(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-27
(45)【発行日】2025-02-04
(54)【発明の名称】エネルギー利用システム及び管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20250128BHJP
【FI】
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2024014665
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】太田 勇
(72)【発明者】
【氏名】水野 敬太
(72)【発明者】
【氏名】梅田 博之
【審査官】木内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-362070(JP,A)
【文献】特開2023-085130(JP,A)
【文献】特開2020-054085(JP,A)
【文献】特開2024-014014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池式発電装置と、前記燃料電池式発電装置に使用される水素を貯留する少なくとも1つの第1カートリッジと、充放電可能な少なくとも1つの第1バッテリーと、を有する複数の建物と、
前記建物ごとに、前記第1カートリッジの交換の有無と、前記第1バッテリーの交換の有無とを判定する管理装置と、を備えるエネルギー利用システムであって、
前記管理装置が、前記建物ごとに、
前記第1バッテリーの残留電力量の値を取得する第1取得処理と、
前記燃料電池式発電装置が前記第1カートリッジの水素残量から発電可能な電力量の値を取得する第2取得処理と、
前記建物における消費電力量の値を予測する第1予測処理と、
前記第1取得処理により取得された残留電力量の値と、前記第2取得処理により取得された発電可能な電力量の値と、前記第1予測処理により予測された消費電力量の値と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジを第2カートリッジへの交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリーを第2バッテリーへの交換の有無とを判定する判定処理と、
を実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記複数の建物のうち、前記第1カートリッジを前記第2カートリッジへの交換を有りと前記判定処理により判定された前記建物へ、前記第2カートリッジを輸送するとともに、前記複数の建物のうち、前記第1バッテリーを前記第2バッテリーへの交換を有りと前記判定処理により判定された前記建物へ、前記第2バッテリーを輸送する輸送機
を備えることを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
水素を製造する水素製造設備と、前記水素製造設備から水素を受けて貯蔵する水素貯蔵設備と、前記水素貯蔵設備から前記第2カートリッジに水素を充填する水素充填設備とを有したプラント
を備えることを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記管理装置が、
前記判定処理の判定を端末に送信する送信処理
を更に実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記管理装置が、
前記判定処理の判定と前記建物の所在情報に基づいて、前記第2カートリッジ及び前記第2バッテリーの配送経路を表す情報を作成する作成処理と、
前記作成処理により作成された情報を端末に送信する送信処理と、
を更に実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記建物は、前記燃料電池式発電装置の発電電力と前記第1バッテリーの電力とのうち優先的に消費するものを選択可能に構成されている
ことを特徴とするエネルギー利用システム。
【請求項7】
建物に電力を供給する燃料電池式発電装置に使用される水素を貯留するとともに前記建物にある少なくとも1つの第1カートリッジの交換の有無と、前記建物にある充放電可能な少なくとも1つの第1バッテリーの交換の有無とを判定する管理装置であって、
前記第1バッテリーの残留電力量の値を取得する第1取得手段と、
前記燃料電池式発電装置が前記第1カートリッジの水素残量から発電可能な電力量の値を取得する第2取得手段と、
前記建物における消費電力量の値を予測する第1予測手段と、
前記第1取得手段により取得された残留電力量の値と、前記第2取得手段により取得された発電可能な電力量の値と、前記第1予測手段により予測された消費電力量の値と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジを第2カートリッジへの交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリーを第2バッテリーへの交換の有無とを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の管理装置において、
前記建物に電力を供給する自然エネルギー発電装置の発電電力量の値を予測する第2予測手段、を更に備え、
前記判定手段が、前記第1取得手段により取得された残留電力量の値と、前記第2取得手段により取得された発電可能な電力量の値と、前記第1予測手段により予測された消費電力量の値と、前記第2予測手段によって予測された発電電力量の値と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジを前記第2カートリッジへの交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリーを前記第2バッテリーへの交換の有無とを判定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の管理装置において、
前記第1取得手段によって取得される残留電力量の値と、前記第2取得手段によって取得される発電可能な電力量の値と、前記第2予測手段によって予測される発電電力の値とを合計して、前記第1予測手段によって予測される消費電力量の値をその合計から減算した第1評価値が所定値未満である場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジを前記第2カートリッジへの交換を有りと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリーを前記第2バッテリーへの交換を無しと判定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の管理装置において、
前記第1評価値が前記所定値よりも高い第2所定値を超える場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジを前記第2カートリッジへの交換を無しと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリーを前記第2バッテリーへの交換を有りと判定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の管理装置において、
前記第1評価値が
前記所定値以上、前記
第2所定値以下である場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジを前記第2カートリッジへの交換を無しと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリーを前記第2バッテリーへの交換を無しと判定する
ことを特徴とする管理装置。
【請求項12】
請求項7から11の何れか一項に記載の管理装置において、
前記第2カートリッジの水素残量が前記第1カートリッジの水素残量よりも多く、前記第2バッテリーの残留電力量が前記第1バッテリーの残留電力量よりも少ない
ことを特徴とする管理装置。
【請求項13】
請求項8又は9に記載の管理装置において、
前記第2予測手段が、気象予報データに基づいて前記自然エネルギー発電装置の発電電力量の値を予測する
ことを特徴とする管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー利用システム及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の建物、配送車及びデータセンターを備えるエネルギー輸送システムを開示する。各建物は太陽光発電装置及び蓄電池を有する。配送車は車両蓄電池を有する。配送車はこれら建物を巡回する。配送車が建物に到着した時、余剰エネルギーが建物の蓄電池から配送車の車両蓄電池に蓄えられるか、不足エネルギーが配送車の車両蓄電池から建物の蓄電池に蓄えられる。
【0003】
ところで、電力送電網の構築には膨大な費用と時間が必要となることから、山岳地帯、離島又は森林地帯等のように、電力送電網が構築されていない地域では、オフグリッド社会の実現が望まれる。つまり、建物が電力送電網に繋がらず、各建物が電力会社に頼らずに電力を自給自足できるような社会の実現が望まれる。オフグリッド社会の実現のためには、自家発電装置が各建物に必要である。環境に与える負荷が軽減されるためには、太陽光エネルギー、風力、水力又は地熱のような自然エネルギーから電力を生成する自然エネルギー発電装置の利用が建物の自家発電装置に利用されることが好ましい。また、燃料電池式発電装置によって電力が生成される際には、二酸化炭素が発生しないことから、環境負荷の軽減のために燃料電池式発電装置が自家発電装置に利用されることが好ましい。但し、燃料電池式発電装置が自家発電装置に利用される場合、工場等の水素製造設備によって製造された水素を住宅に配送する必要がある。また、自家発電装置により生成された余剰電力が有効利用されるためには、余剰電力が各建物において蓄えられるように、バッテリーが各建物に設置されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電力送電網が構築されていないと、自家発電装置によって生成された余剰電力及びバッテリーの容量を超えた電力が他の建物に融通することができない。
そこで、本発明の目的は、電力送電網が構築されていない社会でも、電気エネルギーを他の形態のエネルギーに変えて利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の括弧書きで示された参照符号は
図1~
図4において参照される。
【0007】
請求項1によれば、
燃料電池式発電装置(23)と、前記燃料電池式発電装置(23)に使用される水素を貯留する少なくとも1つの第1カートリッジ(20)と、充放電可能な少なくとも1つの第1バッテリー(30)と、を有する複数の建物(10)と、
前記建物(10)ごとに、前記第1カートリッジ(20)の交換の有無と、前記第1バッテリー(30)の交換の有無とを判定する管理装置(40)と、を備えるエネルギー利用システムであって、
前記管理装置(40)が、前記建物(10)ごとに、
前記第1バッテリー(30)の残留電力量の値(W1)を取得する第1取得処理と、
前記燃料電池式発電装置(23)が前記第1カートリッジ(20)の水素残量から発電可能な電力量の値(W2)を取得する第2取得処理と、
前記建物(10)における消費電力量の値(W4)を予測する第1予測処理と、
前記第1取得処理により取得された残留電力量の値(W1)と、前記第2取得処理により取得された発電可能な電力量の値(W2)と、前記第1予測処理により予測された消費電力量の値(W4)と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を第2カートリッジ(20)への交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を第2バッテリー(30)への交換の有無とを判定する判定処理と、
を実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0008】
以上のような請求項1によれば、建物(10)ごとに、建物(10)の第1カートリッジ(20)が第2カートリッジ(20)に交換されてよいか否か判定される。その交換が有りと判定されたら、第2カートリッジ(20)が建物(10)に運び込まれ、第1カートリッジ(20)が建物(10)から運び出される。従って、カートリッジ(20)が流通し、建物(10)の間で電気エネルギーを水素の化学エネルギーに変えて利用し合える。また、建物(10)ごとに、建物(10)の第1バッテリー(30)が第2バッテリー(30)にに交換されてよいか否か判定される。その交換が有りと判定されたら、第2バッテリー(30)が建物(10)に運び込まれ、第1バッテリー(30)が建物(10)から運び出される。従って、バッテリー(30)が流通し、建物(10)の間で電気エネルギーをバッテリー(30)における化学エネルギーに変えて利用し合える。
【0009】
請求項2によれば、
請求項1に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記複数の建物(10)のうち、前記第1カートリッジ(20)を前記第2カートリッジ(20)への交換を有りと前記判定処理により判定された建物(10)へ、前記第2カートリッジ(20)を輸送するととも、前記複数の建物(10)のうち、前記第1バッテリー(30)を前記第2バッテリー(30)への交換を有りと前記判定処理により判定された建物(10)へ、前記第2バッテリーを輸送する輸送機(70)
を備えることを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0010】
以上のような請求項2によれば、カートリッジ(20)及びバッテリー(30)が流通し、建物(10)の間で電気エネルギーをカートリッジ(20)及びバッテリー(30)における化学エネルギー等のような移動可能なエネルギーに変えて利用し合える。
【0011】
請求項3によれば、
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記第2カートリッジ(20)に充填される水素を製造する水素製造設備(3)を有したプラント
を備えることを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0012】
以上のような請求項3によれば、建物(10)に提供される水素を準備することができる。
【0013】
請求項4によれば、
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記管理装置(40)が、
前記判定処理の判定を端末(35、91、92又は93)に送信する送信処理
を更に実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0014】
以上のような請求項4によれば、端末(35、91、92又は93)の使用者が、管理装置(40)によって実行される判定処理の判定を把握できる。
【0015】
請求項5によれば、
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記管理装置(40)が、
前記判定処理の判定と前記建物(10)の所在情報に基づいて、前記第2カートリッジ(20)及び前記第2バッテリー(30)の配送経路を表す情報を作成する作成処理と、
前記作成処理により作成された情報を端末(35、91、92又は93)に送信する送信処理と、
を更に実行する
ことを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0016】
以上のような請求項5によれば、端末(35、91、92又は93)の使用者が、管理装置(40)によって作成される配送経路を把握できる。端末(35、91、92又は93)の使用者が、配送経路に従って第2カートリッジ(20)及び第2バッテリー(30)を配送できる。
【0017】
請求項6によれば、
請求項1又は2に記載のエネルギー利用システムにおいて、
前記建物(10)は、前記燃料電池式発電装置(23)の発電電力と前記第1バッテリー(30)の電力とのうち優先的に消費するものを選択可能に構成されている
ことを特徴とするエネルギー利用システムが提供される。
【0018】
以上のような請求項6によれば、第1カートリッジの水素残量と第1バッテリーの残留電力量に応じて臨機応変な対応が可能である。
【0019】
請求項7によれば、
建物(10)に電力を供給する燃料電池式発電装置(23)に使用される水素を貯留するとともに前記建物(10)にある少なくとも1つの第1カートリッジ(20)の交換の有無と、前記建物(10)にある充放電可能な少なくとも1つの第1バッテリー(30)の交換の有無とを判定する管理装置(40)であって、
前記第1バッテリー(30)の残留電力量の値(W1)を取得する第1取得手段と、
前記燃料電池式発電装置(23)が前記第1カートリッジ(20)の水素残量から発電可能な電力量の値(W2)を取得する第2取得手段と、
前記建物(10)における消費電力量の値(W4)を予測する第1予測手段と、
前記第1取得手段により取得された残留電力量の値(W1)と、前記第2取得手段により取得された発電可能な電力量の値(W2)と、前記第1予測手段により予測された消費電力量の値(W4)と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を第2カートリッジ(20)への交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を第2バッテリー(30)への交換の有無とを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0020】
請求項8によれば、
請求項7に記載の管理装置(40)において、
前記建物(10)に電力を供給する自然エネルギー発電装置(27)の発電電力量の値を予測する第2予測手段、を更に備え、
前記判定手段が、前記第1取得手段により取得された残留電力量の値(W1)と、前記第2取得手段により取得された発電可能な電力量の値(W2)と、前記第1予測手段により予測された消費電力量の値(W4)と、前記第2予測手段によって予測された発電電力量の値と、に基づいて、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を前記第2カートリッジ(20)への交換の有無と、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を前記第2バッテリー(30)への交換の有無とを判定する
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0021】
以上のような請求項7,8によれば、建物(10)の第1カートリッジ(20)が第2カートリッジ(20)に交換されてよいか否か判定される。その交換が有りと判定されたら、第2カートリッジ(20)が建物(10)に運び込まれ、第1カートリッジ(20)が建物(10)から運び出される。従って、カートリッジ(20)が流通し、建物(10)の間で電気エネルギーを水素の化学エネルギーに変えて利用し合える。また、建物(10)の第1バッテリー(30)が第2バッテリー(30)にに交換されてよいか否か判定される。その交換が有りと判定されたら、第2バッテリー(30)が建物(10)に運び込まれ、第1バッテリー(30)が建物(10)から運び出される。従って、バッテリー(30)が流通し、建物(10)の間で電気エネルギーをバッテリー(30)における化学エネルギーに変えて利用し合える。
【0022】
請求項9によれば、
請求項8に記載の管理装置(40)において、
前記第1取得手段によって取得される残留電力量の値(W1)と、前記第2取得手段によって取得される発電可能な電力量の値(W2)と、前記第2予測手段によって予測される発電電力の値とを合計して、前記第1予測手段によって予測される消費電力量の値(W4)をその合計から減算した第1評価値(E1)が所定値(Th0)未満である場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を前記第2カートリッジ(20)への交換を有りと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を前記第2バッテリー(30)への交換を無しと判定する
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0023】
以上のような請求項9によれば、第1評価値(E1)が所定値(Th0)未満であることは、建物(10)において電力量不足が生じる虞があることを意味する。そのため、第1カートリッジ(20)が水素で満たされた第2カートリッジ(20)に交換されることによって、建物(10)における電力量不足の発生を抑えることができる。
【0024】
請求項10によれば、
請求項9に記載の管理装置(40)において、
前記第1評価値(E1)が前記所定値(Th0)よりも高い第2所定値(Th1)を超える場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を前記第2カートリッジ(20)への交換を無しと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を前記第2バッテリー(30)への交換を有りと判定する
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0025】
以上のような請求項10によれば、第1評価が第2所定値(Th1)を超えることは、自然エネルギー発電装置(27)の発電電力量が建物(10)の消費電力量に対して不足しても、バッテリー(30)及び燃料電池式発電装置(23)が不足分を十分過ぎるほど補うことを意味する。そのため、建物(10)の第1バッテリー(30)が第2バッテリー(30)に交換されても、建物(10)における電力量不足が生じない。
【0026】
請求項11によれば、
請求項10に記載の管理装置(40)において、
前記第1評価値(E1)が前記所定値(Th0)以上、前記第2所定値(Th1)以下である場合に、前記判定手段が、少なくとも1つの前記第1カートリッジ(20)を前記第2カートリッジ(20)への交換を無しと判定するとともに、少なくとも1つの前記第1バッテリー(30)を前記第2バッテリー(30)への交換を無しと判定する
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0027】
以上のような請求項11によれば、第1評価値(E1)が第2所定値(Th1)以下であることは、自然エネルギー発電装置(27)の発電電力量が建物(10)の消費電力量に対して不足しても、バッテリー(30)及び燃料電池式発電装置(23)が不足分を十分に補えることを意味する。そのため、充電された第1バッテリー(30)が交換されずに建物(10)に残っていても、建物(10)における電力量不足の発生が抑えられる。
【0028】
請求項12によれば、
請求項7から11の何れか一項に記載の管理装置(40)において、
前記第2カートリッジ(20)の水素残量が前記第1カートリッジ(20)の水素残量よりも多く、前記第2バッテリー(30)の残留電力量が前記第1バッテリー(30)の残留電力量よりも少ない
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0029】
以上のような請求項12によれば、建物(10)における電力不足量の発生が抑えられ、建物(10)における余剰電力が無駄なく蓄えられ、カートリッジ(20)及びバッテリー(30)が流通する。
【0030】
請求項13によれば、
請求項8又は9に記載の管理装置(40)において、
前記第2予測手段が、気象予報データに基づいて前記自然エネルギー発電装置(27)の発電電力量の値を予測する
ことを特徴とする管理装置(40)が提供される。
【0031】
以上のような請求項13によれば、自然エネルギー発電装置(27)の発電電力量の値の予測の正確性が高い。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電力送電網が構築されていなくても、エネルギー利用システム及び管理装置が、電気エネルギーを他の形態のエネルギーに変えて利用し合えるような社会の実現に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、エネルギー利用システムを示した図である。
【
図3】
図3は、エネルギー利用システムの管理システムを示した図である。
【
図4】
図4は、全体管理装置のコンピューターが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。実施形態の特徴及び技術的な効果は、以下の詳細な説明及び図面から理解される。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0035】
以下の説明において、「第1」及び「第2」などのような序数が共通の名称に付されている場合、序数はそれが付された対象を識別する目的でのみ用いられる。序数はそれが付された対象を特定の対象に限定しない上、序数はそれが付された対象の順番、順位、順序、階級、優先及び劣後などを特定しない。
【0036】
以下の説明において、時間及び時刻の最小単位は、限定されるものではなく、例えば、1秒、1分、1時間、6時間、12時間、24時間、1週間、2週間、1月、3月、6月又は1年である。時間及び時刻は、暦により表されてもよい。
【0037】
以下の説明において、水素の量の単位は、水素ガスの体積若しくは圧力又はこれら両方で表現されてもよいし、水素の重量で表現されてもよい。
【0038】
<1. エネルギー利用システムの概要>
図1は、エネルギー利用システムを示した図である。
エネルギー利用システムは、或る国の或る地域(以下、特定地域という。)に存在するオフグリッドシティである。エネルギー利用システムは、プラント1、配送センター9、ストック施設8、輸送機70及び多数の建物10を備える。建物10が特定地域に分布する。プラント1が特定地域の特定の場所に設立されている。配送センター9がプラント1に隣接して設立されている。ストック施設8は、特定地域のうち、建物10の密集地に設立されている。
【0039】
プラント1では、各建物10の余剰電力若しくは自然エネルギー又はこれら両方を利用した水の電気分解による水素の製造がなされている。プラント1は、外部から水素を受入れてもよい。プラント1で生成された水素は、各建物10に配送される。各建物10では、太陽光エネルギーなどのような自然エネルギーから電気エネルギーの生成と、水素の電気化学反応による電気エネルギーの生成とが実現されている。建物10は電力会社に頼らずとも電力を自給する。各建物10の余剰電力は、例えば化学エネルギー等に変換された上で、送電網を用いずに配送によりプラント1に供給される。特定地域に住む人々は温室効果ガス等を極力排出しない暮らしを送れる。このエネルギー利用システムは、カーボンニュートラルの推進と、脱炭素社会の実現と、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成とに貢献する。
【0040】
このエネルギー利用システムは、複数の建物10、プラント1、配送センター9及びストック施設8の間での後述の可搬なカートリッジ20及びバッテリー30の流通の実現に貢献する。このエネルギー利用システムは、カートリッジ20及びバッテリー30の流通を通じて、各建物10の自然エネルギー発電装置27及びプラント1の自然エネルギー発電設備2によって生成された電気エネルギーをカートリッジ20及びバッテリー30の化学エネルギーに利用し合えるような社会の実現に貢献する。
【0041】
特に、エネルギー利用システムは、建物10から回収する空のカートリッジ20の数及びその回収タイミングの適正化に寄与する。エネルギー利用システムは、建物10へ配送するフルなカートリッジ20の数及びその配送タイミングの適正化に寄与する。エネルギー利用システムは、建物10から回収する満充電のバッテリー30の数及びその回収タイミングの適正化に寄与する。このエネルギー利用システムは、建物10へ配送する充電不足のバッテリー30の数及びその配送タイミングの適正化に寄与する。よって、このエネルギー利用システムは、各建物10における電力量不足の発生を抑制することに貢献するとともに、特定地域におけるオフグリッド社会の実現に貢献する。
【0042】
<2. プラント>
プラント1には、自然エネルギー発電設備2、水素製造設備3、水素貯蔵設備4、水素充填設備5、充放電設備6及び送電設備7が設置されている。
【0043】
自然エネルギー発電設備2は、自然エネルギーから電力を生成する。自然エネルギー発電設備2は、例えば太陽光発電設備、水力発電設備、風力発電設備若しくは地熱発電設備又はこれら2以上の組み合わせを有する。太陽光発電設備は、太陽光エネルギーを電力に変換する。水力発電装置は、水の運動エネルギーを電力に変換する。風力発電設備は、風の運動エネルギーを電力に変換する。地熱発電設備は、地熱エネルギーを電力に変換する。自然エネルギー発電設備2は生成した電力を送電設備7に出力して、その電力が送電設備7を介して水素製造設備3、水素貯蔵設備4、水素充填設備5及び充放電設備6に送られる。自然エネルギー発電設備2が水素製造設備3、水素貯蔵設備4、水素充填設備5及び充放電設備6の敷地から離れた敷地に設置されて、自然エネルギー発電設備2で生成された電力が送電設備7により水素製造設備3、水素貯蔵設備4、水素充填設備5及び充放電設備6に送られてもよい。
【0044】
水素製造設備3は、電力を利用して水素を製造し、その水素を水素貯蔵設備4に送る。例えば水素製造設備3は電気分解装置を有してもよい。電気分解装置は、自然エネルギー発電設備2又は充放電設備6から供給された電力を利用して水を電気分解することによって、水素を生成する。
【0045】
水素貯蔵設備4は、水素製造設備3によって製造された水素を貯蔵する。
【0046】
水素充填設備5は、水素貯蔵設備4から水素の供給を受けて、人が持ち運べる程度の小型なカートリッジ20に水素を小分けして充填する。
【0047】
充放電設備6は充電機能及び放電機能を有する。充放電設備6には、複数のバッテリー30が接続可能及び切り離し可能である。充放電設備6は、充放電設備6に装着されるバッテリー30ごとに充電機能と放電機能の切り替えが可能である。充放電設備6の充電機能が機能する場合、充放電設備6がそれに接続されたバッテリー30に電力を充電する。自然エネルギー発電設備2から充放電設備6に供給された電力が、バッテリー30の充電に利用される。充放電設備6の放電機能が機能する場合、充放電設備6がバッテリー30から電力を放電する。バッテリー30から放電された電力は、送電設備7を介して、水素製造設備3、水素貯蔵設備4及び水素充填設備5に送られる。
【0048】
プラント1は、一意な識別番号の割り当てを受けている。
【0049】
<3. カートリッジ及びバッテリー並びにそれらの輸送>
カートリッジ20は、低圧又は高圧な気体状態、液体状態又は吸蔵状態の水素を貯蔵する。吸蔵状態とは、水素が合金に吸蔵されて可逆的に放出可能な状態にあることをいう。カートリッジ20は、ボンベ又は水素貯蔵合金を有する。カートリッジ20は、一意な識別番号の割り当てを受けている。識別番号は、例えばバーコード又は二次元コード等のようにコード化されて、カートリッジ20に付されている。識別番号が例えばRFID(Radio Frequency Identification)のタグ等のような無線通信可能な記録媒体に格納され、その記録媒体がカートリッジ20に付されてもよい。以下、カートリッジ20に割り当てられた識別番号をカートリッジIDという。
【0050】
バッテリー30は、例えばリチウムイオン電池、全個体電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池又はナトリウム硫黄電池などのような二次電池を有する。バッテリー30は、一意な識別番号の割り当てを受けている。識別番号は、例えばバーコード又は二次元コード等のようにコード化されて、バッテリー30に付されている。識別番号が例えばRFID(Radio Frequency Identification)のタグ等のような無線通信可能な記録媒体に格納され、その記録媒体がバッテリー30に付されてもよい。以下、バッテリー30に割り当てられた識別番号をバッテリーIDという。
【0051】
カートリッジ20及びバッテリー30は、プラント1、配送センター9、ストック施設8及び多数の建物10の間で輸送される。例えば、水素が満たされたカートリッジ20がプラント1から、配送センター9を経由して、必要に応じてストック施設8を経由して、建物10に輸送される。例えば、空のカートリッジ20が、建物10から、必要に応じてストック施設8を経由して、配送センター9を経由してプラント1に輸送される。例えば、空(から)のバッテリー30が、プラント1から、配送センター9を経由して、必要に応じてストック施設8を経由して、建物10に輸送される。例えば、電力を飽和的に蓄えたバッテリー30が、建物10から、必要に応じてストック施設8を経由して、配送センター9を経由して、プラント1に輸送される。カートリッジ20及びバッテリー30は、輸送の途中、プラント1、配送センター9、ストック施設8又は建物10に一時的に保管されてもよい。一時的に保管される期間は問わない。
【0052】
図1に示すように、配送センター9は、カートリッジ20及びバッテリー30の配送拠点である。つまり、輸送機70がカートリッジ20及びバッテリー30を配送センター9から建物10及びストック施設8に輸送したり、建物10及びストック施設8から配送センター9に輸送したりする。配送センター9の設置場所は、プラント1の隣り、プラント1内、或いは、プラント1から離れた土地である。
【0053】
ストック施設8は、配送センター9と建物10の間の中継点であって、カートリッジ20及びバッテリー30の一時保管施設である。具体的には、例えば、輸送機70がカートリッジ20及びバッテリー30を配送センター9からストック施設8に輸送し、建物10の居住者がストック施設8に一時保管されたカートリッジ20又はバッテリー30をストック施設8から建物10に持ち運ぶ。例えば、建物10の居住者がカートリッジ20又はバッテリー30を建物10からストック施設8に持ち運び、輸送機70がカートリッジ20及びバッテリー30をストック施設8から配送センター9に輸送する。輸送機70がカートリッジ20及びバッテリー30を建物10から配送センター9に直接輸送する場合、それらカートリッジ20及びバッテリー30がストック施設8に保管されない。ストック施設8は、カートリッジ20及びバッテリー30を一時保管するために施錠・解錠可能なロッカーを有してもよい。ストック施設8は、商業施設などに設置されてもよい。
【0054】
カートリッジ20がプラント1、配送センター9、ストック施設8、建物10及び輸送機70の何れかに運び入れたり、プラント1、配送センター9、ストック施設8、建物10及び輸送機70の何れに運び出されたりする際にも、そのカートリッジ20の識別番号がリーダーによって読み取られ、その識別番号が、運び入れ先又は運び出し元の識別情報とともに全体管理装置40に転送される。これにより、カートリッジ20が追跡されて、カートリッジ20の位置及び移動が全体管理装置40によって管理される。同様に、バッテリー30も追跡され、バッテリー30の位置及び移動が全体管理装置40によって管理される。
【0055】
輸送機70は、例えば貨物自動車及びマルチコプターである。輸送機70は、カートリッジ20及びバッテリー30を荷積みするとともに荷降ろしする荷役装置を有してもよい。オペレータが輸送機70に乗って輸送機70を操縦してもよいし、輸送機70を遠隔的に操縦してもよい。輸送機70は自動運転されてもよい。輸送機70が、蓄電池及びモーターを有し、その蓄電池から放電されたエネルギーにより駆動されるモーターの動力で移動する電動輸送機であってもよい。輸送機70が電動輸送機である場合、輸送機70の蓄電池がプラント1の充放電設備6によって充電されてもよい。輸送機70が貨物自動車である場合、輸送機70が通る道路は、輸送機70に専用であってもよいし、輸送機70以外の一般車と共用されてもよい。
【0056】
なお、以下では、建物10にあるカートリッジ20のことを第1カートリッジ20といい、輸送機70によって輸送されるカートリッジ20のことを第2カートリッジ20といい、建物10にあるバッテリー30のことを第1バッテリー30という、輸送機70によって配送センター9から輸送されるバッテリー30のことを第2バッテリー30という。
【0057】
輸送機70は、定期的に例えば毎日、毎週又は毎月、配送センター9とストック施設8と建物10の間を巡回する。
輸送機70が建物10に到着した時、建物10にある第1カートリッジ20が、輸送機70によって輸送される第2カートリッジ20と交換されて、回収される。建物10から輸送機70に回収される第1カートリッジ20の水素残量は、輸送機70から建物10に引き渡される第2カートリッジ20の水素残量よりも少なく、例えば、建物10から輸送機70に回収される第1カートリッジ20は空であり、輸送機70から建物10に引き渡される第2カートリッジ20は水素で満たされている。
輸送機70が建物10に到着した時、建物10にある第1バッテリー30が、輸送機70によって輸送される第2バッテリー30と交換されて、回収される。建物10から輸送機70に回収される第1バッテリー30の残留電力量は、輸送機70から建物10に引き渡される第2バッテリー30の残留電力量よりも大きく、例えば、建物10から輸送機70に回収される第1バッテリー30の電力量の残留率はほぼ100%であり、輸送機70から建物10に引き渡される第2バッテリー30の電力量の残留率は0%である。
なお、輸送機70が建物10に到着した時、カートリッジ20とバッテリー30のどちらかが交換されてもよい。
【0058】
輸送機70、配送センター9及びストック施設8のそれぞれは、一意な識別番号の割り当てを受けている。
【0059】
<4. 建物>
図2は、建物10を示した図である。建物10は、例えば戸建て住宅、集合住宅又は店舗等のような一般建築物である。建物10は、一意な識別番号の割り当てを受けている。以下、建物10に割り当てられた識別番号を建物IDという。
【0060】
各建物10は、電気配線網12、分電盤13、電力計14、電力計15、パワーコンディショナー16、充放電装置18、カートリッジホルダー19、カートリッジ20、水素供給器21、エア供給器22、燃料電池式発電装置23、貯水槽24、残量計25、電力計26、自然エネルギー発電装置27、バッテリーホルダー29、バッテリー30及び個別管理装置35を備える。電気配線網12、分電盤13、自然エネルギー発電装置27、電力計15、パワーコンディショナー16、充放電装置18、カートリッジホルダー19、水素供給器21、エア供給器22、燃料電池式発電装置23、貯水槽24、残量計25、電力計26、自然エネルギー発電装置27及びバッテリーホルダー29は建物10に設置されている。これらの設置箇所は屋外と屋内のどちらであってもよい。
【0061】
電気配線網12は、建物10に張り巡らされている。建物10に設置又は配置された多数の負荷11が電気配線網12に接続されている。電気配線網12が分電盤13に接続されている。
【0062】
分電盤13は、パワーコンディショナー16から分電盤13に供給された交流電力を負荷11に分配する。負荷11は、分電盤13から電気配線網12を通じて交流電力の供給を受けるとともに、その交流電力を消費する。負荷11は、照明器、冷蔵庫、空調機器、給湯器、通信ネットワーク機器(ルーター、無線親機、無線中継機、電話機等)、テレビ、音響機器、録画機及び調理家電などのような電気機器である。
【0063】
カートリッジホルダー19は、複数のカートリッジ20を保持する。カートリッジ20はカートリッジホルダー19に対して着脱可能である。カートリッジ20がカートリッジホルダー19に装着されると、カートリッジ20が水素供給器21を介して燃料電池式発電装置23の燃料極に接続される。
【0064】
カートリッジホルダー19は、宅配の受領ボックスを兼ねてもよい。具体的には、カートリッジホルダー19は物理的な鍵、電子的な鍵又は暗号などのツールを利用して施錠可能・解錠可能な扉を有し、その扉が解錠されて開かれることによってカートリッジホルダー19に対するカートリッジ20の着脱が可能になり、扉が閉じられて施錠されることによってカートリッジホルダー19内のカートリッジ20の盗難が防止される。この場合、カートリッジホルダー19は、複数のカートリッジ20が装着される領域のほか、カートリッジ20以外の配送物が収容される領域を内側に有してもよい。
【0065】
残量計25はカートリッジ20ごとにカートリッジホルダー19に設けられている。残量計25は、カートリッジ20に残留した水素の量を測定し、その測定値を個別管理装置35に出力する。残量計25によるカートリッジ20の水素残量測定の手法はどのようなものでもよい。例えば、残量計25は、カートリッジ20内の水素の圧力を圧力計によって測定して、その測定圧力を水素の残量に換算してもよい。残量計25は、カートリッジ20の全重量を重量計によって測定して、その測定重量からカートリッジ20自体の重量を減算することによって、測定重量を水素の残量に換算してもよい。残量計25は、カートリッジ20から水素供給器21に送られる水素の流量を流量計により測定して、その測定流量の時間積分からカートリッジ20の最大水素貯留量を減算することによって、その測定流量を水素の残量に換算してもよい。
【0066】
水素供給器21は、バルブなどのような流体機器を有する。水素供給器21は、カートリッジホルダー19に保持されたカートリッジ20を順次選択して、選択したカートリッジ20から燃料電池式発電装置23の燃料極へ水素を供給する。選択されたカートリッジ20内の水素の残量が少なくなったら、水素供給器21が次のカートリッジ20を選択して、選択した複数のカートリッジ20から燃料電池式発電装置23へ水素を供給する。選択されたカートリッジ20が空になったら、水素供給器21がそのカートリッジ20の選択を解除して、そのカートリッジ20からの供給を停止する。水素供給器21は、選択中のカートリッジ20から燃料電池式発電装置23への水素の供給流量若しくは供給圧又はこれら両方を調整する。カートリッジホルダー19に保持されたカートリッジ20のうち選択中のカートリッジ20は水素の消費中である。未選択のカートリッジ20は水素を満たしている。選択解除済みのカートリッジ20は空である。
【0067】
エア供給器22は、燃料電池式発電装置23の酸素極に接続されている。エア供給器22は、バルブ及びブロワなどのような流体機器を有する。エア供給器22は、燃料電池式発電装置23の酸素極へ空気を供給する。エア供給器22は、燃料電池式発電装置23への水素の供給流量若しくは供給圧又はこれら両方を調整する。
【0068】
燃料電池式発電装置23の燃料極及び酸素極は、電力計26を介してパワーコンディショナー16に接続されている。燃料電池式発電装置23は、水素供給器21によって供給された水素と、エア供給器22によって供給された空気中の酸素とを電解質膜を通じて反応させることによって直流電力及び水を生成する。燃料電池式発電装置23は、生成した直流電力を、電力計26を介してパワーコンディショナー16に出力する。燃料電池式発電装置23は、生成した水を一又は複数の貯水槽24へ排出する。電力計26は、燃料電池式発電装置23の出力電流又は出力電圧を計測して、出力電流又は出力電圧から算出するものでもよい。
【0069】
電力計26は、燃料電池式発電装置23の発電電力を測定し、その測定値を個別管理装置35に出力する。
【0070】
貯水槽24は、燃料電池式発電装置23から供給された水を貯める。貯水槽24がカートリッジ式であり、貯水槽24がその設置箇所に対して着脱可能であってもよい。なお、燃料電池式発電装置23によって生成された水が下水設備に排出されてもよい。
【0071】
自然エネルギー発電装置27は、電力計15を介してパワーコンディショナー16に接続される。自然エネルギー発電装置27は、自然エネルギーから直流電力を生成する。自然エネルギー発電装置27は、生成した直流電力をパワーコンディショナー16に供給する。例えば、自然エネルギー発電装置27は、太陽光のエネルギーから直流電力を生成する太陽光発電パネルを有する。その太陽光発電パネルは例えば建物10の屋根に設置される。なお、自然エネルギー発電装置27は、太陽光発電パネル以外の装置、例えば水力発電装置、風力発電装置又は地熱発電装置を有してもよい。自然エネルギー発電装置27は、太陽光発電パネル、水力発電装置、風力発電装置及び地熱発電装置の中の2つ以上の組み合わせでもよい。
【0072】
電力計15は、自然エネルギー発電装置27の発電電力を測定し、それらの測定値を個別管理装置35に出力する。電力計15は、自然エネルギー発電装置27の出力電流又は出力電圧を計測して、出力電流又は出力電圧から算出するものでもよい。
【0073】
バッテリーホルダー17は、複数のバッテリー30を保持する。バッテリー30はバッテリーホルダー17に対して着脱可能である。バッテリー30がバッテリーホルダー17に装着されると、バッテリー30が充放電装置18に接続される。
【0074】
充放電装置18は充電機能及び放電機能を有する。充放電装置18は、パワーコンディショナー16から充放電装置18に供給された余剰電力を、バッテリーホルダー17に装着されたバッテリー30に充電する。充放電装置18は、バッテリー30からパワーコンディショナー16に直流の不足電力に出力する。
【0075】
充放電装置18は、充電量測定器を有する。充放電装置18は、充電量測定器によって、バッテリー30ごとにバッテリー30の残留電力量を測定する。充放電装置18は、バッテリー30ごとの残留電力量の測定値を個別管理装置35に出力する。これにより、個別管理装置35は、バッテリー30ごとの残留電力量の測定値を取得する。なお、個別管理装置35は、非常に短い周期で周期的に、バッテリー30ごとの残留電力量の測定値を測定時刻に対応付けて記憶してもよい。
【0076】
パワーコンディショナー16は、DC-ACコンバータ、リレー及び制御回路等を有する。パワーコンディショナー16は、分電盤13に接続されている。電力計14が分電盤13とパワーコンディショナー16の間に設けることができる。
【0077】
パワーコンディショナー16は、自然エネルギー発電装置27から供給された直流電力を交流電力に変換した上で、その交流電力を分電盤13に供給する。パワーコンディショナー16は、燃料電池式発電装置23から供給された直流電力を交流電力に変換した上で、その交流電力を分電盤13に供給する。パワーコンディショナー16は、充放電装置18から供給された直流電力を交流電力に変換した上で、その交流電力を分電盤13に供給する。分電盤13は、パワーコンディショナー16から分電盤13に供給された交流電力を負荷11に分配する。
【0078】
パワーコンディショナー16は、自然エネルギー発電装置27の発電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力と充放電装置18の放電電力のうち、自然エネルギー発電装置27の発電電力を最優先に分電盤13に供給する。
【0079】
負荷11の総消費電力が自然エネルギー発電装置27の発電電力未満である場合、パワーコンディショナー16は、その発電電力からその総消費電力を差し引いた余剰電力を充放電装置18に供給する。そのため、余剰電力が充放電装置18によってバッテリー30に供給される。
【0080】
建物10は、燃料電池式発電装置23の発電電力と第1バッテリー30の電力とのうち優先的に消費するものを選択可能に構成されている。具体的には、負荷11の総消費電力が自然エネルギー発電装置27の発電電力を超える場合、パワーコンディショナー16は、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のどちらを優先消費するかの選択が可能である。パワーコンディショナー16は、個別管理装置35から入力した指令に基づいて、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のうち、優先消費するものを選択する。
【0081】
充放電装置18の放電電力の優先的な消費が選択された場合、パワーコンディショナー16は、充放電装置18の放電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力を分電盤13に供給する。それでも、充放電装置18の放電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して不足した場合、パワーコンディショナー16は燃料電池式発電装置23の発電電力も分電盤13に供給する。なお、充放電装置18の放電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して不足した場合、水素供給器21、エア供給器22及び燃料電池式発電装置23が稼働し、充放電装置18の放電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して満たした場合、水素供給器21、エア供給器22及び燃料電池式発電装置23が停止する。
【0082】
燃料電池式発電装置23の発電電力の優先的な消費が選択された場合、パワーコンディショナー16は、燃料電池式発電装置23の発電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力を分電盤13に供給する。それでも、燃料電池式発電装置23の発電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して不足した場合、パワーコンディショナー16は充放電装置18の放電電力も分電盤13に供給する。燃料電池式発電装置23の発電電力の優先的な消費が選択された場合、水素供給器21、エア供給器22及び燃料電池式発電装置23が常に稼働してもよいし、自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して不足した時に水素供給器21、エア供給器22及び燃料電池式発電装置23が稼働してもよい。水素供給器21、エア供給器22及び燃料電池式発電装置23が常に稼働する場合、燃料電池式発電装置23の発電電力及び自然エネルギー発電装置27の発電電力が負荷11の総消費電力に対して余剰した時には、パワーコンディショナー16が余剰電力を充放電装置18に供給する。そのため、余剰電力が充放電装置18によってバッテリー30に供給される。
【0083】
なお、自然エネルギー発電装置27の発電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力と充放電装置18の放電電力は様々な優先順位で消費されてもよい。
【0084】
電力計14は、負荷11の総消費電力を測定して、それらの測定値を個別管理装置35に出力する。
【0085】
個別管理装置35は、居住者によって使用される端末である。個別管理装置35は、それを使用する居住者が居住する建物10の建物IDと同一の識別番号の割り当てを受けている。
【0086】
個別管理装置35は、汎用コンピューターシステム又は専用コンピューターシステムから構成される。汎用コンピューターシステムとは、汎用OS(Operating System)がインストールされた例えば携帯電話機、スマートフォン、タブレット型コンピューター、ラップトップ型コンピューター及びデスクトップ型コンピューターなどのようなコンピューターシステムをいう。汎用OSは、例えば、Windows(登録商標)、Android(登録商標)、iOS(登録商標)、macOS(登録商標)、Linux(登録商標)又はUnix(登録商標)である。専用コンピューターシステムとは、建物の内壁などに設置されているとともに、建物10の負荷11の監視又は制御をする機能を有するコンピューターシステムをいう。例えば、専用コンピューターシステムとしては、HEMS(Home Energy Management System)又はBEMS(Building Energy Management System)コントローラーが挙げられる。個別管理装置35は、汎用コンピューターシステムと専用コンピューターシステムの組み合わせでもよい。ユーザーの端末装置が宅内ネットワークと、必要に応じて通信ネットワーク90とを通じて個別管理装置35にアクセス可能であってもよい。
【0087】
個別管理装置35は、表示装置を有する。個別管理装置35は、表示装置により各種の表示をする。個別管理装置35は、タッチパネル、押しボタン、キー、キーボード、マウス、タッチパッド、スタライス及びポインティングデバイスなどのような入力装置を有する。居住者が入力装置を操作することによって、個別管理装置35がその操作に応じた指令及び情報などを受け付ける。例えば、居住者が個別管理装置35の入力装置により第1優先モード(バッテリー優先モード)を選択したら、第1優先モードの選択の旨が個別管理装置35からパワーコンディショナー16及び全体管理装置40に転送され、パワーコンディショナー16は、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のうち、充放電装置18の放電電力を優先的に供給する。例えば、居住者が個別管理装置35の入力装置により第2優先モード(燃料電池優先モード)を選択したら、第2優先モードの選択の旨が個別管理装置35からパワーコンディショナー16及び全体管理装置40に転送され、パワーコンディショナー16は、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のうち、燃料電池式発電装置23の発電電力を優先的に消費する。なお、居住者が第1優先モードと第2優先モードのどちらかを選択するのに対して、個別管理装置35が演算処理により自動的に第1優先モードと第2優先モードのどちらかを選択し、パワーコンディショナー16が選択されたモードに従って上述のように動作してもよい。また、管理者が第1優先モードと第2優先モードのどちらかを選択して、選択されたモードを後述の全体管理装置40に入力し、全体管理装置40が、選択されたモードを個別管理装置35に転送し、パワーコンディショナー16が選択されたモードに従って上述のように動作してもよい。
【0088】
個別管理装置35は、携帯電話回線通信モジュール、ネットワークカード及びWiFi(登録商標)子機などのような通信器を有する。個別管理装置35は、通信器によって、インターネットなどのような通信ネットワーク90に接続されている。個別管理装置35は、通信ネットワーク90を通じて全体管理装置40にアクセス可能である。例えばVPN(Virtual Private Network)などのようなセキュアな通信プロトコルが、個別管理装置35と全体管理装置40の間の通信に採用されてもよい。
【0089】
個別管理装置35は、プログラム46を記憶した記憶媒体を有する。このプログラム46は個別管理装置35を以下のように機能させる。
【0090】
個別管理装置35は、時間を計って現在時刻を認識する計時機能を有する。
個別管理装置35は、非常に短い周期で周期的に、貯水計によって測定された貯水槽24の貯水量の測定値と測定時刻を対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、貯水量の測定値の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、貯水量の測定値の時系列データに基づいて、貯水量の測定値と測定時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な(リアルタイムの)測定値及び測定時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に(リアルタイムで)、貯水計によって測定された貯水槽24の貯水量の測定値と測定時刻を対応付けて、その測定値と測定時刻を全体管理装置40に送信する。
【0091】
個別管理装置35は、非常に短い周期で周期的に、電力計26によって測定された燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、その発電電力の測定値の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、その発電電力の測定値の時系列データに基づいて、その発電電力の測定値と測定時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な測定値及び測定時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に、電力計26によって測定された燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けて、その測定地と測定時刻を全体管理装置40に送信する。
【0092】
個別管理装置35は、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値の時系列データを時間で積分することによって、燃料電池式発電装置23の発電電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の燃料電池式発電装置23の発電電力量の値を算出してもよい。
【0093】
個別管理装置35は、非常に短い周期で周期的に、電力計15によって測定された自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、その発電電力の測定値の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、その発電電力の測定値の時系列データに基づいて、その発電電力の測定値と測定時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な測定値及び測定時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に、電力計15によって測定された自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けて、その測定値と測定時刻を全体管理装置40に送信する。
【0094】
個別管理装置35は、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データを時間で積分することによって、自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値を算出してもよい。
【0095】
個別管理装置35は、非常に短い周期で周期的に、電力計14によって測定された負荷11の総消費電力の測定値を測定時刻に対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、その総消費電力の測定値の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、その総消費電力の測定値の時系列データに基づいて、その総消費電力の測定値と測定時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な測定値及び測定時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に、電力計14によって測定された負荷11の総消費電力の測定値を測定時刻に対応付けて、その測定値と測定時刻を全体管理装置40に送信する。
【0096】
個別管理装置35は、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データを時間で積分することによって、負荷11の総消費電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の負荷11の総消費電力量の値を算出してもよい。
【0097】
個別管理装置35は、即時的に、カートリッジ20ごとに水素残量の測定値を取得する。具体的には、残量計25がカートリッジ20の水素の残量を測定し、その測定値が個別管理装置35に出力されることによって、個別管理装置35がカートリッジ20の水素残量の測定値を取得する。個別管理装置35は、即時的に、これらカートリッジ20の水素の残量を合計することによって、総残量を算出する。個別管理装置35は、即時的に、水素総残量から、燃料電池式発電装置23が発電可能な電力量の値を算出する。個別管理装置35は、即時的に、水素総残量及び発電可能電力量の値と算出時刻を対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、水素総残量及び発電可能電力量の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、水素総残量及び発電可能電力量の時系列データに基づいて、水素総残量及び発電可能電力量と算出時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な水素総残量、発電可能電力量及び算出時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に、水素総残量及び発電可能電力量と算出時刻を全体管理装置40に送信する。
【0098】
個別管理装置35は、即時的に、充放電装置18から、バッテリー30ごとの残留電力量の測定値を取得する。個別管理装置35は、即時的に、これらバッテリー30の残留電力量の測定値を合計することによって、総残留電力量の値を算出する。個別管理装置35は、即時的に、総残留電力量の値と算出時刻を対応付けて記憶する。これにより、個別管理装置35は、総残量電力量の時系列データを蓄積する。個別管理装置35は、総残留電力量の時系列データに基づいて、総残留電力量と算出時刻との関係を表した推移をグラフ等で表示装置に表示するとともに、即時的な総残留電力量及び算出時刻も推移と一緒に表示装置に表示する。個別管理装置35は、即時的に、総残留電力量の値と算出時刻を対応付けて、総残留電力量の値と算出時刻を全体管理装置40に送信する。
【0099】
なお、後述の全体管理装置40が、以上の個別管理装置35の機能と同様な機能を有してもよい。
【0100】
<5. 管理システム>
エネルギー利用システムは、
図3に示すような管理システムを有している。この管理システムは、エネルギー利用システムを全体的に管理する。管理システムは、各建物10の居住者によって使用される個別管理装置35と、配送センター9の運営者によって使用される全体管理装置40と、気象情報用ストレージ装置80と、輸送機70のオペレータによって使用される第1端末91と、プラント1の事業者によって使用される第2端末92と、ストック施設8に設置される第3端末93と、を備える。全体管理装置40は、データセンターなどに設置されている。個別管理装置35は、建物10に設置されているか、建物10の居住者によって持ち運び可能である。第1端末91は、輸送機70に設置されているか、輸送機70のオペレータによって持ち運び可能である。第2端末92は、プラント1に設置されているか、プラント1の事業者によって持ち運び可能である。
【0101】
全体管理装置40は、コンピューター41、メモリデバイス45、入力デバイス43、表示デバイス44及び通信器42を備える。
【0102】
コンピューター41は、全体管理装置40の全体的な制御を司る。コンピューター41は、時間を計って現在時刻を認識する計時機能を有する。コンピューター41は、メインボード、1又は複数のハードウェアプロセッサー、GPU(Graphics Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを有する。メインボードは、バス、バスコントローラ及びインターフェース回路などを有するとともに、ハードウェアプロセッサー、GPU、RAM、メモリデバイス45、入力デバイス43、表示デバイス44及び通信器42の間で情報を伝送する。ハードウェアプロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)であってもよい。ハードウェアプロセッサーは、各種の演算処理を行う。RAMは、ハードウェアプロセッサーによる演算処理に際して、ハードウェアプロセッサーに記憶領域又は作業領域を提供する。GPUは、ハードウェアプロセッサーよりも高速に行える処理(例えば、画像処理及び行列演算処理)をハードウェアプロセッサーの指令の下で行う。
【0103】
入力デバイス43は、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド、スタライス、ポインティングデバイス、キー及び押しボタンなどのような入力装置である。入力デバイス43は、管理者が入力デバイス43に対して行った操作の内容に応じた信号をコンピューター41に出力する。コンピューター41は、入力デバイス43から転送された信号に従って、管理者による入力及び指令を認識する。
【0104】
表示デバイス44は、例えば液晶ディスプレイデバイス又は有機ELディスプレイデバイスであってもよい。表示デバイス44は、コンピューター41から入力した映像信号に従った映像を表示する。
【0105】
通信器42は、例えばネットワークカード又はWiFi(登録商標)子機であってもよい。通信器42は、ルーターなどを介して通信ネットワーク90に接続される。
【0106】
メモリデバイス45は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などのようなメモリデバイスであってもよい。OS(Operating System)がメモリデバイス45に格納され、OSがコンピューター41によって実行されるように全体管理装置40にインストールされている。メモリデバイス45には、コンピューター41、特にハードウェアプロセッサーがOS上で実行可能なプログラム46が格納されている。
【0107】
全体管理装置40は、ストレージ装置50に接続されている。ストレージ装置50は、半導体記憶装置、磁気記憶装置、NAS(Network Attached Storage)、データサーバー、ファイルサーバー又はクラウドコンピューティングシステムである。全体管理装置40のコンピューター41は、ストレージ装置50に情報を記録したり、ストレージ装置50に記録された情報を読み込んだりする。ストレージ装置50は、インターフェース回路によりコンピューター41に接続されてもよいし、通信ネットワーク90を介してコンピューター41によってアクセスされてもよい。
【0108】
続いて、プログラム46によって実現されるコンピューター41の機能について説明する。
【0109】
コンピューター41は、建物10ごとに、個別管理装置35から送られた情報を収集して蓄積する。具体的には、以下の通りである。
【0110】
コンピューター41は、個別管理装置35から貯水槽24の貯水量の測定値及び測定時刻を受信するごとに、貯水槽24の貯水量の測定値と測定時刻を対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、貯水槽24の貯水量の測定値の時系列データ51をストレージ装置50に蓄積する。
【0111】
コンピューター41は、個別管理装置35から燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値及び測定時刻を受信するごとに、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値の時系列データ52をストレージ装置50に蓄積する。コンピューター41は、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値の時系列データ52を時間で積分することによって、燃料電池式発電装置23の発電電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の燃料電池式発電装置23の発電電力量の値を算出してもよい。
【0112】
コンピューター41は、個別管理装置35から自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値を測定時刻を受信するごとに、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値を測定時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データ53をストレージ装置50に蓄積する。コンピューター41は、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データ53を時間で積分することによって、自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値を算出してもよい。
【0113】
コンピューター41は、個別管理装置35から負荷11の総消費電力の測定値及び測定時刻を受信するごとに、負荷11の総消費電力の測定値を測定時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データ54をストレージ装置50に蓄積する。コンピューター41は、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データ54を時間で積分することによって、負荷11の総消費電力量の値を算出する。積分期間は例えば1時間、1日、1週間、1ヶ月又は1年間でもよい。つまり、個別管理装置35は、毎時、毎日、毎週、毎月又は毎年の負荷11の総消費電力量の値を算出してもよい。
【0114】
コンピューター41は、個別管理装置35からカートリッジ20の水素総残量及び算出時刻を受信するごとに、カートリッジ20の水素総残量を算出時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、カートリッジ20の水素総残量の時系列データ55をストレージ装置50に蓄積する。
コンピューター41は、個別管理装置35から、カートリッジ20の水素総残量に基づく燃料電池式発電装置23の発電可能電力量の値及び算出時刻を受信するごとに、燃料電池式発電装置23の発電可能電力量の値を算出時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、燃料電池式発電装置23の発電可能電力量の時系列データ56をストレージ装置50に蓄積する。
【0115】
コンピューター41は、個別管理装置35からバッテリー30の総残留電力量の値及び算出時刻を受信するごとに、バッテリー30の総残留電力量の値を算出時刻に対応付けてストレージ装置50に記録する。これにより、コンピューター41は、バッテリー30の総残留電力量の時系列データ57をストレージ装置50に蓄積する。
【0116】
時系列データ51~57は建物10ごとのデータであり、建物IDが時系列データ51~57に割り当てられている。
【0117】
居住者が個別管理装置35の入力装置により第1優先モード(バッテリー優先モード)を選択することによって、第1優先モードの選択の旨が個別管理装置35から全体管理装置40に転送され、全体管理装置40が第1優先モードの選択の旨を建物IDに対応付けて認識する。居住者が個別管理装置35の入力装置により第2優先モード(燃料電池優先モード)を選択することによって、第2優先モードの選択の旨が個別管理装置35から全体管理装置40に転送され、全体管理装置40が第2優先モードの選択の旨を建物IDに対応付けて認識する。
【0118】
管理者が入力デバイス43により建物10を指定して第1優先モード(バッテリー優先モード)を選択することによって、コンピューター41が第1優先モードの選択の旨をその建物10の個別管理装置35に転送すると、個別管理装置35が第1優先モードの選択の旨の指令をパワーコンディショナー16に出し、パワーコンディショナー16が、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のうち、充放電装置18の放電電力を優先的に分電盤13に供給する。管理者が入力デバイス43により建物10を指定して第2優先モード(燃料電池優先モード)を選択することによって、コンピューター41が第2優先モードの選択の旨をその建物10の個別管理装置35に転送すると、個別管理装置35が第2優先モードの選択の旨の指令をパワーコンディショナー16に出し、パワーコンディショナー16が、充放電装置18の放電電力と燃料電池式発電装置23の発電電力のうち、燃料電池式発電装置23の発電電力を優先的に分電盤13に供給する。
【0119】
気象情報用ストレージ装置80は、全体管理装置40に接続されている。気象情報用ストレージ装置80は、半導体記憶装置、磁気記憶装置、NAS(Network Attached Storage)、データサーバー、ファイルサーバー又はクラウドコンピューティングシステムである。気象情報用ストレージ装置80は、インターフェース回路により全体管理装置40のコンピューター41に接続されてもよいし、通信ネットワーク90を介してコンピューター41によってアクセスされてもよい。
【0120】
気象情報用ストレージ装置80は、特定地域の天気予報をデータ81として記憶する。つまり、気象情報用ストレージ装置80は、特定地域の気象の将来推移のデータ81を記憶する。気象とは、大気状態(晴天・曇天・雨天・降雪などのことをいう)、気温、湿度、日射量及び降水量などのようなことをいう。
【0121】
<6. プログラム>
輸送機70が配送センター9から出発する前に、プログラム46は、建物10ごとに、以下の処理を全体管理装置40のコンピューター41に実行させる。なお、プログラム46は、第2優先モード(燃料電池優先モード)が選択された建物10ごとに、以下の処理を全体管理装置40のコンピューター41に実行させてもよい。
【0122】
図4に示すように、コンピューター41は、バッテリー30の総残留電力量の時系列データ57から、最新の総残留電力量の値を取得する(ステップS1)。最新の総残留電力量の値とは、ステップS1の時点で最後に時系列データ57に追加された総残留電力量の値のことをいう。以下、取得された総残留電力量の値が「W1」と表記されることもある。
【0123】
次に、コンピューター41は、燃料電池式発電装置23の発電可能電力量の時系列データ56から、最新の発電可能電力量の値を取得する(ステップS2)。最新の発電可能電力量の値とは、ステップS2の時点で最後に時系列データ56に追加された発電可能電力量の値のことをいう。以下、取得された発電可能電力量の値が「W2」と表記されることもある。
【0124】
次に、コンピューター41は、自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値を予測する(ステップS3)。発電電力量の値の予測には、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データ53若しくは天気予報データ81又はこれら両方が用いられて参照されてもよい。時系列データ53若しくは天気予報データ81又はこれら両方が予め機械学習された学習済みモデルに入力されることによって、自然エネルギー発電装置27の発電電力量の値が予測されてもよく、例えばその学習済みモデルは様々な家庭における過去の日々の太陽光発電パネルの発電電力、発電電力量、暦、気温、天気等のような教師データにより学習されたものである。ここで、予測される発電電力量の値の算定期間は輸送機70の定期的な巡回のサイクルに等しく、例えば、輸送機70が毎日、毎週又は毎月巡回するのであれば、予測される発電電力量は、建物10の自然エネルギー発電装置27により今後1日、7日又は1月の間に生成されるであろう電力量である。以下、予測された発電電力量の値が「W3」と表記されることもある。
【0125】
次に、コンピューター41は、建物10における消費電力量の値を予測する(ステップS4)。消費電力量の値の予測には、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データ54若しくは天気予報データ81又はこれら両方が用いられて参照されてもよい。時系列データ54若しくは天気予報データ81又はこれら両方が予め機械学習された学習済みモデルに入力されることによって、消費電力が予測されてもよく、例えばその学習済みモデルは様々な家庭における過去の日々の消費電力量、暦、気温、天気等のような教師データにより学習されたものである。ここで、予測される消費電力量の算定期間は輸送機70の定期的な巡回のサイクルに等しく、例えば、輸送機70が毎日、毎週又は毎月巡回するのであれば、予測される消費電力量は、建物10において今後1日、7日又は1月の間に消費されるであろう電力量である。以下、予測された総消費電力量の値が「W4」と表記されることもある。
【0126】
次に、コンピューター41は、総残留電力量W1と発電可能電力量W2と発電電力量W3と総消費電力量W4に基づいて、建物10の第1カートリッジ20を輸送機70の第2カートリッジ20への交換の有無と、建物10の第1バッテリー30を輸送機70の第2バッテリー30への交換の有無とを判定する。具体的には、以下の通りである。
【0127】
コンピューター41は、総残留電力量W1、発電可能電力量W2、発電電力量W3及び総消費電力量W4から評価値E1を算出する(ステップS5)。評価値E1は、総残留電力量W1、発電可能電力量W2及び発電電力量W3の和から総消費電力量W4を差し引いた値である。
【0128】
コンピューター41は、評価値E1を所定閾値Th0及び所定閾値Th1と比較する(ステップS6,S7)。所定閾値Th0は、建物10において電力量不足が生じるか否かを判定するための値である。所定閾値Th0は例えばゼロである。但し、所定閾値Th0は、安全率を考慮に入れて、ゼロよりも大きな正の値であってもよい。所定閾値Th1は、自然エネルギー発電装置27の発電電力量が建物10の消費電力量に対して不足しても、バッテリー30及び燃料電池式発電装置23が不足分を十分過ぎるほど補えるか否かを判定するための値である。所定閾値Th1は、所定閾値Th0よりも高い正の値である。比較の結果、評価値E1が所定閾値Th0未満であれば(ステップS6:YES)、コンピューター41は、建物10の第1カートリッジ20を輸送機70の第2カートリッジ20への交換を有りと判定するとともに、建物10の第1バッテリー30を輸送機70の第2バッテリー30への交換を無しと判定する(ステップS8)。評価値E1が所定閾値Th0未満であることは、総残留電力量W1と発電可能電力量W2と発電電力量W3の和が総消費電力量W4未満であることと同意である。ここで、評価値E1が所定閾値Th0未満であることは、前述の算定期間において、建物10において電力量不足が生じる虞があることを意味する。そのため、空の第1カートリッジ20が水素で満たされた第2カートリッジ20に交換されることによって、建物10における電力量不足が生じない。
なお、ステップS8後、コンピューター41は、カートリッジ20の水素総残量の時系列データ55又はその時系列データ55中の最新の水素総残量に基づいて、交換するカートリッジ20の数を算出してもよい。更に、コンピューター41は、交換するカートリッジ20の数を補正してもよく、例えばコンピューター41は、バッテリー30の総残留電力量の時系列データ57、その時系列データ57の中の最新の総残留電力量、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データ54、その時系列データ54の中の最新の測定値、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データ53、その時系列データ53の中の最新の測定値、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値の時系列データ52、又は、その時系列データ52の中の最新の測定値に基づいて、交換するカートリッジ20の数を補正してもよい。補正後のカートリッジ20の数はゼロであってもよい。
【0129】
比較の結果、評価値E1が所定閾値Th1を超えれば(ステップS6:NO、ステップS7:NO)、コンピューター41は、建物10の第1カートリッジ20を輸送機70の第2カートリッジ20への交換を無しと判定するとともに、建物10の第1バッテリー30を輸送機70の第2バッテリー30への交換を有りと判定する(ステップS9)。ここで、評価値E1が所定閾値Th1を超えることは、前述の算定期間において、自然エネルギー発電装置27の発電電力量が建物10の消費電力量に対して不足しても、バッテリー30及び燃料電池式発電装置23が不足分を十分過ぎるほど補うことを意味する。そのため、充電された第1バッテリー30が充電されていない第2バッテリー30に交換されても、建物10において電力量不足が生じない。
なお、ステップS9の後、コンピューター41は、バッテリー30の総残留電力量の時系列データ57又はその時系列データ57の中の最新の総残留電力量に基づいて、交換するバッテリー30の数を算出してもよい。更に、コンピューター41は、交換するバッテリー30の数を補正してもよく、例えばコンピューター41は、カートリッジ20の水素総残量の時系列データ55、その時系列データ55中の最新の水素総残量、燃料電池式発電装置23の発電可能電力量の時系列データ56、その時系列データ56中の最新の発電可能電力量、負荷11の総消費電力の測定値の時系列データ54、その時系列データ54の中の最新の測定値、自然エネルギー発電装置27の発電電力の測定値の時系列データ53、その時系列データ53の中の最新の測定値、燃料電池式発電装置23の発電電力の測定値の時系列データ52、又は、その時系列データ52の中の最新の測定値に基づいて、交換するバッテリー30の数を補正してもよい。補正後のバッテリー30の数はゼロであってもよい。
【0130】
比較の結果、評価値E1が所定閾値Th0以上、所定閾値Th1以下であれば(ステップS6:NO、ステップS7:YES)、コンピューター41は、建物10の第1カートリッジ20を輸送機70の第2カートリッジ20への交換を無しと判定するとともに、建物10の第1バッテリー30を輸送機70の第2バッテリー30への交換を無しと判定する(ステップS10)。ここで、評価値E1が所定閾値Th1以下であることは、前述の算定期間において、自然エネルギー発電装置27の発電電力量が建物10の消費電力量に対して不足しても、バッテリー30及び燃料電池式発電装置23が不足分を十分に補えることを意味する。そのため、充電された第1バッテリー30が交換されずに建物10に残されることによって、建物10における電力量不足の発生が抑えられる。
【0131】
コンピューター41が、ステップS8、S9又はS10のような判定結果と、カートリッジ20の交換数及びバッテリー30の交換数とを個別管理装置35に送信し、個別管理装置35が判定結果及び交換数を記憶して表示してもよい。コンピューター41がステップS8、S9又はS10のような判定結果と、カートリッジ20の交換数及びバッテリー30の交換数と、建物IDとを第1端末91、第2端末92及び第3端末93に送信し、第1端末91、第2端末92及び第3端末93が判定結果、交換数及び建物IDを記憶して表示してもよい。それらの表示タイミングは、例えば、輸送機70が配送センター9から出発した後に輸送機70が水素で満たされた第2カートリッジ20と充電されていない第2バッテリー30を配送する時である。
【0132】
<7. 配送>
上記の処理の後、全体管理装置40のコンピューター41が、各建物10及びストック施設8の所在情報と、上記の処理による各建物10に対する判定結果とに基づいて、建物10及びストック施設8を巡る順番(以下、配送順という。)を演算する。また、全体管理装置40のコンピューター41が、各建物10及びストック施設8の所在情報と、上記の処理による各建物10に対する判定結果と地図情報とに基づいて、建物10及びストック施設8を巡る経路(以下、配送経路という。)を演算する。
【0133】
全体管理装置40のコンピューター41が、演算された配送順及び配送経路を表す情報を作成して、その情報を第1端末91に送信する。第1端末91は、その情報に基づいて、配送順及び配送経路を表示してもよい。
【0134】
その後、水素が満たされた第2カートリッジ20及び充電されていない第2バッテリー30が配送センター9において輸送機70に積み込まれる。第2カートリッジ20が輸送機70に積み込まれる際には、第1端末91のリーダーが第2カートリッジ20のカートリッジIDを読み込み、第1端末91がカートリッジIDを輸送機70の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信し、全体管理装置40のコンピューター41がそれらを受信する。コンピューター41がカートリッジID、輸送機70の識別番号及び受信時刻を相互に紐付けて、これらをストレージ装置50のトレーサビリティデータベース59に追記することによって、コンピューター41が第2カートリッジ20の位置を管理する。同様に、第1端末91のリーダーが第2バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第1端末91がバッテリーIDを輸送機70の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信し、バッテリーIDと輸送機70の識別番号と受信時刻がコンピューター41によってトレーサビリティデータベース59に追記される。
【0135】
その後、輸送機70が配送センター9を出発して、第1端末91が受けた配送順及び配送経路の情報に従って輸送機70が移動して建物10及びストック施設8を巡る。オペレータが輸送機70を操縦してもよいし、輸送機70が自動運転されてもよい。第1端末91が輸送機70を制御する機能を有する場合、輸送機70が配送順及び配送経路に従って移動するように第1端末91が輸送機70を制御することによって、輸送機70が自動運転されてもよい。
【0136】
輸送機70が建物10に到着したら、建物10の第1カートリッジ20が輸送機70の第2カートリッジ20に交換されるか、建物10の第1バッテリー30が輸送機70の第2バッテリー30に交換される。交換はオペレータと居住者のどちらが行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。カートリッジホルダー19から第1カートリッジ20の取り外しは、オペレータと居住者のどちらが行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。カートリッジホルダー19への第2カートリッジ20の取り付けは、オペレータと居住者のどちらが行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。バッテリーホルダー17から第1バッテリー30の取り外しは、オペレータと居住者のどちらが行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。バッテリーホルダー17への第2バッテリー30の取り付けは、オペレータと居住者のどちらが行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。建物10の第1カートリッジ20又は第1バッテリー30が輸送機70に積み込まれる際には、第1端末91のリーダーが第1カートリッジ20のカートリッジID又は第1バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第1端末91がカートリッジID又はバッテリーIDを輸送機70の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信し、全体管理装置40のコンピューター41がそれらを受信する。コンピューター41がカートリッジID(又はバッテリーID)、輸送機70の識別番号及び受信時刻を相互に紐付けて、これらをストレージ装置50のトレーサビリティデータベース59に追記することによって、第1カートリッジ20又は第1バッテリー30の位置が全体管理装置40によって管理される。輸送機70の第2カートリッジ20又は第2バッテリー30が建物10に運び込まれる際には、第1端末91のリーダーが第2カートリッジ20のカートリッジID又は第2バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第1端末91がカートリッジID又はバッテリーIDを建物10の建物IDと対応付けて全体管理装置40に送信し、コンピューター41がカートリッジID(又はバッテリーID)、建物10の建物ID及び受信時刻を相互に紐付けて、これらをストレージ装置50のトレーサビリティデータベース59に追記する。これにより、第2カートリッジ20又は第2バッテリー30の位置が全体管理装置40によって管理される。
【0137】
輸送機70がストック施設8に到着したら、ストック施設8の第1カートリッジ20が輸送機70の第2カートリッジ20に交換され、ストック施設8の第1バッテリー30が輸送機70の第2バッテリー30に交換される。交換はオペレータが行ってもよいし、ストック施設8の者が行ってもよいし、輸送機70の荷役装置によって自動的に行われてもよい。ストック施設8の第1カートリッジ20又は第1バッテリー30が輸送機70に積み込まれる際には、第1端末91又は第3端末93のリーダーが第1カートリッジ20のカートリッジID又は第1バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第1端末91又は第3端末93がカートリッジID又はバッテリーIDを輸送機70の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信する。輸送機70の第2カートリッジ20又は第2バッテリー30が建物10に運び込まれる際には、第1端末91又は第3端末93のリーダーが第2カートリッジ20のカートリッジID又は第2バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第1端末91又は第3端末93がカートリッジID又はバッテリーIDをストック施設8の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信する。建物10の居住者は、自宅の第1カートリッジ20又は第1バッテリー30をホルダー17又は19から取り外し、その第1カートリッジ20又は第1バッテリー30をストック施設8まで持ち運び、その第1カートリッジ20又は第1バッテリー30をストック施設8の第2カートリッジ20又は第2バッテリー30と交換し、その第2カートリッジ20又は第2バッテリー30を自身の建物10に持ち帰り、その第2カートリッジ20又は第2バッテリー30を元のホルダー17又は19に装着する。ストック施設8の第2カートリッジ20又は第2バッテリー30が建物10に持ち帰られる際には、第3端末93のリーダーが第2カートリッジ20のカートリッジID又は第2バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第3端末93がカートリッジID又はバッテリーIDを建物10の建物IDと対応付けて全体管理装置40に送信し、コンピューター41がカートリッジID(又はバッテリーID)、建物ID及び受信時刻を相互に紐付けて、これらをストレージ装置50のトレーサビリティデータベース59に追記する。これにより、第2カートリッジ20又は第2バッテリー30の位置が全体管理装置40によって管理される。建物10の第1カートリッジ20又は第1バッテリー30がストック施設8に持ち込まれる際には、第3端末93のリーダーが第1カートリッジ20のカートリッジID又は第1バッテリー30のバッテリーIDを読み込み、第3端末93がカートリッジID又はバッテリーIDをストック施設8の識別番号と対応付けて全体管理装置40に送信し、コンピューター41がカートリッジID(又はバッテリーID)、ストック施設8の識別番号及び受信時刻を相互に紐付けて、これらをストレージ装置50のトレーサビリティデータベース59に追記する。これにより、第1カートリッジ20又は第1バッテリー30の位置が全体管理装置40によって管理される。
【0138】
建物10及びストック施設8の巡回後、輸送機70が配送センター9に戻る。
【0139】
<8. 融通>
或る建物10(以下、第1建物10という。)において電力量が余剰し、別の建物10(以下、第2建物10という。)において電力量が不足する場合、第1建物10のカートリッジ20若しくはバッテリー30又はこれら両方が第2建物10に引き渡されて、カートリッジ20若しくはバッテリー30又はこれら両方が第2建物10において使用されてもよい。カートリッジ20若しくはバッテリー30又はこれら両方の引き渡し後、第1建物10の個別管理装置35が対価の値を計算するとともに全体管理装置40に対価の値を送信し、全体管理装置40が対価の値を第2建物10の個別管理装置35に送信し、第2建物10の個別管理装置35が対価の値を表示する。全体管理装置40は複数の建物10の間における対価の移動を管理して、建物10ごとの引き渡し・受け取り対価を計算する。対価は通貨又は暗号資産(仮想通貨)であってもよいし、経済的な価値を有する点数であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 プラント
3 水素製造設備
10 建物
20 カートリッジ
23 燃料電池式発電装置
27 自然エネルギー発電装置
30 バッテリー
35 個別管理装置
40 全体管理装置
41 コンピューター
70 輸送機
91 第1端末
92 第2端末
93 第3端末
【要約】
【課題】本発明の目的は、電力送電網が構築されていない社会でも、電気エネルギーを他の形態のエネルギーに変えて利用し合えるようにすることである。
【解決手段】エネルギー利用システムは複数の建物及び管理装置を備える。建物は燃料電池式発電装置、第1カートリッジ及び第1バッテリーを有する。管理装置が、建物ごとに、第1バッテリーの残留電力量の値を取得する第1取得処理と、燃料電池式発電装置が第1カートリッジの水素残量から発電可能な電力量の値を取得する第2取得処理と、建物における消費電力量の値を予測する第1予測処理と、第1取得処理により取得された残留電力量の値と、第2取得処理により取得された発電可能な電力量の値と、第1予測処理により予測された消費電力量の値と、に基づいて、第1カートリッジを第2カートリッジへの交換の有無と、第1バッテリーを第2バッテリーへの交換の有無とを判定する判定処理と、を実行する。
【選択図】
図1