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  • 特許-電子部品実装装置及び電子部品実装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】電子部品実装装置及び電子部品実装方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20250129BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
H05K3/34 503B
H05K13/04 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023574938
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001776
(87)【国際公開番号】W WO2023139685
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信一
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-288796(JP,A)
【文献】特開2016-192468(JP,A)
【文献】特開2019-62199(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプ電極を有する電子部品を供給する電子部品供給部と、
フラックスを貯留する転写ステージと、
基板が載置される実装ステージと、
前記電子部品をピックアップ可能である複数のヘッドを所定の間隔を有して連結し、前記実装ステージにおける前記電子部品が載置される載置面に沿った方向において連動させる連結部材と、
前記複数のヘッドの動作を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記複数のヘッドを、前記電子部品の前記バンプ電極を前記転写ステージに貯留された前記フラックスに浸漬させるディッピングヘッドと、前記実装ステージの上の前記基板に対して前記バンプ電極を介して前記電子部品を実装させるボンディングヘッドと、に分担して機能させ、
前記転写ステージにおいて前記ディッピングヘッドから前記電子部品を前記フラックスに浸漬させた状態でリリースした後、前記連結部材を前記所定の間隔移動させて前記ボンディングヘッドによって、前記転写ステージから前記フラックスに浸漬された状態の前記電子部品をピックアップするように構成された、
電子部品実装装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ディッピングヘッドの動作中の最高温度が前記ボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御する、
請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ディッピングヘッドの動作中の最高温度が前記フラックスの活性化温度よりも低くなるよう制御し、前記ボンディングヘッドが前記転写ステージから前記電子部品をピックアップする最低温度が前記フラックスの活性化温度よりも高くなるように制御する、
請求項2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ディッピングヘッドの動作中の温度を20℃以上90℃以下に制御し、前記ボンディングヘッドが前記転写ステージから前記電子部品をピックアップする温度を150℃以上350℃以下に制御する、
請求項2又は3に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記ディッピングヘッドは冷却機構を有し、
前記ボンディングヘッドは加熱機構と冷却機構とを有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ボンディングヘッドによって前記電子部品を前記転写ステージから前記実装ステージへと搬送する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ディッピングヘッドによって前記電子部品を前記転写ステージから前記実装ステージへと搬送させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項9】
前記ボンディングヘッドと前記ディッピングヘッドとの熱交換を阻害する遮蔽部材をさらに備える、
請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項10】
前記ディッピングヘッド及び前記ボンディングヘッドは、前記実装ステージにおける前記電子部品が載置される載置面に沿った方向において別個独立に移動可能に構成されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項11】
バンプ電極を有する電子部品を供給する電子部品供給部と、
フラックスを貯留する転写ステージと、
基板が載置される実装ステージと、
前記電子部品をピックアップ可能である複数のヘッドを所定の間隔を有して連結し、前記実装ステージにおける前記電子部品が載置される載置面に沿った方向において連動させる連結部材と、
前記複数のヘッドの動作を制御する制御部とを備える電子部品実装装置を用いた電子部品実装方法であって、
前記複数のヘッドのうちディッピングヘッドによって前記電子部品供給部から前記電子部品をピックアップすることと、
前記ディッピングヘッドによって前記電子部品の前記バンプ電極を前記転写ステージに貯留された前記フラックスに浸漬させることと、
前記複数のヘッドのうちボンディングヘッドによって前記電子部品を前記基板に実装することと、
前記転写ステージにおいて前記ディッピングヘッドから前記電子部品をリリースした後、前記連結部材を前記所定の間隔移動させることと、
前記ボンディングヘッドによって前記転写ステージから前記電子部品をピックアップすることと
を含む、
電子部品実装方法。
【請求項13】
前記制御部によって、前記ディッピングヘッドの動作中の最高温度が前記ボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御することをさらに含む、
請求項11に記載の電子部品実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子部品実装装置及び電子部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップボンディング方式による電子部品の実装工程においては、一般的に、酸化膜除去剤及び表面活性剤等を含むフラックスが電子部品のバンプ電極に転写された後、電子部品が基板に対してはんだ付けされる。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子部品である半導体装置が複数収納されたトレイが予めセットされたトレイフィーダ部と、フラックス浸漬エリアを有する転写ステージと、マザーボードを位置決め保持するマザーボード位置決め部と、電子部品を吸着保持する吸着コレットを有する吸着ユニット部とを備える、電子部品搭載装置が開示されている。この電子部品搭載装置においては、吸着ユニットが、吸着コレットによってトレイから半導体装置を取り出し、電子部品のバンプ電極をフラックス浸漬エリアのフラックスに浸漬させ、その後、マザーボード位置決め部のマザーボードに電子部品を搭載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4960160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子部品搭載装置によれば、吸着コレットは、マザーボードに電子部品を搭載するときバンプ電極をはんだ付けするために高温となる。高温となった吸着コレットは、フラックス浸漬エリアのフラックスの気化又は劣化を抑制するために、バンプ電極をフラックスに浸漬する前に冷却されるが、この冷却時間が生産性に影響する場合があった。
【0006】
本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本願発明の目的は、生産性が向上した電子部品実装装置及び電子部品実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様に係る電子部品実装装置は、バンプ電極を有する電子部品を供給する電子部品供給部と、フラックスを貯留する転写ステージと、基板が載置される実装ステージと、電子部品をピックアップ可能である複数のヘッドと、複数のヘッドの動作を制御する制御部とを備え、制御部は、複数のヘッドを、電子部品のバンプ電極を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させるディッピングヘッドと、実装ステージの上の基板に対してバンプ電極を介して電子部品を実装させるボンディングヘッドと、に分担して機能させるように構成される。
【0008】
この態様によれば、実装処理のために高温となったヘッドを、フラックスの気化又は劣化を抑制するために浸漬処理の前に冷却する必要がない。ヘッドの冷却時間を省略することで、基板に対する電子部品の実装に要する時間を短縮することが可能となり、生産性が向上した電子部品実装装置を提供することができる。
【0009】
上記態様において、制御部は、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御してもよい。
【0010】
この態様によれば、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの制御すべき温度範囲が狭い。このため、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。
【0011】
上記態様において、制御部は、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がフラックスの活性化温度よりも低くなるよう制御し、ボンディングヘッドの動作中の最低温度がフラックスの活性化温度よりも高くなるように制御してもよい。
【0012】
この態様によれば、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がフラックスの活性化温度よりも低いことで、ヘッドによるフラックスの加熱を抑制し、フラックスの気化又は劣化を抑制することができる。また、ボンディングヘッドの動作中の最低温度がフラックスの活性化温度よりも高いことで、フラックスの活性化に要する時間を短縮することができる。
【0013】
上記態様において、制御部は、ディッピングヘッドの動作中の温度を20℃以上90℃以下に制御し、ボンディングヘッドの動作中の温度を150℃以上350℃以下に制御してもよい。
【0014】
この態様によれば、ディッピングヘッドを20℃以上に制御することで、ヘッドによるフラックスの冷却を抑制し、フラックスの粘度上昇を抑制することができる。ディッピングヘッドを90℃以下に制御することで、ヘッドによるフラックスの加熱を抑制し、フラックスの気化又は劣化を抑制することができる。ボンディングヘッドを150℃以上に制御することで、フラックスの活性化に要する時間を短縮することができ、実装処理中にヘッドの温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。ボンディングヘッドを350℃以下に制御することで、過剰加熱に起因したバンプ電極の劣化を抑制することができる。
【0015】
上記態様において、ディッピングヘッドは冷却機構を有し、ボンディングヘッドは加熱機構と冷却機構とを有してもよい。
【0016】
この態様によれば、ディッピングヘッドが冷却機構を有することで、ボンディングヘッドによって加熱されたディッピングヘッドの昇温を抑制することができる。したがって、浸漬処理におけるフラックスの気化又は劣化を抑制することができる。また、ボンディングヘッドが加熱機構と冷却機構とを有することで、実装済みの電子部品のはんだを熱によって劣化させることなく、実装する電子部品のはんだのみを迅速に溶融又は固化させることができる。
【0017】
上記態様において、制御部は、ボンディングヘッドによって電子部品を転写ステージから実装ステージへと搬送してもよい。
【0018】
この態様によれば、転写ステージからピックアップして基板に実装するまで、電子部品を一貫してボンディングヘッドによって保持するため、電子部品の位置ずれによる不良品の発生を低減することができる。
【0019】
上記態様において、制御部は、ディッピングヘッドによって電子部品を転写ステージから実装ステージへと搬送してもよい。
【0020】
この態様によれば、転写ステージから電子部品をピックアップする際に、ヘッドによるフラックスの加熱を抑制し、フラックスの気化又は劣化を抑制することができる。
【0021】
上記態様において、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドを連結する連結部材をさらに備え、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドは、実装ステージにおける電子部品が載置される載置面に沿った方向において連動するように構成されてもよい。
【0022】
この態様によれば、複数のヘッドが別個独立に移動可能に構成された電子部品実装装置に比べて、構成を簡略化することができる。したがって、メンテナンス性が向上し、装置の稼働時間を伸ばすことができる。
【0023】
上記態様において、ボンディングヘッドとディッピングヘッドとの熱交換を阻害する遮蔽部材をさらに備えてもよい。
【0024】
この態様によれば、ディッピングヘッドの昇温を抑制することができる。したがって、ヘッドによるフラックスの加熱を抑制し、フラックスの気化又は劣化を抑制することができる。
【0025】
上記態様において、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドは、実装ステージにおける電子部品が載置される載置面に沿った方向において別個独立に移動可能に構成されてもよい。
【0026】
この態様によれば、浸漬処理と実装処理とを平行して行うことができる。したがって、生産性をさらに向上させることができる。
【0027】
本願発明の他の一態様に係る電子部品実装方法は、バンプ電極を有する電子部品を供給する電子部品供給部と、フラックスを貯留する転写ステージと、基板が載置される実装ステージと、電子部品をピックアップ可能である複数のヘッドと、複数のヘッドの動作を制御する制御部とを備える電子部品実装装置を用いた電子部品実装方法であって、複数のヘッドのうちディッピングヘッドによって電子部品供給部から電子部品をピックアップすることと、ディッピングヘッドによって電子部品のバンプ電極を転写ステージに貯留されたフラックスに浸漬させることと、複数のヘッドのうちボンディングヘッドによって電子部品を基板に実装することとを含む。
【0028】
この態様によれば、実装処理のために高温となったヘッドを、フラックスの気化又は劣化を抑制するために浸漬処理の前に冷却する必要がない。ヘッドの冷却時間を省略することで、基板に対する電子部品の実装に要する時間を短縮することが可能となり、生産性が向上した電子部品実装方法を提供することができる。
【0029】
上記態様において、転写ステージにおいてディッピングヘッドから電子部品をリリースすることと、ボンディングヘッドによって転写ステージから電子部品をピックアップすることとをさらに含んでもよい。
【0030】
この態様によれば、転写ステージからピックアップして基板に実装するまで、電子部品を一貫してボンディングヘッドによって保持するため、電子部品の位置ずれによる不良品の発生を低減することができる。
【0031】
上記態様において、制御部によって、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御することをさらに含んでもよい。
【0032】
この態様によれば、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの制御すべき温度範囲が狭い。このため、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0033】
本願発明によれば、生産性が向上した電子部品実装装置及び電子部品実装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1実施形態に係る電子部品実装装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る電子部品実装装置を用いた電子部品実装方法を概略的に示すフローチャートである。
図3】工程S130の様子を概略的に示す図である。
図4】工程S140の様子を概略的に示す図である。
図5】工程S160の様子を概略的に示す図である。
図6】工程S170の様子を概略的に示す図である。
図7】工程S130の様子を概略的に示す図である。
図8】電子部品実装方法の変形例を概略的に示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る電子部品実装装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本願発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0036】
<第1実施形態>
まず、図1を参照しつつ、本願発明の第1実施形態に係る電子部品実装装置1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る電子部品実装装置の構成を概略的に示す図である。
【0037】
電子部品実装装置1は、基板BDに電子部品CPをはんだ付けするフリップチップボンダである。基板BDと電子部品CPとを接合するはんだは、例えば電子部品CPのバンプ電極EBに設けられている。但し、はんだは、基板BDの電極パッドに設けられてもよく、バンプ電極EB及び電極パッドの両方に設けられてもよい。電子部品実装装置1は、マルチヘッドユニット100と、制御部10と、電子部品供給ユニット20と、転写ユニット30と、実装ユニット40とを備えている。
【0038】
マルチヘッドユニット100は、複数のヘッド110,120と、ベース部材130と、遮蔽部材140と、ヘッド移動機構150とを備えている。
【0039】
複数のヘッド110,120は、バンプ電極EBを有する電子部品CPをピックアップ可能に構成されている。ヘッド110は、保持ツール111と、加熱ツール113と、冷却ツール115と、昇降機構119とを有している。保持ツール111は、電子部品CPを保持するピンセットであり、例えば吸着コレット等である。加熱ツール113は、保持ツール111を加熱する加熱機構であり、例えばセラミックヒータ等である。冷却ツール115は保持ツール111を冷却する冷却機構であり、例えば冷却流路やペルチェ素子等である。昇降機構119は、保持ツール111を転写ユニット30の転写面又は実装ユニット40の実装面と直交する方向(以下、「鉛直方向」とする。)に沿って昇降させる昇降機構であり、例えば電動シリンダやアクチュエータ等である。ヘッド120は、保持ツール121と、加熱ツール123と、冷却ツール125と、昇降機構129とを有している。ヘッド120はヘッド110と同様の構成のため、ヘッド120の構成要素についての説明は省略する。ヘッド110,120には、さらに、ヘッド110,120の温度を検知する温度センサ、及び、酸素をパージして電極の酸化を抑制するパージガス吹出機構等が備えられてもよい。パージガスは、金属との反応性が低い不活性ガスであり、例えば窒素ガスである。
【0040】
ベース部材130には、複数のヘッド110,120が取り付けられている。すなわち、昇降機構119,129は、ベース部材130に対して保持ツール111,121を昇降させる。ベース部材130は、ヘッド110とヘッド120とを連結しており、本発明に係る「連結部材」の一例に相当する。
【0041】
遮蔽部材140は、ヘッド110とヘッド120との熱交換を阻害する。遮蔽部材140は、保持ツール111と保持ツール121との間に設けられた板状部材であり、例えば断熱板又は遮熱板である。遮蔽部材140は冷却機構を備えてもよい。
【0042】
ヘッド移動機構150は、ヘッド110及びヘッド120を転写ユニット30の転写面又は実装ユニット40の実装面と平行な方向(以下、「水平方向」とする。)に沿って移動させる移動機構であり、例えば直交ロボット又はロボットマニピュレータである。ヘッド移動機構150は、ベース部材130を移動させる。このため、ベース部材130に取り付けられたヘッド110とヘッド120とは水平方向に沿って連動するように構成されている。なお、ヘッド110とヘッド120とは、水平方向に沿って別個独立に移動可能に構成されてもよい。
【0043】
制御部10は、マルチヘッドユニット100を制御する。具体的には、制御部10は、電子部品CPのバンプ電極EBを転写ユニット30に貯留されたフラックスFXに浸漬させるディッピングヘッドとしてヘッド110を機能させる。また、制御部10は、実装ユニット40の上の基板BDに対してバンプ電極EBを介して電子部品CPを実装させるボンディングヘッドとしてヘッド120を機能させる。このようにヘッド110,120に役割分担させるために、制御部10は、ヘッド110,120の位置及び温度を制御する。また、制御部10は、保持ツール111,121を制御することで、ヘッド110,120に電子部品CPを適切なタイミングでピックアップ又はリリースさせる。なお、本明細書において、ディッピングヘッドは浸漬処理専用のヘッドであるが、ここでいう「浸漬処理専用」とは、浸漬処理及び実装処理の各処理のうち、実装処理に属する動作を実行することなく、もっぱら浸漬処理に属する動作を実行することを意味し、浸漬処理以外のその他の処理を実行することを排除するものではない。また、同様に、ボンディングヘッドは実装処理専用のヘッドであるが、ここでいう「実装処理専用」とは、浸漬処理及び実装処理の各処理のうち、浸漬処理に属する動作を実行することなく、もっぱら実装処理に属する動作を実行することを意味し、実装処理以外のその他の処理を実行することを排除するものではない。
【0044】
制御部10は、ヘッド110,120の保持ツール111,121の鉛直方向及び水平方向における位置を制御するために、昇降機構119,129及びヘッド移動機構150を制御する。制御部10は、ヘッド110の保持ツール111の位置を制御することで、電子部品CPを電子部品供給ユニット20からピックアップさせ、電子部品CPを電子部品供給ユニット20から転写ユニット30へと搬送させ、電子部品CPのバンプ電極EBを転写ユニット30に貯留されたフラックスFXに浸漬させる。制御部10は、転写ユニット30上で電子部品CPをリリースさせてもよく、転写ユニット30から実装ユニット40へと電子部品CPを搬送させてからリリースさせてもよい。制御部10は、ヘッド120の保持ツール121の位置を制御することで、電子部品CPを基板BDに実装させる。制御部10は、ヘッド120に転写ステージ31から電子部品CPをピックアップさせて実装ステージ41まで電子部品CPを搬送させてもよく、ヘッド110に転写ステージ31から実装ステージ41まで電子部品CPを搬送させてもよい。なお、電子部品実装装置は、電子部品受渡部をさらに備え、そこで電子部品をヘッド110の保持ツール111からヘッド120の保持ツール121へと受け渡してもよい。
【0045】
制御部10は、ヘッド110,120の動作中の温度(以下、「動作温度」とする。)を制御するために、ヘッド110,120の加熱ツール113,123及び冷却ツール115,125を制御する。なお、ここでいう「ヘッド110,120の動作温度」とは、電子部品実装装置1を動作させて浸漬処理及び実装処理を実行している状態、並びに、浸漬処理及び実装処理が実行可能な状態における、保持ツール111,121の温度のことを意味する。制御部10は、ヘッド110の動作温度を浸漬処理に好適な温度範囲に制御する。制御部10は、ヘッド120が電子部品CPを転写ステージ31からピックアップするときは、ヘッド120をはんだの融点よりも低温に制御する。また、制御部10は、ヘッド120が電子部品CPを基板BDに実装するときは、ヘッド120をはんだの融点よりも高温に制御する。以下、電子部品CPを転写ステージ31からピックアップするときのヘッド110の温度を「処理前温度」とし、電子部品CPを基板BDに実装するときの温度を「処理温度」とする。例えば、ヘッド120の動作温度の最低温度は処理前温度であり、ヘッド120の動作温度の最高温度は処理温度である。このように、ヘッド110,120の動作温度の制御範囲を限定することで、ヘッド110,120の温度変化が完了するまでにかかる時間が短縮される。
【0046】
制御部10は、ヘッド110の動作温度の最高温度がヘッド120の動作温度の最低温度よりも低くなるように制御する。制御部10は、ヘッド110の動作温度の最高温度がフラックスFXの活性化温度よりも低くなるように制御する。一例として、制御部10は、ヘッド110の動作温度を10℃以上120℃以下に制御するのが望ましく、20℃以上90℃以下に制御するのがさらに望ましく、20℃以上60℃以下に制御するのがさらに望ましい。また、制御部10は、ヘッド120の動作温度の最低温度がはんだの融点よりも低くなり且つ最高温度がはんだの融点よりも高くなるように制御する。ヘッド120の動作温度の最低温度は、例えば、フラックスFXの活性化温度よりも高くなるように制御されてもよい。一例として、制御部10は、ヘッド120の動作温度を100℃以上400℃以下に制御するのが望ましく、150℃以上350℃以下に制御するのがさらに望ましく、200℃以上300℃以下に制御するのがさらに望ましい。
【0047】
制御部10は、ディッピングヘッドとして機能させるヘッド110を実装処理可能な高温域に制御しないため、ヘッド110の加熱ツール113は省略されてもよい。また、制御部10は、ボンディングヘッドとして機能させるヘッド120を浸漬処理可能な低温域に制御しないため、ヘッド120の冷却ツール125は省略されてもよい。
【0048】
制御部10は、電子部品供給ユニット20,転写ユニット30及び実装ユニット40の少なくとも一つの動作状況に関する情報を取得し、当該情報に基いてマルチヘッドユニット100を制御してもよい。また、制御部10は、マルチヘッドユニット100の動作状況に基づいて、電子部品供給ユニット20、転写ユニット30及び実装ユニット40の少なくとも一つを制御してもよい。
【0049】
電子部品供給ユニット20では、ヘッド110に電子部品CPが供給される。電子部品供給ユニット20は、本発明に係る「電子部品供給部」の一例に相当する。電子部品供給ユニット20は、例えば、電子部品CPが収容されたトレイ21から電子部品CPを供給するトレイフィーダである。なお、電子部品供給ユニット20は、トレイ21を保持する保持部並びに、トレイ21を搬送するコンベア、直交ロボット又はロボットマニピュレータ、等をさらに備えてもよい。電子部品供給ユニット20は上記に限定されるものではなく、例えばテープフィーダであってもよい。
【0050】
転写ユニット30では、電子部品CPのバンプ電極EBにフラックスFXが転写される。転写ユニット30は、フラックスFXを貯留する転写ステージ31を備えている。フラックスFXは、転写ステージ31の浸漬エリア33に一様な深さで貯留される。なお、転写ユニット30は、フラックスFXを浸漬エリア33に供給するフラックスポッド、浸漬エリア33のフラックスFX表面を均すスキージ、フラックスFXの温度を調整する温度調整機構、並びに、浸漬エリア33のフラックスFXの転写処理前又は後の表面を撮像してバンプ電極EBへのフラックスFXの転写状況を解析する画像解析装置等をさらに備えてもよい。
【0051】
実装ユニット40では、基板BDに電子部品CPが実装される。実装ユニット40は、基板BDが載置される実装ステージ41を備えている。なお、実装ユニット40は、基板BDの温度を調整する温度調整機構、基板BDを覆うカバー、及び、当該カバー内の酸素をパージして電極の酸化を抑制するパージガス供給部等をさらに備えてもよい。
【0052】
電子部品実装装置1は、電子部品CPをヘッド110からヘッド120へと受け渡すために電子部品CPを一時的に保持する受渡用保持部、及び、フラックスFX転写後のバンプ電極EBを撮像してバンプ電極EBへのフラックスFXの転写状況を解析する画像解析装置等をさらに備えてもよい。
【0053】
次に、図2図7を参照しつつ、電子部品実装装置1を用いた電子部品実装方法の概要について説明する。図2は、第1実施形態に係る電子部品実装装置を用いた電子部品実装方法を概略的に示すフローチャートである。図3は、工程S130の様子を概略的に示す図である。図4は、工程S140の様子を概略的に示す図である。図5は、工程S160の様子を概略的に示す図である。図6は、工程S170の様子を概略的に示す図である。図7は、工程S130の様子を概略的に示す図である。以下の説明において、マルチヘッドユニット100の各構成要素は制御部10によって制御される。また、以下においては、ヘッド110をディッピングヘッドとして、ヘッド120をボンディングヘッドとして機能させる場合を説明するものとし、以下、ヘッド110を「ディッピングヘッド110」、ヘッド120を「ボンディングヘッド120」とも呼ぶこととする。
【0054】
まず、ディッピングヘッド110を25℃程度に制御する(S110)。ディッピングヘッド110の動作温度は、フラックスFXの活性化温度よりも低ければ25℃程度に限定されるものではなく、一例として室温程度に制御されてもよい。電子部品実装装置1の動作中、ディッピングヘッド110の温度はボンディングヘッド120の影響によって変動するが、冷却ツール115を用いて、望ましくは20℃以上90℃以下に制御され、さらに望ましくは20℃以上60℃以下に制御される。
【0055】
次に、ボンディングヘッド120を200℃程度に制御する(S120)。このとき、ボンディングヘッド120は、処理前温度に制御される。すなわち、ボンディングヘッド120は、動作温度の最低温度に制御されている。処理前温度は200℃程度に限定されるものではないが、バンプ電極EBに設けられたはんだの融点以下であって、転写ステージ31に貯留されたフラックスFXの気化又は劣化が抑制される温度範囲であれば、可能な限り高温に設定されるのが望ましい。後述するボンディングヘッド120による電子部品CPのピックアップ時に、ボンディングヘッド120がフラックスFXに接近する時間は浸漬処理の時間に比べて短い。このため、ボンディングヘッド120がディッピングヘッド110よりも高温の200℃程度であったとしても、ボンディングヘッド120によるフラックスFXの昇温は充分に抑制可能である。
【0056】
次に、ディッピングヘッド110によって電子部品CPをピックアップする(S130)。図3に示すように、鉛直方向においてディッピングヘッド110が電子部品CPに重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を移動させる。次に、昇降機構119を制御して保持ツール111を鉛直下向きに降下させ、保持ツール111を制御して電子部品CPをピックアップさせる。その後、昇降機構119を制御して、電子部品CPを保持した保持ツール111を鉛直上向きに上昇させる。
【0057】
次に、電子部品CPのバンプ電極EBをフラックスFXに浸漬させる(S140)。まず、鉛直方向においてディッピングヘッド110が浸漬エリア33に重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を水平方向に移動させる。次に、図4に示すように、昇降機構119を制御して保持ツール111を鉛直下向きに降下させ、電子部品CPのバンプ電極EBをフラックスFXに浸漬させる。
【0058】
次に、電子部品CPをディッピングヘッド110からリリースする(S150)。保持ツール111を制御して電子部品CPをリリースし、昇降機構119を制御して保持ツール111を鉛直上向きに上昇させる。
【0059】
次に、ボンディングヘッド120によって電子部品CPをピックアップする(S160)。まず、鉛直方向においてヘッド110が転写ステージ31上の電子部品CPに重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を水平方向に移動させる。次に、図5に示すように、昇降機構129を制御して保持ツール121を鉛直下向きに降下させ、保持ツール121を制御して電子部品CPをピックアップさせる。その後、昇降機構129を制御して、電子部品CPを保持した保持ツール121を鉛直上向きに上昇させる。
【0060】
次に、電子部品CPのバンプ電極EBを基板BDの電極パッドに押し当てる(S170)。まず、鉛直方向において電子部品CPのバンプ電極EBが基板BDの電極パッドに重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を水平方向に移動させる。次に、図4に示すように、昇降機構129を制御して保持ツール121を鉛直下向きに降下させ、電子部品CPのバンプ電極EBを基板BDの電極パッドに接触させる。工程S160から工程S170までに間に、バンプ電極EBに転写されたフラックスFXがヘッド120によって加熱され活性化する。
【0061】
次に、ボンディングヘッド120の温度を300℃程度に制御する(S180)。このとき、ボンディングヘッド120は、処理前温度から昇温され、処理温度に制御される。すなわち、ボンディングヘッド120は、動作温度の最高温度に制御されている。処理温度は300℃程度に限定されるものではなく、バンプ電極EBに設けられたはんだの融点以上であって、はんだが劣化しない温度範囲において適宜設定される。工程S180において、バンプ電極EBに設けられたはんだは溶融し、電子部品CPのバンプ電極EBと基板BDの電極パッドとがはんだ付けされる。
【0062】
次に、電子部品CPをボンディングヘッド120からリリースする(S190)。保持ツール121を制御して電子部品CPをリリースし、昇降機構129を制御して保持ツール121を鉛直上向きに上昇させる。
【0063】
その後、再び工程S120に戻り、ボンディングヘッド120を処理前温度に降温する。そして、図7に示すように、再び工程S130を実施する。この間に、転写ステージ31の浸漬エリア33にフラックスFXを追加し、スキージによって浸漬エリア33に供給されたフラックスFXの表面を均しておく。
【0064】
以上説明した態様において、制御部10は、複数のヘッド110,120を、電子部品CPのバンプ電極EBを転写ステージ31に貯留されたフラックスFXに浸漬させるディッピングヘッドと、実装ステージ41の上の基板BDに対してバンプ電極EBを介して電子部品CPを実装させるボンディングヘッドと、に分担して機能させるように構成されている。
【0065】
これによれば、実装処理のために高温となったヘッド120を、フラックスFXの気化又は劣化を抑制するために浸漬処理の前に冷却する必要がない。ヘッド120の冷却時間を省略することで、基板BDに対する電子部品CPの実装に要する時間を短縮することが可能となり、生産性が向上した電子部品実装装置1を提供することができる。
【0066】
一態様として、制御部10は、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御する。
【0067】
これによれば、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの制御すべき温度範囲が狭い。このため、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。
【0068】
一態様として、制御部10は、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がフラックスFXの活性化温度よりも低くなるよう制御し、ボンディングヘッドの動作中の最低温度がフラックスFXの活性化温度よりも高くなるように制御する。
【0069】
これによれば、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がフラックスFXの活性化温度よりも低いことで、ヘッド110によるフラックスFXの加熱を抑制し、フラックスFXの気化又は劣化を抑制することができる。また、ボンディングヘッドの動作中の最低温度がフラックスFXの活性化温度よりも高いことで、フラックスFXの活性化に要する時間を短縮することができる。
【0070】
一態様として、制御部10は、ディッピングヘッドの動作中の温度を20℃以上90℃以下に制御し、ボンディングヘッドの動作中の温度を150℃以上350℃以下に制御する。
【0071】
これによれば、ディッピングヘッドを20℃以上に制御することで、ヘッド110によるフラックスFXの冷却を抑制し、フラックスFXの粘度上昇を抑制することができる。ディッピングヘッドを90℃以下に制御することで、ヘッド110によるフラックスFXの加熱を抑制し、フラックスFXの気化又は劣化を抑制することができる。ボンディングヘッドを150℃以上に制御することで、フラックスFXの活性化に要する時間を短縮することができ、実装処理中にヘッド120の温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。ボンディングヘッドを350℃以下に制御することで、過剰加熱に起因したバンプ電極EBの劣化を抑制することができる。
【0072】
一態様として、ディッピングヘッドは冷却機構を有し、ボンディングヘッドは加熱機構と冷却機構とを有する。
【0073】
これによれば、ディッピングヘッドが冷却機構を有することで、ボンディングヘッドによって加熱されたディッピングヘッドの昇温を抑制することができる。したがって、浸漬処理におけるフラックスFXの気化又は劣化を抑制することができる。また、ボンディングヘッドが加熱機構と冷却機構とを有することで、実装済みの電子部品のはんだを熱によって劣化させることなく、実装する電子部品のはんだのみを迅速に溶融又は固化させることができる。
【0074】
一態様として、制御部10は、ボンディングヘッドによって電子部品CPを転写ステージ31から実装ステージ41へと搬送する。
【0075】
これによれば、転写ステージ31からピックアップして基板BDに実装するまで、電子部品CPを一貫してボンディングヘッドによって保持するため、電子部品CPの位置ずれによる不良品の発生を低減することができる。
【0076】
一態様として、電子部品実装装置1は、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドを連結する連結部材をさらに備え、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドは、実装ステージ41における電子部品CPが載置される載置面に沿った方向において連動するように構成されている。
【0077】
これによれば、複数のヘッドが別個独立に移動可能に構成された電子部品実装装置1に比べて、構成を簡略化することができる。したがって、メンテナンス性が向上し、装置の稼働時間を伸ばすことができる。
【0078】
一態様として、電子部品実装装置1は、ボンディングヘッドとディッピングヘッドとの熱交換を阻害する遮蔽部材140をさらに備える。
【0079】
これによれば、ディッピングヘッドの昇温を抑制することができる。したがって、ヘッドによるフラックスFXの加熱を抑制し、フラックスFXの気化又は劣化を抑制することができる。
【0080】
また、電子部品実装装置1を用いた電子部品実装方法は、複数のヘッド110,120のうちディッピングヘッドによって電子部品供給部から電子部品CPをピックアップすることと、ディッピングヘッドによって電子部品CPのバンプ電極EBを転写ステージ31に貯留されたフラックスFXに浸漬させることと、複数のヘッド110,120のうちボンディングヘッドによって電子部品CPを基板BDに実装することとを含む。
【0081】
これによれば、実装処理のために高温となったヘッド120を、フラックスFXの気化又は劣化を抑制するために浸漬処理の前に冷却する必要がない。ヘッド120の冷却時間を省略することで、基板BDに対する電子部品CPの実装に要する時間を短縮することが可能となり、生産性が向上した電子部品実装方法を提供することができる。
【0082】
一態様として、転写ステージ31においてディッピングヘッドから電子部品CPをリリースすることと、ボンディングヘッドによって転写ステージ31から電子部品CPをピックアップすることとをさらに含む。
【0083】
これによれば、転写ステージ31からピックアップして基板BDに実装するまで、電子部品CPを一貫してボンディングヘッドによって保持するため、電子部品CPの位置ずれによる不良品の発生を低減することができる。
【0084】
一態様として、制御部10によって、ディッピングヘッドの動作中の最高温度がボンディングヘッドの動作中の最低温度よりも低くなるように制御することをさらに含む。
【0085】
これによれば、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの制御すべき温度範囲が狭い。このため、ディッピングヘッド及びボンディングヘッドの温度を変化させるのに要する時間を短縮することができる。
【0086】
以下に、第1実施形態の変形例及び第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態に示した構成と同一又は類似の構成について同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、同様の構成による同様の作用効果については、逐次言及しない。
【0087】
<変形例>
まず、図8を参照しつつ、電子部品実装方法の一変形例について説明する。図8は、電子部品実装方法の変形例を概略的に示すフローチャートである。
【0088】
本変形例においては、ディッピングヘッド110を25℃程度に制御する工程S110の後、ボンディングヘッド120を300℃に制御する(S220)。すなわち、ボンディングヘッド120は、電子部品CPに接触する前からはんだの融点よりも高温の300℃程度に制御され、その後のはんだ付け中も一定の温度に制御される。次に、ディッピングヘッド110によって電子部品CPをピックアップする工程S130と、電子部品CPのバンプ電極EBをフラックスFXに浸漬させる工程S140とを実施する。
【0089】
次に、電子部品CPを基板BD上に載置する(S250)。まず、保持ツール111を制御して、バンプ電極EBがフラックスFXに浸漬したときに、ディッピングヘッド110が電子部品CPを保持した状態を維持させる。次に、昇降機構119を制御して、電子部品CPを保持した保持ツール111を鉛直上向きに上昇させる。次に、鉛直方向において電子部品CPのバンプ電極EBが基板BDの電極パッドに重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を水平方向に移動させる。次に、昇降機構119を制御して保持ツール111を鉛直下向きに降下させ、電子部品CPのバンプ電極EBを基板BDの電極パッドに接触させる。
【0090】
次に、電子部品CPをディッピングヘッド110からリリースする(S260)。保持ツール111を制御して電子部品CPをリリースし、昇降機構119を制御して保持ツール111を鉛直上向きに上昇させる。
【0091】
次に、電子部品CPのバンプ電極EBを基板BDの電極パッドに押し当てる(S270)。まず、鉛直方向においてボンディングヘッド120が実装ステージ41上の電子部品CPに重なるように、ヘッド移動機構150を制御してベース部材130を水平方向に移動させる。次に、昇降機構129を制御して保持ツール121を鉛直下向きに降下させ、保持ツール121に電子部品CPを接触させる。次に、保持ツール121を介して電子部品CPを加熱し、はんだを溶融させてバンプ電極EBと電極パッドとをはんだ付けする。
【0092】
次に、電子部品CPをボンディングヘッド120からリリースし(S190)、その後再び工程S220に戻る。
【0093】
このように、電子部品実装装置1において、制御部10は、ディッピングヘッド110によって電子部品CPを転写ステージ31から実装ステージ41へと搬送させてもよい。
【0094】
これによれば、転写ステージか31ら電子部品CPをピックアップする際に、ヘッド120によるフラックスFXの加熱を抑制し、フラックスFXの気化又は劣化を抑制することができる。
【0095】
なお、転写ステージ31から電子部品CPをピックアップするのがヘッド110であれば、制御部10がヘッド110によって電子部品CPを実装ステージ41に搬送させる構成でなくてもよい。例えば、電子部品実装装置1が電子部品CPを一時的に保持する受渡用保持部をさらに備える場合、制御部10は、ヘッド110によって電子部品CPを転写ステージ31から受渡用保持部へと搬送させた後、ヘッド110から電子部品CPをリリースさせてもよい。また、制御部10は、ヘッド120によって電子部品CPを受渡用保持部からピックアップし、実装ステージ41へと搬送してもよい。これによっても、本変形例と同様の効果が得られる。
【0096】
<第2実施形態>
次に、図9を参照しつつ、第2実施形態に係る電子部品実装装置2の構成について説明する。図9は、第2実施形態に係る電子部品実装装置の構成を概略的に示す図である。
【0097】
マルチヘッドユニット200において、複数のヘッド210,220は、互いに独立してヘッド移動機構150に接続されている。すなわち、複数のヘッド210,220は、水平方向において別個独立に移動可能に構成されている。
【0098】
これによれば、浸漬処理と実装処理とを平行して行うことができる。したがって、生産性をさらに向上させることができる。
【0099】
なお、マルチヘッドユニット200は、ヘッド移動機構150の代わりに、ヘッド210を水平方向に移動させるためのヘッド移動機構と、ヘッド220を水平方向に移動させるためのヘッド移動機構とを別々に有してもよい。
【0100】
以上説明したように、本願発明の一態様によれば、生産性が向上した電子部品実装装置及び電子部品実装方法を提供することができる。
【0101】
以上説明した実施形態は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、本願発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…電子部品実装装置
10…制御部
100…マルチヘッドユニット
110,120…ヘッド
111,121…保持ツール
113,123…加熱ツール
115,125…冷却ツール
119,129…昇降機構
130…ベース部材
140…遮蔽部材
150…ヘッド移動機構
20…電子部品供給ユニット
21…トレイ
30…転写ユニット
31…転写ステージ
33…浸漬エリア
40…実装ユニット
41…実装ステージ
FX…フラックス
CP…電子部品
EB…バンプ電極
BD…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9