IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メモリアル スローン−ケタリング キャンサー センターの特許一覧 ▶ エウレカ セラピューティクス,インコーポレイテッドの特許一覧

特許7627216ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法
<>
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図1
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図2
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図3
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図4
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図5
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図6
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図7
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図8
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図9A
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図9B
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図9C
  • 特許-ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法 図9D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】ムチン-16に対する抗体およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250129BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250129BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250129BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250129BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250129BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
G01N33/53 V
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021526571
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019061503
(87)【国際公開番号】W WO2020102555
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】62/768,730
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(73)【特許権者】
【識別番号】511071522
【氏名又は名称】エウレカ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】スプリッグス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モラレス ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ナカノ ヨウコ
(72)【発明者】
【氏名】リュ ホン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509907(JP,A)
【文献】ACS Chem. Biol.,2017年06月15日,Vol.12,pp.2085-2096,DOI: 10.1021/acschembio.7b00305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C07K 1/00-19/00
A61K 39/395
A61P 35/00
G01N 33/53
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する第1の抗体部分およびCD3抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分を含む、二重特異性または多特異性抗MUC16構築物であって、第1の抗体部分は、
(a)(i)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖
または
(b)(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖
を含VH鎖はヒトVH鎖であり、VL鎖はヒトVL鎖である、抗MUC16構築物。
【請求項2】
第1の抗体部分が、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である、請求項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項3】
第1の抗体部分が、モノクローナル抗体である、請求項1または2に記載の抗MUC16構築物。
【請求項4】
第1の抗体部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHおよび/もしくは配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項5】
第1の抗体部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHおよび/もしくは配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項6】
第1の抗体部分が、ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項7】
第1の抗体部分が、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンである、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項8】
免疫グロブリンがIgGである、請求項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項9】
タンデムscFv、ダイアボディー(Db)、一本鎖ダイアボディー(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、F(ab’)2、二重可変ドメイン(DVD)抗体、ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体またはヘテロコンジュゲート抗体である、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項10】
キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項11】
ペプチド剤、検出剤、イメージング剤、治療剤または細胞傷害性薬剤にさらにコンジュゲートされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項13】
プロモーターに作動可能に連結した請求項12に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物、請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載のベクターを含む細胞。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物または請求項13に記載のベクターの治療有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
MUC16関連疾患または障害を処置するための、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記MUC16関連疾患または障害が、がんである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記がんが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または一次腹膜のがんである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
エフェクター細胞を産生する方法に用いるための、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を含む組成物であって、前記方法は、前記抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を用いて細胞を遺伝子修飾することを含む、組成物。
【請求項20】
患者の処置方法に用いるための、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を含む組成物であって、前記方法は、前記抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を、前記患者から単離された1つまたは複数の一次細胞中に導入すること、および前記1つまたは複数の核酸を含む細胞を前記患者に投与することを含む、組成物。
【請求項21】
一次細胞がT細胞である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
試料においてMUC16を検出する方法に用いるための、請求項1~または11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物を含む組成物であって、前記方法は、(a)試料を前記抗MUC16構築物と接触させること、および(b)試料中の前記抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合を直接的または間接的に検出することを含む、組成物。
【請求項23】
MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法に用いるための、請求項1~または11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物を含む組成物であって、前記方法は、
(a)前記抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、および個体において前記抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合のレベルを直接的または間接的に決定すること、ここで、閾値レベルを上回る結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示す、または
(b)個体に由来する細胞を含む試料を、前記抗MUC16構築物と接触させること、および前記抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定すること、ここで、閾値レベルを上回る前記抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示す、
を含む、組成物。
【請求項24】
陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための医薬の製造における、または陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の診断のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物、請求項13に記載のベクターまたは請求項14に記載の細胞を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、その開示内容がその全文で参照により本明細書に組み込まれる2018年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/768,730号の利益および優先権を主張する。
政府の支援の声明
本発明は国立衛生研究所によって授与されたCA190174の下で政府の支援を受けて行った。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
ムチンは、細胞ホメオスタシスおよび上皮表面の保護のための重要な生体分子である。がん、例えば、卵巣がんにおけるムチンの発現の変化は、診断、予後および処置のためのバイオマーカーとして有用である(Singh AP, et al., Lancet Oncol 2008; 9(11): 1076-85)。MUC16は、ほとんどの卵巣癌細胞で過剰発現されるムチンであり、卵巣がんの検出および進行の確立された代替血清マーカー(CA-125)である(Badgwell D, et al., Dis Markers 23(5-6):397410 (2007)、Bast RC, Jr, et al.、Int J Gynecol Cancer 15 Suppl 3:274-81 (2005)、Fritsche HA, et al., Clin Chem 44(7): 1379-80 (1998)およびKrivak TC et al., Gynecol Oncol 115(1):81-5 (2009))。
【0003】
MUC16は、切断および放出される大きな細胞外ドメイン(CA-125)と、保持されるドメイン(MUC-CD)(図1)から構成される高度にグリコシル化されたムチンである。MUC-CDは、切断部位の近位の非反復細胞外ドメイン(MUC16エクトドメイン)、膜貫通ドメインおよび潜在的リン酸化部位を有する細胞質テールを含む。切断部位の遠位の、放出される細胞外ドメイン(CA-125)は、156個のアミノ酸の16~20のタンデムリピートを含有し、各々、多数の潜在的グリコシル化部位を有する(O'Brien TJ, et al., Tumor Biol 22(6):348-66 (2001))。MUC16抗原は、そうでなければ、子宮、子宮内膜、卵管、卵巣および腹腔および胸腔の漿膜の正常組織では低レベルでしか発現されないので、MUC16は、がんの標的化および処置を含む免疫ベース療法の魅力的な標的である可能性が高い。
MUC16の細胞外ドメインのかなりの部分は、切断され、分泌され(すなわち、CA-125)、これがMUC16のこの部分が卵巣癌上の標的抗原として使用されるという有用性を制限する。多数の報告されたMUC16モノクローナル抗体は、糖タンパク質の大きな分泌されるCA-125画分上に存在するエピトープに結合し、残存するMUC16エクトドメインには結合しない(Bellone S Am J Obstet Gynecol 200(1):75 el-10 (2009)、Berek JS. Expert Opin Biol Ther. 4(7): 1159-65 (2004); O'Brien TJ, et al., Int J Biol Markers 13(4): 188-95 (1998))。したがって、診断および治療目的のために、減らされないMUC16の領域に対する新規抗体の作製が必要である。
【発明の概要】
【0004】
MUC16媒介性障害、例えば、がんを管理または処置するための、ムチン16(MUC16)に免疫特異的に結合し、MUC16の発現および/または活性をモジュレートする抗体部分(moiety)を含む抗ムチン16(MUC16)構築物の組成物、方法および使用が、本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物(construct)であって、抗体部分は、(a)(i)配列番号2の重鎖可変ドメインの重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号3の軽鎖可変ドメインの軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖または(b)(i)配列番号10の重鎖可変ドメインの重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号11の軽鎖可変ドメインの軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む、抗ムチン16(MUC16)構築物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体部分は、ヒトMUC16を免疫特異的に認識する。一部の実施形態では、MUC16は、グリコシル化される。一部の実施形態では、MUC16は、Asnl800またはAsn1806でNグリコシル化される。
【0005】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗ムチン16(MUC16)構築物の抗体部分は、(a)(i)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖または(b)(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む。
【0006】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗ムチン16(MUC16)構築物の抗体部分は、MUC16のエクトドメインに免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である。一部の実施形態では、VH鎖およびVL鎖は、ヒトVH鎖およびVL鎖である。一部の実施形態では、抗体部分は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号25のアミノ酸配列を含むMUC16 c114ポリペプチドに免疫特異的に結合する。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、Matrigel浸潤アッセイにおいてMUC16を発現する腫瘍細胞のin vitro浸潤を阻害する。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、卵巣腫瘍細胞である。
【0007】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗ムチン16(MUC16)構築物の抗体部分は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、ガンマ1、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有する。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は、カッパおよびラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する。一部の実施形態では、抗体部分は、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンである。一部の実施形態では、免疫グロブリンは、IgGである。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、単一特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、多特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、二重特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、タンデムscFv、ダイアボディー(Db)、一本鎖ダイアボディー(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、F(ab’)2、二重可変ドメイン(DVD)抗体、ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体またはヘテロコンジュゲート抗体である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、ペプチドリンカーによって連結された2つのscFvを含むタンデムscFvである。一部の実施形態では、MUC16を免疫特異的に認識する抗体部分は、第1の抗体部分であり、抗MUC16構築物は、第2の抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分をさらに含む。一部の実施形態では、第2の抗原は、T細胞の表面上の抗原である。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3である。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζからなる群から選択される。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3εである。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、キメラ抗原受容体(CAR)である。一部の実施形態では、CARは、共刺激性ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、ペプチド剤、検出剤、イメージング剤、治療剤または細胞傷害性薬剤にさらにコンジュゲートされる。
また、ある特定の実施形態では、配列番号2~17のうち1種もしくは複数のアミノ酸配列または本明細書において提供される抗MUC16構築物のアミノ酸を含むポリペプチドが、本明細書において提供される。
また、ある特定の実施形態では、配列番号2~17のうち1種もしくは複数のアミノ酸配列または本明細書において提供される抗MUC16構築物のアミノ酸を含む1種または複数のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結した本明細書において提供されるポリヌクレオチドを含むベクターが、本明細書において提供される。
【0009】
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターを含む細胞が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞である。一部の実施形態では、細胞は、リンパ球である、一部の実施形態では、細胞は、T細胞またはB細胞である。
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターの治療有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が、本明細書において提供される。
【0010】
また、ある特定の実施形態では、それを必要とする患者において、MUC16関連疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターの治療有効量を含む医薬組成物を投与することを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、MUC16関連疾患または障害は、がんである。一部の実施形態では、がんは、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または一次腹膜のがんである。一部の実施形態では、がんは、転移性がんである。一部の実施形態では、医薬組成物は、患者において転移を阻害する。一部の実施形態では、患者は、ヒト患者である。
また、ある特定の実施形態では、エフェクター細胞を産生する方法であって、細胞を、本明細書において提供される抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を用いて遺伝子修飾することを含む、方法が、本明細書において提供される。
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を、患者から単離された1つまたは複数の一次細胞中に導入すること、および1つまたは複数の核酸を含む細胞を患者に投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、方法は、細胞を拡大増殖すること、その後細胞を患者に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、一次細胞は、リンパ球である。一部の実施形態では、一次細胞は、T細胞である。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書において提供される処置の方法は、さらなる治療剤の治療有効量を患者に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、治療剤は、抗がん剤である。一部の実施形態では、治療剤は、化学療法剤である。
また、ある特定の実施形態では、試料においてMUC16を検出する方法であって、(a)試料を本明細書において提供される抗MUC16構築物と接触させること、および(b)試料中に存在する抗MUC16構築物とMUC16の間の結合を直接的または間接的に検出することを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では検出可能な標識は、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、二次抗体を使用して間接的に検出される。
【0012】
また、ある特定の実施形態では、MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)本明細書において提供される抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、およびb)個体において抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合のレベルを直接的または間接的に決定することを含み、閾値レベルを上回る結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示す方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、検出可能な標識は、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、二次抗体を使用して間接的に検出される。
【0013】
MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)個体に由来する細胞を含む試料を、本明細書において提供される抗MUC16構築物と接触させること、およびb)抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定することを含み、閾値レベルを上回る抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示す方法。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、検出可能な標識は、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、二次抗体を使用して間接的に検出される。
また、ある特定の実施形態では、ヒトMUC16ポリペプチドに免疫特異的に結合する抗MUC16構築物を作製する方法であって、ヒトscFv抗体ファージディスプレイライブラリー由来のヒトMUC16に特異的なヒトscFvを選択することを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、ヒトMUC16に特異的なヒトscFvを選択することは、ヒトscFv抗体ファージディスプレイライブラリーを、組換えMUC16ポリペプチドを発現する細胞と接触させることを含む。一部の実施形態では、組換えMUC16ポリペプチドは、配列番号25の配列を含む。
【0014】
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための本明細書において提供される、抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害は、がんである。
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための医薬の製造における、本明細書において提供される、抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害は、がんである。
【0015】
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の診断のための、本明細書において提供される、抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害は、がんである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、MUC16の構造の概略図を示す図である。図1Bは、MUC16 c114(配列番号25)と呼ばれる、MUC16の切断型形態の概略およびアミノ酸配列を示し、58個のアミノ酸のエクトドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメインおよび31個のアミノ酸の細胞質テールを含む。図中の番号付けは、Muc16を同定する元の刊行物、Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375に基づいている。
図2図2は、野生型MUC16-C114(配列番号25)およびN30突然変異体MUC16-C114(配列番号31)エクトドメインの間のアミノ酸アラインメントを示す図である。
図3図3は、野生型MUC16-C114を発現するHEK293安定細胞系(HEK293-MUC16WT)またはN30突然変異体MUC16-C114(HEK293-MUC16mut)におけるGFP発現の蛍光活性化セルソーター(FACS)分析を例示する図である。対照HEK293細胞は、比較のために示されている。
図4図4は、3つの細胞系すべてについて、陰性ファージ対照とともに、ファージ対照なしでインキュベートされた、野生型MUC16-C114(HEK293-MUC16WT)またはN30突然変異体MUC16-C114(HEK293-MUC16mut)細胞のFACS分析の結果を例示する図である。
図5図5は、2種の例示的抗体ファージクローン、クローン8およびクローン12とともにインキュベートされた野生型MUC16-C114(HEK293-MUC16WT)またはN30突然変異体MUC16-C114(HEK293-MUC16mut)細胞のFACS分析の結果を例示する図である。野生型MUC16-C114に結合し、N30突然変異体MUC16-C114に結合しない抗体クローンが、シーケンシングおよびさらなる開発のために選択された。
図6図6は、N末端の抗MUC16scFvおよびC末端のマウスモノクローナル抗体の抗ヒトCD3ε scFvを含むクローン8二重特異性抗体(BsAb)が、MUC16+OVCAR3細胞系に結合するが、対照MUC16-SKOV3細胞系に結合しないことを例示する図である。
図7図7は、MUC16-SKOV3細胞系と比較される、MUC16+OVCAR3細胞系とともにインキュベートされた、抗MUC16クローン8BsAbおよび抗MUC16クローン12BsAbを含む、選択された抗MUC16BsAbを使用する細胞傷害性アッセイの例示的結果を例示する図である。クローン8およびクローン12BsAbは、MUC16-SKOV3細胞系と比較されるように、MUC16+OVCAR3細胞系の標的特異的細胞溶解を誘導できた。
図8図8は、MUC16-SKOV3細胞系と比較される、MUC16+OVCAR3細胞系、MUC16+SKOV8細胞系およびMUC16+OVCA432細胞系とともにインキュベートされた、抗MUC16クローン8BsAbおよび抗MUC16クローン12BsAbを含む、選択された抗MUC16BsAbを使用する細胞傷害性アッセイの例示的結果を例示する図である。抗MUC16クローン8BsAbは、MUC16+OVCAR3、SKOV8およびOVCA432細胞系の標的特異的細胞溶解を誘導できた。抗MUC16クローン12BsAbもまた、MUC16+の細胞溶解を、より少ない程度までではあるが誘導した。
図9A図9Aは、腫瘍を確立するためのMUC16を発現するSKOV3-MUC-CD修飾細胞の注射および処置のための抗MUC16クローン8BsAbの注射を使用する卵巣の異種移植研究の例示的実験スキーマを例示する図である。
図9B図9Bは、例示的可視化データが腫瘍の確立および処置を示すことを例示する図である。
図9C図9Cは、異種移植実験の例示的生存曲線データを例示する図である。図9Dは、抗MUC16クローン8BsAbを用いる腫瘍保有マウスの処置後のサイトカインIL-2およびIFN-γの誘導を示す例示的データを例示する図である。
図9D図9Dは、抗MUC16クローン8BsAbを用いる腫瘍保有マウスの処置後のサイトカインIL-2およびIFN-γの誘導を示す例示的データを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願は、一態様では、抗MUC16抗体剤、例えば、MUC16のエピトープ、例えば、MUC16の保持される細胞外ドメイン(MUC16エクトドメイン)のエピトープを特異的に認識する抗体部分を含む抗MUC16構築物を提供する。
ファージディスプレイ技術を使用して、ヒトMUC16の保持される細胞外ドメインに特異的であるscFvが同定された。フローサイトメトリーアッセイによって、これらの抗体がMUC16発現性がん細胞系を認識することが実証された。したがって、本出願は、抗MUC16抗体剤、例えば、MUC16に免疫特異的に結合する抗体部分を含む抗MUC16構築物を提供する。抗MUC16抗体剤として、例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)が挙げられる。
【0018】
別の態様では、抗MUC16抗体剤、例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)をコードする核酸が提供される。
【0019】
別の態様では、抗MUC16抗体剤、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)を含む組成物、例えば、医薬組成物が提供される。
また、がんを処置するためなどの抗MUC16抗体剤および抗体を作製および使用する方法ならびにこのような方法にとって有用なキットおよび製造品が提供される。
【0020】
定義
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。以下の参考文献は、スキルの1つに本発明において使用される用語の多くの一般的な定義を提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988)、The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al., (eds.), Springer Verlag (1991)およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別に指定されない限り、以下のそれらに起因する意味を有する。本明細書において使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、本開示の制限であるように意図されるものではない。
【0021】
本明細書で使用される場合、「MUC16」または「MUC16ポリペプチド」または「MUC16ペプチド」という用語とは、Yin BW and Lloyd KO, 2001, J Biol Chem. 276(29):27371-5に記載されるようなMUC16繋留ムチンタンパク質を指す。GenBank(商標)受託番号NP_078966.2(配列番号1)は、例示的ヒトMUC16核酸配列を提供する。GenBank(商標)受託番号NP078966.2(配列番号1)は、例示的ヒトMUC16アミノ酸配列を提供する。天然MUC16は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、推定切断部位の近位のエクトドメインおよび12~20リピート、各156個のアミノ酸長の大きな重度にグリコシル化された領域を含む(図1A)。「未熟」MUC16とは、配列番号1を指し、これは、MUC16シグナル配列(配列番号1のアミノ酸残基1~60)を含む。「成熟MUC16」とは、細胞表面に発現されるような、すなわち、細胞性プロセシングによってシグナル配列が除去されている天然MUC16、例えば、配列番号1の最初の60個のアミノ酸残基が除去されている配列番号32を指す(すなわち、配列番号1は、MUC16の「未熟」形態である)。
【0022】
配列番号25のアミノ酸配列によって表されるポリペプチドは、本明細書において、MUC16 C114と呼ばれ、成熟MUC16のC末端の114個のアミノ酸残基からなる(配列番号32は、成熟MUC16の配列である)。MUC16 C114は、58個のアミノ酸のエクトドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメインおよび31個のアミノ酸の細胞質テールを含む(図1B)。MUC16c114は、配列番号25の1、24および30位(元のMUC16刊行物Yin BW and Lloyd KO, 2001, J Biol Chem. 276(29):27371-5に従って、アミノ酸位置Asnl777、Asnl800およびAsnl806とも呼ばれる)のアスパラギンアミノ酸残基でNグリコシル化されることが可能である。
【0023】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別に明確に示さない限り、複数形を同様に含むものとする。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値または数的範囲を修飾するために使用される場合、値または範囲の5%~10%上および5%~10%下の逸脱が、列挙される値または範囲の意図される意味内のままであることを示す。
本明細書で使用される場合、対象への薬剤の「投与」という用語は、その意図される機能を実施するために対象に薬剤を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、それだけには限らないが、静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下および本明細書において記載されるような他の適した経路を含む任意の適した経路によって実施され得る。投与は、自己投与および別のものによる投与を含む。
【0024】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸ミメティクスを指す。天然にコードされるアミノ酸は、20種の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン)およびピロリシン(pyrolysine)およびセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造、すなわち、水素に結合したα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基を有する薬剤、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造を保持する。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸は、D型である。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸は、L型である。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成する第1の複数のアミノ酸は、D型であり、第2の複数のものはL型である。
【0025】
アミノ酸は、その一般的に公知の3文字記号によって、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される一文字記号のいずれかによって本明細書において参照される。ヌクレオチドは同様に、その一般的に許容される一文字コードによって参照される。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において同義的に使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーならびに1個または複数のアミノ酸残基が天然に存在しないアミノ酸、例えば、アミノ酸類似体であるアミノ酸ポリマーに当てはまる。これらの用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は、共有結合ペプチド結合によって連結される。
本明細書で使用される場合、「対照」は、比較目的の実験において使用される代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が、特定の種類の疾患の処置のための治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが公知の組成物)および陰性対照(療法を受け取らない、またはプラセボを受け取る対象または試料)が通常使用される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するのに十分な薬剤の量を指す。治療適用との関連で、対象に投与される治療ペプチドの量は、感染の種類および重症度に、ならびに個体の特徴、例えば、全身の健康、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性に応じて変わり得る。また、疾患の程度、重症度および種類に応じて変わり得る。当業者ならば、これらおよび他の因子に応じて適当な投与量を決定できるであろう。
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合には、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することによって決定され得る。一態様では、ある試料からの遺伝子の発現レベルは、対照または参照試料からの遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。別の態様では、ある試料からの遺伝子の発現レベルは、本明細書において開示される組成物の投与後の同一試料からの遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。「発現」という用語はまた、以下の事象のうち1つまたは複数を指す:(1)細胞内でのDNA配列からの(例えば、転写による)RNA鋳型の生成、(2)細胞内でのRNA転写物のプロセシング(例えばスプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端形成による)、(3)細胞内でのRNA配列のポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、(4)細胞内でのポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾、(5)細胞表面でのポリペプチドまたはタンパク質の提示および(6)細胞からのポリペプチドまたはタンパク質の分泌または提示または放出。
「リンカー」という用語は、2つの配列を接続または連結する、例えば、2つのポリペプチドドメインを連結する合成配列(例えば、アミノ酸配列)を指す。一部の実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸配列を含有する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の抗体分子だけでなく、免疫原結合能を保持する抗体分子の断片も意味する。このような断片はまた、当技術分野で周知であり、in vitroおよびin vivo両方で定期的に使用される。したがって、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片F(ab’)2およびFabも意味する。無傷の抗体のFc断片を欠くF(ab’)2およびFab断片は、循環からより迅速に排除され、無傷の抗体のより少ない非特異的組織結合を有し得る(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。本発明の抗体は、天然抗体全体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディおよび単一ドメインラクダ類抗体)、VNAR断片、二重特異性T細胞エンゲージャー抗体、ミニボディ、ジスルフィド連結Fv(sdFv)および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、融合ポリペプチド、非従来抗体および上記のいずれかの抗原結合性断片を含む。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合性部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0028】
ある特定の実施形態では、抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常(CH)領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常CL領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Cl q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本明細書で同義的に使用される場合、抗体の「抗原結合性部分」、「抗原結合性断片」または「抗原結合性領域」という用語は、抗原に結合し、抗体に抗原特異性を付与する抗体の領域または部分、抗原結合性タンパク質の断片を指し、例えば、抗体は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を含む(例えば、ペプチド/HLA複合体)。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。抗体の「抗体断片」という用語内に包含される抗原結合性部分の例として、Fab断片、VL、VH、CLおよびCHIドメインからなる一価断片、F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、VHおよびCHIドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341 : 544-546 (1989))および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0029】
抗体および抗体断片は、全体的にまたは部分的に、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ウサギおよびヒツジ)または非哺乳動物抗体産生動物(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ヘビ、有尾両生類)に由来し得る。抗体および抗体断片は、動物において産生される場合も、動物の外側で、例えば、酵母またはファージから(例えば、単一抗体もしくは抗体断片として、または抗体ライブラリーの一部として)産生される場合もある。
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらがVLおよびVH領域対が一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、組換え法を使用して、それらは接合され得る。これらは、一本鎖Fv(scFv)として公知である、例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 5879-5883 (1988)を参照されたい。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同一の方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0030】
「単離された抗体」または「単離された抗原結合性タンパク質」は、その天然環境の成分から同定され、分離され、および/または回収されているものである。「合成抗体」または「組換え抗体」とは、一般に、当業者に公知の組換え技術を使用して、またはペプチド合成技術を使用して作製される。
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、VH:VLヘテロ二量体を形成するように共有結合によって連結された免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に接合されるか、またはVHのN末端とVLのC末端またはVHのC末端とVLのN末端を接続する、ペプチドをコードするリンカー(例えば、約10、15、20、25個のアミノ酸)によって接合される。リンカーは、普通、可動性のためにグリシンに富み、ならびに溶解性のためにセリンまたはトレオニンに富む。リンカーは、細胞外抗原結合性ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結し得る。
【0031】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85:5879-5883 (1988))によって記載されるように、VH-およびVL-コード配列を含む核酸から発現され得る。米国特許第5,091,513号、同5,132,405号および同4,956,778号ならびに米国特許公開第20050196754号および同20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Zhao et al., Hybridoma (Larchmt) 27(6):455-51 (2008)、Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle (2012)、Shieh et al., J Imunol 183(4):2277-85 (2009)、Giomarelli et al., Thromb Haemost 97(6):955-63 (2007)、Fife et al., J Clin Invst 116(8):2252-61 (2006)、Brocks et al., Immunotechnology 3(3): 173-84 (1997)、Moosmayer et al., Ther Immunol 2(10):31- 40 (1995)を参照されたい。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Biol Chem 25278(38):36740-7 (2003)、Xie et al., Nat Biotech 15(8):768-71 (1997)、Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 17(5-6):427-55 (1997)、Ho et al., Bio Chim Biophys Acta 1638(3):257-66 (2003)を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「F(ab)」とは、抗原に結合するが、一価であり、Fc部分を有さない抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのF(ab)断片およびFc断片(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)をもたらす。
【0032】
本明細書で使用される場合、「F(ab’)2」とは、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成した抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合性(ab’)(二価)領域を有し、各(ab1)領域は、2つの別々のアミノ酸鎖、抗原を結合するためのS-S結合によって連結されたH鎖および軽(L)鎖の一部を含み、残りのH鎖部分は、一緒に連結されている。「F(ab’)2」断片は、2つの個々のFab’断片に分けることができる。
本明細書で使用される場合、「CDR」は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th U. S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい。一般に、抗体は、可変領域中に3つの重鎖および3つの軽鎖CDRまたはCDR領域を含む。CDRは、抗体の抗原またはエピトープへの結合のための接触残基の大部分を提供する。ある特定の実施形態では、CDR領域は、Kabatシステムを使用して詳述される(Kabat, E. A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242(1991))。
【0033】
本明細書で使用される場合、「定常領域」または「定常ドメイン」という用語は、互換的であり、当技術分野で一般的なその意味を有する。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接的に関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、Fc受容体との相互作用を示すことができる抗体部分、例えば、軽および/または重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般に、免疫グロブリン可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する。
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、当技術分野における用語であり、抗体が免疫特異的に結合できる抗原の局在化された領域を指すことができる。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続するアミノ酸(線状または連続エピトープ)である場合もあり、またはエピトープは、例えば、ポリペプチド(単数または複数)の2つもしくはそれより多い不連続領域から一緒になる場合もある(コンホメーション、非線状、非連続的または不連続エピトープ)。
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体に結合する分子を指す。特に、リガンドは、別の細胞上の受容体に結合して、細胞対細胞認識および/または相互作用を可能にする。
【0034】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合力の尺度を意味する。理論に捉われようとは思わないが、親和性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の立体化学的適合の近さに、それらの間の接触区域の大きさに、ならびに荷電基および疎水基の分布に応じて変わる。親和性はまた、可逆性複合体(例えば、一価または多価のいずれか)の形成後の抗原-抗体結合の力を指す「アビディティー」という用語を含む。抗原に対する抗体の親和性を算出する方法は、当技術分野で公知であり、親和性を算出するための結合実験の使用を含む。機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)における抗体活性も、抗体親和性を反映する。抗体および親和性は、表現型によって特性決定され、機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)を使用して比較され得る。本明細書において開示される対象において有用な核酸分子は、ポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において開示される対象において有用な核酸分子は、抗体またはその抗原結合性部分をコードする核酸分子を含む。このような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一であることを必要としないが、通常、実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な相同性」または「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、通常、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖とハイブリダイズ可能である。「ハイブリダイズする」とは、ストリンジェンシーの種々の条件下で相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書において記載される遺伝子)またはその部分間で対形成して二本鎖分子を形成することを意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger, Methods Enzymol. 152:399 (1987); Kimmel, A. R., Methods Enzymol. 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0035】
本明細書で使用される場合、「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」および「特異的に認識する」という用語は、抗体との関連で類似の用語であり、当業者によって理解されるような抗原結合性部位を介して抗原(例えば、エピトープまたは免疫複合体)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を指し、抗体または抗原結合性断片の他の抗原との交差反応性を排除しない。
「実質的に相同な」または「実質的に同一の」という用語は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書において記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書において記載される核酸配列のうちのいずれか1つ)に対して少なくとも50%またはそれより大きい相同性または同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を意味する。例えば、このような配列は、比較のために使用される配列(例えば、野生型または天然配列)に対してアミノ酸レベルまたは核酸で、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%相同または同一である。一部の実施形態では、実質的に相同なまたは実質的に同一のポリペプチドは、比較のために使用される配列に対して1つまたは複数のアミノ酸アミノ酸置換、挿入または欠失を含有する。一部の実施形態では、実質的に相同なまたは実質的に同一のポリペプチドは、相同配列を置き換えるために、D-アミノ酸およびレトロインベルソアミノ酸を含む1つまたは複数の非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体を含有する。
【0036】
配列相同性または配列同一性は、通常、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、Wis. 53705の配列分析ソフトウェアパッケージ、BLAST、BESTFIT、GAPまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。このようなソフトウェアは、相同性の程度を種々の置換、欠失および/または他の修飾に割り当てることによって同一または類似配列をマッチさせる。同一性の程度を決定する例示的アプローチでは、BLASTプログラムを使用してもよく、e-3e-100の間の確率スコアは密接に関連する配列を示す。
本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、参照ポリペプチドまたは核酸分子の機能を有する構造的に関連するポリペプチドまたは核酸分子を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む本明細書において開示される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の結合特徴に大幅に影響を及ぼさない、または変更しないアミノ酸修飾を指す。保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含み得る。修飾は、当技術分野で公知の標準技術、例えば、位置指定突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発によって、本明細書において開示される抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片のヒトscFv中に導入され得る。アミノ酸は、その物理化学的特性、例えば、電荷および極性に従って群に分類され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同一群内のアミノ酸と置き換えられるものである。例えば、アミノ酸は、電荷によって分類され得る:正電荷を有するアミノ酸として、リシン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられ、負電荷を有するアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられ、中性電荷を有するアミノ酸として、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンが挙げられる。さらに、アミノ酸は、極性によって分類され得る:極性アミノ酸として、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、アスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リシン(塩基性極性)、セリン、トレオニンおよびチロシンが挙げられ、非極性アミノ酸として、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびバリンが挙げられる。したがって、CDR領域内の1個または複数のアミノ酸残基は、同一群由来の他のアミノ酸残基と置き換えられてもよく、変更された抗体は、本明細書において記載される機能アッセイを使用して保持された機能(すなわち、上記の(c)~(l)に示された機能)について試験され得る。ある特定の実施形態では、指定の配列またはCDR領域内の1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下の残基が変更される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「異種核酸分子またはポリペプチド」という用語は、細胞または細胞から得られた試料中に普通は存在しない核酸分子(例えば、cDNA、DNAまたはRNA分子)またはポリペプチドを指す。この核酸は、別の生物に由来する場合も、例えば、細胞もしくは試料中で普通は発現されないmRNA分子である場合もある。
本明細書で使用される場合、「モジュレートする」という用語は、正または負に変更することを指す。例示的モジュレーションとして、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%または約100%の変化が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「増大する」という用語は、それだけには限らないが、約5%まで、約10%まで、約25%まで、約30%まで、約50%まで、約75%まで、または約100%まで正に変更することを含めて、少なくとも約5%まで正に変更することを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「低減する」という用語は、それだけには限らないが、約5%まで、約10%まで、約25%まで、約30%まで、約50%まで、約75%まで、または約100%まで負に変更することを含めて、少なくとも約5%まで負に変更することを指す。
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチドまたは核酸分子は、核酸分子の天然供給源中に(例えば、マウスまたはヒト中に)存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって生成される場合には他の細胞性材料もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。例えば、「実質的に含まない」という言語は、約15%、10%、5%、2%)、1%)、0.5%)または0.1%)未満の他の材料、例えば、細胞性材料、培養培地、他の核酸分子、化学的前駆体および/または他の化学物質を有するポリヌクレオチドまたは核酸分子の調製物を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、細胞に天然に付随する分子性および/または細胞性構成成分から分離されている細胞を指す。
「有効量」(または「治療有効量」)とは、処置の際に有益なまたは所望の臨床結果に影響を及ぼすのに十分な量である。有効量は、対象に、1回または複数回用量で投与され得る。処置の観点からは、有効量とは、疾患(例えば、新生物)の進行を緩和する、改善する、安定化する、逆転させるまたは減速させる、またはそうでなければ、疾患(例えば、新生物)の病理学的結果を低減するのに十分である量である。有効量は、一般に、ケースバイケースで医師によって決定され、当業者の技術の範囲内である。有効量を達成する適当な投与量を決定する場合には、通常、いくつかの因子が考慮される。これらの因子として、対象の年齢、性別および体重、処置されている状態、状態の重症度ならびに投与される操作された免疫細胞の形態および有効濃度が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「新生物」という用語は、細胞または組織の病的増殖およびそのその後の遊走または他の組織もしくは臓器の浸潤を特徴とする疾患を指す。新生物成長は、通常、制御されないものであり、進行性であり、正常細胞の増殖を誘発しない、または正常細胞の増殖の休止を引き起こす条件下で生じる。新生物は、それだけには限らないが、膀胱、結腸、骨、脳、乳房、軟骨、膠細胞、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、胸膜、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、泌尿生殖器管、尿管、尿道、子宮および膣からなる群から選択される臓器またはその組織もしくは細胞種を含む、さまざまな細胞種、組織または臓器に影響を及ぼし得る。新生物は、がん、例えば、肉腫、癌腫または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置」という用語は、処置されている個体または細胞の疾患過程を変更しようとする臨床介入を指し、予防のため、または臨床病理の過程の間に実施され得る。処置の治療効果として、制限するものではないが、疾患の発生もしくは再発の防止、症状の軽減、疾患の任意の直接的もしくは間接的病理学的結果の減少、転移の防止、疾患進行の速度の低下、疾患状態の寛解または緩和および緩解または予後改善が挙げられる。疾患または障害の進行を防止することによって、処置は、罹患した、もしくは診断された対象または障害を有すると疑われる対象における障害による悪化を防ぐことができるだけなく、処置はまた、障害のリスクにある、または障害を有すると疑われる対象において障害もしくは障害の症状の発生を防ぐ場合もある。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、それだけには限らないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類など(例えば、特定の処置のレシピエントである予定である、またはそれから細胞が回収される)を含む、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。
【0042】
抗MUC16抗体剤
MUC16に免疫特異的に結合する抗MUC16抗体剤が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16の保持される細胞外ドメインに免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16に免疫特異的に結合する抗体部分を含む抗MUC16構築物である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、抗MUC16抗体(例えば、全長抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片)である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)に結合する。
抗MUC16抗体剤、例えば、抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え産生された抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体(二重特異性抗体(BsAb)を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖および2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖抗体重鎖対、細胞内抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体または一本鎖可変断片(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディおよびジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fc融合タンパク質、イムノコンジュゲートまたはその断片を含み得る。このような抗体および抗原結合性断片は、当技術分野で公知の方法によって作製され得る。
【0043】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16に特異的に結合する全長抗体(例えば、全長IgG)またはその抗原結合性断片である。
一部の実施形態では、MUC16に免疫特異的に結合する抗体剤への言及は、抗体剤が、非標的のその結合親和性の少なくとも約10倍である(例えば、少なくとも約10、102、103、104、105、106または107倍のいずれかを含む)親和性でMUC16に結合することを意味する。一部の実施形態では、非標的は、MUC16ではない抗原である。結合親和性は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISA、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析または放射性免疫沈降アッセイ(RIA)によって決定され得る。Kdは、当技術分野で公知の方法、例えば、Biacore機器を利用する、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイまたは例えば、Sapidyne機器を利用する結合平衡除外法(kinetic exclusion assay)(KinExA)によって決定され得る。
【0044】
ヒト配列(例えば、ヒトCDR配列を含むヒト重鎖および軽鎖可変ドメイン配列)を含有する抗MUC16抗体剤が、本明細書において広く論じられているが、非ヒト抗MUC16抗体剤も企図される。一部の実施形態では、非ヒト抗MUC16抗体剤は、本明細書において記載されるような抗MUC16抗体剤に由来するヒトCDR配列および非ヒトフレームワーク配列を含む。非ヒトフレームワーク配列は、一部の実施形態では、例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲサル)などを含めて、本明細書において記載されるような1つまたは複数のヒトCDR配列を使用して合成重鎖および/または軽鎖可変ドメインを作製するために使用され得る任意の配列を含む。一部の実施形態では、非ヒト抗MUC16抗体剤は、本明細書において記載されるような1つまたは複数のヒトCDR配列を、非ヒトフレームワーク配列(例えば、マウスまたはニワトリフレームワーク配列)上にグラフトすることによって生成した抗MUC16抗体剤を含む。
【0045】
例示的ヒトMUC16の完全アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤は、ヒトMUC16内のエピトープを特異的に認識する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤は、ヒトMUC16の保持される細胞外ドメイン内のエピトープを特異的に認識する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤は、MUC16エクトドメインに免疫特異的に結合する(図1)。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤は、ヒトMUC16を発現する細胞に免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤は、組換えMUC16ポリペプチドを発現する細胞に免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、配列番号24に示されるアミノ酸配列を有するMUC16-c344である。一部の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、配列番号25に示されるアミノ酸配列を有するMUC16-c114である。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、ヒト以外の種に由来するMUC16ポリペプチドと交差反応する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、ヒトMUC16に対して完全に特異的であり、種または他の種類の非ヒト交差反応性を示さない。
【0046】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、がん細胞(固形腫瘍など)の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、卵巣がん細胞、乳がん細胞、前立腺がん細胞、結腸がん細胞、肺がん細胞、脳がん細胞、膵臓がん細胞、腎臓がん細胞、卵管がん細胞、子宮(例えば、子宮内膜)がん細胞、一次腹膜がん細胞またはMUC16を発現する任意の他の組織のがん細胞のうち1種または複数の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、がん細胞系、例えば、卵巣がん細胞系、例えば、OVCAR3、OVCA-432、OVCA-433およびCAOV3の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16タンパク質の少なくとも1つの対立遺伝子バリアントまたはその断片と交差反応する。一部の実施形態では、対立遺伝子バリアントは、天然に存在するMUC16またはその断片と比較した場合に、最大約30、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30のいずれかのアミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16タンパク質の任意の対立遺伝子バリアントまたはその断片と交差反応しない。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16タンパク質の少なくとも1つの種間バリアントと交差反応する。一部の実施形態では、例えば、MUC16タンパク質またはその断片は、ヒトMUC16およびMUC16タンパク質の種間バリアントまたはその断片であり、そのマウスまたはラットバリアントである。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16タンパク質の任意の種間バリアントと交差反応しない。
【0047】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤のいずれかによれば、抗MUC16抗体剤は、MUC16に特異的に結合する抗MUC16抗体部分を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG1重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG2重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG3重鎖定常領域を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG1重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号28のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgG4重鎖定常領域は、配列番号29のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、ラムダ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0048】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、カッパ軽鎖定常領域を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2の1、2または3つのHC-CDRを含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号4、5および6に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2に示される重鎖可変ドメインを含む。
【0049】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号3の1、2または3つのLC-CDRを含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号3の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号7、8および9に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号3に示される軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびに配列番号3の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号4、5および6に示される を含む重鎖可変ドメインならびにそれぞれ、配列番号7、8および9に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号2に示される重鎖可変ドメインおよび配列番号3に示される軽鎖可変ドメインを含む。
【0050】
一部の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号2に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号3に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10の1、2または3つのHC-CDRを含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号12、13および14に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10に示される重鎖可変ドメインを含む。
【0051】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号11の1、2または3つのLC-CDRを含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号11の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号15、16および17に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号11を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号11に示される軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびに配列番号11の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ、配列番号12、13および14に示される を含む重鎖可変ドメインならびにそれぞれ、配列番号15、16および17に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号11を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号10に示される重鎖可変ドメインおよび配列番号11に示される軽鎖可変ドメインを含む。
【0052】
一部の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号10に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号11に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
例示的抗体配列は以下の表に示されている。表2中の例示的CDR配列は、IgBLASTアルゴリズムを使用して予測される。例えば、その開示内容がその全文で参照により本明細書に組み込まれる、Ye J. et al., Nucleic Acids Research 41:W34-W40 (2013)を参照されたい。当業者ならば、抗体重鎖および軽鎖可変領域中のCDR位置を予測するための多数のアルゴリズムが公知であり、本明細書において記載される抗体に由来するCDRを含むが、IgBLAST以外の予測アルゴリズムに基づく抗体剤は、本発明の範囲内であることは認識するであろう。
【0053】
例示的抗体重鎖および軽鎖可変領域配列は、国際免疫遺伝学情報システム(INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM)(登録商標)(IMGT)に従って区切られる。例えば、その開示内容がその全文で参照により本明細書に組み込まれる、Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Res., 43:D413-422 (2015)を参照されたい。当業者ならば、本明細書において記載される抗体に由来するVHまたはVL配列を含むが、IMGT以外のアルゴリズムに基づく抗体剤は、本発明の範囲内にあることは認識するであろう。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
全長抗MUC16抗体
抗MUC16抗体剤は、一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体である。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMである。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、IgG定常ドメイン、例えば、そのバリアントを含むIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかの定常ドメインを含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、ラムダ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、全長ヒト抗MUC16抗体である。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、マウス免疫グロブリンのFc配列を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、増強された抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)エフェクター機能を有するように変更されているか、またはそうでなければ変化しているFc配列を含む。
【0057】
したがって、例えば、一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は、腫瘍細胞上のMUC16に特異的に結合する。一部の実施形態では、IgG1は、ヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG1は、ヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は、配列番号28または29のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は、配列番号28または29のアミノ酸配列を含むか、またはからなり、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体の、MUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)への結合は、腫瘍成長もしくは腫瘍の転移を阻害し、または腫瘍の退縮を誘導する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体の、MUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)への結合は、MUC16発現性細胞のin vitroでのMatrigel浸潤を阻害する。
【0058】
一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は、a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびにb)配列番号7のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG1は、ヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG4は、ヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は、配列番号28または29のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は、a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびにb)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG1は、ヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG4は、ヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は、配列番号28または29のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。
【0059】
キメラ抗MUC16構築物
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16に特異的に結合する、抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)またはそのバリアントである。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、抗MUC16CARである。CARは、当技術分野で周知であり、抗MUC16抗体剤は、本発明において使用するために、また本明細書における1つまたは複数の請求項に含める可能性があるために、その開示内容が明確に本明細書に組み込まれるSadelain et al., Nature 545: 423- 431 (2017)に記載されるような、当技術分野で公知の任意のCARに従うCARであり得る。一部の実施形態では、抗MUC16CARは、本明細書において記載される抗MUC16抗体部分のいずれかに従う抗MUC16抗体部分を含む。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分を含む抗MUC16CARが提供される。一部の実施形態では、抗MUC16CARの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む抗体重鎖可変ドメインならびにb)配列番号7のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0060】
一部の実施形態では、抗MUC16CARの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびにb)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0061】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、T細胞受容体(TCR)膜貫通ドメインを含む抗MUC16キメラ受容体である。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、本発明において使用するために、また本明細書における1つまたは複数の請求項に含める可能性があるために、その開示内容が明確に本明細書に組み込まれるPCT特許出願公開番号WO2017070608に記載されるような抗体T細胞受容体(abTCR)である。一部の実施形態では、抗MUC16abTCRは、本明細書において記載される抗MUC16抗体部分のいずれかに従う抗MUC16抗体部分を含む。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分を含む抗MUC16abTCRが提供される。
【0062】
一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む抗体重鎖可変ドメインならびにb)配列番号7のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの重鎖可変ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびにb)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの重鎖可変ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0063】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、MUC16に特異的に結合する抗MUC16抗体部分および共刺激性シグナル伝達ドメインを含むキメラ共刺激性受容体である。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、MUC16に結合するとその表面でそれが機能的に発現される免疫細胞を刺激可能である。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、機能的一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、任意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、抗MUC16抗体部分、膜貫通ドメインおよび共刺激性シグナル伝達ドメインを含む単一ポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、第1および第2のポリペプチド鎖は一緒に、抗MUC16抗体部分、膜貫通モジュールおよび共刺激性シグナル伝達ドメインを含む共刺激性シグナル伝達モジュールを形成する。一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、別々のポリペプチド鎖であり、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、多量体、例えば、二量体である。一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、共有結合によって、例えば、ペプチド結合によって、または別の化学的連結、例えば、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である。
【0064】
本発明の抗MUC16キメラ共刺激性受容体において使用するための共刺激性免疫細胞シグナル伝達ドメインの例として、キメラ受容体(例えば、CARまたはabTCR)と協力して作用して、キメラ受容体会合後にシグナル伝達を開始することができるT細胞受容体(TCR)の共受容体の細胞質配列ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアントおよび同一の機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
TCR単独によって生成されたシグナルは、T細胞の完全活性化にとっては不十分であること、および二次的または共刺激性シグナルも必要であることは公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞内シグナル伝達配列:TCRによって抗原依存性一次活性化を開始するもの(本明細書において「一次免疫細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)および抗原依存的に作用して、二次的または共刺激性シグナルを提供するもの(本明細書において「共刺激性免疫細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)によって媒介されると言われることがある。
【0065】
刺激性に作用する一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含有し得る。ITAMを含有する一次免疫細胞シグナル伝達配列の例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが挙げられる。「機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、適当な受容体に作動可能につなげられる場合に免疫細胞活性化シグナルを形質導入可能である配列である。一次免疫細胞シグナル伝達配列の断片またはバリアントを含み得る「非機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫細胞活性化シグナルを形質導入できない。本明細書において記載される抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、機能的一次免疫細胞シグナル伝達配列、例えば、ITAMを含む機能的シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、任意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。
共刺激性免疫細胞シグナル伝達配列は、例えば、CD27、CD28、4-1BB (CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドなどを含む、共刺激性分子の細胞内ドメインの部分であり得る。
【0066】
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体の抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3ならびにb)配列番号7のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体の抗MUC16抗体部分は、a)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインならびにb)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するそのバリアントを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号11のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0067】
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、免疫細胞において発現される。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、別のキメラ受容体を発現する免疫細胞において発現される。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、CARまたはabTCRである。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16に結合しない。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16の高発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがんと関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、本明細書において記載されるがんのいずれか(例えば、腎臓がん、子宮頸がん、前立腺がん、乳がん、結腸がん、脳がんまたは膵臓がん)と関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、腎臓がんと関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。一部の実施形態では、RCCは、転移性RCCである。一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞における抗MUC16キメラ共刺激性受容体の発現は誘導可能である。一部の実施形態では、免疫細胞における抗MUC16キメラ共刺激性受容体の発現は、他のキメラ受容体を介したシグナル伝達の際に誘導可能である。
【0068】
結合親和性
結合親和性は、Kd、Koff、KonまたはKaによって示され得る。「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、動態学的選択設定から決定されるような、抗体剤/抗原複合体からの抗体剤の解離の解離速度(off-rate)定数を指すものとする。「Kon」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体剤/抗原複合体を形成する、抗体剤の抗原への会合の会合速度(on-rate)定数を指すものとする。平衡解離定数「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体剤-抗原相互作用の解離定数を指し、平衡の抗体剤分子の溶液中に存在する抗体結合性ドメインのすべての2分の1を占めるために必要な抗原の濃度を説明し、Koff/Konに等しい。Kdの測定は、すべての結合剤が溶液中にあることを前提とする。抗体剤が細胞壁に繋留される場合には、例えば、酵母発現系において、対応する平衡速度定数は、EC50として表され、これは、Kdの良好な近似をもたらす。親和性定数、Kaは、解離定数、Kdの逆数である。
【0069】
解離定数(Kd)は、抗原に対する抗体部分の親和性を示す指標として使用される。例えば、さまざまなマーカー剤を用いて印がつけられた抗体剤を使用するスキャッチャード法によって、ならびにBiacore(Amersham Biosciencesによって製造された)を使用する、ユーザーズマニュアルおよび付属のキットに従う表面プラズモン共鳴による生体分子相互作用の分析によって容易な分析が可能である。これらの方法を使用して導くことができるKd値は、M(モル)の単位で表される。標的に特異的に結合する抗体剤は、例えば、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、≦10-12Mまたは≦10-13MのKdを有し得る。
抗体剤の結合特異性は、当技術分野で公知の方法によって実験的に決定され得る。このような方法として、それだけには限らないが、ウエスタンブロット、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA-、EIA-、BIAcore試験およびペプチドスキャンが挙げられる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤の結合親和性は、表面にMUC16を発現する細胞(例えば、HepG2細胞)に対する抗MUC16抗体剤の結合親和性を試験することによって測定される。
【0070】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、標的MUC16(例えば、nMUC16)に、約10-7M~約10-13M(例えば、約10-7M~約10-13M、約10-9M~約10-13Mまたは約10-10M~約10-12M)のKdで特異的に結合する。したがって、一部の実施形態では、抗nMUC16抗体剤とnMUC16の間の結合のKd、抗sMUC16抗体剤とsMUC16の間の結合のKdまたは抗MUC16抗体剤とMUC16(任意の形態)の間の結合のKdは、約10-7M~約10-13M、約1×10-7M~約5×10-13M、約10-7M~約10-12M、約10-7M~約10-11M、約10-7M~約10-10M、約10-7M~約10-9M、約10-8M~約10-13M、約1×10-8M~約5×10-13M、約10-8M~約10-12M、約10-8M~約10-11M、約10-8M~約10-10M、約10-8M~約10-9M、約5×10-9M~約1×10-13M、約5×10-9M~約1×10-12M、約5×10-9M~約1×10-11M、約5×10-9M~約1×10-10M、約10-9M~約10-13M、約10-9M~約10-12M、約10-9M~約10-11M、約10-9M~約10-10M、約5×10-10M~約1×10-13M、約5×10-10M~約1×10-12M、約5×10-10M~約1×10-11M、約10-10M~約10-13M、約1×10-10M~約5×10-13M、約1×10-10M~約1×10-12M、約1×10-10M~約5×10-12M、約1×10-10M~約1×10-11M、約10-11M~約10-13M、約1×10-11M~約5×10-13M、約10-11M~約10-12Mまたは約10-12M~約10-13Mである。一部の実施形態では、抗nMUC16抗体剤とnMUC16の間の結合のKdは、約10-7M~約10-13Mである。
【0071】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤と非標的の間の結合のKdは、抗MUC16抗体剤と標的の間の結合のKdよりも大きく、一部の実施形態では、標的(例えば、細胞表面に結合したMUC16)に対する抗MUC16抗体剤の結合親和性は、非標的に対するものよりも高いと本明細書において言及される。一部の実施形態では、非標的は、MUC16ではない抗原である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤(nMUC16に対する)と非MUC16標的の間の結合のKdは、抗MUC16抗体剤と標的MUC16の間の結合のKdの少なくとも約10倍、例えば、約10~100倍、約100~1000倍、約103~104倍、約104~105倍、約105~106倍、約106~107倍、約107~108倍、約108~109倍、約109~1010倍、約1010~1011倍または約1011~1012倍であり得る。
【0072】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、約10-1M~約10-6M(例えば、約10-1M~約10-6M、約10-1M~約10-5Mまたは約10-2M~約10-4M)のKdで非標的に結合する。一部の実施形態では、非標的は、MUC16ではない抗原である。したがって、一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤と非MUC16標的の間の結合のKdは、約10-1M~約10-6M、約1×10-1M~約5×10-6M、約10-1M~約10-5M、約1×10-1M~約5×10-5M、約10-1M~約10-4M、約1×10-1M~約5×10-4M、約10-1M~約10-3M、約1×10-1M~約5×10-3M、約10-1M~約10-2M、約10-2M~約10-6M、約1×10-2M~約5×10-6M、約10-2M~約10-5M、約1×10-2M~約5×10-5M、約10-2M~約10-4M、約1×10-2M~約5×10-4M、約10-2M~約10-3M、約10-3M~約10-6M、約1×10-3M~約5×10-6M、約10-3M~約10-5M、約1×10-3M~約5×10-5M、約10-3M~約10-4M、約10-4M~約10-6M、約1×10-4M~約5×10-6M、約10-4M~約10-5Mまたは約10-5M~約10-6Mである。
【0073】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤が、標的MUC16(例えば、細胞表面に結合したMUC16)を高結合親和性で特異的に認識し、非標的に低結合親和性で結合することを言及する場合には、抗MUC16抗体剤は、標的MUC16(例えば、細胞表面に結合したMUC16)に、約10-7M~約10-13M(例えば、約10-7M~約10-13M、約10-9M~約10-13Mまたは約10-10M~約10-12M)のKdで結合するであろう、また非標的に、約10-1M~約10-6M(例えば、約10-1M~約10-6M、約10-1M~約10-5Mまたは約10-2M~約10-4M)のKdで結合するであろう。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤が細胞表面に結合したMUC16を特異的に認識することを言及する場合には、抗MUC16抗体剤の結合親和性は、対照抗MUC16抗体剤に対して比較される。一部の実施形態では、対照抗MUC16抗体剤と細胞表面に結合したMUC16の間の結合のKdは、本明細書において記載される抗nMUC16抗体剤と細胞表面に結合したMUC16の間の結合のKdの少なくとも約2倍、例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約10~100倍、約100~1000倍、約103~104倍、約104~105倍、約105~106倍、約106~107倍、約107~108倍、約108~109倍、約109~1010倍、約1010~1011倍または約1011~1012倍であり得る。
【0074】
抗MUC16抗体剤の機能的活性
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、MUC16ポリペプチドを組換え発現する細胞のin vitroでのMatrigel浸潤を阻害する。一部の実施形態では、MUC16は、配列番号25(MUC16 c114)を含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化されたMUC16 c114を組換え発現する細胞は、SKOV3細胞である。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、グリコシル化される。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドのグリコシル化形態は、アミノ酸残基Asn30(成熟MUC16(配列番号1)のAsnl806に対応する)でNグリコシル化である。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、アミノ酸残基Asn24およびAsn30(成熟MUC16(配列番号1)のそれぞれAsnl800およびAsnl806に対応する)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、配列番号25のアミノ酸残基Asn1、Asn24およびAsn30(Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375では、それぞれAsn1777、Asn1800およびAsn1806とも呼ばれる)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースを含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースからなる。ある特定の実施形態では、Matrigel浸潤は、対照抗体(例えば、MUC16を標的としない抗体)を用いて処置された細胞のin vitroでのMatrigel浸潤と比較して、少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍阻害される。ある特定の実施形態では、Matrigel浸潤は、対照抗体(例えば、MUC16を標的としない抗体)を用いて処置された細胞のin vitroでのMatrigel浸潤と比較して、約1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍阻害される。
【0075】
Matrigel浸潤のMUC16抗MUC16抗体剤または抗原結合性断片によって媒介される阻害を決定するアッセイは、当業者に公知である。例えば、BD BioCoat(商標)Matrigel(商標)浸潤インサートまたはチャンバー(24ウェルプレート中のカタログ番号354480)および対照インサート(24ウェルプレート中のカタログ番号354578)は、BD Biosciences、MAから購入できる。Matrigel浸潤アッセイは、製造業者のプロトコールのとおりに実施され得る。手短には、24ウェルプレート中のMatrigelチャンバー(-20℃で保存された)および対照インサート(4℃で保存された)は、室温に戻される。両インサートは、インサートにおいて、ならびに24ウェルプレートの外側のウェルにおいて、37℃ 5% CO2加湿インキュベーターで2時間、0.5mLの血清不含培地で再水和される。培養されたSKOV3細胞は、トリプシン処理され、培養培地で洗浄される。100万個の細胞が別の遠心管中に分けられ、血清不含培地で3回洗浄される。これらの細胞は、0.5mLの血清不含培地中で5,000個の細胞を与えるように後に調整される。再水和されたインサート中の培地が除去され、インサートは、ウェル中に0.75mLの、化学誘引物質として働く10%ウシ胎児血清(FBS)含有培養培地を含有する新しい24ウェルプレート中に移された。直ちに、血清不含培地中の0.5mLの細胞(5,000個細胞)がインサートに付加される。インサートおよび外側のウェル中に気泡が閉じ込められないことを確かめるために適切な注意が払われる。24ウェルプレートは、37℃ 5% CO2加湿インキュベーター中で48時間インキュベートされる。インキュベーション後、綿棒をMatrigelまたは対照インサート中に挿入し、綿棒の先端を膜表面上で動かしながら穏やかに圧力を加えることによって「こすり洗い」することにより、膜の上側表面から非浸潤細胞が除去される。培地で湿らせた第2の綿棒を用いてこすり洗いが反復される。次いで、インサートは、0.5mLの蒸留水中の0.5%クリスタルバイオレット染色液を含有する新しい24ウェルプレートにおいて30分間染色される。染色後、インサートは、過剰の染色液を除去するために3ビーカーの蒸留水ですすがれる。インサートは、新しい24ウェルプレート中で風乾される。浸潤した細胞は、200×の倍率の倒立顕微鏡下で手作業でカウントされる。3連の膜のいくつかの視野がカウントされ、図中に記録された。
【0076】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、マウスモデル研究において転移を阻害または低減可能であり、腫瘍成長を阻害可能であり、または腫瘍退縮を誘導可能である。例えば、腫瘍細胞系を、胸腺欠損ヌードマウスに導入することができ、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片を1回または複数回胸腺欠損マウスに投与することができ、数週間および/または数か月の期間にわたって注射された腫瘍細胞の腫瘍進行をモニタリングすることができる。一部の場合には、胸腺欠損ヌードマウスへの抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の投与は、腫瘍細胞系の導入の前に生じてもよい。ある特定の実施形態では、MUC16 c114を発現するSKOV3細胞は、本明細書において記載されるマウス異種移植モデルのために利用される。
【0077】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%まで、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約25%または35%まで)、任意に約75%まで、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍まで、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。偽処置マウスは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または対照(例えば、抗IgG抗体)で処置され得る。
【0078】
腫瘍成長阻害または腫瘍退縮を決定することは、例えば、一定期間にわたって腫瘍の大きさをモニタリングすることによって、例えば、触知可能な腫瘍の物理的測定または他の視覚的検出法によって評価され得る。例えば、腫瘍細胞系は、可視化剤、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼを組換え発現するように作製されてもよく、次いで、顕微鏡検査によってGFPのin vivo可視化を実施してもよく、また異種移植マウスにルシフェラーゼ基質を投与すること、およびルシフェラーゼ基質をプロセシングするルシフェラーゼ酵素による発光を検出することによってルシフェラーゼのin vivo可視化を実施してもよい。GFPまたはルシフェラーゼの検出の程度またはレベルは、異種移植マウスにおける腫瘍の大きさと相関する。
【0079】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して腫瘍異種移植モデルにおける動物の生存を増大し得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%まで、腫瘍異種移植モデルにおけるマウスの生存を増大する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、腫瘍異種移植モデルにおいて偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約25%または35%まで、任意で、約75%)まで、腫瘍異種移植モデルにおいてマウスの生存を増大する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、腫瘍異種移植モデルにおいて偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍まで、腫瘍異種移植モデルにおいてマウスの生存を増大する。生存は、例えば、腫瘍細胞系注射後の時間(例えば、日または週)に対する生存マウス数の生存曲線をプロットすることによって決定され得る。偽処置マウスは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または対照(例えば、抗IgG抗体)を用いて処置され得る。
【0080】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、細胞を、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片と接触させるとMUC16ポリペプチドを発現する細胞中に内部移行される。「内部移行された」または「内部移行」とは、細胞によって内部移行される分子へ言及する場合には、細胞膜の細胞外表面と接触している分子の、細胞膜を通る細胞膜の細胞内表面への、および/または細胞の細胞質中への通過を指す。ある特定の実施形態では、グリコシル化されたMUC16 c114を組換え発現する細胞は、SKOV3細胞である。ある特定の実施形態では、MUC16 c114のグリコシル化形態は、例えば、配列番号25のAsn1、Asn24およびAsn30(Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375における、それぞれAsn1777、Asn1800およびAsn1806とも呼ばれる)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースを含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースからなる。
【0081】
例えば、放射標識された抗体を使用するといった、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の、細胞への内部移行を決定するアッセイは、当業者に公知である。例えば、89Zr標識された抗体の内部移行は、MUC16 c114を発現するSKOV3細胞で調査され得る。手短には、およそ1×105個細胞が12ウェルプレートに播種され、37℃ 5% CO2インキュベーターで一晩インキュベートされる。一定容量の放射標識されたタンパク質が各ウェルに付加され、37℃および4℃で1、5、12および24時間プレートがインキュベートされる。各インキュベーション期間の後、培地が収集され、細胞が1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすがれる。細胞を4℃の1mLの100mM酢酸および100mMグリシン(1:1、pH3.5)で洗浄することによって表面に結合した活性が収集される。次いで、1mLの1M NaOHを用いて接着細胞が溶解される。各洗浄物が収集され、活性についてカウントされる。洗浄物すべての総活性に対する最終洗浄物の活性の割合を使用して、内部移行%を決定する。ある特定の実施形態では、アッセイは、37℃で実施される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片とともにインキュベートされた細胞の少なくとも1、2、3、5、6、7、8、9または10パーセントにおいて内部移行される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片とともにインキュベートされた細胞の約1、2、3、5、6、7、8、9または10パーセントにおいて内部移行される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、細胞の抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片との接触の1、2、3、4、8、12、16、20または24時間以内に内部移行される。
【0082】
核酸
抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)をコードする核酸分子も企図される。一部の実施形態では、本明細書において記載される全長抗MUC16抗体のいずれかまたはその抗原結合性断片を含む全長抗MUC16抗体をコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤をコードする核酸(または核酸のセット)は、ペプチドタグ(例えば、タンパク質精製タグ、例えば、His-タグ、HAタグ)をコードする核酸配列をさらに含み得る。
また、抗MUC16抗体剤を含む単離された宿主細胞、抗MUC16抗体剤のポリペプチド構成成分をコードする単離された核酸または本明細書において記載される抗MUC16抗体剤のポリペプチド構成成分をコードする核酸を含むベクターが、本明細書において企図される。
本出願はまた、これらの核酸配列のバリアントを含む。例えば、バリアントは、抗MUC16抗体剤(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)、その抗原結合性断片または本出願の抗MUC16抗体部分をコードする核酸配列と、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0083】
本発明はまた、本発明の核酸が挿入されるベクターを提供する。
手短に要約すると、抗MUC16抗体剤をコードする天然または合成核酸による抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の発現は、核酸が、例えば、プロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモーター)および3’非翻訳領域(UTR)を含む5’および3’調節エレメントに作動可能に連結されるように、核酸を適当な発現ベクターに挿入することによって達成され得る。ベクターは、真核生物宿主細胞における複製および組込みにとって適したものであり得る。通常のクローニングおよび発現ベクターは、所望の核酸配列の発現の調節のために有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列およびプロモーターを含有する。
本発明の核酸はまた、標準遺伝子送達プロトコールを使用する核酸免疫処置および遺伝子療法のために使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当技術分野で公知である。例えば、その全文で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,399,346号、同5,580,859号、同5,589,466号を参照されたい。一部の実施形態では、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0084】
核酸は、いくつかの種類のベクター中にクローニングされ得る。例えば、核酸は、それだけには限らないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むベクター中にクローニングされ得る。特に目的のベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシーケンシングベクターが挙げられる。
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当技術分野で周知であり、例えば、Green and Sambrook (2013, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)に、ならびに他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、それだけには限らないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。一般に、適したベクターは、少なくとも1種の生物において機能的である複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位および1種または複数の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584、WO01/29058および米国特許第6,326,193号を参照されたい)。
【0085】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のためにいくつかのウイルスベースの系が開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野で公知の技術を使用してベクター中に挿入、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。組換えウイルスは、次いで、単離され、in vivoまたはex vivoのいずれかで対象の細胞に送達され得る。いくつかのレトロウイルス系が当技術分野で公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターは、当技術分野で公知である。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レトロウイルス、例えば、レンチウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期の安定な組込みおよび娘細胞におけるその増殖を可能にするので長期遺伝子導入を達成するための適したルーツである。レンチウイルスベクターは、それらが非増殖性細胞、例えば、肝細胞を形質導入できるという点でオンコレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス由来のベクターを上回る付加された利点を有する。それらはまた、低い免疫原性という付加された利点を有する。
さらなるプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。通常、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは最近、同様の開始部位の下流に機能的エレメントを含有するとわかった。プロモーターエレメント間の間隔はしばしば柔軟であり、その結果、エレメントが互いに対して逆転されるか、または移動される場合にプロモーター機能が示される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は、50bp離れるところまで増大することができ、その後、活性が低下し始める。
【0086】
適したプロモーターの一例として、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列がある。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動可能な強力な構成プロモーター配列である。適したプロモーターの別の例として、伸長増殖因子-1α(EF-1α)がある。しかし、それだけには限らないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、鳥類白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、それだけには限らないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含む他の構成プロモーター配列も使用され得る。さらに、本発明は、構成プロモーターの使用に制限されてはならない。誘導プロモーターも本発明の一部として企図される。誘導プロモーターの使用は、このような発現が望まれる場合に作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることが可能な、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導プロモーターの例として、それだけには限らないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤の発現は、誘導可能である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤をコードする核酸配列は、本明細書において記載される任意の誘導プロモーターを含む誘導プロモーターに作動可能に連結される。
【0087】
誘導プロモーター
誘導プロモーターの使用は、このような発現が望まれる場合に作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることが可能な、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。真核細胞において使用するための例示的誘導プロモーター系として、それだけには限らないが、ホルモン調節性エレメント(例えば、Mader, S. and White, J. H. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5603-5607 (1993)を参照されたい)、合成リガンド調節性エレメント(例えば、Spencer, D. M. et al 1993) Science 262: 1019-1024を参照されたい)および電離放射線調節性エレメント(例えば、Manome, Y. et al., Biochemistry 32: 10607-10613 (1993)、Datta, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1014- 10153 (1992))が挙げられる。in vitroまたはin vivoで哺乳動物系において使用するためのさらなる例示的誘導プロモーター系は、Gingrich et al., Annual Rev. Neurosci 21:377-405 (1998)に概説されている。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤を発現させるために使用するための誘導プロモーター系として、Tet系がある。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤を発現させるために使用するための誘導プロモーター系として、大腸菌(E. coli)に由来するlacレプレッサー系がある。
【0088】
本発明において使用するための例示的誘導プロモーター系として、Tet系がある。このような系は、Gossen et al., (1993)によって記載されるTet系に基づいている。例示的実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、1つまたは複数のTetオペレーター(TetO)部位を含むプロモーターの制御下にある。不活性状態では、Tetレプレッサー(TetR)は、TetO部位に結合し、プロモーターからの転写を抑制する。活性状態では、例えば、誘導剤、例えば、テトラサイクリン(Tc)、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)またはその活性類似体の存在下では、誘導剤は、TetOからのTetRの放出を引き起こし、それによって、転写が起こることが可能となる。ドキシサイクリンは、1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロキシ-11-メチル-4,6-ジオキソ-1,4a,11,11a,12,12a-ヘキサヒドロテトラセン-3-カルボキサミドの化学名を有する抗生物質のテトラサイクリンファミリーのメンバーである。
【0089】
一実施形態では、TetRは、哺乳動物細胞、例えば、マウスまたはヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。ほとんどのアミノ酸は、遺伝暗号の縮重のために2つ以上のコドンによってコードされ、核酸によってコードされるアミノ酸配列の変更を全く伴わない、所与の核酸のヌクレオチド配列の相当な変動が可能となる。しかし、多数の生物は、「コドンバイアス」(すなわち、所与のアミノ酸の特定のコドンの使用についてのバイアス)としても公知のコドン使用の相違を示す。コドンバイアスは、特定のコドンのtRNAの優勢な種の存在と相関することが多く、これは、次いで、mRNA翻訳の効率を高める。したがって、特定の生物(例えば、原核生物)に由来するコード配列を、コドン最適化によって異なる生物(例えば、真核生物)における発現の改善のために調整することができる。
【0090】
Tet系の他の特定の変種には、以下の「Tet-Off」および「Tet-On」系が含まれる。Tet-Off系では、転写は、TcまたはDoxの存在下で不活性である。その系では、単純ヘルペスウイルスに由来するVP16の強力なトランス活性化ドメインに融合されたTetRから構成されるテトラサイクリン制御性トランス活性化因子タンパク質(tTA)は、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(一般に、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)最初期プロモーターに由来する最小プロモーター配列)に融合されたTetO配列コンカテマーで構成されている。tTAは、TcまたはDoxの不在下でTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。tTAは、TcまたはDoxの存在下でTREに結合できず、標的遺伝子からの発現は、不活性のままである。
逆に、Tet-On系では、転写は、TcまたはDoxの存在下で活性である。Tet-On系は、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子、rtTAに基づいている。tTA同様、rtTAは、TetRレプレッサーおよびVP16トランス活性化ドメインから構成される融合タンパク質である。しかし、TetR DNA結合性部分における4つのアミノ酸変化がrtTAの結合特徴を変更し、その結果、Doxの存在下で標的導入遺伝子のTRE中のtetO配列のみを認識できる。したがって、Tet-On系では、TRE調節性標的遺伝子の転写が、Doxの存在下でrtTAのみによって刺激される。
【0091】
別の誘導プロモーター系として、大腸菌由来のlacレプレッサー系がある(Brown et al., Cell 49:603-612 (1987)を参照されたい)。lacレプレッサー系は、lacオペレーター(lacO)を含むプロモーターに作動可能に連結した目的のポリヌクレオチドの転写を調節することによって機能する。lacレプレッサー(lacR)は、LacOに結合し、したがって、目的のポリヌクレオチドの転写を妨げる。目的のポリヌクレオチドの発現は、適した誘導剤、例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
ポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞中に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染しているように求められる細胞の集団からの、発現している細胞の同定および選択を促進する選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれか、または両方を含有する場合もある。他の態様では、選択マーカーは、DNAの別々の小片上に保持され、同時トランスフェクション手順で使用される場合もある。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方とも、宿主細胞における発現を可能にするために適当な調節配列を隣接させることができる。有用な選択マーカーとして、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、neoなどが挙げられる。
【0092】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされている可能性がある細胞を同定するために、また調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織によって存在しないか、または発現されない、また、その発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞中に導入された後、適した時間でアッセイされる。適したレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tel et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。適した発現系は周知であり、公知の技術を使用して調製するか、または商業的に入手できる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動性転写をモジュレートする能力について物質を評価するために使用され得る。
【0093】
一部の実施形態では、本明細書において記載される全長抗MUC16抗体のいずれかに従う全長抗MUC16抗体をコードする核酸が提供される。一部の実施形態では、核酸は、全長抗MUC16抗体の重鎖および軽鎖をコードする1つまたは複数の核酸配列を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の核酸配列の各々は、別々のベクター中に含有される。一部の実施形態では、核酸配列の少なくとも一部は、同一ベクター中に含有される。一部の実施形態では、核酸配列のすべては、同一ベクター中に含有される。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択され得る。
細胞中に遺伝子を導入し、発現させる方法は、当技術分野で公知である。発現ベクターとの関連で、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母または昆虫細胞中に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞中に移され得る。
【0094】
宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法として、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、電気穿孔などが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生成する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Green and Sambrook (2013, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。一部の実施形態では、宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクションによって実施される。
宿主細胞へ目的のポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞中に遺伝子を挿入する最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス1、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来するものであり得る。例えば、米国特許第5,350,674号および同5,585,362号を参照されたい。
宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段として、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。in vitroおよびin vivoでの送達媒体として使用するための例示的コロイド系として、リポソーム(例えば、人工膜小胞)がある。
【0095】
非ウイルス送達系が利用される場合には、例示的送達媒体は、リポソームである。宿主細胞中に核酸を導入する(in vitro、ex vivoまたはin vivo)ために脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸は、脂質と会合させてもよい。脂質と会合している核酸は、リポソームの水性内部に被包すること、リポソームの脂質二重層内に分散させること、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と会合している連結分子によってリポソームに付着すること、リポソーム中に捕捉すること、リポソームと複合体形成すること、脂質を含有する溶液中に分散させること、脂質と混合すること、脂質と組み合わせること、脂質中に懸濁液として含有すること、ミセルに含有するか、またはミセルと複合体形成すること、または別の方法で脂質と会合することができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターと会合している組成物は、溶液中で任意の特定の構造に制限されない。例えば、それらは、二層構造で、ミセルとして、または「崩壊した」構造を有して存在し得る。それらはまた、簡単に溶液中に分散させることができ、おそらくは、大きさまたは形状が均一ではない凝集体を形成する。脂質は、天然に存在する脂質または合成脂質であり得る脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪滴ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドを含有する化合物のクラスが含まれる。
【0096】
宿主細胞中に外因性核酸を導入するための、またはそうではなく、本発明の阻害剤に対して細胞を曝露するために使用される方法に関わらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが実施され得る。このようなアッセイとして、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR、「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によって、または本発明の範囲内に入る薬剤を同定するための本明細書において記載されるアッセイによって例えば、特定のペプチドの有無を検出することが挙げられる。
【0097】
抗MUC16抗体剤および抗MUC16抗体部分の調製
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、モノクローナル抗体であるか、またはモノクローナル抗体に由来する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、モノクローナル抗体に由来するVHおよびVLドメインまたはそのバリアントを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、モノクローナル抗体に由来するCH1およびCLドメインまたはそのバリアントをさらに含む。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法を含む当技術分野で公知の方法を使用して、または組換えDNA法を使用して調製され得る。さらに、例示的ファージディスプレイ法は、本明細書において、および以下の実施例において記載されている。
【0098】
ハイブリドーマ法では、通常、ハムスター、マウスまたは他の適当な宿主動物が、免疫処置剤を用いて免疫処置されて、免疫処置剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生可能であるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球が、in vitroで免疫処置される場合もある。免疫処置剤として、目的のタンパク質のポリペプチドまたは融合タンパク質を挙げることができる。一般に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、または非ヒト哺乳動物供給源が望まれる場合には、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、適した融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して免疫処置された細胞系と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する。免疫処置された細胞系は、普通、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。普通、ラットまたはマウス骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない不死化された細胞の成長または生存を阻害する1種または複数の物質を含有する適した培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマの培養培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含み、これは、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる。
【0099】
一部の実施形態では、不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である。一部の実施形態では、不死化細胞系は、マウス骨髄腫系であり、これは、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、カリフォルニア州、サンディエゴおよびAmerican Type Culture Collection、バージニア州、マナサスから入手できる。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系もヒトモノクローナル抗体の生成のために記載されている。
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、次いで、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはin vitro結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって決定され得る。このような技術およびアッセイは、当技術分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード解析法によって決定され得る。
【0100】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、制限希釈手順によってサブクローニングされ、標準方法によって増殖され得る。Goding、前掲。この目的のための適した培養培地として、例えば、「ダルベッコ改変イーグル培地」およびRPMI-1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腹水としてin vivoで増殖され得る。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって培養培地からまたは腹水から単離または精製され得る。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤のいずれかによれば、抗MUC16抗体剤は、抗体ライブラリー(例えば、scFvまたはFab断片を提示するファージライブラリー)から選択されたクローンに由来する配列を含む。クローンは、所望の活性(単数または複数)を有する抗体断片についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特徴を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするためのさまざまな方法が当技術分野で公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, N.J., 2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991)、Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992)、Marks and Bradbury, Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)、Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004)、Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004)、Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004)およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)にさらに記載されている。
【0102】
ある特定のファージディスプレイ方法では、Winter et al., Ann. Rev. Immunol.、12: 433-455 (1994)に記載されるように、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中でランダムに組換えられ、これが、次いで、抗原結合性ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、通常、抗体断片をscFv断片として、またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫処置された供給源から得られたライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993)によって記載されるように、免疫処置を全く伴わずに広範囲の非自己および自己抗原に対する抗体の単一供給源を提供するナイーブレパートリーがクローニングされ得る(例えば、ヒトから)。最後に、ナイーブライブラリーはまた、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)によって記載されるように、幹細胞から再構成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroで再構成を達成することによって合成によって作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許刊行物として、例えば、米国特許第5,750,373号および米国特許公開第2005/0079574号、同2005/0119455号、同2005/0266000号、同2007/0117126号、同2007/0160598号、同2007/0237764号、同2007/0292936号および同2009/0002360号が挙げられる。
【0103】
抗MUC16抗体剤は、ファージディスプレイを使用して、標的MUC16(例えば、nMUC16)に対して特異的な抗MUC16抗体部分についてライブラリーをスクリーニングして調製され得る。ライブラリーは、少なくとも1×109(例えば、少なくとも約1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、7.5×1010または1×1011のいずれか)の固有のヒト抗体断片の多様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、すべてのヒト重鎖および軽鎖サブファミリーを包含する、健常ドナーから得たヒトPMBCおよび脾臓から抽出されたDNAから構築されたナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、種々の疾患を有する患者、例えば、自己免疫疾患を有する患者、がん患者および感染性疾患を有する患者から単離されたPBMCから抽出されたDNAから構築されたナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、半合成ヒトライブラリーであり、重鎖CDR3は、完全にランダム化されており、すべてのアミノ酸(システインを除く)は、任意の所与の位置に等しく存在する可能性が高い(例えば、Hoet, R.M. et al., Nat. Biotechnol. 23(3):344-348, 2005を参照されたい)。一部の実施形態では、半合成ヒトライブラリーの重鎖CDR3は、約5~約24(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のいずれか)個のアミノ酸長を有する。一部の実施形態では、ライブラリーは、完全合成ファージディスプレイライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラリーである。
【0104】
標的MUC16(例えば、nMUC16)に高親和性で結合するファージクローンは、ファージの、固相支持体(例えば、溶液パニングのためのビーズまたは細胞パニングのための哺乳動物細胞など)結合した標的MUC16への反復性結合と、それに続く、結合していないファージの除去および特異的に結合したファージの溶出によって選択され得る。次いで、結合したファージクローンは溶出され、発現および精製のために適当な宿主細胞、例えば、大腸菌XL1-Blueに感染させるために使用される。細胞パニングの一例では、細胞表面でMUC16を過剰発現するHEK293細胞が、ファージライブラリーと混合され、その後、細胞が収集され、結合したクローンが溶出され、発現および精製のために適当な宿主細胞に感染させるために使用される(すべて実施例を参照されたい)。パニングは、標的MUC16に特異的に結合するファージクローンについて濃縮するために、溶液パニング、細胞パニングまたは両方の組合せを用いて複数(例えば、約2、3、4、5、6またはそれより多くのいずれか)ラウンドについて実施され得る。濃縮されたファージクローンは、例えば、ELISAおよびFACSを含む当技術分野で公知の任意の方法によって標的MUC16への特異的結合について試験され得る。
【0105】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されたものによって作製され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、シーケンシングされ得る。上記のようなハイブリドーマ細胞または本発明のMUC16特異的ファージクローンは、このようなDNAの供給源として働き得る。一度単離されると、DNAは、発現ベクター中に入れることができ、これは、次いで、そうでなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインおよび/もしくはフレームワーク領域のコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., 前掲)、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてもしくは一部を共有結合によって接合することによって修飾され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体剤の定常ドメインと置換され得る、または、本発明の抗体剤の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換されて、キメラ二価抗体剤を作出できる。
【0106】
抗体は、一価抗体であり得る。一価抗体を調製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および修飾された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を防ぐために一般にFc領域中の任意の点で末端切断される。あるいは、架橋を防ぐために、関連システイン残基が、別のアミノ酸残基と置換されるか、または欠失される。
in vitro法も一価抗体を調製するのに適している。その断片、特に、Fab断片を生成するための抗体の消化は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して達成され得る。
所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。一部の実施形態では、軽鎖結合にとって必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物のうち少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物を、および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、適した宿主生物中に同時トランスフェクされる。
【0107】
ヒトおよびヒト化抗体
抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、ヒト化抗体剤またはヒト抗体剤であり得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体部分のヒト化形態は、通常、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvまたは他の抗体の抗原結合性部分配列)である。ヒト化抗体部分は、レシピエントのCDRに由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラットまたはウサギのCDRに由来する残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(レシピエント抗体)を含む。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体部分はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである、少なくとも1つの、通常、2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み得る。
【0108】
一般に、ヒト化抗体剤は、非ヒトである供給源に由来する、それに導入された1個または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、通常、「移入」可変ドメインから取られる。一部の実施形態によれば、ヒト化は、げっ歯類CDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature、332: 323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988))に従って実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体部分は、実質的に無傷のヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている抗体部分である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体部分は、通常、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体部分である。
【0109】
ヒト化の代替法として、ヒト抗体部分が作製され得る。例えば、免疫処置の際に、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体の全レパートリーを産生可能であるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生成することが現在可能である。例えば、マウスにおけるキメラおよび生殖系列突然変異体中の抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体産生の完全阻害をもたらすということが記載されている。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖系列突然変異体マウスへの導入は、抗原曝露の際にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al., PNAS USA, 90:2551 (1993)、Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993)、Bruggemann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993)、米国特許第5,545,806号、同5,569,825号、同5,591,669号、同5,545,807号およびWO97/17852を参照されたい。あるいは、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス中に導入することによって作製され得る。曝露すると、遺伝子再構成、アセンブリーおよび抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトにおいて見られるものと密接に似ているヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同5,545,806号、同5,569,825号、同5,625,126号、同5,633,425号および同5,661,016号ならびにMarks et al., Bio/Technology, 10: 779-783 (1992)、Lonberg et al., Nature, 368: 856-859 (1994)、Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994)、Fishwild et al., Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996)、Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)に記載されている。
【0110】
ヒト抗体剤はまた、in vitro活性化されたB細胞によって(米国特許第5,567,610号および同5,229,275号を参照されたい)またはファージディスプレイライブラリーを含む当技術分野で公知の種々の技術を使用することによって生成され得る。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)、Marks et al.、J. Mol. Biol.、222:581 (1991)。Cole et al.およびBoerner et al.の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) and Boerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)。
【0111】
抗MUC16抗体剤バリアント
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)のアミノ酸配列バリアントまたはその抗原結合性断片が企図される。例えば、抗体剤の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することは望ましいものであり得る。抗体剤のアミノ酸配列バリアントは、抗体剤をコードするヌクレオチド配列中に適当な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。このような修飾は、例えば、抗体剤のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合性を有するという条件で、最終構築物に到達するために欠失、挿入および置換の任意の組合せを行うことができる。
【0112】
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗MUC16抗体剤バリアントが提供される。置換性突然変異誘発の目的の部位として、HVRおよびFRが挙げられる。アミノ酸置換は、目的の抗体剤中に導入され、生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/改善、免疫原性の低下またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【0113】
保存的置換は、以下の表4に示されている。
【0114】
【表3】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って異なるクラスにグループ化され得る:疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;酸性:Asp、Glu;塩基性:His、Lys、Arg;鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスと交換することを含む。
例示的置換性バリアントとして、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体剤がある。手短には、1個または複数のCDR残基が突然変異され、バリアント抗体部分が、ファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて変更(例えば、置換)が行われてもよい。このような変更は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの際に高頻度で突然変異を起こすコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照されたい)および/または特異性決定残基(SDR)において行われる場合があり、得られたバリアントVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築すること、およびそれから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al., in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001).)に記載されている。
【0115】
親和性成熟の一部の実施形態では、さまざまな方法のいずれか(例えば、エラー-プローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発)によって成熟について選択された可変遺伝子中に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作出される。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体剤バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指定アプローチを含む。抗原結合性に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して特異的に同定され得る。CDR-H3およびCDR-L3は、特に標的化されることが多い。
【0116】
一部の実施形態では、置換、挿入または欠失は、このような変更が、抗体剤の、抗原に結合する能力を実質的に低減しない限り、1つまたは複数のHVR内で生じてもよい。例えば、HVRにおいて結合親和性を実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書において提供されるような保存的置換)が行われてもよい。このような変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側である場合もある。上記で提供されるバリアントVHおよびVL配列の一部の実施形態では、各HVRは、変更されないか、または、1つ以下、2つ以下または3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
突然変異誘発のために標的化され得る抗体剤の残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085に記載されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、電荷を有する残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)が同定され、中性または負電荷を有するアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体剤の抗原との相互作用が影響を受けるか否かを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を実証するアミノ酸位置に、さらなる置換が導入される場合もある。あるいは、またはさらに、抗体剤と抗原の間の接触点を同定するために、抗原-抗体剤複合体の結晶構造が決定され得る。このような接触残基および隣接する残基は、置換の候補として標的化または排除され得る。バリアントは、スクリーニングされて、それらが所望の特性を含有するか否かが決定され得る。
【0117】
アミノ酸配列挿入は、1個の残基~100個またはそれより多い残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ-および/またはカルボキシル-末端融合物ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体剤が挙げられる。抗体剤分子の他の挿入性バリアントとして、酵素(例えば、ADEPTの)または抗体剤の血清半減期を増大するポリペプチドへの、抗体剤のN-またはC-末端への融合が挙げられる。
【0118】
Fc領域バリアント
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体または抗MUC16Fc融合タンパク質)のFc領域中に1つまたは複数のアミノ酸修飾が導入され、それによって、Fc領域バリアントが生成され得る。一部の実施形態では、Fc領域バリアントは、増強されたADCCエフェクター機能を有し、Fc受容体(FcR)への結合と関連することが多い。一部の実施形態では、Fc領域バリアントは、低下したADCCエフェクター機能を有する。エフェクター機能を変更し得るFc配列の変化または突然変異の多数の例がある。例えば、WO00/42072およびShields et al., J Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)には、FcRへの結合が改善または減少された抗体バリアントが記載されている。それら刊行物の開示内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0119】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)は、腫瘍細胞に対する治療抗体の作用機序である。ADCCは、免疫系のエフェクター細胞が、標的細胞(例えば、がん細胞)を活発に溶解し、その膜表面抗原が特異的抗体(例えば、抗MUC16抗体)によって結合している細胞媒介性免疫防御である。通常のADCCは、抗体によるNK細胞の活性化を含む。NK細胞は、Fc受容体であるCD16を発現する。この受容体は、標的細胞の表面に結合した抗体のFc部分を認識し、結合する。NK細胞の表面上の最も一般的なFc受容体は、CD16またはFcγRIIIと呼ばれる。抗体のFc領域へのFc受容体の結合は、NK細胞活性化、細胞溶解性顆粒の放出および結果として標的細胞アポトーシスをもたらす。腫瘍細胞死滅へのADCCの寄与は、高親和性FcRでトランスフェクトされているNK-92細胞を使用する特異的試験を用いて測定され得る。結果は、FcRを発現しない野生型NK-92細胞に対して比較される。
【0120】
一部の実施形態では、本発明は、一部であるが、すべてではないエフェクター機能を有するFc領域を含み、これによって、in vivoで抗MUC16抗体剤の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(例えば、CDCおよびADCC)は不要であるか、または有害である適用の望ましい候補になる抗MUC16抗体剤バリアント(例えば、全長抗MUC16抗体バリアント)を企図する。CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために、in vitroおよび/またはin vivo細胞傷害性アッセイが実施され得る。例えば、抗体剤がFcγR結合(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)を欠くが、FcRn結合能を保持することを確実にするために、Fc受容体(FcR)結合アッセイが実施され得る。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの限定されない例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照されたい)およびHellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射活性アッセイ法が使用され得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射活性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc. Mountain View、Calif.およびCytoTox 96(商標)非放射活性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、Wis.)を参照されたい。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)において開示されるものなどの動物モデルにおいて評価され得る。抗体剤がC1qに結合できず、したがって、CDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイもまた実施され得る。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合性ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイは、実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)、Cragg, M. S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003)およびCragg, M. S. and M. J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照されたい)。当技術分野で公知の方法を使用してFcRn結合性およびin vivoクリアランス/半減期決定も実施され得る(例えば、Petkova, S. B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照されたい)。
【0121】
エフェクター機能が低減された抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329のうち1個または複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc突然変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つまたはそれより多くに置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
FcRへの結合が改善または減少されたある特定の抗体剤バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい。)
【0122】
一部の実施形態では、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントが提供される。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、置換がバリアントFc領域の298、333、および/または334位においてである(残基のEU番号付け)、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントは、そのバリアントFc領域中に以下のアミノ酸置換:S298A、E333AおよびK334Aを含む。
【0123】
一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642およびIdusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されるように、変更された(すなわち、改善されたまたは減少されたのいずれか)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変更は、Fc領域において行われる。
一部の実施形態では、半減期を増大し、および/または新生児Fc受容体(FcRn)への結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントが提供される。半減期が増大され、FcRnへの結合が改善された抗体は、US2005/0014934(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する、1つまたは複数の置換を中に有するFc領域を含む。このようなFcバリアントには、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうち1つまたは複数での置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものが含まれる。
Fc領域バリアントの他の例に関するDuncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号およびWO94/29351も参照されたい。
本明細書において記載されたFcバリアントのいずれかまたはそれらの組合せを含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)が企図される。
【0124】
グリコシル化バリアント
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体剤がグリコシル化される程度を増大または減少するように変更される。抗MUC16抗体剤へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作出または除去されるように、抗MUC16抗体剤またはそのポリペプチド部分のアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成され得る。
抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片が、Fc領域を含む場合には、それに付着された炭水化物も変更され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、通常、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって一般に付着される分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照されたい。オリゴ糖には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに付着されたフコースが含まれ得る。一部の実施形態では、ある特定の改善された特性を有する抗MUC16抗体剤バリアントを作出するために、本発明の抗MUC16抗体剤におけるオリゴ糖の修飾が行われる場合がある。
【0125】
FcのCH2ドメインに付着されたN-グリカンは、不均一である。CHO細胞において生成された抗体またはFc融合タンパク質は、フコシルトランスフェラーゼ活性によってフコシル化される。Shoji-Hosaka et al., J. Biochem. 140:777- 83 (2006)を参照されたい。普通、ヒト血清において少ないパーセンテージの天然に存在する無フコシル化(afucosylated)IgGが検出され得る。FcのN-グリコシル化は、FcγRへの結合にとって重要であり、N-グリカンの無フコシル化は、FcγRIIIaへのFcの結合能を増大する。増大されたFcγRIIIa結合は、ADCCを増強でき、これは、細胞傷害性が望ましいある特定の抗体剤治療適用において有利であり得る。
【0126】
一部の実施形態では、増強されたエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性が望ましくない場合有害であり得る。一部の実施形態では、Fc断片またはCH2ドメインは、グリコシル化されない。一部の実施形態では、CH2ドメイン中のN-グリコシル化部位は、グリコシル化から防ぐために突然変異される。
一部の実施形態では、Fc領域に付着している炭水化物構造が、低減されたフコースを有するか、またはフコースを欠き、それがADCC機能を改善し得るFc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントが提供される。具体的には、野生型CHO細胞において産生された同一抗MUC16抗体剤上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗MUC16抗体剤が本明細書において企図される。すなわち、それらは、そうでなければ、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞)によって産生される場合に有するであろうものよりも低量のフコースを有することを特徴とする。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、その上のN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%または5%未満がフコースを含むものである。例えば、このような抗MUC16抗体剤中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤は、その上のN結合型グリカンのうちフコースを含むものがない、すなわち、抗MUC16抗体剤が完全にフコースを伴わない、またはフコースを有さない、または無フコシル化されているものである。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるようなMALDI-TOF質量分析によって測定されるような、Asn297に付着しているすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297とは、Fc領域中の約297位に位置する(Fc領域残基のEU番号付け)アスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における微量な配列変動のために、297位の上流または下流の約±3アミノ酸に、すなわち、294から300位の間に位置する場合もある。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開番号US2003/0157108(Presta,L.)、US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.、Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体剤バリアントに関連する刊行物の例として、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004)、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生可能な細胞系の例として、タンパク質フコシル化を欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986)、米国特許出願番号US2003/0157108、Presta, LおよびWO2004/056312、Adams et al.,特に実施例11で)およびノックアウト細胞系、例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)、Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)およびWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0127】
抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントには、二分されたオリゴ糖がさらに提供され、例えば、抗MUC16抗体剤のFc領域に付着している二分岐オリゴ糖は、GlcNAcによって二分される。このような抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体剤バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、US2005/0123546(Umana et al.)およびFerrara et al., Biotechnology and Bioengineering, 93(5): 851-861 (2006)に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖中に少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントも提供される。このような抗MUC16抗体剤バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体剤バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju、S.)およびWO1999/22764(Raju、S.)に記載されている。
一部の実施形態では、Fc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントは、FcγRIIIに結合可能である。一部の実施形態では、Fc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)バリアントは、ヒトエフェクター細胞(例えば、T細胞)の存在下で、ADCC活性を有するか、またはその他の点では同一の、ヒト野生型IgG1Fc領域を含む抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で増大されたADCC活性を有する。
【0128】
システイン操作されたバリアント
一部の実施形態では、1個または複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片を作出することが望ましいものであり得る。一部の実施形態では、置換される残基は、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の到達可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基がそれによって抗MUC16抗体剤の到達可能な部位に配置され、抗MUC16抗体剤を、他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートして、本明細書においてさらに記載されるような抗MUC16免疫複合体を作出するために使用され得る。システイン操作された抗MUC16抗体剤(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0129】
誘導体
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、当技術分野で公知の、容易に利用可能であるさらなる非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗MUC16抗体剤の誘導体化に適した部分として、それだけには限らないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの限定されない例として、それだけには限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、また、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗MUC16抗体剤に付着しているポリマーの数は、変わる場合があり、2つ以上のポリマーが付着している場合には、それらは、同一分子である場合も異なる分子である場合もある。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、それだけには限らないが、改善されるべき抗MUC16抗体剤の特定の特性または機能を含む考慮に基づいて決定することができ、抗MUC16抗体剤誘導体は、定義された条件下などで療法において使用される。
【0130】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片と、放射線に対する曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一部の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は、任意の波長のものであってよく、それだけには限らないが、普通の細胞を害さないが、非タンパク質性部分を、抗MUC16抗体剤-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度に加熱する波長を含む。
【0131】
抗体コンジュゲート
ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、1種または複数の薬剤、例えば、イメージング剤または細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。また、二重特異性抗体コンジュゲートが本明細書において提供され、前記二重特異性抗体は、1種または複数の薬剤、例えば、イメージング剤または細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。また、抗体重鎖コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗体重鎖は、1種または複数の薬剤、例えば、イメージング剤または細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。また、抗体軽鎖コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗体軽鎖は、1種または複数の薬剤、例えば、イメージング剤または細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。また、融合タンパク質コンジュゲートが本明細書において提供され、前記融合タンパク質は、薬剤、例えば、イメージング剤または細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、薬剤は、共有結合によって、または非共有結合によってコンジュゲートされる。
【0132】
ある特定の実施形態では、イメージング剤は、検出可能な標識、例えば、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤または他の標識である。
適した発色性標識の限定されない例として、ジアミノベンジジンおよび4-ヒドロキシアゾ-ベンゼン-2-カルボン酸が挙げられる。
適した酵素標識の限定されない例として、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母-アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0133】
適した放射性同位体は、当業者には周知であり、ベータ-エミッター、ガンマ-エミッター、ポジトロン-エミッターおよびX線エミッターが挙げられる。適した放射性同位体性標識の限定されない例として、3H、18F、111In、125I、131I、32P、33P、35S、11C、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、223Ra、223Ra、89Zr、177Luおよび109Pdが挙げられる。ある特定の実施形態では、111Inは、肝臓における125Iまたは131I標識抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の脱ハロゲン化の問題を避けるのでin vivoイメージングのための好ましい同位体である。さらに、111Inは、イメージングのためのより都合のよいガンマ放出エネルギーを有する(Perkins et al, Eur. J. Nucl. Med. 70:296-301 (1985)、Carasquillo et ah, J. Nucl. Med. 25:281-287 (1987))。例えば、1-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTAを用いてモノクローナル抗体につなげられた111Inは、非腫瘍性組織、特に、肝臓では、取り込みをほとんど示さず、したがって、腫瘍局在性の特異性を増強する(Esteban et al., J. Nucl. Med. 28:861-870 (1987))。
【0134】
適した非放射性同位体標識の限定されない例として、157Gd、55Mn、162Dy、52Trおよび56Feが挙げられる。
適した蛍光標識の限定されない例として、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o-フタルデヒド標識およびフルオレサミン標識が挙げられる。
化学発光性標識の限定されない例として、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、オキサレートエステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識およびエクオリン標識が挙げられる。
【0135】
核磁気共鳴造影剤の限定されない例として、重金属核、例えば、Gd、Mnおよび鉄が挙げられる。
上記の標識を、前記抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖および融合タンパク質にコンジュゲートするための当業者に公知の技術は、例えば、Kennedy et at., Clin. CMm. Acta 70: 1-31 (1976)およびSchurs et al, Clin. CMm. Acta 81 : 1-40 (1977)に記載されている。後に記載されるカップリング技術として、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル法があり、それらの方法のすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
細胞傷害性薬剤の限定されない例として、細胞分裂停止または細胞破壊剤、放射性金属イオン、例えば、アルファ-エミッターおよび毒素、例えば、シュードモナス外毒素、アブリン、コレラ毒素、リシンAおよびジフテリア毒素が挙げられる。
【0136】
ある特定の実施形態では、薬剤は、診断剤である。診断剤は、抗原を含有する細胞を位置付けることによって疾患を診断または検出することにおいて有用な薬剤である。有用な診断剤として、それだけには限らないが、放射性同位体、色素(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いる)、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。米国特許第6,331,175号には、MRI技術およびMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製が記載されており、参照によりその全文が組み込まれる。好ましくは、診断剤は、放射性同位体、磁気共鳴イメージングにおいて使用するための増強剤および蛍光化合物からなる群から選択される。抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片に、放射性金属または常磁性イオンを負荷するために、それを、イオンを結合するための多様なキレート化基が付着している長いテールを有する試薬と反応させることが必要であり得る。このようなテールは、ポリリシン、多糖などのポリマー、または例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的のために有用であると公知の同様の基などのキレート化基が結合し得るペンダント基を有する他の誘導体化もしくは誘導可能な鎖であり得る。キレートは、標準化学を使用して抗体につなげられる。キレートは、普通、免疫反応性の最小の喪失および最小の凝集しか伴わずに、分子への結合の形成を可能にする基によって抗体に連結され、および/またはキレートを抗体にコンジュゲートするための内部架橋する他のより普通ではない方法および試薬は、1989年4月25日に出願された「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示されており、その開示内容は、参照によりその全文で本明細書に組み込まれる。特に有用な金属-キレート組合せは、2-ベンジル-DTPAおよびそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含み、ラジオイメージングのために診断用同位体とともに使用される。同一キレートは、非放射性金属、例えば、マンガン、鉄およびガドリニウムと複合体形成されると、本明細書において提供される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片とともに使用される場合に、MRIにとって有用である。
【0137】
大環状キレート、例えば、NOTA、DOTAおよびTETAは、さまざまな金属および放射性金属と、最も特には、それぞれ、ガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種と併用すると有益である。このような金属-キレート複合体は、環の大きさを目的の金属に合わせて調整することによって極めて安定にすることができる。RAITのための核種、例えば、223Raを安定に結合するための他の環状キレート、例えば、目的の大環状ポリエーテルが本明細書に包含される。
【0138】
医薬組成物
また、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片、抗体剤をコードする核酸、抗体剤をコードする核酸を含むベクターまたは核酸もしくはベクターを含む宿主細胞を含む組成物(例えば、医薬組成物、本明細書において製剤とも呼ばれる)が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤および任意で、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0139】
抗MUC16抗体剤(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の適した製剤は、所望の程度の純度を有する抗MUC16抗体剤を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することによって凍結乾燥製剤または水溶液の形態で得られる(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、バッファー、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質、保存料(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ヘキサメトニウムクロリド、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、オリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン、単糖、二糖およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物、キレート化剤、例えば、EDTA、糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール、塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。例示的製剤は、参照により本明細書に明確に組み込まれるWO98/56418に記載されている。皮下投与に適応している凍結乾燥製剤は、WO97/04801に記載されている。このような凍結乾燥製剤は、適した希釈剤で高タンパク質濃度に再構成することができ、再構成された製剤を本明細書において処置されるべき個体に皮下に投与できる。リポフェクチンまたはリポソームを使用して、本発明の抗MUC16抗体剤を細胞中に送達できる。
【0140】
本明細書における製剤はまた、処置されている特定の適応症のために必要に応じて、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片に加えて1種または複数の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的活性を有するものを含有し得る。例えば、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片に加えて、抗新生物剤、成長阻害剤、細胞傷害性薬剤または化学療法剤をさらに提供することが望ましい場合がある。このような分子は、意図される目的のために有効である量で組合せ中に適宜存在する。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗MUC16抗体剤の量、疾患または障害または処置の種類および上記で論じられた他の因子に応じて変わる。これらは、一般に、本明細書において記載されるものと同一の投与量で、および投与経路を用いて、または従来使用された投与量の約1~99%で使用される。
抗MUC16抗体剤(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片はまた、それぞれ、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に捕捉され得る。
【0141】
抗MUC16抗体剤(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の徐放性調製物を調製できる。徐放性調製物の適した例として、抗体剤(またはその断片)を含有する固体疎水性ポリマーの半透明マトリックスがあり、マトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射用ミクロスフェア)およびポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー、例えば、エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸は、100日にわたる分子の放出を可能にするが、ある特定のヒドロゲルは、タンパク質をより短い期間の間放出する。被包された抗体剤が長期間身体中にとどまる場合、37℃で水分に対する曝露の結果として、それらは変性または凝集する場合があり、結果として、生物活性が喪失し、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機序に応じて抗MUC16抗体剤の安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機序が、チオ-ジスルフィド相互交換による分子間S-S結合形成であると発見される場合には、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含量を制御すること、適当な添加物を使用すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0142】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、クエン酸、NaCl、酢酸、コハク酸、グリシン、ポリソルベート80(Tween 80)または前記のものの任意の組合せを含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約100mM~約150mMグリシンを含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約50mM~約100mM NaClを含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約10mM~約50mM酢酸を含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約10mM~約50mMコハク酸を含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約0.005%~約0.02%ポリソルベート80を含むバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、約5.1~5.6の間のpHを有するバッファー中で製剤化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、10mMクエン酸、100mM NaCl、100mMグリシンおよび0.01%ポリソルベート80を含むバッファー中で製剤化され、製剤は、pH5.5である。
in vivo投与のために使用されるべき製剤は、無菌でなくてはならない。これは、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0143】
抗MUC16抗体剤を使用して処置する方法
ある特定の実施形態では、対象においてがんを、特に、対象においてMUC16陽性がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与することを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、治療有効用量、例えば、本明細書において記載される用量で投与される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、本明細書において記載されるような方法に従って投与される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、1種または複数のさらなる薬学的に活性な薬剤と組み合わせて投与される。
特定の種の対象における抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の使用のために、その特定の種のMUC16に結合する抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片が使用される。例えば、ヒトを処置するために、ヒトMUC16に結合する抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片が使用される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリンである。
【0144】
さらに、特定の種の対象における抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片の使用のために、抗MUC16抗体剤、好ましくは、抗MUC16抗体剤の定常領域またはその抗原結合性断片は、その特定の種に由来する。例えば、ヒトを処置するために、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリンである抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片を含むことができ、免疫グロブリンは、ヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、対象はヒトである。
一部の実施形態では、MUC16陽性がんは、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、一次腹膜がんまたはMUC16受容体を発現する任意の他の組織のがんである。
【0145】
一部の実施形態では、処置は、それだけには限らないが、検出可能または検出不能に関わらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の状態を安定化すること(すなわち、悪化させないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和および緩解(部分または完全に関わらず)を含む有益な、または所望の臨床結果を達成することであり得る。特定の実施形態では、「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して、生存を延長することであり得る。一部の実施形態では、がん(例えば、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんまたは一次腹膜がんまたはMUC16受容体を発現する任意の他の組織のがん)を有する対象への、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤もしくはその抗原結合性断片または本明細書において記載される医薬組成物の投与は、以下の効果のうち少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くを達成する:(i)がんの1つまたは複数の症状の重症度の低減または寛解、(ii)がんと関連する1つまたは複数の症状の期間の低減、(iii)がんと関連する症状の再発の防止、(iv)対象の入院の低減、(v)入院の長さの低減、(vi)対象の生存の増大、(vii)別の療法の治療効果の増強または改善、(viii)がんと関連する1つまたは複数の症状の発生または発症の阻害、(ix)がんと関連する症状の数の低減、(x)当技術分野で周知の方法によって評価されるような生活の質の改善、(x)腫瘍の再発の阻害、(xi)腫瘍および/またはそれと関連する1つもしくは複数の症状の退縮、(xii)腫瘍および/またはそれと関連する1つもしくは複数の症状の進行の阻害、(xiii)腫瘍の成長の低減、(xiv)腫瘍の大きさ(例えば、体積または直径)の減少、(xv)新規に形成される腫瘍の形成の低減、(xvi)原発性、局所性および/または転移性腫瘍の予防、根絶、除去または管理、(xvii)転移の数または大きさの減少、(xviii)死亡率の低減、(xix)無再発生存期間の増大、(xx)腫瘍の大きさが維持され、増大しないか、または当業者にとって利用可能な従来法、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)、ダイナミックコントラスト強調MRI(DCE-MRI)、X線およびコンピューター断層撮影(CT)スキャンまたは陽電子放射型断層撮影(PET)スキャンによって測定されるような標準療法の投与後の腫瘍の増大よりも少なく増大する、および/または(xxi)患者における緩解の長さの増大。処置は、前記のうち1つまたは複数を達成することであり得る。
【0146】
診断的使用
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、本明細書において記載される状態(例えば、MUC16陽性がん細胞が関与する状態)を検出、診断またはモニタリングする診断目的で使用され得る。ある特定の実施形態では、診断目的で使用するための抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、標識される。
【0147】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される状態を検出する方法であって、(a)本明細書において記載される1種または複数の抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片を使用して対象の細胞または組織試料においてMUC16またはその断片の発現をアッセイすること、および(b)MUC16またはその断片の発現のレベルを、対照レベル、例えば、正常組織試料(例えば、本明細書において記載される状態を有さない対象から得た、または状態の発症の前の同一患者から得た)におけるレベルと比較し、それによって、MUC16またはその断片の発現の対照レベルと比較された、MUC16またはその断片の発現のアッセイされたレベルの増大または減少が、本明細書において記載される状態を示すことを含む方法が、本明細書において提供される。
【0148】
本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるような、または当業者に公知のような(例えば、Jalkanen et al., J. Cell. Biol. 101 :976-985 (1985)およびJalkanen et al., J. Cell . Biol. 105:3087-3096 (1987)を参照されたい)古典的免疫組織学的方法を使用して生体試料においてMUC16またはその断片のレベルをアッセイするために使用され得る。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体ベース法として、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。適した抗体アッセイ標識は、当技術分野で公知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ、放射性同位体、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)およびテクネチウム(99Tc)、発光標識、例えば、ルミノールおよび蛍光標識、例えば、フルオレセインおよびローダミンならびにビオチンを含む。一部の実施形態では、アッセイ標識は、直接検出のために本明細書において提供される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アッセイ標識は、本明細書において提供される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片に結合する二次抗体にコンジュゲートされる。二次抗体の種類は、一次抗体(例えば、IgGまたはIgM)のクラス、供給源宿主および好ましい標識の種類に従って選択される。一部の実施形態では、二次抗体は、クラスまたはアイソタイプ特異的抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgEまたはIgG)である。一部の実施形態では、二次抗体は、サブクラス特異的抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG2、IgG4、IgA1またはIgA2)である。一部の実施形態では、二次抗体は、抗体の1つまたは複数のクラスまたはサブクラスに結合する。一部の実施形態では、二次抗体は、一次抗体の重鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は、一次抗体の軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は、一次抗体のカッパ軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は、一次抗体のラムダ軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は、抗Fcまたは抗F(ab)または抗(Fab’)2断片抗体である。一部の実施形態では、二次抗体は、ウサギ、マウス、ヤギ、ロバまたはニワトリ抗体である。
【0149】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される状態(例えば、MUC16陽性がん)のモニタリングは、最初の診断後一定期間、診断法を反復することによって実施される。
標識された分子の存在は、in vivoスキャニングのための当技術分野で公知の方法を使用して対象において(すなわち、in vivoで)検出され得る。当業者ならば、特定の標識を検出するのに適当な方法を決定できるであろう。本発明の診断方法において使用され得る方法およびデバイスとして、それだけには限らないが、コンピューター断層撮影法(CT)、全身スキャン、例えば、ポジトロン断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)および超音波検査が挙げられる。
本明細書において記載されるような抗MUC16抗体剤もしくはその抗原結合性断片または本明細書において記載される抗体もしくはその抗原結合性断片を含有する組成物またはそれを発現する細胞は、さまざまな経路によって対象に送達され得る。これらとして、それだけには限らないが、非経口、鼻腔内、気管内、経口、皮内、局所、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、腫瘍内、結膜および皮下経路が挙げられる。例えば、吸入器または噴霧器およびスプレーとして使用するためのエアロゾル化剤を有する製剤の使用によって、肺投与も使用され得る。一実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片または組成物は、対象に非経口的に投与される。一部の実施形態では、前記非経口投与は、静脈内、筋肉内または皮下である。
【0150】
状態の処置および/または予防において有効であるであろう、抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片または組成物の量は、疾患の性質に応じて変わり、標準臨床技術によって決定され得る。
組成物中に使用されるべき正確な用量はまた、投与経路およびがんの種類に応じて変わり、医師の判断および各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量はまた、投与の手段、標的部位、患者がヒトであるか、もしくは動物であるかに関わらず、患者の生理学的状態(年齢、体重および健康状態を含む)、処置が予防的であるか、もしくは治療的であるかに関わらず、投与される他の薬物適用に応じて変わり得る。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するように最適に用量設定される。
【0151】
ある特定の実施形態では、最適投与量範囲を同定するのに役立つようにin vitroアッセイが使用される。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量応答曲線から推定され得る。
抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片について、投与量は、約0.0001~100mg/患者の体重1kg、より普通は、0.01~15mg/患者の体重1kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/体重1kg、10mg/体重1kgまたは1~10mg/kgの範囲内、または言い換えれば、70kgの患者に対して、それぞれ、70mgまたは700mgまたは70~700mgの範囲内であり得る。一般に、ヒト抗体は、ヒト身体内で、外来ポリペプチドに対する免疫応答のために他の種に由来する抗体よりも長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体のより少ない投与量およびより少ない頻度の投与が可能であることが多い。
【0152】
ある特定の実施形態では、例えば、抗体またはその抗原結合性断片またはCARを発現する操作された細胞の投与では、対象は、約100万個~約1000億個の細胞、例えば、100万個~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞または前記の値のうち任意の2つによって定義される範囲)など、約1000万個~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞または前記の値のうち任意の2つによって定義される範囲)など、一部の場合には、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲で対象に投与される。一部の実施形態では、総細胞の用量および/または個々の小集団の細胞の用量は、104または約104~109または約109個細胞/1キログラム(kg)体重の間、例えば、105~106個細胞/体重1kgの間の範囲内、例えば、1×105または約1×105個細胞/kg、1.5×105個細胞/kg、2×105個細胞/kgまたは1×106個細胞/kg、2×106個細胞/kg、5×106個細胞/kgまたは10×106個細胞/体重1kgである。例えば、一部の実施形態では、細胞は、104または約104~109または約109個のT細胞/体重1キログラム(kg)の間、例えば、105~107個のT細胞/体重1kgの間で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。
抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、複数の機会で投与され得る。単一投与量の間の間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年または2年であり得る。
【0153】
併用療法
一部の実施形態では、対象においてがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんまたは一次腹膜がん)を処置するための本明細書において提供される方法であって、それを必要とする対象に、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与することを含む方法は、対象に1種または複数のさらなる治療剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、さらなる治療剤は、対象においてがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんおよび一次腹膜がん)を処置するためのものである。一部の実施形態では、さらなる治療剤は、処置の任意の副作用を本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片を用いて処置するためのものである。
【0154】
一部の実施形態では、さらなる薬剤は、卵巣がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、膵臓がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、肺がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、乳がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、卵管がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、子宮(例えば、子宮内膜)がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、一次腹膜がんを処置するために使用される薬剤である。
【0155】
本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片は、さらなる治療剤とともに同時に、または逐次投与され得る(前および/または後)。抗体またはその抗原結合性断片およびさらなる治療剤は、同一または異なる組成物中で、同一または異なる投与経路によって投与され得る。第1の療法(本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片、またはさらなる治療剤である)は、第2の療法(本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片またはさらなる治療剤)の、がん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんおよび一次腹膜がん)を有する対象への投与の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間前)、それと同時に、またはその後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間後)投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片と組み合わせて対象に投与されるさらなる治療剤は、同一組成物(医薬組成物)中で投与される。他の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与されるさらなる治療剤は、対象に、本明細書において記載される抗MUC16抗体剤またはその抗原結合性断片とは異なる組成物中で投与される(例えば、2種またはそれより多い医薬組成物が使用される)。
【0156】
例示的患者集団
本明細書において提供される方法に従って処置される対象は、任意の哺乳動物、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、霊長類またはヒトなどであり得る。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象はイヌである。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、同義的に使用される。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法に従って処置される対象は、それだけには限らないが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または一次腹膜がんまたはMUC16を発現する任意の他の組織のがんを含むMUC16陽性がんを有すると診断されている。
【0157】
製造品およびキット
本発明の一部の実施形態では、高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置にとって、または抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)を、MUC16をその表面に発現する細胞に送達するのに有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器および容器上のもしくは容器に付随するラベルまたは添付文書を含み得る。適した容器として、例えば、ビン、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、さまざまな材料、例えば、ガラスまたはプラスチックから形成され得る。一般に、容器は、本明細書において記載される疾患または障害を処置するために有効である組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本発明の抗MUC16抗体剤である。ラベルまたは添付文書は、組成物が特定の状態を処置するために使用されることを示す。ラベルまたは添付文書は、抗MUC16抗体剤組成物を患者に投与するための使用説明書をさらに含む。本明細書において記載されるコンビナトリアル療法を含む製造品およびキットも企図される。
【0158】
添付文書とは、このような治療製品の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌症および/または警告についての情報を含有する治療製品の市販のパッケージ中に習慣的に含まれる使用説明書を指す。一部の実施形態では、添付文書は、組成物が、がん(例えば、HCC、黒色腫、肺扁平上皮癌、卵巣癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、神経芽細胞腫、胆芽腫、ウィルムス腫瘍、精巣非セミノーマ生殖細胞腫瘍、胃癌または脂肪肉腫)を処置するために使用されることを示す。
さらに、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば、静菌性注射水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含み得る。他のバッファー、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む、商業的およびユーザー観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0159】
種々の目的のために、例えば、高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、または抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)を、任意に製造品と組み合わせて、MUC16をその表面上に発現する細胞に送達するために有用であるキットもまた提供される。本発明のキットは、抗MUC16抗体剤組成物(または単位投与形および/または製造品)を含む1つまたは複数の容器を含み、一部の実施形態では、別の薬剤(例えば、本明細書において記載される薬剤)および/または本明細書において記載される方法のいずれかに従って使用するための使用説明書をさらに含む。キットは、処置に適した個体の選択の説明をさらに含み得る。本発明のキット中に供給される使用説明書は、通常、ラベルまたは添付文書上の書面の使用説明書(例えば、キット中に含まれる紙のシート)であるが、機械によって読み取り可能な使用説明書(例えば、磁気または光学保存ディスク上に保持される使用説明書)も許容される。
【0160】
例えば、一部の実施形態では、キットは、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)を含む組成物を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤を含む組成物およびb)有効量の少なくとも1種の他の薬剤であって、抗MUC16抗体剤の効果(例えば、処置効果、検出効果)を増強する他の薬剤を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤を含む組成物ならびにb)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体剤組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤を含む組成物、b)有効量の少なくとも1種の他の薬剤であって、抗MUC16抗体剤の効果(例えば、処置効果、検出効果)を増強する他の薬剤およびc)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体剤組成物および他の薬剤を個体に投与するための使用説明書を含む。抗MUC16抗体剤および他の薬剤は、別々の容器中に存在する場合も、単一容器中に存在する場合もある。例えば、キットは、1種の別個の組成物を含む場合もあり、1種の組成物が、抗MUC16抗体剤を含み、別の組成物が、別の薬剤を含む2種またはそれより多い組成物を含む場合もある。
【0161】
一部の実施形態では、キットは、抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤をコードする核酸(または核酸のセット)およびb)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤をコードする核酸(または核酸のセット)およびb)i)宿主細胞において抗MUC16抗体剤を発現させる、ii)抗MUC16抗体剤を含む組成物を調製する、およびiii)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体剤を含む組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体剤をコードする核酸(または核酸のセット)、b)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞およびc)i)宿主細胞において抗MUC16抗体剤を発現させる、ii)抗MUC16抗体剤を含む組成物を調製する、およびiii)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体剤を含む組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。
【0162】
本発明のキットは、適したパッケージング中にある。適したパッケージングとして、それだけには限らないが、バイアル、ビン、ジャー、柔軟なパッケージング(例えば、密閉されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは、さらなる構成成分、例えば、バッファーおよび解釈情報を提供してもよい。本出願はまた、したがって、製造品を提供し、これとして、バイアル(例えば、密閉バイアル)、ビン、ジャー、柔軟なパッケージングなどが挙げられる。
【0163】
抗MUC16抗体剤組成物の使用に関する使用説明書は、一般に、意図される処置のための投与量、投薬スケジュールおよび投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)または部分単位用量であり得る。例えば、個体の有効処置を長期間、例えば、1週間、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3カ月、4カ月、5カ月、7カ月、8カ月、9カ月またはそれより長くのうちいずれかの間、提供するために、本明細書において開示されるような抗MUC16抗体剤(例えば、全長抗MUC16抗体)の十分な投与量を含有するキットが提供され得る。キットはまた、抗MUC16抗体剤および医薬組成物の複数回単位用量ならびに使用のための使用説明書ならびに薬局、例えば、病院薬局および調剤薬局において保管および使用するのに十分な量にパッケージングされたものを含み得る。
当業者ならば、本発明の範囲および趣旨内でいくつかの実施形態があり得るということは認識するであろう。本発明を、ここで、以下の限定されない例を参照することによってより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、もちろん、決して、その範囲を制限すると解釈されてはならない。
【実施例
【0164】
本技術を以下の実施例によってさらに例示するが、これは、決して制限すると解釈されてはならない。以下の実施例は、本技術の例示的抗MUC16抗体の調製、特性決定および使用を実証する。以下の実施例は、本技術のヒトおよび二重特異性抗体の生成ならびにそれらの結合特異性およびin vivo生物活性の特性決定を実証する。
【0165】
(実施例1)
ヒトMUC16に特異的なscFvの選択および特性決定
この実施例は、ヒトscFv抗体ファージディスプレイライブラリーの収集物からのヒトMUC16(hMUC16)に特異的なヒトscFvの選択および特性決定を実証する。特に、この実施例は、その天然形態のhMUC16(MUC16-C114)のエクトドメイン(すなわち、細胞表面に結合したMUC16)に特異的に結合するヒトscFvの選択を実証する。この実施例はまた、転移および浸潤に対するMUC16のグリコシル化依存性効果を阻害するために、MUC16エクトドメイン上の重大なN-グリコシル化部位(c114中のN30または全長成熟MUC16タンパク質中のN1806)を標的とするヒトscFvのさらなる選択を実証する。天然MUC16および切断型MUC16-C114の構造表現およびそのアミノ酸配列が、図1に示されている。scFvを、細胞表面に結合したMUC16-C114に対するパニングによってヒトMUC16に対する高選択性に基づいて選択した。これらのヒト抗MUC16 scFvは、種々の形態の抗MUC16抗体剤、例えば、全長IgG、二重特異性抗MUC16抗体、多特異性抗MUC16抗体などの構築のための抗体構成成分の価値ある供給源を提供する。
【0166】
MUC16エクトドメイン上のN30 N-グリコシル化を特異的に標的とするscFvの選択および特性決定において使用するためのMUC16の膜結合型発現のために、MUC16タンパク質を発現する2つのHEK293安定細胞系を生成した。野生型MUC16-C114-GFP融合タンパク質(HEK293-MUC16WT)を発現する1つの細胞系を生成し、N30突然変異体MUC16-C114-GFP融合タンパク質(HEK293-MUC16mut)を発現する1つの細胞系を生成した。野生型MUC16-C114とN30突然変異体MUC16-C114エクトドメイン間のアラインメントは、図2に示されている。図2に示されるように、N30突然変異体MUC16-C114は、N30A置換を有する。蛍光活性化セルソーター(FACS)によってGFP発現を測定することによって、HEK293-MUC16WTおよびHEK293-MUC16mut細胞のMUC16発現が確認された。親のHEK293細胞系は、GFPシグナルを示さなかった。それに対して、HEK293-MUC16WTおよびHEK293-MUC16mut細胞系は、GFP発現を示したが、HEK293-MUC16WTはHEK293-MUC16mut細胞系よりも強力なGFPシグナルを有していた(図3)。HEK293-MUC16WT細胞は、170×の平均蛍光強度(MFI)の増大のGFPシグナルを示し、一方、MUC16mut細胞は、26×のMFI増大を示した。
【0167】
hMUC16に特異的なヒトscFvの選択のために、Eureka Therapeutics(E-ALPHA(登録商標)ファージライブラリーとして商標登録された)によって構築されたヒトscFv抗体ファージディスプレイライブラリーの収集物(10×1010を上回る多様性)を使用した。
陰性対照親HEK293細胞およびMUC16-C114-GFP融合タンパク質発現性HEK293細胞(HEK293-MUC16WT)との同時インキュベーションによって、E-ALPHA(登録商標)scFvファージライブラリーをhMUC16に対してスクリーニング(パニング)した。PBSで長時間洗浄した後、scFv抗体ファージが結合しているHEK293-MUC16WT細胞を遠心沈殿させた。次いで、結合したクローンを溶出し、2~3回のさらなるラウンドのパニングのために使用して、MUC16に特異的に結合したscFvファージクローンについて濃縮した。次いで、結合したクローンを溶出し、大腸菌XL1-Blue細胞に感染させた。次いで、細菌において発現されたファージクローンを精製した。
【0168】
次いで、細胞パニングから同定された540のファージクローンをFACS分析によってHEK293-MUC16WT細胞への結合について試験した。手短には、20万個の細胞(PBS+5% FBS+0.05% NaN3中)を、PBS中、約1.0×1011pfu/mLのファージ(page)50μlとともに4℃で2時間インキュベートした。一次抗体マウス抗M13mAb(Thermo番号MA1-12900)および二次抗体PE抗マウスIgG(Vector Lab番号EI-2007)を使用してFACSを実施した。53のユニーククローンが同定され、40クローンが、HEK293-MUC16 WT細胞に対して特異的結合を実証した。
【0169】
40のMUC16特異的クローンを、HEK293-MUC16WT、HEK293-MUC16mutおよび親のHEK293細胞へのその結合について試験した。図4は、3種の細胞系すべてについて陰性ファージ対照を用いる、ファージ対照を用いないFACS分析の結果を示す。40のクローン各々を用いるFACS分析は、40のクローンすべてがHEK293-MUC16WTに対する結合を示し、一方でHEK293-MUC16mutに対しては40のクローンのうち16のクローンが最小の結合を示すことを示した。したがって、これらのクローンは、N-グリコシル化部位(N30)に対して特異的であった。図5は、2つの例示的クローン、クローン8およびクローン12の結果を示す。
次いで、16の中で上位9クローンを、MUC16+がん細胞系OVCAR3、SKOV8およびOVCA432への結合について試験した。抗MUC16クローン8および12は、MUC16+がん細胞系に最も特異的に結合したが、MUC16-がん細胞系SKOV3には結合しなかった(図8)。いくつかの他のクローンが、MUC16+がん細胞系に同様に、より低い特異性であるが特異的に結合した(図7)。
【0170】
(実施例2)
抗MUC16二重特異性抗体の生成
この実施例は、実施例1において同定された抗MUC16scFvからの抗MUC16二重特異性抗体(BsAb)の生成を記載する。この実施例では、N末端に抗MUC16scFvを、C末端にマウスモノクローナル抗体の抗ヒトCD3ε scFvを含む単鎖BsAbを生成した。抗MUC16クローン8 BsAbおよび抗MUC16クローン12 BsAbは、親クローンL2Kに由来する抗MUC16 scFvおよび抗ヒトCD3ε scFv抗体をコードするDNA断片を、標準DNA技術を使用して発現ベクター中にクローニングすることによって生成した。抗体精製および検出のために、ヘキサヒスチジン(His)タグ(配列番号33)をC末端に抗MUC16 BsAbの下流に挿入した。
【0171】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、抗MUC16 BsAb発現ベクターでトランスフェクトし、メチオニンスルホキシイミン(MSX)、グルタミンシンセターゼ(GS)ベース法を用いる標準薬物選択によって安定な発現を達成した(Fan, et al., Biotechnology Bioengineering. 109 (4), 1007-1005 (2012))。分泌された抗MUC16BsAb分子を含有するCHO細胞上清を収集した。抗MUC16 BsAbを、FPLC AKTA系によってHisTrap HPカラム(GE healthcare)を使用して精製した。手短には、CHO細胞培養物を清澄化し、低イミダゾール濃度(20mM)を用いてカラムにロードし、次いで、イソクラティック高イミダゾール濃度溶出バッファー(500mM)を使用して、結合した抗MUC16二重特異性抗体タンパク質を溶出した。SDS-PAGEによってクローン8 BsAbおよびクローン12 BsAbの主要なバンドが50kDa付近に観察され、これは、BsAbが成功裏に精製されたことを示す。
【0172】
(実施例3)
抗MUC16 BsAb-MUC16+細胞特異性
この実施例では、MUC16を発現するがん細胞への結合に対する抗MUC16 BsAbの結合の特異性を評価した。ある研究では、2つの標的細胞系、MUC16+OVCAR3細胞系およびMUC16-SKOV3細胞系を使用した。OVCAR3およびSKOV3細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)によって入手し、ATCCの文献に従って培養で維持した。2つの標的細胞系に結合する抗MUC16抗体のFACS分析を実施して、抗体結合がMUC16+OVCAR3細胞系を用いた場合にのみ観察されることを確認した。SKOV3またはOVCAR3細胞系を、抗MUC16 Abと、続いて、二次抗体とともに、または対照として二次抗体単独とともにインキュベートした。抗MUC16クローン8 BsAbのデータが、図6に示されている。MUC16+OVCAR3細胞系は、対照細胞を上回る結合の約300×MFIの増大を示したが、一方でSKOV3は、最小シグナルしか示さなかった。
【0173】
(実施例4)
抗MUC16 BsAbによって指示される細胞傷害性
この実施例では、抗MUC16 BsAbの、MUC16特異的細胞傷害性を誘導する能力を評価した。抗MUC16クローン8 BsAbおよび抗MUC16クローン12 BsAbを、0.2μg/mlの濃度で、5:1のエフェクター:標的(E:T)比でMUC16+ OVCAR3標的細胞系またはMUC16-SKOV3標的細胞系のいずれか、およびヒト活性化T細胞を用いて16時間インキュベートした。細胞傷害性は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによって測定された。図7に示されるように、クローン8およびクローン12 BsAbは、それぞれ、約90%および65%のレベルでOVCAR3細胞の細胞溶解を誘導できたが、一方、SKOV3の細胞溶解は最小であり、これは、T細胞活性化にはMUC16+標的特異性が必要であるということを示した。したがって、クローン8 BsAbおよびクローン12 BsAbの両方とも、MUC16+がん細胞系の強力なおよび特異的な死滅を誘導した。
別々の研究において、4種の標的細胞系、MUC16+OVCAR3細胞系、MUC16-SKOV3細胞系、MUC16+SKOV8細胞系およびMUC16+OVCA432細胞系を使用した。抗MUC16クローン8 BsAbおよび抗MUC16クローン12 BsAbを、0.2μg/mlの濃度で、3:1のエフェクター:標的(E:T)比で標的細胞系およびヒト活性化T細胞を用いて16時間インキュベートした。細胞傷害性は、LDH放出アッセイによって測定した。5:1のE:T比と比較して3:1のより低いE:T比で、MUC16+細胞系についてより少ないパーセンテージの細胞溶解が観察された(図8)。MUC16-SKOV3の細胞溶解は、この研究において同様に最小であり、T細胞活性化にはBsAbのMUC16+標的特異性が必要であるということをさらに支持する。
【0174】
(実施例5)
NSGマウスにおけるヒトMUC16+転移性卵巣がんの療法
この実施例では、転移性卵巣がんのマウス異種移植モデルにおいて、抗MUC16 BsAbのin vivo治療効力を評価した。6~8週齢の雌のNSGマウスに、3×106個の、MUC16-C114およびGFP-LUCを発現するように修飾されているSKOV3-MUC-CD腫瘍細胞を用いて、0日目(D0)に腹膜内(i.p.)に注射した。次いで、これらのマウスを、7日目(D7)に1×107個のヒトT細胞を用いて静脈内(i.v.)に、5μgの抗MUC16クローン8 BsAbを用いてi.p.処置した。合計6回のBsAb処置のために、5μgのBsAbを用いるさらなる処置をD9、D11、D14、D16およびD18にi.p.投与した。動物をD14、D21、D28およびD42に画像化した。SKOV3-MUC-CDおよびBsAb注射の実験スキーマが、図9Aに示されている。
【0175】
抗MUC16クローン8 BsAbを用いて処置された動物は、未処置マウスまたはT細胞単独を用いて処置されたマウスと比較して疾患進行の遅延を示した(図9B)。図9Cは、腫瘍保有マウスの生存曲線を示す。抗MUC16クローン8 BsAbを用いる処置は、T細胞療法または処置なしと比較して腫瘍保有マウスにおいて生存を有意に延長した。T細胞および抗MUC16 BsAbを用いて処置された腫瘍保有マウスもまた、処置の7日後に有意に上昇したレベルの全身IL-2およびIFN-γを示し、これは、抗腫瘍免疫応答の誘導を示す(図9D)。これらの結果は、抗MUC16 BsAbの投与が、MUC16+転移性卵巣がんの異種モデルにおいて疾患進行を遅延し、生存を改善することを実証する。
【0176】
(実施例6)
全長ヒトIgG抗MUC16抗体の生成
選択されたファージクローンの全長ヒトIgG1は、記載されるように(Tomimatsu, K. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 73(7):1465-1469, 2009)、例えば、HEK293およびCHO細胞系において産生される。手短には、ファージクローンに由来する抗体可変領域を哺乳動物発現ベクター中にサブクローニングし、ヒトラムダ軽鎖定常領域(配列番号31)およびヒトIgG1定常領域(配列番号28)配列(表5を参照されたい)を対応させる。電気泳動によって、精製された全長IgG1抗体の分子量は、還元および非還元の両条件下で測定され得る。精製されたIgG1抗体のSDS-PAGEを実施して、タンパク質純度を決定できる。
【表4】
【0177】
(実施例7)
全長ヒトIgG抗MUC16抗体の特性決定
抗MUC16 IgG抗体を、フローサイトメトリーによってMUC16発現細胞、例えば、HEK293-MUC16wt細胞またはMUC16+細胞系、例えば、OVCAR3、SKOV8細胞系またはOVCA432細胞系への結合について試験する。結合の用量依存が試験される。手短には、MUC16発現性細胞を種々の量の抗ヒトMUC16 IgG抗体とともに、例えば、10、3.3、1.1、0.37、0.12、0.041、0.014または0μg/mlで、氷上で1時間インキュベートする。抗MUC16 IgG抗体を、用量依存曲線(MFI対抗体濃度)のEC50によってMUC16発現細胞に対するその親和性について評価する。さらに、EC50値に基づいて見かけのKDを決定する。抗MUC16 IgG抗体の結合親和性は、例えば、ForteBioによって決定できる。
【0178】
(実施例8)
全長ヒトIgG抗MUC16抗体の特性決定
抗MUC16クローン8および抗MUC16クローン12の、Matrigel浸潤を阻害する能力を評価する。4H11、クローン8またはクローン12の存在下または不在下で細胞をインキュベートすることによって、抗MUC16モノクローナル抗体4H11を陰性対照として使用し、phrGFPまたはphr-GFP-MUC16-C114を発現するSKOV3卵巣がん安定細胞系を用いてMatrigel浸潤アッセイを実施する。クローン8およびクローン12は、MUC16-C114誘導性Matrigel浸潤を阻害する。対照的に、モノクローナル抗MUC16抗体4H11は、MUC16-C114誘導性Matrigel浸潤を阻害しない。これらのデータは、モノクローナル抗体4H11とは対照的に、クローン8およびクローン12がMatrigel浸潤を阻止することを実証する。
【0179】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】

【表5-12】
【0180】
【表5-13】
本開示は、以下の限定されない実施形態の観点から記載され得る:
実施形態1:ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物であって、抗体部分は、(a)(i)配列番号2の重鎖可変ドメインの重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号3の軽鎖可変ドメインの軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖または(b)(i)配列番号10の重鎖可変ドメインの重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号11の軽鎖可変ドメインの軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む、抗ムチン16(MUC16)構築物。
【0181】
実施形態2:抗体部分が、(a)(i)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号6のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号8のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号9のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖または(b)(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-CDR2および配列番号14のアミノ酸配列を含むHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖ならびに(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-CDR1、配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-CDR2および配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む、実施形態1の抗ムチン16(MUC16)構築物。
実施形態3:抗体部分が、MUC16のエクトドメインに免疫特異的に結合する、実施形態1または実施形態2の抗MUC16構築物。
【0182】
実施形態4:抗体部分が、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である、実施形態1~3のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態5:MUC16が、ヒトMUC16である、実施形態1~4のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態6:VH鎖およびVL鎖が、ヒトVH鎖およびVL鎖である、実施形態1~5のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態7:抗体部分が、配列番号25のアミノ酸配列を含むMUC16 c114ポリペプチドに免疫特異的に結合する、実施形態1~6のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態8:Matrigel浸潤アッセイにおいてMUC16を発現する腫瘍細胞のin vitro浸潤を阻害する、実施形態1~6のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態9:腫瘍細胞が、卵巣腫瘍細胞である、実施形態8の抗MUC16構築物。
実施形態10:MUC16が、グリコシル化される、実施形態8または実施形態9の抗MUC16構築物。
実施形態11:MUC16が、配列番号25に対してN24またはN30でNグリコシル化される、実施形態10の抗MUC16構築物。
実施形態12:抗体部分が、モノクローナル抗体である、実施形態1~11のいずれか1つの抗MUC16構築物。
【0183】
実施形態13:抗体部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHを含む、実施形態1~12のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態14:抗体部分が、配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを含む、実施形態1~13のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態15:抗体部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHを含む、実施形態1~12のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態16:抗体部分が、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、実施形態1~12または15のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態17:抗体部分が、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを含む、実施形態1~12のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態18:抗体部分が、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを含む、実施形態1~12のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態19:抗体部分が、ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む、実施形態1~18のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態20:重鎖定常領域が、ガンマ1、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有する、実施形態19の抗MUC16構築物。
実施形態21:軽鎖定常領域が、カッパおよびラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する、実施形態19または20の抗MUC16構築物。
【0184】
実施形態22:抗体部分が、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンである、実施形態1~21のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態23:免疫グロブリンが、IgGである、実施形態22の抗MUC16構築物。
実施形態24:単一特異性である、実施形態1~22のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態25:多特異性である、実施形態1~22のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態26:二重特異性である、実施形態1~22のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態27:タンデムscFv、ダイアボディー(Db)、一本鎖ダイアボディー(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、F(ab’)2、二重可変ドメイン(DVD)抗体、ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体またはヘテロコンジュゲート抗体である、実施形態1~22のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態28:ペプチドリンカーによって連結された2つのscFvを含むタンデムscFvである、実施形態27の抗MUC16構築物。
【0185】
実施形態29:MUC16を免疫特異的に認識する抗体部分が、第1の抗体部分であり、抗MUC16構築物が、第2の抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分をさらに含む、実施形態25~28のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態30:第2の抗原が、T細胞の表面上の抗原である、実施形態29の抗MUC16構築物。
実施形態31:第2の抗原が、CD3である、実施形態30の抗MUC16構築物。
実施形態32:第2の抗原が、CD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζからなる群から選択される、実施形態31の抗MUC16構築物。
実施形態33:第2の抗原が、CD3εである、実施形態32の抗MUC16構築物。
実施形態34:キメラ抗原受容体(CAR)である、実施形態1~19または24~26のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態35:CARが、共刺激性ドメインを含む、実施形態34の抗MUC16構築物。
実施形態36:CARが、CD3ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメインを含む、実施形態34または35の抗MUC16構築物。
【0186】
実施形態37:ペプチド剤、検出剤、イメージング剤、治療剤または細胞傷害性薬剤にさらにコンジュゲートされる、実施形態1~36のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態38:配列番号2~17のうち1種もしくは複数のアミノ酸配列または実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物のアミノ酸を含むポリペプチド。
実施形態39:実施形態38の1つまたは複数のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
実施形態40:プロモーターに作動可能に連結した実施形態39のポリヌクレオチドを含むベクター。
実施形態41:実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態38のポリペプチド、実施形態39のポリヌクレオチドまたは実施形態40のベクターを含む細胞。
実施形態42:哺乳動物細胞である、実施形態41の細胞。
実施形態43:免疫細胞である、実施形態42の細胞。
【0187】
実施形態44:リンパ球である、実施形態43の細胞。
実施形態45:T細胞またはB細胞である、実施形態44の細胞。
実施形態46:実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態39のポリヌクレオチド、実施形態40のベクターまたは実施形態41~45のいずれか1つの細胞の治療有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
実施形態47:それを必要とする患者において、MUC16関連疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に、実施形態46の医薬組成物を投与することを含む方法。
実施形態48:前記MUC16関連疾患または障害が、がんである、実施形態47の方法。
実施形態49:前記がんが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または一次腹膜のがんである、実施形態47の方法。
実施形態50:前記がんが、転移性がんである、実施形態47または48の方法。
【0188】
実施形態51:医薬組成物が、患者において転移を阻害する、実施形態47~49のいずれか1つの方法。
実施形態52:前記患者が、ヒト患者である、実施形態47~50のいずれか1つの方法。
実施形態53:エフェクター細胞を産生する方法であって、実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を用いて細胞を遺伝子修飾することを含む方法。
実施形態54:実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を、患者から単離された1つまたは複数の一次細胞中に導入すること、および1つまたは複数の核酸を含む細胞を患者に投与することを含む処置の方法。
実施形態55:細胞を拡大増殖すること、その後細胞を患者に投与することをさらに含む、実施形態52の方法。
実施形態56:一次細胞がリンパ球である、実施形態52または53の方法。
実施形態57:一次細胞がT細胞である、実施形態54の方法。
実施形態58:さらなる治療剤の治療有効量を患者に投与することをさらに含む、実施形態47~55のいずれか1つの方法。
【0189】
実施形態59:抗MUC16構築物が、実施形態34~36のいずれか1つの抗MUC16構築物である、実施形態53~58のいずれか1つの方法。
実施形態60:試料においてMUC16を検出する方法であって、(a)試料を実施形態1~24および37のいずれか1つの抗MUC16構築物と接触させること、および(b)試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合を直接的または間接的に検出することを含む方法。
実施形態61:抗MUC16構築物が、検出可能な標識にコンジュゲートされる、実施形態60の方法。
実施形態62:検出可能な標識が、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤である、実施形態61の方法。
実施形態63:試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合が、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される、実施形態61または62の方法。
実施形態64:試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合が、二次抗体を使用して間接的に検出される、実施形態60の方法。
実施形態65:MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)実施形態1~24および37のいずれか1つの抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、およびb)個体において抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合のレベルを直接的または間接的に決定し、閾値レベルを上回る結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示すことを含む方法。
【0190】
実施形態66:MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)個体に由来する細胞を含む試料を、実施形態1~24および37のいずれか1つの抗MUC16構築物と接触させること、およびb)抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定し、閾値レベルを上回る抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示すことを含む方法。
実施形態67:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための、実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態39のポリヌクレオチド、実施形態40のベクターまたは実施形態41~45のいずれか1つの細胞の使用。
実施形態68:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための医薬の製造における、実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態39のポリヌクレオチド、実施形態40のベクターまたは実施形態41~45のいずれか1つの細胞の使用。
実施形態69:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の診断のための、実施形態1~37のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態39のポリヌクレオチド、実施形態40のベクターまたは実施形態41~45のいずれか1つの細胞の使用。
【0191】
実施形態70:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害が、がんである、実施形態62~64のいずれか1つの使用。
本開示は、本出願において記載される特定の実施形態に関して制限されるべきではなく、これらは、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される。本開示の種々の実施形態のすべては、本明細書において記載されない。当業者には明らかであろうが、趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の多数の改変および変法を行うことができる。本明細書において列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および装置は、前記の説明から当業者には明らかとなろう。このような改変および変法は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。本開示は、添付の特許請求の範囲の条項およびこのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲によってのみ制限されるべきである。
本開示は、特定の使用、方法、試薬、化合物、組成物または生物学的系に制限されず、それらは当然変化する可能性があるということは理解されるべきである。また、本明細書において使用された技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のものであって、限定するように意図されないということも理解されるべきである。
【0192】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で説明される場合、当業者は、それによって、本開示が同様に、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で記載されると認識するであろう。
当業者によって理解されるであろうが、ありとあらゆる目的のために、特に書面の説明を提供することに関して、本明細書において開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆるあり得る部分範囲およびその部分範囲の組合せも包含する。任意の列挙された範囲は、同範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されると十分に記載され、それを可能にすると容易に認識され得る。限定されない例として、本明細書において論じられる各範囲は、下部3分の1、中央の3分の1および上部3分の1などに容易に分割され得る。同様に当業者に理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より多い」、「より少ない」などといったすべての言語は、列挙された数を含み、その後上記で論じられるような部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つのセルを有するグループは、1、2または3つのセルを有するグループを指す。同様に、1~5つのセルを有するグループは、1、2、3、4または5つのセルを有するグループなどを指す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
【配列表】
0007627216000001.app