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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20250129BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20250129BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20250129BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B60C15/00 L
B60C3/04 B
B60C9/08 N
B60C15/00 B
B60C15/06 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021119860
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015838
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2024-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】甲田 啓
(72)【発明者】
【氏名】村田 尚久
(72)【発明者】
【氏名】清水 栄星
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-238916(JP,A)
【文献】特開2021-054295(JP,A)
【文献】特開2020-015495(JP,A)
【文献】特開2007-118903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 3/04
B60C 9/08
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間に装架されたカーカス層を有し、該カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられた構造を有すると共に、断面高さSHが50mm~150mmの範囲にあるタイヤにおいて、
前記タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジの径方向最外側点Trから前記タイヤの外表面に対して引いた垂線上での前記タイヤと前記リムフランジとの開口距離をAとしたとき、前記開口距離Aが前記断面高さSHに対して0.01≦A/SH≦0.16の関係を満足し、前記リムフランジが前記タイヤから離れる開口開始点をSとし、前記リムフランジの径方向最外側点Trから前記タイヤの外表面に対して引いた垂線と前記タイヤの外表面とが交わる点をTとし、前記点S及び前記点Tから前記カーカス層の巻き上げ部に対して2本の垂線を引いたとき、前記2本の垂線と前記カーカス層の巻き上げ部により囲まれた領域に含まれるゴム部分の断面積Srが12mm2≦Sr≦101mm2の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記点Sから前記カーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線上における前記ゴム部分の厚さをGlとし、前記点Tから前記カーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線上における前記ゴム部分の厚さをGuとしたとき、前記厚さGl,Guが0.40≦Gl/Gu≦0.90の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、前記点Sから前記カーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線が前記カーカス層の巻き上げ部と交わる点をScとし、前記点Tから前記カーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線が前記カーカス層の巻き上げ部と交わる点をTcとし、前記点Scと前記点Tcとの中間点をUcとしたとき、前記点Scと前記点Tcと前記点Ucを通る前記カーカス層の円弧がタイヤ幅方向外側に中心を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、前記点Sと前記点Trとの中間点をUrとしたとき、前記点Sと前記点Trと前記点Urを通る前記リムフランジの円弧の曲率半径Rr(mm)に対して前記点Scと前記点Tcと前記点Ucを通る前記カーカス層の円弧の曲率半径Rc(mm)が1≦Rc/Rr≦55の関係を満足することを特徴とする請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記カーカス層の本体部と巻き上げ部がビードフィラーを介さずに互いに接触することで前記ビードコアを内包する閉鎖領域を形成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記リムフランジと接触する領域に配置されたリムクッションゴム層と該リムクッションゴム層よりもタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム層とを有し、
前記タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、前記タイヤの外表面における前記リムクッションゴム層と前記サイドウォールゴム層との境界点Xが前記点Tよりもタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記リムクッションゴム層の20℃における硬度が55以上80以下であることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記カーカス層を構成するカーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度が3.3%以上6.2%以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い負荷能力が要求される場合に好適なタイヤに関し、更に詳しくは、タイヤの撓みに起因する故障やタイヤとリムフランジとの擦れに起因する故障を効果的に抑制し、耐久性を改善することを可能にしたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電動化等に起因する車重の増加に伴い、高い負荷能力を有するタイヤが求められている。ところが、負荷の増大により、タイヤ転動時にサイドウォール部からビード部にかけて繰り返し生じる変形が大きくなると、タイヤの耐久性が悪化するという問題がある。
【0003】
これに対して、重荷重用タイヤにおいて、リムフランジの形状に対してビード部の形状を規定することにより、耐久性を改善することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、リムフランジの形状に対してビード部の形状を規定するだけでは耐久性の改善効果が不十分であり、依然としてタイヤの撓みに起因する故障やタイヤとフランジとの擦れに起因する故障が生じることが懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-34619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、タイヤの撓みに起因する故障やタイヤとリムフランジとの擦れに起因する故障を効果的に抑制し、耐久性を改善することを可能にしたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のタイヤは、一対のビード部間に装架されたカーカス層を有し、該カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられた構造を有すると共に、断面高さSHが50mm~150mmの範囲にあるタイヤにおいて、
前記タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジの径方向最外側点Trから前記タイヤの外表面に対して引いた垂線上での前記タイヤと前記リムフランジとの開口距離をAとしたとき、前記開口距離Aが前記断面高さSHに対して0.01≦A/SH≦0.16の関係を満足し、前記リムフランジが前記タイヤから離れる開口開始点をSとし、前記リムフランジの径方向最外側点Trから前記タイヤの外表面に対して引いた垂線と前記タイヤの外表面とが交わる点をTとし、前記点S及び前記点Tから前記カーカス層の巻き上げ部に対して2本の垂線を引いたとき、前記2本の垂線と前記カーカス層の巻き上げ部により囲まれた領域に含まれるゴム部分の断面積Srが12mm2≦Sr≦101mm2の範囲にあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明者は、断面高さSHが50mm~150mmの範囲にある乗用車用のタイヤにおけるビード部の挙動について鋭意研究した結果、タイヤの断面高さSHはタイヤの撓みに大きく影響するため、タイヤとリムフランジとの開口距離Aを断面高さSHに対して適切に規定すると共に、リムフランジに対する緩衝作用を担持するゴム部分の断面積Srを適切に規定することにより、タイヤの撓みに起因する故障やタイヤとフランジとの擦れに起因する故障が効果的に抑制されることを知見し、本発明に至ったのである。
【0008】
即ち、本発明では、タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジの径方向最外側点Trからタイヤの外表面に対して引いた垂線上でのタイヤとリムフランジとの開口距離をAとしたとき、開口距離Aが断面高さSHに対して0.01≦A/SH≦0.16の関係を満足し、リムフランジがタイヤから離れる開口開始点をSとし、リムフランジの径方向最外側点Trからタイヤの外表面に対して引いた垂線とタイヤの外表面とが交わる点をTとし、点S及びTからカーカス層の巻き上げ部に対して2本の垂線を引いたとき、これら2本の垂線とカーカス層の巻き上げ部により囲まれた領域に含まれるゴム部分の断面積Srが12mm2≦Sr≦101mm2の範囲にあることにより、タイヤの撓みに起因する故障やタイヤとフランジとの擦れに起因する故障を効果的に抑制し、その結果、タイヤの耐久性を改善することができる。
【0009】
本発明において、点Sからカーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線上における緩衝用のゴム部分の厚さをGlとし、点Tからカーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線上における緩衝用のゴム部分の厚さをGuとしたとき、厚さGl,Guが0.40≦Gl/Gu≦0.90の関係を満足することが好ましい。これにより、良好な緩衝作用を確保し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0010】
タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、点Sからカーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線がカーカス層の巻き上げ部と交わる点をScとし、点Tからカーカス層の巻き上げ部に対して引いた垂線がカーカス層の巻き上げ部と交わる点をTcとし、点Scと点Tcとの中間点をUcとしたとき、点Scと点Tcと点Ucを通るカーカス層の円弧がタイヤ幅方向外側に中心を有することが好ましい。これにより、タイヤ変形時にカーカス層に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0011】
タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、点Sと点Trとの中間点をUrとしたとき、点Sと点Trと点Urを通るリムフランジの円弧の曲率半径Rrに対して点Scと点Tc点Ucを通るカーカス層の円弧の曲率半径Rcが1≦Rc/Rr≦55の関係を満足することが好ましい。これにより、タイヤ変形時にカーカス層に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0012】
カーカス層の本体部と巻き上げ部はビードフィラーを介さずに互いに接触することでビードコアを内包する閉鎖領域を形成することが好ましい。このようなカーカス層の巻き上げ構造を採用することにより、リムフランジとの接触部においてカーカス層をリムフランジから遠ざけることが可能となるので、カーカス層に掛かる圧縮応力を大幅に低減し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0013】
リムフランジと接触する領域に配置されたリムクッションゴム層と該リムクッションゴム層よりもタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム層とを有する場合、タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、タイヤの外表面におけるリムクッションゴム層とサイドウォールゴム層との境界点Xが点Tよりもタイヤ径方向外側に位置することが好ましい。これにより、タイヤ変形時にカーカス層に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0014】
リムクッションゴム層の20℃における硬度は55以上80以下であることが好ましい。これにより、リムクッションゴム層の耐久性を改善することができる。
【0015】
カーカス層を構成するカーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度が3.3%以上6.2%以下であることが好ましい。これにより、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0016】
本発明において、無負荷状態で測定される寸法は、タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態で測定される。一方、荷重負荷状態で測定される寸法は、タイヤを規定リムに組み付けて規定内圧を充填し、タイヤを平面上に垂直に置いて規定負荷能力の100%荷重を負荷した状態で測定される。各寸法は、タイヤ周上の4箇所で測定された測定値の平均値である。「規定リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「規定内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている最大負荷能力に対応する空気圧である。「規定負荷能力」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている最大負荷能力である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤ(無負荷状態)を示す子午線半断面図である。
図2図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す断面図である。
図3図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図4】ビード部(無負荷状態)の変形例を示す断面図である。
図5図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図6図1の空気入りタイヤ(100%荷重負荷状態)のビード部を抽出して示す断面図である。
図7図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図8図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部及びサイドウォール部を抽出して示す断面図である。
図9図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図10図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図11図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部を抽出して示す他の断面図である。
図12図1の空気入りタイヤ(無負荷状態)のビード部及びサイドウォール部を抽出して示す他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図12は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。図1は空気入りタイヤのタイヤ赤道CLを境とする片側を描写しているが、この空気入りタイヤはタイヤ赤道CLの両側で対称又は非対称の構造を有している。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10は、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0020】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。カーカス層4はビードコア5を境とする本体部4Aと巻き上げ部4Bとを有している。
【0021】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0022】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤ10における代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。図1において、トレッド部1にはトレッドゴム層11が配置され、サイドウォール部2にはサイドウォールゴム層12が配置され、ビード部3にはリムクッションゴム層13が配置され、タイヤ10の内面にはカーカス層4に沿ってインナーライナーゴム層14が配置されている。また、サイドウォール部2には、リムフランジ22を保護するためのリムプロテクター15がタイヤ幅方向外側に突出するように形成されている。
【0023】
上述したタイヤ10は、断面高さSHが50mm~150mmの範囲にあり、主として乗用車用のタイヤである。このようなタイヤ10について、以下の構成が適用されている。即ち、図1及び図2に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ22の径方向最外側点Trからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線上でのタイヤ10とリムフランジ22との開口距離をA(mm)としたとき、開口距離Aが断面高さSH(mm)に対して0.01≦A/SH≦0.16の関係を満足している。また、リムフランジ22がタイヤ10から離れる開口開始点をSとし、リムフランジ22の径方向最外側点Trからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線とタイヤ10の外表面とが交わる点をTとし、点S及び点Tからカーカス層4の巻き上げ部4Bに対して2本の垂線を引いたとき、これら2本の垂線とカーカス層4の巻き上げ部4Bにより囲まれた領域に含まれるゴム部分R(斜線部)の断面積Srが12mm2≦Sr≦101mm2の範囲になるように構成されている。なお、リムフランジ22が径方向最外側の位置においてタイヤ幅方向と平行に延在する部分を有している場合、リムフランジ22の径方向最外側点Trは、リムフランジ22の径方向最外側の位置においてリムフランジ22の幅方向最内側となる点である。また、ゴム部分Rの断面積Srはカーカス層4を構成するカーカスコードよりも外側部分の断面積である。
【0024】
上述したタイヤ10では、無負荷状態におけるタイヤ10とリムフランジ22との開口距離Aが断面高さSHに対して0.01≦A/SH≦0.16の関係を満足すると共に、リムフランジ22に対する緩衝作用を担持するゴム部分Rの断面積Srが12mm2≦Sr≦101mm2の範囲にあることにより、タイヤ10の撓み変形量に対して開口距離Aを適正化し、タイヤ10の撓みに起因する故障やタイヤ10とフランジ22との擦れに起因する故障を効果的に抑制することができる。これにより、ビード部3付近における故障を抑制し、タイヤ10の耐久性を改善することができる。特に、タイヤ10の偏平率が55%以下である場合、優れた耐久性が求められているが、そのような場合に耐久性の改善効果を最大限に享受することができる。
【0025】
ここで、比A/SHが0.01未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に0.16超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、更には、小石などが入り込み易くなり、それに起因して耐久性が大幅に悪化する恐れがある。特に、0.015≦A/SH≦0.14の関係を満足し、更には、0.02≦A/SH≦0.12の関係を満足することが望ましい。
【0026】
一方、ゴム部分Rの断面積Srが12mm2未満であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近においてカーカス層4に圧縮応力が掛かり易くなるため故障に繋がり、逆に101mm2超であると、開口距離Aを十分に確保することが困難になり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がる。特に、14mm2≦Sr≦98mm2の範囲を満足し、更には、16mm2≦Sr≦93mm2の範囲を満足することが望ましい。
【0027】
上記タイヤ10において、図3に示すように、点Sからカーカス層4の巻き上げ部4Bに対して引いた垂線上におけるゴム部分Rの厚さをGl(mm)とし、点Tからカーカス層4の巻き上げ部4Bに対して引いた垂線上におけるゴム部分Rの厚さをGu(mm)としたとき、厚さGl,Guが0.40≦Gl/Gu≦0.90の関係を満足すると良い。これにより、良好な緩衝作用を確保し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0028】
ここで、比Gl/Guが上記範囲から外れると、緩衝作用が低下し、耐久性の改善効果が低下する。特に、0.45≦Gl/Gu≦0.85の関係を満足し、更には、0.50≦Gl/Gu≦0.80の関係を満足することが望ましい。また、ゴム部分Rの厚さGlは、0.5mm≦Gl≦4.0mmの範囲を満足し、更には、1.5mm≦Gl≦3.0mmの範囲を満足することが望ましい。ゴム部分Rの厚さGl,Guはタイヤ10のカットサンプルにおいても測定可能である。
【0029】
上記タイヤ10において、図3に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、点Sからカーカス層4の巻き上げ部4Bに対して引いた垂線がカーカス層4の巻き上げ部4Bと交わる点をScとし、点Tからカーカス層4の巻き上げ部4Bに対して引いた垂線がカーカス層4の巻き上げ部4Bと交わる点をTcとし、点Scと点Tcとの中間点をUcとしたとき、点Scと点Tcと点Ucを通るカーカス層4の円弧(曲率半径Rc)がタイヤ幅方向外側に中心を有すると良い。これにより、タイヤ変形時にカーカス層4に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。なお、点Scと点Tcと点Ucを通るカーカス層4の円弧は、タイヤ10がリム組されていない単体の状態や100%荷重が負荷された状態においても、タイヤ幅方向外側に中心を有することが望ましい。
【0030】
特に、図3に示すように、点Sと点Trとの中間点をUrとしたとき、点Sと点Trと点Urを通るリムフランジ22の円弧の曲率半径Rr(mm)に対して点Scと点Tc点Ucを通るカーカス層4の円弧の曲率半径Rc(mm)が1≦Rc/Rr≦55の関係を満足すると良い。これにより、タイヤ変形時にカーカス層4に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0031】
ここで、比Rc/Rrが上記範囲から外れると、タイヤ変形時にカーカス層4に圧縮応力が掛かり易くなるため、耐久性の改善効果が低下する。特に、2≦Rc/Rr≦50の関係を満足し、更には、3≦Rc/Rr≦45の関係を満足することが望ましい。
【0032】
図4はビード部の変形例を示すものである。図4において、カーカス層4の本体部4Aと巻き上げ部4Bはビードフィラーを介さずに互いに接触することでビードコア5を内包する閉鎖領域を形成している。つまり、カーカス層4はビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられてビードコア5の上端位置において本体部4Aと巻き上げ部4Bとが互いに密着するように配置されている。このようなカーカス層4の巻き上げ構造を採用することにより、リムフランジ22との接触部においてカーカス層4をリムフランジ22から遠ざけることが可能となるので、カーカス層4に掛かる圧縮応力を大幅に低減し、耐久性の改善効果を高めることができる。なお、カーカス層4により形成される閉鎖領域のゴム占有率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。ここで言うゴム占有率とは、タイヤ子午線断面において、カーカス層4により形成される閉鎖領域に占めるゴム部分(例えば、ビードワイヤのインシュレーションゴムや小型のビードフィラー)の百分率である。
【0033】
また、図4の構造において、カーカス層4の巻き上げ部4Bのタイヤ幅方向外側には、2次的なビードフィラー9を配置したり、リムクッションゴム層13を厚肉化したりすることで耐久性の改善を図ることができる。この場合、ゴム部分Rの断面積Srは36mm2≦Sr≦101mm2の範囲に設定することができる。特に、42mm2≦Sr≦98mm2の範囲を満足し、更には、48mm2≦Sr≦93mm2の範囲を満足することが望ましい。
【0034】
上記タイヤ10において、図2に示すように、リムフランジ22と接触する領域に配置されたリムクッションゴム層13と該リムクッションゴム層13よりもタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム層12とを有する場合、タイヤ10を規定リムに組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ10の外表面におけるリムクッションゴム層13とサイドウォールゴム層12との境界点Xが点Tよりもタイヤ径方向外側に位置すると良い。つまり、リムクッションゴム層13はビードコア5の下側からタイヤ径方向外側に向かって少なくとも点Tの位置まで延在していることが望ましい。これにより、タイヤ変形時にカーカス層4に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0035】
リムクッションゴム層13の20℃における硬度は55以上80以下であると良い。これにより、リムクッションゴム層13の耐久性を改善することができる。ここで、リムクッションゴム層13の硬度が上記範囲から外れると、耐久性の改善効果が低下する。硬度は、JIS-K6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。
【0036】
リムクッションゴム層13の20℃における100%モジュラスは2.0MPa以上9.5MPa以下であると良い。これにより、リムクッションゴム層13の耐久性を改善することができる。ここで、リムクッションゴム層13の100%モジュラスが上記範囲から外れると、耐久性の改善効果が低下する。100%モジュラスは、JIS-K6251に準拠して、温度20℃の条件にて測定される所定伸び引張応力である。
【0037】
リムクッションゴム層13の20℃における損失正接(tanδ)は0.05以上0.35以下であると良い。これにより、リムクッションゴム層13の厚さ(耐久性)を確保した上で転がり抵抗の増大を抑制することができる。ここで、リムクッションゴム層13の損失正接が0.35超であると、転がり抵抗が増大することになる。損失正接(tanδ)は、JIS-K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件にて測定されるものである。
【0038】
カーカス層4を構成するカーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度は3.3%以上6.2%以下であると良い。これにより、耐久性の改善効果を高めることができる。ここで、カーカス層4を構成するカーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度が上記範囲から外れると、耐久性の改善効果が低下する。特に、カーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度は3.8%以上5.9%以下であることが望ましい。中間伸度は、タイヤ10のサイドウォール部から取り出されたカーカスコードについて、JIS-L1017準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施して測定されるものである。
【0039】
カーカス層4を構成するカーカスコードは、有機繊維コードであると良い。カーカスコードとして、例えば高モジュラスのレーヨンコードを採用した場合、耐久性が良化する。カーカス層4の総厚さは0.8mm以上1.5mm以下であると良い。レーヨンコードの場合、コード径は0.6mm以上1.1mm以下であり、コード打ち込み密度は43本/50mm以上59本/50mm以下であると良い。また、カーカスコードとして、耐疲労性に優れたポリエステルコードも好適である。ポリエステルコードの場合、コード径は0.7mm以上1.2mm以下であり、コード打ち込み密度は44本/50mm以上60本/50mm以下であると良い。
【0040】
また、カーカス層4を構成するカーカスコードのタイヤ周方向に対する角度は75°以上90°以下の範囲に設定することができる。特に、カーカスコードの角度を88°未満に設定した場合、タイヤ剛性が高くなるため耐久性が向上する。また、カーカス層4の巻き上げ部4Bはタイヤ最大幅位置を超えてベルト層7のエッジ部と重なる位置まで延在することが好ましい。このような巻き上げ構造を採用することにより、タイヤ剛性が高くなるため耐久性が向上する。
【0041】
上記タイヤ10において、図1及び図5に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ10の総幅TWと規定リム21のリム幅DWとの差の1/2に相当する突き出し量をW(mm)としたとき、開口距離Aが突き出し量Wに対して0.03≦A/W≦1.60の関係を満足すると良い。タイヤ10の総幅TWは、カーカス層4がタイヤ幅方向外側に最も膨らんだ位置におけるタイヤ10の総幅である。つまり、リムフランジ22を保護するためのリムプロテクター15は総幅TWから除外される。
【0042】
このように無負荷状態におけるタイヤ10とリムフランジ22との開口距離Aがタイヤ10の総幅TWと規定リム21のリム幅DWとの差の1/2に相当する突き出し量Wに対して0.03≦A/W≦1.60の関係を満足することにより、タイヤ10の撓み変形量に対して開口距離Aを適正化し、タイヤ10の撓みに起因する故障やタイヤ10とフランジ22との擦れに起因する故障を効果的に抑制することができる。これにより、ビード部3付近における故障を抑制し、タイヤ10の耐久性を改善する効果を更に高めることができる。
【0043】
ここで、比A/Wが0.03未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に1.60超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、更には、小石などが入り込み易くなり、それに起因して耐久性が大幅に悪化する恐れがある。特に、0.035≦A/W≦1.5の関係を満足し、更には、0.04≦A/W≦1.4の関係を満足することが望ましい。
【0044】
上記タイヤ10において、図6に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填しつつ規定負荷能力の100%荷重を負荷した状態において、リムフランジ22の径方向最外側点Trからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線上でのタイヤ10とリムフランジ22との開口距離をA100(mm)としたとき、開口距離A100が断面高さSH(mm)に対して0.003≦A100/SH≦0.100の関係を満足すると良い。なお、開口距離A100の測定位置は開口距離Aの測定位置と同じである。このようにタイヤ10が変形した際の開口距離A100を最適化することにより、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0045】
ここで、比A100/SHが0.003未満であると、開口距離A100が不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に0.100超であると、開口距離A100が大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.005≦A100/SH≦0.070の関係を満足し、更には、0.007≦A100/SH≦0.065の関係を満足することが望ましい。
【0046】
上記タイヤ10において、開口距離A100(mm)は突き出し量W(mm)に対して0.010≦A100/W≦1.000の関係を満足すると良い。これにより、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0047】
ここで、比A100/Wが0.010未満であると、開口距離A100が不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に1.000超であると、開口距離A100が大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.015≦A100/W≦0.800の関係を満足し、更には、0.020≦A100/W≦0.800の関係を満足することが望ましい。
【0048】
上記タイヤ10において、開口距離A(mm)と開口距離A100(mm)とは0.20≦A100/A≦0.80の関係を満足すると良い。これにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0049】
ここで、比A100/Aが0.20未満であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の変形が著しく大きくなるため耐久性の改善効果が低下する恐れがあり、逆に0.80超であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22から外れた位置での変形が著しく大きくなるため耐久性の改善効果が低下する恐れがある。特に、0.23≦A100/A≦0.75の関係を満足し、更には、0.25≦A100/A≦0.70の関係を満足することが望ましい。
【0050】
上記タイヤ10において、開口距離Aは1.5mm≦A≦8.0mmの範囲にあると良い。これにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0051】
ここで、開口距離Aが1.5mm未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に8.0mm超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、開口距離Aは1.8mm≦A≦7.5mmの範囲にあり、更には、2.0mm≦A≦7.0mmの範囲にあることが望ましい。
【0052】
上記タイヤ10において、開口距離A(mm)はタイヤ10の最大幅位置(総幅TWの測定位置)までのタイヤ径方向の高さSDH(mm)に対して0.01≦A/SDH≦0.50の関係を満足すると良い。ビード部3の変形に対する影響が大きい高さSDHに対して開口距離Aを規定することにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0053】
ここで、比A/SDHが0.01未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に0.50超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.02≦A/SDH≦0.45の関係を満足し、更には、0.03≦A/SDH≦0.40の関係を満足することが望ましい。
【0054】
上記タイヤ10において、図5に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ22の径方向最外側点Trと該リムフランジ22がタイヤ10から離れる開口開始点Sとの中間点Urからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線上でのタイヤ10とリムフランジ22との開口距離をA' (mm)としたとき、開口距離A'が断面高さSH(mm)に対して0.006≦A'/SH≦0.150の関係を満足すると良い。これにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0055】
ここで、比A'/SHが0.006未満であると、開口距離A'が不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に0.150超であると、開口距離A'が大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.010≦A'/SH≦0.130の関係を満足し、更には、0.014≦A'/SH≦0.110の関係を満足することが望ましい。
【0056】
上記タイヤ10において、開口距離A(mm)と開口距離A' (mm)とは0.50≦A'/A≦0.96の関係を満足すると良い。これにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0057】
ここで、比A'/Aが0.50未満であると、開口距離A'が不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に0.96超であると、開口距離A'が大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.53≦A'/A≦0.94の関係を満足し、更には、0.56≦A'/A≦0.92の関係を満足することが望ましい。
【0058】
上記タイヤ10において、開口距離A'は1.0mm≦A'≦7.5mmの範囲にあることが好ましい。これにより、繰り返し変形により生じる応力を抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0059】
ここで、開口距離A'が1.0mm未満であると、開口距離A'が不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に7.5mm超であると、開口距離A'が大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、開口距離A'は1.2mm≦A'≦7.0mmの範囲にあり、更には、1.4mm≦A'≦6.5mmの範囲にあることが望ましい。
【0060】
上記タイヤ10において、図7に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ22の径方向最外側点Trを通るタイヤ幅方向の水平線とタイヤ10の外表面とが交わる点をPとし、規定リム21のリム幅DW及びリム径DOを規定する点をQとしたとき、点Pと点Qとを結ぶ直線がタイヤ幅方向の水平線に対してなす角度αが50°≦α≦80°の範囲にあると良い。
【0061】
このようにビード部3の傾斜角度に相当する角度αが50°≦α≦80°の範囲にあることにより、タイヤ10の撓み変形量に対して開口距離Aを適正化し、タイヤ10の撓みに起因する故障やタイヤ10とフランジ22との擦れに起因する故障を効果的に抑制することができる。これにより、ビード部3付近における故障を抑制し、タイヤ10の耐久性を改善する効果を更に高めることができる。
【0062】
ここで、角度αが50°未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に80°超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、更には、小石などが入り込み易くなり、それに起因して耐久性が大幅に悪化する恐れがある。特に、55°≦α≦75°の範囲を満足し、更には、60°≦α≦70°の範囲を満足することが望ましい。
【0063】
上記タイヤ10において、図1及び図8に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、タイヤ10の総幅TWを規定する点をLとしたとき、点Pと点Qとを結ぶ直線が点Lと点Qとを結ぶ直線に対してなす角度θは2°≦θ≦30°の範囲にあると良い。これにより、開口距離Aを撓み変形量に対して適正化し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0064】
ここで、角度θが2°未満であると、開口距離Aが不十分となり、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に30°超であると、開口距離Aが大き過ぎるため、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、4°≦θ≦25°の範囲を満足し、更には、6°≦θ≦20°を満足することが望ましい。
【0065】
上記タイヤ10において、図9に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、リムフランジ22がタイヤ10から離れる開口開始点をSとし、リムフランジ22の径方向最外側点をTrとし、該点Trからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線とタイヤの外表面とが交わる点をTとしたとき、点Sと点Tとを結ぶ直線が点Sと点Trとを結ぶ直線に対してなす角度βは15°≦β≦65°の範囲にあると良い。これにより、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0066】
ここで、角度βが15°未満であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、逆に65°超であると、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなる。特に、20°≦β≦60°の範囲を満足し、更には、25°≦β≦55°の範囲を満足することが望ましい。
【0067】
上記タイヤ10において、図10に示すように、点Qと点Sとの間のタイヤ幅方向の水平距離B(mm)は断面高さSH(mm)に対して0.02≦B/SH≦0.18の関係を満足すると良い。これにより、繰り返し変形による応力が適正な範囲となり、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0068】
ここで、比B/SHが0.02未満であると、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、逆に0.18超であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ22付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、0.03≦B/SH≦0.15の関係を満足し、更には、0.04≦B/SH≦0.13の関係を満足することが望ましい。
【0069】
上記タイヤ10において、水平距離Bは3.0mm≦B≦9.0mmの範囲にあると良い。これにより、繰り返し変形による応力が適正な範囲となり、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0070】
ここで、水平距離Bが3.0mm未満であると、タイヤ10とリムフランジ22との擦れによる故障が生じ易くなり、逆に9.0mm超であると、タイヤ10が撓んだ際にリムフランジ12付近の応力が大きくなるため故障に繋がり、いずれの場合も耐久性の改善効果が低下する。特に、水平距離Bは3.2mm≦B≦8.5mmの範囲にあり、更には、3.4mm≦B≦8.0mmの範囲にあることが望ましい。
【0071】
上記タイヤ10において、図11に示すように、リムフランジ22の径方向最外側点Trからタイヤ10の外表面に対して引いた垂線とタイヤ10の外表面とが交わる点をTとしたとき、点Sと点Pと点Tを通るタイヤ10の円弧(曲率半径Rb)がタイヤ幅方向外側に中心を有すると良い。これにより、タイヤ10のリムフランジ22と接触する部分に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0072】
特に、図11に示すように、点Pから引いたタイヤ10の外表面に対する垂線がリムフランジ22の外表面と交わる点をPrとしたとき、点Sと点Prと点Trを通るリムフランジ22の円弧の曲率半径Rr(mm)に対して点Sと点Pと点Tを通るタイヤ10の円弧の曲率半径Rb(mm)が1.2≦Rb/Rr≦14.5の関係を満足すると良い。これにより、タイヤ10のリムフランジ22と接触する部分に圧縮応力が掛かり難くなるため、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0073】
ここで、比Rb/Rrが上記範囲から外れると、タイヤ10のリムフランジ22と接触する部分に圧縮応力が掛かり易くなるため、耐久性の改善効果が低下する。特に、1.5≦Rb/Rr≦12.2の関係を満足し、更には、2.0≦Rb/Rr≦10.0の関係を満足することが望ましい。
【0074】
上記タイヤ10において、図12に示すように、タイヤ10を規定リム21に組み付けて規定内圧を充填した無負荷状態において、複数層のベルト層7のうちタイヤ径方向最内側に位置するベルト層7のエッジ部を通るタイヤ幅方向の水平線がタイヤ10の外表面と交わる点をVとし、タイヤ10の総幅TWを規定する点をLとしたとき、点Lと点Vとを結ぶ直線がタイヤ幅方向の水平線に対してなす角度γは45°≦γ≦80°の範囲にあると良い。これにより、繰り返し変形による応力が適正な範囲となり、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0075】
ここで、角度γが上記範囲から外れると、繰り返し変形による応力が適正な範囲から外れるため耐久性の改善効果が低下する。特に、50°≦γ≦75°の範囲を満足し、更には、55°≦γ≦70°の範囲を満足することが望ましい。
【0076】
上記タイヤ10において、図12に示すように、点Lと点Vとの間のタイヤ径方向の中央位置でタイヤ10の外表面上にある点をWとしたとき、点Vと点Wと点Lを通るタイヤ10の円弧の曲率半径Rsは断面高さSHに対して0.3≦Rs/SH≦2.5の関係を満足すると良い。これにより、繰り返し変形による応力が適正な範囲となり、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0077】
ここで、比Rs/SHが上記範囲から外れると、繰り返し変形による応力が適正な範囲から外れるため耐久性の改善効果が低下する。特に、0.4≦Rs/SH≦2.3の関係を満足し、更には、0.5≦Rs/SH≦2.0の関係を満足することが望ましい。
【実施例
【0078】
タイヤサイズ285/35R20のタイヤ(SH=95mm)において、A/SH、断面積Sr、Gl/Gu、厚さGl、厚さGu、開口距離A、点Scと点Tcと点Ucを通るタイヤの円弧(Rc)の中心位置、Rc/Rr、曲率半径Rc、曲率半径Rr、閉鎖領域内のビードフィラーの有無、リムクッションゴム層とサイドウォールゴム層との境界点Xの位置、リムクッションゴム層の20℃における硬度、カーカス層を構成するカーカスコードの1.5cN/dtex負荷時の中間伸度を表1のように設定した比較例1~2及び実施例1~9の空気入りタイヤを製作した。なお、円弧(Rc)の中心位置について、円弧の中心位置がタイヤ幅方向内側にある場合を「内側」と示し、円弧の中心位置がタイヤ幅方向外側にある場合を「外側」と示した。また、リムクッションゴム層とサイドウォールゴム層との境界点Xの位置について、境界点Xが点Tよりもタイヤ径方向内側に位置する場合を「内側」と示し、境界点Xが点Tよりもタイヤ径方向外側に位置する場合を「外側」と示した。
【0079】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐ひずみ性能、耐擦れ性能を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0080】
耐ひずみ性能:
各試験タイヤをリムサイズ20×10Jのホイールに組み付けてドラム径1707mmの試験機に装着し、空気圧を290kPaとし、速度を81km/hとし、初期荷重を最大負荷能力の88%とし、2時間毎に13%ずつ荷重を増加させ、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を計測した。評価結果は、比較例2を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐ひずみ性能が優れていることを意味する。
【0081】
耐擦れ性能:
各試験タイヤをリムサイズ20×10Jのホイールに組み付けてドラム径1707mmの試験機に装着し、空気圧を290kPaとし、速度を81km/hとし、初期荷重を最大負荷能力の88%とし、2時間毎に13%ずつ荷重を増加させ、2500kmの走行試験を実施した。リムフランジの径方向最外側点に対応する位置におけるタイヤ外表面からカーカス層までのゴム厚さを試験前後に測定し、そのゴム厚さの変化量を求めた。評価結果は、ゴム厚さの変化量の逆数を用い、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐擦れ性能が優れていることを意味する。
【0082】
【表1】
【0083】
この表1から判るように、実施例1~9タイヤは、比較例1~2との対比において、耐ひずみ性能と耐擦れ性能が共に改善されており、優れた耐久性を有するものであった。
【符号の説明】
【0084】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 タイヤ
11 トレッドゴム層
12 サイドウォールゴム層
13 リムクッションゴム層
14 インナーライナー層
15 リムプロテクター
21 規定リム
22 リムフランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12