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特許7626856透過X線源を用いた高スループット3D X線撮像システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】透過X線源を用いた高スループット3D X線撮像システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/044 20180101AFI20250128BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20250128BHJP
【FI】
G01N23/044
G01N23/046
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2023534315
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2021072695
(87)【国際公開番号】W WO2022126071
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】63/122,354
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/274,367
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516065870
【氏名又は名称】シグレイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】バイン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カーズ,ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガル,シェラズ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,シルビア・ジア・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スピンク,リチャード・イアン
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-309687(JP,A)
【文献】特開2005-233760(JP,A)
【文献】特開2003-329616(JP,A)
【文献】特開平08-061941(JP,A)
【文献】特開2012-112790(JP,A)
【文献】特開2013-042983(JP,A)
【文献】特開2015-058180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0228076(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0157841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体における関心領域の透過画像を生成するように構成された3次元X線撮像システムであって、前記システムは、
少なくとも1つのアクティブ要素を備える少なくとも1つの位置敏感型X線検出器と、
前記物体における前記関心領域から70ミリメートル未満の外面を有するX線透過真空窓を備えるX線源であって、少なくとも1つのX線ターゲットを有する前記X線源は、電子ビームが衝突することによって、前記電子ビームおよびX線伝搬軸を有する断面内の幅を有するX線スポットであって、前記X線伝搬軸が前記X線スポットから前記物体における前記関心領域を通って前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器の前記少なくとも1つのアクティブ要素まで延びているX線スポットから発散X線を生成するように構成され、前記発散X線の少なくとも一部は、前記真空窓から出射し、かつ前記X線伝搬軸に沿って伝搬し、前記少なくとも1つのアクティブ要素によって受信された前記発散X線は、前記X線伝搬軸を中心とする1度よりも大きい角度発散角内に伝搬経路を有し、前記X線伝搬軸は、前記真空窓の前記外面に対して第1の角度にあり、前記第1の角度は3度~45度の範囲にあり、前記X線スポットは、前記X線伝搬軸に沿って見た前記断面における有効幅を有し、前記有効幅は、前記幅よりも小さいX線源と、
回転軸を中心に前記物体を回転させるように構成され、前記回転軸が前記X線伝搬軸に対して第2の角度を有するように構成された少なくとも1つのサンプル移動ステージであって、前記第2の角度は45度~90度の範囲にある、少なくとも1つのサンプル移動ステージと、
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージ上のサンプルマウントであって、前記サンプルマウントは、前記物体を保持するように構成され、前記サンプルマウントは、前記物体を通って前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に伝搬する前記発散X線の少なくとも一部の前記伝搬経路内の第1の部分を備え、前記第1の部分は、前記発散X線のX線スペクトルの最大X線エネルギーの50%よりも大きいエネルギーを有するX線について、30%よりも大きいX線透過率を有する、サンプルマウントと
少なくとも1つの移動機構であって、前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器を前記物体に対して移動させ、前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器によって生成された前記物体の関心領域の画像の幾何学的倍率を変化させるように構成された、少なくとも1つの移動機構とを備える、システム。
【請求項2】
前記第2の角度は、45度以上の範囲にあり、前記回転軸は、前記真空窓の前記外面の表面法線に対して第3の角度であり、前記第3の角度は、30度未満の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第3の角度を変化させるように構成された機構をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記発散X線は、前記少なくとも1つのサンプル移動ステージと交差しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の部分は、14未満の原子番号を有する原子元素から構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記サンプルマウントは、前記第1の部分を前記少なくとも1つのサンプル移動ステージに機械的に結合する第2の部分をさらに備え、前記第1の部分および前記第2の部分は、前記発散X線が前記少なくとも1つのサンプル移動ステージまたは前記第2の部分に衝突しないように、前記少なくとも1つのサンプル移動ステージから前記物体の前記関心領域をオフセットするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージは、5マイクロラジアン未満の非系統的角度ウォブル、500ナノメートル未満の半径方向振れ、および500ナノメートル未満の軸方向振れを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージは、5マイクロラジアン未満の非系統的角度ウォブル誤差、1000ナノメートルよりも良好な半径方向振れ再現性、および1000ナノメートルよりも良好な軸方向振れ再現性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
1マイクロラジアン未満よりも良好な精度で前記少なくとも1つのサンプル移動ステージの角度ウォブルを測定し、1000ナノメートルよりも良好な精度で前記少なくとも1つのサンプル移動ステージの半径方向振れを測定し、および/または1000ナノメートルよりも良好な精度で前記少なくとも1つのサンプル移動ステージの軸方向振れを測定するように構成された計測システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記真空窓の前記外面に対する前記X線伝搬軸の前記第1の角度は、30度未満、5度未満、または3度未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記X線源は、
真空領域を含む真空チャンバであって、前記真空チャンバは、前記真空窓を備え、前記真空窓は、前記真空領域を前記X線源の外側の非真空領域から分離し、かつ前記少なくとも1つのX線ターゲットに接触する、真空チャンバと、
前記真空領域内の電子ビーム源と、
前記電子ビーム源からの少なくとも一部の電子を、前記少なくとも1つのX線ターゲットに集束された前記電子ビームに導くように構成された電子光学系であって、前記集束された電子ビームは、10kVp~250kVpの範囲内に前記少なくとも1つのX線ターゲットにおける最大集束電子エネルギーを有し、前記少なくとも1つのX線ターゲットは、前記集束された電子ビームによる照射に応答して前記発散X線を生成するように構成される、電子光学系とをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのX線ターゲットは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、W、Rh、Mo、Au、Pt、Ag、SrB、LaB、GdB、およびCeBからなる群から選択される少なくとも1つのX線発生材料を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのX線発生材料は、前記集束された電子ビームによって照射され得る複数の領域を有し、各領域は、前記真空窓の前記外面に垂直な方向に沿って対応する厚さを有し、スループットと分解能との間に異なるトレードオフを提供する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのX線発生材料は、前記真空窓に取り付けられ、前記真空窓の前記外面に垂直な方向に沿って0.1ミクロン~15ミクロンの範囲内の厚さを有し、前記真空窓は、前記真空窓の前記外面に垂直な前記方向に沿って0.05ミリメートル~3ミリメートルの範囲内の厚さを有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記真空窓は、ベリリウム、ダイヤモンド、炭化ホウ素、炭化ケイ素、アルミニウム、および酸化ベリリウム(BeO)からなる群から選択される材料から構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記集束された電子ビームは、前記真空窓の前記外面に平行な少なくとも1つの横方向において7ミクロン未満の寸法のスポットサイズを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのX線ターゲットにおける前記集束された電子ビームは、前記X線伝搬軸および前記真空窓の前記外面の表面法線を含む平面内の第1の寸法と、前記平面に垂直な方向における第2の寸法とを有するスポット形状を有し、前記第1の寸法は前記第2の寸法よりも大きい、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、シリコン、CdTe、および/またはCdZnTeを含み、X線を電子に直接変換するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、X線を検出するための少なくとも1つのエネルギー閾値を有し、前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、第1のエネルギー閾値を下回るエネルギーおよび/または第2のエネルギー閾値を上回るエネルギーを有するX線の検出を拒否および/または抑制するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、CdWO、CsI、GdS、LSO、GAGG、およびLYSOからなる群から選択されるシンチレータ材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、対物レンズおよびCMOSまたはCCD検出器をさらに備え、前記対物レンズは、前記CMOSまたはCCD検出器上に前記シンチレータ材料からの画像を拡大するように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、前記関心領域を透過した前記X線の第1のスペクトル部分を吸収および検出するように構成された第1の検出器と、前記関心領域および前記第1の検出器を透過する前記X線の第2のスペクトル部分を吸収および検出するように構成された第2の検出器とを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記X線伝搬軸に沿った第1の位置に第1の格子をさらに備え、前記第1の格子は、吸収格子または位相格子を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、前記第1の格子によって形成されるタルボパターンを記録するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の格子、および前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器は、暗視野コントラスト画像を記録するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記X線源によって生成された熱による前記物体の加熱を低減するように構成された熱冷却機構をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記熱冷却機構は、前記真空窓と前記物体との間に赤外線(IR)反射材料を備え、前記IR反射材料は、1500ミクロン未満の厚さを有しかつ、前記X線源によって発生した熱を前記物体および前記サンプルマウントに到達しないように反射するように構成される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
少なくとも1つの固体材料に少なくとも1つのオリフィスを備えた少なくとも1つの開口部をさらに備え、前記少なくとも1つのオリフィスは、前記X線伝搬軸上で前記真空窓と前記物体との間に配置され、前記少なくとも1つの開口部は、前記角度発散角内で前記X線伝搬軸に沿って伝搬する前記発散X線が前記関心領域および/または前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に到達するのを減衰させない一方、前記真空窓から他の方向に放射された少なくとも一部のX線および/または散乱X線が前記関心領域および/または前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に到達するのを減衰させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージは、空気軸受回転ステージを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記少なくとも1つの移動機構は、前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器を物体に対して移動させるように構成された、少なくとも1つの検出器移動ステージを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
3次元X線撮像システムであって、
少なくとも1つの位置敏感型X線検出器と、
外面を有するX線透過真空窓を備えるX線源であって、前記X線源は、発散X線を生成するように構成され、前記真空窓の前記外面は、物体の関心領域から70ミリメートル未満にあり、前記発散X線の少なくとも一部は、前記真空窓から出射し、前記X線源から延在するX線伝搬軸に沿って伝搬し、前記発散X線は、前記物体の前記関心領域を通って前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に伝搬し、前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器によって受信された前記発散X線は、前記X線伝搬軸を中心とする1度よりも大きい角度発散角を有し、前記X線伝搬軸は、前記真空窓の前記外面に対して第1の角度にあり、前記第1の角度は3度~45度の範囲にある、X線源と、
回転軸の周りに前記物体を回転させるように構成され、前記X線伝搬軸に対して第2の角度を有するように前記回転軸を調整するように構成された少なくとも1つのサンプル移動ステージであって、前記少なくとも1つのサンプル移動ステージは、5マイクロラジアン未満の非系統的角度ウォブルを有する、少なくとも1つのサンプル移動ステージと、
前記真空窓と前記物体との間の赤外線(IR)反射材料であって、前記IR反射材料は、1500ミクロン未満の厚さを有しかつ、前記X線源によって発生した熱を前記物体に到達しないように反射するように構成される、IR反射材料とを備える、システム。
【請求項32】
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージ上の、前記物体を保持するように構成されたサンプルマウントをさらに備え、前記サンプルマウントは、前記物体を通って前記少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に伝搬する前記発散X線の少なくとも一部が衝突するように構成された第1の部分を備え、前記第1の部分は、原子番号が14未満の原子元素から構成され、および/または前記回転軸に沿って10ミリメートル未満の厚さを有する、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのサンプル移動ステージは、空気軸受回転ステージを備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記少なくとも1つの位置敏感型検出器によって生成された前記物体の前記関心領域の画像の幾何学的倍率を変化させるための少なくとも1つの移動機構をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項35】
前記少なくとも1つの移動機構は、前記物体に対して前記X線源および/または前記少なくとも1つの位置敏感型検出器を移動させるように構成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
記幅は、前記断面における半値全幅(FWHM)Wを有し、前記X線ターゲットは、前記真空窓の前記外面に垂直の方向に沿った厚さtを有し、前記有効幅は、前記断面内のFWHM有効幅sを有し、前記FWHM有効幅sは、s={(t/2)+[W・sin(θ)]0.5 に等しく、θは前記第1の角度である、請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
前記有効幅は、5ミクロン未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項38】
前記有効幅は、1ミクロン未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項39】
前記有効幅は、0.5ミクロン未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項40】
前記回転軸は、前記真空窓の前記外面の表面法線に対して、30度未満の第3の非ゼロ角度にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項41】
前記回転軸に対して前記X線源を傾斜させるように、および/または前記X線源に対して前記回転軸を傾斜させるように構成された、少なくとも1つの傾斜ステージをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2020年12月7日に出願された米国仮特許出願第63/122,354号および2021年11月1日に出願された米国仮特許出願第63/274,367号に対する優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
分野
本出願は、一般に、トモグラフィおよびラミノグラフィX線撮像システムに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
3次元(3D)X線撮像技術は、物体の内部構造を撮像するのに有用である。典型的には、3D画像を取得するために広い角度範囲(例えば、約180度、約360度)にわたって収集され、続いて再構成されるX線透過画像からなるトモグラフィデータセットがある。大きい角度範囲は、3D画像アーチファクトを回避する(例えば、最小化する)ために使用される。3D X線撮像システムは、撮像のために物体を照射するように構成されたX線源と、透過X線画像を記録するように構成された位置敏感型X線検出器と、X線源および位置敏感型X線検出器に対して物体を操作するための電気機械システムとを備える。
【0004】
物体の関心領域に入射するX線フラックスは、X線源からの関心領域の距離の2乗に反比例し、この距離は焦点物体距離(FOD)と呼ぶことができる。3D X線撮像の高スループットを達成するために、FODは小さくなるように選択される(例えば、関心領域は、可能な限りX線源の近くに配置される)。例えば、空間分解能を達成するために使用される小さなボクセル体積を考慮すると、関心領域をX線源の近くに配置することは、実験室のマイクロフォーカスX線源を使用して高い空間分解能を有する3D X線撮像に使用することができる。さらに、より大きな物体(例えば、横方向に延在する平面状物体内の小さな関心領域であり、その例は、半導体集積回路(IC)パッケージ内の配線、および大きな繊維強化複合パネル内の微細な構造的詳細を含むが、これらに限定されない)内の小さな関心領域の3D X線撮像では、最小FODは物体の寸法によって制限され、物体は180度回転するため、達成可能なスループットは実際には制限される。
【0005】
しかしながら、従来技術のマイクロX線コンピュータトモグラフィ(μXCT)およびマイクロX線コンピュータラミノグラフィ(μXCL)システムには多くの制限がある。例えば、図1Aおよび図1Bは、関心領域(ROI)が物体の中心または中心付近にある横方向に延在する物体(例えば、プリント回路基板、ウェハ)の従来のトモグラフィおよびラミノグラフィ構成をそれぞれ概略的に示す。X線源は、X線ビーム(水平破線で示す)を放射し、ページに垂直な方向における図1Aおよび図1B中の物体の厚さは、X線ビームに沿った物体の寸法(例えば、回転軸の周りに物体を回転させるためにX線源とX線検出器との間に十分な空間があるような)以下とすることができる。図1Aに見られるように、トモグラフィの場合、回転軸は、物体の表面法線に実質的に平行であり、X線ビームに実質的に垂直である。図1Bに見られるように、ラミノグラフィの場合、回転軸は、物体の表面法線に実質的に平行であり、X線ビームに実質的に垂直な方向から角度βだけ傾斜している。図1Aおよび図1Bは、そのような従来のトモグラフィおよびラミノグラフィ構成が、横方向に延在する物体(例えば、半導体ICパッケージ)の表面に平行な平面内の撮像欠陥にあまり適していないことを示しているが、その理由は、トモグラフィ/ラミノグラフィデータセット内の透過X線スペクトルが、物体に対するX線ビーム軸の角度とともに変化するためである。結果として、再構成画像(例えば、コンピュータトモグラフィまたはCT画像)は、放射線硬化および光子欠乏のアーチファクトを被り、物体回転軸に対するそれらの向きに対する再構成特徴の忠実度の依存性をもたらす。横方向に延在する物体の表面に平行な平面内の再構成画像の解像度および画質は、通常、表面法線に沿った方向よりも悪い。加えて、どちらの技術も、物体およびX線源の物理的干渉に起因して小さいFODを達成するように最適化されていない。多くの用途に望ましい可能性がある高フラックスでX線源サイズを縮小することによる画像解像度の改善は、そのような従来技術のXCTおよびXCLシステムおよび方法では著しく制限され、そのような延在および/または平面状物体の表面法線に沿ったより高い深度解像度は、達成が特に困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
特定の実施態様では、3次元X線撮像システムは、物体における関心領域の透過画像を生成するように構成される。システムは、少なくとも1つのアクティブ要素を備える少なくとも1つの位置敏感型X線検出器を備える。システムは、外面を有するX線透過真空窓を備えるX線源をさらに備える。X線源は、発散X線を生成するように構成され、発散X線の少なくとも一部は、真空窓から出射し、X線源から物体の関心領域を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器の少なくとも1つのアクティブ要素まで延在するX線伝搬軸に沿って伝搬する。発散X線は、X線伝搬軸を中心とする1度よりも大きい角度発散角内に伝搬経路を有する。X線伝搬軸は、真空窓の外面に対して第1の角度にあり、第1の角度は3度~45度の範囲にある。システムは、回転軸を中心に物体を回転させるように構成され、回転軸がX線伝搬軸に対して45度~90度の範囲の第2の角度を有するように構成された少なくとも1つのサンプル移動ステージをさらに備える。システムは、少なくとも1つのサンプル移動ステージ上のサンプルマウントをさらに備える。サンプルマウントは、物体を保持するように構成され、物体を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に伝搬する発散X線の少なくとも一部の伝搬経路内の第1の部分を備える。第1の部分は、発散X線のX線スペクトルの最大X線エネルギーの50%よりも大きいエネルギーを有するX線について、30%よりも大きいX線透過率を有する。
【0007】
特定の実施態様では、3次元X線撮像システムは、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器を備える。システムは、外面を有するX線透過真空窓を備えるX線源をさらに備える。X線源は、発散X線を生成するように構成され、発散X線の少なくとも一部は、真空窓から出射し、X線源から延在するX線伝搬軸に沿って伝搬する。発散X線は、物体の関心領域を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器に伝搬し、X線伝搬軸を中心とする1度よりも大きい角度発散角を有する。X線伝搬軸は、真空窓の外面に対して第1の角度にあり、第1の角度は3度~45度の範囲にある。システムは、回転軸の周りに物体を回転させるように構成され、X線伝搬軸に対して第2の角度を有するように回転軸を調整するように構成された少なくとも1つのサンプル移動ステージをさらに備え、少なくとも1つのサンプル移動ステージは、5マイクロラジアン未満の非系統的角度ウォブルを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】関心領域(ROI)が物体の中心または中心付近にある横方向に延在する物体の従来のトモグラフィ構成の概略図である。
図1B】関心領域(ROI)が物体の中心または中心付近にある横方向に延在する物体の従来のラミノグラフィ構成の概略図である。
図2】本明細書に記載される特定の実施態様に適合する例示的なX線3D撮像システムの概略図である。
図3A】本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つのX線ターゲットに衝突する電子ビームによって生成されたX線スポットの概略断面図である。
図3B】本明細書に記載される特定の実施態様による、図3Aの電子ビームおよび少なくとも1つのX線ターゲットの例示的な構成の概略上面図である。
図3C】本明細書に記載される特定の実施態様による、図3Aの電子ビームおよび少なくとも1つのX線ターゲットの例示的な構成の概略上面図である。
図4】本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つの開口部を備える他の例示的なシステムの概略図である。
図5A】本明細書に記載される特定の実施態様による、サンプルステージおよびサンプルマウントが物体を保持および回転させるように構成される例示的なシステムの概略図である。
図5B】本明細書に記載される特定の実施態様による、サンプルステージおよびサンプルマウントが物体を保持および回転させるように構成される例示的なシステムの概略図である。
図6A】本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器が第1の位置敏感型X線検出器および第2の位置敏感型X線検出器を備えるシステムの例の概略図である。
図6B】本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器が第1の位置敏感型X線検出器および第2の位置敏感型X線検出器を備えるシステムの例の概略図である。
図7】本明細書に記載される特定の実施態様による、タルボ干渉法またはタルボ・ロー干渉法を使用してマルチコントラストX線撮像を実行するように構成された例示的なシステムの概略図である。
図8】本明細書に記載される特定の実施形態による、並進ラミノグラフィ画像の生成に適合する例示的なシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
特定の実施態様では、3D X線撮像システムは、大きな物体内の非常に小さなFODでROIの撮像を可能にして、ラミノグラフィックデータセット収集時間を(例えば、撮像データ収集速度を高めるために)短縮する。特定の実施態様では、システムはまた、改善された画質(例えば、忠実度)および横方向に延在する物体の表面に平行な平面内のより高い画像解像度を提供し、これは、(例えば、はんだバンプおよびCu配線としての)半導体ICパッケージの計測、検査、故障分析、およびプロセス開発などの多くの用途にとって重要であり得る。X線源は、小さいFODを達成し、空間分解能を改善するように構成することができる。特定の実装形態は、測定ジオメトリを使用して電子ビーム焦点を1次元に「圧縮」するように構成され、これにより、非対称のより大きな、したがってより高いパワーの焦点の使用を可能にすることができ、投影後に対称またはほぼ対称になり、これは等方性の空間分解能を有することが望ましい場合がある。特定の実施態様は、分析される横方向に延在する物体の表面に実質的に垂直な方向に高い空間分解能を達成するように構成された厚さを有するX線発生材料を含むX線源を有するように構成される。さらに、特定の実施態様は、吸収、位相、および暗視野(散乱)コントラスト、暗視野(散乱)コントラストのみ、および増強された吸収コントラストを得るためのタルボ干渉法を含む、撮像コントラストのいくつかのモードを実施するための追加の構成要素および/または方法を含む。
【0010】
図2は、本明細書に記載される特定の実施態様に適合する例示的なX線3D撮像システム5を概略的に示す。システム5は、X線源20と、少なくとも1つのアクティブ要素52を備える少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50とを備える。X線源20は、外面27を有するX線透過真空窓29を備え、X線源20は、発散X線を生成するように構成される。発散X線60の少なくとも一部は、真空窓29から出射し、X線源20から物体30の関心領域31を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50の少なくとも1つのアクティブ要素52まで延在するX線伝搬軸10に沿って伝搬する。少なくとも1つのアクティブ要素52に衝突する発散X線60は、X線伝搬軸10を中心とする1度よりも大きい角度発散角12内に伝搬経路を有する。X線伝搬軸10は、真空窓29の外面27に対して第1の角度11にあり、第1の角度11は45度以下の範囲(例えば、30度以下、3度~45度の範囲、5度~30度、3度未満)にある。
【0011】
特定の実施態様では、システム5は、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80(例えば、電動式およびコンピュータ制御式、電気機械システムを備える)をさらに備える。少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、回転軸19の周りに物体30を回転させるように構成される。サンプル移動ステージ80は、回転軸19がX線伝搬軸10に対して第2の角度16を有するように構成され、第2の角度16は45度以上の範囲(例えば、45度~90度の範囲内)にある。特定の他の実施態様では、第2の角度16は45度未満である。特定の実施態様の第2の角度16は、45度以上の範囲とすることができ、回転軸19は、真空窓29の外面27の表面法線に対して第3の角度とすることができ、第3の角度は、45度未満(例えば、30度未満)の範囲である。特定の実施態様では、システム5は、第3の角度を変化させるように構成された機構を備える。例えば、機構は、X線源20を回転軸19に対して、および/または回転軸19をX線源20に対して傾斜させるように構成された少なくとも1つの傾斜ステージ(例えばゴニオメータ、電気機械式移動ドライバ、回転モータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、ウォーム駆動部を有する直線移動ドライバ)を備えることができる。
【0012】
特定の実施態様では、システム5は、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80上にあり、物体30を保持するように構成されたサンプルマウント85をさらに備える。サンプルマウント85は、物体30を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に伝搬する発散X線60の少なくとも一部の伝搬経路内の第1の部分86を備える。第1の部分86は、発散X線60のX線スペクトルの最大X線エネルギーの50%よりも大きいエネルギーを有するX線について、30%よりも大きい(例えば、50%よりも大きい)X線透過率を有する。
【0013】
図2の例示的なシステム5は、ROI31とX線源20との間のFODを最小にするように、(例えば、真空窓29の外面27に実質的に平行になるように配置された)大きいまたは横方向に延在する物体30内の関心領域(ROI)31を撮像するように構成される。例えば、大きな3次元物体30内のROI31を撮像するために、物体30は、X線源20の近くに(例えば、真空窓29の外面27と物体30の表面32との間の70ミリメートル未満の距離に)配置され、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の回転軸19を中心とすることができる。ROI31の3次元(3D)画像データセットは、物体30のROI31を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50の少なくとも1つのアクティブ要素52に透過される発散X線60の一連のX線透過画像を記録することによって収集することができ、物体30は角度範囲(例えば、180度と360度との間)にわたって回転軸19の周りを回転する。コンピュータラミノグラフィデータセットは、ROI31の3D画像を得るために、既知のラミノグラフィ再構成方法を使用して再構成することができる。他の例として、平面状物体30内のROI31(例えば、半導体ICパッケージ内のはんだバンプおよび/または配線)を撮像するために、ROI31により近い物体30の表面32が真空窓29に面するように物体30を位置決めすることができる。大きい/平面状の物体30の場合、真空窓29の外面27と物体30の表面32との間の小さな角度14を使用して、ROI31をX線源20の近くに配置して、ROI31上のX線フラックスを増加させ、したがって撮像スループットを向上させることができる。他の例では、物体30の表面32は、(例えば、ROI31への放射線量を低減または最小化するために)真空窓29の外面27から外方を向いている。
【0014】
X線源
図2に概略的に示すように、特定の実施態様では、X線源20は、真空領域23を含む真空チャンバ21と、真空領域23内の電子ビーム源22とを備える。X線源20は、電子ビーム源22からの少なくとも一部の電子を、少なくとも1つのX線ターゲット28に集束された電子ビーム24に導くように構成された電子光学系25(例えば、電極)をさらに備える。例えば、電子ビーム源22および電子光学系25は、集束電子ビーム24を生成し、10kVp~250kVpの範囲内の少なくとも1つのX線ターゲット28における選択可能な最大集束電子エネルギーで、少なくとも1つのX線ターゲット28に集束電子ビーム24を照射するように構成される。特定の実施態様では、真空チャンバ21は、電子ビーム源22、電子光学系25、および少なくとも1つのX線ターゲット28を含む真空密封管を備える。開放管X線源とは対照的に、特定の実施態様のX線源20は能動的にポンピングされない。
【0015】
少なくとも1つのX線ターゲット28は真空領域23内にあり、集束電子ビーム24による照射に応答して発散X線60を生成するように構成される。少なくとも1つのX線ターゲット28は、そのX線スペクトル生成特性(例えば、特性X線エネルギー)および/または少なくとも1つのX線発生材料のX線生成能力に影響を及ぼす他の特性(例えば、原子番号Z、電子密度)のために選択された少なくとも1つのX線発生材料を含む。少なくとも1つのX線発生材料は、電子ビーム24による照射によって発生した熱を高パワーで放散するのに十分に高い熱伝導率を有することができる。X線発生材料の例は、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、W、Rh、Mo、Au、Pt、Ag、SrB、LaB、およびCeBを含むが、これらに限定されない。図2の挿入図によって概略的に示されるように、少なくとも1つのX線ターゲット28は、真空窓29に取り付けられ(例えば、一体化され、その構成要素であり、接触し)、真空窓29は、真空領域23をX線源20の外側の非真空領域から分離する。真空窓29の外面27に実質的に垂直な方向に沿った少なくとも1つのX線発生材料の厚さは、0.1ミクロン~15ミクロン(例えば、0.1ミクロン~10ミクロン)の範囲内とすることができ、真空窓29の外面27に実質的に垂直な方向における真空窓29の厚さは、0.05ミリメートル~3ミリメートルの範囲内とすることができる。本明細書で説明するように、少なくとも1つのX線発生材料の厚さは、高い空間分解能(例えば、材料内部の電子ビーム散乱を最小限に抑えることによって)および/または高いシステムスループット(例えば、少なくとも1つのX線発生材料の内部の電子エネルギー堆積を最大化する)のために最適化するように構成することができる。例えば、少なくとも1つのX線発生材料の厚さは、回転軸19に沿った画像解像度の2倍未満であり得る。特定の実施態様では、少なくとも1つのX線発生材料は、電子ビーム24によって(例えば、電子ビーム焦点を平行移動させることによって)照射され得る複数の領域を有し、各領域は、真空窓29の外面27に実質的に垂直な方向に沿って対応する厚さを有する。電子ビーム24は、スループットと分解能との間の選択されたトレードオフを提供する対応する厚さで選択された領域を照射するように電子光学系25によって誘導することができる。
【0016】
特定の実施態様では、真空窓29は、14未満の原子番号(Z)を有する原子元素から本質的に構成され、少なくとも1つのX線発生材料によって発生した高エネルギーX線に対して実質的に透過的である。例えば、真空窓29は、少なくとも1つのX線発生材料(例えば、ベリリウム、ダイヤモンド、炭化ホウ素、炭化ケイ素、アルミニウム、および酸化ベリリウム(BeO)からなる群から選択される1つまたは複数の材料)の熱損傷(例えば、溶融)を防止するための熱導管を提供するのに十分に高い熱伝導率を有することができる。真空窓29は、少なくとも1つのX線発生材料および/または真空窓29から電荷を散逸させるのに十分に導電性経路をさらに提供することができる。特定の実施態様では、真空窓29は、選択された最大集束電子エネルギーの半分よりも大きいエネルギーを有する少なくとも1つのX線ターゲット28によって発生したX線の50%超が真空窓29を透過するようなX線透過率を有するように構成される。特定の実施態様では、真空窓29の外面27から放射された発散X線60は、X線伝搬軸10に沿ってX線源20によって遮られない。X線源20は4πの立体角にX線を放射するが、図2は、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50の少なくとも1つのアクティブ要素52への角度発散角12内でX線伝搬軸10に沿って伝搬する発散X線60(例えば、画像形成に寄与するX線)のみを概略的に示し、他の発散X線は、少なくとも1つのX線ターゲット28によって発生し、図2には示されていない真空窓29の外面27から他の方向に放射される。
【0017】
特定の実施態様では、システム5は、X線源20によって生成された熱による物体30の加熱を低減するように構成された熱冷却機構をさらに備える。例えば、熱冷却機構は、真空窓29と物体30との間に赤外線(IR)反射材料(例えば、薄いIR反射性で高度にX線透過性のフィルムまたは層であり、その例はアルミナイズマイラである)を備えることができる。IR反射材料は、X線源20によって(例えば、電子ビームのパワーが少なくとも1つのX線ターゲット28内で熱に変換されるために)発生した熱を物体30およびサンプルマウント85に到達しないように反射する(例えば、物体30および/またはサンプルマウント85への熱輸送を低減または最小化するために、物体30およびサンプルマウント85から熱エネルギーを誘導する)ように構成される。このようにして、IR反射材料は、そうでなければROI選択の精度および/または3D体積再構成忠実度に悪影響を及ぼす可能性がある熱膨張を引き起こす可能性があるサンプルの温度変化から物体30およびサンプルマウント85を保護することができる。IR反射材料は、X線源20の電子ビーム焦点に近い物体30の位置決めを実質的に損なわないように、十分に薄い(例えば、1500ミクロン未満の厚さ、100ミクロン未満の厚さ)。
【0018】
特定の実施態様では、X線源20は、接地アノード透過X線源(例えば、真空ハウジングが電気的に接地される)を含み、その例は、オハイオ州WestlakeのNordson Corporationから入手可能なDAGE BrightHawk(登録商標)X線源、日本国浜松市の浜松ホトニクス株式会社から入手可能なL10711-03マイクロフォーカスX線源、スウェーデン国KistaのExcillum Corporationから入手可能なExcillumナノチューブN1およびN2 X線源、ドイツ国GarbsenのX-ray Worx GmbH、カリフォルニア州San JoseのCOMET Technologiesから入手可能なX線源を含むが、これらに限定されない。これらの例示的なX線源20は、真空窓29と一体化されたX線源点を有し、FODを減少させる(例えば、最小化する)ために、したがって物体30におけるX線フラックスを増加させる(例えば、最大化する)ために、物体30をX線源20の近くに配置するように構成することができる。電気的および機械的制約のために、X線源20は、真空エンベロープの終端であり、真空窓29と同一平面上にある大きな平坦面を有することができるが、電子ビーム焦点の品質を妨げずに小さくすることはできない。そのようなX線源20を利用する既存のX線トモグラフィおよびラミノグラフィ撮像技術では、この大きな平坦面は、X線源20の近くに大きなおよび/または平面状の物体30を配置する能力を制限し、物体30を大きな平坦面に実質的に垂直な回転軸19の周りで(例えば、最大180度まで)回転させることができる。本明細書に記載される特定の実施態様は、以前から存在するX線撮像システムのこの大きな欠点を有利に回避する。
【0019】
特定の実施態様では、X線源20は、十分に短い画像収集時間を容易にするのに十分なX線フラックスを生成しながら、小さいX線スポットサイズを有する(例えば、真空窓29の外面27に実質的に平行な少なくとも1つの横方向において7ミクロン未満の寸法を有する)ように構成される。一般に、X線スポットサイズは、少なくとも1つのX線ターゲット28における集束電子ビームスポットサイズ(例えば、半径)と、少なくとも1つのX線ターゲット28の内部の電子の散乱による少なくとも1つのX線ターゲット28の内部のX線発生ボリュームのサイズ(例えば、半径)との畳み込みにほぼ等しい。したがって、より大きな集束電子ビームスポットサイズは、より低い空間分解能を犠牲にして、より高いX線フラックスおよびより短い画像取得時間を付随させて、より高い電子ビーム出力を容易にすることができ、より小さな集束電子ビームスポットサイズは、より低いX線フラックスおよびより長い画像取得時間を犠牲にして、より高い空間分解能を容易にすることができる。加えて、集束電子ビーム24からの入射パワーの大部分(例えば、約99%)が少なくとも1つのX線ターゲット28内で熱に変換されるので、典型的にはX線スポット寸法とともに直線的に減少する入射電子ビームパワーを制限することが望ましい場合がある。
【0020】
特定の実施態様では、真空窓29の外面27の表面法線および回転軸19を含む平面の方向のX線透過画像のより高い空間分解能は、少なくとも1つのX線ターゲット28の少なくとも1つのX線発生材料の厚さtを減少させることによって提供され、これにより、有効X線源サイズsが減少する。例えば、真空窓29の外面27に実質的に垂直な方向に沿った少なくとも1つのX線発生材料の厚さtは、0.1ミクロン~15ミクロンの範囲内とすることができる。図3Aは、本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つのX線ターゲット28に衝突する電子ビーム24によって発生したX線スポットの断面図を概略的に示す。図3Bおよび図3Cは、本明細書に記載される特定の実施態様による、図3Aの電子ビーム24および少なくとも1つのX線ターゲット28の例示的な構成の上面図を概略的に示す。図3Aに概略的に示すように、X線伝搬軸10に沿って見たX線スポットサイズは、X線ターゲット28上の電子ビーム24の幅W(例えば、直径)よりも小さくすることができる。厚さtを有するX線発生材料の場合、X線伝搬軸10に沿って見たX線スポットの半値全幅(FWHM)有効幅sは、約t/2(図3Aは縮尺通りではない)未満とすることができる。特定の実施態様では、少なくとも1つのX線発生材料は、真空窓29の外面27に対して30度より小さい角度でX線伝搬軸10に沿って図3Aの断面平面内で小さなX線スポットサイズ(例えば、5ミクロン未満)を達成するために、低Z材料基板(例えば、真空窓29)の上または内部に薄い高Z材料層(例えば、0.1ミクロン~3ミクロンの範囲の厚さt)を含む。断面におけるX線スポットサイズのFWHM有効幅sは、s={(t/2)+[W・sin(θ)]0.5にほぼ等しくすることができ、式中、tは高Z材料の厚さであり、Wは断面における電子ビームサイズのFWHM幅である。例えば、t=1ミクロン、θ=10度、およびW=1ミクロンでは、断面平面内のX線スポットサイズのFWHM有効幅sは0.53ミクロンであり、Wよりも小さい。したがって、X線伝搬軸10に沿った断面平面内の有効X線源サイズは、断面平面内の電子ビーム24の幅と比較して圧縮することができる。
【0021】
断面における有効X線スポットサイズが電子ビーム幅Wよりも実質的に小さいことにより、特定の実施態様は、図3Aの断面に実質的に垂直な方向において小さいX線スポットサイズをさらに達成することができる。例えば、図3Bに模式的に示すように、電子ビーム24を断面平面に対して略垂直な方向に圧縮するように集束させることができる。X線ターゲット28における細長い(例えば、長方形)形状またはフットプリントを有する集束電子ビーム24は、図3Aの断面平面内の長い寸法(例えば、FHWM幅W)および図3Aの断面平面に実質的に垂直な方向で(例えば、X線伝搬軸10および真空窓29の外面27の表面法線を含む平面内で)短い寸法(例えば、FWHM幅w)を有することができ、短い寸法は長い寸法よりも小さい。
【0022】
他の例では、図3Cに概略的に示すように、図3Aの断面に実質的に垂直な方向における少なくとも1つのX線発生材料の高Z材料の幅dは、図3Aの断面に実質的に垂直な方向における集束電子ビーム24のFWHM幅wよりも小さくすることができる。少なくとも1つのX線発生材料は真空窓29よりも効率的にX線を発生させるので(例えば、X線生成効率は材料の平均原子番号にほぼ比例するので)、少なくとも1つのX線発生材料に衝突しない電子ビーム24の部分は効率的にX線を発生させず、X線スポットサイズに実質的に寄与せず、それによってX線スポットサイズを図3Aの断面に実質的に垂直な方向の幅dに制限する。特定の実施態様では、少なくとも1つのX線発生材料の幅dは、0.1ミクロン~5ミクロンの範囲内である。
【0023】
X線伝搬軸10(例えば、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50からの方向)に沿って見たときに、外面27とX線伝搬軸10との間の取り出し角を考慮に入れると、図3Bおよび図3CのX線スポットは、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50において正方形または円形に見え得る。例えば、10度の取り出し角では、5:1のアスペクト比を有する矩形焦点を有する電子ビーム24は、実質的に対称に見え得る。電子ビーム24は細長く、電子ビーム24が両方向に狭く集束された場合よりも広い領域に衝突するため、より高い電子パワーを使用してX線フラックスを(例えば、より高いX線輝度を達成するために)増加させ、空間分解能を維持しながら画像収集時間を短縮することができる。例えば、5:1のアスペクト比を有する電子ビーム24は、見掛けの出力密度の最大5倍の増加を提供することができる。より高いアスペクト比の集束電子ビームと併せて取り出し角をさらに減少させることにより、見かけの出力密度のさらなる改善を容易にすることができる。特定の実施態様は、断面平面に対する直交方向よりも図3Aの断面平面においてより高い空間分解能を提供する。多くの用途では、高深度分解能(例えば、横方向に延在した物体30の表面32に対して実質的に垂直な方向における)が横方向分解能(例えば、はんだバンプの剥離、または半導体パッケージの表面に平行なはんだバンプの応力誘起亀裂の画像化)よりも重要である。
開口部
【0024】
開口部
図4は、本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つの開口部70を備える他の例示的なシステム5を概略的に示す。特定の実施態様では、少なくとも1つの開口部70は、少なくとも1つの固体材料(例えば、プレート)に少なくとも1つのオリフィス72(例えば、スリット、100ミクロン未満の幅を有する)を備え、少なくとも1つのオリフィス72は、X線伝搬軸10上で真空窓29と物体30との間(例えば、真空窓29の下流かつ物体30の上流)に配置される。少なくとも1つの開口部70は、角度発散角12内でX線伝搬軸10に沿って伝搬する発散X線60(例えば、撮像に使用されるX線)がROI31および/または少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に到達するのを減衰させないが、真空窓29から他の方向に放射された少なくとも一部のX線および/または散乱X線(例えば、撮像に使用されないX線)がROI31および/または少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に到達するのを減衰させるように構成される。特定の実施態様では、少なくとも1つの開口部70の少なくとも1つの固体材料は、少なくとも1つの開口部70がFODを実質的に制限することなくX線を減衰させるように構成されるように、十分に高いZ(例えば、W、Au)、十分に高い電子密度、および実質的に薄い厚さを有する。特定の実施態様では、少なくとも1つの開口部70は、物体30に到達するX線源20によって放射された角度発散角12の外側の外部X線フラックスの量を減衰させるように構成される。この外部X線フラックスを減衰させることによって、少なくとも1つの開口部70は、外部X線フラックスからの画像内の有害なバックグラウンド寄与を低減することができ、および/または撮像に寄与しない外部X線フラックスからの物体30への有害なX線線量を低減することができる。少なくとも1つの開口部70の少なくとも1つのオリフィス72の縁部は、少なくとも1つのオリフィス72内のX線がX線伝搬軸10に沿ってさらに伝搬することのみを可能にすることによって角度発散角12を画定することができる。特定の実施態様では、1つの開口部70と真空窓29との間の距離は、X線源点とROI31との間の小さなFODを達成するように(例えば、0.3ミリメートル~5ミリメートルの範囲の距離)構成される。
【0025】
サンプル移動ステージおよびサンプルマウント
特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、X線源20および/または少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に対して物体30を移動させるように構成される。特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、物体30の位置を(例えば、実質的に垂直なx方向、y方向、およびz方向に沿って)制御可能に調整するように構成された少なくとも1つの直線移動サブステージ82と、物体30の向きを制御可能に調整する(例えば、回転軸19の周りに物体30を回転させる)ように構成された少なくとも1つの回転移動サブステージ84とを備える。例えば、少なくとも1つの直線移動サブステージ82は、ROI31がX線伝搬軸10に沿って選択された位置にあるように物体30を移動させるように構成された1つ、2つ、または3つの電気機械式直線移動ドライバ(例えば、リニアモータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、圧電モータ、ネジ付き回転モータ)を備えることができ、少なくとも1つの回転移動サブステージ84は、物体30およびROI31を回転軸19の周りに回転させるように構成された少なくとも1つの電気機械式移動ドライバ(例えば、回転モータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、ウォーム駆動部を有する直線移動ドライバ)を備えることができる。
【0026】
特定の実施態様では、図2に概略的に示すように、横方向に延在した物体30を少なくとも1つのサンプル移動ステージ80に取り付けることができ、物体30の長寸法に平行な物体30の表面32は、X線伝搬軸10に対して角度β(例えば、1度~30度の範囲内)で傾斜している。特定の実施態様では、少なくとも1つの回転移動サブステージ84は、角度βを制御可能に調整するようにさらに構成され、少なくとも1つの直線移動サブステージ82は、ROI31が回転軸19上およびX線伝搬軸10上に配置されるように、物体30および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84を直線的に並進させるようにさらに構成される。特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、回転軸19とX線スポット(例えば、電子ビーム焦点)との間の距離を制御可能に調整するように構成される。
【0027】
特定の実施態様では、サンプルマウント85は、X線60がROI31を通って少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に透過するように、物体30がX線60によって照射されている間に物体30を保持するように構成される。サンプルマウント85は、X線60が少なくとも1つのサンプル移動ステージ80(例えば、少なくとも1つの直線移動サブステージ82および少なくとも1つの回転移動サブステージ84)の固体構成要素と最小限に相互作用する(例えば、それによって最小限に散乱および/または吸収される)ように構成される。サンプルマウント85は、物体30が回転軸19の周りを回転するときに少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の固体部分と相互作用する発散X線60の部分を減少させる(例えば、最小化する)ように構成される。
【0028】
特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80およびサンプルマウント85は、スループットを損なうことなく物体30を保持および回転させるように構成される。例えば、マイクロフォーカス透過X線コンピュータラミノグラフィのスループットは、焦点間距離(FOD)の2乗に反比例するため、小さいFOD(例えば、X線源20に可能な限り近い物体30)を使用して高いスループットを達成することができる。
【0029】
図5Aおよび図5Bは、本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80およびサンプルマウント85が物体30を保持および回転させるように構成される例示的なシステム5を概略的に示す。図5Aの例示的なシステム5では、物体30は、X線源20と少なくとも1つのサンプル移動ステージ80との間にある。少なくとも1つの直線移動サブステージ82および少なくとも1つの回転移動サブステージ84が少なくとも1つのX線源20から物体30の反対側にある場合、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、X線60が物体30に到達するのを妨げない。しかしながら、図5Aに示すように、ROI31を通って伝搬した後、X線60は、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50に到達する前にサンプルマウント85の少なくとも一部を通って伝搬する。図5Bの例示的なシステム5では、X線源20および少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、物体30の同じ側にあり、X線60は、物体30に到達する前にサンプルマウント85の少なくとも一部を通って伝搬する(例えば、サンプルマウント85は、X線源20の物体30への最も近い接近を制限することができる)。図5Aは、X線源20が物体30および少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の上方にある例示的な実施態様を示しているが、他の実施態様では、X線源20、物体30、および少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、互いに同じ相対的な位置決めを保持しながら任意の向きを有することができる。図5Bは、X線源20が物体30の下方にある例示的な実施態様を示しているが、他の実施態様では、X線源20、物体30、および少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、互いに同じ相対的な位置決めを保持しながら任意の向きを有することができる。
【0030】
特定の実施態様では、サンプルマウント85は、少なくとも1つのサンプルステージ80(例えば、少なくとも1つの直線移動サブステージ82および少なくとも1つの回転移動サブステージ84)が少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50の撮像視野内にない(例えば、画像再構成の忠実度に悪影響を及ぼすX線散乱および/または吸収を低減、回避、または最小化する)ように、少なくとも1つのサンプルステージ80から物体30をオフセットするように構成される。例えば、サンプルマウント85は、少なくとも1つのサンプルステージ80から50ミリメートル(例えば、100ミリメートルよりも大きい、100ミリメートル~500ミリメートルの範囲、100ミリメートル~200ミリメートルの範囲)を超える距離だけ物体30をオフセットすることができる。特定の実施態様のサンプルマウント85は、物体30およびサンプルマウント85が回転軸19の周りに回転するときにX線60の少なくとも一部が衝突するように構成された第1の部分86と、第1の部分86を少なくとも1つの移動サブステージ(例えば、少なくとも1つの直線移動サブステージ82および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84)に機械的に結合する第2の部分87とを含む。第1の部分86および第2の部分87は、発散X線60が少なくとも1つの移動サブステージまたは第2の部分87に(例えば、物体30およびサンプルマウント85が回転軸19の周りに回転するとき)衝突しないように、少なくとも1つの移動サブステージから物体30のROI31をオフセットするように構成される。
【0031】
特定の実施態様では、第1の部分86は、低Z元素(例えば、原子番号が14未満の原子元素)および/または薄い材料(例えば、回転軸19に沿った厚さが10ミリメートル未満である)から本質的に構成される。特定の実施態様では、第1の部分86は、X線60(例えば、X線源20によって放射されたX線)のX線スペクトルの最大X線エネルギーの50%よりも大きいエネルギーを有するX線に対して50%よりも大きいX線透過率を有する。特定のそのような実施態様は、物体30に対する十分に少ない放射線損傷で、十分に高いスループットを同時に提供する(例えば、X線は、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の吸収材料を透過する必要がないので、物体30を照射するX線フラックスは、高スループット撮像のために十分に大量の検出されたX線を提供しながら、放射線損傷を回避するために十分に低く保つことができる)。例えば、第1の部分86は、炭素繊維または石英板(例えば、X線伝搬軸10に沿って投影された厚さが2ミリメートル以下である)を備えることができる。第2の部分87は、第1の部分86および少なくとも1つの直線移動サブステージ82および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84に機械的に結合される。特定の実施態様では、第2の部分87は、第1の部分86(例えば、2ミリメートル以下のX線伝搬軸10に沿った投影厚さを有する炭素繊維または石英管などの低Zロッドまたは中空管)と本質的に同じ低Z元素および/または薄い材料から構成されるが、特定の他の実施態様では、第2の部分87は任意の固体材料(例えば、固体材料のX線吸収および/または散乱にかかわらず)を含む。特定の実施態様では、第2の部分87は、少なくとも1つの直線移動サブステージ82および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84の一部である。
【0032】
例えば、図5Aによって概略的に示されるように、第1の部分86および第2の部分87は、回転軸19に沿って延在し、すべての関心のあるラミノグラフィ角およびすべての関心のある回転角について、X線60が少なくとも1つの直線移動サブステージ82および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84に衝突しないように構成され得る。回転軸19から、回転軸19に実質的に垂直な方向に沿って最大寸法(例えば、半径)Rを有する少なくとも1つのサンプル移動ステージ80について、第1および第2の部分86、87は、X線60のエンベロープが、X線60を散乱および/または吸収する少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の部分(例えば、14より大きい原子番号Zを有する少なくとも1つの元素を含む部分、少なくとも1つの直線移動サブステージ82、少なくとも1つの回転移動サブステージ84)に衝突しないように、少なくとも1つの直線移動サブステージ82および/または少なくとも1つの回転移動サブステージ84から回転軸19に沿って距離zだけ物体30を保持するように構成することができる。
【0033】
他の例では、図5Bに概略的に示すように、第1の部分86は、物体30の側面および/または縁部を保持(例えば、クランプ)するように構成され、第2の部分87は、第1の部分86を少なくとも1つのサンプル移動ステージ80(図5Bには示されていない)に機械的に結合する。図5Bの少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、少なくとも部分的にそれを通って延在するX線源20を有するように構成された透明開口部領域88(例えば、第2の部分87によって少なくとも部分的に境界付けられた領域)をさらに備える。特定のそのような実施態様は、X線源20を物体30の面の任意の近くに配置することを可能にし、それによって物体30をしっかりと取り付けながら高いスループットを提供する。本明細書に記載される特定の実施形態に適合する例示的な第2の部分87は、マサチューセッツ州AuburnのPI(Physik Instrumente)から入手可能な大口径超高精度空気軸受回転ステージである。
【0034】
画像再構成の忠実度は、測定中の物体30の正確な回転に依存し、物体30の制御されていない移動は、実際に記録された投影データの、ラミノグラフィック再構成アルゴリズムが期待するものからの偏差を生じさせる可能性がある。結果として、これらの制御されない移動は、再構成されたボリュームの解像度およびコントラストを低下させる逆投影データにぼやけを生じさせる可能性がある。特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、画像視野内の物体30の並進および/または向きの変化を引き起こす純粋な回転からの偏差を減少させる(例えば、回避する、最小化する)。少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、物体30の制御されていない移動がシステム分解能の1/5未満(例えば、0.5ミクロンのシステム分解能では0.1ミクロン未満の制御されない移動)であるように、回転軸19の周りの物体30の回転中に、十分に低い非系統的角度ウォブル(例えば、回転軸19の周りの回転の関数としての回転軸19の制御されない角運動)、十分に低い半径方向振れ(例えば、回転軸19の周りの回転の関数としての回転軸19の制御されない並進は、回転軸19に対して実質的に垂直な物体30の横方向移動をもたらす)、および/または十分に低い軸方向振れ(例えば、回転軸19に実質的に平行な物体30の制御されない軸方向移動)を有することができる。例えば、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の少なくとも1つの回転移動サブステージ84の上方の距離Lに配置された物体30およびδの画像解像度(例えば、検出器解像度を画像倍率で除算したもの)の場合、ωの非系統的角度ウォブル(例えば、100ナノラジアン未満、200ナノラジアン未満、1マイクロラジアン未満、5マイクロラジアン未満)は、R=ωL<δ/5(例えば、δ/3未満、δ/2未満、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、200ナノメートル未満、100ナノメートル未満)の半径方向振れおよび/または軸方向振れA<δ/5(例えば、δ/3未満、δ/2未満、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、200ナノメートル未満、100ナノメートル未満)をもたらし得る。特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80は、5マイクロラジアン未満(例えば、1マイクロラジアン未満)の非系統的角度ウォブル(例えば、誤差)、1000ナノメートルよりも良好な半径方向振れ再現性、および1000ナノメートルよりも良好な軸方向振れ再現性を有する。特定の実施態様では、システム5は、5マイクロラジアン未満(例えば、1マイクロラジアン未満)よりも良好な精度で少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の角度ウォブルを測定し、1000ナノメートルよりも良好な精度で少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の半径方向振れを測定し、および/または1000ナノメートルよりも良好な精度で少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の軸方向振れを測定するように構成された計測システムをさらに備える。
【0035】
特定の実施態様では、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の少なくとも1つの回転移動サブステージ84は、5マイクロラジアン未満(例えば、1マイクロラジアン未満、200ナノラジアン未満)のウォブル角度および100ナノメートル未満の半径方向および軸方向の振れを有する空気軸受回転ステージ(例えば、PI(マサチューセッツ州AuburnのPhysik Instrumente)から入手可能なA-62XまたはA-688回転ステージ、Aerotech,Inc.(ペンシルベニア州Pittsburgh)から入手可能なABRX00、ABRX150、またはABRX250回転ステージ)を含むことができる。回転軸19の周りの回転の角度範囲(例えば、360度)にわたる物体30の位置は、システムの分解能の半分よりも良好に正確であり得る。
【0036】
位置敏感型X線検出器
特定の実施態様では、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、ROI31を透過した後に受信されたX線60の画像を記録するように構成される。少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50の例は、光子計数検出器(例えば、シリコン、CdTe、および/またはCdZnTeを含み、エネルギー弁別の有無にかかわらず、X線を電子に直接変換するように構成される。スイス国Baden-DaettwilのDectrisから入手可能なEiger ASICおよびPilatus ASIC)、シンチレータ材料を含むフラットパネル検出器(FPD)(例えば、CdWO、CsI、GdS、LSO、GAGG、および/またはLYSO。カナダ国WaterlooのTeledyne Dalsaから入手可能なSad-o-Box HS検出器、ユタ州Salt Lake CityのVarex Imagingから入手可能な2315N検出器、オハイオ州WestlakeのNordson Corporationから入手可能なAthena検出器およびOnyx検出器、コロラド州BoulderのSpectrum Logic Corporationから入手可能な1412HR検出器)、光ファイバプレートおよびCMOSまたはCCD検出器、シンチレータ材料(例えば、CdWO、CsI、GdS、LSO、GAGG、および/またはLYSO)およびCMOSまたはCCD検出器上に画像を拡大するように構成された対物レンズを含むが、これらに限定されない。特定の実施態様では、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、70ミクロン未満(例えば、50ミクロン未満)の横方向寸法(例えば、検出器50の表面に沿って)を有する複数のアクティブ要素52(例えば、画素)を含む。
【0037】
特定の実施態様では、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、ROI31を含む物体30を透過したX線60を受信して撮像するように構成され、X線60は、ROI31内の関心のある特徴を識別するのに十分な画像コントラストを容易にする(例えば、最適化する)、および/または撮像収集時間を短縮する所定の範囲のエネルギー(例えば、X線スペクトル)を有する。例えば、所定のX線スペクトルは、所定のX線スペクトル内の生成されたX線60が画像コントラストおよび/または撮像収集時間を容易にするのに十分に大きいX線フラックスを有するように、少なくとも1つのX線ターゲット28の集束電子エネルギーおよび/または少なくとも1つのX線発生材料を選択することによって生成することができる。吸収コントラストを使用するX線撮像の場合、所定のX線スペクトルは、物体30が5%~85%の範囲内(例えば、8%~30%の範囲内)のX線透過率を有するエネルギーを含むことができる。この範囲のX線透過率は、(より低いエネルギーのX線に有利な)画像コントラストと(より高いエネルギーのX線に有利な)物体30を通る透過との間の有益なトレードオフを提供することができる。
【0038】
他の例では、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、X線を検出するための少なくとも1つのエネルギー閾値を有するように構成することができる(例えば、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、第1のエネルギー閾値を下回るエネルギーおよび/または第2のエネルギー閾値を上回るエネルギーを有するX線の検出を拒否および/または抑制するように構成することができる)。例えば、少なくとも1つのエネルギー閾値は、閾値カットオフX線エネルギーを含むことができ、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、閾値カットオフX線エネルギー未満のエネルギーを有するX線のみを撮像するように構成される。特定の実施態様の閾値カットオフX線エネルギーは、物体30が85%未満(例えば、50%未満)のX線透過率を有するX線に対応する。例えば、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、(例えば、閾値カットオフX線エネルギーを制御可能に調整するために)少なくとも1つの閾値カットオフX線エネルギーを選択するように構成された光子計数検出器を含むことができる。光子計数検出器は、エネルギー依存性X線透過画像を収集する(例えば、複数のオペレータ選択可能なエネルギーウインドウを使用して、ノイズ、画像アーチファクトを低減し、および/または材料の区別を提供する)ようにさらに構成することができる。他の例では、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、シンチレーションスクリーンと、閾値カットオフX線エネルギー未満のX線のみを撮像するように構成された材料との組合せを備えることができる。
【0039】
図6Aおよび図6Bは、本明細書に記載される特定の実施態様による、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50が第1の位置敏感型X線検出器54および第2の位置敏感型X線検出器56を備えるシステム5の2つの例を概略的に示す。第2の位置敏感型X線検出器56は、第1の位置敏感型X線検出器54から得られたものとは異なるX線スペクトルの部分に利得感度を提供し、全体的なスループットを増加させ、および/または第1の位置敏感型X線検出器54の空間分解能とは異なる空間分解能で測定値を提供するように構成することができる。例えば、第1および第2の位置敏感型X線検出器54、56は、互いに異なるシンチレーション材料および/または互いに異なるシンチレータ厚さを有することができる。
【0040】
例えば、図6Aに概略的に示すように、第1の検出器54は、ROI31を透過したX線60の第1のスペクトル部分を吸収および検出するように構成することができ、第2の検出器56は、ROI31を透過し、第1の検出器54によって吸収されないX線60の第2のスペクトル部分を吸収および検出するように構成することができる。第1の検出器54は、高分解能用に(例えば、最適化されている)構成することができ、ROI31から受信したX線フラックスの少なくとも一部を送信することができ、第2の検出器56は、第1の検出器54の背後に(例えば、図6Aを参照)配置することができ、第1の検出器56を透過したX線フラックスの少なくとも一部を検出するように構成することができる。他の例では、図6Bに概略的に示すように、X線伝搬軸10に沿って伝搬するX線60の第1のスペクトル部分を第1の検出器54のシンチレータスクリーン55によって吸収することができ、X線伝搬軸10に沿って伝搬するX線60の第2のスペクトル部分をシンチレータスクリーン55によって透過させて、第2の検出器56に衝突させることができる。シンチレータスクリーン55によって吸収されたX線は、ミラー57によって反射され、対物レンズ58によって位置敏感型光子検出器59上に結像されるシンチレーション光子(例えば、可視光光子)を生成することができる。ミラー57の材料および厚さは、物体30を透過するX線60の高い透過率を有するように選択することができる。
【0041】
図6Aおよび図6Bは、互いに同じ方向に沿って伝搬するX線60を検出するように2つの検出器54、56が配置される構成を概略的に示しており、特定の他の実装形態では、2つの検出器54、56は、少なくとも1つのX線源20から互いに異なる方向(例えば、真空窓29の外面27に対して45度未満の角度で異なる方向)に沿って伝搬するX線を収集するように配置される。特定の実施態様では、2つの検出器54、56は互いに同時に使用されるが、特定の他の実施態様では、2つの検出器54、56は互いに別々に(例えば、順次)使用される。特定の実施態様では、2つの検出器54、56は、物体30において異なる画素解像度(例えば、検出器のピクセルサイズをその幾何学的画像倍率で割ったものにほぼ等しい)を有するように構成される。特定の実施態様では、2つの検出器54、56の出力を組み合わせることにより、システム5の全体的な検出効率を高めることができ、より広い範囲の物体空間周波数にアクセスすることができ、したがってスループットおよび再構成品質が向上する。特定の実施態様では、第2の検出器56は、X線60のX線スペクトルの異なる部分に敏感であるように構成され(例えば、最適化され)、ビーム硬化および/または材料識別のための補正を可能にすることができる。
【0042】
図7は、本明細書に記載される特定の実施態様による、タルボ干渉法またはタルボ・ロー干渉法を使用してマルチコントラストX線撮像を実行するように構成された例示的なシステム5を概略的に示す。システム5は、広範囲の用途のために高解像度および高感度ならびに独自の撮像能力(例えば、2Dおよび3Dにおける吸収、位相、および暗視野画像コントラスト、暗視野、増強された吸収コントラスト画像化)を提供するように構成することができる。特定の実施態様では、システム5は、タルボ・ロー干渉法、暗視野コントラスト、および増強された吸収コントラストを使用して3D撮像データセットを収集し、データセットを再構成して物体30および/または物体30内のROI31の3D画像を取得するように構成される。特定の実施態様では、図7に概略的に示すように、システム5は、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80と、X線伝搬軸10に沿って伝搬する発散X線60の一部と少なくとも1つのサンプル移動ステージ80の固体部分との相互作用を低減する(例えば、最小化する)ように構成されたサンプルマウント85(例えば、図5Aを参照)とをさらに備える。
【0043】
図7に概略的に示すように、システム5は、X線伝搬軸10に沿った第1の位置にタルボ自己像干渉パターンを生成するように構成された第1の格子G1(例えば、位相格子)と、X線伝搬軸10に沿った第2の位置に配置された第2の格子G2(例えば、分析器格子)とを備える。第1の格子G1および第2の格子G2は、タルボパターンが少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50によって間接的に撮像されるように、タルボ干渉法に適合するように構成される。特定の他の実施態様では、第2の格子G2を省略することができ、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50は、タルボ干渉法に適合するように十分に小さい(例えば、第2格子G2のピッチの半分以下)空間分解能(例えば、X線伝搬軸10に実質的に垂直な横方向のサイズ)を有するアクティブ要素52を有することができ、タルボパターンは、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50によって直接撮像される。特定の実施態様では、システム5は、線源格子をさらに備え、タルボ・ロー干渉法を実行するように構成される。特定の他の実施態様では、X線源20は、1次元または2次元の規則的な配列の複数のX線ターゲット28を含み、複数のX線ターゲット28、第1の格子G1、および第2の格子G2の幾何学的パラメータは、タルボ・ロー干渉計条件を満たすように構成される。X線源20、ならびに第1および第2の格子G1、G2の様々な構成は、米国特許第9,719,947号および第10,349,908号に開示され、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
特定の実施態様では、第1の格子G1は吸収格子を備える。例えば、第1の格子G1および第2の格子G2の一方または両方は、0.5ミクロン~20ミクロンの範囲の幅を有し、0.5ミクロン~20ミクロンの範囲の幅を有する実質的に非吸収性の(例えば、50%未満の吸収)ギャップによって互いに離間された、パターン化された1次元または2次元X線実質的吸収性(例えば、50%を超える吸収)構造のアレイを含むことができる。トリコントラスト撮像(例えば、吸収、位相、および散乱)のための位相ステッピングなどの技術を使用することに加えて、特定の実施態様のシステム5は、ピッチ、X線源20からの距離、ならびに第1および第2の格子の位置合わせを構成することによって暗視野(例えば、散乱)コントラスト撮像のみを取得するように構成することができ、第1の(例えば、上流)格子G1の開口部を透過したX線は、第2の(例えば、下流)格子G2の吸収部分に入射する。例えば、第1の格子G1および第2の格子G2は、第2の格子G2の実質的に非吸収性の構造が第1の格子G1の実質的に吸収性の構造と(例えば、その影で)整列し、第2の格子G2の実質的に吸収性の構造が第1の格子G1の実質的に非吸収性の構造と整列するように、少なくとも1つのX線源20と少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50との間のX線伝搬軸10に沿って配置する(例えば、第1の格子G1は、少なくとも1つの位置選択的X線検出器50よりも少なくとも1つのX線源20に近い)ことができる。このような構成では、物体30が存在しない場合、X線は第1の格子G1および第2の格子G2の両方を透過するとは予想されないが、物体30の散乱機構が存在する場合、散乱されたX線の少なくとも一部が第2の格子G2を透過し、散乱されたX線に対応する物体30内の機構が撮像される。特定の実施態様では、物体30によって散乱されたX線が第2の格子G2の吸収構造によって低減されるように、第1および第2の格子の相対的な位置合わせを暗視野撮像に使用される構成からピッチの半分だけ変位させることによって、増強された吸収コントラスト画像を得ることができる。特定の実施態様では、第2の格子G2を有する代わりに、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50のアクティブ要素52の第1のセット(例えば、画素)は、第1の格子G1の実質的吸収性構造と(例えば、その影で)位置合わせされ、少なくとも1つの位置敏感型X線検出器50のアクティブ要素52の第2のセットは、第1の格子G1の実質的非吸収性構造と位置合わせされる。そのような構成では、物体30がX線伝搬軸10に沿って配置されると、第2のセットのアクティブ要素52によって記録されたX線計数を使用して吸収コントラスト画像を生成することができ、一方、第1のセットのアクティブ要素52によって記録されたX線計数を使用して散乱/暗視野および/または屈折画像を生成することができる。
【0045】
半導体ICパッケージが3Dで撮像される特定の実施態様では、システム5は、半導体チップの表面32の表面法線に対して小さい角度(例えば、45度未満の範囲内)でX線伝搬軸10を有するX線透過画像を取得するように構成される。例えば、大きな角度範囲(例えば、180度~630度)にわたる回転ラミノグラフィ、または有限の角度範囲(例えば、±30度)にわたる限定された角度並進ラミノグラフィを行うことができる。3D画像は、3D画像を生成するために、半導体チップの表面32の表面法線に対して大きな角度(例えば、60度より大きい)のX線伝搬軸10で得られたラミノグラフィ3D画像と組み合わせることができる。図8は、本明細書に記載される特定の実施形態による、並進ラミノグラフィ画像の生成に適合する例示的なシステム5を概略的に示す。システム5は、追加のX線検出器90と、検出器90および物体30をX線源20に対して並進させるように構成された少なくとも1つの検出器ステージ92とを備える。特定の実施態様では、少なくとも1つの検出器ステージ92は、少なくとも1つのサンプル移動ステージ80を備える。例えば、検出器90と物体30とを同じ方向に(例えば、X線源20からROI31を通って検出器90の中心までの線に沿って)比例して移動させることができる。特定の実施態様では、図8のシステム5は、半導体チップの表面法線に実質的に平行な方向に延在する特徴(例えば、銅配線の側壁)について、より高い空間分解能および/またはより良好な画像明瞭性を達成するように構成される。
【0046】
特定の実施態様では、システム5は、少なくとも1つの位置敏感型検出器によって生成された物体の関心領域の画像の幾何学的倍率を変化させるように構成された少なくとも1つの移動機構をさらに備える。例えば、少なくとも1つの移動機構は、物体30に対してX線源20を移動させるように構成された少なくとも1つの第1の移動ステージ(例えば、直線移動ステージ、電気機械式直線移動駆動部、リニアモータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、圧電モータ、ネジ付き回転モータ)、物体30に対して少なくとも1つの位置敏感型検出器50を移動させるように構成された少なくとも1つの第2の移動ステージ(例えば、直線移動ステージ、電気機械式直線移動駆動部、リニアモータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、圧電モータ、ネジ付き回転モータ)、および/またはX線源20および/または少なくとも1つの位置敏感型検出器50に対して物体30を移動させるように構成された少なくとも1つの第3の移動ステージ(例えば、直線移動ステージ、電気機械式直線移動駆動部、リニアモータ、ステッパモータ、エンコーダ付きモータ、圧電モータ、ネジ付き回転モータ、少なくとも1つの直線移動サブステージ82)を備えることができる。
【0047】
一般的に使用される用語は、理解を容易にするために特定の実施態様のシステムおよび方法を説明するために使用されるが、これらの用語は、本明細書ではそれらの最も広い合理的な解釈を有するために使用される。本開示の様々な態様は、例示的な例および実施態様に関して説明されているが、開示された例および実施態様は、限定するものとして解釈されるべきではない。「can」、「could」、「might」、または「may」などの条件付き用語は、特に明記しない限り、または使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施態様は、特定の特徴、要素、および/またはステップを含むが、他の実施態様は含まないことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き用語は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが1つまたは複数の実施態様に何らかの形で必要とされることを意味することを意図するものではない。特に、「備える(comprises)」および「備える(comprising)」という用語は、要素、構成要素、またはステップを非排他的な方法で参照するものとして解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素、またはステップが存在するか、または利用されるか、または明示的に参照されていない他の要素、構成要素、またはステップと組み合わされ得ることを示す。
【0048】
句「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」などの連言用語は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈内で理解されるべきである。したがって、そのような連言用語は、一般に、特定の実施態様がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味するようには意図されていない。
【0049】
用語「およそ(approximately)」、「約(about)」、「一般に(generally)」、および「実質的に(substantially)」などの本明細書で使用される程度の用語は、依然として所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を表す。例えば、「およそ(approximately)」、「約(about)」、「一般に(generally)」、および「実質的に(substantially)」という用語は、記載された量の±10%以内、±5%以内、±2%以内、±1%以内、または±0.1%以内の量を指し得る。他の例として、「ほぼ平行」および「実質的に平行」という用語は、正確に平行から±10度、±5度、±2度、±1度、または±0.1度逸脱する値、量、または特性を指し、「ほぼ垂直」および「実質的に垂直」という用語は、正確に垂直から±10度、±5度、±2度、±1度、または±0.1度逸脱する値、量、または特性を指す。本明細書に開示される範囲はまた、任意のおよびすべての重複、部分範囲、およびそれらの組合せを包含する。「~まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「より大きい(greater than)」、「未満(less than)」、「間(between)」などの語は、列挙された数字を含む。本明細書で使用される場合、「a」、「an」、および「said」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。構造および/または方法は、本明細書では順序形容詞(例えば、第1、第2など)によってラベル付けされた要素に関して説明されているが、順序形容詞は単に1つの要素を別の要素から区別するためのラベルとして使用され、順序形容詞はこれらの要素の順序またはそれらの使用を示すために使用されない。
【0050】
以上、種々の構成について説明した。本明細書に開示された実施態様は相互に排他的ではなく、様々な構成で互いに組み合わせることができることを理解されたい。本発明をこれらの特定の構成を参照して説明してきたが、説明は本発明を例示することを意図しており、限定することを意図していない。本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には様々な修正および応用が思い浮かぶであろう。したがって、例えば、本明細書に開示された任意の方法またはプロセスにおいて、方法/プロセスを構成する行為または動作は、任意の適切な順序で実行されてもよく、必ずしも任意の特定の開示された順序に限定されない。上述した様々な実施態様および例からの特徴または要素を互いに組み合わせて、本明細書に開示された実施態様に適合する代替構成を生成することができる。実施態様の様々な態様および利点が、適切な場合に記載されている。そのような態様または利点のすべてが、任意の特定の実施態様に従って必ずしも達成されるとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、様々な実施態様は、本明細書で教示または示唆され得るような他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点群を達成または最適化するように実行され得ることが認識されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8