(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】負極板及びその製造方法、バッテリセル、バッテリ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20250131BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250131BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20250131BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250131BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250131BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250131BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250131BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250131BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250131BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/139
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2021159387
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】202110336525.2
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】袁 相霏
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-288520(JP,A)
【文献】特開2018-035035(JP,A)
【文献】特表2020-507201(JP,A)
【文献】特開2013-077558(JP,A)
【文献】特開2018-056066(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111977645(CN,A)
【文献】特表2016-525997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13 - H01M 4/84
H01M10/05 - H01M10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板であって、
負極集電体と、
前記負極集電体の表面に形成されている炭素量子ドット層と、
前記負極集電体から離れた前記炭素量子ドット層の表面に形成されている負極ケイ素含有コーティング層と、を含み、
前記炭素量子ドット層は、炭素量子ドット、接着剤、分散剤および添加剤を含
む混合スラリーによって形成され、前記接着剤の質量含有量は、前記
混合スラリーの総質量の0.1%~5%であり、前記分散剤の質量含有量は、前記
混合スラリーの総質量の0.1%~5%であ
り、前記炭素量子ドットは、導電性を有する炭素からなり、前記炭素量子ドットのサイズは10nm以下である、
ことを特徴とする負極板。
【請求項2】
前記負極ケイ素含有コーティング層は、ケイ素含有コーティング層と、前記ケイ素含有コーティング層の表面に形成されているグラファイトコーティング層とを含み、前記ケイ素含有コーティング層が、前記グラファイトコーティング層と前記炭素量子ドット層との間に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記ケイ素含有コーティング層は、ケイ素材料とグラファイトとの複合層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の負極板。
【請求項4】
前記ケイ素含有コーティング層は、ケイ素単体、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つの材質を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の負極板。
【請求項5】
前記負極集電体は、銅集電体、銅複合集電体、ニッケル集電体、ニッケル複合集電体、炭素ペーパー集電体、及び炭素繊維集電体のうちの1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の負極板。
【請求項6】
負極板の製造方法であって、
負極集電体を取得するステップと、
前記負極集電体の表面に炭素量子ドット層をコーティングするステップと、
負極集電体から離れた前記炭素量子ドット層の表面に負極ケイ素含有コーティング層をコーティングするステップと、を含み、
前記炭素量子ドット層は、炭素量子ドット、接着剤、分散剤および添加剤を含
む混合スラリーによって形成され、前記接着剤の質量含有量は、前記
混合スラリーの総質量の0.1%~5%であり、前記分散剤の質量含有量は、前記
混合スラリーの総質量の0.1%~5%であ
り、前記炭素量子ドットは、導電性を有する炭素からなり、前記炭素量子ドットのサイズは10nm以下である、
ことを特徴とする負極板の製造方法。
【請求項7】
前記負極集電体の表面に炭素量子ドット層をコーティングするステップは、
炭素量子ドット、接着剤及び分散剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記負極集電体の表面にコーティングして、前記炭素量子ドット層を取得するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記炭素量子ドット層の表面に負極ケイ素含有コーティング層をコーティングするステップは、
前記炭素量子ドット層の表面にケイ素含有コーティング層を形成するステップと、
前記ケイ素含有コーティング層の表面にグラファイトコーティング層を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記炭素量子ドット層の表面にケイ素含有コーティング層を形成するステップは、
グラファイト、ケイ素材料及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記炭素量子ドット層の表面にコーティングして、前記ケイ素含有コーティング層を取得するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ケイ素材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つの材質を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ケイ素含有コーティング層の表面にグラファイトコーティング層を形成するステップは、
グラファイト及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記ケイ素含有コーティング層の表面にコーティングして、前記グラファイトコーティング層を取得するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記接着剤は、ポリプロピレン、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項7又は9又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
バッテリセルであって、
正極板と、
請求項1~5のいずれかに記載の負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に設けられた隔離膜と、を含む、
ことを特徴とするバッテリセル。
【請求項14】
請求項13に記載のバッテリセルを含む、
ことを特徴とするバッテリ。
【請求項15】
請求項14に記載のバッテリを含む、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末技術の分野に関し、特に負極板及びその製造方法、バッテリセル、バッテリ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器構成の各機能が強くなるにつれて、単位時間で各機能の正常な動作を維持するために必要な電力量が増加するため、電子機器の耐久性の問題を解決するために、バッテリセルの容量とエネルギー密度をどのように改善するかが、現在の技術者の研究開発の新たな原動力となっている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、関連技術の欠陥を解決するために、負極板及びその製造方法、バッテリセル、バッテリ及び電子機器を提供する。
【0004】
本開示の実施例の第1の態様によれば、
負極集電体と、
前記負極集電体の表面に形成されている炭素量子ドット層と、
前記負極集電体から離れた前記炭素量子ドット層の表面に形成されている負極ケイ素含有コーティング層と、を含む負極板を提供する。
【0005】
選択的に、前記負極ケイ素含有コーティング層は、ケイ素含有コーティング層と、前記ケイ素含有コーティング層の表面に形成されているグラファイトコーティング層と、を含み、前記ケイ素含有コーティング層が、前記グラファイトコーティング層と前記炭素量子ドット層との間に位置する。
【0006】
選択的に、前記ケイ素含有コーティング層は、ケイ素材料とグラファイトとの複合層を含む。
【0007】
選択的に、前記ケイ素含有コーティング層は、ケイ素単体、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つの材質を含む。
【0008】
選択的に、前記負極集電体は、銅集電体、銅複合集電体、ニッケル集電体、ニッケル複合集電体、及び炭素ペーパー集電体、炭素繊維集電体のうちの1つを含む。
【0009】
本開示の実施例の第2の態様によれば、
負極集電体を取得するステップと、
前記負極集電体の表面に炭素量子ドット層をコーティングするステップと、
負極集電体から離れた前記炭素量子ドット層の表面に負極ケイ素含有コーティング層をコーティングするステップと、を含む負極板の製造方法を提供する。
【0010】
選択的に、前記負極集電体の表面に炭素量子ドット層をコーティングするステップは、
炭素量子ドット、接着剤及び分散剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記負極集電体の表面にコーティングして、前記炭素量子ドット層を取得するステップと、を含む。
【0011】
選択的に、前記炭素量子ドット層の表面に負極ケイ素含有コーティング層をコーティングするステップは、
前記炭素量子ドット層の表面にケイ素含有コーティング層を形成するステップと、
前記ケイ素含有コーティング層の表面にグラファイトコーティング層を形成するステップと、を含む。
【0012】
選択的に、前記炭素量子ドット層の表面にケイ素含有コーティング層を形成するステップは、
グラファイト、ケイ素材料及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記炭素量子ドット層の表面にコーティングして、前記ケイ素含有コーティング層を取得するステップと、を含む。
【0013】
選択的に、前記ケイ素材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つの材質を含む。
【0014】
選択的に、前記ケイ素含有コーティング層の表面にグラファイトコーティング層を形成するステップは、
グラファイト及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを前記ケイ素含有コーティング層の表面にコーティングして、前記グラファイトコーティング層を取得するステップと、を含む。
【0015】
選択的に、前記接着剤は、ポリプロピレン、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
本開示の実施例の第3の態様によれば、
正極板と、
上記の実施例のいずれか1つに記載の負極板、又は上記の実施例のいずれか1つに記載の製造方法によって得られた負極板を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に設けられた隔離膜と、を含むバッテリセルを提供する。
【0017】
本開示の実施例の第4の態様によれば、上記の実施例のいずれか1つに記載のバッテリセルを含むバッテリを提供する。
【0018】
本開示の実施例の第5の態様によれば、上記の実施例のいずれか1つに記載のバッテリを含む電子機器を提供する。
【0019】
本開示の実施形態によって提供される技術案は、以下の有益な効果を含み得る。
上記の実施例から分かるように、本開示は、ケイ素材料の比容量が、リチウムバッテリの従来技術における負極コーティング材料の比容量よりも高く、放電電位が低いという特性を利用して、この負極板を備えたバッテリセルのエネルギー密度を効果的に高めることができ、炭素量子ドット層によって、負極ケイ素含有コーティング層の導電性を改善し、負極集電体と負極ケイ素含有コーティング層との界面インピーダンスを低減することができ、炭素量子ドット層の柔軟性により、負極ケイ素含有コーティング層の膨張により大きな体積変化空間と柔軟性能を提供し、負極ケイ素含有コーティング層の機械的性能を改善し、充電及び放電中に負極ケイ素含有コーティング層が膨張して負極集電体から分離するリスクが低減される。
【0020】
なお、上述した一般的な記述及び後述の細部に関する記述は、例示及び解釈のためのものに過ぎず、本願を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここの図面は、明細書に加えられており、本明細書の一部を構成し、本発明に好ましい実施例を示し、明細書と共に本発明の原理を解釈する。
【
図1】例示的な一実施例によって示される負極板の概略構成図である。
【
図2】例示的な一実施例によって示される別の負極板の概略構成図である。
【
図3】例示的な一実施例によって示される負極板の製造方法のフローチャートである。
【
図4】例示的な一実施例によって示される別の負極板の製造方法のフローチャートである。
【
図5】例示的な一実施例によって示されるバッテリセルの概略断面図である。
【
図6】例示的な一実施例によって示されるバッテリの概略構成図である。
【
図7】例示的な一実施例によって示される電子機器の概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、例示的な実施例を詳しく説明し、その例が図面に示される。以下の記載が図面に関わる場合、特に別の説明がない限り、異なる図面の同一符号は、同じ又は類似する要素を示す。以下の例示的な実施例に記載の実施形態は、本発明と一致する全ての実施形態を代表するものではない。むしろ、それらは、特許請求の範囲に記載の本発明のある側面に一致する装置及び方法の例に過ぎない。
【0023】
本開示で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本開示を限定することを意図するものではない。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1つ」、「前記」及び「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数形も含むことを意図する。また、本明細書で使用される「及び/または」という用語は、1つまたは複数の関連する列挙された項目の任意またはすべての可能な組み合わせを指し、含むことも理解されたい。
【0024】
本開示では、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を使用して様々な情報を説明する可能性があるが、これらの情報はこれらの用語に限定されない。これらの用語は、同じタイプの情報をお互いに区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1情報は第2情報とも称し得、同様に、第2情報は第1情報とも称し得る。文脈に応じて、本明細書で使用される「…ば」という語は,「…場合」または「…時」または「…決定に応答して」と解釈することができる。
【0025】
現在、科学技術の発展に伴い、電子機器の構成機能はますます強くなっている。電子機器の耐久性要件を満たすために、電子機器のバッテリ容量に対して、より高い要件が提出されている。通常、電子機器には、リチウムバッテリが含まれてもよく、リチウムバッテリのバッテリ容量を向上させるために、研究開発者は、電子機器のバッテリ収納室の容積をどのように拡大するか、リチウムバッテリの他の層構造の占有スペースのサイズをどのように縮小するかを考慮して、容量の増加を検討したが、これらの検討案は、電子機器内の他の電子部品のレイアウトと矛盾する可能性がある一方、バッテリ容量及びバッテリ密度の質的改善への寄与は比較的小さい。
【0026】
従って、電子機器のますます強力な性能と耐久性要件と互換性を持たせるために、本開示は、
図1に示す負極板100を提供し、この負極板100は、負極集電体1と、炭素量子ドット層2と、負極ケイ素含有コーティング層3とを含み、この炭素量子ドット層2が、負極集電体1の表面に形成でき、負極ケイ素含有コーティング層3が、負極集電体1から離れた炭素量子ドット層2の表面に形成でき、即ち負極ケイ素含有コーティング層3と負極集電体1との間に、炭素量子ドット層2を形成することができる。ここで、炭素量子ドット層2に含まれる炭素量子ドットのサイズは比較的小さくてよく、例えば、10nm以下に抑えることができる。負極集電体1は、銅集電体、銅複合集電体、ニッケル集電体、ニッケル複合集電体、炭素ペーパー集電体及び炭素繊維集電体のうちの1つを含み、本開示はこれを限定しない。
【0027】
上記の実施例から分かるように、ケイ素材料の比容量が、リチウムバッテリの従来技術における負極コーティング材料の比容量よりも高く、放電電位が低いという特性を利用して、この負極板100を備えたバッテリセルのエネルギー密度を効果的に高めることができる。また、負極ケイ素含有コーティング層3と負極集電体1との間に炭素量子ドット層2が形成され、炭素量子ドット層2によって、負極ケイ素含有コーティング層3の導電性を改善し、負極集電体1と負極ケイ素含有コーティング層3との界面インピーダンスを低減することができる。さらに、炭素量子ドット層2に含まれる炭素量子ドットのサイズが非常に小さいため、充電及び放電中に、負極ケイ素含有コーティング層3の膨張により大きな体積変化空間と柔軟性能を提供でき、負極ケイ素含有コーティング層3の機械性能を改善し、充電及び放電中に負極ケイ素含有コーティング層3が膨張して負極集電体1から分離するリスクが低減される。また、負極集電体1に炭素量子ドット層2をコーティングすることにより、炭素量子ドット層2内の炭素量子ドットのサイズが非常に小さいため、負極板100の圧縮密度がある程度向上し、負極板100のエネルギー密度をさらに増加させるのに有利である。
【0028】
なお、ケイ素含有材料が負極板100の負極コーティング材料として使用される場合、大量のリチウムイオンが負極ケイ素含有コーティング層3に挿入及び抽出されるため、負極ケイ素含有コーティング層3の体積変化を引き起こし、負極ケイ素含有コーティング層3内のケイ素負極活性粒子に損傷を与えやすく、ケイ素負極活性粒子の接触が悪くなり、最初の充電及び放電中に形成された固体電解質界面膜が不安定になる。したがって、この問題を解決するために、本開示の技術案では、
図2に示すように、この負極ケイ素含有コーティング層3は、ケイ素含有コーティング層31と、ケイ素含有コーティング層31の表面に形成されているグラファイトコーティング層32とを含み得、このケイ素含有コーティング層31が、グラファイトコーティング層32と炭素量子ドット層2との間に位置することができる。このようにして、グラファイトコーティング層32によって、ケイ素含有コーティング層31と電解液との直接接触を回避し、ケイ素含有コーティング層31と電解液との間の反応を低減することができる。グラファイトコーティング層32が電解液と接触して反応して、固体電解質界面膜を形成することができ、これは、電解液をケイ素負極と接触させて固体電解質界面膜を形成する技術案と比較して、本開示で形成される固体電解質界面膜がより安定であるため、この負極板100を備えたバッテリのサイクル寿命及び倍率特性を改善するのに有利である。また、グラファイトコーティング層32は、ケイ素含有コーティング層31の表面にコーティングされているため、負極ケイ素含有コーティング層3の厚さが同じである場合、単層のケイ素含有コーティングと比較して、グラファイトコーティング層32によって、ケイ素含有コーティング層31の膨張を緩和することができる。さらに、グラファイトコーティング層32は、柔軟性が大きいため、リチウムイオンの拡散を緩衝し、リチウムイオンの均一な脱離を促進して、ケイ素含有コーティング層31の膨張をさらに緩和することができる。ここで、このケイ素含有コーティング層31は、ケイ素材料とグラファイトとの複合層を含み得、ここで、ケイ素材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素、及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つの材質を含んでもよい。
【0029】
図3に示すように、本開示は、負極板100の製造方法をさらに提供し、この製造方法は、以下のステップを含み得る。
【0030】
ステップ301において、負極集電体1を取得する。
【0031】
この実施例では、負極集電体1は、銅集電体、銅複合集電体、ニッケル集電体、ニッケル複合集電体、炭素ペーパー集電体、及び炭素繊維集電体のうちの1つを採用してもよく、本開示はこれを限定しない。
【0032】
ステップ302において、負極集電体の表面に炭素量子ドット層2をコーティングする。
【0033】
この実施例では、まず、炭素量子ドットを含むスラリーを取得し、次にスラリーを負極集電体1の表面にコーティングして形成する。具体的に、炭素量子ドット、接着剤、分散剤及び添加剤を混合して形成された混合スラリーを取得し、そして混合スラリーを負極集電体1の表面にコーティングして、炭素量子ドット層を形成する。ここで、接着剤は、ポリプロピレン、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トリエチルヘキシルリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、メチルペンタノール、セルロース誘導体、及びポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを含んでもよい。添加剤は、有機添加剤及び無機添加剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0034】
ステップ303において、負極集電体1から離れた炭素量子ドット層2の表面に負極ケイ素含有コーティング層を形成する。
【0035】
この実施例では、まず、負極集電体1から離れた炭素量子ドット層2の表面にケイ素含有コーティング層31を形成し、そしてケイ素含有コーティング層31の表面にグラファイトコーティング層32を形成し、このグラファイトコーティング層32によって、ケイ素含有コーティング層31の膨張を緩和することができるとともに、グラファイトコーティング層32及び電解液によって、固体電解質界面膜を形成することができ、ケイ素材料を含む膜層と電解液との反応により形成された固体電解質界面膜と比較して、より安定している。
【0036】
具体的に、グラファイト、ケイ素材料、添加剤、分散剤及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得し、次にこの混合スラリーを炭素量子ドット層の表面にコーティングして、ケイ素含有コーティング層31を取得し、そしてグラファイト、接着剤、導電剤、分散剤及び添加剤を混合して形成された混合スラリーを取得し、混合スラリーをケイ素含有コーティング層31の表面にコーティングして、グラファイトコーティング層32を形成する。ここで、ケイ素材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含み、ケイ素含有コーティング層31を形成する混合スラリー、及びグラファイトコーティング層32を形成する混合スラリーにおける接着剤は、ポリプロピレン、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリフッ化ビニリデン及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トリエチルヘキシルリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、メチルペンタノール、セルロース誘導体、及びポリアクリルアミドのうちの少なくとも1つを含んでもよい。添加剤は、有機添加剤及び無機添加剤のうちの少なくとも1つを含んでもよい。ここで、ケイ素含有コーティング層31、グラファイトコーティング層32及び炭素量子ドット層2に含まれる接着剤、添加剤及び分散剤が、同じであっても異なっていてもよく、本開示はこれを限定しない。
【0037】
本開示によって提供される技術案を詳細に説明するために、
図4に示すように、この負極板100の製造方法は、以下のステップを含み得る。
【0038】
ステップ401において、負極集電体を取得する。
【0039】
ステップ402において、炭素量子ドット、接着剤、及び分散剤を混合して形成された混合スラリーを取得する。
【0040】
ステップ403において、前記混合スラリーを前記負極集電体の表面にコーティングして、前記炭素量子ドット層を取得する。
【0041】
この実施例では、接着剤の質量含有量は、混合スラリーの総質量の0.1%~5%であり、分散剤の質量含有量は、混合スラリーの総質量の0.1%~5%であり、炭素量子ドットの質量含有量と混合スラリーの総質量のパーセンテージ関係は、炭素量子ドットの濃度要件に応じて決定することができる。炭素量子ドットの濃度は、炭素量子ドット層2の厚さに関係し、厚さが厚いほど、炭素量子ドットの濃度が高くなるため、実際の処理では、炭素量子ドット層2の厚さ要件に応じて適切な濃度を選択して、炭素量子ドットの質量を決定することができる。他の実施例では、この混合スラリーは、添加剤をさらに含み得、添加剤の質量含有量が混合スラリーの総質量の0%~50%である。
【0042】
ステップ404において、グラファイト、ケイ素材料及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得する。
【0043】
ステップ405において、前記混合スラリーを前記炭素量子ドット層の表面にコーティングして、前記ケイ素含有コーティング層を取得する。
【0044】
この実施例では、ケイ素材料の質量含有量は、混合スラリーの総質量の0.1%~45%であり、接着剤の質量含有量は、混合スラリーの総質量の0.05%~5%であり、残りの割合はグラファイト材料である。他の実施例では、この混合スラリーは、添加剤及び分散剤をさらに含み得、添加剤の質量含有量が、混合スラリーの総質量の0%~25%であり、分散剤の質量含有量が、混合スラリーの総質量の0%~10%である。
【0045】
ステップ406において、グラファイト及び接着剤を混合して形成された混合スラリーを取得する。
【0046】
ステップ407において、前記混合スラリーを前記ケイ素含有コーティング層の表面にコーティングして、前記グラファイトコーティング層を取得する。
【0047】
この実施例では、グラファイト材料の質量含有量は、混合スラリーの総質量の80%~99.9%であり、接着剤の質量含有量は、混合スラリーの総質量の0.1%~5%である。他の実施例では、この混合スラリーは、添加剤、導電剤及び分散剤をさらに含み得、導電剤の質量含有量が、混合スラリーの総質量の0%~5%であり、分散剤の質量含有量が、混合スラリーの総質量の0~5%であり、添加剤の質量含有量が、混合スラリーの総質量の0~20%である。
【0048】
本開示の実施例に基づいて、
図5に示すように、本開示は、バッテリセル200をさらに提供し、このバッテリセル200は、正極板(図示せず)、隔離膜(図示せず)、及び上記の実施例のいずれか1つに示される負極板100を含み得、この隔離膜が負極板100と正極板との間に設けられ、負極板100、隔離膜及び正極板を積み重ねた後に巻回して、
図5に示されるような巻回式のバッテリセルを取得することができる。実際に、他の実施例では、この負極板100は、積層型のバッテリセルを形成するために使用されてもよいが、本開示はこれに限定されない。
【0049】
本開示の技術案に基づいて、本開示は、
図6に示されるようなバッテリ300をさらに提供し、このバッテリ300は、バッテリセル200、ハウジング301及び保護回路基板302を含み得、このハウジング301が、バッテリセル200をカプセル化して、バッテリセル200を保護するために使用され、保護回路基板302が、バッテリセル200の正極耳及び負極耳にそれぞれ電気に接続され、バッテリ300の充電および放電を安全に保護することができる。
【0050】
さらに、本開示は、
図7に示されるような電子機器400を提供し、この電子機器400は、バッテリ収納室401、接着層402及びバッテリ300を含み得、バッテリ300は、接着層402を介して、バッテリ収納室401内に接着することができる。この電子機器400は、携帯電話端末、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、スマート家具、電子リーダーのうちの1つ又は複数を含んでもよく、本開示はこれに限定されない。
【0051】
本開示の他の実装形態は、本明細書を参照することによって本開示を実現した後、当業者には容易に明らかになるであろう。本開示は、本開示の一般的な原理による本開示の任意の変更、使用、または適合を含み、本開示で開示していない当技術分野における共通の知識または従来の技術的手段を含むことを意図している。明細書及び実施形態は、例示的なものにすぎず、本開示の範囲及び精神は、添付の請求の範囲で示すことになる。
【0052】
本開示は、図面に示した上記で説明した正確な構造に限定されず、本明細書の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を本開示に行うことができるということが理解されよう。本開示の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ限定される。