IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図1
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図2
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図3
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図4
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図5
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図6
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図7
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図8
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図9
  • 特許-未加硫ゴム部材の接合方法および装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】未加硫ゴム部材の接合方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/20 20060101AFI20250129BHJP
   B29D 30/72 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B29D30/20
B29D30/72
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021014271
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117657
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】國森 照明
(72)【発明者】
【氏名】中島 勝
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-253595(JP,A)
【文献】特開2013-166337(JP,A)
【文献】特開2007-160844(JP,A)
【文献】特開2017-132122(JP,A)
【文献】特開2013-086299(JP,A)
【文献】特開2005-028588(JP,A)
【文献】特開2019-093574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/20
B29D 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムに未加硫ゴム部材を巻き付けて対向させた状態にした前記未加硫ゴム部材の先端部と後端部とを、前記ドラムの外周面に向かって押圧機構の押圧部を近接移動させることにより、前記押圧部と前記外周面との間に挟むことにより圧着接合して前記未加硫ゴム部材を環状に形成する未加硫ゴム部材の接合方法において、
前記ドラムの外周面上で対向させた状態にした前記先端部と前記後端部とを、非接触型の加温手段により加温し、加温された状態で前記先端部および前記後端部を前記押圧機構により圧着接合することを特徴とする未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項2】
前記加温手段として、前記先端部および前記後端部に向かって温風を吹き付ける温風ヒータを用いる請求項1に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項3】
前記加温手段により前記先端部と前記後端部とを加温する前に、前記先端部と前記後端部どうしのドラム幅方向およびドラム周方向に対するずれを是正する位置合わせを行う請求項1または2に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項4】
前記加温手段により前記先端部と前記後端部とを加温した後、前記押圧機構により前記先端部と前記後端部とを圧着接合する前に、前記先端部と前記後端部どうしのドラム幅方向およびドラム周方向に対するずれを是正する位置合わせを行う請求項1または2に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項5】
前記加温手段により前記先端部と前記後端部とを加温し終えてから、15秒以内に前記押圧機構により圧着接合する請求項1~4に記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項6】
前記加温手段により加温された前記先端部と前記後端部とを、前記押圧機構により圧着接合する直前に、前記先端部および前記後端部の温度を非接触型の温度センサにより検知し、検知された温度が予め設定された許容範囲か否かを制御部により判定する請求項1~5のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項7】
前記加温手段を、前記ドラムに対して近接した加温位置と離反した待機位置とに移動可能な構成して、前記先端部と前記後端部とを加温するときには前記加温手段を前記待機位置から前記加温位置に移動させる請求項1~6のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項8】
前記加温手段による前記先端部と前記後端部とに対する加温具合を、前記先端部および前記後端部の前記未加硫ゴム部材の幅方向での厚さに応じて、その幅方向で異ならせる請求項1~7のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の接合方法。
【請求項9】
未加硫ゴム部材が巻き付けられるドラムと、前記ドラムの外周面に対して近接および離反移動する押圧部を有する押圧機構とを備えて、前記ドラムに巻き付けられた前記未加硫ゴム部材の先端部と後端部とが対向した状態で、前記外周面に近接移動する前記押圧部と前記外周面との間に挟まれることにより圧着接合されて前記未加硫ゴム部材が環状に形成される未加硫ゴム部材の接合装置において、
前記ドラムの外周面上で対向した状態の前記先端部と前記後端部とを加温する非接触型の加温手段を有し、前記加温手段により加温された状態の前記先端部と前記後端部とが前記押圧機構により圧着接合される設定にしたことを特徴とする未加硫ゴム部材の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム部材の接合方法および装置に関し、さらに詳しくは、未加硫ゴム部材の先端部と後端部とを、不要な変形の発生を回避しつつ、より確実に接合して環状に形成することができる未加硫ゴム部材の接合方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品を製造するには、帯状の未加硫ゴム部材をドラムに巻き付けて、その先端部と後端部とを接合して環状に形成する工程がある。このようにして形成された環状部材は他の部材と接合されて未加硫の成形体が完成する。次いで、この成形体が加硫されることでゴム製品が完成する。環状部材を形成する際に、帯状の未加硫ゴム部材の先端部と後端部とに接合不良がある場合には、この接合不良に起因して、完成したゴム製品に亀裂等が発生することも想定される。
【0003】
このような接合不良を防止するために、サービサー上で未加硫ゴム部材(トレッドゴム)の先端部および後端部をヒータ部により加熱し、次いで、この未加硫ゴム部材を成形ドラムに巻き付けて、先端部と後端部とを接合する発明が提案されている(例えば、特許文献1参照)。先端部および後端部は加熱されることで粘着性が向上するので、両者を強固に接合するには有利になる。
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されている発明では、先端部および後端部を加熱した後に、未加硫ゴム部材をサービサーから成形ドラムに移載する必要がある。先端部および後端部は加熱されることで軟化して変形し易くなっているため、この移載工程中に不要な変形が生じる。先端部および後端部に不要な変形が生じると製造したゴム製品の品質に影響が生じることがある。また、この移載工程には相応の時間を要するので、加熱された先端部および後端部が接合するまでに温度が低下した分だけ、互いを強固に接合する効果は低減する。そこで、この温度低下を考慮して加熱温度を高くしたり、移載速度を速くすると、先端部および後端部に不要な変形が生じるリスクが高くなる。それ故、未加硫ゴム部材の先端部と後端部とを、不要な変形の発生を回避しつつ、より確実に接合して環状に形成するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-132122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、未加硫ゴム部材の先端部と後端部とを、不要な変形の発生を回避しつつ、より確実に接合して環状に形成することができる未加硫ゴム部材の接合方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の未加硫ゴム部材の接合方法は、ドラムに未加硫ゴム部材を巻き付けて対向させた状態にした前記未加硫ゴム部材の先端部と後端部とを、前記ドラムの外周面に向かって押圧機構の押圧部を近接移動させることにより、前記押圧部と前記外周面との間に挟むことにより圧着接合して前記未加硫ゴム部材を環状に形成する未加硫ゴム部材の接合方法において、前記ドラムの外周面上で対向させた状態にした前記先端部と前記後端部とを、非接触型の加温手段により加温し、加温された状態で前記先端部および前記後端部を前記押圧機構により圧着接合することを特徴とする。
【0008】
本発明の未加硫ゴム部材の接合装置は、未加硫ゴム部材が巻き付けられるドラムと、前記ドラムの外周面に対して近接および離反移動する押圧部を有する押圧機構とを備えて、前記ドラムに巻き付けられた前記未加硫ゴム部材の先端部と後端部とが対向した状態で、前記外周面に近接移動する前記押圧部と前記外周面との間に挟まれることにより圧着接合されて前記未加硫ゴム部材が環状に形成される未加硫ゴム部材の接合装置において、前記ドラムの外周面上で対向した状態の前記先端部と前記後端部とを加温する非接触型の加温手段を有し、前記加温手段により加温された状態の前記先端部と前記後端部とが前記押圧機構により圧着接合される設定にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドラムに巻き付けられた後で未加硫ゴム部材の先端部および後端部が加温手段により加温されるので、加温によって変形し易くなっている先端部および後端部に対しては、ドラムに巻き付けられる前に加温される場合に比して不要な変形の発生を回避するには有利になる。また、非接触型の加温手段を用いるので加温手段が先端部および後端部に接触することがなく、先端部および後端部に不要な変形が発生することを回避するには益々有利になる。そして、先端部および後端部は加温されて粘着性が向上した状態で押圧機構を用いて互いが圧着接合されるので、より確実に強固に接合されて未加硫ゴム部材を環状に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の未加硫ゴム部材の接合装置を側面視で例示する説明図である。
図2図1の接合装置を平面視で例示する説明図である。
図3図1のA矢視で接合装置を例示する説明図である。
図4】成形ドラム上で未加硫ゴム部材の先端部と後端部とが、位置合わせされる状態を側面視で例示する説明図である。
図5図4の未加硫ゴム部材の先端部および後端部が、位置合わせ後に加温される状態を側面視で例示する説明図である。
図6図5の先端部および後端部の近傍を拡大して例示する説明図である。
図7図5のB矢視で接合装置を例示する説明図である。
図8図5の未加硫ゴム部材の先端部および後端部の温度が、加温後に温度センサにより検知される状態を側面視で例示する説明図である。
図9図8の未加硫ゴム部材の先端部および後端部が、押圧機構により圧着接合される状態を側面視で例示する説明図である。
図10】未加硫ゴム部材の先端部と後端部とが、位置合わせ前に加温される状態を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の未加硫ゴム部材の接合方法および未加硫ゴム部材の接合装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1図3に例示する本発明の未加硫ゴム部材の接合装置1により、帯状の未加硫ゴム部材2(以下、ゴム部材2という)の先端部2aと後端部2bとが接合されて、ゴム部材2が環状に形成される。即ち、この接合装置1により、ゴム部材2からなる環状部材が製造される。環状に形成されたゴム部材2は例えば、タイヤのトレッドゴム、サイドゴムなど、様々なゴム製品の構成部材として使用される。
【0013】
この接合装置1は、ドラム3と、押圧機構4と、非接触型の加温手段5と、制御部9とを備えている。ドラム3、押圧機構4および加温手段5の作動は制御部9により制御される。この実施形態では接合装置1は、さらに温度センサ8を備えている。ドラム3に巻き付けられたゴム部材2の先端部2aと後端部2bとが押圧機構4を用いて圧着接合されて、ドラム3上でゴム部材2が環状に形成される。先端部2aおよび後端部2bは、側面視でゴム部材2の長手方向に対して同じ向きに傾斜した傾斜端面を有している。尚、図面では、ドラム3の幅方向(ドラム幅方向)を矢印W、周方向(ドラム周方向)を矢印Cで示している。
【0014】
円筒状のドラム3は、ベルトコンベヤなどの搬送装置10の前方に配置されている。ドラム3には、搬送装置10により搬送されたゴム部材2が移載されて巻き付けられる。ドラム3は中心軸を中心にしてドラム周方向Cに回転駆動される(図1では時計回りに回転駆動される)。ドラム3の外周面3aには例えば、移載されたゴム部材2の先端部2aを保持し易くするために、吸引パッド部などが設けられることもある。尚、搬送装置10の作動も制御部9により制御される。
【0015】
押圧機構4は、ドラム3の下方位置に配置されている。押圧機構4は、ドラム3の外周面3aに対して近接および離反移動する押圧部4aを有している。押圧機構4は例えば、油圧シリンダやサーボモータなどによって進退移動するロッドの先端に押圧部4aが取り付けられている構成になっている。押圧機構4は、ドラム3の下方位置に限らず、ドラム3の外周面3aの近傍の任意の位置に配置することができるが、この実施形態にようにドラム3の中心軸の真下に配置することが好ましい。
【0016】
押圧部4aは、ドラム幅方向Wに延在していて、その表面は先端部2aおよび後端部2bに直接当接する。そのため、押圧部4aの表面は当接する先端部2aおよび後端部2bの表面形状に対応した形状になっている、或いは、その表面形状に対応した形状に変形可能になっている。押圧部4aは、その表面を当接する先端部2aおよび後端部2bの表面形状に対応した形状にするため、押圧機構4のロッドに対して着脱可能に取付けられる構成にして、先端部2aおよび後端部2bの表面形状に対応した押圧部4aを取付けて使用することもできる。
【0017】
加温手段5は、ドラムに巻き付けられたゴム部材2の先端部2aおよび後端部2bを非接触で加温する。加温手段5としては例えば、先端部2aおよび後端部2bに向かって温風を吹き付ける温風ヒータを用いる。加温手段5としてハロゲンランプなどの熱源ランプを用いることもでき、温風ヒータと熱源ランプとを併用することもできる。加温手段5は、1台に限らず複数台の加温手段5a、5bを備えることもできる。
【0018】
加温手段5による加温具合(温風温度、風量、加温時間)は制御部9により制御される。尚、この加温具合は、事前テストによって予め適切な加温具合のデータを把握して制御部9に入力しておく。制御部9は、予め把握されているこの適切な加温具合のデータに基づいて、加温手段5を制御して先端部2aおよび後端部2bを加温する。
【0019】
この実施形態では、加温手段5は、ベース6に対して温風の吹き出し口の上下方向の向きを可変に軸支されている。加温手段5は、ベース6に対して温風の吹き出し口の左右方向(ドラム幅方向W)の向きを可変に軸支されてもよく、上下方向および左右方向の向きを可変にして設置された構成にすることもできる。
【0020】
この加温手段5は、ドラム3に向かって直線状に延在するスライドガイド7にベース6を係合させて設置されている。そして、加温手段5は、サーボモータ等を用いてスライドガイド7に沿って移動して所定位置(後述する加温位置と待機位置)で停止する構成になっている。加温手段5の移動は制御部9により制御される。
【0021】
この実施形態では、ドラム幅方向Wに2台の加温手段5a、5bが間隔をあけて並設されている。それぞれの加温手段5a、5bは、互いに独立してスライドガイド7に沿って移動可能になっているが、それぞれの加温手段5a、5bを一体的にスライドガイド7に沿って移動可能にすることもできる。
【0022】
温度センサ8は、押圧機構4(押圧部4a)の近傍に配置されている。詳述すると、ドラム3の回転方向に対して押圧機構4(押圧部4a)の若干上流側に温度センサ8は配置されている。温度センサ8は、ドラム3に巻き付けられたゴム部材2の先端部2aおよび後端部2bの温度を非接触で検知する。温度センサ8としては公知の様々な非接触型の温度センサを用いることができる。温度センサ8により検知された検知温度データは、制御部9に入力される。温度センサ8は任意で備えることができる。
【0023】
制御部9としてはコンピュータを用いる。制御部9は上述した様々な作動を制御し、また、入力されたデータを用いた演算処理を行う。制御部9には、加温状態の先端部2aおよび後端部2bの温度の許容範囲ARが入力されている。この許容範囲ARは、先端部2aおよび後端部2bが両者の接合不良を回避できる十分な粘着性を発現する温度範囲に設定され、事前テストにより予め把握されている。
【0024】
次に、接合装置1を用いてゴム部材2を接合方法の手順の一例を説明する。
【0025】
まず、図1図3に例示するように、搬送装置10の上面に載置されている所定長さのゴム部材2を、搬送装置10を稼働させることによりドラム3に向かって搬送する。ゴム部材2の先端部2aがドラム3の外周面3aに載置された状態でドラム3を回転駆動させることにより、ゴム部材2を搬送装置10からドラム3に移載する。この移載工程では、搬送装置10による搬送速度とドラム3の外周面3aでの周速度を一致させるように、制御部9は搬送装置10とドラム3を同期させる制御を行う。この同期制御によって、ゴム部材2は伸縮および圧縮されることなく、ドラム3に巻き付けられる。
【0026】
この移載工程では、加温手段5は、ドラム3に対して離反した待機位置に停止している。また、押圧部4aは、ドラム3の外周面3aから離反した位置にある。
【0027】
ドラム3に巻き付けられたゴム部材2は、図4に例示するように、先端部2aと後端部2bとが対向した状態になり、互いがゴム部材2の長手方向(即ち、ドラム周方向C)でオーバーラップされる。人手を介することなく移載工程を行うと、先端部2aと後端部2bどうしがドラム幅方向Wおよびドラム周方向Cにずれて、両者には基準値を超えたすき間が生じることがある。
【0028】
そこで例えばドラム3を回転駆動して、先端部2aと後端部2bを図4のPの矢印で示す位置に移動させてドラム3の回転を停止する。次いで、このPの矢印で示す位置で、先端部2aに対する後端部2bの位置を手作業によって調整する。これにより、先端部2aと後端部2bとのドラム幅方向Wおよびドラム周方向Cに対する相対的なずれを是正する位置合わせをする。これにより、対向した状態の先端部2aと後端部2bとは、完全には接合されていない仮接合された状態になる。尚、この位置合わせ作業は、手作業ではなく専用の装置によって行うこともできる。
【0029】
次いで、ドラム3を回転駆動して、図5に例示するように先端部2aと後端部2bをスライドガイド7の前端部の上方位置まで移動させてドラム3の回転を停止する。この時、またはこの時よりも前の時点で、加温手段5を待機位置からドラム3に近接する加温位置(スライドガイド7の前端部)に移動させて停止させる。
【0030】
加温位置に配置された加温手段5は、その温風の吹き付け口の方向が、先端部2aと後端部2bとのすき間(継ぎ目)に向かって位置決めされている。先端部2aと後端部2bとのすき間の離間寸法は例えば1mm~10mm程度である。そして、図6図7に例示するように、加温手段5は、対向させた状態の先端部2aおよび後端部2bに向かって温風を吹き付けて、先端部2aおよび後端部2bを加温する。
【0031】
この実施形態では、2台の加温手段5a、5bをドラム幅方向Wに間隔をあけて並設することで、先端部2aおよび後端部2bの全幅を網羅して加温している。先端部2aおよび後端部2bの全幅を網羅して加温できれば、加温手段5は1台でもよい。ドラム3に巻き付けて対向させた状態の先端部2aおよび後端部2bを加温するので、先端部2aおよび後端部2bを同時に同じ加温手段5を用いて同じ条件で加温することが可能になる。
【0032】
加温手段5として温風ヒータを使用すると、温風が先端部2aと後端部2bとのすき間に進入して、先端部2aおよび後端部2bの裏面側まで加温することができる。それ故、先端部2aおよび後端部2bを全体的に迅速に加温するには有利である。
【0033】
加温手段5の温風の吹き出し口は、先端部2aと後端部2bとのすき間から、例えば、20mm~100mm離間した位置に配置される。温風の吹き出し角度は、先端部2aおよび後端部2bの傾斜端面に沿って平行になるように設定される。具体的には、温風の吹き出し角度は、先端部2aおよび後端部2bの傾斜端面の傾斜に対して、±5°の範囲内の角度に設定されることが好ましい。
【0034】
加温手段5による加温具合(温風温度、風量、加温時間)は、先端部2aおよび後端部2bが、圧着接合される時の温度が60℃~100℃(70℃程度)になるように設定される。この温度が60℃未満であると先端部2aおよび後端部2bの粘着性が十分高くならない場合があり、100℃超になると先端部2aおよび後端部2bの加硫が過度に進行して粘着性が低下する場合がある。したがって、加温手段5により先端部2aおよび後端部2bを加温している時も100℃超に加温しないことが大切である。
【0035】
温風の温度は、例えば250℃~350℃、より好ましくは280℃~320℃に設定される。温風の風量は、例えば400L/min~500L/min、より好ましくは430L/min~470L/minに設定される。加温時間は、例えば5秒~15秒、より好ましくは8秒~12秒に設定される。
【0036】
加温手段5により先端部2aおよび後端部2bを加温した後は、ドラム3を回転駆動することにより、図8に例示するように先端部2aと後端部2bを温度センサ8の上方位置まで移動させてドラム3の回転を停止する。この状態で温度センサ8は、加温された先端部2aおよび後端部2bの温度を検知する。加温手段5は、先端部2aおよび後端部2bに対する加温が終了した後、適宜の時点で、スライドガイド7に沿って、加温位置から待機位置に移動させる。
【0037】
温度センサ8により検知された先端部2aおよび後端部2bの温度データは制御部9に入力されて、予め設定された許容範囲ARか否かが制御部9により判定される。検知された先端部2aおよび後端部2bの温度が、許容範囲ARから外れていると判定された場合は、以降の工程は中断されて、制御部9は警告手段(警報機や警告表示など)によって温度異常の発生を作業者に知らせる。その後、温度異常の原因を究明し、原因が判明した後に、新たに接合工程を開始する。
【0038】
検知された先端部2aおよび後端部2bの温度が、許容範囲AR内であると判定された場合は、ドラム3を回転駆動することにより、図9に例示するように先端部2aと後端部2bを押圧部4aの上方位置まで移動させてドラム3の回転を停止する。次いで、制御部9は、押圧機構4の押圧部4aを上方移動させて外周面3aに向かって近接移動させる。
【0039】
加温された状態の先端部2aと後端部2bは、外周面3aに向かって近接移動した押圧部4aと外周面3aとの間に挟まれることにより、両者は圧着接合されて全工程が終了する。その結果、ゴム部材2はドラム3上で環状に形成されて環状部材が製造される。
【0040】
上述したように本発明では、ドラム3に巻き付けられた後でゴム部材2の先端部2aおよび後端部2bが加温手段5により加温されるので、先端部2aおよび後端部2bが加温状態のゴム部材2が、圧着接合される前に別の装置に移載されることはない。即ち、ドラム3に移載される前に先端部2aおよび後端部2bが加温される従来技術に比して、本発明では、加温によって軟化して変形し易くなっている先端部2aおよび後端部2bに対して不要な変形の発生を回避するには有利になる。
【0041】
また、本発明では非接触型の加温手段5を用いるので、加温手段5が先端部2aおよび後端部2bに接触して不要な変形を生じさせることもなく、不要な変形の発生を回避するには益々有利になる。そして、先端部2aおよび後端部2bは加温されて粘着性が向上した状態で押圧機構4を用いて互いが圧着接合されるので、より確実に強固に接合させることができる。これに伴い、形成されたこの環状部材を用いて製造されたゴム製品では、先端部2aと後端部2bの接合不良に起因する亀裂などの不具合発生が防止される。
【0042】
図5に例示するように加温手段5により先端部2aおよび後端部2bを加温し終えてから、図9に例示するように押圧機構4により圧着接合するまでの時間は15秒以内にすることが好ましく、10秒以内にすることがより好ましい。この時間が15秒を超えると、加温時に対する圧着接合時の先端部2aおよび後端部2bの温度低下が大きくなって、温度低下した分だけ先端部2aおよび後端部2bの粘着性向上効果が低減する。これに伴い、先端部2aと後端部2bとを強固に接合するには不利になる。
【0043】
上述した実施形態では、加温手段5により先端部2aおよび後端部2bを加温する前に、先端部2aと後端部2bどうしのドラム幅方向Wおよびドラム周方向Cに対するずれを是正する位置合わせを行っている。このタイミングで位置合わせを行うと、先端部2aおよび後端部2bに対する加温手段5による加温終了から押圧機構4による圧着接合までの時間を一定にし易くなる。即ち、位置合わせ作業に要する時間に左右されることなく、加温終了から圧着接合までの時間を精度よく一定にできる。これに伴い、先端部2aと後端部2bとの接合不良の発生を回避するには有利になる。尚、ゴム部材2を搬送装置10からドラム3に移載した際に、先端部2aと後端部2bどうしのドラム幅方向Wおよびドラム周方向Cの位置ずれが生じない場合は、この位置合わせを省略することもできる。
【0044】
或いは、この位置合わせのタイミングを変えることもできる。例えば、加温手段5により先端部2aおよび後端部2bを加温した後、押圧機構4により先端部2aと後端部2bとを圧着接合する前に、この位置合わせを行うこともできる。詳述すると、図1に例示する状態から図10に例示するように、ドラム3に巻き付けたゴム部材2の対向させた状態の先端部2aと後端部2bとを加温手段5により加温する。次いで、図4に例示するように、先端部2aと後端部2bどうしのドラム幅方向Wおよびドラム周方向Cに対するずれを是正する位置合わせを行う。次いで、温度センサ8による先端部2aおよび後端部2bの温度検知と、押圧機構4による先端部2aと後端部2bとの圧着接合を順次行う。
【0045】
それぞれの加温手段5a、5bによる加温具合(温風温度、風量、加温時間)は、同じにしても異ならせてもよい。例えば、ゴム部材2の幅方向で先端部2aおよび後端部2bに相対的に接合不良が発生し易い領域が判明している場合は、この幅方向で加温具合を異ならせることもできる。即ち、相対的に接合不良が発生し易い領域に対しては、相対的に接合不要が発生し難い領域よりも加温具合を高くする(加温エネルギをより多く付与する)。このように加温具合を変化させることで、先端部2aおよび後端部2bの全幅に対してより均一な粘着性を確保することができるので、接合不良の発生を回避するには有利になる。
【0046】
先端部2aおよび後端部2bの厚さがゴム部材2の幅方向で一定でない場合もある。このように幅方向で厚さが不均一なゴム部材2に対しては、先端部2aおよび後端部2bの厚さに応じて加温手段5による加温具合を変化させることもできる。具体的には、先端部2aおよび後端部2bの相対的に厚い領域に対しては、相対的に薄い領域よりも加温具合を高くする(加温エネルギをより多く付与する)。このように加温具合を変化させることで、先端部2aおよび後端部2bの幅方向の厚さの違いに拘わらず、先端部2aおよび後端部2bの全幅に対してより均一な粘着性を確保することができるので、接合不良の発生を回避するには有利になる。
【0047】
この実施形態では、それぞれの加温手段5a、5bは、互いに独立してスライドガイド7に沿って移動可能になっている。そのため、それぞれの加温手段5a、5bの温風の吹き出し口から先端部2aと後端部2bとのすき間までの離間距離を異ならせることで、それぞれの加温手段5a、5bによる先端部2aおよび後端部2bに対する加温具合を異ならせる(変化させる)こともできる。
【0048】
この実施形態のように、加温手段5をドラム3に対して近接する加温位置と離反する待機位置とに移動可能にすることで、加温手段5を、ドラム3の大きさやゴム部材2の厚さに応じて、先端部2aおよび後端部2bに対する加温に最適な位置に配置することができる。換言すると、ドラム3の大きさやゴム部材2の厚さに拘わらず、加温手段5による加温具合(温風温度、風量、加温時間)を一定にして、スライドガイド7上で加温手段5のドラム3に対する配置(離間距離)を調整するだけで最適な加温を行うことが可能になる。これに伴い、加温具合(温風温度、風量、加温時間)を調整する作業を不要にして作業の煩雑さを軽減できる。
【符号の説明】
【0049】
1 未加硫ゴム部材の接合装置
2 未加硫ゴム部材
2a 先端部
2b 後端部
3 ドラム
3a 外周面
4 押圧機構
4a 押圧部
5、5a、5b 加温手段
6 ベース
7 スライドガイド
8 温度センサ
9 制御部
10 搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10