(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20250129BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2021167239
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 龍
(72)【発明者】
【氏名】伴 和徳
(72)【発明者】
【氏名】原口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓真
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-171358(JP,A)
【文献】特開2020-19301(JP,A)
【文献】特開2006-244295(JP,A)
【文献】特開2021-68013(JP,A)
【文献】特開2009-19920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
B60R 21/00 - 21/017
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置は
車両の
歩行者に対する位置情報
を保有
しており、
シミュレーションの
歩行者の注目対象となる複数の
車両のうち
歩行者が視認する1つの
車両を特定する特定部と、
前記特定部によって特定される
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動
であって歩行者が道路を横断するという行動、歩行者が道路を横断しないという行動、歩行者が道路を横断するか否か未決定の際の行動のいずれかの行動を推定する第1個別推定部と、
前記特定部によって特定される
車両とは異なる他の
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動を推定する第2個別推定部と、
前記第1個別推定部によって推定される
歩行者の行動と、前記第2個別推定部によって推定される
歩行者の行動とに基づいて、複数の
車両全てに応じて
歩行者が取る行動を推定する統合推定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第2個別推定部は、他の
車両に対して
歩行者が最後に注目した時刻を基準とし、
歩行者が他の
車両について注目を忘れることを表す忘却関数に応じて
歩行者が最後に注目した時刻での判断としての確率を減少させ、かつ、
歩行者が取る行動が未決定である判断の確率を増加させることにより、他の
車両に応じて
歩行者が取る行動を推定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1個別推定部及び前記第2個別推定部それぞれは、
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態と、
車両の移動状態に応じて
歩行者が取る行動とを学習することに生成される学習済モデルと、前記特定部によって特定される
車両の移動状態とに基づいて、
歩行者が取る行動を推定し、前記第2個別推定部が前記特定部によって特定される
車両とは異なる他の
車両に対して推定を実施する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定部は
、車両が道路を走行する際に、
歩行者が道路を横断するか否かの行動を推定する際の注目対象としての車両を特定する
請求項1~3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1個別推定部及び前記第2個別推定部それぞれは、
車両の移動状態としての車両の位置及び走行速度と、
歩行者が取る行動として車両の移動状態に応じて
歩行者が道路を横断するか、道路を横断しないか及び横断するか否か未決定の判断とを学習することにより生成される学習済モデルを利用する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記統合推定部は、前記第1個別推定部及び前記第2個別推定部によって推定される
歩行者の行動を示す値に、
歩行者の行動に応じて予め設定される統合処理用の係数を乗算し、乗算した結果を統合することにより複数の
車両全てに応じて
歩行者が取る行動を推定する
請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
車両の
歩行者に対する位置情報
を保有するコンピュータが、
シミュレーションの
歩行者の注目対象となる複数の
車両のうち
歩行者が視認する1つの
車両を特定する特定ステップと、
前記特定ステップによって特定される
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動
であって歩行者が道路を横断するという行動、歩行者が道路を横断しないという行動、歩行者が道路を横断するか否か未決定の際の行動のいずれかの行動を推定する第1個別推定ステップと、
前記特定ステップによって特定される
車両とは異なる他の
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動を推定する第2個別推定ステップと、
前記第1個別推定ステップによって推定される
歩行者の行動と、前記第2個別推定ステップによって推定される
歩行者の行動とに基づいて、複数の
車両全てに応じて
歩行者が取る行動を推定する統合推定ステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項8】
車両の
歩行者に対する位置情報
を保有するコンピュータに、
シミュレーションの
歩行者の注目対象となる複数の
車両のうち
歩行者が視認する1つの
車両を特定する特定機能と、
前記特定機能によって特定される
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動
であって歩行者が道路を横断するという行動、歩行者が道路を横断しないという行動、歩行者が道路を横断するか否か未決定の際の行動のいずれかの行動を推定する第1個別推定機能と、
前記特定機能によって特定される
車両とは異なる他の
車両の少なくとも
歩行者に対する位置と、位置の変化量に基づく速度に関する情報を含む移動状態に応じて
歩行者が取る行動を推定する第2個別推定機能と、
前記第1個別推定機能によって推定される
歩行者の行動と、前記第2個別推定機能によって推定される
歩行者の行動とに基づいて、複数の
車両全てに応じて
歩行者が取る行動を推定する統合推定機能と、
を実現させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路の状況に応じた交通のシミュレーションを行う装置が存在する。シミュレーション装置は、例えば、車両の動作をコンピュータ上で再現して、交通の流れ及び渋滞の様子についてのシミュレーションを行う。
特許文献1には、車両モデルを仮想的に道路を走行させ、その車両モデルが注意するべき注意対象が認識された場合に、予め定められた複数の動作のルールのなかから選択可能な動作を導出し、その動作に基づいて車両モデルを動作させるシミュレーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路には車両ばかりでなく歩行者も存在する。近年は、道路を移動する歩行者の行動についてもシミュレーションを行い、道路の状況を予測することが望まれている。ここで、道路を複数の車両が移動する場合、その複数の車両の移動状況それぞれに応じて歩行者が取る行動についてシミュレーションを行うことになるが、歩行者の車両に対する視認の有無を考慮することで、歩行者が視認していない車両が歩行者に対して与える影響を考慮し、現実の人間に近いシミュレーションを行うことが望ましい。
【0005】
本開示は、道路における交通参加者の行動の推定に利用される情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の情報処理装置は、シミュレーションの対象者の注目対象となる複数の移動体のうち対象者が視認する1つの移動体を特定する特定部と、特定部によって特定される移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第1個別推定部と、特定部によって特定される移動体とは異なる他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第2個別推定部と、第1個別推定部によって推定される対象者の行動と、第2個別推定部によって推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する統合推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、シミュレーションの対象者の移動体に対する視認の有無を考慮することで、対象者が視認していない移動体が対象者に対して与える影響を考慮し、現実の人間に近いシミュレーションをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る情報処理装置について説明するための図である。
【
図2】一実施形態に係る情報処理装置について説明するためのブロック図である。
【
図3】忘却関数の一例について説明するための図である。
【
図4】シミュレーション状況の一例について説明するための図である。
【
図5】判断モデルの一例について説明するための図である。
【
図6】統合推定部(制御部)において利用される係数の一例について説明するための図である。
【
図7】一実施形態に係る情報処理方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について説明する。
【0010】
[情報処理装置100の概要]
まず、一実施形態に係る情報処理装置100の概要について説明する。
図1は、一実施形態に係る情報処理装置100について説明するための図である。
【0011】
情報処理装置100は、例えば、道路を歩行する歩行者の判断を推定する判断推定装置等として構成されてもよい。また、情報処理装置100は、例えば、その歩行者の判断推定モデルを提供する判断推定モデル提供装置等として構成されてもよい。
【0012】
一般的に、道路を通行する歩行者は、車両及び二輪車等の移動体の状況に応じて通行に関する判断を行う場合がある。例えば、歩行者が道路を横断する場合には、移動体の位置及び走行速度等に応じて道路を横断するか否かの判断を行うことが多い。この場合、移動体が複数走行する場合には、歩行者は、一度に2台以上同時に視認することが難しいことがある。
図1に例示するように、歩行者301に対して右方向及び左方向のそれぞれから移動体302が近付いてくる場合には、歩行者301が同時に2台を視認することが難しく、一方の移動体302と他方の移動体302を交互に視認して安全を確認した後、道路を横断すると考えられる。
【0013】
情報処理装置100は、例えば、シミュレーションの対象者となる歩行者301が視認する、複数の移動体302のうちの1台を特定する。情報処理装置100は、特定した移動体302に応じて歩行者301が取る行動(一例として、道路を横断するか否かの行動等)を推定する(第1個別推定)。また、情報処理装置100は、上述したように特定した移動体302とは異なる他の移動体302に応じて歩行者301が取る行動(一例として、道路を横断するか否かの行動等)を推定する(第2個別推定)。情報処理装置100は、第1個別推定と第2個別推定とを統合して、複数の移動体302全てに応じて対象者が取る行動(一例として、道路を横断するか否かの行動等)を推定する(統合推定)。情報処理装置100は、統合推定として、複数種類の、歩行者301と1台の移動体302との関係に応じたモデルを用意することで、それらを組み合わせることで複合的な状況にも対応できる。
なお、この場合、情報処理装置100は、上述した行動を推定することとして、その行動を行うか否かの歩行者301(対象者)の判断を推定してもよい。
情報処理装置100は、例えば、サーバ、デスクトップ、ラップトップ及びタブレット等のコンピュータであってもよい。
【0014】
[情報処理装置100の詳細]
次に、一実施形態に係る情報処理装置100の詳細について説明する。
図2は、一実施形態に係る情報処理装置100について説明するためのブロック図である。
【0015】
情報処理装置100は、通信部121、記憶部122、表示部123及び制御部110を備える。通信部121、記憶部122及び表示部123は、「出力部」の一実施形態であってもよい。制御部110は、例えば、特定部111、第1個別推定部112、第2個別推定部113、統合推定部114及び出力制御部115等を備える。制御部110は、例えば、情報処理装置100の演算処理装置等によって構成されてもよい。制御部110(例えば、演算処理装置等)は、例えば、記憶部122等に記憶される各種プログラム等を適宜読み出して実行することにより、各部(例えば、特定部111、第1個別推定部112、第2個別推定部113、統合推定部114及び出力制御部115等)の機能を実現してもよい。ここで、第1個別推定部112及び第2個別推定部113は、異なる機能として実現されてもよく、1つの機能、すなわち第1個別推定部112及び第2個別推定部113をまとめた「個別推定部」として実現されてもよい。
【0016】
通信部121は、例えば、情報処理装置100の外部にある装置(外部装置)等との間で種々の情報の送受信が可能である。外部装置は、例えば、サーバ200(
図1参照)及びユーザ端末(図示せず)等であってもよい。ユーザ端末は、情報処理装置100のユーザが使用する端末であってもよい。
【0017】
記憶部122は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶してもよい。記憶部122の一例は、メモリ、ソリッドステートドライブ及びハードディスクドライブ等であってもよい。
【0018】
表示部123は、例えば、種々の文字、記号及び画像等を表示することが可能である。
【0019】
特定部111は、シミュレーションの対象者の注目対象となる複数の移動体のうち対象者が視認する1つの移動体を特定する。特定部111は、移動体として、車両が道路を走行する際に、対象者が道路を横断するか否かの行動を推定する際の注目対象としての車両を特定してもよい。特定部111は、シミュレーションを行う状況、すなわち、対象者(例えば、歩行者等)、並びに、その対象者の周囲を走行する移動体(例えば、車両及び二輪車等)の台数及び走行状況(例えば、対象者に対する位置、走行速度及び加速度等)において、1台の移動体を特定する。この場合、特定部111は、複数の移動体(注目対象の移動体)がある場合には、複数の移動体のうち1台を特定する。特定部111によって特定される1台の移動体は、対象者が視認している移動体として特定する。
【0020】
第1個別推定部112は、特定部111によって特定される移動体に応じて対象者が取る行動を推定する。すなわち、第1個別推定部112は、特定部111によって特定される移動体の走行状況(移動状況)に応じて、対象者(歩行者)が道路を横断するか否かの行動(判断)を推定する。対象者は、移動体を視認している状況において、その移動体の位置(例えば、対象者に対する位置等)、移動体の走行速度及び移動体の加速度等に応じて、道路を横断するか否かを判断し、その判断結果に応じた行動を取ると考えられる。
【0021】
この場合、第1個別推定部112は、学習済モデルと、特定部111によって特定される移動体の走行状況(移動状態)とに基づいて、対象者が取る行動(対象者の判断)を推定してもよい。上述した学習済モデルは、例えば、移動体の走行状況(移動状態)と、その移動体の移動状態に応じて対象者が取る行動(対象者の判断)とを学習することにより生成される。学習済モデルは、例えば、情報処理装置100の制御部110(例えば、学習部等(図示せず))によって生成されてもよく、情報処理装置100の外部にある学習装置(例えば、サーバ200)等によって生成されてもよい。
【0022】
第1個別推定部112は、例えば、学習済モデルが情報処理装置100の外部で生成される場合には、通信部121を介して学習済モデルを取得してもよく、外部メモリ等(図示せず)を利用して学習済モデルを取得してもよい。制御部110(例えば、学習部等)及び学習装置は、例えば、車両シミュレーションで車両の移動状況(走行状況)を再現し、その車両の移動状況(走行状況)に応じて人が道路を横断するか否か及び横断するか否かを未決定の判断を取得することに基づいて学習を行い、学習済モデルを生成してもよい。
【0023】
すなわち、第1個別推定部112は、1台の移動体の移動状態(走行状況)としての車両の位置及び走行速度と、対象者が取る行動として車両の移動状態(走行状態)に応じて対象者が道路を横断するか、道路を横断しないか及び横断するか否か未決定の行動(判断)とを学習することにより生成される学習済モデルを利用してもよい。また、第1個別推定部112は、1人の対象者(歩行者)と1台の移動体との関係において生成される学習済モデルを複数利用してもよい。したがって、第1個別推定部112は、例えば、対象者の行動(判断)として、その対象者が道路を横断する、その対象者が道路を横断しない、及び、その対象者が道路を横断するか否か未決定のそれぞれの確率を算出してもよい。
【0024】
第2個別推定部113は、特定部111によって特定される移動体とは異なる他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定する。第2個別推定部113は、他の移動体が複数ある場合には、複数の他の移動体それぞれに応じて対象者が取る行動を推定してもよい。他の移動体は、例えば、現在、対象者(歩行者)が視認していない移動体である。第2個別推定部113は、特定部111によって特定されなかった他の移動体の走行状況(移動状況)に応じて、対象者(歩行者)が道路を横断するか否かの行動(判断)を推定する。第2個別推定部113は、上述した第1個別推定部112と同様に、学習済モデルを利用して、他の移動体に応じて対象者(歩行者)が取る行動(判断)を推定してもよい。
【0025】
すなわち、第2個別推定部113は、学習済モデルと、特定部111によって特定されなかった他の移動体の移動状態(走行状態)とに基づいて、対象者が取る行動(対象者の判断)を推定してもよい。学習済モデルは、第1個別推定部112によって利用される学習済モデルと同様であってもよく、移動体(他の移動体)の移動状態(走行状態)と、移動体(他の移動体)の移動状態(走行状態)に応じて対象者が取る行動(判断)とを学習することに生成される。学習済モデルは、例えば、制御部110(例えば、学習部等(図示せず))及び学習装置等(例えば、サーバ200等)によって生成されてもよい。
【0026】
換言すると、第2個別推定部113は、移動体(他の移動体)の移動状態(走行状態)としての車両の位置及び走行速度と、対象者が取る行動として車両の移動状態に応じて対象者が道路を横断するか、道路を横断しないか及び横断するか否か未決定の行動とを学習することにより生成される学習済モデルを利用してもよい。また、第2個別推定部113は、1人の対象者(歩行者)と1台の移動体との関係において生成される学習済モデルを複数利用してもよい。したがって、第2個別推定部113は、例えば、対象者の行動(判断)として、その対象者が道路を横断する、その対象者が道路を横断しない、及び、その対象者が道路を横断するか否か未決定のそれぞれの確率を算出してもよい。
【0027】
上述したような場合において、第2個別推定部113は、他の移動体に対して対象者が最後に注目した時刻を基準とし、対象者が他の移動体について注目を忘れることを表す忘却関数に応じて対象者が取る行動としての確率を減少させ、かつ、対象者が取る行動が未決定の確率を増加させることにより、他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定してもよい。忘却関数は、例えば、対象者が取る行動(対象者の判断)において、対象者が移動体を最後に視認した時からの経過時間に応じて対象者が取る行動(対象者の判断)の重み付けを軽減させ(確率を軽減させる)、かつ、対象者が取る行動が未決定であることへの重み付けを増加させ(確率を増加させ)るような関数である。換言すると、忘却関数は、例えば、対象者が最後の移動体を視認したときの判断を引き継ぎ、時間の経過に応じて道路を横断する確率及び道路を横断しない確率を減少させ、道路を横断するか否か未決定の確率を増加させる関数である。第2個別推定部113は、例えば、対象者が車両を最後に視認した時の判断を継続し、且つ、最後に視認した時の判断の確率を忘却関数に基づいて減少させ、かつ、対象者が取る行動が未決定の確率を増加させることにより、対象者が取る行動を推定する。
【0028】
図3は、忘却関数の一例について説明するための図である。
【0029】
図3に一例を示すように、忘却関数は、対象者が移動体を最後に見た時から一定時間(一例として、1秒等)は重み付け(確率)(すなわち、判断の確率)を維持し、その後、重み付け(確率)(すなわち、判断の確率)を減少させるような関数であってもよい。上述した一定時間は、1秒に限らず、0.5秒、1.5秒、2秒、3秒、4秒、5秒、8秒及び10秒等の種々の任意の時間であってもよい。重み付け(確率)の減少の割合は、例えば、0.1秒毎に5%減少させてもよく、0.1秒毎に1%、2%、3%、8%又は10%等の一定の割合で減少させてもよい。減少させる割合は、上述した一例に限らず、種々の割合を設定することが可能である。重み付け(確率)の減少の割合は、例えば、単調減少に限らず、複数の段階的に徐々に減少させてもよく、指数関数的に減少させてもよく、時間に関して反比例して減少させてもよい。
また、図示を省略するものの、
図3に示す減少の例に加えて忘却関数には前述の未決定の確率の増加の場合も含まれる。
なお、第2個別推定部113は、例えば、上述した例示に限らず、実施形態によっては忘却関数を設定してなくともよい。すなわち、第2個別推定部113は、対象者(歩行者)が移動体を視認していない間、対象者が移動体を最後に見た時の重み付け(確率)を維持してもよい。
【0030】
統合推定部114は、第1個別推定部112によって推定される対象者の行動(判断)と、第2個別推定部113によって推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する。一例として、統合推定部114は、第1個別推定部112によって推定される対象者の行動(判断)の確率と、第2個別推定部113によって推定される対象者の行動(判断)の確率とを積算し、最も高い確率となる対象者の行動(判断)を、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動(判断)として推定してもよい。
【0031】
この場合、統合推定部114は、第1個別推定部112及び第2個別推定部113によって推定される対象者の行動を示す値(確率)に、対象者の行動に応じて予め設定される統合処理用の係数を乗算し、乗算した結果を統合することにより複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定してもよい。
一例として、係数は、例えば、第1個別推定部112によって推定される最も高い確率が「道路を横断する」であり、第2個別推定部113によって推定される最も高い確率が「道路を横断する」である場合には、統合した結果(積算した結果)が「道路を横断する」の値が最も高くなるような値であってもよい。
同様に、係数は、例えば、第1個別推定部112によって推定される最も高い確率が「道路を横断しない」(又は、「未決定」)であり、第2個別推定部113によって推定される最も高い確率が「道路を横断しない」(又は、「未決定」)である場合には、統合した結果(積算した結果)が「道路を横断しない」(又は、「未決定」)の値が最も高くなるような値であってもよい。
また、係数は、例えば、車両シミュレーションにおいて再現さえる車両の走行状況に応じて歩行者が道路を横断するか否な判断結果(観測情報)を利用して、統合推定部114によって推定される全体の推定結果が観測(観測情報に基づく観測)した意図と類似するような結果になるような値であってもよい。この係数(値)は、予め実験等が行われること等に基づいて設定されてもよい。
【0032】
ここで、具体的な一例について説明する。
図4は、シミュレーション状況の一例について説明するための図である。
図5は、判断モデルの一例について説明するための図である。
図6は、統合推定部114(制御部110)において利用される係数の一例について説明するための図である。
【0033】
ここでは、
図4に一例を示すように、無信号の十字路の交差点において、
図4の右側から直進車Sが走行し、
図4の下側から右折車Rが走行する状況で、対象者(歩行者)が交差点を横断する場合について説明する。
【0034】
情報処理装置100(制御部110)は、歩行者は一度に全ての車両を観測できないと仮定し、歩行者の視線を交互に切り替えて車両を視認し、その結果に応じて道路を横断するか否か又は未決定かを判断するモデル(視線切り替え型モデル)を生成する。視線切り替え型モデルは、一例として、ダイナミック・ベイジアン・ネットワーク等により実現することができる。ダイナミック・ベイジアン・ネットワークは、例えば、ベイジアン・ネットワーク等の確率の時間発展を記述するために使用されるモデルであってもよい。
【0035】
情報処理装置100(制御部110)は、歩行者の判断対象として歩行者の左側から来る直進車Sと、歩行者の前方から来る右折車Rとに応じて、歩行者の横断判断を行うモデルを構築する。この場合、情報処理装置100(制御部110)は、歩行者が注目する車両を特定することで、全体判断(2台の車両S,Rに対する判断)を個別の判断に分解する。情報処理装置100(制御部110)は、例えば、個別判断として、例えば、道路を横断するG(Go)、道路を横断しないW(Wait)、及び、道路を横断するか否かを未決定U(Undecided)となる確率を推定する。情報処理装置100(制御部110)は、例えば、ロジスティック回帰モデルを利用した個別の判断のモデルを用いてもよく、他のモデルを利用した個別の判断のモデルを用いてもよい。
【0036】
ここで、
図4に一例を示す2台の車両をS,Rとし、注目車両のラベルを下式(1)とし、注目対象の車両を下式(2)で定義し、車両iとの相対状態量をX
t
iとし、車両iへの歩行者の個別の意図を下式(3)とし、全体への歩行者の意図を下式(4)とすると、
図5に一例を示すような判断モデルとなり、推定される歩行者の全体の各意図(G/W/U)の確率は、下式(5)より算出される。ここで、Gは歩行者が道路を横断する確率、Wは歩行者が道路を横断しない確率、Uは歩行者が道路を横断するか否か未決定の確率を示す。
図5に一例を示す判断モデルは、歩行者が車両を見ている間は個別判断モデルにより個別判断を推定し、歩行者が車両を見ていない間は歩行者が車両を最後に見た際の判断を継続する(この場合には忘却関数を考慮する)ことにより個別判断を推定し、その後2つの個別判断を統合することにより全体の判断を推定する。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
式(5)の右辺第1項は個別判断の統合を示す式、右辺第2項は直進車Sに対する個別判断を示す式、右辺第3項は右折車Rに対する個別判断を示す式である。
ここで、時刻tにおける全体の判断の確率は、式(5)に基づき下式(6)より算出される。
【0043】
【0044】
ここで、式(6)の右辺第2項はt-1における歩行者が横断するか否か等の確率を示し、右辺第1項は歩行者が車両iを視認しているかを基準にして、下のようなモデル(例えば、式(7)-(9)等を参照)を切り替える確率の更新式である。
【0045】
式(6)の右辺第1項において、歩行者が車両を視認している時の第1個別判断は、ロジスティック回帰モデルにより構築してもよい。この場合、第1個別判断は、歩行者と直進車Sとの1対1の観測実験、及び、歩行者と右折車Rとの1対1の観測実験それぞれに基づいて推定される。
式(6)の右辺第1項は、歩行者が車両iを視認している時は、下式(7)となる。
【0046】
【0047】
式(7)は、歩行者が道路を横断する確率Gと、歩行者が道路を横断しない確率Wとは式(8)のようになり、歩行者が道路を横断するか否か未決定の確率U(その他の確率)は式(9)のようになる。ここで、iは上式(1)で表され、φtは説明変数、ηsは回帰係数である。
【0048】
【0049】
【0050】
一方、式(6)の右辺第1項は、
図3に一例を示すような忘却関数を利用し、車両iを視認してない時間の経過につれ、最後の視認したときの確率(上式(7)-(9)を利用して算出される確率)を忘却関数に応じて減少させる。むろん、忘却関数には未決定の確率の増加の場合も含まれる。
【0051】
情報処理装置100(制御部110)は、個別判断を統合して、直進車S及び右折車Rに応じて歩行者が取る行動(歩行者の判断)を推定する際、
図6に一例を示す係数を乗算する。係数は、例えば、個別判断(第1個別判断及び第2個別判断)それぞれで最も確率が高くなる状態に応じて、各状態の確率に対する重み係数であってもよい。情報処理装置100(制御部110)は、各個別判断で得られた、道路を横断するG、道路を横断しないW及び道路を横断するか否か未決定Uそれぞれの確率と、
図6に一例を示すような統合用の重み係数とを乗算し、乗算の結果として最も高くなる確率を、直進車S及び右折車Rに応じた歩行者の取る行動(歩行者の全体判断)としてもよい。
なお、係数(重み係数)は、
図6に例示する値に限定されず、適宜設定される種々の値であってもよい。
【0052】
出力制御部115は、統合推定部114によって推定された結果(対象者が取る行動)をシミュレーション装置に提供してもよい。
また、出力制御部115は、統合推定部114によって推定された結果(対象者が取る行動)を出力するよう出力部を制御してもよい。出力部は、例えば、上述したように通信部121、記憶部122及び表示部123等であってもよい。
すなわち、出力制御部115は、例えば、統合推定部114によって推定された結果(対象者が取る行動に関する情報)を外部(外部装置)に送信するよう通信部121を制御してもよい。外部装置は、例えば、サーバ200及びユーザ端末等であってもよい。ユーザ端末は、例えば、情報処理装置100のユーザが使用する端末等であってもよい。
出力制御部115は、例えば、統合推定部114によって推定された結果(対象者が取る行動に関する情報)を記憶するよう記憶部122を制御してもよい。
出力制御部115は、例えば、統合推定部114によって推定された結果(対象者が取る行動)を表示するよう表示部123を制御してもよい。
【0053】
[情報処理方法]
一実施形態に係る情報処理方法について説明する。
図7は、一実施形態に係る情報処理方法について説明するためのフローチャートである。
【0054】
ステップST101において、特定部111は、対象情報を取得する。対象情報は、例えば、シミュレーションの状況に関する情報であってもよい。すなわち一例として、対象情報は、道路の状況、その道路における歩行者の位置、及び、その道路を走行する移動体(車両)の移動状況(走行状況)等についての情報であってもよい。特定部111は、例えば、シミュレーションを行うシミュレーション装置から対象情報を取得してもよく、情報処理装置100にユーザによる対象情報の入力操作に基づいて取得してもよい。
【0055】
ステップST102において、特定部111は、ステップST101の対象情報に基づいて、シミュレーションの対象者が視認する複数の移動体のうちの1つの移動体を特定する。特定部111は、移動体として、車両が道路を走行する際に、対象者が道路を横断するか否かの行動を推定する際の注目対象としての車両を特定してもよい。この場合さらに、特定部111は、特定した移動体(車両)の対象者に対する位置を特定してもよい。
【0056】
ステップST103において、第1個別推定部112は、ステップST102で特定される移動体(車両)に応じて対象者が取る行動を推定する。この場合、第1個別推定部112は、ステップST102で特定される移動体(車両)についての個別判断モデルを利用してもよい。すなわち、第1個別推定部112は、ステップST102で特定される移動体(車両)に応じた学習済モデルを取得し、その学習済モデルと、ステップ102で特定される移動体(車両)の移動状態(走行状態)とに基づいて、対象者が取る行動を推定してもよい。
図4に例示する場合において、直進車Sに応じた学習済モデルと、右折車Rに応じた学習済モデルを予め用意しておき、例えば、対象者(歩行者)が直進車Sを視認している場合には、第1個別推定部112は、直進車Sに応じた学習済モデルと、直進車Sの走行状況とに基づいて、直進車Sに応じて対象者(歩行者)が道路を横断するか否か及び未決定かを推定してもよい。
【0057】
ステップST104において、第2個別推定部113は、ステップST103で特定されなかった他の移動体(他の車両)に応じて対象者が取る行動を推定する。この場合、第2個別推定部113は、上述した第1個別推定部112と同様に、ステップST102で特定されなかった他の移動体(他の車両)についての個別判断モデルを利用してもよい。すなわち、第2個別推定部113は、ステップST102で特定されなかった他の移動体(他の車両)に応じた学習済モデルを取得し、その学習済モデルと、ステップST102で特定されなかった他の移動体(他の車両)の移動状態(走行状態)とに基づいて、対象者が取る行動を推定してもよい。
図4を利用したステップST103での例示において、例えば、対象者(歩行者)が右折車Rを視認していない場合には、第2個別推定部113は、右折車Rに応じた学習済モデルと、右折車Rの走行状況とに基づいて、対象者(歩行者)が道路を横断するか否か及び未決定かを推定してもよい。
【0058】
この場合、第2個別推定部113は、他の移動体(他の車両)について忘却関数に応じて対象者が取る行動としての確率を減少させ、かつ、対象者が取る行動が未決定の確率を増加させることにより、他の移動体(他の車両)に応じて対象者が取る行動を推定してもよい。
すなわち、
図4を利用した上述した例示において、例えば、対象者(歩行者)が右折車Rを最後に視認した時の確率から忘却関数に応じた値を減少させ、かつ、対象者が取る行動が未決定の確率を増加させることにより、右折車Rに応じて対象者(歩行者)が道路を横断するか否か及び未決定かを推定してもよい。
【0059】
なお、第1個別推定部112及び第2個別推定部113は、対象者(歩行者)が複数の移動体を交互に視認する状況に応じて、対象となる移動体、すなわちステップST102で特定される移動体を交互に入れ替えて(一例として、所定時間毎に交互に入れ替えて)、各移動体に応じて取る対象者(歩行者)の行動を推定してもよい。
【0060】
ステップST105において、統合推定部114は、ステップST103で推定される対象者の行動(判断)と、ステップST104で推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する。この場合、統合推定部114は、ステップST103で算出される確率と、ステップST104で算出される確率と、ステップST103の第1個別判断とステップST104の第2個別判断を統合する際の重み係数とを乗算し(積算し)、最も高くなる確率の状態を対象者が取る行動(全体行動)として推定してもよい。
【0061】
上述した情報処理装置100の各部は、コンピュータの演算処理装置等の機能として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置100の特定部111、第1個別推定部112、第2個別推定部113(個別推定部)、統合推定部114及び出力制御部115(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等による特定機能、第1個別推定機能、第2個別推定機能(個別推定機能)、統合推定機能及び出力制御機能(制御機能)としてそれぞれ実現されてもよい。
情報処理プログラムは、上述した各機能をコンピュータに実現させることができる。情報処理プログラムは、例えば、メモリ、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等の、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録されていてもよい。
また、上述したように、情報処理装置100の各部は、コンピュータの演算処理装置等で実現されてもよい。その演算処理装置等は、例えば、集積回路等によって構成される。このため、情報処理装置100の各部は、演算処理装置等を構成する回路として実現されてもよい。すなわち、情報処理装置100の特定部111、第1個別推定部112、第2個別推定部113(個別推定部)、統合推定部114及び出力制御部115(制御部110)は、コンピュータの演算処理装置等を構成する特定回路、第1個別推定回路、第2個別推定回路(個別推定回路)、統合推定回路及び出力制御回路(制御回路)として実現されてもよい。
また、情報処理装置100の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、演算処理装置等の機能を含む通信機能、記憶機能及び表示機能(出力機能)として実現されもよい。また、情報処理装置100の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、集積回路等によって構成されることにより通信回路、記憶回路及び表示回路(出力回路)として実現されてもよい。また、情報処理装置100の通信部121、記憶部122及び表示部123(出力部)は、例えば、複数のデバイスによって構成されることにより通信装置、記憶装置及び表示装置(出力装置)として構成されてもよい。
【0062】
情報処理装置100は、上述した複数の各部のうち1又は任意の複数を組み合わせることが可能である。
本開示では、「情報」の文言を使用しているが、「情報」の文言は「データ」と言い換えることができ、「データ」の文言は「情報」と言い換えることができる。
【0063】
[本実施形態の態様及び効果]
次に、本実施形態の一態様及び各態様が奏する効果について説明する。なお、本実施形態は以下に記載する各態様に限定されることはなく、上述した各部を適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下に記載する効果は一例であり、各態様が奏する効果は以下に記載するものに限定されることはない。
【0064】
(態様1)
一態様の情報処理装置は、シミュレーションの対象者の注目対象となる複数の移動体のうち対象者が視認する1つの移動体を特定する特定部と、特定部によって特定される移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第1個別推定部と、特定部によって特定される移動体とは異なる他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第2個別推定部と、第1個別推定部によって推定される対象者の行動と、第2個別推定部によって推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する統合推定部と、を備える。
これにより、情報処理装置は、第1個別推定部及び第2個別推定部それぞれにおいて、対象者と移動体との1対1の関係に基づいて対象者の取る行動を推定するので、個別推定の判断モデルをシミュレーションの全体状況に応じて設定する判断モデルに比べて簡略化することができる。すなわち、情報処理装置は、複数の個別の判断モデルを、シミュレーション全体を通じて統合することにより、シミュレーション全体を通じて1つの判断モデルを利用する場合に比べてシミュレーションを簡略化することができる。また、情報処理装置は、複数の個別の判断モデルを統合することにより、より多くのシミュレーションの状況に対応することができる。
情報処理装置は、対象者が視認する移動体と、対象者が視認していない移動体とをそれぞれ別個に利用するため、実際の交通参加者の状況に応じたシミュレーションを精度よく行うことができる。また、情報処理装置は、対象者が認識をしているが視認をしていない移動体に対しても個別判断を行うので、視認していない移動体が対象者に対して与える影響を考慮したシミュレーションを行うことができる。すなわち、情報処理装置は、対象者の視行動モデルによる視認の有無を考慮することで、より実際の人間の判断に近い判断モデルの構築が可能になり、現実に即したシミュレーションを行うことができる。
【0065】
(態様2)
一態様の情報処理装置では、第2個別推定部は、他の移動体に対して対象者が最後に注目した時刻を基準とし、対象者が他の移動体について注目を忘れることを表す忘却関数に応じて対象者が取る行動としての確率を減少させ、かつ、対象者が取る行動が未決定の確率を増加させることにより、他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定することとしてもよい。
これにより、情報処理装置は、注目対象の移動体が複数あり、そのうち1台を交通参加者が視認できないような場合でも、実際の交通参加者の状況に合わせたシミュレーションを行うことができる。すなわち、情報処理装置は、交通参加者から見て移動体毎の判断を行う一方で、交通参加者が視認していない移動体に対する交通参加者内の情報が薄れていくことを忘却関数を用いて表現することで、統合結果として現実的な判断結果を得ることができる。
【0066】
(態様3)
一態様の情報処理装置では、第1個別推定部及び第2個別推定部それぞれは、移動体の移動状態と、移動体の移動状態に応じて対象者が取る行動とを学習することに生成される学習済モデルと、特定部によって特定される移動体の移動状態とに基づいて、対象者が取る行動を推定することとしてもよい。
これにより、情報処理装置は、対象者と移動体との1対1の関係に基づいて対象者の取る行動を推定することができる。また、情報処理装置は、シミュレーション全体の状況に応じて適宜選択される学習済モデルを利用して、複数の個別の状況それぞれに応じた判断を行うことができる。すなわち、情報処理装置は、シミュレーション全体の状況を複数の個別の判断モデルに分解し、それぞれの判断モデルにおいて対象者が取る行動を推定することができる。
【0067】
(態様4)
一態様の情報処理装置では、特定部は、移動体として、車両が道路を走行する際に、対象者が道路を横断するか否かの行動を推定する際の注目対象としての車両を特定することとしてもよい。
これにより、情報処理装置は、車両の走行状況に応じて対象者が道路を横断するか否か及び未決定かを推定することができる。
【0068】
(態様5)
一態様の情報処理装置では、第1個別推定部及び第2個別推定部それぞれは、移動体の移動状態としての車両の位置及び走行速度と、対象者が取る行動として車両の移動状態に応じて対象者が道路を横断するか、道路を横断しないか及び横断するか否か未決定の行動とを学習することにより生成される学習済モデルを利用することとしてもよい。
これにより、情報処理装置は、車両の走行状況に応じて対象者が道路を横断するか否か及び未決定かの個別判断の確率を算出することができる。
【0069】
(態様6)
一態様の情報処理装置では、統合推定部は、第1個別推定部及び第2個別推定部によって推定される対象者の行動を示す値に、対象者の行動に応じて予め設定される統合処理用の係数を乗算し、乗算した結果を統合することにより複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定することとしてもよい。
これにより、情報処理装置は、複数の個別判断を統合して、複数の移動体に応じた対象者の全体判断を推定することができる。
【0070】
(態様7)
一態様の情報処理方法では、コンピュータが、シミュレーションの対象者の注目対象となる複数の移動体のうち対象者が視認する1つの移動体を特定する特定ステップと、特定ステップによって特定される移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第1個別推定ステップと、特定ステップによって特定される移動体とは異なる他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第2個別推定ステップと、第1個別推定ステップによって推定される対象者の行動と、第2個別推定ステップによって推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する統合推定ステップと、を実行する。
これにより、情報処理方法は、上述した一態様の情報処理装置と同様の効果を奏することができる。
【0071】
(態様8)
一態様の情報処理プログラムは、コンピュータに、シミュレーションの対象者の注目対象となる複数の移動体のうち対象者が視認する1つの移動体を特定する特定機能と、特定機能によって特定される移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第1個別推定機能と、特定機能によって特定される移動体とは異なる他の移動体に応じて対象者が取る行動を推定する第2個別推定機能と、第1個別推定機能によって推定される対象者の行動と、第2個別推定機能によって推定される対象者の行動とに基づいて、複数の移動体全てに応じて対象者が取る行動を推定する統合推定機能と、を実現させる。
これにより、情報処理プログラムは、上述した一態様の情報処理装置と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0072】
100 情報処理装置
110 制御部
111 特定部
112 第1個別推定部
113 第2個別推定部
114 統合推定部
115 出力制御部
121 通信部
122 記憶部
123 表示部