(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20250131BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20250131BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/74 B
B60N2/56
(21)【出願番号】P 2019507622
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2018010368
(87)【国際公開番号】W WO2018173938
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2017056955
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】大隈 敬
(72)【発明者】
【氏名】末満 康一
(72)【発明者】
【氏名】太田 健人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 伸吾
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】横溝 顕範
【審判官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179303(JP,A)
【文献】特開2011-142727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能なシートクッションと、前記シートクッションの後端部に取り付けられたシートバックと、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた電気部品と、を備えた車両用シートであって、
前記シートバックが、立った状態から、前記シートクッションの上面に重なるように倒れた状態に傾動可能であり、
立てた状態の前記シートバックの下端部には、係止部材が設けられ、
前記電気部品に電力を供給するための電線が、前記係止部材によって前記シートバックの下端部に係止されており、
前記シートバックは、左右に延びるよう線材によって形成される接触規制部を備えており、前記シートバックの骨格となるシートバックフレームが、前記シートバックを立てた状態において上下左右に板状に広がるように設けられたパネル材を有し、
前記シートバックが立った状態において、前記接触規制部が前記シートバックフレームの下端から下方に離れて前記係止部材の後方に位置するとともに、前記接触規制部が前記係止部
材の下端と同じ高さに位置するとともに、
前記シートバックが前記シートクッションの上面に重なるように倒れた状態において、前記接触規制部が前記係止部材の上に前記係止部材の後端と並ぶ箇所に位置し、
左右方向における前記係止部材の配置は、前記パネル材の側辺よりも前記パネル材の中央部側であり、
前記電線が前記係止部材によって前記シートバックの下端部に係止される左右方向における位置は、前記パネル材の側辺よりも前記パネル材の中央部側であることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記係止部材は、前記シートバックに対して着脱自在に取り付けられるクリップであることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックは、その横幅方向に並ぶ一対の支持部を有しており、
前記接触規制部は、前記シートバックの横幅方向に延びるように設けられるとともに、両端が前記一対の支持部にそれぞれ支持され、
前記係止部材は、前記一対の支持部の間に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記係止部材は、前記シートバックに設けられ、
前記一対の支持部は、前記シートバックの内部に乗員の背中が接する面と略平行に設けられた平板状の前記シートバックフレームの前面に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックを立てた状態において、前記接触規制部は、前記シートバックフレームの背面よりも前方側に位置していることを特徴とする請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記係止部材は、前記シートバックに取り付けられる取付部と、前記電線を保持する電線保持部と、を有し、
前記シートバックを立てた状態において、前記接触規制部は、前記取付部よりも後方側に位置していることを特徴とする請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記接触規制部は、前記シートバックを立てた状態においては、前記係止部材の取付部よりも下方側に位置していることを特徴とする請求項
6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記車両用シートは、自動車のリヤシートであり、
前記シートバックは、乗員の背中が接する面が前記シートクッションの上面に重なるまで前方に倒すことが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション又はシートバックに電気部品を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の臀部を支えるシートクッションと、シートクッションの後端部に設けられたシートバックと、を備えた車両用シートにおいて、ヒーター等の電気部品を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
こうした電気部品は、車両内に配設されたワイヤーハーネスを構成する電線に接続され、車両に搭載されたバッテリーから電力の供給を受けるようになっているのが一般的である。
【0003】
電気部品がシートバックに設けられる場合、その電気部品に接続された電線は、シートクッションの後端部とシートバックの下端部との間の接続部に通されることが多い。
シートバックは、前後方向に傾動させることが可能となっているものが多いので、シートバックに電気部品を備える場合には、傾動が繰り返されることによって、コネクタが抜ける、電線が傷む、電線の位置がずれる、といった不具合を生じないよう、電線がシートバックの下端部等に係止部材(クリップ等)で固定されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車のリヤシートは、近年、シートバックを前方へ背面が水平となるまで倒すことが可能なものが増えてきている。このようなリヤシートは、シートバックを倒したときに、シートクッションとシートバックとの接続部が大きく露出しやすい。このようなリヤシートが、上記のような電気部品を備えたものであると、シートバックを倒したときに、電気部品に接続された電線やこれを係止する係止部材が露出する場合がある。
そのような状態で、例えば、リヤシート後方の荷室に荷物を積み込もうとすると、荷物が係止部材にぶつかって係止部材が外れ、上述したような不具合が生じてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シートクッション又はシートバックに電気部品を備え、当該電気部品に接続された電線がシートバックとシートクッションとの間を通るように構成された車両用シートにおいて、電線をシートクッション又はシートバックに係止するための係止部材を外れにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
乗員が着座可能なシートクッションと、前記シートクッションの後端部に取り付けられたシートバックと、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた電気部品と、を備えた車両用シートであって、
前記シートバックが、立った状態から、前記シートクッションの上面に重なるように倒れた状態に傾動可能であり、
立てた状態の前記シートバックの下端部には、係止部材が設けられ、
前記電気部品に電力を供給するための電線が、前記係止部材によって前記シートバックの下端部に係止されており、
前記シートバックは、左右に延びるよう線材によって形成される接触規制部を備えており、前記シートバックの骨格となるシートバックフレームが、前記シートバックを立てた状態において上下左右に板状に広がるように設けられたパネル材を有し、
前記シートバックが立った状態において、前記接触規制部が前記シートバックフレームの下端から下方に離れて前記係止部材の後方に位置するとともに、前記接触規制部が前記係止部材の下端と同じ高さに位置するとともに、
前記シートバックが前記シートクッションの上面に重なるように倒れた状態において、前記接触規制部が前記係止部材の上に前記係止部材の後端と並ぶ箇所に位置し、
左右方向における前記係止部材の配置は、前記パネル材の側辺よりも前記パネル材の中央部側であり、
前記電線が前記係止部材によって前記シートバックの下端部に係止される左右方向における位置は、前記パネル材の側辺よりも前記パネル材の中央部側であることを特徴とする車両用シートである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両シートであって、
前記係止部材は、前記シートバックに対して着脱自在に取り付けられるクリップであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、
前記シートバックは、その横幅方向に並ぶ一対の支持部を有しており、
前記接触規制部は、前記シートバックの横幅方向に延びるように設けられるとともに、両端が前記一対の支持部にそれぞれ支持され、
前記係止部材は、前記一対の支持部の間に位置していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用シートであって、
前記係止部材は、前記シートバックに設けられ、
前記一対の支持部は、前記シートバックの内部に乗員の背中が接する面と略平行に設けられた平板状の前記シートバックフレームの前面に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用シートであって、
前記シートバックを立てた状態において、前記接触規制部は、前記シートバックフレームの背面よりも前方側に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用シートであって、
前記係止部材は、前記シートバックに取り付けられる取付部と、前記電線を保持する電線保持部と、を有し、
前記シートバックを立てた状態において、前記接触規制部は、前記取付部よりも後方側に位置していることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両用シートであって、
前記接触規制部は、前記シートバックを立てた状態においては、前記係止部材の取付部よりも下方側に位置していることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート
前記車両用シートは、自動車のリヤシートであり、
前記シートバックは、乗員の背中が接する面が前記シートクッションの上面に重なるまで前方に倒すことが可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、接触規制部が、例えば車両へ積み込む荷物等の係止部材への接触を規制する。すなわち、荷物等による衝撃が係止部材へ加わるのを抑制するので、係止部材を外れにくくすることができる。
特に、シートバックを前方へ倒すことが可能であり、係止部材が露出した場合に、より効果的である。
【0018】
クリップは、従来電線の係止に使用されてきた部材であるため、請求項2に記載の発明によれば、係止部材を外れにくくするための特殊なもの変える必要が無く、車両用シートの製造コストが上がるのを抑制することができる。
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、前記接触規制部を後方から見ると、係止部材を横断又は縦断するような配置となるので、係止部材を広範囲にわたって保護することができる。
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、線材を曲げ加工しその端部をシートクッション又はシートバックに接合するだけで接触規制部を容易に設けることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、接触規制部が一対の支持部によって2箇所で支持されるので、接触規制部が、より強い衝撃から係止部材を保護できるようになる。
また、支持部がシートバック横幅方向からの衝撃を抑制するので、より係止部材が外れにくくなる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、支持部がシートバック背面側への出っ張らない分だけシートバック背面側の凹凸が少なくなるので、シートバックを前方に傾けて荷物をシートバックの背面に置こうとする場合に、接触規制部が荷物の積み下ろし等の邪魔になりにくくなる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、支持部だけでなく接触規制部がシートバックの背面側へ出っ張らなくなるので、シートバックを前方に傾けて荷物をシートバックの背面に置こうとする場合に、接触規制部が一段と荷物の積み下ろし等の邪魔になりにくくなる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、衝撃が取付部へ加わるのを抑制するので、係止部材をより保護しやすくなる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、シートバックを傾けたときに、接触規制部が係止部材の後方かつ上方に位置するので、係止部材をより保護しやすくなる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、係止部材が露出したとしても、接触規制部がより一層機能するようになるので、係止部材を依然として外れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図2】
図1の車両用シートを構成するシートバックフレーム(背面)及びその周辺構成の斜視図である。
【
図6A】同実施形態に係る車両用シート(側面)の模式図である。
【
図6B】同実施形態に係る車両用シート(側面)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、下記実施形態においては、本発明を実施する上で好ましい種々の技術的な限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0029】
(車両用シート)
まず、本実施形態に係る車両用シート100の概略構成について説明する。
図1は車両用シート100の斜視図(説明のため、便宜的に一部の構成を透けて見えるようにしてある)、
図2は
図1の車両用シート100を構成するシートバックフレーム1A,1B(背面)の斜視図である。
なお、以下の説明においては、位置や方向を、当該車両用シートに着席した乗員から見たものとして、すなわち、図に示した前後左右上下の矢印に従って説明する。
【0030】
車両用シート100は、
図1に示したように、シートクッション110や、シートバック120、複数のヘッドレスト130、図示しないアームレスト等を備えている。
なお、
図1には、乗用車用のシートを示したが、本発明は、バスやトラック等の他の自動車のシートに適用可能である。
また、
図1には、複数人掛けのリヤシートを示したが、一人掛けのフロントシートにも適用可能である。
【0031】
シートクッション110は、乗員の臀部を支えるものであり、図示しない乗用車の内側空間の床面に取り付けられる。
シートクッション110は、シートクッションフレーム111や、シートクッション用電気部品112、パッド、表皮等を備えている。
【0032】
本実施形態のシートクッション用電気部品112は、乗員の臀部を暖めるヒーターであり、第1シートクッションフレーム111の上面側に、当該シートクッションフレーム111と平行な面状に広がるように設けられている。なお、
図1には、シートクッション用電気部品112を複数備えたものを示したが、一つでもよい。
シートクッション用電気部品112の後端部には図示しないコネクタが設けられており、車両に配設されたワイヤーハーネスを構成する電線200が接続されている。
なお、シートクッション用電気部品112は、例えば、シートベルトリマインダや送風機等、電線200から電力の供給を受けて動作するものであって、シートクッション110に内蔵可能又はシートクッション110表面に取り付け可能なものであれば何でもよい。
【0033】
パッドは、ウレタン樹脂をシートの形状に発泡成形させたもので、シートクッションフレーム111の前側から当該第1シートクッションフレーム111やシートクッション用電気部品112を包み込むようにシートクッションフレーム111に設けられている。
表皮は、シートクッションフレーム111及びパッドを覆っている。
【0034】
シートバック120は、その下端部(シートクッション110寄りの端部)が、シートクッション110の後端部において左右方向(車幅方向)に延びるように設けられた軸棒によって軸支され、図示しないロックを解除することで、軸棒を回転の中心として回動させることが可能となっている。すなわち、
図1に示したような立てられた状態や、前面(乗員の背中が接する面)がシートクッション110の上面(座面)に重なるように倒れた状態とすることが可能となっている。
シートバック120は、中央部及び右側部をなす第1シートバック121と、左側部をなす第2シートバック122と、で構成されている。これらは、それぞれ独立して回動させることが可能に構成されている。
【0035】
第1シートバック121は、第1シートバックフレーム1Aや、シートバック用電気部品2、係止部材3、パッド、表皮等を備えている。
第1シートバック121の右側部の上部には、ヘッドレスト130を取り付けるための図示しない一対の差し込み穴が形成されている。
第1シートバック121の左側部(シートバック120の中央部)には、アームレストを収納するための図示しない凹部が形成されるとともに、その上方にヘッドレスト130が設けられている。
【0036】
第1シートバックフレーム1Aは、第1シートバック121の骨子となる平板状の部材であり、第1シートバック121の内部に、当該第1シートバック121の前面(乗員の背中が接する面)と略平行になるよう配置されている。
なお、第1シートバックフレーム1Aの詳細については後述する。
【0037】
本実施形態におけるシートバック用電気部品2は、乗員の背中を暖めるヒーターであり、第1シートバックフレーム1Aの前面側に、当該第1シートバックフレーム1Aと平行な面状に広がるように設けられている。
シートバック用電気部品2の下端部には図示しないコネクタが設けられており、車両に配設されたワイヤーハーネスを構成する電線200が接続されている。
なお、シートバック用電気部品2は、シートクッション用電気部品112と同様、電線200から電力の供給を受けて動作するものであって、第1シートバック121に内蔵可能又は第1シートバック121表面に取り付け可能なものであれば何でもよい。
【0038】
本実施形態の係止部材3は、第1シートバックフレーム1Aの下端部に取り付けられている。
係止部材3は、電線200を保持しており、第1シートバックフレーム1Aに取り付けられることで、電線を第1シートバックフレーム1Aの下端部に係止している。
なお、係止部材3の詳細については後述する。
【0039】
パッドは、ウレタン樹脂をシートの形状に発泡成形させたもので、第1シートバックフレーム1Aの前側から当該第1シートバックフレーム1Aやシートバック用電気部品2を包み込むように第1シートバックフレーム1Aに設けられている。
表皮は、第1シートバックフレーム1A及びパッドを覆っている。
【0040】
第2シートバック122は、第1シートバック121と同様、第2シートバックフレーム1Bや、シートバック用電気部品2、係止部材3、パッド、表皮等を備えている。
第2シートバック122は、第1シートバック121の右側部のみを左右対称にしたものとほぼ同様の構造をしている。このため、第2シートバック122各部の詳細については省略する。
【0041】
各ヘッドレスト130は、ヘッドレスト本体131と、一対のピラー132と、を備えている。
ヘッドレスト本体131は、ウレタン樹脂を発泡形成させたパッドと表皮からなる。
一対のピラー132は、棒状の部材であり、ヘッドレスト本体131の表面から、上述した一対の差し込み穴と同じ間隔を空けて平行に延びるよう突出している。
各ヘッドレスト130は、一対のピラー132が、シートバック120上部に設けられた差し込み穴にそれぞれ差し込まれることにより、シートバック120に取り付けられる。差し込み穴の入口近傍には、図示しないストッパ部材が設けられており、ピラー132を、所望の長さだけ差し込まれた(ヘッドレスト本体131を所望の高さとした)状態で静止させることが可能である。
【0042】
アームレストは、直方体状に形成された部材であり、その長手方向一端部が、シートバック120の凹部の下部において左右方向に延びるように設けられた軸棒によって軸支され、当該軸棒を回転の中心として回動させることが可能となっている。すなわち、立てられて凹部に収納された状態や、長手方向他端部がシートクッション110の座面と接しするように倒された状態にすることが可能となっている。
【0043】
(シートバックフレーム)
次に、上記第1シートバック121を構成する第1シートバックフレーム1Aの具体的構成について説明する。
第1シートバックフレーム1Aは、
図1,2に示したように、パネル材10や、複数のフレーム材20A~20E、ヘッドレスト保持部30、シートベルトガイド部材用ブラケット40、一対のアームレスト用ブラケット50、係止部材保護部60等を備えている。
【0044】
パネル材10は、スチールやアルミ合金等の金属で正面視矩形の略平板状に形成されている。
パネル材10の周縁部は、ほぼ全周にわたって前方(補強を要する面が向く方向)に向かって折り曲げられている。すなわち、パネル材10の全体形状はトレー状となっている。
【0045】
複数のフレーム材20A~20Eは、スチールやアルミ合金等の金属で棒上に形成された部材であり、何れもパネル材10の前面(補強を要する面)に溶接されている。
このうち、上フレーム材20Aは、パネル材10の上端部に、当該パネル材10の上辺に沿って延びるように配置されている。
下フレーム材20Bは、パネル材10の下端部に、当該パネル材10の下辺に沿って延びるように配置されている。
中フレーム材20Cは、パネル材10の中央部を通り、当該パネル材10の側辺と並行に延びるように配置されている。
一対の側フレーム材20Dは、パネル材10の左右両側端部に、当該パネル材10の側辺に沿って延びるようにそれぞれ配置されている。
角フレーム材20Eは、パネル材10の右下部に、当該パネル材10の下辺又は右辺に対して角度(約45℃)をなして延びるように配置されている。
【0046】
パネル材10の右側部及び中央部には、
図2に示したように、パネル材10の剛性を高めるための複数の補強領域11~16が上下方向に並ぶように設けられている。具体的には、右側部には、一番上に第1補強領域11が設けられるとともに、一番下に第4補強領域14が設けられ、その間に第2補強領域12と第3補強領域13が交互に並ぶように設けられている。
中央部には、第5補強領域15と第6補強領域16が交互に並ぶように設けられている。
【0047】
各補強領域11~16は、前面(補強を要する面)から当該前面に沿った線状をなすように突き出た複数の補強部によって形成されている。本実施形態の補強部は、パネル材10の背面に型押しによって溝を形成することで、当該パネル材10の前面を線状に膨出させたビード(凸条)となっている。これにより、パネル材10の剛性が高まり、パネル材10が曲がりにくくなる。
【0048】
ヘッドレスト保持部30は、
図1に示したように、上フレーム材20Aにおける右側部及び中央部の前面にそれぞれ設けられている。ヘッドレスト保持部30は、
図1に示したように、上フレーム材20Aの前面に接合された板状の接合部と、両端が開口した筒状をなし接合部の両端に略上下方向に貫通するように設けられたた一対のピラー支持部を有している。
ピラー支持部には、図示しない筒状のピラー保持部材が差し込まれている。
第1シートバック121の一対の差し込み穴にヘッドレスト130の一対のピラー132がそれぞれ差し込まれると、ピラー132がピラー保持部材に通される。
【0049】
シートベルトガイド部材用ブラケット40は、上フレーム材20Aにおけるヘッドレスト保持部30の側方に溶接されている。
シートベルトガイド部材用ブラケット40は、例えば樹脂等で形成された図示しないシートベルトガイド部材が取り付けられる。シートベルトガイド部材には、図示しないシートベルトが通される。
【0050】
一対のアームレスト用ブラケット50は、上述したアームレストを回動可能に支持する部材であり、下フレーム材20Bにおける中央部側の部位に溶接されている。
両アームレスト用ブラケット50は、上述したアームレストの左右方向(短手方向)の幅と同程度の間隔を空けて、前斜め上方に向かって互いに平行に延びるように設けられている。
各アームレスト用ブラケット50の先端部には、それぞれアームレストを軸支する軸棒を通すための軸穴が、互いに向かい合うように形成されている。
【0051】
係止部材保護部60は、車両に配設された電線200を第1シートバックフレーム1Aの下端部に係止する係止部材3を保護するための部材であり、第1シートバックフレーム1Aの前面に取り付けられている。
なお、係止部材保護部60の詳細については、係止部材3の詳細とともに後述する。
【0052】
(係止部材及び係止部材保護部)
次に、上記第1シートバックフレーム1Aを構成する係止部材保護部60及び当該第1シートバックフレーム1Aに取り付けられる係止部材3の詳細について説明する。
図3は
図1の一部を拡大した斜視図、
図4,5は
図2の一部を拡大した斜視図、
図6A,6Bは本実施形態に係る車両用シート(側面)の模式図である。
本実施形態の係止部材保護部60は、
図3~5に示したように、一対の支持部61と、接触規制部62と、を有している。
また、本実施形態の係止部材保護部60は、ワイヤ等の線材を曲げ加工して形成したものとなっている。すなわち、支持部61と接触規制部62が一体となっている。
【0053】
一対の支持部61は、第1シートバックフレーム1A(第1シートバック121)の横幅方向に並ぶように配置されており、それぞれ垂下部611と、後方延出部612と、を有している。
一対の垂下部611は、下フレーム材20Bにおける右側部にそれぞれ溶接されており、下フレーム材20B(第1シートバックフレーム1A)の前面から下方(ヘッドレスト130や上フレーム材20Aから遠ざかる方向)へ向かって、下端(パネル材10から遠い方の端)が係止部材3の下端と揃う程度まで延びている。また、一対の垂下部611は、互いに所定間隔(係止部材3の横幅方向の長さよりも長い距離)を空けつつ平行に延びている。
【0054】
後方延出部612は、各垂下部611の下端から、後方(パネル材10の背面が向く方向)へ向かって、後端がパネル材10の背面を超えない程度(最長で背面と揃う程度)まで延びている。
接触規制部62は、第1シートバックフレーム1Aの横幅方向に延びるように設けられるとともに、両端が各後方延出部612の後端部と繋げられている。すなわち、両端が一対の支持部61によってそれぞれ支持されている。
上述したように、後方延出部612の後端がパネル材10の背面を超えないようになっているので、後方延出部612の後端部から連続的に延びる接触規制部62は、後端がパネル材10の背面よりも前方側に位置することになる。
【0055】
係止部材3は、第1シートバックフレーム1A下端部であって、上述したように構成された係止部材保護部60における一対の支持部61の間に取り付けられている。
係止部材3は、取付部31と、電線保持部32と、を有している。
取付部31は、パネル材10下端部の前方に向かって折り曲げられた部分を挟持することが可能に構成されている。すなわち、本実施形態の係止部材3は、クリップであり、第1シートバックフレーム1Aに対し着脱自在となっている。
【0056】
電線保持部32は、取付部31の下の挿通部321と、挿通部321から細長く延出する帯状部322と、を有している。
帯状部322の先端を、挿通部321に形成された前後方向に貫通する穴に、前側から通すことで挿通部の前側に輪が形成され、その輪に電線200を通すことで電線200を保持するようになっている。
なお、本実施形態においては、電線保持部が保持する電線を、車両に配設されたワイヤーハーネスのものとしたが、電気部品2,112から電線が伸びている場合には、電気部品2,112の電線を保持するようにしてもよい。
【0057】
このように構成された係止部材3は、電線保持部32が、パネル材10下端部の前方に向かって折り曲げられた部分から下方に垂下した状態となり、少なくともパネル材10の背面よりも前方側に位置する。
一方、上述した接触規制部62は、パネル材10の背面の真下付近に位置しているので、係止部材3は、接触規制部62よりも前方側に位置することになる。
【0058】
また、このように構成された本実施形態の車両用シート100は、第1シートバック121を立てた状態では、係止部材保護部60の接触規制部62が、
図6Aに示したように、係止部材3の後方に位置するとともに、係止部材3の下端と同程度の高さ(少なくとも係止部材3の取付部31よりも下方側)に位置する。
一方、第1シートバック121を前方に倒した状態では、係止部材保護部60の接触規制部62が、
図6Bに示したように、係止部材3の後端と並ぶ箇所(少なくとも係止部材3の取付部31よりも後方側)に位置するとともに、係止部材3の上方に位置する。
すなわち、接触規制部62は、第1シートバック121が上記いずれの状態であっても、係止部材の後方に位置する。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る車両用シート100は、第1シートバック121の下端部に係止部材3が設けられ、電気部品2,112に電力を供給するための電線200が、係止部材3によって第1シートバック121の下端部に係止されており、第1シートバック121が、係止部材3の後方に位置する接触規制部62を備えている。
これにより、接触規制部62が、例えば車両へ積み込む荷物等の係止部材3への接触を規制する。すなわち、荷物等による衝撃が係止部材3へ加わるのを抑制するので、係止部材3を外れにくくすることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、係止部材3が、第1シートバック121に対して着脱自在に取り付けられるクリップである。
クリップは、従来電線の係止に使用されてきた部材であるため、このようにすれば、係止部材3を外れにくくするための特殊なもの変える必要が無く、車両用シート100の製造コストが上がるのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、接触規制部62は、係止部材3の後方において、当該係止部材3の前後方向と直交する方向一方側から他方側まで延びるように設けられている。
これにより、接触規制部62を後方から見ると、係止部材3を横断又は縦断するような配置となるので、係止部材を広範囲にわたって保護することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、接触規制部62が、線材によって形成されている。
これにより、線材を曲げ加工しその端部を第1シートバック121に接合するだけで接触規制部62を容易に設けることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、第1シートバック121が、その横幅方向に並ぶ一対の支持部61を有しており、接触規制部62は、第1シートバック121の横幅方向に延びるように設けられるとともに、両端が一対の支持部61にそれぞれ支持され、係止部材3が、一対の支持部61の間に位置している
これにより、接触規制部62が一対の支持部61によって2箇所で支持されるので、接触規制部62が、より強い衝撃から係止部材3を保護できるようになる。
また、支持部61が第1シートバック121横幅方向からの衝撃を抑制するので、より係止部材3が外れにくくなる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、係止部材3が第1シートバック121に設けられ、一対の支持部61が、第1シートバック121の内部に前面(乗員の背中が接する面)と略平行に設けられた平板状の第1シートバックフレーム1Aの前面に取り付けられている。
これにより、支持部61が第1シートバック121背面側への出っ張らない分だけ第1シートバック121背面側の凹凸が少なくなるので、第1シートバック121を前方に傾けて荷物を第1シートバック121の背面に置こうとする場合に、接触規制部62が荷物の積み下ろし等の邪魔になりにくくなる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、接触規制部62が、第1シートバックフレーム1Aの背面よりも前方側に位置している。
これにより、支持部61だけでなく接触規制部62が第1シートバック121の背面側へ出っ張らなくなるので、第1シートバック121を前方に傾けて荷物を第1シートバック121の背面に置こうとする場合に、接触規制部62が一段と荷物の積み下ろし等の邪魔になりにくくなる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、係止部材3が、第1シートバック121に取り付けられる取付部31と、電線を保持する電線保持部32と、を有し、接触規制部62が、取付部31よりも後方側に位置している。
これにより、衝撃が取付部31へ加わるのを抑制するので、係止部材3をより保護しやすくなる。
【0067】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、接触規制部62が、第1シートバック121を立てた状態においては、係止部材3の取付部31よりも下方側に位置している。
これにより、第1シートバック121を傾けたときに、接触規制部62が係止部材3の後方かつ上方に位置するので、係止部材3をより保護しやすくなる。
【0068】
また、本実施形態に係る車両用シート100は、自動車のリヤシートであり、
第1シートバック121は、前面がシートクッション110の上面に重なるまで前方に倒すことが可能に構成されている。
これにより、係止部材3が露出したとしても、接触規制部62がより一層機能するようになるので、係止部材3を依然として外れにくくすることができる。
【0069】
なお、これらの作用効果は、構成の具体的説明を省略した上記第2シートバック122についても、同様のことがいえる。
【0070】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、係止部材3及び係止部材保護部60がシートバック120に設けられた場合を例に説明したが、係止部材は、シートクッション110の後端部に設けられていてもよいし、両方に設けられていてもよい。その場合、シートクッション(例えばシートクッションフレームの後端部)に接触規制部を備えるようにする。
【0071】
また、上記実施形態では、車両用シート100を自動車のリヤシートとしたが、フロントシートとしてもよい。その場合、リヤシートに着座した乗員の足等による衝撃から保護することができる。
また、上記実施形態では、接触規制部62が水平方向に延びるものとしたが、シートバック120の高さ方向に延びるものとしてもよい。その場合、棒状の接触規制部の上端をシートバックフレーム1A,1Bに直接溶接すればよいので、支持部が不要となる。
また、上記実施形態では、一本の線材により支持部61と接触規制部62を一体形成したが、それぞれを別々の部材としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、シートクッション110とシートバック120の両方に電気部品を備えたものを例に説明したが、一方にのみ設けられたものであってもよいし、一方又は両方がヒーター以外の電気部品のものであってもよい。
また、上記実施形態では、係止部材3がシートバックフレーム1A,1Bの下端部を挟持することで取り付けられるものとしたが、例えば、シートバックフレーム1A,1Bの凹凸に係合させて取り付けるものや、シートバックフレーム1A,1Bに貼り付けることより取り付けるものとしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、第1シートバック121と第2シートバック122のそれぞれに係止部材保護部60を設けるとともに、係止部材3を取り付けたが、どちらか一方のシートバックにのみ設けて、それぞれのシートバック用電気部品2の電線をまとめて係止するようにしてもよい。
なお、係止部材保護部60及び係止部材3を一ヶ所にのみ設ける場合には、シートバック120の中央下端部に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、自動車等の車両用シートに利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 車両用シート
110 シートクッション
111 シートクッションフレーム
112 シートクッション用電気部品
120,121,122 シートバック
1A,1Bシートバックフレーム
10 パネル材
11-16 補強領域
20A-20E フレーム材
30 ヘッドレスト保持部
40 シートベルトガイド部材用ブラケット
50 アームレスト用ブラケット
60 係止部材保護部
61 支持部
611 垂下部
612 後方延出部
62 接触規制部
2 シートバック用電気部品
3 係止部材
31 取付部
32 電線保持部
321 挿通部
322 帯状部
130 ヘッドレスト
131 ヘッドレスト本体
132 ピラー
200 電線