(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】表面処理液、及び親水化処理方法
(51)【国際特許分類】
C09D 4/00 20060101AFI20250129BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C09D4/00
C09K3/00 R
(21)【出願番号】P 2021026381
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】先崎 尊博
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155188(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018146(WO,A1)
【文献】特開2016-043325(JP,A)
【文献】特開2020-033408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物(A)と、重合開始剤(B)と、溶媒(S)とを含む親水化表面処理液であって
、
前記重合性化合物(A)が、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを含み、
前記親水性重合性化合物(A1)が、エチレン性不飽和二重結合を有する基と、第四級窒素カチオンであるカチオン性基とを有する重合性ベタイン化合物であり、
前記密着性重合性化合物(A2)が、エチレン性不飽和二重結合を有する基と、加水分解性シリル基とを有する不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1)であり、
前記酸性重合性化合物(A3a)及び前記塩基性重合性化合物(A3b)が、いずれもエチレン性不飽和二重結合を有し、
前記重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHが、6.5以上7.5以下である、親水化表面処理液。
【請求項2】
前記重合性化合物(A)が、ビニル基、及びアリル基から選択される1以上の重合性基を有する化合物を含む、
請求項1に記載の親水化表面処理液。
【請求項3】
前記重合性化合物(A)のモル数に対する、前記密着性重合性化合物(A2)のモル数の比率が0.1モル%以上10モル%以下である、請求項
1又は2に記載の親水化表面処理液。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1項に記載の親水化表面処理液を塗布して、被処理体の表面に塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を加熱して、前記被処理体の表面に被膜を形成することと、を含む、被処理体の表面を親水化させる親水化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液と、当該表面処理液を用いる親水化処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の物品の表面の性質を改質するために、様々な表面処理液を用いて表面処理が行われている。表面改質の中でも、物品の表面の親水化についての要求は大きく、親水化用の薬剤や表面処理液について多数提案されている。親水化用の薬剤や表面処理液を用いて対象物を表面処理することにより、対象物の表面に被膜が形成され、対象物の表面が親水化される。
【0003】
かかる親水化用の薬剤や表面処理液としては、例えば、含窒素複素環構造とベタイン構造とを有するシロキサンモノマーを含む親水性コート液が提案されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、窓や鏡等、表面処理の対象物は、洗浄時に用いられる洗浄剤等の薬品で曝露される場合がある。特に水回りで使用される窓や鏡については、水垢の除去等に使用される酸性洗剤や、カビ取りに使用される塩基性洗剤に晒される機会が多い。また、洗浄剤のpHによらず、石鹸やシャンプー等も含む種々の洗浄剤には、脂肪酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、直鎖アルキルエーテルスルホン酸ナトリウム等の種々のイオン性界面活性剤も含まれる。さらに、洗浄剤には、オレイン酸、ベヘン酸、ジメチルステアリルアミン、ジメチルココナッツアミン等の疎水性部位を有するアニオン又はカチオンを生成させ得る有機酸や有機塩基が含まれる場合もある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載される従来の親水化処理剤により表面処理された物品について、酸、及びアルカリや、種々のイオン性界面活性剤や、疎水性部位を有するアニオン又はカチオンを生成し得る有機酸や有機塩基等を含む洗浄剤に曝露されると、表面処理された物品の表面の親水性が経時的に徐々に低下してしまう場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、表面処理された物品が種々の薬剤に晒されても表面処理の効果が経時的に低下しにくい親水化表面処理液と、当該親水化表面処理液を用いる親水化処理方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(A)と、重合開始剤(B)と、溶媒(S)とを含む親水化表面処理液において、重合性化合物(A)として、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを用い、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHを、6.5以上7.5以下とすることによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より詳細には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、重合性化合物(A)と、重合開始剤(B)と、溶媒(S)とを含む親水化表面処理液であって、
重合性化合物(A)が、エチレン性不飽和二重結合を有し、
重合性化合物(A)が、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを含み、
前記重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHが、6.5以上7.5以下である、親水化表面処理液である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる表面処理液を塗布して、被処理体の表面に塗布膜を形成することと、
塗布膜を加熱して、被処理体の表面に皮膜を形成することと、を含む、被処理体の表面を親水化させる親水化処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面処理された物品が種々の薬剤に晒されても表面処理の効果が経時的に低下しにくい親水化表面処理液と、当該親水化表面処理液を用いる親水化処理方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪親水化表面処理液≫
親水化表面処理液は、重合性化合物(A)と、重合開始剤(B)と、溶媒(S)とを含む。かかる親水化表面処理液は、表面処理の対象物である被処理体の表面を親水化させることができる。
以下、親水化表面処理液に関して、任意の成分、必須の成分等について説明する。
【0013】
<重合性化合物(A)>
重合性化合物(A)は、被処理体の表面において重合開始剤(B)の作用により重合し被処理体の表面に良好に密着した樹脂被膜を形成する。
重合性化合物(A)は、エチレン性不飽和二重結合を有する。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、及びメタクリロイルアミノ基が挙げられる。重合性及び製膜性の点から、重合性化合物(A)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基として、ビニル基、及びアリル基から選択される1以上の重合性基を有する化合物を含むのが好ましい。
【0014】
重合性化合物(A)は、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを含む。
また、重合性化合物(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)と以外に、多官能性モノマー(A4)や他のモノマー(A5)を含んでいてもよい。
【0015】
〔親水性重合性化合物(A1)〕
親水性重合性化合物(A1)は、親水性基とエチレン性不飽和二重結合とを有する化合物である。重合性化合物(A)が、親水性重合性化合物(A)を含むことにより、親水化表面処理液を用いて、被処理体の表面に親水性の被膜を形成できる。
親水性基は、従来から、当業者に親水性基であると認識されている官能基であれば特に限定されず、その中から適宜選択できる。
親水性基の具体例としては、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基等)、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、水酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びスルホン酸基等が挙げられる。また、これらの基を含む有機基も親水性基として好ましい。
【0016】
親水化効果が優れる点で、親水性基としては、下記式(ai):
-NH-R01・・・(ai)
(式(ai)中、R01は、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は水素原子である。)
で表される基が好ましい。
R01について、アミノ基は、カチオン性基に該当し、スルホン酸基、及びホスホン酸基はアニオン性基に該当する。水酸基のうちフェノール性水酸基はアニオン性基に該当する。
【0017】
式(ai)で表される親水性基の具体例としては、アミノ基と、下記式で表される基と、が挙げられる。下記式におけるR
01は、上記のR
01と同様である。
【化1】
【0018】
上記の式(ai)で表される親水性基の具体例のうち、特に好ましい基としては、以下の基が挙げられる。
【化2】
【0019】
重合性や、合成又は入手の容易性等の点から、親水性重合性化合物(A1)としては、下記式(a1-a)で表される(メタ)アクリルアミド化合物が好ましい。
CH2=CR02-CO-NH-R01・・・(a1-a)
(式(a1-a)中、R01は、アミノ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は水素原子であり、R02は水素原子又はメチル基である。)
【0020】
式(a1-a)中、R01については、前述した通りである。
【0021】
(重合性ベタイン化合物)
重合性化合物(A)は、カチオン性基と、アニオン性基とを含むベタイン構造と、エチレン性不飽和二重結合を有する基とを有する重合性ベタイン化合物を親水性重合性化合物(A1)として含むのが好ましい。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
表面処理された被処理体の表面は、疎水性基を有するアニオンや疎水性基を有するカチオンを多量に含む洗浄液に接触する場合がある。表面処理液中の樹脂が、親水性基としてカルボキシ基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基等のアニオン性基のみを有する場合、これらの親水性基が疎水性基を有するカチオンとの相互作用により、親水性基として作用しなくなる場合がある。また、表面処理液中の樹脂が、親水性基として第四級アンモニウム基のようなカチオン性基のみを有する場合、カチオン性基が疎水性基を有するアニオンとの相互作用により親水性基として作用しなくなる場合がある。
しかし、重合性ベタイン化合物を含む重合性化合物(A)の重合体が、親水性基としてカチオン性基及びアニオン性基の双方を有することにより、表面処理された被処理体の表面が、疎水性基を有するカチオンを豊富に含む洗浄剤と接触しても、疎水性基を有するアニオンを豊富に含む洗浄剤と接触しても、カチオン性基及びアニオン性基のいずれか一方は親水性基としての作用を維持でき、被処理体の表面の親水性が低下しにくい。
【0022】
重合性ベタイン化合物における、カチオン性基の数とアニオン性基の数とは、特に限定されない。
重合性ベタイン化合物において、カチオン性基の数とアニオン性基の数とが同一であるのが好ましい。
重合性ベタイン化合物の合成や入手が容易であることから、重合性ベタイン化合物における、カチオン性基の数とアニオン性基の数とは、それぞれ1であるのが好ましい。
【0023】
重合性ベタイン化合物において、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する基とカチオン性基とアニオン性基が、必要に応じて連結基を介して、この順に結合していることが好ましい。
【0024】
カチオン性基は、第四級窒素カチオンであるカチオン性基であることが好ましい。
アニオン性基は、スルホン酸アニオン基、ホスホン酸アニオン基又はカルボン酸アニオン基であることが好ましい。
【0025】
重合性ベタイン化合物における、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの基の中では、ビニル基、及び2-n-プロペニル基(アリル基)が好ましい。
重合性ベタイン化合物における、エチレン性不飽和二重結合の数は限定されないが、1つ又は2つが好ましい。
【0026】
重合性ベタイン化合物としては、例えば、下記式(a1-i)又は式(a1-ii)で表される化合物が好ましい。下記式(a1-i)又は式(a1-ii)で表される重合性ベタイン化合物は、N
+を含むカチオン性基と、Rとしてのアニオン性基とを含む。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
【化3】
(式(a1-i)中、
R
1は、エチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基であり、
R
2は、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、
Rは、アニオン性基であり、
環Aは、複素環である。)
【化4】
(式(a1-ii)中、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立に、エチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基、又は炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、
R
3、R
4、及びR
5のうちの少なくとも1つは、エチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素基であり、
R
6は、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、
Rは、アニオン性基である。)
【0027】
式(a1-i)において、R1としてのエチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0028】
式(a1-i)において、R2としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
R2としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0029】
式(a1-i)において、環Aとしての複素環は、芳香族複素環でもあっても脂肪族複素環であってもよい。
芳香族複素環としては、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環及びピラジン環等の含窒素芳香族複素環において、当該含窒素芳香族複素環中の任意の1つの窒素原子が四級化された環が挙げられる。
脂肪族複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環及びピペラジン環等の含窒素複素環において、当該含窒素複素環中の任意の1つの窒素原子が四級化された環が挙げられる。
【0030】
式(a1-ii)において、R3~R5としてのエチレン性不飽和二重結合を含む炭化水素基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、3-n-ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0031】
式(a1-ii)において、R3~R5としての炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
R3~R5としての炭化水素基は置換基を有していてもよい。R3~R5としての炭化水素基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上4以下のアシル基、炭素原子数2以上4以下のアシルオキシ基、アミノ基、及び1つ又は2つの炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基等が挙げられる。
R3~R5としてのアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0032】
式(a1-ii)において、R6としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
R6としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0033】
アニオン性基がスルホン酸アニオン基である重合性ベタイン化合物としては、合成や入手が容易であることから、下記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーが好ましい。
【化5】
(式(a1-iii)中、R
1、R
2、及び環Aは、式(a1-i)におけるR
1、R
2、及び環Aと同様である。)
【化6】
(式(a1-iv)中、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、式(a1-ii)におけるR
3、R
4、R
5、及びR
6と同様である。)
【0034】
上記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーとしては、下記式(a1-v)、(a1-vi)又は(a1-vii)で表されるモノマーが挙げられる。
【化7】
(式(a1-v)、(a1-vi)、及び(a1-vii)中、R
2は、式(a1-iii)におけるR
2と同様であり、R
5及びR
6は、式(a1-iv)におけるR
5及びR
6と同様であり、R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基である。)
【0035】
式(a1-v)、(a1-vi)、及び(a1-vii)において、R13及びR14としての炭素原子数1以上4以下のアルキレン基としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びブタン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0036】
アニオン性基がホスホン酸アニオン基やカルボン酸アニオン基である重合性ベタイン化合物としては、上記式(a1-iii)又は式(a1-iv)で表されるモノマーや、上記式(a1-v)、(a1-vi)、又は(a1-vii)で表されるモノマーにおける、スルホン酸アニオン基(-SO3
-)が、ホスホン酸アニオン基(-(PO3)2-)やカルボン酸アニオン基(-COO-)に置き換わったモノマーが挙げられる。
【0037】
式(a1-i)又は式(a1-ii)で表される重合性ベタイン化合物の具体例としては、下記式の化合物や、下記式の化合物における、スルホン酸アニオン基(-SO
3
-)が、ホスホン酸アニオン基(-(PO
3)
2-)やカルボン酸アニオン基(-COO
-)に置き換わったモノマーが挙げられる。
【化8】
【0038】
式(a1-i)又は式(a1-ii)で表される重合性ベタイン化合物は、公知の反応により合成することができる。例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する基とカチオン性基となる基とを有する化合物に、アニオン性基を有する化合物を反応させることにより得られる。具体例としては、例えば式(a1-iii)で表される化合物は、下記化合物とスルトンとを、溶媒中で反応させることにより得られる。スルトンとしては、4員環以上10員環以下のスルトンが挙げられ、1,3-プロパンスルトン、及び1,4-ブタンスルトンが好ましい。
【化9】
(式中、R
1は、上記(a1-i)におけるR
1と同様であり、環Aは、複素環である。)
【0039】
また、下記式(a1-viii)で表される化合物も重合性ベタイン化合物として好ましい。下記式(a1-viii)で表される重合性ベタイン化合物は、N+を含むカチオン性基と、R20としてのアニオン性基とを含む。カチオン性基、及びアニオン性基のいずれも親水性基として作用する。
CH2=CR15-CO-NH-R16-N+(R17)(R18)-R19-R20・・・(a1-viii)
(式(a1-viii)中、R15は水素原子又はメチル基であり、R16及びR19は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基であり、R17及びR18は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下の炭化水素基であり、R20は、スルホン酸アニオン基(-SO3
-)、ホスホン酸アニオン基(-(PO3)2-)、又はカルボン酸アニオン基(-COO-)である。)
【0040】
式(a1-viii)において、R16及びR19としての2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基が挙げられ、アルキレン基が好ましい。
R16及びR19としてのアルキレン基の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
【0041】
式(a1-viii)において、R17及びR18としての炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
R17及びR18としての炭化水素基は置換基を有していてもよい。R17及びR18としての炭化水素基が有していてもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。当該置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上4以下のアシル基、炭素原子数2以上4以下のアシルオキシ基、アミノ基、及び1つ又は2つの炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されたアルキルアミノ基等が挙げられる。
R17及びR18としてのアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、及びn-デシル基が挙げられる。
【0042】
式(a1-viii)において、R20は、スルホン酸アニオン基(-SO3
-)、ホスホン酸アニオン基(-PO3
2-)、又はカルボン酸アニオン基(-COO-)であり、スルホン酸アニオン基(-SO3
-)が好ましい。
【0043】
式(a1-viii)で表されるN置換(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、下記式の化合物が挙げられる。下記式において、R15は水素原子又はメチル基である。
【0044】
【0045】
重合性化合物(A)における親水性重合性化合物(A1)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。良好な親水化の効果と、形成される樹脂被膜の被処理体表面への良好な密着性との両立の点で、重合性化合物(A)のモル数に対する、親水性重合性化合物(A1)のモル数の比率は、50モル%以上99モル%以下が好ましく、60モル%以上99モル%以下がより好ましく、70モル%以上99モル%以下がさらに好ましい。
【0046】
〔密着性重合性化合物(A2)〕
重合性化合物(A)は、前述の親水性重合性化合物(A1)とともに、密着性重合性化合物(A2)を含む。密着性重合性化合物(A2)は、エチレン性不飽和二重結合と、密着性基を有する。密着性基は、共有結合を形成することにより被処理体の表面と化学的に結合可能であったり、極性等に基づいて、静電気力の作用によって被処理体の表面と結合可能であったりする官能基である。
密着性基としては、加水分解性シリル基、アミノ基(-NH2)、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基から選択される少なくとも1つの基が好ましい。
加水分解性シリル基は、被処理体表面と反応して共有結合を形成することにより、親水化表面処理液を用いて形成される被膜を、被処理体表面に強固に結合させる。また、アミノ基(-NH2)、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基は、極性基であって、その極性に基づいて、親水化表面処理液を用いて形成される被膜を被処理体表面に強固に結合させる。
【0047】
密着性重合性化合物(A2)の好ましい例としては、エチレン性不飽和二重結合と、加水分解性シリル基とを有する不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1)、及びエチレン性不飽和二重結合と、アミノ基(-NH2)、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基から選択される少なくとも1つの極性重合性化合物(A2-2)が挙げられる。
【0048】
(不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1))
不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基と、加水分解性シリル基とを有する。
【0049】
エチレン性不飽和二重結合を有する基は、不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1)が重合性ベタイン化合物(A1)と共重合可能である限り特に限定されない。
エチレン性不飽和二重結合を有する基の好適な具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等のアルケニル基;N-ビニルアミノ基、N-1-プロペニルアミノ基、N-アリルアミノ基、N-1-n-ブテニルアミノ基、N-2-n-ブテニルアミノ基、及びN-3-n-ブテニルアミノ基等のモノアルケニルアミノ基;N,N-ジビニルアミノ基、N,N-ジ(1-プロペニル)アミノ基、N,N-ジアリルアミノ基、N,N-ジ(1-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(2-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(3-n-ブテニル)アミノ基等のジアルケニルアミノ基;アリルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、3-n-ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ビニルアミノカルボニル基、1-プロペニルアミノカルボニル基、アリルアミノカルボニル基、1-n-ブテニルアミノカルボニル基、2-n-ブテニルアミノカルボニル基、3-n-ブテニルアミノカルボニル基等のアルケニルアミノカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基、1-プロペニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1-n-ブテニルオキシカルボニル基、2-n-ブテニルオキシカルボニル基、3-n-ブテニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、及びメタクリロイルアミノ基等の(メタ)アクリロイル基含有基が挙げられる。
これらの基のなかでは、アルケニル基、及び(メタ)アクリロイル基含有基が好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、例えば2以上6以下が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0050】
加水分解性シリル基は、加水分解によりシラノール基を生成させ得るシリル基である。
加水分解性シリル基の好適な例としては、-SiR11
aR12
3-aで表される基が挙げられる。ここで、R11は、アルコキシ基、及びハロゲン原子等の加水分解によりシラノール基を生成させ得る基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、及びn-ブチルオキシ基等の炭素原子数以下の1以上4以下のアルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
R12は、本発明の目的を阻害しない範囲で、加水分解によりシラノール基を生成させ得る基に該当しない種々の有機基であってよい。かかる有機基としては、炭素原子数1以上10以下の炭化水素基が好ましい。炭化水素基は、脂肪族基であっても、芳香族基であってもよい。炭化水素基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもこれらの組み合わせでもよい。炭素原子数1以上10以下の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、ベンジル基、及びフェネチル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、及びエチル基が好ましい。
以上説明した炭化水素基は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、及びシアノ基等の置換基を有していてもよい。
aとしては2又は3が好ましく、3がより好ましい。また、aが2又は3の場合、被処理体表面において隣接して存在する-SiR11
aR12
3-aで表される基の間でも縮合反応が生じやすい。その結果、親水化表面処理液を用いて形成される被膜中に、被処理体の表面に沿って広がるシロキサン結合のネットワークが形成されることにより、重合性化合物(A)の重合体を、被処理体表面に特に強固に結合させやすい。
【0051】
-SiR11
aR12
3-aで表される加水分解性シリル基の好適な具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、及びエチルジエトキシシリル基が挙げられる。
【0052】
不飽和基含有ケイ素化合物(A2-1)としては、例えば、下記式(a2-1)で表される化合物が好ましい。
R13-(-CO-R14-)b-R15-SiR11
aR12
3-a・・・(a2-1)
【0053】
式(a2-1)において、R11、R12、及びaは加水分解性シリル基について前述の通りである。R13は、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基である。R14は、-O-、又は-NH-である。R15は、単結合、それぞれ炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、芳香族炭化水素基、又は含窒素複素環基である。bは0又は1である。
【0054】
R13は、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基である。アルケニル基の好適な例としては、ビニル基、1-メチルビニル基、アリル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、及び5-ヘキセニル基が挙げられる。bが1である場合、R13は、ビニル基又は1-メチルビニル基が好ましい。つまり、bが1である場合、R13-CO-R14-で表される基が、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルアミノ基であるのが好ましい。
【0055】
R15としてのアルキレン基としては、例えばメチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、及びデカン-1,10-イル基が挙げられる。
R15としての芳香族炭化水素基としては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ビフェニル-3.4’-ジイル基、及びビフェニル-3,3’-ジイル基が挙げられる。
【0056】
R15含窒素複素環の具体例としては、下記の含窒素複素環から2つの水素原子を除いた基が挙げられる。含窒素複素環としては、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、トリアゾリジン環、テトラゾリジン環、ピロリン環、ピラゾリン環、イミダゾリン環、トリアゾリン環、テトリゾリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びテトラゾール環等の含窒素5員環;ピペリジン環、ピペリデイン環、ピペラジン環、トリアジナン環、テトラジナン環、ペンタジナン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環、及びペンタジン環等の含窒素6員環;アゼパン環、ジアゼパン環、トリアゼパン環、テトラゼパン環、アゼピン環、ジアゼピン環、及びトリアゼピン環等の含窒素7員環;インドール環、インドレニン環、インドリン環、イソインドール環、イソインドレニン環、イソインドリン環、ベンゾイミダゾール環、インドリジン環、プリン環、インドリジジン環、ベンゾジアゼピン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジジン環、キノキサリン環、シンノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、及びプテリジン環等の含窒素縮合多環が挙げられる。
【0057】
式(a2-1)で表されるシラン化合物の好適な具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、及びアリルトリエトキシシラン等の不飽和基含有シラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランが挙げられる。
【0058】
(極性重合性化合物(A2-2))
極性重合性化合物(A2-2)は、エチレン性不飽和二重結合を有する基と、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基から選択される極性基とを有する。
【0059】
極性重合性化合物(A2-2)としては、下記式(a2-2)で表される化合物が好ましい。
CH2=CRA1-(RA2)c-CO-RA3・・・(a2-2)
(式(a2-2)中、RA1は水素原子又はメチル基であり、RA2は2価の炭化水素基であり、cは0又は1であり、RA3は、-OH、-O-RA4、又は-NH-RA4であり、RA4は、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の極性基で置換された炭化水素基である。)
【0060】
上記式(a2-2)中、RA2は2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。式(a2-2)で表される化合物の入手や調製が容易である事から、RA2としての2価の炭化水素基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましく、1以上6以下が最も好ましい。
【0061】
RA2としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0062】
RA2の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
【0063】
RA3は、-OH、-O-RA4、又は-NH-RA4である。RA4は、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の極性基で置換された炭化水素基である。
RA4の基の主骨格を構成する炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましい。
直鎖状、又は分岐鎖状の脂肪族基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
環状の脂肪族基の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等のシクロオクチル基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基や、これらのポリシクロアルカンのC1-C4アルキル置換体から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、メチル基、エチル基等のC1-C4アルキル基で置換されていてもよい。
【0064】
式(a2-2)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化11】
【0065】
極性重合性化合物(A2-2)としては、下記式(a2-3)で表される化合物も好ましい。
(R3a-R2a)n-X-R1a・・・(a2-3)
(式(a2-3)中、R1aは、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基であり、R2aは、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、R3aは、水素原子であるか、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基、シアノ基、及び水酸基から選択される極性基であり、nは1又は2であり、Xは、n+1価の含窒素複素環基であり、nが1である場合、Ra3は前述の極性基であり、nが2である場合、少なくとも一方のR3aが前述の極性基である。)
【0066】
式(a2-3)中、Ra1は、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基である。1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基の好適な例としては、下記式(a2-3i)~式(a2-3vii)で表される基が挙げられる。下記式(a3-2i)~式(a2-3vii)において、Ra01は炭素原子数1以上10以下のアルケニル基であり、Ra02は炭素原子数1以上10以下の炭化水素基である。
-Ra01・・・(a2-3i)
-NH-Ra01・・・(a2-3ii)
-N(Ra01)(Ra02)・・・(a2-3iii)
-N(Ra01)2・・・(a2-3iv)
-O-Ra01・・・(a2-3v)
-CO-NH-Ra01・・・(a2-3vi)
-CO-O-Ra01・・・(a2-3vii)
【0067】
Ra01としてのアルケニル基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましい。Ra01としてのアルケニル基は、直鎖アルケニル基でもよく、分岐鎖アルケニル基でもよい。
Ra02としての炭化水素基は、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、脂肪族基と芳香族基との組み合わせであってもよい。Ra02としての炭化水素基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。
【0068】
Ra1としての、1以上のエチレン性不飽和二重結合を有する有機基の好適な具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等のアルケニル基;N-ビニルアミノ基、N-1-プロペニルアミノ基、N-アリルアミノ基、N-1-n-ブテニルアミノ基、N-2-n-ブテニルアミノ基、及びN-3-n-ブテニルアミノ基等のモノアルケニルアミノ基;N,N-ジビニルアミノ基、N,N-ジ(1-プロペニル)アミノ基、N,N-ジアリルアミノ基、N,N-ジ(1-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(2-n-ブテニル)アミノ基、N,N-ジ(3-n-ブテニル)アミノ基等のジアルケニルアミノ基;アリルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、3-n-ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ビニルアミノカルボニル基、1-プロペニルアミノカルボニル基、アリルアミノカルボニル基、1-n-ブテニルアミノカルボニル基、2-n-ブテニルアミノカルボニル基、3-n-ブテニルアミノカルボニル基等のアルケニルアミノカルボニル基;ビニルオキシカルボニル基、1-プロペニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、1-n-ブテニルオキシカルボニル基、2-n-ブテニルオキシカルボニル基、3-n-ブテニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、及びメタクリロイルアミノ基等の(メタ)アクリロイル基含有基が挙げられる。
これらの基の中では、ビニル基、アリル基、N,N-ジアリルアミノ基、アリルオキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基が好ましく、N,N-ジアリルアミノ基がより好ましい。
【0069】
式(a2-3)中、R2aは、単結合、又は炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。アルキレン基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。炭素原子数1以上10以下のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、及びn-デカン-1,10-ジイル基が挙げられる。
これらのアルキレン基の中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基が好ましく、メチレン基、及びエタン-1,2-ジイル基がより好ましい。
【0070】
式(a2-3)中、R2aは、Xは、n+1価の含窒素複素環基である。nは1又は2である。含窒素複素環は、芳香族基であっても脂肪族基であってもよい。
含窒素複素環は、単環であっても、単環式の含窒素複素環が、単環式の芳香族炭化水素環、及び単環式の含窒素複素環から選択される1以上の単環と縮合した縮合多環であってもよい。
また、含窒素複素環は、単環式含窒素複素環、及び縮合多環式の含窒素複素環から選択される2以上の環が単結合を介して結合した環であってもよい。
【0071】
式(a2-3)において、Ra1で表される基、及びR3a-R2a-で表される基は、Xで表される含窒素複素環基の環構成原子としての炭素原子上に結合してもよく、環構成原子としての窒素原子上に結合してもよい。
【0072】
Xを与える含窒素複素環の具体例としては、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、トリアゾリジン環、テトラゾリジン環、ピロリン環、ピラゾリン環、イミダゾリン環、トリアゾリン環、テトリゾリン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びテトラゾール環等の含窒素5員環;ピペリジン環、ピペリデイン環、ピペラジン環、トリアジナン環、テトラジナン環、ペンタジナン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、テトラジン環、及びペンタジン環等の含窒素6員環;アゼパン環、ジアゼパン環、トリアゼパン環、テトラゼパン環、アゼピン環、ジアゼピン環、及びトリアゼピン環等の含窒素7員環;インドール環、インドレニン環、インドリン環、イソインドール環、イソインドレニン環、イソインドリン環、ベンゾイミダゾール環、インドリジン環、プリン環、インドリジジン環、ベンゾジアゼピン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジジン環、キノキサリン環、シンノリン環、キナゾリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、及びプテリジン環等の含窒素縮合多環;これらの含窒素複素環から選択される2つ以上の環が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
これらの含窒素複素環に由来するXとしては、重合性化合物(A)の重合体の被処理体表面への密着性が良好である点等から、含窒素6員環を含む2価又は3価の基が好ましく、トリアジン環を含む2価又は3価の基がより好ましく、1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル基、及び1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル基がさらに好ましい。
【0073】
Xとしての2価、又は3価の含窒素複素間の好適な具体例としては以下の基が挙げられる。
【化12】
【0074】
式(a2-3)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化13】
【0075】
【0076】
以上の化合物の中では、下記の化合物が好ましい。
【化15】
【0077】
さらに、N,N’-ジ(メタ)アクリロイル-1,2-ジヒドロキシエチレンジアミン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、及びフタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレートのような水酸基を有する多官能性の化合物を極性重合性化合物(A2-2)として用いるのも好ましい。
【0078】
かかる多官能性の極性重合性化合物(A2-2)は、水酸基の作用のみならず、分子鎖の架橋によって、重合性化合物(A)が重合して形成される樹脂被膜の被処理体表面への密着性を向上させ得る。
重合性化合物(A)のモル数に対する密着性重合性化合物の(A2)のモル数の比率は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。良好な親水化の効果と、形成される樹脂被膜の被処理体表面への良好な密着性との両立の点で、重合性化合物(A)のモル数に対する密着性重合性化合物(A2)のモル数の比率は、樹脂(A)の被処理体の表面への密着性と、優れた親水化の効果の両立の点で、0.1モル%以上30モル%以下が好ましく、0.1モル%以上20モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下がさらに好ましい。
【0079】
〔酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)〕
親水化表面処理液に関して、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHは6.5以上7.5以下である。このように重合性化合物(A)の水溶液のpHが調整されることにより、親水化表面処理液を用いて被処理体の表面に形成される樹脂被膜が静電気的に中性に近づく。その結果として、表面処理後の被処理体の表面が、アニオン性の薬液やカチオン性の薬液のような種々の薬液に晒されても、当該薬液のアニオン性成分やカチオン性成分が被膜に結合しにくく、表面処理の効果が経時的に低下しにくい。
【0080】
重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液のpHを調整する方法は特に限定されない。重合性化合物(A)は、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)を含む。重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHは、好ましくは、重合性化合物(A)における、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)の重合性化合物(A)中の含有量を調整することにより調整される。
【0081】
(酸性重合性化合物(A3a))
酸性重合性化合物(A3a)は、エチレン性不飽和二重結合と、酸性基とを有する。酸性基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、及びホスホン酸基が好ましい。
【0082】
酸性重合性化合物(A3a)における、エチレン性不飽和二重結合、及び酸性基以外の部分の構造は、酸性重合性化合物(A3a)の水溶液が酸性を示す限り特に限定されない。
酸性重合性化合物(A3a)の好ましい例としては、炭素原子数2以上10以下のアルケニルスルホン酸、炭素原子数3以上10以下の(メタ)アクリロイルオキシアルキルスルホン酸、炭素原子数8以上20以下のアルケニル置換アレーンスルホン酸、炭素原子3以上10以下の不飽和脂肪族カルボン酸、炭素原子数4以上10以下の(メタ)アクリロイルオキシアルカン酸、炭素原子数9以上20以下のアルケニル置換アレーンカルボン酸、炭素原子数2以上10以下のリン酸アルケニルエステル、炭素原子数3以上10以下のリン酸(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステル、炭素原子数8以上20以下のアルケニル置換アリールリン酸エステル、炭素原子数2以上10以下のアルケニルホスホン酸、炭素原子数3以上10以下の(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸、及び炭素原子数8以上20以下のアルケニル置換アレーンホスホン酸が挙げられる。
【0083】
酸性重合性化合物(A3a)の好適な具体例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、4-ペンテン-1-スルホン酸、5-ヘキセン-1-スルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタン-1-スルホン酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロパン-1-スルホン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブタン-1-スルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸、3-ビニルベンゼンスルホン酸、2-ビニルベンゼンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブタン酸、4-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、2-ビニル安息香酸、リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸イソプロペニル、リン酸3-ブテニル、リン酸4-ペンテニル、リン酸(メタ)アクリロイルオキシメチル、リン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル、リン酸4-(メタ)アクリロイルオキシブチル、リン酸4-ビニルフェニル、リン酸3-ビニルフェニル、リン酸2-ビニルフェニル、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、3-ブテニルホスホン酸、及び4-ペンテニルホスホン酸が挙げられる。
【0084】
(塩基性重合性化合物(A3b))
塩基性重合性化合物(A3b)は、エチレン性不飽和二重結合と、塩基性基とを有する。塩基性基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、及び塩基性芳香族複素環基が挙げられる。
塩基性重合性化合物(A3b)における、エチレン性不飽和二重結合、及び塩基性基以外の部分の構造は、塩基性重合性化合物(A3b)の水溶液が酸性を示す限り特に限定されない。
塩基性重合性化合物(A3b)の好適な具体例としては、ビニルアミン、アリルアミン、3-ブテニルアミン、4-ペンテニルアミン、ジビニルアミン、ジアリルアミン、ジ(3-ブテニル)アミン、ジ(4-ペンテニル)アミン、トリアリルアミン、4-ビニルアニリン、3-ビニルアニリン、2-ビニルアニリン、4-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、2-ビニル-1H-イミダゾール、及び2-アリル-1Hイミダゾールが挙げられる。
【0085】
酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)の使用量は、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHが6.5以上7.5以下である限り特に限定されない。
酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)の使用量は、両者の合計量として、重合性化合物(A)のモル数に対して、0.1モル%以上30モル%以下が好ましく、0.1モル%以上20モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下がさらに好ましい。
重合性化合物(A)は、酸性重合性化合物(A3a)、又は塩基性重合性化合物(A3b)のみを含んでいてもよく、酸性重合性化合物(A3a)と塩基性重合性化合物(A3b)とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0086】
〔多官能モノマー(A4)〕
重合性化合物(A)は、親水性重合性化合物(A1)、密着性重合性化合物(A2)、酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)以外の、多官能モノマー(A4)を含んでいてもよい。
多官能モノマー(A4)は、2以上のエチレン性不飽和二重結合を有し、親水性重合性化合物(A1)、密着性重合性化合物(A2)、酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)に該当しない化合物である。
多官能モノマー(A4)は、重合性化合物(A)が重合することにより形成される樹脂被膜において、分子鎖を架橋する。架橋により、樹脂被膜の被処理体表面への密着性が向上する。
【0087】
多官能モノマー(A4)の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘプタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0088】
重合性化合物(A)のモル数に対する多官能モノマー(A4)のモル数の比率は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。重合性化合物(A)の重合物を適度に架橋する点で、重合性化合物(A)のモル数に対する多官能モノマー(A4)の比率は、0.5モル%以上20モル%以下が好ましく、1モル%以上15モル%以下がより好ましく、1モル%以上10モル%以下がより好ましい。
【0089】
〔他のモノマー(A5)〕
重合性化合物(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、親水性重合性化合物(A1)、密着性重合性化合物(A2)、酸性重合性化合物(A3a)、酸性重合性化合物(A3a)、塩基性重合性化合物(A3b)、及び多官能モノマー(A4)以外の他のモノマー(A5)を含んでいてもよい。
他のモノマー(A5)は、エチレン性不飽和二重結合を有し、親水性重合性化合物(A1)、密着性重合性化合物(A2)、酸性重合性化合物(A3a)、酸性重合性化合物(A3a)、塩基性重合性化合物(A3b)、及び多官能モノマー(A4)に該当しない化合物である。
【0090】
他のモノマー(A5)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、N-イソペンチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロルスチレン、メチルジアリルアミン、エチルジアリルアミン、及びトリアリルアミン等が挙げられる。
【0091】
重合性化合物(A)のモル数に対する他のモノマー(A5)のモル数の比率は、重合性化合物(A)が、親水性重合性化合物(A1)、密着性重合性化合物(A2)、酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)を所望する量含んでいる限り特に限定されない。
【0092】
親水化表面処理液の質量に対する、重合性化合物(A)の質量の比率は、特に限定されないが、1質量%40質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、2質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0093】
<重合開始剤(B)>
親水化表面処理液は、重合性化合物(A)を重合させる成分として重合開始剤(B)を含む。重合開始剤(B)としては、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(A)を重合させ得る化合物であれば特に限定されない。
【0094】
重合開始剤(B)の好適な例としては、アゾ重合開始剤(B1)、及び過酸化物(B2)が挙げられる。
【0095】
アゾ重合開始剤(B1)の具体例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(ジヒドロクロリド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。これらのアゾ重合開始剤(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0096】
過酸化物(B2)の具体例としては、イソブチルパーオキサイド、及びデカノイルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド;アセチルパーオキサイド等の過酸化カルボン酸無水物;ベンゾイルパーオキサイド等の芳香族系過酸化カルボン酸無水物;コハク酸パーオキサイド等のポリカルボン酸の過酸化無水物;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、及びジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等の過酸化エステル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等のカルボン酸とスルホン酸の過酸化無水物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウム、及び過リン酸カリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
これらの過酸化物(B2)は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0097】
重合開始剤(B)の使用量は、重合反応を良好に行うことができれば特に限定されない。重合開始剤(B)の使用量は、重合性化合物(A)全体のモル数に対して、0.1モル%以上20モル%以下が好ましく、0.1モル%以上15モル%以下がより好ましい。
【0098】
なお、表面処理液の経時的な安定性の点で、表面処理液を、重合性化合物(A)と溶媒(S)とを含む第1液と、重合開始剤(B)と溶媒(S)とを含む第2液とからなる2液型の表面処理液としてもよい。かかる2液型の表面処理液は、表面処理の直前に混合されて使用される。
【0099】
〔溶媒(S)〕
表面処理液は、溶媒(S)を含む。溶媒(S)は、水であっても、有機溶剤であっても、有機溶剤の水溶液であってもよい。溶媒(S)としては、重合性化合物(A)の溶解性、親水化処理の作業の安全性、及び低コストである点等から、水が好ましい。
溶媒(S)として使用される有機溶剤の好適な例としては、アルコールが挙げられる。該アルコールとしては、脂肪族アルコールが挙げられ、炭素原子数1以上3以下のアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。該アルコールは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
溶媒(S)における水の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0101】
〔その他の成分〕
親水化表面処理液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、及び粘度調整剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、これらの添加剤の通常使用される量を勘案して、適宜決定される。
【0102】
≪親水化処理方法≫
親水化処理方法は、
前述の親水化表面処理液を塗布して、被処理体の表面に塗布膜を形成することと、
塗布膜を加熱して、被処理体の表面に被膜を形成することと、
を含む。
ただし、被処理体の表面が所望する程度に親水化される限りにおいて、被処理体の親水化されるべき表面の全面に均一に表面処理液が塗布される必要はない。
親水化処理方法は、さらに、被膜の加熱後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスすることを含むのが好ましい。
特に、水や、有機溶媒の水溶液によりリンスを行うことにより、重合度や架橋度の低い、低分子量の重合物を被膜から除去しやすい。
【0103】
以下、表面処理液を塗布して、被処理体の表面に塗布膜を形成することを「塗布工程」とも記す。塗布膜を加熱して、被処理体の表面に被膜を形成することを「加熱工程」とも記す。被膜の加熱後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスすることを「リンス工程」とも記す。
以下、塗布工程、加熱工程、及びリンス工程について詳細に説明する。
【0104】
<塗布工程>
塗布工程では、前述の表面処理液を被処理体の表面に塗布して塗布膜を形成する。
塗布方法は特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられる。被処理体が基板である場合、基板の表面に、均一な膜厚の被膜をむらなく形成しやすいことから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。
【0105】
被処理体の表面処理液が塗布される面の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
有機材料としては、PET樹脂やPBT樹脂等のポリエステル樹脂、各種ナイロン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、及びシリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のポリオルガノシロキサン等)等、種々の樹脂材料が挙げられる。
また、種々のレジスト材料に含まれる感光性の樹脂成分や、アルカリ可溶性の樹脂成分も有機材料として好ましい。
無機材料としては、ガラス、シリコンや、銅、アルミニウム、鉄、タングステン等の種々の金属が挙げられる。金属は、合金であってもよい。
【0106】
被処理体の形状は特に限定されない。被処理体は平坦であってもよく、例えば、球状や、柱状等の立体形状であってもよい。
【0107】
被処理体は、洗浄剤等の薬品に曝露される場合があり、薬品の曝露により被処理体に形成された被膜の親水性の低下が懸念される。しかしながら、上述の表面処理液を用いることにより、表面処理された表面が種々の薬品に接触した場合の親水性の低下を抑制できる。そのため、洗浄液等の薬品に曝露されることが多い被処理体、例えば、窓、鏡、家具、光学装置(例えば、レンズを有する装置)が備えるガラス部材や、透光性樹脂部材を、被処理体とすることで、親水性についての薬品耐性という効果を特に発揮することができる。
【0108】
表面処理液を被処理体の表面に塗布した後は、周知の乾燥方法により、必要に応じて、表面処理液からなる塗布膜から溶媒(S)の少なくとも一部を除去してもよい。
【0109】
塗布工程において形成される被膜の膜厚は、特に限定されない。塗布工程において形成される塗布膜の厚さは、例えば、1μm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。
【0110】
塗布工程によって形成される塗布膜の厚さは、表面処理液の固形分濃度、塗布条件等を調整することにより調整可能である。
【0111】
<加熱工程>
加熱工程では、塗布工程で形成された塗布膜が加熱される。加熱により、塗布膜に含まれる重合性化合物(A)が重合開始剤(B)の作用により重合し、被処理体の表面に強固に結合する樹脂被膜が形成される。
【0112】
加熱条件は、重合性化合物(A)が所望する程度に重合し、被処理体が劣化したり変形したりしない条件であれば特に限定されない。加熱温度としては、例えば、30℃以上300℃以下が好ましく、40℃以上250℃以下がより好ましい。加熱時間は、例えば1分以上6時間以下が好ましく、3分以上分60分以下がより好ましく、5分以上30分以下がさらに好ましい。
【0113】
<リンス工程>
リンス工程では、塗布膜の加熱後に、被処理体の表面をリンス液によりリンスする。リンスによって、被処理体の表面に形成される被膜を薄膜化できる。
リンス液としては、所望の膜厚の被膜を形成できる限り特に限定されない。リンス液としては、水、有機溶剤、及び有機溶剤の水溶液を用いることがでる。リンス液としては水が好ましい。
被膜をリンスする方法としては、特に限定されない。典型的には、前述の塗布方法と同様の方法によって、リンス液を被膜に接触させることにより、リンスが行われる。
【0114】
リンス後に得られる被膜の膜厚は、例えば、10nm以下が好ましく、0.1nm以上10nm以下がより好ましく、0.1nm以上8nm以下がさらに好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらにより好ましく、0.5nm以上3nm以下が特に好ましい。
【0115】
被膜の厚さは、表面処理液の固形分濃度、塗布条件、リンス液の使用量、リンス液の種類、及びリンス液の温度等を調整することにより調整可能である。
【0116】
リンス後、必要に応じて被処理体を乾燥させた後、被処理体は種々の用途に好適に使用される。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0118】
〔実施例1~4、及び比較例1~4〕
実施例、及び比較例において、親水性重合性化合物(A1)として、以下のA1-1~A1-3を用いた。
【化16】
【0119】
実施例、及び比較例において、密着性重合性化合物(A2)として、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルを用いた。
【0120】
実施例、及び比較例において、酸性重合性化合物(A3a)、及び塩基性重合性化合物(A3b)として下記のA3-1~A3-3を用いた。
A3-1:ビニルスルホン酸
A3-2:4-ビニルピリジン
A3-3:ジアリルアミン
【0121】
実施例及び比較例において、重合開始剤(B)として、表1に記載の量の2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を用いた。
【0122】
表1に記載の種類及び量の重合性化合物(A)を固形分濃度10質量%となるように水に溶解させたのち、得られた溶液に表1に記載の量の重合開始剤(B)を加えて実施例1~4、及び比較例1~4の表面処理液を得た。
【0123】
<重合性化合物(A)の水溶液のpH>
重合性化合物(A)として用いた各化合物を、表1に記載されるモル比率と同様のモル比率となり、且つ重合性化合物(A)の濃度が10質量%となるように水に溶解させた。
得られた水溶液を用いて、23℃においてpHを測定した。pHの測定結果を表1に記す。
【0124】
<水接触角>
シリコンウエハー上に各実施例、及び比較例の表面処理液を1000rpm、60秒の条件でスピンコートした後、ウエハーを100℃で10分間加熱した。次いで、ウエハー表面を水洗して、上記の重合性化合物(A)の共重合体である樹脂からなる被膜をウエハー上に形成した。
Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い、シリコンウエハーの表面処理された表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下10秒後における接触角として、水の接触角を測定した。シリコンウエハー上の3点の水の接触角の平均値を、表1に記す。
なお、未処理のシリコンウエハーの水の接触角は13.8°である。
【0125】
<薬液耐性>
水接触角の測定と同様の方法で表面処理されたシリコンウエハーを、アニオン性の薬液である濃度1質量%のラウレス硫酸ナトリウム水溶液、又はカチオン性の薬液であるアミン変性ポリジメチルシロキサンの濃度1質量%の水溶液に1分間浸漬した。その後、シリコンウエハーの表面を純水で1分間シャワー洗浄した。洗浄後のシリコンウエハーの表面処理された表面の水接触角を上記の方法に従って測定した。測定された水の接触角を表1に記す。
【0126】
【0127】
実施例によれば、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(A)と、重合開始剤(B)と、溶媒(S)とを含む親水化表面処理液において、重合性化合物(A)として、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを用い、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHを、6.5以上7.5以下とすることによって、親水化処理液を用いて、アニオン性薬液やカチオン性薬液に接触した場合でも、親水性が低下しにくい被膜を被処理体の表面に形成できることが分かる。
他方、比較例1~3によれば、親水化処理液が、重合性化合物(A)として、親水性重合性化合物(A1)と、密着性重合性化合物(A2)と、酸性重合性化合物(A3a)及び/又は塩基性重合性化合物(A3b)とを含んでいても、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHが、6.5以上7.5以下の範囲から外れていると、親水化処理液を用いて、アニオン性薬液やカチオン性薬液に接触した場合に親水性が低下しにくい被膜を被処理体の表面に形成できないことが分かる。
さらに、比較例4によれば、重合性化合物(A)の濃度10質量%の水溶液の23℃におけるpHが、6.5以上7.5以下の範囲内であっても、重合性化合物(A)が親水性重合性化合物(A1)を含まない場合、親水化処理液を用いて、アニオン性薬液やカチオン性薬液に接触した場合に親水性が低下しにくい被膜を被処理体の表面に形成できないことが分かる。