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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】飛沫拡散防止装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20250129BHJP
   A47G 5/00 20060101ALI20250129BHJP
   H03K 17/945 20060101ALI20250129BHJP
   H03K 17/955 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
G01V3/12 A
A47G5/00 D
H03K17/945 G
H03K17/955 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021024414
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126380
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2024-01-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗原 拓哉
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-100044(JP,A)
【文献】特開2012-122726(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255202(WO,A1)
【文献】特開2008-191162(JP,A)
【文献】特開2017-161494(JP,A)
【文献】特開2022-080067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/00-3/62
A47G 5/00
H03K 17/945
H03K 17/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫拡散防止用の透明な面状部材と、
前記面状部材に設けられた1個のアンテナ、及び当該1個のアンテナの送信信号及び受信信号の少なくとも一方の変化に応じて物体を検出する検出部を有する近接センサと、を備えた飛沫拡散防止装置。
【請求項2】
前記近接センサは、前記面状部材に設けられた2以上のアンテナを有しており、
前記検出部は、前記2以上のアンテナのそれぞれについて物体を検出する、請求項1記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項3】
前記検出部は、検出対象の物体までの距離も検出する、請求項1または請求項2記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項4】
前記アンテナは、透明導電体によって構成されている、請求項1から請求項3のいずれか記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項5】
前記検出部による物体の検出に応じた出力を行う出力部をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか記載の飛沫拡散防止装置。
【請求項6】
前記近接センサは、前記面状部材の両方の面の物体を検出する、請求項1から請求項5のいずれか記載の飛沫拡散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検出することができる飛沫拡散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス感染症が流行しており、飛沫による感染の拡大を防止するため、店舗や職場などにおいて透明のアクリル板や透明のビニールシートを用いた飛沫拡散防止具が用いられることが多くなってきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3228226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのような飛沫の拡散を防止する器具を、より有効利用したいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、飛沫の拡散を防止する器具を、飛沫拡散以外にも利用できる飛沫拡散防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置は、飛沫拡散防止用の透明な面状部材と、面状部材に設けられたアンテナ、及びアンテナの送信信号及び受信信号の少なくとも一方の変化に応じて物体を検出する検出部を有する近接センサと、を備えたものである。
このような構成により、透明な面状部材に設けられたアンテナを用いて、例えば、人などを検出することができる。そのため、例えば、受付やレジにおいて、来訪者や客を検出することができ、それに応じて接客等を行うことができるようになる。
【0007】
また、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置では、近接センサは、面状部材に設けられた2以上のアンテナを有しており、検出部は、2以上のアンテナのそれぞれについて物体を検出してもよい。
このような構成により、2以上のアンテナでそれぞれ物体を検出できるため、例えば、来訪者の人数や、来訪者が大人か子供かなどを特定することができるようになる。
【0008】
また、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置では、検出部は、検出対象の物体までの距離も検出してもよい。
このような構成により、例えば、来訪者がすぐ近くにいるのか、少し離れているのかについても検出できる。
【0009】
また、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置では、アンテナは、透明導電体によって構成されていてもよい。
このような構成により、アンテナが視覚を遮らないようにすることができ、例えば、面状部材を挟んで客と従業員が対面している際にも、両者に違和感を与えないようにすることができる。
【0010】
また、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置では、検出部による物体の検出に応じた出力を行う出力部をさらに備えてもよい。
このような構成により、例えば、客が来たことを従業員に通知することができる。
【0011】
また、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置では、近接センサは、面状部材の両方の面の物体を検出してもよい。
このような構成により、例えば、従業員が面状部材の一方の面側にいるときに客が来たのか、または、従業員のいないときに客が来たのかを区別することができ、それに応じた出力を行うこともできるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様による飛沫拡散防止装置によれば、飛沫の拡散を防止する器具によって、物体も検出できるようになり、例えば、来訪者を検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態による飛沫拡散防止装置を示す模式図
図2】同実施の形態による飛沫拡散防止装置の他の一例を示す模式図
図3A】同実施の形態における近接センサ等の構成を示すブロック図
図3B】同実施の形態における近接センサの構成の他の一例を示すブロック図
図4】同実施の形態による飛沫拡散防止装置の他の一例を示す模式図
図5】同実施の形態によるアンテナの一例を示す図
図6】同実施の形態における高周波信号の周波数に応じた検波電圧の変化の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による飛沫拡散防止装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による飛沫拡散防止装置は、近接センサによって、人などの検出対象を検出することができるものである。
【0015】
図1は、本実施の形態による飛沫拡散防止装置1を示す模式図である。図2は、飛沫拡散防止装置1の他の一例を示す模式図である。図3Aは、飛沫拡散防止装置1の有する近接センサ20及び出力部30を示す機能ブロック図である。
【0016】
飛沫拡散防止装置1は、飛沫拡散防止用の透明な面状部材10と、面状部材10に設けられたアンテナ21を有する近接センサ20と、近接センサ20による物体の検出に応じた出力を行う出力部30とを備える。飛沫拡散防止とは、例えば、飛沫感染を防ぐために、飛沫が人に触れることを防止したり、飛沫が空気中を拡散することを防止したりすることであってもよい。
【0017】
面状部材10は、例えば、図1で示されるように、飛沫拡散防止用の透明な板状部材であってもよい。この場合には、面状部材10は、例えば、アクリル板やPET樹脂板などの透明樹脂板によって構成され、通常、板状の形状を保持できる強度を有している。また、平板状の面状部材10がスタンド11によって立てられることによって仕切り板としての飛沫拡散防止装置1が構成されてもよい。このような仕切り板としての面状部材10は、例えば、受付や飲食店のテーブルなどにおいて用いられてもよい。
【0018】
また、面状部材10は、例えば、図2で示されるように、上方から吊るされる透明なシート状のものであってもよい。この場合には、面状部材10は、例えば、ビニールシートなどの透明樹脂シートによって構成され、通常、折り畳んだり、丸めたりすることができる程度の柔軟性を有している。この面状部材10は、例えば、垂れ幕、カーテン、吊り下げシート等であってもよい。このようなカーテン状の面状部材10は、例えば、図2で示されるように、店舗のレジ台5の上方側に吊るされており、キャッシュレジスタ6側の従業員と、商品を購入する客とを仕切るために用いられてもよい。
【0019】
近接センサ20は、物体を検出するセンサであり、アンテナ21と、検出部22とを有している。本実施の形態では、検出対象の物体が人体、すなわち人間である場合について主に説明するが、検出対象の物体が人体に限定されないことは言うまでもない。
【0020】
アンテナ21は、面状部材10に設けられている。アンテナ21は、例えば、面状部材10の表面に設けられていてもよく、または、面状部材10の内部に設けられていてもよい。後者の場合には、例えば、線状や面状のアンテナ21が、2個の透明な平板やシートによって挟まれることによって、アンテナ21の組み込まれた面状部材10が構成されてもよい。アンテナ21は特に限定されるものではないが、例えば、線状のダイポールアンテナであってもよく、面状のパッチアンテナであってもよい。本実施の形態では、図1等で示されるように、アンテナ21がパッチアンテナである場合について主に説明する。
【0021】
アンテナ21は、例えば、不透明であってもよく、または、透明であってもよい。視覚の妨げにならないようにする観点からは、アンテナ21は、透明であることが好適である。透明なアンテナ21は、例えば、透明導電体によって構成されてもよい。透明導電体は特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)、酸化亜鉛、グラフェン、銀ナノワイヤ等であってもよい。
【0022】
図1図2で示されるように、アンテナ21は、配線12によって検出ユニット3に接続されている。配線12のうち、面状部材10に設けられる箇所は、例えば、アンテナ21と同様に、透明導電体によって構成されてもよい。検出ユニット3は、図3Aで示されるように、検出部22と、出力部30とを有してもよい。
【0023】
検出部22は、アンテナ21の送信信号及び受信信号の少なくとも一方の変化に応じて物体を検出するものであり、図3Aで示されるように、発振器41と、変化出力部42と、物体検出部43とを有している。本実施の形態では、検出部22が、アンテナ21の送信信号の変化に応じて物体を検出する場合について主に説明し、それ以外の場合については後述する。
【0024】
発振器41は、高周波信号を発生する。発振器41は、一定の周波数の高周波信号を発生してもよく、所定の周波数範囲の高周波信号を、周波数を連続的に変化させながら発生してもよい。後者の場合には、発振器41は、掃引発振器であってもよい。高周波信号の周波数は、検出対象の物体がアンテナ21にどれぐらい近づいた場合に検出したいのかに応じて決定されることになる。周波数が大きいほど(すなわち、波長が短いほど)、アンテナ21により近い範囲における物体検出が行われることになる。特に限定されるものではないが、高周波信号の周波数は、例えば、100MHz以上であってもよく、1GHz以上であってもよい。また、高周波信号の周波数は、例えば、50GHz以下であってもよく、30GHz以下であってもよく、10GHz以下であってもよい。
【0025】
アンテナ21は、発振器41によって発生された高周波信号を出力する。アンテナ21は、通常、高周波信号を無変調にて送信する。アンテナ21は、例えば、指向性を有するものであってもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、その指向性に応じて電磁界の放射強度が高くなる方向に関する物体を検出することができる。無指向性のアンテナ21を用いた場合には、アンテナ21の周囲における物体を、方向を問わずに検出することができる。
【0026】
変化出力部42は、アンテナ21の特性の変化に応じて変化する高周波信号の電力に応じた出力を行う。アンテナ21の特性の変化とは、アンテナ21のインピーダンスの変化であってもよい。一般に、アンテナ21のインピーダンスは、50Ωまたは75Ωになるように設計、製造されていることが多い。しかしながら、アンテナ21の設計段階で想定していない物体がアンテナ21の近傍に存在すると、アンテナ21のインピーダンスが変化する。アンテナ21のインピーダンスが変化すると、例えば、発振器41からアンテナ21に入力される高周波信号の電力が変化したり、アンテナ21の整合がずれることによってアンテナ端で反射された高周波信号の電力が変化したりすることになる。そのため、変化出力部42は、このアンテナ21のインピーダンスの変化に応じて変化する、発振器41からの高周波信号の電力に応じた出力や、アンテナ21において反射される高周波信号の電力に応じた出力を行うものである。この変化出力部42の変化を観察することによって、アンテナ21に物体が近接したかどうかを判断することができる。この場合には、アンテナ21の送信信号の変化に応じて物体が検出されることになる。
【0027】
アンテナ21の特性の変化に応じて変化する高周波信号の電力に応じた出力を行う変化出力部42の具体的な構成としては、種々のものが考えられるが、そのいくつかの構成について説明する。
【0028】
図3Aで示されるように、変化出力部42は、方向性結合器44と、検波器45とを有してもよい。方向性結合器44は、発振器41とアンテナ21との間の伝送路上に挿入され、発振器41からアンテナ21に向けて流れる高周波信号の一部を分岐する。分岐された高周波信号は、検波器45に入力される。方向性結合器44は、発振器41からアンテナ21に向けて流れる高周波信号の一部のみを分岐する単方向性結合器であってもよい。方向性結合器44は、発振器41からの高周波信号の大部分をアンテナ21に伝送する挿入損失の低いものであることが好適である。したがって、発振器41からの高周波信号の大部分は、アンテナ21に入力され、空中に放射されることになる。
【0029】
検波器45は、方向性結合器44によって分岐された高周波信号を検波し、検波結果である検波電圧を出力する。この検波電圧は、高周波信号の電力に応じたものとなる。したがって、検波電圧の変化によって、発振器41から出力される高周波信号の電力の変化を知ることができ、アンテナ21から出力される信号をモニタリングすることができる。
【0030】
物体検出部43は、変化出力部42からの出力に関する変化に応じて物体を検出する。変化出力部42からの出力とは、図3Aで示される近接センサ20では、検波器45から出力される検波電圧のことである。変化出力部42からの出力に関する変化に応じて物体を検出するとは、その出力そのものが変化した際に物体を検出することであってもよく、その出力に応じて得られる特定の情報の変化に応じて物体を検出することであってもよい。
【0031】
例えば、発振器41が特定の周波数の高周波信号のみを発振している場合には、物体検出部43は、変化出力部42からの出力が変化したときに物体を検出し、変化していないときに物体を検出しなくてもよい。なお、出力が変化したとは、出力が所定の閾値を超えて変化したことであってもよい。その閾値は、例えば、測定誤差程度の値に設定されてもよい。
【0032】
また、例えば、発振器41が所定の範囲の周波数の高周波信号を、周波数を変化させながら発振している場合には、物体検出部43は、変化出力部42からの出力に応じて特定した共振周波数が変化したときに物体を検出し、共振周波数が変化していないときに物体を検出しなくてもよい。なお、共振周波数が変化したとは、共振周波数が所定の閾値を超えて変化したことであってもよい。その閾値は、例えば、測定誤差程度の値に設定されてもよい。
【0033】
検波電圧の周波数特性は、例えば、図6で示されるようになる。例えば、発振器41が掃引発振器である場合には、アンテナ21の近傍に物体がない状況において、図6の実線で示されるように周波数と検波電圧との関係を取得することができる。なお、図6では、横軸が周波数であり、縦軸が検波電圧である。アンテナ21の近傍に物体が存在する場合には、アンテナ21のインピーダンスが変化し、それに応じて高周波信号の電圧が変化するため、検波電圧の周波数特性が、例えば、図6の破線で示されるようになる。したがって、所定の周波数における検波電圧の実線から破線への変化を検出することによって、または、実線の共振周波数から破線の共振周波数への変化を検出することによって、物体がアンテナ21の近傍に存在することを検出することができる。なお、図6では、共振周波数が、検波電圧が極小になる周波数である場合について示しているが、測定方法によっては、検波電圧が極大になる周波数が共振周波数となることもある。
【0034】
なお、図6では、アンテナ21への物体の近接に応じて周波数が低くなる方向に波形が全体として変化する場合について示しているが、これは一例であり、様々な条件により、波形が周波数の高い方向に変化したり、周波数方向の変化だけでなく、検波電圧方向についても、検波電圧が高くなる方向に変化したり、低くなる方向に変化したりすることもある。いずれにしても、物体がアンテナ21に近接することにより、アンテナ21の送信信号が変化し、検波電圧の周波数特性は変化することになる。
【0035】
また、物体検出部43は、所定の周波数における検波電圧の変化の程度に応じて、検出対象の物体までの距離を特定することもできる。また、物体検出部43は、共振周波数の変化の程度に応じて、物体の距離を特定することもできる。例えば、アンテナ21の近傍(例えば、波長の半分程度の距離まで)であれば、アンテナ21と物体との距離と、検波電圧との関係がリニアになる。したがって、その性質を利用して、アンテナ21から検出対象の物体までの距離を測定してもよい。
【0036】
次に、近接センサ20の動作について、簡単に説明する。発振器41が単一の周波数の高周波信号を発振する場合には、検波器45は、その周波数の高周波信号に関する検波電圧を出力することになる。したがって、物体検出部43は、その検波電圧をモニタリングする。アンテナ21に人体やそれ以外の物体が近接した場合には、アンテナ21のインピーダンスが変化することによって、高周波信号の電力が変化し、その結果として、検波器45から出力される検波電圧も変化する。このように、検波電圧が変化した場合には、物体検出部43は、その変化を検出することによって、アンテナ21の近傍の物体を検出することができる。
【0037】
また、発振器41が所定の周波数範囲の高周波信号を、周波数を変化させながら発振する場合には、検波器45は、その周波数範囲に応じた高周波信号の検波電圧を出力することになる。したがって、物体検出部43は、その周波数範囲に応じた検波電圧の変化を受け取ることになる。なお、物体検出部43は、発振器41が単一の周波数の高周波信号を発振する場合と同様に、特定の周波数の検波電圧のみを用いて、上記と同様の処理を行ってもよい。または、物体検出部43は、受け取った周波数範囲に応じた検波電圧の変化を用いて、検波電圧が極値になる共振周波数を特定してもよい。アンテナ21に人体やそれ以外の物体が近接した場合には、アンテナ21のインピーダンスが変化することによって、高周波信号の電力が変化し、その結果として、共振周波数も変化する。このように、共振周波数が変化した場合には、物体検出部43は、その変化を検出することによって、アンテナ21の近傍の物体を検出することができる。
【0038】
出力部30は、検出部22による物体の検出に応じた出力を行う。例えば、出力部30は、物体が検出された際に、そのことを出力してもよい。このような出力によって、例えば、受付やレジに客が来たことや、テーブルに客が着席したことを従業員に通知することができる。そして、従業員は、すぐに客の応対をすることができる。なお、検出部22によって検出対象の物体までの距離も検出された場合には、出力部30は、その距離に応じた出力を行ってもよい。例えば、検出された人までの距離が閾値より大きい場合には、出力部30は、来客はあるが、まだ着席していない旨などを出力してもよい。一方、例えば、検出された人までの距離が閾値より小さい場合には、出力部30は、来客があり、すでに着席している旨などを出力してもよい。
【0039】
ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した有線または無線の送信でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部30は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスや通信デバイスなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部30は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0040】
以上のように、本実施の形態による飛沫拡散防止装置1によれば、近接センサ20によって物体を検出することができるため、例えば、面状部材10に人が近づいたことを検出することができる。そのため、飛沫拡散防止用の器具を、人などの検出にも用いることができるようになる。また、アンテナ21を透明な導体によって構成することによって、アンテナ21が視覚の妨げにならないようにすることもできる。
【0041】
次に、本実施の形態による近接センサ20の変形例について説明する。まず、変化出力部42の変形例について説明する。なお、変形例1,2では、図3Aの近接センサ20と同様に、発振器41からアンテナ21に入力される高周波信号の電力に応じた出力が行われる。一方、変形例3では、図3Aの近接センサ20とは異なり、アンテナ端で反射された高周波信号の電力に応じた出力が行われる。いずれの場合であっても、検出部22は、アンテナ21の送信信号の変化に応じて物体を検出することになる。
【0042】
[変化出力部の変形例1]
図3Aで示される近接センサ20では、発振器41で発生させた高周波信号とは異なる周波数の電波がアンテナ21から入った場合に、方向性結合器44のアイソレーションにより、一定の隔離はできるものの、それによる変化が検波器45で観測される可能性がある。そのような課題を解決できるのが、図3Bで示される変化出力部42の構成である。図3Bで示される近接センサ20における変化出力部42以外の構成は、上記説明と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図3Bで示される変化出力部42は、方向性結合器44と、分配器46と、混合器47と、低域通過フィルタ48とを有する。
分配器46は、発振器41からアンテナ21に向けて流れる高周波信号を第1の高周波信号、及び第2の高周波信号に分配する。第1の高周波信号は、方向性結合器44に出力され、第2の高周波信号は混合器47に出力される。
【0044】
方向性結合器44は、分配器46からアンテナ21に向けて流れる第1の高周波信号の一部を分岐して混合器47に出力する以外は、図3Aの方向性結合器44と同様のものである。なお、上記説明と同様に、第1の高周波信号の多くは、アンテナ21から放射されることになる。
【0045】
混合器47は、分配器46からの第2の高周波信号と、方向性結合器44によって分岐された高周波信号とを混合するミキサである。混合器47では、第2の高周波信号と、方向性結合器44からの高周波信号とが乗算される。その乗算結果の信号は、2つの入力信号の周波数和の成分と、周波数差の成分とを含むものである。
【0046】
低域通過フィルタ48は、混合器47の出力信号から直流成分を抽出する。したがって、混合器47から出力される周波数和の成分は、低域通過フィルタ48によって除去され、周波数差の成分のみが出力される。
【0047】
ここで、混合器47に入力される2つの信号は、いずれも発振器41で発生させたものであり、周波数は同じである。したがって、周波数差の成分は直流となる。図3Aで示される近接センサ20における検波器45の出力が、この直流に相当する。なお、アンテナ21から、発振器41で発生された高周波信号とは異なる周波数の信号が混入した場合には、混合器47において、発振器41で発生された高周波信号の周波数との和の成分と差の成分が生成されることになる。いずれも直流になることはないため、低域通過フィルタ48で遮断されて出力されることはない。
【0048】
[変化出力部の変形例2]
図3Aで示される近接センサ20では、検波電圧を用いて、高周波信号の電力に関する変化を検出した。一方、測定したいのは、発振器41から出力される高周波信号の電力であるため、発振器41からアンテナ21までの高周波信号の伝送路において、その電力を直接、測定してもよい。そのため、変化出力部42は、高周波信号の電力を、電流と電圧とを用いて直接測定してもよい。高周波信号の電力を測定する変化出力部42は、例えば、アンテナ21に入力される高周波信号の電流を測定するクランプメータと、アンテナ21に入力される高周波信号の電圧を測定する電圧計と、クランプメータ及び電圧計の測定結果を用いて高周波信号の電力を算出する算出部とを有してもよい。
【0049】
このような変化出力部42を用いることによっても、物体検出部43において、変化出力部42から出力される電力を用いて、上記説明と同様にして、アンテナ21の近傍の物体を検出することができる。なお、クランプメータや電圧計は、通常、低い周波数の高周波信号についてしか測定を行うことができないため、このような構成の変化出力部42を有する近接センサ20としては、より低い周波数帯域の高周波信号を用いたものに限られることになる。
【0050】
[変化出力部の変形例3]
図3Aで示される近接センサ20では、方向性結合器44によって、発振器41からアンテナ21に向けて流れる高周波信号の一部を検波器45に分岐したが、方向性結合器44は、アンテナ21から発振器41に戻る反射信号の一部を分岐して、検波器45に出力してもよい。このようにすることで、出力側からの反射信号をモニタリングできる。このような方向性結合器44としては、例えば、双方向性結合器が用いられてもよい。
【0051】
アンテナ21の近傍に物体が存在する場合には、物体が存在しない場合と比較して、アンテナ21の反射係数が変化する。また、アンテナ21から出力した信号が物体で反射した信号も、アンテナ21に戻ることになる。それらの信号を検波器45によって検波することによっても、図3Aで示される近接センサ20と同様にして、非接触での物体を検出することができることになる。
【0052】
なお、図3Aの構成において、アンテナ21からの反射を見るように方向性結合器44を変更した場合には、アンテナ21に入力される他の信号の影響も受けやすくなる。そのような影響を低減するため、図3Bで示される近接センサ20において、アンテナ21から発振器41に戻る反射信号の一部を分岐して、混合器47に出力する方向性結合器44を用いてもよい。この場合には、上記説明のとおり、アンテナ21に目的外の電波が入力される状況にも対応することができるからである。
【0053】
また、変化出力部42の構成のいくつかのバリエーションについて説明したが、変化出力部42は、それら以外の構成によって、アンテナ21の特性の変化に応じた出力を行ってもよいことは言うまでもない。
【0054】
[複数のアンテナを用いた物体の検知]
本実施の形態では、1個のアンテナ21を用いた場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。面状部材10には2以上のアンテナ21が設けられてもよく、検出部22は、2以上のアンテナ21のそれぞれについて物体を検出してもよい。このような物体の検知を行うことによって、より広範囲での物体の検知を行うことができ、また、物体のより詳細な位置の特定も可能となる。
【0055】
図4は、複数のアンテナ21a~21dの設けられた面状部材10を備えた飛沫拡散防止装置1の一例を示す模式図である。4個のアンテナ21a~21dごとに物体の検出処理を行うことによって、アンテナ21a~21dの設けられている位置ごとに物体の検出を行うことができる。そのため、検出部22は、アンテナ21a~21dごとに変化出力部42や物体検出部43を有していてもよい。なお、高周波信号は、1個の発振器41によって発振された信号を分配して用いてもよい。また、出力部30は、物体の検出されたアンテナ21に応じて、出力の内容を変更してもよい。例えば、アンテナ21a、21cの前に椅子が置かれており、また、アンテナ21b、21dの前にも椅子が置かれているとする。そして、すべてのアンテナ21a~21dによって物体が検出された場合には、出力部30は、2人の大人が来た旨を出力し、アンテナ21a、21c、21dによって物体が検出された場合には、出力部30は、1人の大人と、1人の子供が来た旨を出力してもよい。このように、複数のアンテナ21a~21dを用いることによって、来訪者の人数を把握したり、大人と子供を区別したりすることもできる。
【0056】
また、複数のアンテナ21を用いた場合にも、各アンテナ21からの距離も含めた検出を行ってもよい。この場合には、複数のアンテナ21を用いることによって、3次元的な物体の検出を行うこともできる。また、アンテナ21の個数は、4個以外であってもよい。例えば、2個や3個、5個以上のアンテナ21が面状部材10に設けられてもよい。
【0057】
[面状部材の両面側の物体の検出]
アンテナ21として面状のパッチアンテナを用いる場合には、通常、アンテナ面側から電波が出力されるだけであり、グラウンド面側からは電波が出力されないため、グラウンド面側の物体を検出することはできない。一方、第1のアンテナ21であるパッチアンテナは、アンテナ面が面状部材10の第1の面側となるように面状部材10に配置され、第2のアンテナ21であるパッチアンテナは、アンテナ面が面状部材10の第2の面側となるように面状部材10に配置されることによって、近接センサ20は、面状部材10の両方の面の物体を検出することができるようになる。なお、面状部材10の第2の面は、第1の面と反対側の面であるとする。この場合にも、検出部22は、2個のアンテナ21のそれぞれについて物体の検出処理を行ってもよい。
【0058】
また、上記の場合には、2個のアンテナ21をそれぞれ異なる位置に配置する必要があるが、アンテナ21として、両面の物体を検出できるパッチアンテナを用いてもよい。図5は、そのようなアンテナ21の一例を示す図である。図5において、アンテナ21は、グラウンド面51と、グラウンド面51の第1の面に設けられた誘電体52と、誘電体52のグラウンド面51と反対側の面に設けられたアンテナ面53と、グラウンド面51の第2の面に設けられた誘電体54と、誘電体54のグラウンド面51と反対側の面に設けられたアンテナ面55とを有する。このアンテナ21は、グラウンド面側が張り合わされた2個のパッチアンテナと同様の構成となっている。そのため、アンテナ面53側と、アンテナ面55側との両方について物体を検出することができる。なお、図5では省略しているが、アンテナ面53,55には、マイクロストリップを用いて給電が行われてもよい。また、この場合にも、検出部22による物体の検出処理は、グラウンド面51、誘電体52、アンテナ面53で構成されるパッチアンテナと、グラウンド面51、誘電体54、アンテナ面55で構成されるパッチアンテナとのそれぞれについて行われてもよい。
【0059】
このように、近接センサ20が、面状部材10の両方の面の物体を検出する場合には、出力部30は、物体の検出された面に応じた出力を行ってもよい。例えば、面状部材10の第1の面は従業員側の面であり、第2の面は客などの来訪者側の面である場合には、第1の面で物体が検出されず、第2の面で物体が検出されたときに、出力部30は、従業員を呼び出すための出力を行ってもよい。この出力は、例えば、従業員を呼び出すための音声出力や、従業員が有する端末への呼び出しのための情報の送信であってもよい。また、第1の面及び第2の面の両方で物体が検出されたとき、及び、第1の面で物体が検出され、第2の面で物体が検出されないときには、出力部30は、従業員を呼び出すための出力を行わなくてもよい。このように、両方の面において検出を行うことによって、より細かい出力を行うことができ、例えば、従業員が訪問者の前にいるにも関わらず、従業員を呼び出すようなことを回避することができる。
【0060】
[発振器の変形例]
本実施の形態では、高周波信号を発生させる専用の発振器41を用いる場合について主に説明したが、発振器41は、一般的な無線通信を行う通信機であってもよい。そして、通信機によって発生された高周波信号が、物体の検知にも用いられてもよい。この場合には、高周波信号は、変調波であってもよい。
【0061】
[その他の変形例]
また、本実施の形態では、検出部22と出力部30とが検出ユニット3に含まれる場合について説明したが、そうでなくてもよい。検出部22と出力部30とは、異なるユニットに装着されてもよい。このように、本実施の形態における各処理や各機能は、単一のユニットや装置に設けられていてもよく、または、複数のユニットや装置に分散して設けられていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態による飛沫拡散防止装置1が出力部30を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。飛沫拡散防止装置1は、出力部30を備えていなくてもよい。この場合には、例えば、検出部22の出力が外部の装置に提供され、その外部の装置において、出力部30と同様の出力の処理が行われてもよい。
【0063】
また、検出部22による近接物の検出において、アンテナ21のインピーダンスの変化を用いる方法以外に、物体からの反射信号を受信し、その強度の変化や送信信号との位相や周波数の差異から物体を検出する方法などを適用してもよい。なお、この場合には、アンテナ21の受信信号の変化に応じて物体を検出することになる。アンテナ21の受信信号の変化に応じて物体を検出する場合には、図3A図3Bの構成において、方向性結合器44がアンテナ21からの信号の一部を検波器45側に分岐するように変更すればよい。また、上記変形例3の構成によっても、アンテナ21の受信信号の変化に応じて物体を検出することができる。このように、アンテナ21の受信信号の変化に応じて物体を検出する場合には、アンテナ21からより遠くの物体、例えば、アンテナ21から数波長程度離れた位置の物体を検出することもできるようになる。さらに、アンテナ21の送信信号と受信信号との両方の変化に応じて物体を検出することも可能である。この場合には、例えば、発振器41からアンテナ21に流れる高周波信号の一部を、第1の方向性結合器を用いて分岐して第1の検波器に入力すると共に、アンテナ21からの信号の一部を、第2の方向性結合器を用いて分岐して第2の検波器に入力し、第1及び第2の検波器の出力を用いて、送信信号に対して反射してきた受信信号の程度を観察することによって、物体を検出してもよい。なお、この場合には、送信信号の変化、すなわち第1の検波器の出力の変化は第2の検波器の出力の変化と比較して小さいため、実質的には、第2の検波器のみを用いて物体を検出することができる。すなわち、上記変形例3の構成によって、物体を検出できることになる。このように、検出部22は、アンテナ21の送信信号及び受信信号の少なくとも一方の変化に応じて物体を検出してもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、アンテナ21が送受信のアンテナを兼用している場合について説明したが、送信用のアンテナと受信用のアンテナとを別々に設けてもよいことは言うまでもない。
【0065】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上より、本発明の一態様による飛沫拡散防止装置によれば、飛沫拡散防止のための装置によって物体の検出も行うことができるという効果が得られ、例えば、来訪者等を検出できる飛沫拡散防止装置等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 飛沫拡散防止装置
10 面状部材
20 近接センサ
21、21a~21d アンテナ
22 検出部
30 出力部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6