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▶ 村田 広志の特許一覧

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  • 特許-クッション 図1
  • 特許-クッション 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
A47C27/00 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024164934
(22)【出願日】2024-09-24
【審査請求日】2024-09-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524354236
【氏名又は名称】村田 広志
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】村田 広志
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-253096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00
A47C 9/00
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視して弧状に成形され、使用者が着座する際の座面を有するクッション本体と、
補助クッションが取り付けられた2つのベルト部材と、を備え、
前記クッション本体の中心線を対称軸として2つの前記ベルト部材を前記クッション本体に巻き付けると、2つの前記補助クッションは前記クッション本体に対して、平面視して着座した使用者の前方側に向かうにつれ2つの前記補助クッションの間隔が狭まる「逆ハの字」状に装着される、クッション。
【請求項2】
前記クッション本体に装着された2つの補助クッションは、着座した状態における使用者の座骨に対応する位置にある、請求項1に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座して使用するクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
出産後の女性を対象とした様々なクッションが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1には、授乳時には腰部の周囲に装着して使用され、背面側に開口部が設けられたドーナツ型の授乳用クッションが開示されている。この授乳用クッションによれば、授乳時に乳児の姿勢を安定した状態に保ちながら、授乳する女性への負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6061168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、女性は一般的に妊娠期、産褥期(妊娠や出産によって生じた母体の変化が妊娠前の状態に戻るまでの期間)に身体の不調、特に痛みを感じることが多いとされている。その原因のひとつとして、「骨盤後傾位」が理学療法分野、産婦人科分野において周知の事実として挙げられている。
【0005】
骨盤後傾位とは、骨盤が後方に傾いた状態のことを指す。骨盤は通常、やや前方に傾いているのが自然な姿勢とされているが、骨盤後傾位はその逆である後方に傾いているため、体全体の姿勢に悪影響を及ぼすといわれている。この骨盤後傾位を引き起こす要因のひとつとして、授乳姿勢があるとされている。しかしながら、特許文献1を含む従来技術は乳児の姿勢の安定化を目的とした腰回り装着型のクッションであるため、授乳姿勢の観点を含め、妊娠期、産褥期における女性側の身体の不調を緩和するようなクッションが望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、使用者の身体の不調を緩和することができるクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のクッションは、平面視して弧状に成形され、使用者が着座する際の座面を有するクッション本体と、補助クッションが取り付けられた2つのベルト部材と、を備え、前記クッション本体の中心線を対称軸として2つの前記ベルト部材を前記クッション本体に巻き付けると、2つの前記補助クッションは前記クッション本体に対して、平面視して着座した使用者の前方側に向かうにつれ2つの前記補助クッションの間隔が狭まる「逆ハの字」状に装着される
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用者の身体の不調を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態におけるクッションの(a)斜視図(b)平面図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるクッションの分解斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態におけるクッションの使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1,2を参照して、本実施の形態におけるクッションを説明する。クッション1はクッション本体2と、2つの補助クッション3A,3Bと、2つの補助クッション3A,3Bの夫々が取り付けられた2つのベルト部材4A,4Bを含んで構成される。
【0011】
クッション本体2は所定の厚み(図2に示す符号s1)を有し、その内部には綿などの天然素材、ポリウレタンなどの合成樹脂、ゴムなどの弾性材料などが充填されている。クッション本体2の上面20は、使用者P(図3)が着座する際の座面となっている。クッション1の主な使用者Pが産後の女性であることに着目すると、着座時にクッション本体2があまり沈まない反発力の強い高反発ウレタンフォームが望ましい。
【0012】
クッション本体2の厚みs1(図2)としては、7cm程度が好ましい。その理由について説明すると、授乳は床上、椅子、ソファ、ベッド等、様々な場所で行われる。特に産後3ヵ月程度の期間は床上で授乳する機会が多く、当該期間は出産後の女性の体幹筋が弱くなっている事も相まって身体の不調が表れやすい傾向がある。床上での授乳は図3に示す「あぐら姿勢」をとることが多いが、仮にフラットな床面で「あぐら姿勢」をとると、膝の位置より座骨の位置が低い位置になるので、股関節が深く曲がり骨盤が後ろに倒れ(後傾)、腰が丸まってしまう。それに伴って背骨が丸まり、頭が前方頭位(肩より頭が前に位置する)となることで身体の不調が表れる。
【0013】
そこで、クッション本体2の厚みs1を7cm程度にすることで、使用者Pが着座した状態において、膝と座骨の高低差がほぼ無くなるとともに、股関節が深く曲がることが抑制されるので骨盤が垂直方向に起き上がり姿勢を保つことが可能となる。そして、骨盤が起き上ることで座骨により荷重(骨支持)されることとなり、骨盤底筋群や腹部筋の活動が働きやすくなるという効果が期待できる。
【0014】
クッション本体2は、異なる硬度の素材を上下方向に積層した構造でもよい。例えば、クッション本体2を三層構造とする場合、上位層と下位層の間に、これらよりも硬度が小さな柔らかいスポンジを中間層として挟み込むことで、使用者Pが重心移動を行い易くなる効果が期待できる。
【0015】
図1(b)に示すように、クッション本体2は平面視して、円周の一部を切り取った「弧」状に成形されている。より詳細には、クッション本体2は、平面視して緩やかに屈曲した屈曲部2Aと、屈曲部2Aの両端の夫々から延出して連続的に設けられた第1の延出部2B、第2の延出部2Cと、を含んで構成される。屈曲部2Aは使用者Pの臀部、第1の延出部2Bは使用者Pの左太もも、第2の延出部2Cは使用者Pの右太ももを支持する(図3)。クッション本体2は、使用者Pが着座した状態において、使用者Pの前方側に平面視して凹状の窪み5を有する。窪み5を有することで、使用者Pが「あぐら姿勢」をとっても両足が窪み5の範囲に位置してクッション1に干渉しないようになっている。
【0016】
次に補助クッション3A,3Bについて説明する。図1,2において、補助クッション3A,3Bは一の方向に伸び所定の厚みs2(図2)を有する。補助クッション3A,3Bの内部に充填される素材はクッション本体2と同様の素材を選択することができるが、クッション本体2よりも硬度が小さい、すなわちクッション本体2よりも柔らかいものが好ましい。
【0017】
図1(b)に示すように、補助クッション3A,3Bの長手方向の長さ寸法tは、クッション本体2の幅方向(長さ寸法tに沿った方向)の長さ寸法と略同一、若しくは少なくとも長さ寸法t以下に設定されている。すなわち、補助クッション3A,3Bは、平面視してクッション本体2の上面20に収まるサイズとなっている。なお、補助クッション3A,3Bの長さ寸法tはクッション本体2の幅方向の長さ寸法より大きくてもよい。
【0018】
補助クッション3A,3Bの厚みs2は、クッション本体2の厚みs1よりも薄く設定されている。なお、補助クッション3A,3Bの厚みs2はクッション本体2厚みs1の1/3以下であることが好ましいが、必ずしも厚みをそのように設定しなくてもよい。このように、補助クッション3A,3Bはクッション本体2よりも硬度が小さく、厚みが薄い。
【0019】
ベルト部材4A,4Bは、補助クッション3A,3Bをクッション本体2に対して固定するために用いられる。図2において、ベルト部材4A,4Bの表面の一端側には係合手段としての面ファスナ(雄)6が設けられ、裏面の他端側には同じく係合手段としての面ファスナ(雌)7が設けられている。補助クッション3A,3Bは、ベルト部材4A,4Bの略中央の位置に裁縫などによって取り付けられている。
【0020】
クッション本体2の幅方向(図1(b)に示す矢印a)からベルト4a,4Bを巻回して面ファスナ(雄)6と面ファスナ(雌)7を係合させることで、補助クッション3A,3Bはクッション本体2の上面20側に固定される(図1)。
【0021】
クッション本体2は上述のとおり、平面視して「弧」状に成形されている。したがって、補助クッション3A,3Bをクッション本体2の中心線C(図1(b)を軸としてクッション本体2に対象に装着した場合、補助クッション3A,3Bは着座した使用者Pの前方側に向かうにつれ両者の間隔が狭まる「逆ハの字」状に配置される。すなわち、補助クッション3A,3Bは、使用者Pの骨盤の一部である、臀部の下にある2つ座骨(座骨結節)に対応する位置に配置されることとなる。
【0022】
なお、座骨の位置は使用者Pの個体差によって異なるので、補助クッション3A,3Bをクッション本体2に対して任意の位置にベルト部材4A,4Bを介して装着することで、補助クッション3A,3Bと座骨の位置合わせを行うことができる。ベルト部材4A,4Bは、クッション本体2に対して補助クッション3A,3Bを固定する位置を調整する調整手段としても機能する。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態におけるクッション1は、使用者Pが着座する際の座面を有するクッション本体2と、クッション本体2に着脱自在な2つの補助クッション3A,3Bと、を備える。また、2つの補助クッション3A,3Bは、平面視して着座した使用者Pの前方側に向かうにつれ2つの補助クッション3A,3Bの間隔が狭まる「逆ハの字」状となるようにクッション本体2の座面上に装着される。また、クッション本体2に装着された2つの補助クッション3A,3Bは、着座した状態における使用者Pの座骨に対応する位置にある。
【0024】
このように、着座した状態における使用者Pの座骨に対応する位置に補助クッション3A,3Bを装着(固定)することで、補助クッション3A,3Bが座骨への感覚刺激となって座骨支持が容易になるとともに、腰部への負担が軽減される効果が期待できる。また、補助クッション3A,3Bで座骨を下受けすることで感覚入力がされて骨盤周囲の筋肉が働くという効果が期待できる。総じて、骨盤後傾位を抑制して、特に妊娠期、産褥期における使用者Pである女性の身体の不調緩和することができる。
【0025】
本発明のクッションは本実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。例えば、クッション本体の上面に凹部を設け、この凹部に補助クッションを嵌め合わせるような構造でもよい。但し、座骨の位置は個人差があるので、本実施の形態のように、クッション本体に対して補助クッションを固定する位置を調整できるような構造の方が望ましい。また、係合手段としては面ファスナでなく、バックルを代わりに用いてもよい。さらに、クッションは広く一般の女性のみならず、男性が使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
使用者の身体の不調を緩和することができるクッションを提供する。
【符号の説明】
【0027】
1 クッション
2 クッション本体
3A,3B 補助クッション

【要約】
【課題】使用者の身体の不調を緩和することができるクッションを提供する。
【解決手段】本開示のクッションは、使用者が着座する際の座面を有するクッション本体2と、クッション本体2に着脱自在な2つの補助クッション3A,3Bと、を備え、2つの補助クッション3A,3Bは、平面視して着座した使用者の前方側に向かうにつれ2つの補助クッション3A,3Bの間隔が狭まる「逆ハの字」状となるようにクッション本体2の座面上に装着される。
【選択図】図1

図1
図2
図3