACの塩基度は、好ましくは75%より大きく、より好ましくは83%より大きい。塩基度の上限は、通常84%未満程度である。高塩基度PACは、例えば、特許第4104773号に記載された方法で製造することができる。高塩基度PACとしては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、2種以上の高塩基度PACの塩基度は同じであっても異なってもよいが、用いる高塩基度PACの塩基度がいずれも、75%より大きいことが好ましく、83%より大きいことがより好ましい。
【0024】
高塩基度PACを使用すると、原水中の懸濁物質等と高塩基度PACが相互作用して、マイクロフロックが形成される。このマイクロフロックを経ることで、逆浸透膜装置14の膜への残留アルミニウムの付着が著しく低減され、逆浸透膜装置の性能を長期にわたって維持することができる。マイクロフロックは、大きさが1~10μm程度の、懸濁物質等と高塩基度PACの凝集体である。高塩基度PACは、マイクロフロックを形成しやすいが、マイクロフロックより大きい粗大フロックや、マイクロフロックより微細なフロック(ナノフロック)を形成しにくい。マイクロフロックからはアルミニウムイオンが漏れ出しにくいので、これを経ることで、逆浸透膜の閉塞を長期間防ぐことができる。
【0025】
高塩基度PACとしては、塩化アルミニウム5水酸化物(Al2Cl(OH)5)を用いることが好ましい。塩化アルミニウム5水酸化物は上記化学式(1)において、n=5、m=1のポリ塩化アルミニウムであり、塩基度は83.3%である。塩化アルミニウム5水酸化物によれば、より均質なマイクロフロックを形成しやすい。これは、塩化アルミニウム5水酸化物の塩基度が高く、分子量が小さいためと考えられる。
【0026】
高塩基度PACの量は、原水中の濁度1NTUに対して、0.125mg/L as Al2O3以上であることが好ましい。具体的に、高塩基度PACの量は、原水の量に対して0.25mg/L as Al2O3以上5mg/L as Al2O3以下となる量であることが好ましく、0.3mg/L as Al2O3以上3mg/L as Al2O3以下となる量であることがより好ましい。特に、高塩基度PACとして塩化アルミニウム5水酸化物(Al2Cl(OH)5)を用いる場合、塩化アルミニウム5水酸化物の量は、原水の全量に対して0.25mg/L as Al2O3以上2mg/L as Al2O3以下となる量であることが好ましい。高塩基度PACの量は上記したような少量であっても、原水中の懸濁物質をマイクロフロック化することができる。また、高塩基度PACが上記のように少量でも機能するため、後段の逆浸透膜装置14の閉塞を防ぎやすくなる。なお、「as Al2O3」の表記は、酸化アルミニウム(Al2O3)濃度で換算した値であることを示す。
【0027】
ここで、
図2に、原水にPACを添加するための混合槽23を有する純水用水の製造装置2を模式的に示す。製造装置2は、原水移送管13の経路に、混合槽23と、混合槽23内の処理水を後段に供給する移送管131を有しており、還元剤供給装置17と殺菌剤供給装置18は、移送管131の経路に接続されている点で、上述した製造装置1とは異なっているが、その他の構成は共通する。本実施形態において、製造装置1を用いる製造方法と共通する構成や作用については詳細な説明は省略する。
【0028】
製造装置2では、原水供給装置11から原水が、ポリ塩化アルミニウム供給装置12からPACが、それぞれ混合槽23内に供給される。低塩基度PACを使用する場合には、pH調整装置が、混合槽23内に酸及びアルカリを、混合槽23内に供給する。これらによって、第1処理水が生成する。
【0029】
高塩基度PACを使用する場合には、高塩基度PACの凝集性のpH依存性が少ないため、pH調整装置による酸及びアルカリの添加は行わなくてよい。また、高塩基度PACを使用する場合には、混合槽23内で、原水中の懸濁と高塩基度PACが相互作用することで、マイクロフロックが形成される。混合槽23内への供給の順序は、原水とPACのいずれが先でも、同時であってもよいが、原水の供給された混合槽23内に、PACと、必要に応じて酸及びアルカリが添加されるのが好ましい。
【0030】
図2に示す製造装置2の混合槽23では、高塩基度PACを使用する場合、原水及び高塩基度PACを急速撹拌することで、ナノフロックを生じさせずに、より均質のマイクロフロックを形成しやすくなる。撹拌速度は、例えば、G値で、150s
ー1以上であることが好ましく、150~250s
ー1であることがより好ましく、250s
ー1以上であることがさらに好ましい。また、急速撹拌機による撹拌時間は、2分以上であり、好ましくは3分以上であり、より好ましくは6分以上である。急速撹拌のG値が大きいほど撹拌時間は短くすることができる。
【0031】
続いて、第1処理水が、
図1の原水移送管13又は
図2の移送管131に供給される。第1処理水が、原水移送管13(又は移送管131、以下本実施形態において同じ。)内を通流する過程で、還元剤供給装置17が、還元剤を第1処理水に添加する。これにより第2処理水が生成する。
【0032】
還元剤供給装置17は、例えば、還元剤を貯留する薬液タンクと薬液タンク内の還元剤を原水移送管13内に添加する薬注ポンプを備えており、薬注ポンプが、薬液タンク内の還元剤の所定量を計量して原水移送管13内に添加する。
【0033】
本実施形態の製造装置1(又は製造装置2、以下本実施形態において同じ。)で用いられる還元剤は、二亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)を有効成分とする。本発明者らは、二亜硫酸ナトリウムを還元剤として使用した場合に、原水のpHの値に関わらず、遊離塩素との反応で残留する還元剤の量が極めて少ないことを知見した。このために、続いて添加する酸化性殺菌剤の量を少なくすることができる。特に、高塩基度PACと併用することで、原水のpH調整を省略することができる。そのため、pH調整剤、還元剤、殺菌剤等の薬剤添加量やその作業負荷を著しく低減することができる。特に前段の処理で高塩基度PACを使ってpH調整を行なわい場合には、pH変動が起きても還元剤残留量が変化しない、言い換えると残留塩素量が変化しない二亜硫酸ナトリウムを使用すると、pH変動の影響によって、例えば、殺菌剤不足による逆浸透膜の菌による詰まりや、還元剤不足による逆浸透膜の劣化などを避けることができる。また、残留還元剤の量を無視できるため、残留塩素量をモニターしてそれに最適な添加量を加える方法でも、最適添加量の設定が容易である。なお、還元剤は、有効成分以外にも、例えば、溶媒である水を含み、その他、安定剤等を含んでいてもよい。
【0034】
これに対し、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)や亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を還元剤として使用した場合には、pHの全領域において、還元剤の残留量が多く、かつpHの値によって残留量が異なる。その理由は必ずしも明らかではないが、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)と亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)は互いに平衡状態にあり、原水中に亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)又は亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を添加すると、pH変動によって平衡移動反応が進行する。同時に、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)及び亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)と遊離塩素の酸化還元反応が起きる。そのため、原水のpHによっては酸化還元反応速度が平衡移動反応より遅く、そのために亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)や亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)の添加量が多くなるものと考えられる。さらにこの添加量の増加量は、酸化剤の量や、装置の規模、還元剤添加後の攪拌速度の違い等の影響を受けることがあるため、原水のpHが同じであっても必ずしも一定量とはならないため、適正な添加量を設定することが難しい。
【0035】
本実施形態の製造装置1において、還元剤の添加量は、原水の遊離塩素濃度にもよるが、有効成分(二亜硫酸ナトリウム)の量として、0.1mg/L~5mg/Lであることが好ましい。特に、遊離塩素濃度が0.2mg/L as Cl2程度の場合、有効成分(二亜硫酸ナトリウム)の量は0.2mg/L~0.4mg/Lとすることができ、かつ、残留還元剤の量は、例えば、0.06mg/L以下に抑えることができる。また、還元剤の添加量は、次のように決定してもよい。例えば、遊離塩素濃度をORP計(酸化還元電位計)や残留塩素計、SO2計等を用いてモニターし、モニターされた量に応じて還元剤の添加量を調整することができる。また、還元剤添加後の還元剤残留量をモニターし、モニターされた値に応じて還元剤の添加量をフィードバック制御してもよい。還元剤量のモニターとしては、例えば、還元剤の添加された原水の一部をサンプル水として取得し、原水とサンプル水に紫外線を照射して得られる溶存酸素濃度を比較して、サンプル水中の還元剤量を判定する方法などで定量することも可能である。
【0036】
続いて、必要に応じて、殺菌剤供給装置18が第2処理水に酸化性殺菌剤を添加する。殺菌剤供給装置18は、例えば、酸化性殺菌剤を貯留する薬液タンクと薬液タンク内の酸化性殺菌剤を原水移送管13内に添加する薬注ポンプを備えており、薬注ポンプが、薬液タンク内の酸化性殺菌剤の所定量を計量して原水移送管13内に添加する。
【0037】
酸化性殺菌剤としては、遊離塩素系以外の酸化性殺菌剤を使用することができ、例えば、アミン系化合物、スルファミン酸系化合物等の酸化性殺菌剤が挙げられる。スルファモイルクロリドやクロロスルファミン酸など、スルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含んでもよい。また、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)等のイソチアゾリン系化合物や次亜臭素酸ナトリウムなどの臭素酸化合物や2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含む殺菌剤でもよい。酸化性殺菌剤の中に、安定化ハロゲン形態の成分と、余剰分のスルファミン酸系化合物とを含んでいてもよい。これにより、安定化次亜塩素酸、安定化次亜臭素酸に加えて 、安定化ハロゲン酸塩を殺菌剤として用いることができる。酸化性殺菌剤としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、栗田工業社製クリバーターIK110、オルガノ社製オルパージョンE266シリーズ、ダウ・ケミカル社製ケーソンWT、Nalco社製スタブレックス等が挙げられる。
【0038】
殺菌剤の添加量は、一般に、菌の発育を阻止するために使用される量であることが好ましく、原水中に含まれる菌のMIC(最小発育阻止濃度)を予め確認して、MICに達する量~MICの5倍程度を添加することが好ましい。特に、本実施形態においては、還元剤の残留量が少ないため、還元剤による酸化性殺菌剤の消失量が少ないので、MICに達する程度の量を用いればよい。
【0039】
続いて、殺菌剤の添加された第2処理水は、移送管13を介して逆浸透膜装置14に供給され、逆浸透膜処理される。これにより逆浸透膜装置14の透過水が得られる。逆浸透膜装置14における透過流束低下抑制の点から、このときの逆浸透膜装置14への給水圧は、0.5MPa~3MPaであることが好ましく、逆浸透膜装置14における水回収率は、75%~95%であることが好ましい。逆浸透膜装置14に供給される直前に、第2処理水に、適宜、スケール防止剤が添加されて、逆浸透膜装置14に供給されてもよい。
【0040】
逆浸透膜装置14としては、極超低圧型、超低圧型、低圧型、中圧型、高圧型のいずれの逆浸透膜装置を用いてもよい。逆浸透膜装置14に備えられる逆浸透膜としては、芳香族ポリアミドを構成材料としたスパイラル型逆浸透膜が好ましい。また、逆浸透膜装置14としては、逆浸透膜表面が正電荷の正電荷膜、表面が負電荷の負電荷膜、表面が無電荷の無電荷膜があり、中でも、負電荷膜であることが、逆浸透膜のフロックによる閉塞が起こりにくいため好ましい。逆浸透膜装置14としては、超低圧ないし低圧型の負電荷膜であることが好ましい。超低圧ないし低圧型の負電荷膜を有する逆浸透膜装置としては、市販品を用いることができ、例えば、日東電工株式会社製「ES20」、東レ株式会社製「SUシリーズ」、「TMシリーズ」、「TBWシリーズ」等、Dow社製「BWシリーズ」を使用することができる。
【0041】
逆浸透膜装置14の透過水は、逆浸透膜装置14の透過側の移送管15を介して後段に送られる。逆浸透膜装置14の濃縮水は、排出管16を介して製造装置1の系外に排出されるか、逆浸透膜装置14の前段に戻されて再処理することができる。こうして得られる逆浸透膜装置14の透過水の水質は、例えば、濁度が0.01NTU~0.2NTU、アルミニウム濃度が0mg/L~0.002mg/L、pHは、5.9~6.5、導電率が30μS/cm~100μS/cmである。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図3に、本実施形態の純水用水の製造方法に用いる製造装置3を模式的に示す。製造装置3は、原水移送管13の経路の、ポリ塩化アルミニウム供給装置12と還元剤供給装置17の間に、ろ過部31を備える点で、
図1に示す製造装置1と異なっているが、その他の構成は共通する。本実施形態において、製造装置1を用いる製造方法と共通する構成や作用については詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に示される製造装置3を用いた実施形態の純水用水の製造方法は次の通りである。まず、原水供給装置11から原水が、原水移送管13内に供給される。次いで、原水の供給された原水移送管13内に、ポリ塩化アルミニウム供給装置12によってPACが添加される。ここで用いるPACの好ましい態様は、
図1に示される製造装置1を用いる製造方法と同様である。
【0044】
高塩基度PACを使用する場合には、原水移送管13内に、原水と高塩基度PACが供給されることで、原水中の懸濁と高塩基度PACが相互作用して、マイクロフロックが形成される。このマイクロフロックを経ることで、逆浸透膜装置14の膜への残留アルミニウムの付着が著しく低減され、逆浸透膜装置の性能を長期にわたって維持することができる。
【0045】
原水移送管13内の第1処理水が、ろ過部31に供給される。このとき、原水移送管13に給水ポンプを設けることで、給水ポンプによって第1処理水をろ過部31に供給することができる。本実施形態では、混合槽を用いていないので、製造装置がコンパクトになることで、半導体製造工場等に設置することが容易であるという利点を有する。なお、混合を促進するため、PAC供給後の原水移送管13内にインラインミキサー等を設置すると、後段の設備の詰まりがより抑制される。
【0046】
ろ過部31は、砂ろ過装置、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置、限外ろ過装置及び精密ろ過(MF)装置から選ばれる1種以上のろ過装置を含んで、第1処理水をろ過処理する。これにより、水中の、主に懸濁物質を含むマイクロフロック等が除去される。ろ過部31の処理水は、配管によって後段に送られる。
【0047】
砂ろ過装置は、例えば、ろ過材として支持砂利や砂(ろ過砂)を有する。
マルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置は、例えば、アンスラサイト、砂、ガーネットを、粒径が小さい順に下から積層した3層構造のろ過材を備える。
限外ろ過(UF)装置は、ろ過材として公称孔径が0.001~0.1μmの限外ろ過膜を備え、全量ろ過方式とクロスフロー方式ろ過のいずれであってもよい。限外ろ過(UF)装置は、中空糸膜を用いた外圧式の限外ろ過装置が好ましい。
精密ろ過(MF)装置は、例えば公称孔径0.1~5μmの精密ろ過膜を備え、全量ろ過を行うことが可能である。
【0048】
ろ過部31は、原水水質に応じて、上記砂ろ過装置、マルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置、精密ろ過(MF)装置及び限外ろ過(UF)装置から選ばれるろ過装置の一種を単独で、又は2種以上を組み合わせて有することができる。2種以上を組み合わせる場合には、上流側に、砂ろ過装置やマルチメディアフィルター(MMF)ろ過装置を配置し、下流側に限外ろ過装置を配置することが好ましい。ろ過部31は、限外ろ過装置を備えることがより好ましく、限外ろ過装置のみを備えることがさらに好ましい。ろ過部31を設けることで、第1処理水中の懸濁物質等を高精度で除去することができ、このため、後段の逆浸透膜装置14の負荷が軽減されるので、長期にわたって高水質の透過水を得ることができる。
【0049】
図3に示される製造装置3において、ろ過部31は、独立型のろ過装置を有する独立型のろ過部である。独立型のろ過装置としては、カートリッジ型のろ過装置や、モジュール型のろ過装置が挙げられる。カートリッジ型のろ過装置は、例えば、ハウジング内にろ過材のカートリッジを収容し、ハウジングに開口した通水口及び排水口に配管を接続して、開口を通じてカートリッジに通水する構成である。カートリッジ型のろ過装置は、ろ過材が劣化したときにカートリッジのみを交換することができるという利点を有する。モジュール型のろ過装置は、ろ過材がハウジング内部に設けられており、モジュールを配管に接続することで、ろ過材に通水する構成である。モジュール型のろ過装置では、ろ過材が劣化したときにモジュールごと交換し、劣化したろ過材をモジュール毎の洗浄や再生をすることができるという利点を有する。独立型のろ過部31によれば、下流側へのナノフロックの流出が少ないため、逆浸透膜装置14の閉塞の防止の点で効果的である。なお、ナノフロックは、マイクロフロックより微細なフロックであり、逆浸透膜の閉塞を進行させやすい。特に、半導体等の製造用超純水を製造するために本実施形態の方法を用いる場合、独立型のろ過部31を用いることで、複数台の独立型のろ過部31を並列に設置しておき、複数台のうち1台ずつ逆洗等の再生やモジュール交換を行い、他の装置により運転を継続すること(いわゆるメリーゴーランド式運転)で、超純水の製造を、装置を停止せずに継続することが可能である。
【0050】
このようにして得られるろ過部31の処理水の水質は、例えば、濁度が0.01NTU~0.4NTU、アルミニウム濃度は、0.01mg/L~0.04mg/L、pHが7.2~8.3、導電率が140μS/cm~270μS/cmである。高塩基度PACを用いる場合は、高塩基度PACが添加される原水のpHの値に関わらず、安定して均質なマイクロフロックが形成できるので、混合層23へのpH調整剤の添加が不要であり、薬品の使用量が低減できる。したがって、ろ過部31の処理水のpHが変動する場合もあるが、アルミニウム濃度は低いままで安定する。
【0051】
図4に、原水にPACを添加するための混合槽23と、ろ過部31を有する純水用水の製造装置4を模式的に示す。製造装置4は、原水移送管13の経路に、混合槽23と、混合槽23内の水を後段に供給する移送管131を有しており、ろ過部31と、還元剤供給装置17と、殺菌剤供給装置18が、移送管131の経路に順に設置されている点で、
図3に示す製造装置3とは異なっているが、その他の構成は共通する。本実施形態において、製造装置3を用いる製造方法と共通する構成や作用については詳細な説明は省略する。
【0052】
製造装置4においては、原水供給装置11から原水が、ポリ塩化アルミニウム供給装置12からPACが、それぞれ、混合槽23内に供給される。低塩基度PACを使用する場合には、pH調整装置が、混合槽23内に酸及びアルカリを供給する。これらによって、第1処理水が生成する。
【0053】
高塩基度PACを使用する場合には、pH調整装置による酸及びアルカリの添加は行わなくてよい。高塩基度PACを使用する場合には、混合槽23内で、原水中の懸濁と高塩基度PACが相互作用することで、マイクロフロックが形成される。特に、混合槽23を用いることで、高塩基度PACによるマイクロフロックの形成が十分に行われるため、後段の設備の詰まりがより抑制される。この場合、混合槽23内への供給の順序は、原水と高塩基度PACのいずれが先でも、同時であってもよいが、原水の供給された混合槽23内に、高塩基度PACが添加されるのが好ましい。
【0054】
図4に示される製造装置4は、混合槽23の後段に、混合槽23とは分離独立した独立型のろ過部31を有する。独立型のろ過部31の態様は上述した製造装置3と同様である。
【0055】
また、ろ過部31としては、槽浸漬用に構成された浸漬型のろ過装置を使用することができる。槽浸漬用に構成された浸漬型のろ過装置は、混合槽23内の底部に浸漬され、配管を用いずに、PACの添加された第1処理水を直接、ろ過装置でろ過することができるという利点を有する。浸漬型のろ過装置としては、限外ろ過装置、MMF型ろ過装置が好ましい。本実施形態の製造装置4では、特に、高塩基度PACを用いる場合、水中に、マイクロフロックを主体として形成させることで、凝集沈殿槽による沈殿除去を経ずに、直接、ろ過処理することができる。そのため、混合槽23内にろ過部31を浸漬させて一体化することができ、装置全体の構成を簡素化することができる。
【0056】
ろ過部31において、ろ過装置を複数使用する場合には、浸漬型のみ又は独立型のみで用いてもよく、浸漬型と独立型を併用してもよい。本実施形態においては、独立型のろ過装置のみを用いることが好ましく、独立型の限外ろ過装置を用いることがより好ましい。
独立型の限外ろ過装置に備えられる限外ろ過膜としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン等の材質からなる、中空糸膜、スパイラル膜、平膜があるが、なかでも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系材質からなる中空糸膜であることが好ましい。
浸漬型の限外ろ過装置に備えられるろ過膜としては、セラミック製、もしくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系材質の平膜が好ましい。
【0057】
第1処理水を
図3又は
図4のろ過部31によってろ過処理することで、水中の、懸濁物質等を含むマイクロフロックや粗大フロックが除去される。続いて、還元剤供給装置17が、ろ過部31の処理水に還元剤を添加する。これにより第2処理水が生成する。さらに、必要に応じて、殺菌剤供給装置18が、酸化性殺菌剤を第2処理水に添加した後、酸化性殺菌剤の添加された第2処理水が逆浸透膜装置14に供給される。還元剤添加及び酸化性殺菌剤添加の好ましい態様は、上述した製造装置1(
図1)及び製造装置2(
図2)と同様である。
【0058】
次に、上記した製造装置1を用いた、実施形態の純水製造システム5について、
図5を参照して説明する。
図5は、製造装置1を用いた、超純水製造システム5の構成を概略的に示すブロック図である。
図5において、製造装置1を製造装置2~4のいずれかに変更することができる。
【0059】
図5に示すように、超純水製造システム5は、前処理システム50と、一次純水システム(純水製造システム)51と二次純水システム(サブシステム)52とをこの順に備えている。二次純水システム52はユースポイント(POU)53に配管によって接続されており、これにより超純水製造システム5により製造された超純水がPOU53に供給される。
【0060】
前処理システム50は、上述した実施形態の製造装置1と、必要に応じて、プレフィルターや温度調節を行う熱交換器等を有している。
【0061】
超純水製造システム5は、前処理システム50の後段に、タンクTK1を備えており、前処理システム50によって前処理された被処理水はタンクTK1に導入されて、一旦貯留され、その後、一次純水システム51に供給される。
【0062】
一次純水システム51は、前処理水から有機物、イオン成分及び溶存気体を除去して一次純水を製造する。一次純水システム51は、紫外線酸化装置(TOC-UV)513、イオン交換装置514をこの順に備えている。
【0063】
紫外線酸化装置513は、例えば、185nm付近の波長の紫外線と、254nm付近の波長の紫外線を放射する紫外線ランプを有し、この紫外線ランプから紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中の全有機炭素成分(TOC)を酸化分解する。紫外線酸化装置513の放射する紫外線により、水が分解されてOHラジカルが生成し、このOHラジカルによって被処理水中の有機物が有機酸に酸化分解される。一次純水システムの紫外線酸化装置513における紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更することができる。
【0064】
イオン交換装置514は、イオン交換樹脂装置及び電気式脱イオン装置のうち1種以上である。イオン交換樹脂装置としては、陽イオン交換樹脂装置、陰イオン交換樹脂装置、混床式イオン交換樹脂装置及び複床式イオン交換樹脂装置から選ばれる1種以上を、求められる水質に応じて適宜組み合わせて使用することができる。陽イオン交換樹脂装置に用いられる陽イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂でもよく、弱酸性陽イオン交換樹脂でもよい。陰イオン交換樹脂装置に用いられる陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂でもよく、弱塩基性陰イオン交換樹脂でもよい。イオン交換樹脂として、ホウ素吸着性イオン交換樹脂を用いてもよい。
【0065】
上記一次純水システム51により得られる、一次純水は、例えば抵抗率17MΩ・cm以上、TOC濃度が10μgC/L以下である。
【0066】
超純水製造システム5は、一次純水システム51の後段に、一次純水を貯留する一次純水タンクTK2と、二次純水システム52をこの順に備えている。一次純水システムで製造された一次純水は、一次純水タンクTK2に一旦貯留された後、二次純水システム52に送られる。二次純水システム52は、紫外線酸化装置(TOC-UV)521、非再生式ポリッシャー(Polisher)522、膜脱気装置(MDG)523及び限外ろ過装置(UF)524を備えている。
【0067】
二次純水システム52における紫外線酸化装置521の構成は、一次純水システム51の紫外線酸化装置513と同様である。非再生式ポリッシャー522は、ボンベ等の容器に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が混合充填されて成る混床式のイオン交換樹脂装置である。非再生式ポリッシャー522は、紫外線酸化装置521が有機物を分解することで生成したイオン成分を吸着除去する。
【0068】
膜脱気装置523は、脱気膜を介して溶存気体を除去する。膜脱気装置523は、一次純水中の微量溶存酸素を除去して溶存酸素濃度を例えば1μg/L程度以下まで低減する。限外ろ過膜装置524は、限外ろ過膜によってろ過処理を行い、上流側のイオン交換樹脂からの微量溶出物や微粒子成分を除去して、例えば、0.05μm以上の微粒子数を250Pcs./L以下程度まで低減する。
【0069】
このように、二次純水システム52は、一次純水を処理してさらに高純度の超純水を製造する。超純水の水質は、例えば、全有機炭素(TOC)濃度が1μgC/L以下、抵抗率が18MΩ・cm以上、ホウ素濃度は0.1ppb(μg/L)以下である。二次純水システムで製造された超純水はユースポイント53に供給される。
【0070】
なお、上述した各実施形態において、原水、処理水の水質はそれぞれ、次の方法又は装置によって測定することができる。
濁度:光散乱方式
アルミニウム濃度:ICP発光分析
pH:電極法
導電率:導電率計(堀場製作所製 HE-960CW)
全有機炭素(TOC)濃度:TOC計(超純水以外:SUEZ社製 Sievers M9e)
【実施例】
【0071】
次に、実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
図6に、本実施例及び比較例で使用した、純水用水の製造装置6を模式的に示す。
図6に示す製造装置6は、原水を供給する原水供給装置61と、PACを供給するポリ塩化アルミニウム供給装置62と、原水及びPACが内部に供給される混合槽63とを備えている。製造装置6はさらに、混合槽63の下流側の経路に、限外ろ過装置65と、還元剤供給装置67と殺菌剤供給装置68と、逆浸透膜装置64をこの順に備えている。
【0073】
実施例及び実験例で使用した各装置の仕様は以下の通りである。
混合槽63:容量1m3
限外ろ過装置65:株式会社クラレ製ピューリアGL(PVDF膜、公称孔径0.02μm)
逆浸透膜装置64:東レ株式会社製TM710(低圧型、負荷電膜)
水回収率85%、運転圧力12kgf/cm2
アルミニウム濃度の測定:高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析
濁度の測定:濁度計(Hach2100P、東亜ディケーケー社製)
pHの測定:水質計(Horiba 9630-10D、Horiba社製)
残留塩素濃度又は全塩素濃度;AQ-201(SIBATA社製)
亜硫酸イオン(SO3
2-)濃度(還元剤量):MD600(LOVIBOND社製)
遊離塩素濃度:AQ-201(SIBATA社製)
原水(湖水)の水質:濁度4NTU、pH=7.2、導電率250μS/cm、TOCが4mg/L、なお、通水期間中にpHは、6.7~7.8に変動した。
【0074】
(実施例1)
原水に、次亜塩素酸を、遊離塩素濃度が0.2mg/L as Cl2となるように添加し、混合槽63に供給した。その後、高塩基度PACとして、塩化アルミニウム5水酸化物(Al2Cl(OH)5)の水溶液(野村マイクロ・サイエンス株式会社試作品、塩基度83.33%)を、原水中のアルミニウム濃度が、Al2O3換算濃度で1.2mg/Lとなるように、混合槽63に供給し、攪拌した。攪拌した後、原水をサンプリングして、原水の80mlを、公称孔径0.2μmのメンブレン(大きさ47mmφ)に通水し、膜に捕捉された微粒子を観察したところ、1~10μm程度の微粒子が観察された。この微粒子の元素成分をエネルギー分散型蛍光X線分光法(EDX)で確認したところAlが含まれていた。さらに、公称孔径0.45μmのメンブレン(大きさ47mmφ)に同量の通水をしたところ、ほとんど差圧がつかなかった。以上の結果から、本実施例で、マイクロフロックが形成されたことが確認された。
【0075】
混合槽63内の処理水を限外ろ過装置65に通水してろ過した後、配管によって後段に送り、その過程で、還元剤として、二亜硫酸ナトリウムを0.2mg/L添加し、続いて、酸化性殺菌剤としてクロロスルファミン酸(ノムライト(試作品)、野村マイクロ・サイエンス株式会社製)を0.3mg/L添加した。続いて、処理水を逆浸透膜装置64に供給して、逆浸透膜処理した。なお、二亜硫酸ナトリウムの添加量は、次の反応が完全に起きるとしたときに必要最低量(化学当量)とした。
Na2S2O5+H2O+2NaOCl → 2HCl+2Na2SO4
【0076】
(実施例2)
実施例1において、高塩基度PACとして、特許第4104773号に記載された方法で製造した高塩基度PAC(塩基度76%)を用いたほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と、逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。実施例2においても、マイクロフロックが形成されたことが確認された。
【0077】
(実施例3)
実施例1において、酸化性殺菌剤として5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)を合計で0.05mg/L添加したほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。実施例3においても、マイクロフロックが形成されたことが確認された。
【0078】
(実施例4)
原水に酸又はアルカリを添加して、pHを7.2に保ち、pH変動をなくした。また、PACとして、低塩基度PAC(商品名PAC250A、製造元多木化学株式会社、塩基度50%)を原水中のアルミニウム濃度が、Al2O3換算濃度で0.3~0.4mg/Lとなるように用いたほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。実施例4においては、低塩基度PACを添加し、攪拌した後の原水をサンプリングして、その80mlを公称孔径0.2μmのメンブレン(大きさ47mmφ)に通水し、膜に捕捉された微粒子を観察したところ、1~10μm程度の微粒子が観察された。この微粒子の、元素成分をEDXで確認したところAlが含まれていた。さらに、公称孔径0.45μmのメンブレン(47mmφ)に同量の通水をしたところ、急激に差圧がついた。以上の結果から、マイクロフロックは形成されるが、大きさが0.45μm以上の粗大凝集物の形成も確認された。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、PACとして、低塩基度PAC(商品名PAC250A、製造元多木化学株式会社、塩基度50%)を原水中のアルミニウム濃度が、Al2O3換算濃度で0.3~0.4mg/Lとなるように用いたほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。比較例1においては、フロックの形成状態は、実施例4と同じであった。
【0080】
(比較例2)
比較例1において、酸化性殺菌剤として実施例3と同じ5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)を0.05mg/L添加したほかは、比較例1と同様にして、限外ろ過装置65と、逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。フロックの形成状態は、比較例1と同等であった。
【0081】
(比較例3)
実施例1において、還元剤として、亜硫酸ナトリウムを用いたほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。比較例3においては、マイクロフロックの形成状態は、実施例1と同じであった。なお、亜硫酸ナトリウムの添加量は、次の反応が完全に起きるとしたときの必要最低量(化学当量)とした。
NaOCl+Na2SO3 → NaCl+Na2SO4
【0082】
(比較例4)
実施例1において、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムを用いたほかは、実施例1と同様にして、限外ろ過装置65と逆浸透膜装置64で順に継続して処理を行った。比較例3においては、マイクロフロックの形成状態は、実施例1と同じであった。なお、亜硫酸水素ナトリウムの添加量は、次の反応が完全に起きるとしたときの必要最低量(化学当量)とした。
2NaHSO3+3NaClO → 3NaCl+H2O +2Na2SO4
【0083】
上記実施例1~比較例4における、使用したPACの種類と塩基度、還元剤の種類及び添加量、酸化性殺菌剤の種類、限外ろ過装置65の処理水中のアルミニウム濃度、濁度(NTU)、及び残留還元剤濃度を表1に示す。表1において、還元剤の量は有効成分の量で示し、還元剤残留量は、亜硫酸イオン(SO3
2-)の量で示す。なお、表1において、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)の混合物を「殺菌剤b」と表す。
【0084】
【0085】
実施例1と比較例3、4を比較すると、比較例3、4では、透過流束(流量)が上昇していることがわかる。これは、比較例3では、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を用い、比較例4では亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を用いているため、酸化剤(遊離塩素)との反応当量では還元剤の量が十分ではないため、3ヶ月後の短期に逆浸透膜装置64に備えられる逆浸透膜の劣化がすすみ、このために透過流束が上昇していると考えられる。
【0086】
(実験例1~3)
原水のpHを変更した場合の、還元剤の種類と残留量の関係について調べた。
濁度4の原水を所定量ビーカーに採取して、これにpH調整剤(NaOH又はH
2SO
4)を添加してpH=6~9の所定の値に調整した。pHを調整したそれぞれのサンプルに、遊離塩素濃度が2mg/L as Cl
2になるように、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加した。
次に、以下に示す還元剤を遊離塩素濃度が消失するまで所定量(0~20mg/L)を添加し、還元剤添加量後のSO
3
2-濃度を測定した。
遊離塩素が消失したときの還元剤残留量を、還元剤の添加量と反応式から求められる還元剤の消費量の差から求めた。結果を
図7に示す。
【0087】
実験例1:二亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)
実験例2:亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)
実験例3:亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)
【0088】
実験例1~3より、還元剤として亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を使用した場合及び亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を使用した場合には、遊離塩素が消失するまで添加した場合に、還元剤が残留し、さらに、残留量がpHによって変化することがわかる。これに対し、二亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)を使用した場合は、還元剤の残留量が、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムに比べて少なく、残留量のpH依存性も低いことがわかる。
【0089】
以上で説明した実験例、実施例及び比較例により、実施形態の純水用水の製造装置及び製造方法によれば、還元剤として、二亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)を使用するため、還元剤の残留量が、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムに比べて少なく、残留量のpH依存性も低い。このため、塩素を含む原水を逆浸透膜処理する場合に、薬剤添加を効率的に行うとともに、その添加量を削減することができる。をこれにより高純度の純水や超純水を効率よく長期にわたって製造することができるので、実施形態の純水用水の製造装置及び製造方法は、純水又は超純水の大量製造に適している。
【符号の説明】
【0090】
1~4、6…純水用水の製造装置、5…超純水製造システム、11、61…原水供給装置、12、62…ポリ塩化アルミニウム供給装置、13…原水移送管、14、64…逆浸透膜装置、17、67…還元剤供給装置、18、68…殺菌剤供給装置、…23、63…混合槽、31…ろ過部、65…限外ろ過装置、50…前処理システム、51…一次純水システム(純水製造システム)、52…二次純水システム(サブシステム)、53…ユースポイント(POU)、513…紫外線酸化装置(TOC-UV)、514…イオン交換装置、TK1、TK2…タンク、521…紫外線酸化装置(TOC-UV)、522…非再生式ポリッシャー(Polisher)、523…膜脱気装置(MDG)524…限外ろ過装置(UF)
【要約】 (修正有)
【課題】塩素を含む原水を逆浸透膜処理する場合に逆浸透膜の供給水への薬剤添加を効率的に行うことのできる、純水用水の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】遊離塩素を含有する原水に、ポリ塩化アルミニウムを添加することで第1処理水を得る工程と、第1処理水に、二亜硫酸ナトリウムを有効成分とする還元剤を添加して第2処理水を得る工程と、第2処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜工程と、を有する純水用水の製造方法。
【選択図】
図1