(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】点鼻用器具及び点鼻剤
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
A61M11/00 D
(21)【出願番号】P 2024150385
(22)【出願日】2024-08-30
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-198974(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1064106(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1333565(KR,B1)
【文献】特表2001-518494(JP,A)
【文献】特表2012-515121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する合成樹脂で形成され、互いの種類が異なる第1の液剤と第2の液剤とがそれぞれ第1の室と第2の室に分離した状態で収容可能な容器本体と、
所定の操作により前記第1の室内の前記第1の液剤と前記第2の室内の前記第2の液剤とを混合させて混合液を生成する混合機構と、
前記容器本体の開口部側に嵌合固定されて前記混合機構で生成した混合液を噴射するノズル部と、を備え、
前記容器本体は、前記開口部を備え、前記開口部と反対側に貫通孔を有する第1容器部と、一端側が開口され、前記第1容器部の前記貫通孔を有する側に前記一端側を接合された第2容器部と、を備え、
前記第1容器部内に前記第1の室が画成されており、前記第2容器部内に前記第2の室が画成されており、
前記開口部は第1封止部材で封止されており、
前記第2容器部の前記一端側は第2封止部材で封止されており、
前記混合機構は、前記ノズル部に固定され、前記ノズル部の嵌合動作に伴って前記第1封止部材と前記第2封止部材とを突き破る突き刺し部材を備えていることを特徴とする点鼻用器具。
【請求項2】
柔軟性を有する合成樹脂で形成され、互いの種類が異なる第1の液剤と第2の液剤とがそれぞれ第1の室と第2の室に分離した状態で収容可能な容器本体と、
所定の操作により前記第1の室内の前記第1の液剤と前記第2の室内の前記第2の液剤とを混合させて混合液を生成する混合機構と、
前記容器本体の開口部側に嵌合固定されて前記混合機構で生成した混合液を噴射するノズル部と、を備え、
前記容器本体は、前記開口部を備え、前記開口部と反対側に貫通孔を有する第1容器部と、一端側が開口され、前記第1容器部の前記貫通孔を有する側に前記一端側を接合された第2容器部と、を備え、
前記第1容器部内に前記第1の室が画成されており、前記第2容器部内に前記第2の室が画成されており、
前記開口部は第1封止部材で封止されており、
前記第2容器部の前記一端側は第2封止部材で封止されており、
前記ノズル部には、嵌合動作に伴って前記第1封止部材を突き破る突起が設けられ、
前記混合機構は、前記第1容器部と前記第2容器部のいずれか一方を押圧することによる内圧上昇によって前記第2封止部材が剥離して前記第1容器部と前記第2容器部とが連通する構成を有していることを特徴とする点鼻用器具。
【請求項3】
前記ノズル部が、両鼻孔に対応した二股構造を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の点鼻用器具。
【請求項4】
前記ノズル部が、ノズルの延び方向と交差する方向に混合液を吐出する構成を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の点鼻用器具。
【請求項5】
前記ノズル部が屈曲可能でかつ屈曲した状態を維持できる構成を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の点鼻用器具。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の点鼻用器具と、前記点鼻用器具に収容してなる前記第1の液剤及び前記第2の液剤とを備える点鼻剤であって、
前記第1の液剤が生理食塩水であり、前記第2の液剤が幹細胞上清液であることを特徴とする点鼻剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔の粘膜に美容液等の液剤を投与するための点鼻用器具及びそれを備えた点鼻剤に関する。
【背景技術】
【0002】
美容分野では、シワやシミの予防及び改善、肌細胞のターンオーバーを促して肌の表面を整える効果を得ることなどを目的として、サイトカインやエクソソームを含む幹細胞培養上清液を用いた療法が行われている。具体的には、バイアル瓶に収容された幹細胞培養上清液を注射器で抽出して生理食塩水等に混ぜた溶液を経皮投与したり、点滴投与するようになっている。
【0003】
ここで、美容液や薬液等の液剤(以下、「液剤」あるいは「点鼻剤」等ということがある。)を体内に注入(投与あるいは摂取)する場合、経皮投与や注射に比べて粘膜吸収による方が効率的であると考えられ、特に、鼻腔の粘膜に液剤を投与することが簡単にできれば薬剤の体内への接種の効率が非常に良いと思われる。
【0004】
また、幹細胞培養上清液を生理食塩水等に混ぜた美容液を予め作っておくと、経時的にサイトカイン等の機能が消失することも知られており、使用する直前に幹細胞培養上清液を注射器で抽出して生理食塩水等に混ぜることが行われている。しかしながら、使用直前に注射器を使って混ぜることは非常に手間が掛かり、面倒である。
【0005】
この点に関して、特許文献1には、液体薬剤と固体薬剤とを分離収容し、使用時に簡単な操作で混合して混合薬液を作る使用時溶解スプレー容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の構成は、注射器を用いずに簡単な操作で2液を混合する鼻腔対応の投与構成を示唆し得るが、一般的に知られている花粉症対応の薬液スプレー等と同様にポンプ機構を採用している。このため、両手で押圧操作しなければならず、面倒であり、構成の複雑化も避けられなかった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポンプ機構を採用しない比較的に簡易な構成でありながら、片手で簡単に美容液等の液剤を鼻腔の粘膜に投与することができる点鼻用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の点鼻用器具(2A、2B)は、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、互いの種類が異なる第1の液剤(S)と第2の液剤(K)とがそれぞれ第1の室と第2の室とに分離した状態で収容可能な容器本体(4)と、所定の操作により前記第1の室内の前記第1の液剤(S)と前記第2の室内の前記第2の液剤(K)とを混合させて混合液(M)を生成する混合機構(20)と、容器本体(4)の開口部(8a)側に嵌合固定されて混合機構(20)で生成した混合液(M)を噴射するノズル部(6)と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る点鼻用器具によれば、1つのユニット内に分離収容された互いの種類が異なる第1の液剤と第2の液剤とを外部器具を使用せずに混合できるので、経時的劣化が抑制された新鮮な美容液等の混合液を容器本体の柔軟性を利用した片手操作で吐出して鼻腔粘膜に投与でき、使用性の向上を図ることができる。また、ポンプ機構を採用していないために、構成の簡易化、製造コストの低減も図ることができる。
【0011】
また、上記の点鼻用器具(2A)では、容器本体(4)は、開口部(8a)を備え、開口部(8a)と反対側に貫通孔(8c)を有する第1容器部(8)と、一端側が開口され、第1容器部(8)の貫通孔(8c)を有する側に一端側を接合された第2容器部(10)と、を備え、第1容器部(8)内に第1の室が画成されており、第2容器部(10)内に第2の室が画成されており、開口部(8a)は第1封止部材(14)で封止されており、第2容器部(10)の一端側は第2封止部材(12)で封止されており、混合機構(20)は、ノズル部(6)に固定され、ノズル部(6)の嵌合動作に伴って第1封止部材(14)と第2封止部材(12)とを突き破る突き刺し部材(24)を備えている構成としてもよい。これによれば、第1封止部材と第2封止部材とをノズル部の嵌合動作に伴って容易かつ確実に第1容器部と第2容器部とを連通させることができ、簡単な操作で混合液を作ることができる。
【0012】
また、上記の点鼻用器具(2B)では、容器本体(30)は、開口部(36a)を備え、開口部(36a)と反対側に貫通孔(36c)を有する第1容器部(36)と、一端側が開口され、第1容器部(36)の貫通孔(36c)を有する側に一端側を接合された第2容器部(38)と、を備え、開口部(36a)は第1封止部材(42)で封止されており、第2容器部(38)の一端側は第2封止部材(40)で封止されており、ノズル部(32)には、嵌合動作に伴って第1封止部材(42)を突き破る突起(44)が設けられ、混合機構(34)は、第1容器部(36)と第2容器部(38)のいずれか一方を押圧することによる内圧上昇によって第2封止部材(40)が剥離して第1容器部(36)と第2容器部(38)とが連通する構成を有していてもよい。これによれば、混合のための操作をより容易化できる。
【0013】
また、上記の点鼻用器具(2A、2B)では、ノズル部(6、32)が、両鼻孔に対応した二股構造を有している構成としてもよい。これによれば、両鼻腔の粘膜への美容液の投与を同時にでき、使用性の更なる向上を図ることができる。
【0014】
また、上記の点鼻用器具(2A、2B)では、ノズル部(6、32)が、ノズルの延び方向と交差する方向に混合液(美容液)を吐出する構成を有しているようにしてもよい。これによれば、鼻孔の入り口から効果的に鼻腔の粘膜に美容液を投与できる。
【0015】
また、上記の点鼻用器具(2A、2B)では、ノズル部(6、32)が屈曲可能でかつ屈曲した状態を維持できる構成を有しているようにしてもよい。これによれば、混合液が少なくなった場合でも点鼻用器具を逆さまにして使うことにより混合液を無駄に残すことなく使い切ることができる。
【0016】
また、本発明の点鼻剤は、上記構成の点鼻用器具(2A、2B)と、点鼻用器具(2A、2B)に収容してなる第1の液剤及び第2の液剤とを備える点鼻剤であって、第1の液剤が生理食塩水(S)であり、第2の液剤が幹細胞上清液(K)である構成としてもよい。これによれば、美容効果が高いとされる混合液を容易に作製して鼻腔の粘膜から摂取することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプ機構を有しないことによる構成の簡易化を図ることができるとともに、片手で簡単に使用でき、美容分野における利用拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る点鼻用器具の使用状態における正面図である。
【
図2】
図1で示した点鼻用器具の断面表示の分解図である。
【
図4】
図1で示した点鼻用器具の要部の形状を示す図で、(a)は第1容器部の底面図、(b)は第2容器部の上面図である。
【
図6】
図1で示した点鼻用器具の第1容器部と第2容器部とが連通した状態を示す概要断面図である。
【
図7】
図1で示した点鼻用器具における混合液が少なくなった場合の使用方法を示す概要断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る点鼻用器具の断面表示の分解図である。
【
図9】
図8で示した点鼻用器具における容器本体の使用前の一体構成を示す概要断面図である。
【
図10】
図9で示した状態から容器本体を逆さまにして第2容器部を取り外し、補助栓に代えた状態の概要断面図である。
【
図11】
図8で示した点鼻用器具の使用状態を示す概要断面図である。
【
図12】
図8で示した点鼻用器具における混合液が少なくなった場合の使用方法を示す概要断面図である。
【
図13】ノズル部の変形例を示す概要断面図である。
【
図14】ノズル部の他の変形例を示す概要断面図である。
【
図15】ノズル部の更に他の変形例を示す概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る点鼻用器具2Aは、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、後述する点鼻剤と液剤とが分離した状態で収容された容器本体4と、容器本体4の開口部側に嵌合固定されるノズル部6と、所定の操作により点鼻剤と液剤とを混合させる後述の混合機構と、を備えている。容器本体4は、図中上側に位置する第1容器部8と、下側に位置する第2容器部10と、を備えている。第1容器部8内には後述する生理食塩水S等の第1の液剤を収容する第1の室が画成されており、第2容器部10内には後述する幹細胞上清液K等の第2の液剤を収容する第2の室が画成されている。また、ここでいう「柔軟性」とは、指で摘まんで容易に変形でき、且つ、弾性により元の形状に戻り得る程度を指す。
【0021】
図2に示すように、第1容器部8は開口部8aを備え、開口部8aと反対側の底面8bには貫通孔8cを有している。底面8bには第2容器部10を密接に収容するための収容凹部8dが連設されている。開口部8aの外面にはノズル部6が嵌合する雄ネジ8eが形成されている。第2容器部10の一端(上端)10aには貫通孔8cと同様の貫通孔10bが形成されて開口されており、点鼻剤としての幹細胞上清液Kが収容されて第2封止部材12で経時劣化しないように封止(密封)されている。
図3に示すように、第1容器部8は楕円形状の断面を有しており、両側面を指で摘んで押圧することにより容易に第1容器部8内の圧力を高められるようになっている。第2容器部10においても同様である。
【0022】
図4(a)は第1容器部8の底面を、
図4(b)は第2容器部10の上面を示している。
図2に示すように、幹細胞上清液Kを封入した第2容器部10の上端部を第1容器部8の収容凹部8dに密接に収容して、フランジ状の底面8bに接着すると、第1容器部8の底面8bは第2容器部10で封止された状態となる。すなわち、第2容器部10は第1容器部8の貫通孔8cを有する側に一端側(上端側)を接合されている。これにより、第1容器部8と第2容器部10は完全に区画された状態となる。この状態で第1容器部8に第1の液剤としての生理食塩水Sが収容され、その後開口部8aの上端が第1封止部材14で封止(密封)される。第1封止部材14、第2封止部材12としては、アルミ箔等を採用することができる。
【0023】
図2に示すように、ノズル部6は、上面が塞がれた円筒状の嵌合部16と、先端に複数の細孔18aを有するノズル本体18とを有している。ノズル本体18は屈曲可能な素材で形成されており、屈曲した状態を維持できる構成を有している(後述)。嵌合部16の上面にはノズル本体18に連通する複数の小孔16aが形成され、内周には第1容器部8の開口部8aの雄ネジ8eに螺合する雌ネジ16bが形成されている。ノズル部6には、容器本体4の開口部8aに対するノズル部6の嵌合動作(所定の操作)により幹細胞上清液Kと生理食塩水Sとを混合させて混合液を生成する混合機構20が設けられている。
【0024】
混合機構20は、嵌合部16の上面内方の中央部に一体に形成されたネジ筒22と、ノズル部6に固定され、ノズル部6の嵌合動作に伴って第1封止部材14と第2封止部材12とを突き破る突き刺し部材24とを備えている。突き刺し部材24は、ロッド26と、ロッド26の下端に形成された突き矢28とを有している。ロッド26の上端部にはネジ筒22に固定するための雄ネジ26aが形成され、突き矢28は、
図5にも示すように、二等辺三角形状の矢板28aを下端側が尖るように複数枚(ここでは4枚)放射状に固定した構成を有している。
【0025】
突き刺し部材24をノズル部6に固定した状態で、ノズル部6を第1容器部8の開口部8aに嵌合すると、
図6に示すように、まず突き刺し部材24の突き矢28が第1封止部材14を突き破って第1容器部8とノズル部6とを連通させ、その後第2封止部材12を突き破る。第2封止部材12が突き破られることにより、第1容器部8と第2容器部10とが連通し、生理食塩水Sと幹細胞上清液Kとが混合可能となる。ノズル部6を開口部8aに嵌合した状態で、突き矢28が第2封止部材12の厚み方向途中で止まるようにロッド26の長さが設定されている。
図6に示す状態で容器本体4を上下に振ったり、第1容器部8及び/又は第2容器部10を摘まんだり、あるいは容器本体4を逆さまにすれば混合が促進されて混合液Mが形成される。
【0026】
突き矢28としては上記の形状に限定されず、例えば円柱状の下端を尖らせ、円柱内部に上下方向に貫通する通液孔を複数形成したものでもよい。
【0027】
図6に示す姿勢の状態で、ノズル本体18の先端部を鼻孔に入れ、あるいは鼻孔に近付け、第1容器部8または第2容器部10を指で摘まんで内部圧を高めると、混合液Mが上昇してノズル本体18の先端部から霧状または液滴状に吐出され、鼻腔内の粘膜に投与される。本実施形態ではこのように、容器本体4の材質的変形性を利用してポンプ機能の一部を代替している。これにより、混合液Mを目薬の如く片手で容易に鼻腔の粘膜に投与することができ、従来の点鼻用器具に比べて使用性を大幅に向上させることができる。また、幹細胞上清液Kは使用直前に開封されて生理食塩水Sと混合されるので、経時的に劣化してサイトカイン等の機能が消失することを回避でき、美容効果が低減することを効果的に抑制できる。
【0028】
ポンプ機構を有しない、すなわち吸い上げ機能を有しないが故に、混合液Mの量が少なくなってくると第1容器部8または第2容器部10の摘まみ操作だけでは押し出すことができない。この問題を解消するために、上述のようにノズル本体18に屈曲性を付与している。混合液Mの量が減ってきた場合には、
図7に示すように、ノズル本体18を曲げて点鼻用器具2Aを逆さまにした状態で使用する。このようにすると、片手で投与操作ができることに変わりはなく、混合液Mを残らず使い切ることができる。ノズル本体18の曲げ角度を適切にすることにより、容器本体4側を顔に接触させることなくノズル本体18を鼻孔に支障なく挿入したり近付けたりすることができる。ノズル本体18の屈曲構成としては、蛇腹構成を採用してもよい。
【0029】
[第2実施形態]
図8乃至
図12を参照して第2実施形態を説明する。第1実施形態と同一部分又は同一と見做せる部分は同一符号で示し、既にした構成上及び機能上の説明は適宜省略する。
【0030】
図8に示すように、本実施形態に係る点鼻用器具2Bは、柔軟性を有する合成樹脂で形成され、第1の液剤と第2の液剤とが分離した状態で収容された容器本体30と、容器本体30の開口部側に嵌合固定されるノズル部32と、所定の操作により第1の液剤と第2の液剤とを混合させて混合液を生成する混合機構34と、を備えている。
図8は容器本体30をユニット化する前の状態を示している。
【0031】
容器本体30は、開口部36aを備え、開口部36aと反対側の厚肉の底面36bにネジ孔としての貫通孔36cを有する第1容器部36と、一端側が開口され、第1容器部36の貫通孔36cを有する側に一端側を接合された第2容器部38と、を備えている。開口部36aの外面にはノズル部32が嵌合する雄ネジ36dが形成されている。第2容器部38の一端側には開口部38aが形成され、開口部38aの外面には貫通孔36cに螺合する雄ネジ38bが形成されている。開口部38aを貫通孔36cに螺合することにより第2容器部38は第1容器部36に気密状態に接合される。第2容器部38には開口部38aから第2の液剤としての幹細胞上清液Kを収容され、一端側は第2封止部材40で封止されている。
【0032】
開口部38aの上端が第2封止部材40で封止された第2容器部38を第1容器部36に接合(螺合)することにより、第1容器部36と第2容器部38は完全に区画された状態となる。この状態で第1容器部36に第1の液剤としての生理食塩水Sが収容され、その後開口部36aの上端が第1封止部材42で封止される。第1封止部材42、第2封止部材40としては、アルミ箔等を採用することができる。
【0033】
ノズル部32の嵌合部16の上端中央部には、嵌合動作に伴って第1封止部材42を突き破る円筒状の突起44が設けられている。突起44は下端を斜めにカットした形状を有しており、その内孔44aはノズル本体18に連通している。本実施形態では嵌合部16の上面には小孔16aは形成されていない。
【0034】
混合機構34は、第2容器部38を押圧することによる内圧上昇によって第2封止部材40が剥離または破壊されて第1容器部36と第2容器部38とが連通する構成を有している。すなわち、混合機構34は、摘まみ変形可能な第2容器部38と第2封止部材40と、を備えている。第2封止部材40が剥離または破壊されると、
図9に示すように、第2容器部38に収容された幹細胞上清液Kが第1容器部36内に流入し、第1容器部36に収容された生理食塩水Sと混合される。その後、
図10に示すように、容器本体30を逆さにして第2容器部38を取り外し、貫通孔36cに補助栓46を螺合して塞ぐ。勿論、第2容器部38を取り外さずにそのままにしてもよいが、補助栓46に代えることによりその後の使用形状が嵩張らずにコンパクトとなる。
【0035】
図11に示すように、混合液Mが収容された第1容器部36の開口部36aにノズル部32を嵌合(螺合)すると、嵌合動作に伴って突起44が第1封止部材42を突き破り、第1容器部36とノズル部32とが連通する。
図11に示す姿勢の状態で、ノズル本体18の先端部を鼻孔に入れ、第1容器部36を指で摘まんで内部圧を高めると、混合液Mが上昇してノズル本体18の先端部から吐出され、鼻腔内の粘膜に投与される。混合液Mの量が減ってきた場合には、
図12に示すように、第1実施形態と同様にノズル本体18を曲げて点鼻用器具2Bを逆さまにした状態で使用する。本実施形態では第2容器部38を摘んで第2封止部材40を剥離または破壊する構成としたが、第1容器部36を摘まんで第2封止部材40を剥離または破壊する構成としてもよい。この場合、第1封止部材42の接着強度は第2封止部材40の接着強度よりも大きく設定される。
【0036】
図13は、ノズル部32の変形例を示している。ノズル部32のノズル本体18Aの先端部は両鼻孔に対応した二股構造を有している。すなわち、ノズル本体18Aの先端部は18b、18cの二股に分離しており、各先端部18b、18cに細孔18aが形成されている。このようにすれば両鼻腔の粘膜に混合液Mを同時に投与でき、使用効率を高めることができる。第1実施形態のノズル部6においても同様に実施することができる。また、二股構造のものと単一構造のノズル部32を揃えておき、それらを選択的に交換可能な構成としてもよい。
【0037】
図14は、ノズル部32の他の変形例を示している。ノズル部32のノズル本体18Bは、ノズルの延び方向と交差(直交)する方向に混合液Mを吐出する構成を有している。すなわち、細孔18aが先端部ではなく両サイドに形成されている。このようにすれば、鼻孔の入り口から鼻腔の粘膜に効果的に混合液Mを投与することができる。第1実施形態のノズル部6においても同様に実施することができる。本例においても先端吐出タイプと横吐出タイプのノズル部32を揃えておき、選択的に交換可能な構成としてもよい。
【0038】
図15は、ノズル部32の更に他の変形例を示している。ノズル部32のノズル本体18Bの先端部は、
図15に示すように球形状とし、その半分より上側の部分に放射状に複数の細孔18aを設けることも可能である。なお、
図15に示す態様のノズル本体18Bを採用すれば、鼻腔の入口の直下にノズル本体18Bの先端部(球形状の部分)を配置して、その状態で混合液Mを吐出すれば、複数の細孔18aから上方へ吐出した混合液Mが鼻腔内の粘膜に投与されるようになる。これにより、ノズル本体18Bの先端部を鼻腔内に挿入することなく混合液Mを鼻腔内の粘膜に投与することが可能となる。
【0039】
以上の通り、各実施形態では、柔軟性を有する合成樹脂で形成された容器本体の変形機能でポンプ機能の一部を代替するようにしたので、構成の簡易化、ひいては製造コストの低減を図ることができるとともに、目薬等と同様の感覚で片手で容易に使用することができ、使用性の向上を図ることができる。これにより、美容分野における利用拡大に寄与することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記各実施形態では2種類の液剤を混合する2液混合構成を例示したが、3種類以上の液剤(液体)を混合する構成とすることもできる。
【0041】
また、上記実施形態では、第1容器部8の第1の室に収容する第1の液剤が生理食塩水Sであり、第2容器部10の第2の室に収容する第2の液剤が幹細胞上清液Kである場合を示したが、第1の液剤及び第2の液剤はこれらに限定されず、他の液剤であってもよい。すなわち、本発明の点美容器具で鼻腔等の粘膜に投与する混合液及びその混合前の液剤は、化粧液や美容液などの他、薬剤などの薬液であってもよい。
【0042】
また、第1実施形態では第2容器部10に粉末状の剤を収容する構成としてもよい。その場合、混合機構20で第2容器部10内の粉末状の剤が第1容器部8内の液剤に混ぜ合わされて液剤内に溶解するようにできる。また、上記各実施形態では鼻腔の粘膜を投与対象としたが、耳孔等を投与対象としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2A、2B 点鼻用器具
4、30 容器本体
6、32 ノズル部
8、36 第1容器部(第1の室)
8a、36a 開口部
8c、36c 貫通孔
10、38 第2容器部(第2の室)
12、40 第2封止部材
14、42 第1封止部材
20、34 混合機構
24 突き刺し部材
44 突起
K 点鼻剤としての幹細胞上清液(第2の液剤)
S 液剤としての生理食塩水(第1の液剤)
【要約】
【課題】ポンプ機構を採用しない簡易な構成で、片手で簡単に鼻腔の粘膜に液剤を投与できる点鼻用器具を提供する。
【解決手段】点鼻用器具2Aは、柔軟性を有する容器本体4と、ノズル部6と、ノズル部6に取り付けられる突き刺し部材24と、を備えている。容器本体4は、第1容器部8と、第2容器部10を備えている。第2容器部10には幹細胞上清液Kが収容されて第2封止部材12で封止されている。第2容器部10を第1容器部8の底面側に接合した後に第1容器部8には生理食塩水Sが収容されて第1封止部材14で封止されている。ノズル部6を開口部8aに嵌合すると、突き刺し部材24が第1封止部材14、第2封止部材12を突き破って第1容器部8と第2容器部10とが連通して2液の混合がなされる。第1容器部8を指で押圧することにより混合液がノズル部6から吐出される。
【選択図】
図2