(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20250129BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20250129BHJP
B65G 63/00 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/40
B65G63/00 F
(21)【出願番号】P 2019215641
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 いずみ
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-074437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0221225(US,A1)
【文献】特開2014-203409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港に配備されている複数の地上支援装置の運行を管理する運行管理システムであって、
飛行機の機種に関する機種情報が含まれる前記空港のフライトスケジュール、作業者関連データ、及び
、前記複数の地上支援装置のそれぞれがどの飛行機の機種に対応しているかに関する対応機種情報が含まれる地上支援装置関連データに基づいて、各フライトに対して必要な作業を特定するとともに、各作業を担当する作業者及び使用される前記地上支援装置を決定し、作業スケジュールを作成するスケジュール作成部を備え、
前記スケジュール作成部は、
前記作業スケジュールを作成する際に前記機種情報及び前記対応機種情報を参照して各作業を担当可能な前記地上支援装置を選択するとともに、前記作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを前記地上支援装置に送信することを特徴とする運行管理システム。
【請求項2】
前記スケジュール作成部は、前記作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを、前記地上支援装置を用いて作業する作業者が携帯している作業者端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記作業者端末は、前記地上支援装置による作業の進捗に関する作業進捗データを前記スケジュール作成部に送信可能であり、
前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データを考慮して前記作業スケジュールを再作成可能であることを特徴とする請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データに基づいて所定時間毎に前記作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断すると前記作業スケジュールを再作成することを特徴とする請求項3に記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データに異常を示すデータが含まれていた場合に、前記作業スケジュールを再作成することを特徴とする請求項3又は4に記載の運行管理システム。
【請求項6】
前記スケジュール作成部は、前記フライトスケジュールに変更があった場合に、変更後の前記フライトスケジュールに基づいて前記作業スケジュールを再作成することを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港に配備されている複数の地上支援装置の運行を管理する運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空港には種々の作業を行うための複数の地上支援装置が配備されている。このような地上支援装置はGSE(Ground Support Equipment)と呼ばれており、GSEにはハイリフトローダ、ベルトローダ、トーイングトラクタ、パッセンジャーステップ等の様々な種類がある。現状、GSEを用いて作業を行う際には、作業者がフライトスケジュールを確認し、必要なGSEを手配してから作業に当たっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、作業者がフライトスケジュールの確認からGSEの手配まで行うのは非常に手間である。また、作業を行うまでの準備が煩雑であり、作業者には多くの経験や知識が求められるため、作業者の大きな負担となっている。さらに、作業者が情報を見落とすなどしてミスが生じれば、フライトスケジュールにも影響が出てしまう。
【0004】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、空港における地上支援装置の運行管理において作業者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空港に配備されている複数の地上支援装置の運行を管理する運行管理システムであって、前記空港のフライトスケジュールに基づいて、前記複数の地上支援装置による作業スケジュールを作成するスケジュール作成部を備え、前記スケジュール作成部は、前記作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを前記地上支援装置に送信することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、事前に航空管制から入手可能なフライトスケジュールに基づいて、スケジュール作成部が作業スケジュールを作成する。このため、作業者が自らフライトスケジュールを確認して作業スケジュールを作成する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。
【0007】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを、前記地上支援装置を用いて作業する作業者が携帯している作業者端末に送信することが好ましい。
【0008】
このような構成によれば、作業者は、作業者端末で受信したデータを参照すれば、自分に関わる作業スケジュールをすぐに確認できるので、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0009】
本発明において、前記作業者端末は、前記地上支援装置による作業の進捗に関する作業進捗データを前記スケジュール作成部に送信可能であり、前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データを考慮して前記作業スケジュールを再作成可能であることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、作業の進捗状況に応じて作業スケジュールを適宜修正することができるので、作業が遅れている場合などでもその後の作業を円滑に進めることができる。
【0011】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データに基づいて所定時間毎に前記作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断すると前記作業スケジュールを再作成することが好ましい。
【0012】
作業の進捗状況に応じて作業スケジュールの修正があまりに頻繁に行われると、作業者がその度に新しい作業スケジュールに対応する必要が生じ、かえって作業者の負担が増えるおそれがある。そこで、上述のように、所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断した場合のみ作業スケジュールを再作成することで、バランスの取れた運行管理が可能となる。
【0013】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記作業進捗データに異常を示すデータが含まれていた場合に、前記作業スケジュールを再作成することが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、例えば、作業者の体調不良や地上支援装置の故障・事故などの異常が発生した場合に、速やかに作業スケジュールを修正することで、その後の作業の遅れを最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記フライトスケジュールに変更があった場合に、変更後の前記フライトスケジュールに基づいて前記作業スケジュールを再作成することが好ましい。
【0016】
フライトスケジュールに変更があった場合に、当初作成された作業スケジュールをそのまま使用していると、作業現場で混乱が発生するおそれがある。そこで、上述のように、スケジュール作成部が、変更後のフライトスケジュールに基づいて作業スケジュールを再作成すれば、作業者がフライトスケジュールの変更に円滑に対応することができる。
【0017】
本発明において、前記地上支援装置は、前記地上支援装置の状態に関する車両状態データを前記スケジュール作成部に送信可能であり、前記スケジュール作成部は、前記車両状態データを考慮して前記作業スケジュールを再作成可能であることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、地上支援装置の状態(例えば位置や稼働状況など)に応じて作業スケジュールを適宜修正することができるので、地上支援装置の円滑な運行管理が可能となる。
【0019】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記車両状態データに基づいて所定時間毎に前記作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断すると前記作業スケジュールを再作成することが好ましい。
【0020】
地上支援装置の状態に応じて作業スケジュールの修正があまりに頻繁に行われると、作業者がその度に新しい作業スケジュールに対応する必要が生じ、かえって作業者の負担が増えるおそれがある。そこで、上述のように、所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断した場合のみ作業スケジュールを再作成することで、バランスの取れた運行管理が可能となる。
【0021】
本発明において、前記スケジュール作成部は、前記車両状態データに異常を示すデータが含まれていた場合に、前記作業スケジュールを再作成することが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、例えば、地上支援装置の故障・事故などの異常が発生した場合に、速やかに作業スケジュールを修正することで、その後の作業の遅れを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】地上支援装置の運行管理システムを示すブロック図である。
【
図3】運行管理システムによる地上支援装置の運行管理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】(a)フライトスケジュールに含まれるデータの一例を示す表、及び、(b)積載物のリストの一例を示す表である。
【
図5】(a)作業者関連データの一例を示す表、及び、(b)GSE関連データの一例を示す表である。
【
図6】作業スケジュールに含まれるデータの一例を示す表である。
【
図7】作業者端末に送信されるデータの一例を示す表である。
【
図8】GSEに送信されるデータの一例を示す表である。
【
図9】リスケジュールを実行するか否かの判断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る運行管理システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、空港の設備を簡易的に示す平面図である。
図1に示すように、空港1にはターミナルビル2と滑走路3が設けられている。ターミナルビル2には、複数のゲート4が設けられており、ゲート4にはボーディングブリッジ5が接続されている。ボーディングブリッジ5は、ゲート4から航空機100に乗客及び乗員を乗降させるための設備である。ボーディングブリッジ5が利用できない場合には、後述のパッセンジャーステップを利用することもある。空港1において航空機100が駐機している間、乗客及び乗員の乗降以外に、貨物及び手荷物の搬出入、燃料の補充、機内の清掃等の各種作業(地上支援作業)が行われる。そして、地上支援作業が完了し準備が整うと、航空機100は滑走路3から離陸する。
【0026】
地上支援作業では、複数のGSE13が使用される。GSEとは、Ground Support Equipmentの略で、地上支援装置を意味する。GSE13には様々な種類があるが、一例を挙げると、貨物(コンテナ)を機内に搬出入するハイリフトローダ13a、乗客の手荷物を機内に搬出入するベルトローダ13b、航空機100を牽引するトーイングトラクタ13c、乗客及び乗員を機内に直接乗降させるためのパッセンジャーステップ13dなどの作業車両がある。空港1には、GSE13を駐車しておくための駐車場6、GSE13のメンテナンスを行うためのメンテナンス場7が設けられている。
【0027】
現状、GSE13の手配は、GSE13を運転して作業を行う作業者が行っている。つまり、作業者がフライトスケジュールを確認し、必要なGSE13を手配してから作業に当たっている。しかしながら、作業者がフライトスケジュールの確認からGSE13の手配まで行うのは非常に手間である。また、作業を行うまでの準備が煩雑であり、作業者には多くの経験や知識が求められるため、作業者の大きな負担となっている。さらに、作業者が情報を見落とすなどしてミスが生じれば、フライトスケジュールにも影響が出てしまう。そこで、本願発明者らは、これらの課題を解決すべく、空港1におけるGSE13の運行管理システムを考案した。以下、この運行管理システムについて詳細に説明する。
【0028】
(GSEの運行管理システム)
本実施形態の運行管理システム10を
図2に示す。運行管理システム10は、航空管制9と、GSE管制11(本発明のスケジュール作成部に相当)と、各作業者が携帯している複数の作業者端末12と、複数のGSE13とを含む。GSE管制11は、航空管制9、複数の作業者端末12、及び、複数のGSE13と通信可能である。GSE管制11の主な機能は、航空管制9から提供されたフライトスケジュールに基づいて複数のGSE13による作業スケジュールを作成し、作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを複数の作業者端末12及び複数のGSE13に一斉に送信することである。
【0029】
作業者端末12は、例えばタブレット、スマートフォン、携帯電話などの携帯端末やスマートグラス、スマートウォッチなどのウェアラブル端末などによって構成されており、GSE管制11との間でデータの送受信が可能である。GSE管制11から作業者端末12へは、作業スケジュールに関するデータなどが送信される。一方、作業者端末12からGSE管制11へは、作業の進捗に関する作業進捗データなどを送信することが可能である。作業進捗データの具体例としては、所定の作業が完了したことや遅れていることを示すデータ、異常(作業者の体調不良及びGSE13の故障・事故など)を示すデータなどが挙げられる。
【0030】
GSE13は、通信部14と、位置情報受信部15と、ID読取部16とを有する。GSE13は、通信部14を介してGSE管制11と通信可能であり、GSE管制11との間でデータの送受信が可能に構成されている。位置情報受信部15は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)信号を受信して自車の位置を認識可能である。なお、自車の位置を認識する方法として、GPS以外の測位方式を用いてもよい。ID読取部16は、作業者が有する作業者IDを読み取って、予定されている作業者と一致しているか否かを判断し、その正否を作業者に知らせることができる。作業者IDとは、各作業者に割り当てられているIDである。ID読取部16は、例えば、作業者端末12に表示される作業者IDや作業者が有するIDカードに付与されている作業者IDを読み取ることができるように構成されている。なお、作業者IDはバーコードやICタグでもよいし、作業者が手入力してもよい。
【0031】
GSE管制11からGSE13へは、作業スケジュールに関するデータなどが送信される。一方、GSE13からGSE管制11へは、GSE13の状態に関する車両状態データなどを送信することが可能である。車両状態データの具体例としては、位置情報受信部15で取得した位置データ、稼働状況(走行中、作業中など)を示すデータ、異常(GSE13の故障・事故など)を示すデータなどが挙げられる。
【0032】
(GSEの運行管理の流れ)
図3は、運行管理システム10によるGSE13の運行管理の流れを示すフローチャートである。GSE管制11は、航空管制9から事前(例えば前日)にフライトスケジュールを受信する(ステップS11)。
図4(a)はフライトスケジュールに含まれるデータの一例を示す表であり、
図4(b)は積載物のリストの一例を示す表である。なお、
図4における積載物とは、コンテナに収容された貨物のことを指し、乗客の手荷物とは別の物である。航空管制9からGSE管制11に送信されるフライトスケジュールに含まれるデータの種類は、
図4に示すものに限定されず適宜変更が可能である。
【0033】
GSE管制11は、フライトスケジュールを受信すると、フライトスケジュールに基づいて作業スケジュールを作成する(ステップS12)。GSE管制11が作業スケジュールを作成する際には、フライトスケジュールの他に、
図5(a)に示す作業者関連データや
図5(b)に示すGSE関連データなども参照される。
図5(b)の『稼働状況』及び『待機場所』は、GSE13から送信される車両状態データによって特定可能である。なお、GSE管制11が作業スケジュールを作成する際には、フライトスケジュール、作業者関連データ及びGSE関連データ以外のデータを参照してもよい。
【0034】
GSE管制11は、フライトスケジュール、作業者関連データ及びGSE関連データに基づいて、各フライトに対して必要な作業を特定するとともに、各作業を担当する作業者及び使用されるGSE13を決定し、作業スケジュールを作成する。
図6は、作業スケジュールに含まれるデータの一例を示す表である。例えば、フライト番号1に関しては、作業者IDが001の作業者が、GSE IDがHL-01のハイリフトローダを使って、貨物搬出の作業を担当することを示している。なお、
図6において、PSはパッセンジャーステップ、TTはトーイングトラクタ、BLはベルトローダを示す。GSE管制11が作成する作業スケジュールに含まれるデータの種類は、
図6に示したものに限定されず適宜変更が可能である。
【0035】
GSE管制11は、作業スケジュールを作成すると(ステップS12)、作業スケジュールに含まれる少なくとも一部のデータを作業者端末12及びGSE13に送信する(ステップS13)。
図7は、作業者端末12に送信されるデータの一例を示す表であり、具体的には作業者IDが001の作業者の作業者端末12に送信されるデータを示す。作業者は、作業者端末12で作業スケジュールのデータを受信すると(ステップS21)、自分が担当する作業や使用するGSE13を把握することができる。このため、作業者は、自らフライトスケジュールを確認したり、GSE13を手配したりする必要がなく、作業スケジュールに従って作業を進めていくことができる。
【0036】
図8は、GSE13に送信されるデータの一例を示す表であり、具体的にはGSE IDがHL-01のGSE13に送信されるデータを示す。GSE13は、作業スケジュールのデータを受信すると(ステップS31)、どの作業者がいつ自車を運転するのかを把握できるようになる。このため、作業者がGSE13を使用する際には、その作業者のIDをID読取部16で読み取ることで、作業スケジュールに合致した正しい作業者であるかどうかを判定可能である。作業スケジュールと合致しない場合には、そのことを作業者に報知することで、作業者が誤ったGSE13を使用することを防止できる。
【0037】
作業者は、GSE管制11から作業スケジュールのデータを受信すると(ステップS21)、作業スケジュールに従って作業を行う。まず、作業者は、作業スケジュールで決められているGSE13まで移動する。GSE13がどこにあるかは、位置情報受信部15によって取得される位置データに基づいて特定可能である。GSE管制11での作業スケジュールの作成時に、例えば、作業するゲート4の最も近くにあるGSE13を利用するようにするなど、GSE13の位置データを用いることで、GSE13の移動距離を最適化してもよい。GSE13に到着すると、作業者はID読取部16に作業者IDを読み取らせる。問題なければ、作業者はそのGSE13を運転して、所定の作業を行う。
【0038】
作業中又は作業完了後の適宜のタイミングで、作業者が作業進捗データをGSE管制11に送信する(ステップS22)とともに、GSE13が車両状態データをGSE管制11に送信する(ステップS32)。GSE管制11は、作業進捗データ及び車両状態データを受信すると(ステップS14)、受信した作業進捗データ及び車両状態データから作業の進捗状況や何らかの異常が発生していないかどうかを確認する。そして、必要に応じて作業スケジュールの再作成(以下、リスケジュールと言う)を実行する(ステップS15)。どういう場合にリスケジュールを実行するかについては、後で詳細に説明する。リスケジュールを行った場合は、再作成された作業スケジュールに含まれる少なくとも一部のデータを作業者端末12及びGSE13に送信する(ステップS16)。
【0039】
その後は、上述の内容が繰り返される。すなわち、作業者は、再作成された作業スケジュールのデータを受信すると(ステップS23)、作業スケジュールに従って作業を行い、適宜のタイミングで作業進捗データをGSE管制11に送信する(ステップS24)。GSE13は、再作成された作業スケジュールのデータを受信すると(ステップS33)、作業者IDを用いて正しい作業者であるかどうかの判定ができるようになる。GSE13は、適宜のタイミングで車両状態データをGSE管制11に送信する(ステップS34)。GSE管制11は、作業進捗データ及び車両状態データを受信すると(ステップS17)、必要に応じてリスケジュールを実行する(ステップS18)。
【0040】
(リスケジュールの要否判断)
ステップS15、S18のリスケジュールを実行するか否かの判断処理について、
図9のフローチャートを参照しつつ説明する。GSE管制11は、予め決められた所定時間(ここではn分)が経過すると(ステップS41でYES)、リスケジュールが必要かどうかを判定する(ステップS42)。リスケジュールが必要かどうかは、作業者端末12から送信された作業進捗データ及びGSE13から送信された車両状態データに基づいて判定する。例えば、作業の遅れ時間が所定の閾値以上となっている場合にはリスケジュールが必要と判定し(ステップS42でYES)、リスケジュールを実行する(ステップS46)。
【0041】
ステップS41でn分経過していない場合でも、フライトスケジュールに変更があったり(ステップS43でYES)、GSE13に異常が発生したり(ステップS44でYES)、作業者に異常が発生したり(ステップS45でYES)した場合には、リスケジュールが必要かどうかを判定することなく、即時にリスケジュールを実行する(ステップS46)。以下、詳細に説明する。
【0042】
ステップS41でNOだった場合、GSE管制11は、フライトスケジュールに変更があったかどうかを確認する(ステップS43)。具体的には、フライトの変更(着陸時刻の変更、離陸時刻の変更、欠航)、ゲート番号の変更、滑走路の変更、飛行機の機種変更などがあったかどうかを確認する。フライトスケジュールに変更があった場合は(ステップS43でYES)、変更後のフライトスケジュールに基づいてリスケジュールを即時実行する(ステップS46)。なお、フライトスケジュールに変更があった場合は、航空管制9からGSE管制11にその情報が送信される。
【0043】
ステップS43でNOだった場合、GSE管制11は、GSE13に異常が発生しているかどうかを確認する(ステップS44)。具体的には、作業者端末12から送信された作業進捗データ又はGSE13から送信された車両状態データに、GSE13の異常を示すデータが含まれているかどうかを確認する。GSE13に異常が発生している場合は(ステップS44でYES)、代わりのGSE13を使って作業を進められるようにリスケジュールを即時実行する(ステップS46)。GSE13の異常が、例えば航空機100との衝突など、その後のフライトスケジュールに影響を及ぼす場合は、GSE管制11は異常の内容を航空管制9にも報告する。また、GSE13の異常発生に伴って、それに対応するための作業者、レッカー車両、救急車両が必要となる場合は、GSE管制11がそれらの手配も同時に行うことが好ましい。
【0044】
ステップS44でNOだった場合、GSE管制11は、作業者に異常が発生しているかどうかを確認する(ステップS45)。具体的には、作業者端末12から送信された作業進捗データに、作業者の異常を示すデータが含まれているかどうかを確認する。作業者に体調不良や事故などの異常が発生している場合は(ステップS45でYES)、空いている作業者を補充するようにリスケジュールを即時実行する(ステップS46)。なお、作業者の異常発生に伴って、それに対応するための作業者や救急車両が必要となる場合は、GSE管制11がそれらの手配も同時に行うことが好ましい。
【0045】
GSE管制11は、リスケジュールを実行した場合、作業者端末12及びGSE13に新しい作業スケジュールに関するデータを送信する(
図3のステップS16)。このとき、GSE管制11は、全ての作業者端末12及びGSE13に作業スケジュールのデータを一斉に送信してもいいし、作業内容に変更が生じる作業者の作業者端末12及びGSE13にのみデータを送信するようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施形態ではステップS41でn分経過したかどうか判定した後、n分経過してなければフライトスケジュールやGSE13の異常、作業者の異常をGSE管制11が確認している。しかしながら、例えば、フライトスケジュールの変更が発生した時点で、航空管制9から変更した旨をGSE管制11へ通知し、通知を受けてGSE管制11がリスケジュールを行ってもよい。同様に、GSE13や作業者端末12からの異常が発生した旨の通知を受けた場合、GSE管制11がリスケジュールを行ってもよい。
【0047】
(効果)
以上のように、本実施形態に係る運行管理システム10では、事前に航空管制9から入手可能なフライトスケジュールに基づいて、GSE管制11が作業スケジュールを作成する。このため、作業者が自らフライトスケジュールを確認して作業スケジュールを作成する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。
【0048】
また、本実施形態では、GSE管制11は、作業スケジュールに関する少なくとも一部のデータを、GSE13を用いて作業する作業者が携帯している作業者端末12に送信する。このような構成によれば、作業者は、作業者端末12で受信したデータを参照すれば、自分に関わる作業スケジュールをすぐに確認できるので、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0049】
また、本実施形態では、作業者端末12は、GSE13による作業の進捗に関する作業進捗データをGSE管制11に送信可能であり、GSE管制11は、作業進捗データを考慮してリスケジュールを行うことが可能である。このような構成によれば、作業の進捗状況に応じて作業スケジュールを適宜修正することができるので、作業が遅れている場合などでもその後の作業を円滑に進めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、GSE管制11は、作業進捗データに基づいて所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断するとリスケジュールを行う。作業の進捗状況に応じて作業スケジュールの修正があまりに頻繁に行われると、作業者がその度に新しい作業スケジュールに対応する必要が生じ、かえって作業者の負担が増えるおそれがある。そこで、上述のように、所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断した場合のみリスケジュールを行うことで、バランスの取れた運行管理が可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、GSE管制11は、作業進捗データに異常を示すデータが含まれていた場合にリスケジュールを行う。このような構成によれば、例えば、作業者の体調不良やGSE13の故障・事故などの異常が発生した場合に、速やかに作業スケジュールを修正することで、その後の作業の遅れを最小限に抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、GSE管制11は、フライトスケジュールに変更があった場合に、変更後のフライトスケジュールに基づいてリスケジュールを行う。フライトスケジュールに変更があった場合に、当初作成された作業スケジュールをそのまま使用していると、作業現場で混乱が発生するおそれがある。そこで、上述のように、GSE管制11が、変更後のフライトスケジュールに基づいてリスケジュールを行えば、作業者がフライトスケジュールの変更に円滑に対応することができる。
【0053】
また、本実施形態では、GSE13は、GSE13の状態に関する車両状態データをGSE管制11に送信可能であり、GSE管制11は、車両状態データを考慮してリスケジュールを行うことが可能である。このような構成によれば、GSE13の状態(例えば位置や稼働状況など)に応じて作業スケジュールを適宜修正することができるので、GSE13の円滑な運行管理が可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、GSE管制11は、車両状態データに基づいて所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断するとリスケジュールを行う。GSE13の状態に応じて作業スケジュールの修正があまりに頻繁に行われると、作業者がその度に新しい作業スケジュールに対応する必要が生じ、かえって作業者の負担が増えるおそれがある。そこで、上述のように、所定時間毎に作業スケジュールの修正が必要か否かを判断し、修正が必要と判断した場合のみリスケジュールを行うことで、バランスの取れた運行管理が可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、GSE管制11は、車両状態データに異常を示すデータが含まれていた場合にリスケジュールを行う。このような構成によれば、例えば、GSE13の故障・事故などの異常が発生した場合に、速やかに作業スケジュールを修正することで、その後の作業の遅れを最小限に抑えることができる。
【0056】
(他の実施形態)
上記実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0057】
上記実施形態では、GSE13に通信部14が設けられており、GSE13がGSE管制11と通信可能に構成されているものとした。しかしながら、GSE13がGSE管制11と通信可能であることは必須ではなく、少なくとも作業者端末12がGSE管制11と通信可能であればよい。また、GSE13に設けた位置情報受信部15やID読取部16を省略することも可能である。さらに、作業者端末12の機能をGSE13に設けることも可能である。この場合、作業者はGSE13に設けられた入出力装置等により、作業進捗等のデータをGSE管制11とやりとりする。
【0058】
上記実施形態では、GSE13は作業者が運転するものとした。しかしながら、GSE13は自動運転可能に構成されたものでもよい。この場合、GSE管制11からGSE13に作業スケジュールが送信されると、GSE13は自動で所定の時間に所定の場所に移動させるようにするとよい。こうすることで、作業者がGSE13まで移動する必要がなくなる。
【0059】
上記実施形態では、GSE管制11は、航空管制9、作業者端末12及びGSE13と通信可能であるものとしたが、これに加えて空港1の設備と通信可能に構成されてもよい。例えば、GSE管制11が、チェックインゲートや搭乗ゲートの端末から乗客に関するデータを受信できるように構成し、作業スケジュールの作成やリスケジュールを行うかどうかの判断にこれらのデータを考慮するようにしてもよい。あるいは、GSE管制11が、キャビンアテンダントが有する携帯端末から乗客の異常(例えば急病人の発生)に関するデータなどを受信できるようにしてもよい。また、GSE管制11と接続可能な端末やGSE13については、GSE管制11を介してソフトウェアのバージョン等の管理を行うことも可能である。
【0060】
上記実施形態において、GSE13の少なくとも一部が電動式であってもよい。この場合、GSE13からGSE管制11に送信される車両状態データに、GSE13が充電中か否かを示すデータやGSE13の残電量に関するデータを含むようにしてもよい。また、GSE13の充電のタイミングをGSE管制11の作業スケジュール作成時に考慮することで、効率よくGSE13を運用することが可能である。
【0061】
上記実施形態において、GSE管制11にGSE13の車両状態データや残電量、位置情報等を含む車両の運行データを保存し、このデータを基に、GSE13のメンテナンス時期の予測や故障検知、故障予測を行ってもよい。これらの予知保全や故障検知には、ディープラーニングや機械学習を用いてもよい。また、GSE13の位置情報を一定時間ごとに記録しておき、GSE13の空港内での運行経路等を分析することで、GSE管制11での作業スケジュール作成のアルゴリズムを最適化することも可能である。
【0062】
上記実施形態において、GSE管制11はGSE関連データに含まれる付属器具や作業者関連データを活用してもよい。例えば、作業者のニーズに合わせてパワースーツを配備したり、荷物の搬送を補助する機構が付属器具として搭載されたGSE13を配備したりしてもよい。
【0063】
上記実施形態において、GSE管制11は空港のボーディングブリッジ、パッセンジャーステップ、空港内で乗客を送迎する送迎バス、乗客の予約・発券システム等と接続可能であってもよい。例えば、ボーディングブリッジやパッセンジャーステップにチケット読取装置を設置し、GSE管制11が予約・発券システムや航空管制9等から、その航空機に搭乗する乗客のリスト等を取得できるように構成してもよい。そして、乗客がボーディングブリッジやパッセンジャーステップを通って航空機に搭乗する際、チケット読取装置でチケットを読み取り、GSE管制11が取得した乗客のリストと一致しているか照合することで、乗客の乗り間違い等を防止することができる。また、送迎バスにもチケット読取装置を設置し、乗客が送迎バスの乗車時にチケットを読み取り、乗客リストと照合することで、乗客が間違った搭乗場所へ移動してしまうことを防止できる。さらに、チケット読取装置で読み取る情報はチケット自体ではなく、チケットや乗客を識別できるIDをバーコードやICタグ等で読み取れるようにしてもよい。また、乗客の予約・発券システム等からGSE管制11が取得したデータに、車いすの乗客等が含まれていた場合は、GSE管制11は特許第5105054号のようなリフター付きのパッセンジャーステップや車いす用のGSE13を配備するようにしてもよい。さらに、到着する航空機が政府専用機であったり、乗客に国賓が含まれていたりするような場合は、専用のパッセンジャーステップを配備するようにしてもよい。
【0064】
上記実施形態において、ベルトローダやハイリフトローダ、貨物の積み込みに用いるトーイングトラクタ等のGSE13に、貨物IDの読取装置を設けてもよい。例えば、GSE管制11がその航空機に積み込み予定の貨物リスト等を取得しておき、航空機に積み込む貨物にバーコードやICタグ等の貨物IDを取り付けておくことで、貨物の積み込み作業の際、GSE13の読取装置で貨物IDを読み取り、貨物リストと照合し、貨物の積み間違いを防止できる。
【0065】
上記実施形態において、空港内に複数のグランドハンドリング会社が設置されている場合、複数のグランドハンドリング会社が持つそれぞれのGSE管制11が連携して作業を行ってもよい。例えば、グランドハンドリング会社Aの作業中、トラブルが発生し、GSE13の台数が不足してしまった場合や作業者の欠員で作業が困難になった場合、グランドハンドリング会社AのGSE管制11Aが、別のグランドハンドリング会社BのGSE管制11BにGSE13の不足や作業者補填の要請を送信してもよい。この場合、GSE管制11Bは現在作業を行っていないGSE13や作業者をグランドハンドリング会社Aへ応援として配備することも可能である。また、GSE管制11は、近くの空港の別のGSE管制にGSEや作業者の応援を要請してもよい。
【0066】
上記実施形態において、空港内にGSE13や作業者の待機場所が複数ある場合、GSE管制11は航空機100が到着・離陸する滑走路3やゲート4の位置を基に、スケジュールの作成時、配備状況を最適化するようにしてもよい。例えば、GSE管制11が作業スケジュールを作成する際、航空機100が到着・離陸する滑走路3やゲート4に最も近い待機場所からGSE13や作業者を配備してもよい。
【0067】
上記実施形態において、GSE13は自動運転または遠隔操作可能であってもよい。自動運転の場合、GSE13はGSE管制11から受信したスケジュールとルートに沿って、必要であれば作業者を乗せた上で作業場所まで移動し、作業を行ってもよい。また、遠隔操作の場合、GSE管制11はGSE13を遠隔操作する作業者の遠隔操作用コンソールまたは作業者端末にスケジュールとルートを送信し、作業者がGSE管制11の指示に従い、GSE13を運行してもよい。
【0068】
上記実施形態では、GSE13として作業車両を例示したが、GSE13には作業車両以外の地上支援装置も含まれる。つまり、GSE管制11は航空機100の運航を支援する地上支援装置全般を管理してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:空港
10:運行管理システム
11:GSE管制(スケジュール作成部)
12:作業者端末
13:GSE(地上支援装置)