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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】車両保持装置、積載方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/12 20060101AFI20250128BHJP
【FI】
B65D88/12 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023137840
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501461852
【氏名又は名称】岡本物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】辻 光正
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和巳
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-161189(JP,A)
【文献】国際公開第2021/261299(WO,A1)
【文献】実開平06-051419(JP,U)
【文献】特開2015-089819(JP,A)
【文献】登録実用新案第3075443(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217302(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0370412(US,A1)
【文献】米国特許第04371298(US,A)
【文献】特開2014-103983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0136555(US,A1)
【文献】特開2009-214672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0102143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナに運び込まれた第1の車両の前輪を保持する前輪載置部を有する第1の治具と、
前記第1の車両の後輪を保持する後輪載置部を有する第2の治具と、を備え、
前記後輪載置部は、前記コンテナの高さ方向において前記第1の車両の後に前記コンテナに積み込まれた第2の車両のシャーシよりも高い位置とされ、
前記前輪載置部は、前記高さ方向において前記コンテナの床面より高く前記後輪載置部より低い位置とされ、
前記前輪載置部は、
前記第1の車両の前輪を載置する載置面が形成されている金属製の架台部と、
前記載置面における、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に穴を形成する金属製の収納部と、
前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の進行方向側に位置し、当該前輪の進行方向側への移動を規制する第1の保持部と、
前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に位置し、当該前輪の後退方向側への移動を規制する木製の第2の保持部と、
前記第2の保持部が着脱可能に取り付けられ、前記収納部により形成された穴に着脱可能に挿入される木製の取付部材と、を備え、
前記収納部の開口端は、前記高さ方向において前記載置面よりも低い位置とされる
車両保持装置。
【請求項2】
前記コンテナの床面から前記前輪載置部に前記第1の車両の前輪を誘導するための傾斜が形成され、持ち運びが可能とされるスロープを備える
請求項1に記載の車両保持装置。
【請求項3】
前記スロープは複数の部材により形成される
請求項2に記載の車両保持装置。
【請求項4】
前記スロープは積層段ボールにより形成される
請求項3に記載の車両保持装置。
【請求項5】
コンテナに運び込まれた第1の車両の前輪を保持する前輪載置部を有する第1の治具と、前記第1の車両の後輪を保持する後輪載置部を有する第2の治具と、前記コンテナの床面から前記前輪載置部に前記第1の車両の前輪を誘導するための斜面が形成され、持ち運びが可能とされるスロープと、第2の車両の前輪を保持する第3の治具と、前記第2の車両の後輪を保持する第4の治具と、を備え、前記後輪載置部は、前記コンテナの高さ方向において前記第1の車両の後に前記コンテナに積み込まれた第2の車両のシャーシよりも高い位置とされ、前記前輪載置部は、前記高さ方向において前記コンテナの床面より高く前記後輪載置部より低い位置とされ、前記前輪載置部は、前記第1の車両の前輪を載置する載置面が形成されている金属製の架台部と、前記載置面における、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に穴を形成する金属製の収納部と、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の進行方向側に位置し、当該前輪の進行方向側への移動を規制する第1の保持部と、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に位置し、当該前輪の後退方向側への移動を規制する木製の第2の保持部と、前記第2の保持部が着脱可能に取り付けられ、前記収納部により形成された穴に着脱可能に挿入される木製の取付部材と、を備え、前記収納部の開口端は、前記高さ方向において前記載置面よりも低い位置とされる車両保持装置を用いて、
前記第1の治具を前記コンテナの奥側の内壁に接触するように配置する工程と、
前記スロープを前記前輪載置部に連続して配置する工程と、
前記第1の車両の前輪を前記コンテナの床面から前記スロープを介して前記前輪載置部に進行させ、前記前輪載置部により前記第1の車両の前輪を保持させる工程と、
前記第1の車両の後輪を持ち上げて前記後輪載置部に載置することで、前記後輪載置部により前記第1の車両の後輪を保持させる工程と、
前記第2の車両のシャーシの後端部を前記コンテナの床面と前記第1の車両のシャーシとの間に形成された空間に進入させる工程と、
前記第2の車両の前輪を前記第3の治具により保持し、前記第2の車両の後輪を前記第4の治具により保持する工程と、を備える
積載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を保持する車両保持装置及び当該車両保持装置を用いてコンテナに車両を積載する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送用のコンテナに複数の車両を積載して輸送することが広く行われている。
例えば引用文献1には、輸送用のコンテナに2台の車両を積載するための装置や、その装置を用いた車両の積載方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-161189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輸送用のコンテナは、ISO規格(International Organization for Standardization)によりそのサイズが規格化されているため、積載できる車両の台数に限りがある。
一方で、コンテナに積載できる車両の台数を増やすことができれば、コンテナの数量に対してより多くの車両を輸送できるようになり、輸送コストを削減し、輸送効率を向上させることができる。
【0005】
そこで本発明では、コンテナに対してより多くの車両を積載するための車両保持装置、及び当該車両保持装置を用いてコンテナに車両を積載する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両保持装置は、コンテナに運び込まれた第1の車両の前輪を保持する前輪載置部を有する第1の治具と、前記第1の車両の後輪を保持する後輪載置部を有する第2の治具と、を備え、前記後輪載置部は、前記コンテナの高さ方向において前記第1の車両の後に前記コンテナに積み込まれた第2の車両のシャーシよりも高い位置とされ、前記前輪載置部は、前記高さ方向において前記コンテナの床面より高く前記後輪載置部より低い位置とされ、前記前輪載置部は、前記第1の車両の前輪を載置する載置面が形成されている金属製の架台部と、前記載置面における、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に穴を形成する金属製の収納部と、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の進行方向側に位置し、当該前輪の進行方向側への移動を規制する第1の保持部と、前記架台部に載置された前記第1の車両の前輪の後退方向側に位置し、当該前輪の後退方向側への移動を規制する木製の第2の保持部と、前記第2の保持部が着脱可能に取り付けられ、前記収納部により形成された穴に着脱可能に挿入される木製の取付部材と、を備え、前記収納部の開口端は、前記高さ方向において前記載置面よりも低い位置とされる
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両を積載したコンテナについて輸送コストの削減や輸送効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態におけるコンテナ及び車両の概要を示す図である。
図2】実施の形態のコンテナに車両が積み込まれた状態、及びコンテナにおける車両保持装置の配置を示す図である。
図3】実施の形態の第1の治具の平面図、正面図及び右側面図である。
図4】実施の形態の第1の治具の概要を示す図である。
図5】実施の形態の第1の治具の概要を示す図である。
図6】実施の形態の第1の治具及びスロープを示す図である。
図7】実施の形態の第2の治具の平面図、正面図及び右側面図である。
図8】実施の形態の輪止め部の概要を示す図である。
図9】実施の形態のコンテナに車両を積み込む工程を示す図である。
図10】実施の形態のコンテナに車両を積み込む工程を示す図である。
図11】実施の形態のコンテナに車両を積み込む工程を示す図である。
図12】実施の形態のコンテナに車両を積み込む工程を示す図である。
図13】実施の形態のコンテナに車両を積み込む工程を示す図である。
図14】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図15】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図16】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図17】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図18】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図19】実施の形態のコンテナに車両を積み降ろす工程を示す図である。
図20】実施の形態の比較例としてコンテナに車両を積み込む例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図1から図20を参照して説明する。
なお、図面に記載された構成は、本実施の形態を実現するにあたり必要な部分及びその周辺の構成を抽出して模式的に示したものである。従って、図面に記載された各構造の寸法、比率等は一例に過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。
【0010】
図1及び図2に示すように、コンテナ100には複数の車両200が積み込まれる。車両200を積み込んだコンテナ100は、船舶や貨物自動車、貨物列車などにより目的地に運ばれる。
【0011】
なお、以下の説明にあたり、コンテナ100において車両200を運び入れる方向を奥方向、車両200を運び出す方向を手前方向とし、奥方向及び手前方向を前後方向として示すものとする。また奥方向を基準に左右方向を示すものとする。さらに、コンテナ100の底面側から天面側に向かう方向を上方向として上下方向を示すものとする。
上下方向について下方側からみた上方を高さとして示すこともある。また、ここでいう高さは、特に断りがない限り、コンテナ100の床面107からの高さを意味する。
【0012】
コンテナ100は、例えばISO規格により規格化された40フィートの長さのものである。この40フィートサイズのコンテナ100の内寸としては、前後方向の長さが12035mm、左右方向の幅が2340mm、上下方向の高さが2696mmとされている。
【0013】
コンテナ100は、前後方向に長い箱状に形成され、手前側に開口する開口部101が形成されている。コンテナ100は、奥側に位置し前後方向を向く前面壁102と、上下方向を向き上下に離隔して位置した前後方向に長い底面壁103及び天面壁104と、左右方向を向き左右に離隔した左側面壁105及び右側面壁106と、開口部101を塞ぐ着脱可能な後面壁(不図示)とを備えている。
【0014】
底面壁103には、コンテナ100の内部に表出する床面107が形成されている。
床面107は、例えば木材で形成され、他の部材を釘打ちすることで取り付けることができる。
【0015】
車両200は、例えばトラックなどの貨物自動車であり、ドライバーが乗車するキャビン201と、運送する貨物を載せるためのシャーシ202とを備えている。また車両200には、前方に1対の前輪203,203が設けられ、後方に一対の後輪204,204が設けられている。車両200の前後方向における全長は、車種によっても異なるがコンテナ100の前後方向における長さの3分の1よりも長くされ、例えば4500mmから5000mmである。本実施の形態における車両200の前後方向における全長は、例えば4710mmや4860mmなどである。
【0016】
なお、本実施の形態ではコンテナ100に3台の車両200が積み込まれる。
そのため、説明の便宜上、図2Aに示すように各車両200を第1の車両200a(キャビン201a、シャーシ202a、前輪203a及び後輪204a)、第2の車両200b(キャビン201b、シャーシ202b、前輪203b及び後輪204b)、第3の車両200c(キャビン201c、シャーシ202c、前輪203c及び後輪204c)と表記して区別する。
【0017】
図2A及び図2Bに示すように、車両保持装置10は、コンテナ100の内部に配置され、コンテナ100に運び入れた車両200の車輪を保持する。
【0018】
車両保持装置10は、第1の治具11及び第2の治具12を備えている。
第1の治具11は、コンテナ100の床面107の奥側の端部に配置され、第1の車両200aの前輪203aが載置可能となっている。前輪203aは第1の治具11に載置され保持される。これにより、コンテナ100における前輪203aの位置決めが行われる。
【0019】
また、第1の治具11における前輪203aが載置される位置は、床面107から上方に離隔した位置とされる。例えば、床面107から370mm程の高さに前輪203aが位置される。
【0020】
第2の治具12は、床面107において第1の治具11よりも手前に配置され、第1の車両200aの後輪204aが載置可能とされる。後輪204aは第2の治具12に載置され保持される。これにより、コンテナ100における後輪204aの位置決めが行われる。
【0021】
また、第2の治具12において後輪204aが載置される位置は、床面107から上方に離隔した位置とされる。例えば床面107から900mm程の高さに後輪204aが位置される。このとき、第2の治具12の高さは、第1の治具11の高さよりも高くされている。
【0022】
このように、後輪204aが載置される位置が、第2の治具12により床面107から離隔されることで、第1の車両200aのシャーシ202aと、床面107との間に第2の車両200bのシャーシ202bを運び込む空間を確保することができる。
【0023】
また、前輪203aが載置される位置が、第1の治具11により床面107から離隔されていることから、シャーシ202aと床面107との間に形成される空間が上下方向にさらに大きく確保され、シャーシ202bの後端部205bをより奥側に運び込むことができるようになっている。
【0024】
第2の車両200bをより奥側に運び込むことで、コンテナ100の前後方向における空間をより大きく確保することができるようになり、コンテナ100に第3の車両200cを積み込むことができるようになる。
【0025】
車両保持装置10は、さらに一対のスロープ13、13を備えている。
スロープ13の上面には斜面13aが形成されており、斜面13aを第1の車両200aの前輪203aが進行できるようになっている。
床面107において第1の治具11に隣接するようにスロープ13を配置することで、第1の車両200aをコンテナ100に運び込む際に、スロープ13に乗り上げた前輪203aを第1の治具11に誘導することができる。また、第1の車両200aを運び出す際に、前輪203aを第1の治具11から床面107に誘導することができる。
なお、図2Aでは説明の便宜上、スロープ13が取り付けられた状態を図示したが、第1の車両200aの前輪203aと後輪204aが第1の治具11と第2の治具12により保持された状態においては取り外されていることが望ましい。
【0026】
車両保持装置10は、さらに第3の治具14及び第4の治具15を備えている。
第3の治具14は、コンテナ100の床面107において第2の治具12よりも手前に配置され、第2の車両200bの前輪203bは第3の治具14に配置されることで保持される。これにより、コンテナ100における前輪203bの位置決めが行われる。
【0027】
第4の治具15は、コンテナ100の床面107において第2の治具12よりも奥かつ第1の治具11よりも手前、すなわち第1の治具11と第2の治具12の間に配置される。第2の車両200bの後輪204bは第4の治具15に配置されることで保持される。これにより、コンテナ100における後輪204bの位置決めが行われる。
【0028】
車両保持装置10は、さらに第5の治具16及び第6の治具17を備えている。
第5の治具16は、コンテナ100の床面107において第6の治具17よりも手前に配置され、第3の車両200cの前輪203cが載置可能となっている。前輪203cは第5の治具16に載置されることで保持される。これにより、コンテナ100における前輪203cの位置決めが行われる。
【0029】
第6の治具17は、コンテナ100の床面107において第3の治具14よりも手前に配置され、第3の車両200cの後輪204cは第6の治具17に載置されることで保持される。これにより、コンテナ100における後輪204cの位置決めが行われる。
【0030】
以上のように、3台の車両200(200a、200b、200c)が車両保持装置10により保持された状態で、コンテナ100が輸送される。
なお、図示は省略するが、コンテナ100の輸送にあたり、3台の車両200(200a、200b、200c)にはラッシングが行われている。ラッシングとは、輸送などにおいて荷崩れすることを防ぐために、貨物、荷物などをロープ、チェーンなどの締結具を用いて固縛することをいう。
【0031】
第1の治具11、第2の治具12、スロープ13、第3の治具14、第4の治具15、第5の治具16及び第6の治具17の詳細について、図3から図8を参照して説明する。
【0032】
なお、以下の説明にあたり、図2A及び図2Bに示すコンテナ100に配置された状態を基準として、第1の治具11、第2の治具12、スロープ13、第3の治具14、第4の治具15、第5の治具16及び第6の治具17のそれぞれにおける前後方向(奥方向及び手前方向)、左右方向及び上下方向(高さ)を示すものとする。
【0033】
第1の治具11の詳細について、図3から図6を参照して説明する。特に図3について、図3Aは第1の治具11の平面図を示しており、図3Bは手前側からみた第1の治具11の正面図を示している。また、図3Cは第1の治具11の右側面図を示している。なお、第1の治具11の構造は、左右方向の中央における前後方向を対象軸とした場合に線対称であるため、左側面図の図示は省略する。
【0034】
第1の治具11は、図3に示すように、位置決め部21及び前輪載置部22,22を備える。
位置決め部21は、左右方向に延びる当接部材211及び規制部材221と、前後方向に延びる側枠部材212,213とを備えている。当接部材211、規制部材221及び側枠部材212,213は、例えば金属製の角型鋼管である。
【0035】
当接部材211は第1の治具11の奥側の縁部に位置し、規制部材221は当接部材211の手前側に離隔して位置している。また、側枠部材212,213は互いに左右方向に離隔して位置している。
【0036】
当接部材211には、左右方向における両端部に側枠部材212,213の奥側の端部がそれぞれ取り付けられている。また、側枠部材212,213の手前側の端部は、規制部材221にそれぞれ取り付けられている。当接部材211、規制部材221及び側枠部材212,213により、枠部223が形成される。
【0037】
コンテナ100に第1の治具11を配置するにあたり、前面壁102の内面102aに当接部材211を接触させることで、コンテナ100における第1の治具11の位置決めが行われる(図2参照)。
【0038】
また、規制部材221は当接部材211よりも左右方向に長いため、規制部材221において枠部223から左右方向のそれぞれに突出する規制突部215,215が形成される。
コンテナ100の床面107に第1の治具11を配置した状態において、図2Bに示すように規制突部215,215のそれぞれの手前側に第1の固定部材23,23が取り付けられる。第1の固定部材23は、例えば木製の角材であり、床面107に釘打ちすることで取り付けられる。
【0039】
これにより、コンテナ100の内面102aと第1の固定部材23,23との間に第1の治具11が保持され、第1の治具11の前後方向における移動が規制される。なお、第1の固定部材23は、釘を抜くことで容易に取り外すことができる。
【0040】
位置決め部21は、さらに左右方向に延びる後端部材224と、前後方向に延びる補強部材225とを備える。後端部材224及び補強部材225は、例えば金属製の角型鋼管である。
【0041】
後端部材224は、規制部材221の手前側に離隔して位置している。また、補強部材225は、一端が規制部材221の中央に取り付けられ、他端が後端部材224の中央に取り付けられている。
【0042】
また前後方向に離隔する規制部材221と後端部材224の間に形成された空間において、左右方向における両端部に前輪載置部22,22がそれぞれ配置される。何れの前輪載置部22も、奥側の端部が規制部材221に取り付けられ、手前側の端部が後端部材224に取り付けられている。
【0043】
前輪載置部22は、図4に示すように、架台部232、第1の保持部242、収納部250及び取付部材262,263及び第2の保持部264を備えている。前輪載置部22は、位置決め部21よりも高さが高くされている。
【0044】
架台部232は、前後方向に延びる直方体状に形成されている。架台部232を構成する前後、左右及び上下における各面は、例えば複数の金属製の角型鋼管が互いに離隔して配置されることで形成されている。
架台部232の上面が、図5に示すような第1の車両200aの前輪203aを載置する際の載置面235として形成される。
【0045】
第1の保持部242は、載置面235の奥側の端部に形成されている。第1の保持部242の上面は、奥側に向かうに従って高くなる斜面242aとして形成される。
載置面235に前輪203aが載置された状態において、斜面242aに前輪203aが接触することで、前輪203aの奥方向への移動が規制される。
【0046】
載置面235の手前側の端部に形成される穴として、収納部250が設けられている。
収納部250は金属製であり、左右方向に長い箱状に形成され上方に開口し、前後方向を向き前後に離隔した後面部251及び前面部252と、下側に位置し上下方向を向く下面部253と、左右方向を向き左右に離隔して位置した左側面部254及び右側面部255と、を備えている。
【0047】
図4に示す収納部250の開口端256は、架台部232の載置面235の高さよりも低い位置に設けられている。これは収納部250に収納する複数の取付部材262,263の取り出しを容易にするためである。
【0048】
複数の取付部材262,263及び第2の保持部264は、例えば左右方向に延びる木製の角材である。
取付部材262,263を収納部250に収納することで、金属製の載置面235の平面上に、木製の取付部材262,263の上面が表出される。この上面は、第1の車両200aの前輪203aが進行できるようになっており、前輪203aは、図6に示すようなスロープ13の斜面13aに続き取付部材262,263の上面を通過した後、載置面235に載置される。
【0049】
例えば釘265,265を打ち込むことにより、手前側の端部に位置する取付部材263に対して、第2の保持部264が取り付けられる。これにより、図5に示すように第2の保持部264が載置面235の平面から上方向に突出した状態となる。
【0050】
ここで、第1の車両200aの前輪203aが載置面235に載置された状態において、前輪203aの奥方向への移動が第2の保持部264により規制される。従って、第1の保持部242と第2の保持部264により前輪203aが保持される。
【0051】
また、釘265,265を抜くことで取付部材263に固定されていた第2の保持部264を取り外すことができる。これにより、前輪203aの手前方向における移動の規制を容易に解除することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、収納部250に2つの取付部材262,263を収納する例について説明したが、収納部250に収納される取付部材は、1の部材として収納されていてもよいし、3以上の部材として収納されていてもよい。
【0053】
第2の治具12の詳細について図2及び図7を参照して説明する。特に図7において、図7Aは第2の治具12の平面図を示しており、図7Bは手前側からみた第2の治具12の正面図を示している。また、図7Cは第2の治具12の右側面図を示している。なお、第2の治具12の構造は、左右方向の中央における前後方向を対象軸とした場合に線対称であるため、左側面図の図示は省略する。
【0054】
第2の治具12は、左右方向に延びる後輪載置部31と、後輪載置部31の左右の両端にそれぞれ設けられた支持部32,32とを備えている。後輪載置部31及び支持部32,32は例えば金属製の部材により形成されている。
【0055】
支持部32は、前後方向に延びる天面部材321と、上下方向に延びる脚部材322,322と、前後方向に延び天面部材321と同じ長さの底面部材323と、複数の補強部材324,325,326とを備えている。
【0056】
底面部材323の前後方向における両端には脚部材322,322の一端が取り付けられており、天面部材321の前後方向における両端には脚部材322,322の他端が取り付けられている。
【0057】
天面部材321、脚部材322,322及び底面部材323により、支持部32は長方形状の枠として形成される。補強部材326は、当該枠の対角線に対応するように取り付けられる。
【0058】
また、補強部材324は天面部材321と脚部材322との間に斜交いさせるようにして取り付けられ、補強部材325は底面部材323と脚部材322との間に斜交いさせるようにして取り付けられる。
【0059】
後輪載置部31は、左右方向に延びるアングル311,312と、左右方向に延びる車輪受けレール314,315と、前後方向に延びる補強部材313,313,313とを備えている。
【0060】
支持部32,32に対して、アングル311,312が橋渡しするように載置されて取り付けられている。アングル311とアングル312は、前後方向に離隔している。
アングル311は、その屈曲部分の縁が支持部32,32の奥側の端部に沿うようにして位置されている。またアングル312は、その屈曲部分の縁が支持部32,32の手前側の端部に沿うようにして位置されている。
【0061】
またアングル311,312に対しては、それぞれ車輪受けレール314,315を取り付ける。車輪受けレール314,315は、例えば断面形状が長方形の角パイプ材であり、その長方形の長辺に対応する面を、アングル311,312の端部に宛がうように取り付けられることで、もう一方の長方形の長辺に対応する面314a,315aが、互いに斜め内側を向くようにされている。
【0062】
補強部材313,313,313は、車輪受けレール314,315に橋渡すようにして、互いに左右方向に離隔して取り付けられている。これにより、支持部32,32の天面部材321,321と、アングル311,312とにより形成される枠の強度を高めることができる。
【0063】
第1の車両200aの後輪204aが車輪受けレール314,315に載置される。具体的には、一対の後輪204a,204aはそれぞれ天面部材321と補強部材313の間に載置される
【0064】
このとき、車輪受けレール314,315の面314a,315aが互いに斜め内側を向いていることで、後輪204aが載置されたときに、車輪受けレール314,315の角が後輪204aの押し付けられることなく面314a,315aに当たるようになるため、後輪204aに対して圧力の集中を分散させることができる。
【0065】
また図2Bに示すように、コンテナ100の床面107に第2の治具12を配置した状態において、第2の治具12の左右方向における両端部の奥側に第2の固定部材24,24が取り付けられ、手前側に第3の固定部材25,25が取り付けられている。
【0066】
第2の固定部材24及び第3の固定部材25は、例えば木製の角材であり、床面107に釘打ちすることで固定される。第2の固定部材24,24と第3の固定部材25,25の間に第2の治具12が保持されることで、第2の治具12の前後方向における移動が規制される。
【0067】
一対のスロープ13,13の詳細について図2及び図6を参照して説明する。
スロープ13には、前後方向に延び奥方向に進むに従って高さが大きくなる斜面13aが形成されている。
【0068】
スロープ13,13の高さが高い方の端部を第1の治具11の前輪載置部22,22にそれぞれ接触させ、斜面13a,13aに第1の車両200aの前輪203a,203aを進行させることで、前輪203a,203aを第1の治具11の載置面235,235まで誘導することができる。
【0069】
スロープ13は、複数の部材により形成することができる。例えばスロープ13は、第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133により形成される。このとき、第1の治具11の前輪載置部22の手前側の端部から、第1の部材131、第2の部材132、第3の部材133は持ち運び可能とされ、第1の部材131、第2の部材132、第3の部材133をコンテナ100の床面107に互いに隣接させて並べることで斜面13aが形成される。
このようにスロープ13を複数の部材に分割することで、コンテナ100の内部という狭い空間であってもスロープ13の運び込みや設置を容易に行うことができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、一例として第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133の3つの部材からスロープ13が形成される例について説明したが、スロープ13は、2又は4以上の部材によって形成されていてもよい。
【0071】
またスロープ13の材質には積層段ボールが用いられている。積層段ボールは、例えば波型状に成形された中芯をライナーで挟み込んで作られる単層ダンボールの積層構造である。スロープ13では、積層段ボールの波型状に成形された中芯の開口が上下方向に設けられるようになっている。積層段ボールは、第1の車両200aの重さに耐えうる強度を有する上に軽量であるため、スロープ13の材質として適している。
【0072】
第3の治具14、第4の治具15、第5の治具16及び第6の治具17として、輪止め部5が用いられる。そこで、輪止め部5の詳細について図2及び図8を用いて説明する。
なお、輪止め部5については、図8に示すようにコンテナ100の左側に配置される構造を抽出して説明する。輪止め部5におけるコンテナ100の右側に配置される構造については、左右方向の中央における前後方向を対象軸とした場合に左側の構造と線対称になるため、説明を省略する。
【0073】
輪止め部5は、図8A及び図8Bに示すように、左右方向に延びる第1の規制部51及び第2の規制部52と、前後方向に延びる補強部53とを備えている。第1の規制部51、第2の規制部52及び補強部53は、例えば木製の角材により形成されている。
【0074】
コンテナ100に運び込んだ車両200の積載位置が決まると、車両200の車輪(前輪203又は後輪204)の前方に第1の規制部51が配置され、後方に第2の規制部52が配置される。第1の規制部51と第2の規制部52のそれぞれの両端部に例えば釘が打ち込まれることで、第1の規制部51及び第2の規制部52がコンテナ100の床面107に取り付けられる。
第1の規制部51及び第2の規制部52により車輪(前輪203又は後輪204)が保持されることで、当該車輪の前後方向における移動が規制される。
【0075】
また、第1の規制部51と第2の規制部52の左側の端部には、補強部53が例えば釘打ちにより取り付けられている。このように、輪止め部5は、第1の規制部51、第2の規制部52及び補強部53によりコの字型に形成されている。
一対の車輪を保持するために設けられた左右の輪止め部5,5における補強部53,53により、当該車輪の左右方向における移動が規制される。
【0076】
次に、コンテナ100における車両保持装置10を用いた3台の車両200(200a,200b,200c)の積載方法について、図9から図19を参照して説明する。
なお、ここでいう積載方法には、車両200の積み込みの工程のみならず車両200の積み降ろしの工程も含まれる。また、以下の説明において、コンテナ100に車両200を積み込むことをバンニング(vanning)、車両200を積み降ろすことをデバンニング(devanning)とも表記する。
【0077】
複数の車両200のバンニングの各工程について図9から図13を参照して説明する。
まず図9Aに示すように、フォークリフト400によりコンテナ100の内部に第1の治具11を運び入れる。このとき第1の治具11は、フォークリフト400のフォーク401に載置されている。
【0078】
フォークリフト400により運び込まれた第1の治具11は、図9Bに示すように、当接部材211が前面壁102の内面102aに接触した状態で、床面107に配置される。
【0079】
その後、スロープ13が、前輪載置部22の手前側の側面にスロープ13の奥側の側面が接触するように隣接して配置される。このとき、コンテナ100の内部に第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133が持ち込まれ、各部材が順に配置されることでスロープ13が形成される。
【0080】
スロープ13を配置した後、図10Aに示すように、第1の車両200aをコンテナ100の内部に運び込む。第1の車両200aは自走によりコンテナ100の内部を進行する。床面107を進行する前輪203aは、スロープ13の斜面13aに乗り上げ、第1の治具11の第1の保持部242に接触する位置で進行を止める。このとき第1の保持部242により前輪203aの進行方向への移動が規制される。
【0081】
そして、図10Bに示すように、前輪載置部22の収納部250から表出した取付部材263に釘265が打ち込まれて第2の保持部264が取り付けられる。第2の保持部264を取り付けることで、前輪203aの後退方向への移動が規制される。第1の保持部242と第2の保持部264により前輪203aが保持される。
【0082】
またこのとき、床面107に配置されたスロープ13を取り外す。このとき、第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133がそれぞれ順に持ち運ばれることでスロープ13が取り外される。
【0083】
なお、第2の保持部264の取り付けとスロープ13の取り外しはどちらからでも行うことができるが、第2の保持部264が取り付けられて前輪203aの後退が規制されている状態でスロープ13を取り外したほうがより安全といえる。また、スロープ13は配置したままにしておくこともできるが、コンテナ100の輸送中などにスロープ13が移動してしまうおそれがあるため、第1の車両200aの積み込みの際に取り外しておくことが望ましい。
【0084】
さらに、本図では図示を省略するが、第1の治具11の規制突部215,215の手前側に、第1の固定部材23,23が固定される(図2B参照)。第1の固定部材23,23は、床面107に釘を打ち込むことで取り付けられる。これにより、コンテナ100の内面102aと第1の固定部材23,23との間に第1の治具11が保持される。
【0085】
その後、図11Aに示すように、コンテナ100の内部に第2の治具12を運び入れ、第1の車両200aのシャーシ202aの後方に天面317が床面107に接触するようにして仮置きしておく。第2の治具12はコの字型の形状とされているため(図7参照)、天面317を床面107に置いた状態では、左右の支持部32,32の間にシャーシ202aを収めることができる。
【0086】
続いて、図11Bに示すように、シャーシ支持具402をフォーク401に取り付けたフォークリフト400をコンテナ100の内部に進入させる。このときのシャーシ支持具402は、フォーク401の先端側において位置される。
シャーシ支持具402は、フォーク401が上昇したときにその上端がコンテナ100の天井に当たらないようにして、シャーシ202aの後端部205aを所要高にまで持ち上げることができるようにする目的で使用するものである。つまり、シャーシ支持具402の高さは、後端部205aを所要高にまで持ち上げたときに、フォーク401の上端がコンテナ100の天井よりも低くなるように設定されている。
【0087】
シャーシ支持具402をシャーシ202aの後端部205aに宛がい、そのままフォーク401を上昇させる。これにより、コンテナ100において、第1の車両200aは、前輪203aの回転軸を支点とするようにして、シャーシ202aの後端部205aが持ち上げられていくことになる。なお、前輪203の回転軸の動きが規制されないように、ここでは第1の車両200aのサイドブレーキは効かせないようにしている。
【0088】
シャーシ支持具402により後端部205aを所定の高さにまで持ち上げた状態を維持したうえで、仮置きしていた第2の治具12を正しい天地の状態、つまり底面316が床面107に接触する状態に置き直す。
【0089】
そして、第2の治具12の位置を調整した後、フォーク401を下げて、第2の治具12の天面317に設けられた車輪受けレール314,315に第1の車両200aの後輪204a,204aが載置されるように、持ち上げていたシャーシ202aの後端部215aを降下させる。これにより、後輪204a,204aが第2の治具12により保持された状態となる。
【0090】
なお、図示は省略するが、このとき第1の車両200aについてのラッシング作業が行われる。ここではロープなどの締結具を用いて、前輪203a、203aの各近傍における所定部分と、コンテナ100の底面壁103とを固縛する。また、後輪204a、204aの各近傍における所定部分と、コンテナ100の底面壁103とを締結具を用いて固縛する。さらに、シャーシ202aの後端部205aの所定部分と天面壁104を締結具により固縛する。
【0091】
フォークリフト400は、シャーシ202aの後端部205aを降ろし終えると、後退しながらコンテナ100の外に出る。
【0092】
上述の通り第1の車両200aの積み込みが完了すると、図12Aに示すように、第2の車両200bが自走により後退しながら運び込まれる。このとき、シャーシ202bの後端部205bがシャーシ202aと床面107との間に形成される空間に運び込まれる。
【0093】
運び込まれた第2の車両200bを保持するために、図12Bに示すように、前輪203b,203bに第3の治具14,14を取り付け、後輪204b,204bに第4の治具15,15を取り付ける。
第3の治具14及び第4の治具15には輪止め部5が用いられ(図8参照)、前輪203b及び後輪204bのそれぞれが輪止め部5により保持される。ここでは前輪203d(後輪204b)の奥側及び手前側に、第1の規制部51及び第2の規制部52がそれぞれ配置され、釘打ちにより補強部53とともに床面107に取り付けられる。
【0094】
なお、図示は省略するが、ここで第2の車両200bについてのラッシング作業が行われる。第1の車両200aのときと同様に締結具を用いて、前輪203b、203bの各近傍における所定部分と、コンテナ100の底面壁103とを固縛する。また、同じく締結具を用いて、後輪204b、204bの各近傍における所定部分と、コンテナ100の底面壁103とを固縛する。
【0095】
上述の通り第2の車両200bの積み込みが完了すると、図13Aに示すように、第3の車両200cが自走により後退しながら運び込まれる。そして、運び込まれた第3の車両200cを保持するために、図13Bに示すように、前輪203c,203cに第5の治具16,16を取り付け、後輪204c,204cに第6の治具17,17を取り付ける。
第5の治具16及び第6の治具17には輪止め部5が用いられ(図8参照)、前輪203c及び後輪204cのそれぞれが輪止め部5により保持される。
なお、図示は省略するが、ここでも第2の車両200bと同様にして、第3の車両200cについてのラッシング作業が行われる。
【0096】
以上により、コンテナ100に3台の車両200(200a,200b,200c)が積み込まれ、バンニングの工程が完了する。
【0097】
続いて、複数の車両200のデバンニングの各工程について図14から図19を参照して説明する。
【0098】
まず第3の車両200cについてラッシングされている結束具を切断し、図14Aに示すように、前輪203c及び後輪204cを保持している第5の治具16及び第6の治具17を取り外す。第5の治具16及び第6の治具17は、取り付ける際に打ち込まれた釘を床面107から抜くことで取り外される。そして、図14Bに示すように、自走により進行させることで第3の車両200cをコンテナ100の外に積み降ろす。
【0099】
第3の車両200cの積み降ろしの後、第2の車両200bについてラッシングされている結束具を切断し、図15Aに示すように前輪203b及び後輪204bを保持している第3の治具14及び第4の治具15を取り外す。そして、図15Bに示すように自走により進行させることで第2の車両200bをコンテナ100の外に積み降ろす。
【0100】
第2の車両200bの積み降ろしの後、第2の治具12を保持していた第2の固定部材24及び第3の固定部材25を取り外す(図2B参照)。第2の固定部材24及び第3の固定部材25は、取り付ける際に打ち込まれた釘を床面107から抜くことで取り外される。そして、第1の車両200aを固縛している締結具(不図示)のうち、底面壁103と締結されている結束具を切断する。このとき、作業中にシャーシ202aが落下することを規制するため、後端部205aと天面壁104を締結する結束具は切断せずに残しておく。
【0101】
その後、図16Aに示すように、第1の治具11において前輪203aの手前方向への移動を規制していた第2の保持部264を取り外す。ここでは収納部250に収納された取付部材163から釘を抜くことで第2の保持部264を容易に取り外すことができる。
【0102】
そして、スロープ13が、その奥側の側面が前輪載置部22の手前側の側面に接触するように隣接して配置される。このとき、コンテナ100の内部に作業者により第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133が持ち込まれ、各部材を順に配置することでスロープ13が形成される。
【0103】
スロープ13を配置した後、図17Aに示すように、シャーシ支持具402をフォーク401に取り付けたフォークリフト400を前進させて、コンテナ100の内部に進入させる。フォーク401を上昇させシャーシ支持具402をシャーシ202aの後端部205aに宛がうことで、後端部205aの高さが維持されたまま第1の車両200aが保持される。
【0104】
シャーシ支持具402により後端部205aが支持された状態を維持したうえで、後端部205aと天面壁104を締結する結束具を切断する。そして、仮置きしていた第2の治具12を取り外し、天地を反対にした状態、つまり天面317が床面107に接触する状態にして、後端部205aよりも手前側に置き直す。
【0105】
第2の治具12はコの字型の形状とされているため(図7参照)、天面317を床面107に置いた状態では、左右の支持部32,32の間にフォーク401を収めることができる。その後、フォーク401を降下させることで、前輪203aの回転軸を支点とするようにして、シャーシ202aの後端部205aを降下させ、後輪204aをコンテナ100の床面107に接触させる。
【0106】
その後、フォークリフト400を自走により後退させコンテナ100の外に退去させ、第2の治具12をコンテナ100の外に運び出す。そして、図18に示すように第1の車両200aを自走により後退させる。このとき、第1の治具11の載置面235を走行する前輪203aは、スロープ13の斜面13aにより床面107に誘導され、図18Bに示すようにコンテナ100の外に積み降ろされる。
【0107】
第1の車両200aの積み降ろしを終えると、床面107に配置されたスロープ13が取り外される。このとき、第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133がそれぞれ順に持ち運ばれることでスロープ13が取り外される。
【0108】
その後、図19Aに示すように、コンテナ100の内部にフォークリフト400が自走により侵入し、フォーク401に第1の治具11を載置してコンテナ100の外に運び出す。
【0109】
以上により、図19Bに示すように、コンテナ100に積載された3台の車両200(200a,200b,200c)が積み降ろされ、デバンニングの工程が完了する。
【0110】
以上の実施の形態によれば、車両保持装置10は、コンテナ100に運び込まれた第1の車両200aの前輪203aを保持する前輪載置部22を有する第1の治具11と、第1の車両200aの後輪204aを保持する後輪載置部31を有する第2の治具12と、を備えている(図2図3及び図7参照)。
【0111】
ここで後輪載置部31は、コンテナ100の高さ方向において第1の車両200aの後にコンテナ100に積み込まれた第2の車両200bのシャーシ202bよりも高い位置とされ、かつ、前輪載置部22は、コンテナ100の高さ方向において床面107より高く後輪載置部31より低い位置とされていることが望ましい(図2参照)。
【0112】
後輪載置部31に第1の車両200aの後輪204bを載置することで、シャーシ202aと、床面107との間に第2の車両200bのシャーシ202bを運び込む空間が形成される。
【0113】
またさらに、前輪203aが載置される位置が、第1の治具11により床面107から離隔されることで、シャーシ202aと床面107との間に形成される空間が上下方向にさらに大きく確保される。これにより、シャーシ202bの後端部205bをコンテナ100のさらに奥側に運び込むことができ、コンテナ100における第3の車両200cを運び入れる前後方向の空間を確保することができる。
【0114】
一方、図20に示す比較例のように、第1の車両200aの前輪203aを保持する治具1がコンテナ100の床面107から離隔しておらず、前輪203aが床面107に当接した状態で保持されている例では、第2の車両200bの後端部205bをコンテナの奥まで十分に運び込むことができない。そのため、コンテナ100において第3の車両200cを運び入れる前後方向の空間が確保されず、第3の車両200cを運び入れてもキャビン201cの一部がコンテナ100の開口部101から長さMだけはみ出してしまい、積載することができない。
【0115】
これに対して本実施の形態の車両保持装置10では、上述したとおり第1の治具11に高さを持たせることで、比較例よりもコンテナ100の前後方向における空間を確保し、図2Aに示すように第3の車両200cの積み込みを実現している。
【0116】
このように、コンテナ100に、従来の2台よりも多い3台の車両200(200a,200b,200c)を積載することが可能となることで、コンテナ100の輸送コストの削減や輸送効率の向上を図ることができる。
例えば本実施の形態の車両保持装置10では、前後方向の長さが12035mmあるコンテナ100に全長が4710mmの車両200を3台積載するにあたり、コンテナ100の上下方向の高さが2696mmであるのに対して、第1の治具11の高さを370mmとし、第2の治具12の高さを900mとしたところ好適であった。このとき、第2の治具12の高さはコンテナ100の高さの3分の1よりも高くなり、第1の治具11の高さはコンテナ100の高さの8分の1よりも高くなっている。
【0117】
また本実施の形態の車両保持装置10においては、コンテナ100の床面107から前輪載置部22に第1の車両200aの前輪203aを誘導するための斜面13aが形成され、持ち運びが可能とされるスロープ13を備えることが望ましい(図2及び図6参照)。
【0118】
これにより、上述の理由から高さを設けてある第1の治具11の前輪載置部22に、第1の車両200aを自走させることで、その前輪203aを移動させることができる。
またスロープ13は持ち運び可能であるため、コンテナ100における車両200(200a,200b,200c)の積み込みにあたり、邪魔にならないように適宜取り外しておくことができる。
【0119】
また本実施の形態の車両保持装置10においては、スロープ13は複数の部材(例えば第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133)により形成されることが望ましい(図2及び図6参照)。
【0120】
これにより、スロープ13を各部材ごとに取り外すことができるようになる。コンテナ100に第1の車両200aが運び込まれた状態においては、第1の車両200aの側面とコンテナ100の左側面壁105(右側面壁106)との左右方向の幅は非常に狭くなっている。そのため、スロープ13を各部材ごとに分割して取り外せるようにすることで、取り外しを容易に行うことができる。
また、スロープ13を分割して軽い状態で運ぶことができるようになるため、持ち運び時の負担を軽減することができる。
【0121】
また本実施の形態の車両保持装置10において、スロープ13は積層段ボールにより形成されることが望ましい(図2及び図6参照)。
【0122】
積層段ボールは、第1の車両200aの重さに耐えうる強度を有する上に軽量である。そのため、コンテナ100にスロープ13を配置する際に、持ち運びや設置を容易に行うことができる。
また積層段ボールを用いると、第1の部材131、第2の部材132及び第3の部材133を並べて配置した際に互いの接触面に摩擦が発生することで、部材同士のずれが生じ難くなる。そのため、互いの部材を連結するための機構などを設ける必要なく、スロープ13として設置することができる。
【0123】
なお、スロープ13の材質は積層段ボールに限られず、金属や合成樹脂などを用いてもよい。ただし、金属は重量が大きくなりがちで持ち運ぶ際に負担が大きくなるおそれがあり、合成樹脂は第1の車両200aの重量によりひび割れのおそれがある。また積層段ボールと異なり、スロープ13の各部材を設置する際に互いの部材を連結するための機構を別途設ける必要がある。このような理由から、スロープ13には積層段ボールを用いることが望ましい。
【0124】
また本実施の形態の車両保持装置10において、前輪載置部22は、第1の車両200aの前輪203aを載置する金属製の架台部232と、架台部232に載置された前輪203aの進行方向側に位置し、前輪203aの進行方向側への移動を規制する第1の保持部242と、架台部232に載置された前輪203aの後退方向に位置し、前輪203aの後退方向への移動を規制する木製の第2の保持部264と、第2の保持部264が着脱可能の取り付けられている木製の取付部材262と、架台部232に載置された前輪203aの後退方向に位置し、取付部材262が収納されている金属製の収納部250と、を備えていることが望ましい(図4及び図5参照)。
【0125】
これにより、収納部250に収納された取付部材262が前輪載置部22の上面に表出され、当該表出された取付部材262に取り付けられた第2の保持部264により、第1の車両200aの前輪203aの後退方向への移動が規制される。
【0126】
第1の車両200aは、積み降ろしの際に後退する必要があるため、第2の保持部264は容易に着脱できることが望ましいが、架台部232は金属製であるため、第2の保持部264を容易に着脱可能とすることが難しい。
【0127】
そこで、第2の保持部264を木製の部材とし、第2の保持部264を取り付ける位置に収納部250を設け、収納部250に木製の取付部材262を収納することとした。これにより、第1の車両200aを保持する際には例えば釘265を打ち込むことで取付部材262に第2の保持部264を取り付け(図5参照)、第1の車両200aを移動させる際にはその釘265を抜くことで前輪203aの移動ができるようになる。従って、前輪203aの移動の規制及びその解除を容易に行うことができる。
【0128】
本実施の形態における積載方法は、車両保持装置10を用いて、第1の治具11をコンテナ100の奥側の内壁(前面壁102の内面102a)に接触するように配置する工程と、スロープ13を前輪載置部22に連続して配置する工程と、第1の車両200aの前輪203aを床面107からスロープ13を介して前輪載置部22に進行させ、前輪載置部22により第1の車両200aの前輪203aを保持させる工程と、後輪204aを持ち上げて後輪載置部31に載置することで、後輪載置部31により後輪204aを保持させる工程と、第2の車両200bのシャーシ202bの後端部205bを床面107と第1の車両200aのシャーシ202aとの間に形成された空間に進入させる工程と、第2の車両200bの前輪203bを第3の治具14により保持し、後輪204bを第4の治具15により保持する工程と、を備えている。
【0129】
このような積載方法によれば、シャーシ202bの後端部205bをコンテナ100のさらに奥側に運び込むことができ、コンテナ100における第3の車両200cを運び入れる前後方向の空間を確保することができる。従って、コンテナ100に、従来の2台よりも多い3台の車両200(200a,200b,200c)を積載することが可能となり、コンテナ100の輸送コストの削減や輸送効率の向上を図ることができる。
【0130】
最後に、本実施の形態において説明した効果は例示であって限定されるものではなく、他の効果を奏するものであってもよいし、効果の一部を奏するものであってもよい。また、本実施の形態で説明した構成の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【符号の説明】
【0131】
車両保持装置 10
第1の治具 11
第2の治具 12
スロープ13
前輪載置部 22
後輪載置部 31
コンテナ 100
床面 107
車両 200
第1の車両 200a
第2の車両 200b
第3の車両 200c
シャーシ 202,202a,202b,202c
前輪 203,203a,203b,203c
後輪 204,204a,204b,204c
架台部 232
第1の保持部 242
収納部 250
取付部材 262
第2の保持部 264
【要約】
【課題】輸送用のコンテナにより多くの車両を積載する。
【解決手段】車両保持装置は、コンテナに運び込まれた第1の車両の前輪を保持する前輪載置部を有する第1の治具と、前記第1の車両の後輪を保持する後輪載置部を有する第2治具と、を備え、前記後輪載置部は、前記コンテナの高さ方向において前記第1の車両の後に前記コンテナに積み込まれた第2の車両のシャーシよりも高い位置とされ、前記前輪載置部は、前記コンテナの高さ方向において前記コンテナの床面より高く前記後輪載置部より低い位置とされている。
【選択図】図2
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