(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】ワーク加工装置及びワーク加工装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/03 20060101AFI20250129BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20250129BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20250129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
B24B49/03 Z
B24B49/12
B24B9/00 601H
H01L21/304 601B
(21)【出願番号】P 2024060935
(22)【出願日】2024-04-04
【審査請求日】2024-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518232168
【氏名又は名称】ダイトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大道 晃
(72)【発明者】
【氏名】西口 一喜
(72)【発明者】
【氏名】川邉 茂雄
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024051(JP,A)
【文献】特開2019-034390(JP,A)
【文献】特開2018-069341(JP,A)
【文献】特開2001-038619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/03
B24B 49/12
B24B 9/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを支持する支持部と、
前記ワークの周縁部を研削する円盤状の砥石と、
前記砥石を支持した状態で回転させる回転駆動部と、
前記支持部と前記回転駆動部とを相対的に移動させる移動装置と、
加工済の前記ワークの寸法を測定する測定部と、
前記ワークの目標加工寸法及び前記砥石の外径を記憶する記憶装置と、
前記回転駆動部及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶装置が記憶する前記ワークの前記目標加工寸法及び前記砥石の外径に基づき、前記ワークの加工時における前記支持部に対する前記回転駆動部の目標軌跡を決定する位置決定処理と、
前記移動装置によって前記支持部と前記回転駆動部とを前記目標軌跡に沿って相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させる加工処理と、
前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの寸法と前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する外径算出処理と、
前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径に更新する更新処理と、を実行するワーク加工装置。
【請求項2】
前記外径算出処理は、前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの外径と前記ワークの外径の前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する、請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項3】
前記加工処理は、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させて、前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する円弧面を前記ワークの周縁部に形成し、
前記外径算出処理は、前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの前記円弧面の曲率半径と前記円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する、請求項1に記載のワーク加工装置。
【請求項4】
前記砥石は、前記ワークの一方の面の周縁部を研削して前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する第1円弧面を形成する第1砥石と、前記ワークの他方の面の周縁部を研削して前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する第2円弧面を形成する第2砥石と、を備え、
前記外径算出処理は、
前記第1円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法と、前記測定部が測定した加工済の前記ワークの前記第1円弧面の曲率半径に基づき前記第1砥石の外径を算出し、
前記第2円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法と、前記測定部が測定した加工済の前記ワークの前記第2円弧面の曲率半径に基づき前記第2砥石の外径を算出し、
前記更新処理は、
前記記憶装置が記憶する前記第1砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記第1砥石の外径に更新し、
前記記憶装置が記憶する前記第2砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記第2砥石の外径に更新する、
請求項3に記載のワーク加工装置。
【請求項5】
前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径が、前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径よりも大きい場合に、前記更新処理は前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径に更新する、請求項1~4のいずれか1項に記載のワーク加工装置。
【請求項6】
板状のワークを支持する支持部と、
前記ワークの周縁部を研削する円盤状の砥石と、
前記砥石を支持した状態で回転させる回転駆動部と、
前記支持部と前記回転駆動部とを相対的に移動させる移動装置と、
前記ワークの目標加工寸法及び前記砥石の外径を記憶する記憶装置と、
前記回転駆動部及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶装置が記憶する前記ワークの前記目標加工寸法及び前記砥石の外径に基づき、前記ワークの加工時における前記支持部に対する前記回転駆動部の目標軌跡を決定する位置決定処理と、
前記移動装置によって前記支持部と前記回転駆動部とを前記目標軌跡に沿って相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させる加工処理と、
を実行するワーク加工装置を製造する方法において、
仮加工用の目標加工寸法である仮加工寸法及び前記砥石の外径の初期設定値に基づいて仮加工用の目標軌跡を決定し、決定した前記仮加工用の目標軌跡に沿って前記支持部と前記回転駆動部とを前記移動装置によって相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、円弧状に湾曲する円弧面を前記ワークの周縁部に形成する仮加工工程と、
前記仮加工工程で形成された前記円弧面の曲率半径を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定した前記円弧面の曲率半径の測定値と、前記円弧面の曲率半径の前記仮加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出
し、前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を算出した前記砥石の外径に更新する外径算出工程と、
前記外径算出工程において算出した前記砥石の外径に基づいて前記支持部及び前記回転駆動部の少なくとも一方の位置を調整する調整工程と、
を備えるワーク加工装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工装置及びワーク加工装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子用ウェーハ等のような板状のワークは、周縁部が砥石で研削され所定の形状に面取り加工されることがある。このような面取り加工において、ワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工するために、試し加工したワークの外径やワーク周縁部の形状を測定し、その測定結果に基づいてワークに対する砥石の相対位置を補正してからワークを目標とする外径かつ目標とする周縁部形状に研削する技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワーク加工装置が記憶する砥石の外径が実際の外径と相違しているにもかかわらず、試し加工したワークの測定結果に基づいて砥石のワークに対する相対位置を補正すると、ワークの周縁部を円弧形状に加工する場合等において、砥石とワークとの接触位置を正確に制御することが困難となる。
【0005】
出願人は、ワークを砥石で連続的に研削すると、砥石の摩滅により外径が小さくなるだけでなく、砥石が研削液を含んで外径が大きくなることを見出した。すなわち、砥石がワークを研磨した時間の積算値が大きい場合だけでなくその積算値が小さい場合であっても、砥石の正確な外径を取得し、取得した砥石の外径に基づいてワークに対する砥石の相対的な移動軌跡を決定することが重要であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0007】
[1] 板状のワークを支持する支持部と、前記ワークの周縁部を研削する円盤状の砥石と、前記砥石を支持した状態で回転させる回転駆動部と、前記支持部と前記回転駆動部とを相対的に移動させる移動装置と、加工済の前記ワークの寸法を測定する測定部と、前記ワークの目標加工寸法及び前記砥石の外径を記憶する記憶装置と、前記回転駆動部及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶装置が記憶する前記ワークの前記目標加工寸法及び前記砥石の外径に基づき、前記ワークの加工時における前記支持部に対する前記回転駆動部の目標軌跡を決定する位置決定処理と、前記移動装置によって前記支持部と前記回転駆動部とを前記目標軌跡に沿って相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させる加工処理と、前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの寸法と前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する外径算出処理と、前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径に更新する更新処理と、を実行するワーク加工装置。
【0008】
[2] 前記外径算出処理は、前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの外径と前記ワークの外径の前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する、上記[1]に記載のワーク加工装置。
【0009】
[3]前記加工処理は、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させて、前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する円弧面を前記ワークの周縁部に形成し、前記外径算出処理は、前記測定部が測定した加工済みの前記ワークの前記円弧面の曲率半径と前記円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出する、上記[1]に記載のワーク加工装置。
【0010】
[4] 前記砥石は、前記ワークの一方の面の周縁部を研削して前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する第1円弧面を形成する第1砥石と、前記ワークの他方の面の周縁部を研削して前記ワークの周縁に近づくほど厚みが薄くなる円弧状に湾曲する第2円弧面を形成する第2砥石と、を備え、前記外径算出処理は、前記第1円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法と、前記測定部が測定した加工済の前記ワークの前記第1円弧面の曲率半径に基づき前記第1砥石の外径を算出し、前記第2円弧面の曲率半径の前記目標加工寸法と、前記測定部が測定した加工済の前記ワークの前記第2円弧面の曲率半径に基づき前記第2砥石の外径を算出し、前記更新処理は、前記記憶装置が記憶する前記第1砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記第1砥石の外径に更新し、前記記憶装置が記憶する前記第2砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記第2砥石の外径に更新する、上記[3]に記載のワーク加工装置。
【0011】
[5] 前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径が、前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径よりも大きい場合に、前記更新処理は前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を前記外径算出処理が算出した前記砥石の外径に更新する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のワーク加工装置。
【0012】
[6]板状のワークを支持する支持部と、前記ワークの周縁部を研削する円盤状の砥石と、前記砥石を支持した状態で回転させる回転駆動部と、前記支持部と前記回転駆動部とを相対的に移動させる移動装置と、前記ワークの目標加工寸法及び前記砥石の外径を記憶する記憶装置と前記回転駆動部及び前記移動装置を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶装置が記憶する前記ワークの前記目標加工寸法及び前記砥石の外径に基づき、前記ワークの加工時における前記支持部に対する前記回転駆動部の目標軌跡を決定する位置決定処理と、前記移動装置によって前記支持部と前記回転駆動部とを前記目標軌跡に沿って相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、前記砥石の外周部によって前記ワークの周縁部を加工させる加工処理と、
を実行するワーク加工装置を製造する方法において、仮加工用の目標加工寸法である仮加工寸法及び前記砥石の外径の初期設定値に基づいて仮加工用の目標軌跡を決定し、決定した前記仮加工用の目標軌跡に沿って前記支持部と前記回転駆動部とを前記移動装置によって相対的に移動させながら前記回転駆動部に前記砥石を回転させ、円弧状に湾曲する円弧面を前記ワークの周縁部に形成する仮加工工程と、前記仮加工工程で形成された前記円弧面の曲率半径を測定する測定工程と、前記測定工程において測定した前記円弧面の曲率半径の測定値と、前記円弧面の曲率半径の前記仮加工寸法とに基づき前記砥石の外径を算出し、前記記憶装置が記憶する前記砥石の外径を算出した前記砥石の外径に更新する外径算出工程と、前記外径算出工程において算出した前記砥石の外径に基づいて前記支持部及び前記回転駆動部の少なくとも一方の位置を調整する調整工程と、を備えるワーク加工装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるワーク加工装置の概略構成を示す平面図
【
図2】ワーク加工装置における支持部、回転駆動部、及び移動装置の概略構成を示す側面図
【
図5】面取り加工時の支持部に支持されたワーク及び砥石を示す側面図
【
図6】ワークが砥石に接触した状態を示す支持部と回転駆動部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(1)ワーク加工装置1の構成
本実施形態のワーク加工装置1の構成について
図1~
図3に基づいて説明する。ワーク加工装置1は、半導体素子用ウェーハ等のような板状のワークWの周縁部を砥石3a,3bによって所定の形状に面取り加工する装置である。
【0017】
本実施形態では、ワーク加工装置1が、砥石3a,3bによってワークWの周縁部を研削することで、
図4に例示するような、ワークWの上平面W1に対して角度θ1だけ傾斜した上斜面Wa1と、ワークWの周縁部の端面を構成し上平面W1及び下平面W2に対して垂直な周端面Wbと、上斜面Wa1と周端面Wbとの間を滑らかに接続する上円弧面Wc1と、下平面W2に対して角度θ2だけ傾斜した下斜面Wa2と、下斜面Wa2と周端面Wbとの間を滑らかに接続する円弧面Wc2とをワークWの周縁部に形成する。
【0018】
ワーク加工装置1は、ワークWを支持する支持部2と、ワークWの周縁部を研削する砥石3a,3bと、砥石3a,3bを支持した状態で砥石3a,3bを回転させる回転駆動部4と、支持部2と回転駆動部4とを相対的に移動させる移動装置5と、ワークWの寸法を測定する測定部6と、ワーク加工装置1の動作を制御する制御装置7とを備え、搬入装置15によって支持部2に搬入された未加工のワークWに対して面取り加工を施し、加工後のワークWを搬出装置16によって支持部2から搬出する。
【0019】
具体的には、支持部2は、未加工のワークWが載置されるステージ21と、ステージ21上に載置されたワークWを真空吸着する吸引装置22(
図3参照)と、ステージ21とともにワークWを回転させる回転装置23とを備える。支持部2は、周縁部が研削される前の未加工のワークWが搬入装置15によってステージ21に搬送される。
【0020】
図1に示すように、搬入装置15には、未加工のワークWを吸着保持する保持部15aと、アライメントセンサ15bが設けられている。アライメントセンサ15bは、保持部15aが保持する未加工のワークWの外径と、ワークWの中心位置と、オリエンテーションフラットやノッチの位置を検出する。
【0021】
搬入装置15は、アライメントセンサ15bの検出結果に基づいて、未加工のワークWのオリエンテーションフラットやノッチがワークWの周方向の所定位置に来るようにワークWを回転させるとともに、ワークWの中心がステージ21の回転中心と一致するように芯出ししてステージ21の上面にワークWを載置する。
【0022】
なお、本実施形態ではアライメントセンサ15bを搬入装置15に設けたが、支持部2と別に設けたアライメントテーブルにアライメントセンサを設ける等、搬入装置15と別にアライメントセンサを設けてもよい。
【0023】
上記のようなアライメントテーブルを設ける場合、未加工のワークWを支持部2に搬入する前にアライメントテーブルに搬入し、アライメントテーブル上においてワークWを吸着保持した状態でアライメントテーブルとともにワークWを旋回させる。そして、アライメントセンサが、旋回するワークWに対してアライメントテーブルの回転中心からワークWのエッジまでの距離を測定する事で、ワークWの偏芯量と偏芯する方向、および、オリエンテーションフラットやノッチの方位等の情報を取得する。これらの情報を元にワークWの中心がステージ21の回転中心と一致するように搬入装置15がアライメントテーブルから支持部2へワークWを移載する。
【0024】
ステージ21はワークWよりも小径に形成されており、ワークWが芯出ししてステージ21に載置されると、ワークWの周縁部がステージ21よりも外側に突出する。ステージ21に載置されたワークWは、吸引装置22によって真空吸着されてステージ21上に固定される。
【0025】
回転装置23は、ワークWの面取り加工の際にステージ21とともにステージ21上に真空吸着されたワークWを上下方向へ延びる軸周りに回転させる。これにより、ステージ21上に載置されたワークWの周縁部が全周に亘って砥石3a,3bによって面取り加工できるようになっている。
【0026】
なお、本実施形態のワーク加工装置1において、搬入装置15に厚みセンサ15cを設け、保持部15aが保持する未加工のワークWの厚みを検出したり、あるいは、支持部2に厚みセンサを設けて支持部2が保持する未加工のワークWの厚みを検出したりしても良い。また、上記したようなアライメントテーブルを設ける場合、アライメントテーブルに設けた厚みセンサによって、アライメントテーブルに保持されたワークWの厚みを検出してもよい。
【0027】
砥石3a,3bは円盤状のレジンボンド砥石やビトリファイドボンド砥石等からなる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、一対の砥石3a,3bが互いの盤面を近接させ互いに対向するように配置されている。一対の砥石3a,3bは一対のスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42aにそれぞれ接続されている。本実施形態において一対の砥石3a,3bは、ステージ21が移動する方向に対してワークWの周方向に所定角度φ1、φ2(例えば0°~0.6°)ずらしつつ、互いの盤面を近接させ対向するように配置されている(
図6参照)。
【0028】
一方の砥石(第1砥石)3aは、ワークWの周縁部の厚み中心Cよりも上側、つまり、上斜面Wa1、上円弧面Wc1、及びワークWの周端面Wbの厚み中心Cよりも上側部分を研削して面取り加工を行う。他方の砥石(第2砥石)3bは、ワークWの周縁部の厚み中心Cよりも下側、つまり、下斜面Wa2、円弧面Wc2、及びワークWの周端面Wbの厚み中心Cよりも下側部分を研削して面取り加工を行う。
【0029】
なお、
図2の符号31は砥石3a,3bに研削液を供給する供給ノズルである。少なくとも砥石3a,3bがワークWの周縁部を研削している間、供給ノズル31から研削液が砥石3a,3bに供給される。
【0030】
一対のスピンドルモータ41a,41bは、回転駆動部4を構成し、回転軸42a,42bが水平方向に向けて配置されている。一対のスピンドルモータ41a,41bは、一対の砥石3a,3bを、水平方向に延びる回転軸42a,42bの周りに互いに逆向きに回転させる。回転軸42a,42bの周りを回転する一対の砥石3a,3bは、ステージ21とともに回転するワークWの周縁部に押し付けられ、ステージ21上に載置されたワークWの周縁部を全周にわたって面取り加工を行う。
【0031】
移動装置5は、支持部2のステージ21を回転駆動部4に対して近接離隔移動させるステージ移動装置51と、回転駆動部4を上下動させる砥石移動装置52とを備える。
【0032】
ステージ移動装置51は、レールまたはボールねじ等で構成され、ステージ21とともにステージ21上に載置されたワークWを所定方向Xに移動させて、回転駆動部4に設けられた砥石3a,3bに接近させたり、離隔させたりする。
【0033】
砥石移動装置52は、回転駆動部4全体を上下方向Zに移動させる。具体的には、一対のスピンドルモータ41a,41bを同期させ上下方向Zに移動させる第1砥石移動装置53と、回転駆動部4を構成する一対のスピンドルモータ41a,41bを別々に上下方向Zに移動させる一対の第2砥石移動装置54a、54bとを備える。なお、第1砥石移動装置53を設けず、一対の第2砥石移動装置54a、54bから砥石移動装置52を構成してもよい。
【0034】
このような移動装置5は、支持部2とスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42b(つまり、砥石3a,3bの回転軸)とを後述する第1目標軌跡及び第2目標軌跡に沿って相対的に移動させる。移動装置5は、
図5に示すように、ワークWの周縁部を上下から挟むように高さを異ならせて一対の砥石3a,3bを配置して、第1砥石3aが上平面W1側の周縁部の面取り加工を行い、第2砥石3bが下平面W2側の周縁部の面取り加工を行う。
【0035】
測定部6は、砥石3a,3bによってワークWの周縁部が研削された加工済みのワークWの各種寸法を測定する。具体的には、測定部6は、加工済みのワークWの外径を測定する外径測定部61と、ワークWの周縁部の任意の位置における断面形状を測定する断面測定部62とを備える。
【0036】
外径測定部61は、例えば、ワークWの上下いずれか一方に配置された発光部と他方に配置された受光部とを備える投影画像測定器から構成されている。外径測定部61は、発光部から照射されたレーザー光がワークWによって遮られるか否かを受光部によって検出することで、ワークWの周縁部の任意の位置におけるワークWの外径、つまり、ワークWの中心を通る周端面Wb上の2点を結ぶ直線の長さを測定する。外径測定部61は、上記した投影画像測定器以外にも、ワークWを挟み込むように接触してワークWの有無を検出することでワークWの外径を検出するリニアケージなどでもよく、種々のセンサによってワークの外径を取得してもよい。
【0037】
断面測定部62は、ワークWの上平面W1や下平面W2に対して平行な平行光をワークWの周縁部に照射する照明部62aと、照明部62aから照射された光をワークWよりも光の進行方向前方で撮像する撮像部62bとを備えるエッジ・ノッチ形状測定器から構成されている。断面測定部62は、照明部62aからワークWの周縁部に照射された平行光のうち、ワークWに遮られずワークWを通過した光を撮像部62bが撮像することで、ワークWの周縁部の任意の位置における断面形状を測定する。断面測定部62は、上記したエッジ・ノッチ形状測定器以外にも、種々のセンサによってワークWの周縁部の任意の位置における断面形状を測定してもよい。
【0038】
測定部6は、外径測定部61及び断面測定部62による測定結果を制御装置7へ出力する。測定部6と制御装置7とは、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0039】
本実施形態では、面取り加工された加工済みワークWをステージ21から搬出する搬出装置16に上記のような測定部6、洗浄装置10、及び乾燥装置11が設けられている。
【0040】
洗浄装置10は、ワークWの面取り加工後に搬出装置16が支持部2の上方に位置する状態でワークW及びステージ21に洗浄液を掛けてワークW及びステージ21を洗浄する。乾燥装置11は、洗浄液でエアーを吹き付けて洗浄後のワークW及びステージ21を乾燥させる。搬出装置16は、洗浄装置10及び乾燥装置11によるワークW及びステージ21の洗浄及び乾燥を行った後、加工後のワークWを支持部2から搬出する。
【0041】
なお、測定部6、洗浄装置10、及び乾燥装置11は、搬出装置16とは別に設けられてもよい。
【0042】
図3に示すように、制御装置7は、コンピュータなどの処理装置71と、メモリーなどの記憶装置72とを有している。制御装置7は、記憶装置72に記憶されている制御プログラムを処理装置71が読み込んで実行することにより、支持部2、回転駆動部4、移動装置5、測定部6、搬入装置15及び搬出装置16の動作を制御するとともに、位置決定処理部73、外径算出処理部74、及び更新処理部75として機能する。
【0043】
なお、測定部6は制御装置7と独立したコンピュータとして構成されてもよい。測定部6が制御装置7と別のコンピュータから構成されている場合、通信によって測定部6の測定結果が制御装置7に送信されても良く、あるいはユーザが手入力で測定部6の測定結果を制御装置7に入力してもよい。
【0044】
記憶装置72には、制御プログラムとともに、面取り加工によってワークWの周縁部に形成する目標形状の各種寸法である目標加工寸法と、砥石3a,3bの外径寸法DTa、DTbと、ステージ21の回転中心からスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42bまでのX方向の軸間距離L(
図2参照)が記憶されている。
【0045】
図4及び
図5を参照して目標加工寸法として記憶装置72に記憶される寸法の一例を挙げると、ワークWの外径DW、ワークWの上平面W1の周縁部に面取り加工を施す幅(径方向の長さ)A1、ワークWの下平面W2の周縁部に面取り加工を施す幅(径方向の長さ)A2、上平面W1に対する上斜面Wa1の鋭角側の傾斜角度θ1と、下平面W2に対する下斜面Wa2の鋭角側の傾斜角度θ2と、上円弧面Wc1の曲率半径R1、円弧面Wc2の曲率半径R2、周端面Wbの上下方向Zの長さB、ワークWの厚さTなどである。
【0046】
位置決定処理部73は、記憶装置72に記憶された目標加工寸法、及び砥石3a,3bの外径寸法DTa、DTb、及び軸間距離Lに基づいて、ワークWの加工時における支持部2に対する回転駆動部4の目標軌跡を決定する。
【0047】
具体的には、位置決定処理部73は、記憶装置72に記憶された目標加工寸法に基づいてワークWの周縁部の目標形状を決定し、目標形状の厚み中心Cの上側から第1砥石3aの外径の半分の距離だけ離れた位置に第1砥石3aの目標軌跡(以下、この目標軌跡を第1目標軌跡ということもある)を設定し、目標形状の厚み中心Cの下側から第2砥石3bの外径の半分の距離だけ離れた位置に第2砥石3bの目標軌跡(以下、この目標軌跡を第2目標軌跡ということもある)を設定する。
【0048】
外径算出処理部74は、測定部6が測定した加工済みのワークWの上円弧面Wc1の曲率半径R1の測定値R1mと、記憶装置72に記憶されている上円弧面Wc1の曲率半径R1の目標加工寸法R1sと、記憶装置72に記憶されている第1砥石3aの外径寸法DTaに基づいて第1砥石3aの外径の測定値DTamを取得する。
【0049】
また、外径算出処理部74は、測定部6が測定した加工済みのワークWの下円弧面Wc2の曲率半径R2の測定値R2mと、記憶装置72に記憶されている下円弧面Wc2の曲率半径R2の目標加工寸法R2sと、記憶装置72に記憶されている第2砥石3bの外径寸法DTbに基づいて第2砥石3bの外径の測定値DTbmを取得する。
【0050】
更新処理部75は、外径算出処理部74が砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを取得すると、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径寸法DTa、DTbを外径算出処理部74が算出した測定値DTam、DTbmに更新して、砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを砥石3a、3bの新たな外径寸法DTa,DTbとして記憶装置72に記憶させる。
【0051】
砥石3a,3bの外径寸法DTa,DTbを、外径算出処理部74が算出した砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新すると、位置決定処理部73は、更新後の砥石3a,3bの外径寸法DTam、DTbmと、記憶装置72が記憶するワークWの目標加工寸法とに基づいて、第1目標軌跡を修正した第1修正目標軌跡と、第2目標軌跡を修正した第2修正目標軌跡とを決定する。
【0052】
そして、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている第1目標軌跡及び第2目標軌跡を、位置決定処理部73が決定した第1修正目標軌跡及び第2修正目標軌跡に更新して、第1修正目標軌跡及び第2修正目標軌跡を新たな第1目標軌跡及び第2目標軌跡として記憶装置72に記憶させる。
【0053】
(2)ワーク加工装置1の動作
次に、ワーク加工装置1を用いたワークWの面取り加工方法について、主に
図7のフロー図を参照して説明する。なお、ワーク加工装置1の下記の動作は制御装置7によって制御される。
【0054】
まず、ステップS1において、搬入装置15は、保持部15aが未加工のワークWを保持し、アライメントセンサ15bによって未加工のワークWの外径と、ワークWの中心位置と、オリエンテーションフラットやノッチの位置を検出する。そして、搬入装置15は、アライメントセンサ15bの検出結果に基づいて、未加工のワークWのオリエンテーションフラットやノッチが所望の位置にくるようにワークWを回転させるとともに、ワークWを芯出ししてステージ21の上面に載置する。
【0055】
次いで、ステップS2において、ワーク加工装置1は、支持部2のステージ21に載置された未加工のワークWの周縁部を砥石3a,3bによって面取り加工を行う。
【0056】
具体的には、回転駆動部4を構成するスピンドルモータ41a,41bによって砥石3a,3bを回転させる。また、ステージ21の上面に載置された未加工のワークWを吸引装置22が真空吸着した後、回転装置23がステージ21とともにワークWを回転させる。
【0057】
そして、移動装置5を構成するステージ移動装置51及び砥石移動装置52によって、支持部2とスピンドルモータ41aの回転軸42aとを第1目標軌跡に沿って相対的に移動させて、回転する第1砥石3aの外周部でワークWの上平面側の周縁部を研削して面取り加工を行う。また、支持部2とスピンドルモータ41bの回転軸42bとを第2目標軌跡に沿って相対的に移動させて、回転する第2砥石3bの外周部でワークWの下平面側の周縁部を研削して面取り加工を行う。
【0058】
面取り加工が終了すると、搬出装置16が面取り加工後のワークWを保持し、洗浄装置10及び乾燥装置11によってワークW及びステージ21の洗浄及び乾燥を行った後、ステップS3において、測定部6の外径測定部61及び断面測定部62が、面取り加工後のワークWに対して、ワークWの外径DW、上円弧面Wc1の曲率半径R1、下円弧面Wc2の曲率半径R2、面取り加工を施した幅A1、A2、傾斜角度θ1,θ2、周端面Wbの上下方向の長さBを測定する。
【0059】
なお、加工済みのワークWの寸法測定は、ワークWの周方向に間隔をあけて複数箇所において測定することが好ましい。
【0060】
次いで、ステップS4において、外径算出処理部74は、測定部6が測定した加工済みのワークWの寸法と目標加工寸法とに基づき、次式(1)及び(2)によって砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmを算出する。
【0061】
DTam=DTa+2×(R1s-R1m) 式(1)
DTbm=DTb+2×(R2s-R2m) 式(2)
上記式(1)及び(2)において、DTaは記憶装置72に記憶されている第1砥石3aの外径、DTbは記憶装置72に記憶されている第2砥石3bの外径、R1mは加工済みのワークWに設けられた上円弧面Wc1の曲率半径R1の測定値、R2mは加工済みのワークWに設けられた下円弧面Wc2の曲率半径R2の測定値、R1sは記憶装置72に記憶されているワークWの上円弧面Wc1の曲率半径R1の目標加工寸法、R2sは記憶装置72に記憶されているワークWの下円弧面Wc2の曲率半径R2の目標加工寸法である。
【0062】
なお、ステップS3において、上円弧面Wc1の曲率半径R1及び下円弧面Wc2の曲率半径R2をワークWの複数箇所でそれぞれ測定した場合、複数の測定結果の平均値を上円弧面Wc1の曲率半径R1の測定値R1mや、下円弧面Wc2の曲率半径R2の測定値R2mとしてもよい。
【0063】
次いで、ステップS5において、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている第1砥石3aの外径DTaを、外径算出処理部74が算出した第1砥石3aの外径の測定値DTamに更新し、記憶装置72に記憶されている第2砥石3bの外径DTbを、外径算出処理部74が算出した第2砥石3bの外径の測定値DTbmに更新し、測定値DTam、DTbmを砥石3a,3bの新たな外径として記憶装置72に記憶させる。
【0064】
つまり、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きい場合、砥石3a,3bが研削液を含んで膨張しているため、ステップS5において、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新する。
【0065】
また、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも小さい場合、砥石3a,3bが摩滅によって小さくなっているため、ステップS5において、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新し、測定値DTam、DTbmを砥石3a、3bの新しい外径DTa、DTbとして記憶装置72に記憶する。
【0066】
次いで、ステップS6において、位置決定処理部73は、測定値DTam、DTbmに更新した砥石3a,3bの外径DTa,DTbと、記憶装置72が記憶するワークWの外径の目標加工寸法と、に基づいて、第1目標軌跡を修正した第1修正目標軌跡と、第2目標軌跡を修正した第2修正目標軌跡とを決定する。
【0067】
次いで、ステップS7において、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている第1目標軌跡及び第2目標軌跡を、位置決定処理部73が決定した第1修正目標軌跡及び第2修正目標軌跡に更新して、第1修正目標軌跡及び第2修正目標軌跡を新たな第1目標軌跡及び第2目標軌跡として記憶装置72に記憶させ、その後、今回の処理を終了する。
【0068】
これにより、次にワークWの面取り加工を行う際に、新たな第1目標軌跡及び第2目標軌跡として記憶装置72に記憶された第1修正目標軌跡及び第2修正目標軌跡に沿って支持部2と回転駆動部4とを相対的に移動させてワークWの研削が行われる。
【0069】
なお、上記したステップS1~ステップS7の一連の処理は、ワークWの面取り加工を行った後に毎回実行しても良く、あるいはまた、所定数量のワークWの面取り加工を行う毎に実行しても良い。
【0070】
(3)ワーク加工装置1の製造方法
次に、上記したワーク加工装置1の製造方法について説明する。
【0071】
ワーク加工装置1を製造するには、まず、
図1のように支持部2、砥石3a,3b、回転駆動部4、移動装置5、測定部6、搬入装置15及び搬出装置16を設け、支持部2、回転駆動部4、移動装置5、測定部6、搬入装置15及び搬出装置16を制御可能に制御装置7と接続して、ワーク加工装置1を組み立てた後、仮加工工程、測定工程、外径算出工程、及び調整工程を順次行ってワーク加工装置1を完成させる。
【0072】
仮加工工程では、芯出しして支持部2のステージ21の上面に載置した未加工のワークWの周縁部を砥石3a,3bによって面取り加工を行い、円弧状に湾曲する円弧面をワークWの周縁部に形成する。
【0073】
具体的には、位置決定処理部73が仮加工用の目標加工寸法(仮加工寸法)と、砥石3a、3bの外径の初期設定値DTa0、DTb0と、ステージ21の回転中心からスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42bまでのX方向の軸間距離Lの初期値L0に基づいて仮加工用の目標軌跡を決定する。
【0074】
そして、決定した仮加工用の目標軌跡に沿って支持部2と回転駆動部4とを移動装置5によって相対的に移動させながら回転駆動部4に砥石3a,3bを回転させて、第1砥石3aによって円弧状に湾曲する上円弧面Wc1をワークWの上平面W1の周縁部に形成し、第2砥石3bによって円弧状に湾曲する下円弧面Wc2をワークWの下平面W2の周縁部に形成する。
【0075】
なお、仮加工工程においてワークWの周縁部に形成する形状は、円弧状に湾曲する円弧面を有する形状であれば任意の形状を採用することができ、ワーク加工装置1の完成後に同装置1によってワークWの周縁部に形成する形状と同一形状であってもよい。本実施形態では、
図4に例示するような上斜面Wa1、上円弧面Wc1、下斜面Wa2、下円弧面Wc2及び周端面Wbを備える形状である。
【0076】
測定工程では、仮加工工程で形成されたワークWの外径DWと、上円弧面Wc1の曲率半径R1と、下円弧面Wc2の曲率半径R2とを測定する。なお、曲率半径R1,R2は、ワーク加工装置1に設けられた測定部6で測定しても良く、また、ワーク加工装置1と別に設けられた測定部によって測定しても良い。
【0077】
外径算出工程では、測定工程において測定した円弧面Wc1、Wc2の曲率半径R1、R2の測定値と、円弧面Wc1,Wc2の曲率半径R1,R2の仮加工寸法とに基づき、次式(3)及び(4)によって砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmを算出する。
【0078】
DTam=DTa0+2×(R1p-R1m) 式(3)
DTbm=DTb0+2×(R2p-R2m) 式(4)
上記式(3)及び(4)において、DTa0は第1砥石3aの外径の初期設定値、DTb0は第2砥石3bの外径の初期設定値、R1mは測定工程において得られた上円弧面Wc1の曲率半径R1の測定値、R2mは測定工程において得られた下円弧面Wc2の曲率半径R2の測定値、R1pは上円弧面Wc1の曲率半径の仮加工寸法、R2pは下円弧面Wc2の曲率半径の仮加工寸法である。
【0079】
外径算出工程は、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmを算出すると、記憶装置72に記憶されている第1砥石3aの外径の初期値DTa0を測定値DTaに更新し、第2砥石3bの外径の初期値DTb0を測定値DTbに更新し、測定値DTa,DTbを記憶装置72に記憶させる。
【0080】
調整工程では、外径算出工程において更新した砥石3a、3bの外径の測定値DTa、DTbに基づいて支持部2及び回転駆動部4の少なくとも一方の位置を調整する。
【0081】
例えば、調整工程では、下記式(5)に基づいてステージ21の回転中心からスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42bまでのX方向の軸間距離Lの補正値ΔLを算出する。
【0082】
上記式(5)において、L0はステージ21の回転中心からスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42bまでのX方向の軸間距離の初期値、DWmは測定工程において測定された仮加工済みのワークWの外径、DTamは外径算出工程で算出した第1砥石3aの外径、φ1はステージ移動装置51がステージ21を移動させるX方向に対する第1砥石3aがワークWに接触する位置のワークWの周方向の角度である。
【0083】
軸間距離Lの初期値L0の補正値ΔLを算出すると、この補正値ΔLに基づいて軸間距離Lの初期値L0を調整する。そして、調整後の軸間距離Lを記憶装置72に記憶して、ワーク加工装置1の製造が完了する。
【0084】
なお、上記のように調整工程を行った後、調整後の軸間距離Lに基づいて仮加工工程、測定工程、外径算出工程、及び調整工程を行い、調整後の軸間距離Lが所定条件を満たすまで、仮加工工程から調整工程を繰り返し実行してもよい。
【0085】
(4)効果
本実施形態では、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新し、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに基づいて、第1目標軌跡及び第2目標軌跡を修正するため、ワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工することができる。
【0086】
本実施形態では、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きい場合、更新処理部75が、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新するため、砥石3a,3bが膨張してもワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工することができる。
【0087】
本実施形態では、加工済ワークWに設けられた円弧面Wc1,Wc2の曲率半径の測定値R1m,R2mに基づいて砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを得るため、正確に砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを得ることができる。
【0088】
つまり、砥石3a,3bによって形成された円弧面Wc1,Wc2の曲率半径は、砥石3a,3bの外径変化の影響を受けて変化するが、支持部2及び回転駆動部4の相対位置の誤差(つまり、支持部2のステージ21の回転中心から砥石3a,3bの回転軸までの軸間距離の誤差)の影響を受けない。そのため、砥石3a,3bによって形成された円弧面Wc1,Wc2の曲率半径の測定値に基づいて砥石3a,3bの外径を得ることで、砥石3a,3bの外径を精度良く得ることができ、その結果、ワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工することができる。
【0089】
本実施形態では、ワークWの上平面W1の周縁部を研削する第1砥石3aの外径と、下平面W2の周縁部を研削する第2砥石3bの外径とを、それぞれ別個に取得し、取得した外径に基づいて第1砥石3a及び第2砥石3bの各目標軌跡を修正するため、上平面W1及び下平面W2を精度良く目標とする形状に加工することができる。
【0090】
また、本実施形態では、ワーク加工装置1を製造するにあたって、ワーク加工装置1を組み立てた後、上記したような仮加工工程、測定工程、外径算出工程、及び調整工程を順次行うことで、記憶装置72に記憶される軸間距離Lを、ステージ21の回転中心からスピンドルモータ41a,41bの回転軸42a,42bまでの真値に近づけることができる。軸間距離Lのような装置設定値は砥石3a,3bの外径に比べて経時的な変化が極めて小さいため、予め軸間距離Lを真値に近づけておくことで、以降の加工により生じる誤差が砥石径変化に起因するものであることが保証される。そのため、本実施形態の製造方法で製造されたワーク加工装置1は、砥石3a,3bの外径に基づいて支持部2及び回転駆動部4の位置を精度良く調整することができる。
【0091】
(5)変更例
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下に変更例を説明する。なお、上記の実施形態に対して、以下に説明する複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、以下に説明する変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。なお、以下の変更例の他にも様々な変更が可能である。
【0092】
(5-1)変更例1
上記した実施形態では、加工済ワークWに設けられた円弧面Wc1,Wc2の曲率半径の測定値R1m,R2mに基づいて砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを得たが、加工済みワークWの外径に基づいて砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを得てもよい。
【0093】
例えば、外径算出処理部74は、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa,DTb、測定部6が測定した加工済みのワークWの外径の実測値DWmと、記憶装置72に記憶されているワークWの外径の目標加工寸法DWsとから、砥石3a、3bの外径の実測値DTam、DTbmを例えば次式(6)及び(7)によって算出する。
【0094】
DTam=DTa+(DWs-DWm) 式(1)
DTbm=DTb+(DWs-DWm) 式(2)
このような変更例1では、測定しやすい加工済みワークWの外径に基づいて砥石3a,3bの外径の測定値DTam、DTbmを得ることができるため、簡便な構成でワーク加工装置1を製造することができる。
【0095】
(5-2)変更例2
加工済みのワークWの寸法をワークWの周方向に間隔をあけて複数箇所測定した場合において、複数の測定結果の偏差が所定値以下であると加工済みワークWの寸法を用いて砥石3a,3bの外径を算出し、複数の測定結果の偏差が所定値より大きいと砥石3a,3bの外径を算出せず、異常を報知してもよい。
【0096】
本変更例では、複数の測定結果の偏差が所定値より大きい場合、ワークWの中心とステージ21の回転中心がズレている場合など、砥石3a,3bの外径変化以外の異常を検知することができる。
【0097】
(5-3)変更例3
ワークWの面取り加工を開始してから所定数量のワークWを加工するまでの間、あるいは、ワークWの面取り加工を開始してから所定時間(例えば、24時間)が経過するまでの間、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きいと、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新してもよい。
【0098】
また、ワークWの面取り加工を開始してから所定数量のワークWを加工するまでの間、あるいは、ワークWの面取り加工を開始してから所定時間(例えば、24時間)が経過するまでの間、測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも小さいと、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを更新しなくてもよい。
【0099】
ワークWの面取り加工を開始してからしばらくの間、砥石3a,3bは摩滅の影響に比べて研削液を含んで膨張しやすい。本変更例では、ワークWの面取り加工を開始してからしばらくの間、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きければ砥石3a、3bの外径を更新してもよい。また、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも小さければ、支持部2及び回転駆動部4の相対的位置など砥石3a,3bの外径変化以外に原因があるとして砥石3a、3bの外径DTa、DTbを更新しなくてもよい。
【0100】
(5-4)変更例4
ワークWの面取り加工を開始してから所定数量のワークWを加工した後、あるいは、ワークWの面取り加工を開始してから所定時間が経過した後において、外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも小さいと、更新処理部75は、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを外径算出処理部74が算出した砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmに更新する。
【0101】
また、ワークWの面取り加工を開始してから所定数量のワークWを加工した後、あるいは、ワークWの面取り加工を開始してから所定時間が経過した後において、測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きいと、記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbを更新しなくてもよい。
【0102】
ワークWを面取り加工する時間が長くなると、砥石3a,3bの膨張に比べて摩滅による影響が大きくなる。本変更例では、所定数量のワークWを面取り加工したり、面取り加工を開始してから所定時間が経過すると、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが記憶装置72に記憶されている砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも小さければ砥石3a、3bの外径を更新する。また、砥石3a、3bの外径の測定値DTam、DTbmが砥石3a、3bの外径DTa、DTbよりも大きければ、支持部2及び回転駆動部4の相対的位置など砥石3a,3bの外径変化以外に原因があるとして砥石3a、3bの外径DTa、DTbを更新しなくてもよい。
【0103】
(5-5)変更例5
上記した実施形態では測定部6を備えるワーク加工装置1の製造方法について説明したが、測定部6を備えないワーク加工装置に対して上記した製造方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…ワーク加工装置、2…支持部、3…砥石、4…回転駆動部、5…移動装置、6…測定部、7…制御装置、15…搬入装置、15a…保持部、15b…アライメントセンサ、16…搬出装置、21…ステージ、22…吸引装置、23…回転装置、41a…スピンドルモータ、41b…スピンドルモータ、42a…回転軸、42b…回転軸、51…ステージ移動装置、52…砥石移動装置、53…第1砥石移動装置、54a…第2砥石移動装置、54b…第2砥石移動装置、61…直径測定部、62…断面測定部、71…処理装置、72…記憶装置、73…位置決定処理部、74…外径算出処理部、75…更新処理部
【要約】 (修正有)
【課題】ワークの周縁部を精度良く目標とする形状に加工することができるワーク加工装置及びワーク加工装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、記憶装置が記憶するワークWの目標加工寸法及び砥石3a,3bの外径に基づき、ワークWの加工時における支持部2に対する回転駆動部4の目標軌跡を決定し、移動装置5によって支持部2と回転駆動部4とを目標軌跡に沿って相対的に移動させながら回転駆動部4に砥石3a、3bを回転させ、砥石3a、3bの外周部によってワークWの周縁部を加工させ測定部6が測定した加工済みのワークWの寸法と目標加工寸法とに基づき砥石3a、3bの外径の測定値を算出し、記憶装置が記憶する砥石3a、3bの外径を算出した砥石3a、3bの外径の測定値に更新する。
【選択図】
図1