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特許7627110圧電振動体および超音波トランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】圧電振動体および超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020199763
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087692
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-052299(JP,A)
【文献】特開2011-250327(JP,A)
【文献】特開平09-247796(JP,A)
【文献】特開2016-225750(JP,A)
【文献】特開2003-199195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00-3/04
G01S 7/52-7/64
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の主面および第2の主面を有する圧電体層と、前記第1の主面に設けられた第1の電極と、前記第2の主面に設けられ、前記第1の電極とは逆の極性である第2の電極とを有し、
前記第1の電極と前記第2の電極とにより前記圧電体層が挟まれた領域として規定される活性領域が、前記圧電体層の厚さ方向から見て、前記圧電体層の厚さ方向に対して直交する第1の方向に沿って前記活性領域の幅が狭まる減幅部と前記活性領域の幅が広がる拡幅部とが並んだ狭窄部を含み、かつ、前記第1の方向に関して前記圧電体層を二分する仮想線に関して線対称であり、
前記活性領域が、分断された第1の領域と第2の領域とで構成されており、前記第1の領域が前記減幅部を有し、かつ、前記第2の領域が前記拡幅部を有する、圧電振動体。
【請求項2】
前記第2の電極が、前記圧電体層の側面を通って前記第1の主面まで引き延ばされた引き延ばし端部を有し、
前記圧電体層の厚さ方向から見て、前記第2の電極の前記引き延ばし端部が、前記活性領域の前記狭窄部と隣り合っている、請求項に記載の圧電振動体。
【請求項3】
前記活性領域自体が正方形の外形を有する、請求項1または2に記載の圧電振動体。
【請求項4】
前記活性領域自体が真円形の外形を有する、請求項1または2に記載の圧電振動体。
【請求項5】
前記活性領域自体が長方形の外形を有し、該長方形の長辺方向が前記第1の方向に沿っている、請求項1または2に記載の圧電振動体。
【請求項6】
前記狭窄部の前記減幅部では前記活性領域の幅が漸減しており、前記拡幅部では前記活性領域の幅が漸増している、請求項1~のいずれか一項に記載の圧電振動体。
【請求項7】
前記第2の電極が前記圧電体層の前記第2の主面の全域に亘って設けられており、
前記圧電体層の厚さ方向から見て、前記第1の電極の形状と前記活性領域の形状とが一致している、請求項1~のいずれか一項に記載の圧電振動体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の前記圧電振動体を備え、該圧電振動体が入力された電圧信号に応じて超音波を出力する、超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記圧電振動体が収容される有底筒状のケースをさらに備え、
前記圧電振動体の前記圧電体層の前記第2の主面が前記ケースの底面と対面している、請求項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
互いに対向する第1の主面および第2の主面を有する圧電体層と、前記第1の主面に設けられた第1の電極と、前記第2の主面に設けられ、前記第1の電極とは逆の極性である第2の電極とを有し、
前記第1の電極と前記第2の電極とにより前記圧電体層が挟まれた領域として規定される活性領域が、前記圧電体層の厚さ方向から見て、前記圧電体層の厚さ方向に対して直交する第1の方向に沿って前記活性領域の幅が狭まる減幅部と前記活性領域の幅が広がる拡幅部とが並んだ狭窄部を含み、かつ、前記第1の方向に関して前記圧電体層を二分する仮想線に関して線対称であり、
前記活性領域の前記第1の方向に関する端部が、前記圧電体層の前記第1の方向に関する端部の縁に沿っている、圧電振動体。
【請求項11】
前記圧電体層の端部の縁に沿う前記第1の方向に関する端部において前記活性領域の幅が最大となる、請求項1に記載の圧電振動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動体および超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、圧電振動子を用いた超音波トランスデューサが開示されている。このような超音波トランスデューサは、超音波を出力するとともに検知対象物において反射した超音波を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-82655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、全方位において同様の指向角で超音波を出力するのではなく、方位によって指向角を調整することで、検知の指向性を獲得することができるとの知見を得た。そこで、指向角の調整について研究を重ね、検知の指向性を実現することができる技術を新たに見出した。
【0005】
本発明は、検知の指向性を有する圧電振動体および超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る圧電振動体は、互いに対向する第1の主面および第2の主面を有する圧電体層と、第1の主面に設けられた第1の電極と、第2の主面に設けられ、第1の電極とは逆の極性である第2の電極とを有し、第1の電極と第2の電極とにより圧電体層が挟まれた領域として規定される活性領域が、圧電体層の厚さ方向から見て、圧電体層の厚さ方向に対して直交する第1の方向に沿って活性領域の幅が狭まる減幅部と活性領域の幅が広がる拡幅部とが並んだ狭窄部を含む。
【0007】
上記圧電振動体を超音波トランスデューサに適用した場合、活性領域が、第1の方向に沿って活性領域の幅が狭まる減幅部と活性領域の幅が広がる拡幅部とが並んだ狭窄部を含むため、第1の方向および圧電体層の厚さ方向に対して直交する方向における振動が制限される。そのため、上記圧電振動体によれば、第1の方向および圧電体層の厚さ方向に対して直交する方向の指向角が狭められ、検知の指向性を実現することができる。
【0008】
他の形態に係る圧電振動体は、活性領域が、分断された第1の領域と第2の領域とで構成されており、第1の領域が減幅部を有し、かつ、第2の領域が拡幅部を有する。
【0009】
他の形態に係る圧電振動体は、第2の電極が、圧電体層の側面を通って第1の主面まで引き延ばされた引き延ばし端部を有し、圧電体層の厚さ方向から見て、第2の電極の引き延ばし端部が、活性領域の狭窄部と隣り合っている。
【0010】
他の形態に係る圧電振動体は、活性領域が正方形の外形を有する。
【0011】
他の形態に係る圧電振動体は、活性領域が真円形の外形を有する。
【0012】
他の形態に係る圧電振動体は、活性領域が長方形の外形を有し、該長方形の長辺方向が第1の方向に沿っている。
【0013】
他の形態に係る圧電振動体は、狭窄部の減幅部では活性領域の幅が漸減しており、拡幅部では活性領域の幅が漸増している。
【0014】
他の形態に係る圧電振動体は、第2の電極が圧電体層の第2の主面の全域に亘って設けられており、圧電体層の厚さ方向から見て、第1の電極の形状と活性領域の形状とが一致している。
【0015】
本発明の一形態に係る超音波トランスデューサは、上記電振動体を備え、該圧電振動体が入力された電圧信号に応じて超音波を出力する。
【0016】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、圧電振動体が収容される有底筒状のケースをさらに備え、圧電振動体の圧電体層の第2の主面がケースの底面と対面している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検知の指向性を有する圧電振動体および超音波トランスデューサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る超音波検知システムを示す概略構成図である。
図2図1の超音波トランスデューサを示す概略断面図である。
図3図2の圧電振動体を示す概略斜視図である。
図4図3の圧電振動体の圧電体層の活性領域を示した図である。
図5】異なる態様の活性領域を示した図である。
図6】異なる態様の活性領域を示した図である。
図7】異なる態様の活性領域を示した図である。
図8図3とは異なる態様の圧電振動体を示した概略斜視図である。
図9図8の圧電振動体の圧電体層の活性領域を示した図である。
図10図3とは異なる態様の圧電振動体を示した概略斜視図である。
図11図10の圧電振動体の圧電体層の活性領域を示した図である。
図12】異なる態様の活性領域を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
本実施形態では、超音波を用いて対象物の検知をおこなう超音波検知システムについて説明する。
【0021】
図1に示すように、超音波検知システム1は、所定の対象物10に対して超音波を出力し、かつ、対象物10において反射した超音波を受信するものである。超音波検知システム1は、受信した超音波から、対象物10の存在を検知したり、対象物10までの距離を検知したりすることができる。
【0022】
超音波検知システム1は、制御回路20および超音波トランスデューサ30を備えて構成されている。
【0023】
制御回路20は、特定の周波数の信号を生成して、その信号を、信号線25を介して超音波トランスデューサ30に入力する回路である。また、制御回路20は、超音波トランスデューサ30が受信した超音波信号を、適宜増幅して、検出する回路である。制御回路20はLC回路を含むことができる。
【0024】
超音波トランスデューサ30は、制御回路20から入力された信号に応じて発振し、超音波信号を出力する。また、超音波トランスデューサ30は、外部から超音波信号を受信すると、その信号を制御回路20に送信する。
【0025】
図2に示すように、超音波トランスデューサ30は、圧電振動体40と、圧電振動体40を保持するハウジング50とを備えて構成されている。
【0026】
圧電振動体40は、略正方形平板状の外形を有し、図2~4に示すように、圧電体層41と第1の電極42と第2の電極43とを備えて構成されている。
【0027】
圧電体層41は、略正方形平板状の外形を有し、互いに対向する上面41a(第1の主面)および下面41b(第2の主面)を有する。圧電体層41は、たとえばPZT等の圧電セラミックス材料で構成することができる。以下の説明では、説明の便宜上、圧電体層41の厚さ方向をZ方向とも称す。また、Z方向に対して直交する2方向であって、互いに直交する方向をX方向およびY方向とも称す。本実施形態では、X方向は圧電体層41の一辺に平行な方向であり、Y方向はその辺(X方向に平行な辺)に対して直交する辺に平行な方向である。
【0028】
第1の電極42は、圧電体層41の上面41aに部分的に設けられており、信号線25から延びる一方の配線(またはリード)26が接続される。第1の電極42は、X方向(第1の方向)に沿って延在している。第1の電極42は、X方向において圧電体層41を二分する仮想線Lに関して線対称である電極パターンを有する。具体的には、第1の電極42の電極パターンは、いずれも台形状である第1のパターン42aおよび第2のパターン42bを含んで構成されており、仮想線Lにおいて台形の上底同士が合わせられている。そのため、第1の電極42の電極パターンは、X方向に関する両端において幅(すなわちY方向長さ)が最大となり、仮想線L上において幅が最小なっている。本実施形態では、第1の電極42は、Y方向において圧電体層41を二分する仮想線(図示せず)に関して線対称である電極パターンを有する。
【0029】
第2の電極43は、信号線25から延びる他方の配線(またはリード)27が接続され、第1の電極42とは逆の極性となる。第2の電極43は、圧電体層41の下面41bの全域に亘って設けられている。第2の電極43は、圧電体層41の側面41cを通って上面41aまで引き延ばされた引き延ばし端部43aを有する。第2の電極43の引き延ばし端部43aは、第1の電極42と導通しないように、第1の電極42とは離間して設けられている。第2の電極43の引き延ばし端部43aが、Z方向から見て、第1の電極42と隣り合っている。実施形態では、第2の電極43の引き延ばし端部43aは、上面41aの一辺に沿うように設けられている。
【0030】
圧電振動体40は、信号線25から一対の配線26、27を介して電圧信号が入力されると、第1の電極と第2の電極とにより圧電体層が挟まれた活性領域Sが伸縮して、入力された信号に応じた振動を生じさせる。圧電振動体40は、板厚方向に振動し、板厚方向に直交する方向にも振動し得る。
【0031】
図4に示すように、本実施形態に係る圧電振動体40の活性領域Sは、圧電体層41の厚さ方向から見て、第1の電極42の電極パターンの領域と一致し、略正方形状の外形を有する。すなわち、活性領域Sは、仮想線Lに関して線対称であり、かつ、第1のパターン42aに対応する第1の領域S1および第2のパターン42bに対応する第2の領域S2を含んで構成されている。また、活性領域Sの第1の領域S1および第2の領域S2はいずれも台形状であり、仮想線Lにおいて台形の上底同士が合わせられている。活性領域Sは、第1の電極42の電極パターン同様、X方向に関する両端において幅が最大となり、仮想線L上において幅が最小なっている。
【0032】
活性領域Sは、狭窄部44を有する。本実施形態に係る狭窄部44は、第1の領域S1に相当する幅が次第に狭まる減幅部45と、第2の領域S2に相当する幅が次第に広がる拡幅部46とで構成されており、減幅部45と拡幅部46とはX方向において隣接している。本実施形態では、減幅部45は幅が漸減しており、拡幅部46は幅が漸増している。減幅部45において幅が段階的に(すなわち階段状に)減る形態であってもよく、拡幅部46において幅が段階的に(すなわち階段状に)増える形態であってもよい。第2の電極43の引き延ばし端部43aは、Z方向から見て、活性領域Sの狭窄部44と隣り合うように設けてもよい。
【0033】
ハウジング50は、カップ部52と枠部54と蓋部56とを備えて構成されている。
【0034】
カップ部52(ケース)は、有底筒状の形状を有する。カップ部52は、圧電振動体40に対して平行に延在する(すなわち、Z方向に対して直交する)底蓋53を含む。上述した圧電振動体40は、カップ部52内に収容されて、底蓋53上に配置される。圧電振動体40は、たとえば接着材によって、圧電体層41の下面41bが底蓋53の底面と対面するようにして、底蓋53に固定される。圧電体層41の下面41bの全面に亘って第2の電極43が設けられている場合には、圧電体層41の下面41bにおける凹凸がないため、底蓋53との高い接着性が実現され得る。カップ部52は、樹脂で構成されており、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やLCPで構成することができる。
【0035】
枠部54は、カップ部52の上端部に設けられており、環状の形状を有する。蓋部56は、枠部54の内側開口に設けられており、枠部54と協働してカップ部52の上部開口を塞いでいる。蓋部56は、信号線25の端部と結合されており、信号線25の端部を保持することができるように設けられている。枠部54はたとえばニトリルゴム(NBR)で構成することができ、蓋部56はたとえばウレタンで構成することができる。
【0036】
上述した超音波トランスデューサ30においては、信号線25を介して制御回路20から信号が入力されると、圧電振動体40が振動して、カップ部52の底蓋53側から超音波信号が出力される。また、超音波トランスデューサ30は、外部の超音波信号を、カップ部52の底蓋53において受信すると、圧電振動体40において電圧信号に変換されて信号線25を介して制御回路20に送られる。
【0037】
超音波トランスデューサ30の圧電振動体40は、活性領域Sが狭窄部44を含んでいる。発明者らは、上述した狭窄部44を活性領域Sが含む場合には、圧電振動体40のY方向における振動が制限され、その結果、Y方向における指向角が狭まることを新たに見出した。このとき、圧電振動体40のX方向における指向角は、狭まることなく、そのままに維持される。すなわち、超音波トランスデューサ30では、特定の方向における指向角を狭めつつ、その他の方向における指向角が維持されている。したがって、超音波トランスデューサ30においては、検知の指向性が実現されている。たとえば、超音波トランスデューサ30を自動車の前方対象物の検知に用いる場合、車幅方向(たとえば図1におけるX方向)における指向角は維持しつつ、鉛直方向(たとえば図1におけるY方向)における指向角を狭めて、車道上や空中にある障害物を必要以上に検知しないような調整が可能となる。
【0038】
上述した実施形態において、圧電振動体40の活性領域Sの形状は、図5~7に示すように様々な形態が採用され得る。
【0039】
たとえば、図5(a)では、圧電振動体40の活性領域Sの第1の領域S1の輪郭線と第2の領域S2の輪郭線とがつながる箇所が曲線を構成し、角のない湾曲線となっている。図5(b)では、圧電振動体40の活性領域Sの第1の領域S1の輪郭線および第2の領域S2の輪郭線が全体に亘って湾曲している。図5(a)、図5(b)のように、活性領域Sの輪郭に角がない場合には、活性領域Sを形成する第1の電極42および第2の電極43を角が少ない形状に設計することができ、応力集中に起因して圧電体層41にクラックが生じる事態を抑制することができる。図5(c)では、活性領域Sの第1の領域S1および第2の領域S2はいずれも二等辺三角形状であり、仮想線Lにおいて二等辺三角形状の頂角同士が突き合わされている。この場合、活性領域Sは第1の領域S1と第2の領域S2とに分断されており、対応する第1の電極42の第1のパターン42aと第2のパターン42bとが分断されており電気的に接続されていない。そのため、第1の電極42の第1のパターン42aおよび第2のパターン42bのそれぞれに配線26を接続することができる。第1の領域S1と第2の領域S2とは離間していてもよい。
【0040】
図6(a)では、活性領域Sは、第1の領域S1および第2の領域S2に加えて、X方向に関して等幅である矩形状の第3の領域S3を含んで構成されている。活性領域Sの狭窄部44は、第1の領域S1に相当する減幅部45と、第2の領域S2に相当する拡幅部46と、第3の領域S3に相当する等幅部47とで構成されており、X方向に沿って減幅部45、等幅部47、拡幅部46の順に隣接するように並んでいる。
【0041】
図6(b)では、圧電振動体40の活性領域Sの第1の領域S1の輪郭線と第2の領域S2の輪郭線と第3の領域S3の輪郭線とが互いにがつながる箇所が曲線を構成し、角のない湾曲線となっている。この場合、図5(a)、図5(b)の活性領域Sと同様に、第1の電極42および第2の電極43を角が少ない形状に設計することができ、応力集中に起因して圧電体層41にクラックが生じる事態を抑制することができる。
【0042】
図7(a)では、活性領域Sは、第1の領域S1および第2の領域S2に加えて、圧電体層41のX方向における端部においてY方向に帯状に延びる第4の領域S4および第5の領域S5を含んで構成されている。第4の領域S4は圧電体層41の第1の領域S1側の端部に位置し、第5の領域S5は圧電体層41の第2の領域S2側の端部に位置している。
【0043】
図7(b)では、活性領域Sは、二等辺三角形状を有する第1の領域S1および第2の領域S2に加えて、圧電体層41のX方向における端部においてY方向に帯状に延びる第4の領域S4および第5の領域S5を含んで構成されている。
【0044】
図7(c)では、活性領域Sは、第1の領域S1および第2の領域S2並びに第4の領域S4および第5の領域S5に加えて、X方向に関して等幅である矩形状の第3の領域S3を含んで構成されている。
【0045】
図5図7に示したいずれの活性領域Sも、第1の領域S1に相当する減幅部45と第2の領域S2に相当する拡幅部46とが、第3の領域S3に相当する等幅部47を介してまたは介さずにX方向に沿って並んだ狭窄部44を含む。したがって、上述した実施形態と同様、超音波トランスデューサ30における検知の指向性を実現することができる。
【0046】
なお、圧電振動体40の圧電体層41は、正方形平板状に限らず、図8に示すような長方形平板状であってもよく、図10に示すような真円平板状であってもよい。
【0047】
図8に示した圧電振動体40Aは、X方向に延びた長方形平板状の圧電体層41を有する。圧電振動体40Aの第1の電極42および第2の電極43は、上述した圧電振動体40の第1の電極42および第2の電極43と同一または同様であるため、説明は省略する。
【0048】
図9に示すように、圧電振動体40Aの活性領域Sは、圧電体層41の厚さ方向から見て、第1の電極42の電極パターンの領域と一致し、略長方形状の外形を有する。すなわち、活性領域Sは、仮想線Lに関して線対称であり、かつ、第1のパターン42aに対応する第1の領域S1および第2のパターン42bに対応する第2の領域S2を含んで構成されている。また、活性領域Sの第1の領域S1および第2の領域S2はいずれも台形状であり、仮想線Lにおいて台形の上底同士が合わせられている。活性領域Sは、第1の電極42の電極パターン同様、X方向に関する両端において幅が最大となり、仮想線L上において幅が最小なっている。
【0049】
活性領域Sは、上述した圧電振動体40同様、狭窄部44を有する。本実施形態に係る狭窄部44は、第1の領域S1に相当する幅が次第に狭まる減幅部45と、第2の領域S2に相当する幅が次第に広がる拡幅部46とで構成されており、減幅部45と拡幅部46とはX方向において隣接している。
【0050】
したがって、圧電振動体40Aを備える超音波トランスデューサ30でも、特定の方向における指向角を狭めつつ、その他の方向における指向角が維持されており、検知の指向性が実現されている。
【0051】
なお、減幅部45での幅が漸減し、拡幅部46での幅が漸増する態様であってもよく、減幅部45での幅が段階的に(すなわち階段状に)減り、拡幅部46での幅が段階的に(すなわち階段状に)増える形態であってもよい。第2の電極43の引き延ばし端部43aは、Z方向から見て、活性領域Sの狭窄部44と隣り合うように設けてもよい。
【0052】
図10に示した圧電振動体40Bは、真円平板状の圧電体層41と、圧電体層41の上面41aに部分的に設けられた第1の電極42と、圧電体層41の下面41bの全域に亘って設けられた第2の電極43とを有する。
【0053】
第1の電極42は、X方向において圧電体層41を二分する仮想線Lに関して線対称である電極パターンを有する。第1の電極42の電極パターンは、いずれも略台形状である第1のパターン42aおよび第2のパターン42bを含んで構成されており、仮想線Lにおいて台形の上底同士が合わせられている。第1のパターン42aおよび第2のパターン42bでは、台形の下底が圧電体層41の縁に沿うように湾曲している。そのため、第1の電極42の電極パターンは、X方向に関する両端近傍において幅(すなわちY方向長さ)が最大となり、仮想線L上において幅が最小なっている。本実施形態では、第1の電極42は、Y方向において圧電体層41を二分する仮想線(図示せず)に関して線対称である電極パターンを有する。
【0054】
第2の電極43は、圧電体層41の下面41bの全域に亘って設けられるとともに、圧電体層41の側面41cを通って上面41aまで引き延ばされた引き延ばし端部43aを有する。第2の電極43の引き延ばし端部43aは、第1の電極42と導通しないように、第1の電極42とは離間して設けられている。第2の電極43の引き延ばし端部43aが、Z方向から見て、第1の電極42と隣り合っている。
【0055】
図11に示すように、圧電振動体40Bの活性領域Sは、圧電体層41の厚さ方向から見て、第1の電極42の電極パターンの領域と一致し、略真円状の外形を有する。すなわち、活性領域Sは、仮想線Lに関して線対称であり、かつ、第1のパターン42aに対応する第1の領域S1および第2のパターン42bに対応する第2の領域S2を含んで構成されている。また、活性領域Sの第1の領域S1および第2の領域S2はいずれも略台形状であり、仮想線Lにおいて台形の上底同士が合わせられている。第1の領域S1および第2の領域S2はでは、台形の下底が圧電体層41の縁に沿うように湾曲している。活性領域Sは、第1の電極42の電極パターン同様、X方向に関する両端近傍において幅が最大となり、仮想線L上において幅が最小なっている。
【0056】
圧電振動体40Bは、上述した圧電振動体40、40A同様、活性領域Sが狭窄部44を有する。狭窄部44は、第1の領域S1の一部に相当する幅が次第に狭まる減幅部45と、第2の領域S2の一部に相当する幅が次第に広がる拡幅部46とを含んで構成されており、減幅部45と拡幅部46とはX方向において隣接している。
【0057】
したがって、圧電振動体40Bを備える超音波トランスデューサ30でも、特定の方向における指向角を狭めつつ、その他の方向における指向角が維持されており、検知の指向性が実現されている。
【0058】
圧電振動体40Bの活性領域Sの形状は、図12に示すように様々な形態が採用され得る。
【0059】
図12(a)では、圧電振動体40Bの活性領域Sの第1の領域S1の輪郭線および第2の領域S2の輪郭線が全体に亘って湾曲している。この場合、図5(a)、図5(b)の活性領域Sと同様に、第1の電極42および第2の電極43を角が少ない形状に設計することができ、応力集中に起因して圧電体層41にクラックが生じる事態を抑制することができる。
【0060】
図12(b)では、活性領域Sの第1の領域S1および第2の領域S2はいずれも扇形状であり、仮想線Lにおいて扇形状の中心角同士が突き合わされている。この場合、活性領域Sは第1の領域S1と第2の領域S2とに分断されており、対応する第1の電極42の第1のパターン42aと第2のパターン42bとが分断されており電気的に接続されていない。そのため、第1の電極42の第1のパターン42aおよび第2のパターン42bのそれぞれに配線26を接続することができる。第1の領域S1と第2の領域S2とは離間していてもよい。
【0061】
図12(d)では、活性領域Sは、第1の領域S1および第2の領域S2に加えて、X方向に関して等幅である矩形状の第3の領域S3を含んで構成されている。活性領域Sの狭窄部44は、第1の領域S1の一部に相当する減幅部45と、第2の領域S2の一部に相当する拡幅部46と、第3の領域S3に相当する等幅部47とで構成されており、X方向に沿って減幅部45、等幅部47、拡幅部46の順に隣接するように並んでいる。
【0062】
図12に示したいずれの活性領域Sも、第1の領域S1に相当する減幅部45と第2の領域S2に相当する拡幅部46とが、第3の領域S3に相当する等幅部47を介してまたは介さずにX方向に沿って並んだ狭窄部44を含む。したがって、上述した実施形態と同様、超音波トランスデューサ30における検知の指向性を実現することができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、所望の活性領域の形状を実現するために、第1の電極の形状が活性領域の形状と一致させる態様を示しているが、第1の電極および第2の電極のいずれか一方、または、第1の電極および第2の電極の両方を、活性領域の形状と一致させる態様であってもよい。さらに、第2の電極は、必ずしも引き延ばし端部を有する必要はなく、圧電体層の下面にのみ設けた態様であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…超音波検知システム、10…対象物、20…制御回路、30…超音波トランスデューサ、40、40A、40B…圧電振動体、41…圧電体層、42…第1の電極、43…第2の電極、44…狭窄部、45…減幅部、46…拡幅部、47…等幅部、50…ハウジング、52…カップ部、53…底蓋、S…活性領域、S1…第1の領域、S2…第2の領域、S3…第3の領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12