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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
F25B7/00 E
F25B7/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023168479
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】東 翔太
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-263556(JP,A)
【文献】特開2023-066634(JP,A)
【文献】特開2023-115228(JP,A)
【文献】国際公開第2022/118844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 7/00
F25B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮機(11)、第1熱交換器(12)、第1膨張機構(13)、及びカスケード熱交換器(30)を含み、第1冷媒が循環する第1回路(10)と、
第2圧縮機(21)、第2熱交換器(23)、前記カスケード熱交換器(30)、第2膨張機構(24)、及び第3熱交換器(25)を含み、第2冷媒が循環する第2回路(20)と、
前記第1回路の運転を停止する前に、前記第1熱交換器に前記第1冷媒を集める停止制御を行う制御部(6)と、
を備え、
前記第1回路は、冷房運転時における過冷却回路を構成し、前記第2回路の能力を補助するアシスト回路であり、
前記第1圧縮機は、前記第1冷媒を圧縮し、
前記第1熱交換器は、前記第1冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第1膨張機構は、前記第1冷媒を減圧し、
前記カスケード熱交換器は、前記第1冷媒と、前記第2冷媒との熱交換を行い、
前記第2圧縮機は、前記第2冷媒を圧縮し
前記第2熱交換器は、前記第2冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第2膨張機構は、前記第2冷媒を減圧し、
前記第3熱交換器は、前記第2冷媒と室内空気との熱交換を行い、
前記制御部は、冷房運転時に、前記第1回路に先立って前記第2回路の運転を行う、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項2】
第1圧縮機(11)、第1熱交換器(12)、第1膨張機構(13)、及びカスケード熱交換器(30)を含み、第1冷媒が循環する第1回路(10)と、
第2圧縮機(21)、第2熱交換器(23)、前記カスケード熱交換器(30)、第2膨張機構(24)、及び第3熱交換器(25)を含み、第2冷媒が循環する第2回路(20)と、
前記第1回路の運転を停止する前に、前記第1熱交換器に前記第1冷媒を集める停止制御を行う制御部(6)と、
を備え、
前記第1回路は、冷房運転時における過冷却回路を構成し、前記第2回路の能力を補助するアシスト回路であり、
前記第1圧縮機は、前記第1冷媒を圧縮し、
前記第1熱交換器は、前記第1冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第1膨張機構は、前記第1冷媒を減圧し、
前記カスケード熱交換器は、前記第1冷媒と、前記第2冷媒との熱交換を行い、
前記第2圧縮機は、前記第2冷媒を圧縮し
前記第2熱交換器は、前記第2冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第2膨張機構は、前記第2冷媒を減圧し、
前記第3熱交換器は、前記第2冷媒と室内空気との熱交換を行い、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に室外空気を送るファン(43)をさらに備える、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項3】
第1圧縮機(11)、第1熱交換器(12)、第1膨張機構(13)、及びカスケード熱交換器(30)を含み、第1冷媒が循環する第1回路(10)と、
第2圧縮機(21)、第2熱交換器(23)、前記カスケード熱交換器(30)、第2膨張機構(24)、及び第3熱交換器(25)を含み、第2冷媒が循環する第2回路(20)と、
前記第1回路の運転を停止する前に、前記第1熱交換器に前記第1冷媒を集める停止制御を行う制御部(6)と、
を備え、
前記第1回路は、冷房運転時における過冷却回路を構成し、前記第2回路の能力を補助するアシスト回路であり、
前記第1圧縮機は、前記第1冷媒を圧縮し、
前記第1熱交換器は、前記第1冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第1膨張機構は、前記第1冷媒を減圧し、
前記カスケード熱交換器は、前記第1冷媒と、前記第2冷媒との熱交換を行い、
前記第2圧縮機は、前記第2冷媒を圧縮し
前記第2熱交換器は、前記第2冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第2膨張機構は、前記第2冷媒を減圧し、
前記第3熱交換器は、前記第2冷媒と室内空気との熱交換を行い、
前記制御部は、前記第2回路が運転中で、かつ前記第1回路が停止中に、前記第1膨張機構を全閉にする、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項4】
第1圧縮機(11)、第1熱交換器(12)、第1膨張機構(13)、及びカスケード熱交換器(30)を含み、第1冷媒が循環する第1回路(10)と、
第2圧縮機(21)、第2熱交換器(23)、前記カスケード熱交換器(30)、第2膨張機構(24)、及び第3熱交換器(25)を含み、第2冷媒が循環する第2回路(20)と、
前記第1回路の運転を停止する前に、前記第1熱交換器に前記第1冷媒を集める停止制御を行う制御部(6)と、
を備え、
前記第1回路は、冷房運転時における過冷却回路を構成し、前記第2回路の能力を補助するアシスト回路であり、
前記第1圧縮機は、前記第1冷媒を圧縮し、
前記第1熱交換器は、前記第1冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第1膨張機構は、前記第1冷媒を減圧し、
前記カスケード熱交換器は、前記第1冷媒と、前記第2冷媒との熱交換を行い、
前記第2圧縮機は、前記第2冷媒を圧縮し
前記第2熱交換器は、前記第2冷媒と室外空気との熱交換を行い、
前記第2膨張機構は、前記第2冷媒を減圧し、
前記第3熱交換器は、前記第2冷媒と室内空気との熱交換を行い、
前記制御部は、前記第2圧縮機を起動し、次に前記第2膨張機構の開度を大きくし、次に前記第1圧縮機を起動し、次に前記第1膨張機構の開度を大きくする、冷凍サイクル装置(1)。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2回路における前記カスケード熱交換器の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、前記第1回路の運転を開始する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2回路の運転開始から所定時間経過後に、前記第1回路の運転を開始する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1圧縮機の起動後に、前記第1膨張機構の開度を大きくする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1回路の運転と、前記第2回路の運転とを制御する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記第1熱交換器は、扁平多穴管である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記第1回路は、アキュムレータ(14)をさらに含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記制御部は、暖房運転及び冷房運転を行う、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記第1冷媒は、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWPが500を超える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5430604号)には、二酸化炭素冷媒を用いた低元冷凍サイクルと、低元冷凍サイクルの放熱を補助する高元冷凍サイクルと、を備える二元冷凍装置において、高元側冷凍サイクルの蒸発器と低元側冷凍サイクルの凝縮器とがカスケードコンデンサで熱交換することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者は、特許文献1の二元冷凍装置では、液冷媒が圧縮機に流入する恐れがあるという問題に着眼した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題は、高元冷凍サイクルが停止した際に、カスケードコンデンサにおける高元冷凍サイクルの蒸発器が冷却されて、冷媒が液化することに起因することを、本発明者は見出した。この状態で、高元冷凍サイクルを運転させると、液化した冷媒が圧縮機に流入してしまう。
【0005】
そこで、第1観点の冷凍サイクル装置は、第1回路と、第2回路と、制御部と、を備える。第1回路は、第1圧縮機、第1熱交換器、第1膨張機構、及びカスケード熱交換器を含む。第1回路は、第1冷媒が循環する。第2回路は、第2圧縮機、第2熱交換器、カスケード熱交換器、第2膨張機構、及び第3熱交換器を含む。第2回路は、第2冷媒が循環する。制御部は、第1回路の運転を停止する前に、第1熱交換器に第1冷媒を集める停止制御を行う。
【0006】
第1観点の冷凍サイクル装置では、制御部によって、第1回路の運転を停止する前に、第1熱交換器に第1冷媒を集める停止制御を行うので、カスケード熱交換器に集められる第1冷媒を減らすことができる。このため、第1回路の停止中に、カスケード熱交換器内の第1冷媒が液化することを抑制できる。この状態で、第1回路の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することを抑制することができる。
【0007】
第2観点の冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、冷房運転時に、第1回路に先立って第2回路の運転を行う。
【0008】
第2観点の冷凍サイクル装置では、第1回路よりも先に第2回路を運転させることで、第2回路の第2熱交換器通過後の第2冷媒がカスケード熱交換器を通過する際に、カスケード熱交換器に集められている第1冷媒に熱を与えることができる。この熱によって、第1冷媒を加熱できるので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制することができる。
【0009】
第3観点の冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、第2回路におけるカスケード熱交換器の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、第1回路の運転を開始する。
【0010】
第3観点の冷凍サイクル装置では、第2回路におけるカスケード熱交換器の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、カスケード熱交換器において、第2冷媒の熱が第1冷媒に伝達されて、第1冷媒が気化したと判定する。この状態で、第1回路の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制することができる。
【0011】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第2観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、第2回路の運転開始から所定時間経過後に、第1回路の運転を開始する。
【0012】
第4観点の冷凍サイクル装置では、第2回路の運転から所定時間経過すると、カスケード熱交換器において、第2冷媒の熱が第1冷媒に伝達されて、第1冷媒が気化したと判定する。この状態で、第1回路の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制することができる。
【0013】
第5観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第4観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1圧縮機の起動後に、第1膨張機構の開度を大きくする。
【0014】
第5観点の冷凍サイクル装置では、第1圧縮機の起動時には、第1膨張機構の開度を大きくしないので、第1回路の第1冷媒がそのまま第1圧縮機に流入することを抑制できる。このため、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制できる。
【0015】
第6観点の冷凍サイクル装置は、第5観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、第2圧縮機を起動し、次に第2膨張機構の開度を大きくし、次に第1圧縮機を起動し、次に第1膨張機構の開度を大きくする。
【0016】
第6観点の冷凍サイクル装置のように、第2圧縮機、第2膨張機構、第1圧縮機及び第1膨張機構の順に制御することによって、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することを抑制した状態で、第1回路及び第2回路の運転を行うことができる。
【0017】
第7観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第6観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部は、第1回路の運転と、第2回路の運転とを制御する。
【0018】
第7観点の冷凍サイクル装置のように、第2回路の制御部が、第1回路の制御を行ってもよい。
【0019】
第8観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第7観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1熱交換器は、扁平多穴管である。
【0020】
第8観点の冷凍サイクル装置では、第1熱交換器としての扁平多穴管は、その容積を小さくできるので、第1冷媒量を減らすことができる。このため、カスケード熱交換器に集められる第1冷媒を減らすことができる。
【0021】
第9観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第8観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1熱交換器及び第2熱交換器に室外空気を送るファンをさらに備える。
【0022】
第9観点の冷凍サイクル装置では、第1熱交換器及び第2熱交換器に室外空気を送るファンが共通であるので、第1回路が停止中であっても、第2回路が運転していると、第1熱交換器に室外空気が流れる。このため、第1熱交換器に集められた第1冷媒と、室外空気とが熱交換するので、第1熱交換器に液化した第1冷媒を集めやすくなる。これにより、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制できる。
【0023】
第10観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第9観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1回路は、アキュムレータをさらに含む。
【0024】
第10観点の冷凍サイクル装置では、アキュムレータに液化した第1冷媒を貯留させることができるので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制できる。
【0025】
第11観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第10観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部は、第2回路が運転中で、かつ第1回路が停止中に、第1膨張機構を全閉にする。
【0026】
第2回路が運転中で、第1回路が停止中には、カスケード熱交換器において第1冷媒が冷却されやすい。この場合、第11観点の冷凍サイクル装置では、第1膨張機構を全閉にすることによって、カスケード熱交換器に流入する第1冷媒を減らすことができる。このため、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することをより抑制できる。
【0027】
第12観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第11観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部は、暖房運転及び冷房運転を行う。
【0028】
第12観点の冷凍サイクル装置では、暖房運転時に第1回路の運転を停止させることで、カスケード熱交換器に集められた第1冷媒が液化しやすいので、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入するという課題が生じやすい。この課題が生じやすい場合であっても、停止制御を行うことで、液化した第1冷媒が第1圧縮機に流入することを抑制できる。
【0029】
第13観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第12観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1冷媒は、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWP(地球温暖化係数)が500を超える。
【0030】
第13観点の冷凍サイクル装置のように、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWPが500を超える第1冷媒を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】室外ユニットの断面模式図である。
図3】第1熱交換器の概略斜視図である。
図4】冷凍サイクル装置の制御ブロック図である。
図5】冷凍サイクル装置の暖房運転における動作を示す図である。
図6】冷凍サイクル装置の冷房運転における動作を示す図である。
図7】停止制御のフローチャートである。
図8】開始制御のフローチャートである。
図9】変形例1の開始制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(1)全体構成
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の室内の冷暖房に使用される装置である。
【0033】
冷凍サイクル装置1は、第1回路10と、第2回路20と、制御部6と、を備える。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の第1回路10と蒸気圧縮式の第2回路20とからなる二元冷媒回路を有しており、二元冷凍サイクルを行う。
【0034】
第1回路10は、第1冷媒が循環する。第2回路20は、第2冷媒が循環する。第1回路10と第2回路20とは、カスケード熱交換器30を介して、熱的に接続されている。
【0035】
冷凍サイクル装置1は、室外ユニット2と、室内ユニット3と、を備えている。冷凍サイクル装置1は、室外ユニット2と、室内ユニット3と、が互いに連絡配管4、5を介して接続されて構成されている。
【0036】
制御部6は、第1回路10の運転を停止する前に、第1熱交換器12に第1冷媒を集める停止制御を行う。
【0037】
(2)詳細構成
(2-1)第1回路
第1回路10を流れる第1冷媒は、特に限定されないが、ここでは、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWPが500を超える。第1冷媒は、例えば、炭化水素系の冷媒、R1234yf、R1234ze、R32などであり、本実施形態ではR290である。
【0038】
第1回路10は、冷房運転時における過冷却回路を構成する。第1回路は、冷房運転時に、第2回路20の能力を補助するアシスト回路である。
【0039】
第1回路10は、第1圧縮機11と、第1熱交換器12と、第1膨張機構13と、第1アキュムレータ14と、カスケード熱交換器30と、を含む。
【0040】
第1圧縮機11は、第1冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、圧縮機モータをインバータ制御することで運転容量を可変することが可能なスクロール型等の容積式圧縮機である。
【0041】
第1熱交換器12は、第1冷媒と室外空気との熱交換を行うための機器である。第1熱交換器12において、第1冷媒は、室外空気から冷熱または温熱を取得する。第1熱交換器12は、例えば、図3に示すような扁平多穴管である。
【0042】
第1膨張機構13は、第1冷媒を減圧する機器であり、例えば、電動膨張弁である。
【0043】
第1アキュムレータ14は、カスケード熱交換器30と第1圧縮機11の吸入側とを接続する吸入流路の途中に設けられている。第1アキュムレータ14は、流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを第1圧縮機11の吸入側へ流す。
【0044】
本実施形態の第1アキュムレータ14は、通常のアキュムレータが省略されており、通常のアキュムレータに付随するサブアキュムレータである。具体的には、第1アキュムレータ14の容積は、後述する第2回路20の第2アキュムレータ26の容積の半分以下である。
【0045】
カスケード熱交換器30は、第1冷媒と、第2冷媒との間で、互いに混合させることなく熱交換を行わせるための機器である。カスケード熱交換器30は、例えば、プレート型熱交換器である。カスケード熱交換器30は、第1回路10に属する第1流路31と、第2回路20に属する第2流路32と、を有している。第1流路31は、そのガス側が、第1圧縮機11に接続され、その液側が、第1膨張機構13に接続されている。
【0046】
第1熱交換器12を放熱器として用いるとともに、後述する第2回路20の第2熱交換器23を放熱器として用いたときに、カスケード熱交換器30は、第2熱交換器23で冷却された第2冷媒を過冷却することを目的としており、第2回路20のアシストの役割を担う。
【0047】
(2-2)第2回路
第2回路20を流れる第2冷媒は、特に限定されず、第1冷媒と同じであってもよく、第1冷媒と異なっていてもよい。ここでは、第2冷媒は、非可燃性を有する、毒性を有しない、またはGWPが500以下である。第2冷媒は、例えば、自然冷媒であり、本実施形態では、二酸化炭素である。
【0048】
第2回路20は、第2冷媒によって室内空気を加熱または冷却するように構成されているメイン回路である。
【0049】
第2回路20は、第2圧縮機21と、切換機構22と、第2熱交換器23と、カスケード熱交換器30と、第2膨張機構24と、第3熱交換器25と、第2アキュムレータ26と、を含む。
【0050】
第2圧縮機21は、第2冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、圧縮機モータをインバータ制御することで運転容量を可変することが可能なスクロール型等の容積式圧縮機である。
【0051】
切換機構22は、第2熱交換器23を第2冷媒の放熱器として機能させ、かつ、第3熱交換器25を第2冷媒の蒸発器として機能させる第1状態(図1の切換機構22の実線を参照)と、第2熱交換器23を第2冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、第3熱交換器25を第2冷媒の放熱器として機能させる第2状態(図1の切換機構22の破線を参照)と、を切り換える機器である。切換機構22は、例えば、四路切換弁である。そして、切換機構22は、第1状態において、第2圧縮機21の吐出側と第2熱交換器23のガス側とを接続し、かつ、第2圧縮機21の吸入側と第3熱交換器25のガス側とを接続する。また、切換機構22は、第2状態において、第2圧縮機21の吐出側と第3熱交換器25のガス側とを接続し、かつ、第2圧縮機21の吸入側と第2熱交換器23のガス側とを接続する。
【0052】
第2熱交換器23は、第2冷媒と室外空気との熱交換を行うための機器である。第2熱交換器23において、第2冷媒は、室外空気から冷熱または温熱を取得する。第2熱交換器23は、例えば、クロスフィンチューブ式熱交換器である。
【0053】
第2回路20は、カスケード熱交換器30の第2流路32を有する。第2流路32は、第2状態において、そのガス側が、第2熱交換器23に接続され、その液側が、第3熱交換器25に接続されている。
【0054】
第2膨張機構24は、第2冷媒を減圧する機器であり、例えば、電動膨張弁である。
【0055】
第3熱交換器25は、第2冷媒と室内空気との熱交換を行うための機器であり、例えば、フィン・アンド・チューブ型熱交換器である。
【0056】
第2アキュムレータ26は、切換機構22と第2圧縮機21の吸入側とを接続する吸入流路の途中に設けられている。第2アキュムレータ26は、流入した冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを第2圧縮機21の吸入側へ流す。
【0057】
(2-3)室外ユニット
以下の説明において、「上」、「下」、「前」等の方向を示す表現を適宜用いているが、これらは、室外ユニット2が室外に取り付けられ、通常使用される状態での各方向を表す。本実施形態では、上下方向は、鉛直方向である。
【0058】
室外ユニット2は、室内ユニット3が配置された空間とは異なる空間に配置される。ここでは、室外ユニット2は、室外(建物の屋上や建物の外壁面近傍等)に設置されている。
【0059】
室外ユニット2は、上述の第1回路10と、第2回路20の一部と、ケーシング41と、電装品ユニット42と、ファン43と、仕切板44と、分離板45と、各種のセンサと、を有している。具体的には、室外ユニット2は、図1に示す第1圧縮機11と、第1熱交換器12と、第1膨張機構13と、第2圧縮機21と、切換機構22と、第2熱交換器23と、第2膨張機構24と、第2アキュムレータ26と、カスケード熱交換器30と、入口温度センサ46と、出口温度センサ47と、図2に示すケーシング41と、電装品ユニット42と、ファン43と、仕切板44と、分離板45と、を有している。
【0060】
ケーシング41は、第1圧縮機11と、第1熱交換器12と、第1膨張機構13と、第2圧縮機21と、切換機構22と、第2熱交換器23と、第2膨張機構24と、第2アキュムレータ26と、カスケード熱交換器30と、電装品ユニット42と、ファン43と、仕切板44と、分離板45と、各種のセンサと、を収容する。
【0061】
図2に示すケーシング41は、略直方体の形状を有している。具体的には、ケーシング41は、前板411と、天板412と、底板413と、側板414とを含む。
【0062】
前板411は、ケーシング41の前側の面を構成する板状部材である。前板411には、吹出口が形成されている。吹出口は、ケーシング41の外部から内部に取り込まれた室外空気を、ケーシング41の外部に吹き出すための開口である。
【0063】
天板412は、ケーシング41の上側の面を構成する板状部材である。底板413は、ケーシング41の下側の面を構成する板状部材である。天板412と底板413とは、対向する。
【0064】
側板414は、ケーシング41の側面を構成する板状部材である。側板414の下部は、底板413に固定される。
【0065】
電装品ユニット42は、基板に電装品が装着されたものである。電装品は、第1圧縮機11、第2圧縮機21、第1膨張機構13、切換機構22、第2膨張機構24等の制御対象を制御する。
【0066】
ファン43は、第1熱交換器12及び第2熱交換器23に空気を流す。本実施形態では、ファン43は、第1熱交換器12及び第2熱交換器23の両方に、室外空気を流す。ここでは、ファン43は、室外空気を第1熱交換器12及び第2熱交換器23に導いて、第1熱交換器12内の第1冷媒と熱交換させた後、及び、第2熱交換器23内の第2冷媒と熱交換させた後に、室外に排出させる、という空気流れを生じさせる。図2では、前面から見たときに、ファン43は、第1熱交換器12及び第2熱交換器23に重なっている。ファン43は、ファンモータによって駆動される。
【0067】
なお、第1熱交換器12に空気を流すファンと、第2熱交換器23に空気を流すファンとが、別々に設けられてもよい。
【0068】
仕切板44は、上下方向に延びる板状部材である。仕切板44の下部は、ケーシング41の底板413に固定される。
【0069】
仕切板44は、ケーシング41内を、第1室S1と第2室S2とに仕切る。第1室S1及び第2室S2のそれぞれは、ケーシング41の前板411、天板412、底板413及び側板414と、仕切板44とで区画される空間である。
【0070】
ここでは、第1室S1は、送風室であり、室外ユニット2の吸込口から吸い込んだ空気が吹出口に流れる導風路である。本実施形態では、第1室S1には、第1熱交換器12、第2熱交換器23、ファン43などが配置される。
【0071】
第2室S2は、機械室である。第2室S2には、第1圧縮機11、第2圧縮機21、切換機構22、第1膨張機構13、第2膨張機構24、第2アキュムレータ26、カスケード熱交換器30、電装品ユニット42などが配置される。
【0072】
分離板45は、第2室S2を、第1回路10を構成する第1機械室S21と、第2回路20を構成する第2機械室S22とに区画する。分離板45は、上下方向に延びる板状部材である。分離板45の下部は、ケーシング41の底板413に固定される。ここでは、前板411と天板412と底板413と側板414と分離板45とで区画される第1機械室S21には、第1圧縮機11、第1膨張機構13、カスケード熱交換器30などが配置される。前板411と天板412と底板413と仕切板44と分離板45とで区画される第2機械室S22には、第2圧縮機21、切換機構22、第2膨張機構24、第2アキュムレータ26、電装品ユニット42などが配置される。
【0073】
入口温度センサ46は、冷房運転時において、カスケード熱交換器30に流入する前の第2冷媒の温度を検出する。出口温度センサ47は、冷房運転時において、カスケード熱交換器30を通った後の第2冷媒の温度を検出する。
【0074】
(2-4)室内ユニット
室内ユニット3は、室内(建物内)に設置されている。室内ユニット3は、上記のように、連絡配管4、5を介して室外ユニット2に接続されており、第2回路20の一部を構成している。
【0075】
図1に示すように、室内ユニット3は、第3熱交換器25を有している。ここでは、室内ユニット3は、ビル等の室内の天井に埋め込みや吊り下げ等、または、室内の壁面に壁掛け等により設置されている。
【0076】
(2-5)連絡配管
連絡配管4、5は、冷凍サイクル装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。液側の連絡配管4の一端は、室外ユニット2の液側の端部に接続され、連絡配管4の他端は、室内ユニット3の第3熱交換器25の液側の端部に接続されている。ガス側の連絡配管5の一端は、室外ユニット2のガス側の端部に接続され、連絡配管5の他端は、室内ユニット3の第3熱交換器25のガス側の端部に接続されている。
【0077】
(2-6)制御部
(2-6-1)概要
上記の室外ユニット2及び室内ユニット3の構成機器は、制御部6によって制御されるようになっている。制御部6は、室外ユニット2に設けられた電装品ユニット42等や室内ユニット3に設けられた制御基板等(図示せず)が通信接続されることによって構成されている。
【0078】
図4に示すように制御部6は、冷凍サイクル装置1(ここでは、室外ユニット2及び室内ユニット3)の構成機器の制御を行う。換言すると、制御部6は、冷凍サイクル装置1全体の運転制御を行うようになっている。このため、本実施形態の制御部6は、第1回路10の運転と、第2回路20の運転とを制御する。ここでは、制御部6は、第2回路20を構成するユニット(図2では第2機械室S22)に設けられ、第2回路20の運転開始に基づいて、第1回路10の運転を開始する。
【0079】
制御部6はコンピュータにより実現されるものである。制御部6は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0080】
(2-6-2)停止制御
制御部6は、第1回路10の運転を停止する前に、第1熱交換器12に第1冷媒を集める、停止制御を行う。停止制御は、制御部6が第1圧縮機11を停止する指令を受けると、第1回路10の第1冷媒を第1熱交換器12に押し込むように第1圧縮機11を動かした後に、第1圧縮機11を停止する制御である。このため、制御部6は、第1圧縮機11を停止する指令を受けても、すぐに第1圧縮機11を停止するのではなく、第1冷媒を第1熱交換器12に押し込むように第1圧縮機11の運転を少し継続させた後に、第1圧縮機11を停止する。
【0081】
なお、停止制御において第1圧縮機11の運転を停止するタイミングは、例えば、第1回路10の運転を停止する指令から所定時間経過後、高圧側の圧力または圧力相当温度が所定以上、もしくは低圧側の圧力または圧力相当温度が所定以下などである。
【0082】
また、本実施形態では、制御部6は、第2回路20が暖房運転中で、かつ第1回路10が停止中に、第1膨張機構13を全閉にする。
【0083】
(2-6-3)開始制御
制御部6は、冷房運転時に、第1回路10に先立って第2回路20の運転を行う、開始制御を行う。開始制御は、制御部6が第1回路10を起動する指令を受けると、第1圧縮機11を起動する前に、第2圧縮機21を起動する。
【0084】
具体的には、制御部6は、第2回路20におけるカスケード熱交換器30の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、第1回路10の運転を開始する。ここでは、制御部6は、入口温度センサ46から、カスケード熱交換器30に流入する前の第2冷媒の温度と、出口温度センサ47から、カスケード熱交換器30を流出した後の第2冷媒の温度とを、取得する。そして、制御部6は、取得したカスケード熱交換器30における第2冷媒の入口温度と出口温度との温度差を算出して、温度差が一定以下であるか否かを判断する。温度差は、例えば5℃以下であり、好ましくは2℃以下である。制御部6は、算出した温度差が一定以下であると判断すると、第1圧縮機11を起動する。一方、制御部6は、算出した温度差が一定以下でないと判断すると、第1圧縮機11を起動しない。
【0085】
制御部6は、第1圧縮機11の起動後に、第1膨張機構13の開度を大きくする。ここでは、カスケード熱交換器30の第1流路31に溜まった第1冷媒が一気に流れて、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に入ることを防止するために、制御部6は、第1膨張機構13を、冷房運転時よりも開度の小さい微開に留める。制御部6は、第1冷媒が循環し始めた後に、負荷に応じて、第1膨張機構13の開度を制御する。
【0086】
本実施形態では、制御部6は、第2圧縮機21を起動し、次に第2膨張機構24の開度を大きくし、次に第1圧縮機11を起動し、次に第1膨張機構13の開度を大きくする。この際、第1膨張機構13の開度は、第2膨張機構24の開度よりも小さい。
【0087】
(3)動作
冷凍サイクル装置1の動作について、図1図8を参照して説明する。冷凍サイクル装置1は、室内の空気調和のために、室内空気を加熱する暖房運転及び室内空気を冷却する冷房運転を行うことが可能である。暖房運転及び冷房運転において、冷凍サイクル装置1の動作は、制御部6によって制御される。
【0088】
(3-1)暖房運転
図5に示すように、暖房運転の際、第2熱交換器23が第2冷媒の蒸発器として機能し、かつ第3熱交換器25が第2冷媒の放熱器として機能するように、切換機構22が第2状態(切換機構22が破線の状態)に切り換えられる。また、暖房運転では、第1圧縮機11を起動せずに、第1回路10の第1冷媒を循環させない。ここでは、第1膨張機構13を全閉にする。
【0089】
第2回路20では、第2圧縮機21から吐出された第2冷媒は、切換機構22を通じて室外ユニット2から流出する。
【0090】
室外ユニット2から流出した冷媒は、ガス側の連絡配管5を経由して、室内ユニット3に流入する。室内ユニット3では、第2冷媒は、第3熱交換器25に送られる。第3熱交換器25に送られた第2冷媒は、室内空気と熱交換を行って冷却されることによって放熱する。第3熱交換器25において放熱した第2冷媒は、室内ユニット3から流出する。
【0091】
室内ユニット3から流出した第2冷媒は、液側の連絡配管4を経由して、室外ユニット2に流入する。室外ユニット2では、第2冷媒は、第2膨張機構24及びカスケード熱交換器30の第2流路32を通じて、第2熱交換器23に送られる。第2熱交換器23に送られた第2冷媒は、ファン43によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。第2熱交換器23において蒸発した第2冷媒は、切換機構22及び第2アキュムレータ26を通じて、再び第2圧縮機21に吸入される。
【0092】
(3-2)冷房運転
図6に示すように、冷房運転の際、第2熱交換器23が第2冷媒の放熱器として機能し、かつ第3熱交換器25が第2冷媒の蒸発器として機能するように、切換機構22が第1状態(切換機構22が実線の状態)に切り換えられる。
【0093】
第2回路20では、第2圧縮機21から吐出された第2冷媒は、切換機構22を通じて第2熱交換器23に送られる。第2熱交換器23に送られた第2冷媒は、ファン43によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却されることによって放熱する。第2熱交換器23において放熱した第2冷媒は、カスケード熱交換器30の第2流路32に送られる。第2流路32に送られた第2冷媒は、カスケード熱交換器30において、第1流路31を流れる第1冷媒と熱交換を行ってさらに冷却される。カスケード熱交換器30でさらに冷却された第2冷媒は、第2膨張機構24によって減圧された後に、室外ユニット2から流出する。
【0094】
室外ユニット2から流出した第2冷媒は、液側の連絡配管4を経由して、室内ユニット3に流入する。室内ユニット3では、第2冷媒は、第3熱交換器25に送られる。第3熱交換器25に送られた第2冷媒は、室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。第3熱交換器25において蒸発した第2冷媒は、室内ユニット3から流出する。
【0095】
室内ユニット3から流出した第2冷媒は、ガス側の連絡配管5を経由して、室外ユニット2に流入する。室外ユニット2では、第2冷媒は、切換機構22及び第2アキュムレータ26を通じて、再び第2圧縮機21に吸入される。
【0096】
第1回路10では、第1圧縮機11から吐出された第1冷媒は、第1熱交換器12に送られる。第1熱交換器12に送られた第1冷媒は、ファン43によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却されることによって放熱する。第1熱交換器12において放熱した第1冷媒は、第1膨張機構13によって減圧された後に、カスケード熱交換器30の第1流路31に送られる。第1流路31に送られた第1冷媒は、カスケード熱交換器30において、第2流路32を流れる第2冷媒と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。カスケード熱交換器30で蒸発した第1冷媒は、第1アキュムレータ14を通じて、再び第1圧縮機11に吸入される。
【0097】
(3-3)第1回路の運転停止
リモコン等から、冷房運転を停止する指令があると、制御部6によって、第1回路10の運転及び第2回路20の運転を停止する。
【0098】
具体的には、指令を受けた制御部6によって、第2圧縮機21を停止するが、図7に示すように、第1圧縮機11の運転を継続する(ステップS101)。これにより、第1熱交換器12に第1冷媒を集めることができる。
【0099】
また、制御部6によって、第1膨張機構13の開度を小さくする(ステップS102)。ここでは、第1膨張機構13を全閉にする。
【0100】
そして、制御部6によって、第1熱交換器12に第1冷媒が集められたと判断されると、第1圧縮機11を停止する(ステップS103)。これにより、第1回路10の運転を停止できる。
【0101】
なお、第1圧縮機11の停止後に、全閉状態の第1膨張機構13の開度を微開にしてもよい。
【0102】
(3-4)第1回路の運転開始
リモコン等から、冷房運転を開始する指令があると、制御部6によって、第1回路10に先立って、第2回路20の運転を開始する。
【0103】
具体的には、指令を受けた制御部6によって、図8に示すように、第2圧縮機21を起動する(ステップS111)。次に、第2膨張機構24の開度を大きくする(ステップS112)。ステップS111及びS112によって、第2回路20を第2冷媒が循環することで、カスケード熱交換器30において、液化した第1冷媒を第2冷媒が加熱する。
【0104】
次に、制御部6によって、第2回路20におけるカスケード熱交換器30の入口温度と出口温度との差が一定以下になったか否かを判断する(ステップS113)。このステップS103では、入口温度センサ46で検出される入口温度と、出口温度センサ47で検出される出口温度との温度差で判断する。
【0105】
ステップS113において、温度差が一定以下でないと判断すると、カスケード熱交換器30の第1冷媒が液化していると判定して、第1回路10の運転を開始せずに、第2回路20の運転を継続する。
【0106】
一方、ステップS113において、温度差が一定以下であると判断すると、カスケード熱交換器30の第1冷媒がガス化していると判定して、第1回路10の運転を開始する。第1回路10の運転の開始として、ここでは、まず、制御部6によって、第1圧縮機11を起動する(ステップS114)。次に、第1膨張機構13の開度を大きくする(ステップS115)。
【0107】
(4)特徴
(4-1)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、第1回路10と、第2回路20と、制御部6と、を備える。第1回路10は、第1圧縮機11、第1熱交換器12、第1膨張機構13、及びカスケード熱交換器30を含む。第1回路10は、第1冷媒が循環する。第2回路20は、第2圧縮機21、第2熱交換器23、カスケード熱交換器30、第2膨張機構24、及び第3熱交換器25を含む。第2回路20は、第2冷媒が循環する。制御部6は、第1回路10の運転を停止する前に、第1熱交換器12に第1冷媒を集める停止制御を行う。
【0108】
本実施形態の冷凍サイクル装置1では、制御部6によって、第1回路10の運転を停止する前に、第1熱交換器12に第1冷媒を集める停止制御を行うので、カスケード熱交換器30に集められる第1冷媒を減らすことができる。このため、第1回路10の停止中に、カスケード熱交換器30内の第1冷媒が冷却されることによって、液化することを抑制できる。この状態で、第1回路10の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することを抑制することができる。したがって、第1圧縮機11が液化した第1冷媒を圧縮すること(液圧縮)を抑制できるので、第1圧縮機11の故障を減らすことができる。
【0109】
(4-2)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)の冷凍サイクル装置1であって、制御部6は、冷房運転時に、第1回路10に先立って第2回路20の運転を行う。
【0110】
ここでは、第1回路10よりも先に第2回路20を運転させることで、第2回路20の第2熱交換器23通過後の高圧の第2冷媒がカスケード熱交換器30を通過する際に、カスケード熱交換器30に集められている第1冷媒に熱を与えることができる。この熱によって、第1冷媒を加熱できるので、液化した第1冷媒を気化させることができる。したがって、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制することができる。
【0111】
特に、制御部6は、暖房運転後の最初の冷房運転時に、第1回路10に先立って第2回路20の運転を行うことが好ましい。その理由を説明する。
【0112】
暖房運転時に、第1回路10の運転を行わずに第2回路20の運転を行うと、カスケード熱交換器30の第2回路20に属する第2流路32に冷却された第2冷媒が流れるので、カスケード熱交換器30の第1回路10に属する第1流路31に第1冷媒が貯留していると、その第1冷媒は、冷却されて、液化する。この状態で、暖房運転後の最初の冷房運転時に、第1回路10の運転を開始すると、カスケード熱交換器30の第1流路31の液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入する。しかし、暖房運転後の最初の冷房運転時に、第1回路10に先立って第2回路20の運転を行うと、第2熱交換器23を通過した高圧の第2冷媒がカスケード熱交換器30の第2流路32を通過する際に、カスケード熱交換器30の第1流路31の液化した第1冷媒を気化することができる。
【0113】
(4-3)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-2)の冷凍サイクル装置1であって、第2回路20におけるカスケード熱交換器30の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、第1回路10の運転を開始する。
【0114】
ここでは、第2回路20におけるカスケード熱交換器30の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、カスケード熱交換器30において、第2冷媒の熱が第1冷媒に伝達されて、第1冷媒が気化したと判定する。この状態で、第1回路10の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制することができる。
【0115】
(4-4)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置は、上記(4-1)から(4-3)のいずれかの冷凍サイクル装置であって、第1圧縮機11の起動後に、第1膨張機構13の開度を大きくする。
【0116】
ここでは、第1圧縮機11の起動時には、第1膨張機構13の開度が微開または全閉であるので、第1回路10の第1冷媒がそのまま第1圧縮機11に流入することを抑制できる。このため、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制できる。
【0117】
(4-5)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-4)の冷凍サイクル装置1であって、制御部6は、第2圧縮機21を起動し、次に第2膨張機構24の開度を大きくし、次に第1圧縮機11を起動し、次に第1膨張機構13の開度を大きくする。
【0118】
このように、第2圧縮機21、第2膨張機構24、第1圧縮機11及び第1膨張機構13の順に制御することによって、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することを抑制した状態で、第1回路10及び第2回路20の運転を行うことができる。
【0119】
(4-6)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-5)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、制御部6は、第1回路10の運転と、第2回路20の運転とを制御する。
【0120】
このように、本開示の冷凍サイクル装置1において、第2回路20の制御部が、第1回路10の制御を行ってもよい。
【0121】
(4-7)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-6)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、第1熱交換器12は、扁平多穴管である。
【0122】
ここでは、第1熱交換器12としての扁平多穴管は、その容積を小さくできるので、第1冷媒量を減らすことができる。このため、カスケード熱交換器30に集められる第1冷媒を減らすことができる。
【0123】
(4-8)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)点から(4-7)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、第1熱交換器12及び第2熱交換器23に室外空気を送るファン43をさらに備える。
【0124】
ここでは、第1熱交換器12及び第2熱交換器23に室外空気を送るファン43が共通であるので、第1回路10が停止中であっても、第2回路20が運転していると、第1熱交換器12に室外空気が流れる。このため、第1熱交換器12に集められた第1冷媒と、室外空気とが熱交換するので、第1熱交換器12に液化した第1冷媒を集めやすくなる。これにより、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制できる。
【0125】
(4-9)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-8)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、第1回路10は、第1アキュムレータ14をさらに含む。
【0126】
ここでは、第1アキュムレータ14に液化した第1冷媒を貯留させることができるので、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制できる。
【0127】
なお、第1回路10に第1アキュムレータ14が設けられていても、第1圧縮機11に液冷媒が流入することを完全に防止することはできないので、本実施形態の停止制御を行うことによる液圧縮を抑制する効果を有する。
【0128】
(4-10)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-9)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、制御部6は、第2回路20が暖房運転中で、かつ第1回路10が停止中に、第1膨張機構13を全閉にする。
【0129】
第2回路20が暖房運転中には、カスケード熱交換器30の第2流路32には、低圧の第2冷媒が通過する。このため、第2回路20が暖房運転中で、第1回路10が停止中には、カスケード熱交換器30の第1流路31に集められる第1冷媒が冷却されて、液化しやすい。この場合、ここでは、第1膨張機構13を全閉にすることによって、カスケード熱交換器30に流入して液化する第1冷媒を減らすことができる。このため、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制できる。
【0130】
(4-11)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-10)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、制御部6は、暖房運転及び冷房運転を行う。
【0131】
ここでは、暖房運転時に第1回路10の運転を停止させることで、カスケード熱交換器30に集められた第1冷媒が液化しやすいので、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入するという課題が生じやすい。この課題が生じやすい場合であっても、停止制御を行うことで、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することを抑制できる。
【0132】
(4-12)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)から(4-11)のいずれかの冷凍サイクル装置1であって、第1冷媒は、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWPが500を超える。
【0133】
このように、可燃性を有する、毒性を有する、またはGWPが500を超える第1冷媒を用いてもよい。
【0134】
(4-13)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上記(4-12)の冷凍サイクル装置1であって、第1冷媒はR290であり、第2冷媒は二酸化炭素である。
【0135】
二酸化炭素冷媒は、GWPが低いので、地球温暖化への低減に寄与することができるが、高外気温での冷房運転時に能力を出しにくい。これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、過冷却回路として、R290が循環する第1回路10を備えているので、能力を高めることができる。
【0136】
(5)変形例
(5-1)変形例1
(5-1-1)開始制御
上記実施形態では、冷房運転時の開始制御として、制御部6は、第2回路20におけるカスケード熱交換器30の入口温度と出口温度との差が一定以下になると、第1回路10の運転を開始することを例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例では、制御部6は、第2回路20の運転開始から所定時間経過後に、第1回路10の運転を開始する。所定時間は、例えば、3分以上であり、10分以上であることが好ましい。
【0137】
ここでは、図9に示すように、制御部6は、第2圧縮機21が起動してから所定時間が経過しているか否かを判断する(ステップS116)。制御部6は、所定時間が経過したと判断すると、第1圧縮機11を起動する(ステップS114)。一方、制御部6は、所定時間が経過していないと判断すると、第1圧縮機11を起動しない。
【0138】
(5-1-2)特徴
本変形例に係る冷凍サイクル装置は、上記(4-2)の冷凍サイクル装置であって、制御部6は、第2回路20の運転開始から所定時間経過後に、第1回路10の運転を開始する。
【0139】
ここでは、第2回路20の運転から所定時間経過すると、カスケード熱交換器30において、第2冷媒の熱が第1冷媒に伝達されて、第1冷媒が気化したと判定する。この状態で、第1回路10の運転を行うので、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制することができる。
【0140】
(5-2)変形例2
上記実施形態では、第2回路20が暖房運転中で、かつ第1回路10が停止中に、第1膨張機構13を全閉にする制御を例に挙げて説明したが、これに限定されない。第2回路20が冷房運転中のため第1回路10が停止中においても、第1膨張機構13を全閉にしてもよい。
【0141】
このように、本変形例では、制御部6は、第2回路20が運転中で、かつ第1回路10が停止中に、第1膨張機構13を全閉にする。
【0142】
第2回路20が運転中で、第1回路10が停止中には、カスケード熱交換器30において第1冷媒が冷却されやすい。この場合、本変形例の冷凍サイクル装置では、第1膨張機構13を全閉にすることによって、カスケード熱交換器30に流入する第1冷媒を減らすことができる。このため、液化した第1冷媒が第1圧縮機11に流入することをより抑制できる。
【0143】
(5-3)変形例3
上記実施形態では、冷房運転の開始時及び停止時に開始制御及び停止制御を行うことを例に挙げて説明したが、開始制御及び停止制御は、冷房運転中に第1回路10の運転を停止したり開始したりする際に適用されてもよい。
【0144】
具体的には、制御部6は、冷房運転時の負荷に応じて、第1回路10の運転を行う制御を行ってもよい。具体的には、制御部6は、冷房運転において負荷が低い時には、第1回路10の運転を行わず、冷房運転において負荷が高い時には、第1回路10の運転を行う。この場合、冷房運転中に、負荷が高くなって、第1回路10の運転を行う際には、制御部6は、上述した開始制御を行う。また、冷房運転中に、負荷が低くなって、第1回路10の運転を停止する際には、制御部6は、上述した停止制御を行う。
【0145】
(5-4)変形例4
上記実施形態では、制御部6は、第2回路20の第2機械室S22に設けられ、第2回路20の運転開始に基づいて、第1回路10の運転を開始することを例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0146】
本変形例では、制御部は、第1回路10の運転を制御する第1制御部と、第2回路20の運転を制御する第2制御部とを含み、第1制御部は、第2制御部からの指示に基づいて第1回路10の運転を開始する。
【0147】
(5-5)変形例5
上記実施形態では、第1回路10は第1アキュムレータ14を有しているが、これに限定されない。本開示の第1回路は、アキュムレータ及びサブアキュムレータを有してもよい。
【0148】
本変形例の第1回路は、アキュムレータ及びサブアキュムレータの両方を有していない。このため、第1回路10に充填される第1冷媒の量をより低減することができる。したがって、R290のような強燃性(A3)冷媒を用いる場合に、冷凍サイクル装置1は非常に有用である。
【0149】
(5-6)変形例6
上記実施形態では、共通のファン43で、第1熱交換器12及び第2熱交換器23に室外空気を送ることを例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例の冷凍サイクル装置は、第1熱交換器12に室外空気を送る第1ファンと、第2熱交換器23に室外空気を送る第2ファンとを有し、第1ファンと第2ファンとは異なる。
【0150】
(5-7)変形例7
上記実施形態では、1つの室外ユニット2に対して1つの室内ユニット3が接続された冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例の冷凍サイクル装置は、1つの室外ユニットに対して、複数の室内ユニットが接続される。
【0151】
(5-8)変形例8
上記実施形態では、冷房運転及び暖房運転を行う冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、除湿運転をさらに行ってもよい。除湿運転時には、上記実施形態の冷房運転時と同様に、停止制御及び開始制御を行う。また、本開示の冷凍サイクル装置は、冷房専用の空気調和装置であってもよい。
【0152】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0153】
1 :冷凍サイクル装置
6 :制御部
10 :第1回路
11 :第1圧縮機
12 :第1熱交換器
13 :第1膨張機構
14 :第1アキュムレータ(アキュムレータ)
20 :第2回路
21 :第2圧縮機
23 :第2熱交換器
24 :第2膨張機構
25 :第3熱交換器
30 :カスケード熱交換器
43 :ファン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0154】
【文献】特許第5430604号
【要約】
【課題】液化した冷媒が圧縮機に流入することを抑制する。
【解決手段】冷凍サイクル装置(1)は、第1回路(10)と、第2回路(20)と、制御部(6)と、を備える。第1回路(10)は、第1圧縮機(11)、第1熱交換器(12)、第1膨張機構(13)、及びカスケード熱交換器(30)を含む。第1回路(10)は、第1冷媒が循環する。第2回路(20)は、第2圧縮機(21)、第2熱交換器(23)、カスケード熱交換器(30)、第2膨張機構(24)、及び第3熱交換器(25)を含む。第2回路(20)は、第2冷媒が循環する。制御部(6)は、第1回路(10)の運転を停止する前に、第1熱交換器(12)に第1冷媒を集める停止制御を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9