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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】イントロデューサー
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/04 20060101AFI20250129BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20250129BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
A61M39/04 100
A61M25/06 556
A61M39/06 122
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021561549
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044245
(87)【国際公開番号】W WO2021107103
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019217241
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 哲
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克明
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0157924(US,A1)
【文献】国際公開第2011/016386(WO,A1)
【文献】特表2016-512755(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/04
A61M 25/06
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、
前記第1表面と対向する第2表面と、
前記第1表面と前記第2表面との間に延びる外周面と、
医療用長尺体の挿入を可能にする隙間を規定する内面を持ち、前記第1表面に少なくとも形成された挿入部と、を備える本体部を有し、
前記本体部は、前記医療用長尺体の接触に伴って形成される損傷を自己修復できる自己修復材料を含み、
前記挿入部の前記内面の少なくとも一部には、前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触した状態において、前記隙間が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層が設けられている、弁体と、
前記医療用長尺体を挿通可能な内腔部を備える管状部材と、
前記管状部材の前記内腔部と連通し、かつ、前記弁体が配置される内部空間を備え、前記管状部材の基端側に固定されるハブと、
前記医療用長尺体を挿通可能な貫通孔を備え、前記弁体と当接して前記弁体を前記ハブの前記内部空間に固定するキャップ部材と、を有し、
前記弁体は、前記ハブの前記内部空間に固定された状態で、前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触する方向に圧縮されている、シースイントロデューサーと、
ダイレーターと、を有し、
前記ダイレーターは、
前記キャップ部材の前記貫通孔を介して前記シースイントロデューサーの前記管状部材の前記内腔部に挿入可能なダイレーター本体と、
前記ダイレーター本体の基端側に固定されるダイレーターハブと、を有し、
前記被覆層は、前記ダイレーター本体が前記貫通孔を介して前記シースイントロデューサーの前記管状部材の前記内腔部に挿入されておらずかつ前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触した状態において、前記挿入部の前記内面の少なくとも一部に設けられることにより前記隙間が自己修復によって閉じられることを抑制する、イントロデューサー。
【請求項2】
前記隙間は、少なくとも前記第1表面に形成されたスリットまたは孔部である、請求項1に記載のイントロデューサー
【請求項3】
前記スリットは、前記第1表面側から前記本体部の厚み方向に延びる第1スリット部と、前記第2表面側から前記本体部の厚み方向に延びる第2スリット部と、を有し、
前記第1スリット部と前記第2スリット部は、前記本体部の内部で交差しており、
前記被覆層は、前記第1スリット部を規定する前記内面に少なくとも設けられる、請求項2に記載のイントロデューサー
【請求項4】
前記自己修復材料は、ホスト基およびゲスト基の相互作用によって架橋された架橋結合を含む高分子材料であり、
前記ホスト基がγ-シクロデキストリンであり、
前記ゲスト基がアダマンチル基およびドデシル基の群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のイントロデューサー
【請求項5】
前記キャップ部材は、前記弁体を前記管状部材側に向けて押圧する凸部を有し、
前記弁体の中心部は、前記弁体が前記ハブの前記内部空間に固定され、かつ、前記凸部により押圧された状態で、前記管状部材側に向けて凹み、
前記弁体の前記第1表面側は、前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触する方向に圧縮されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のイントロデューサー。
【請求項6】
前記弁体は、前記ハブの前記内部空間に固定された状態で圧縮されており、前記弁体の圧縮に伴って前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面に配置された前記被覆層同士が接触している、請求項5に記載のイントロデューサー
【請求項7】
前記弁体の前記本体部の厚さは、前記ダイレーター本体の最大外径部の直径よりも小さい、請求項1~6のいずれか1項に記載のイントロデューサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体、及び弁体を備える医療用具に関する。例えば、弁体を備える医療用具は、シースイントロデューサー、イントロデューサー、及びコネクタ部材である。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手技では、シースイントロデューサーのハブに配置された弁体(止血弁)、又はカテーテルの基端に取り付けられたコネクタ部材のハブに配置された弁体(止血弁)を介して血管内に様々なデバイスを導入する。シースイントロデューサーは、シースイントロデューサー内への空気の流入を防止し、かつ、シースイントロデューサーの基端からの血液のリークを軽減する必要がある。また、コネクタ部材は、ガイディングカテーテル等の弁体を持たないカテーテルを介して血管内に様々なデバイスを導入する場合、カテーテルの基端に接続し、カテーテル内への空気の流入を防止し、カテーテルの基端からの血液のリークを軽減する必要がある。そのため、シースイントロデューサーやコネクタ部材には、空気塞栓を防止するために様々な弁体が使用されている。例えば、特許文献1には、カテーテルデバイスやガイドワイヤ等の医療用長尺体を弁体の内部へ導入するための挿入部としての機能を持つスリットが形成された弁体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願第14/710,417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、カテーテル手技は、様々な病変部の診断や治療に使用されている。術者は、複雑な病変部に対する治療では、シースイントロデューサー又はコネクタ部材を介して外径等の製品仕様が異なる複数種類の医療用長尺体を血管内に挿入し、それらの医療用長尺体を操作することで、病変部の治療を行う。術者は、カテーテル手技中において、シースイントロデューサーにダイレーターを挿入する際、及びシースイントロデューサー又はコネクタ部材を介してカテーテルデバイスを挿入する際、弁体の損傷を防止するために、弁体の中心部を狙って医療用長尺体を誘導する必要がある。これにより、カテーテル手技中のシースイントロデューサー又はコネクタ部材の操作が煩雑になり、カテーテル手技時間の長期化を招く可能性がある。以下、本明細書では、シースイントロデューサー又はコネクタ部材を介して生体内に導入されるカテーテルデバイス、ガイドワイヤ、ダイレーター等を総称して「医療用長尺体」とする。
【0005】
また、カテーテル手技中にシースイントロデューサー又はコネクタ部材の弁体が損傷した場合には、シースイントロデューサー又はコネクタ部材を交換する必要があり、新しいシースイントロデューサー又はコネクタ部材の費用や新しいシースイントロデューサーの挿入又は新しいコネクタ部材の取付けに伴う時間ロスなど、医療経済性が損なわれる。したがって、弁体は、医療用長尺体を挿入する際の挿入容易性を維持しつつ、過酷なカテーテル操作でもシール性を維持できる更なる技術が求められている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、様々な種類の医療用長尺体を繰り返し挿入及び抜去する場合においても、スムーズな挿入感を維持しつつ、空気又は血液リークを防止するためのシール性を安定的に維持できる弁体、及び弁体を備える医療用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイントロデューサーは、第1表面と、前記第1表面と対向する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面との間に延びる外周面と、医療用長尺体の挿入を可能にする隙間を規定する内面を持ち、前記第1表面に少なくとも形成された挿入部と、を備える本体部を有し、前記本体部は、前記医療用長尺体の接触に伴って形成される損傷を自己修復できる自己修復材料を含み、前記挿入部の前記内面の少なくとも一部には、前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触した状態において、前記隙間が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層が設けられている、弁体と、前記医療用長尺体を挿通可能な内腔部を備える管状部材と、前記管状部材の前記内腔部と連通し、かつ、前記弁体が配置される内部空間を備え、前記管状部材の基端側に固定されるハブと、前記医療用長尺体を挿通可能な貫通孔を備え、前記弁体と当接して前記弁体を前記ハブの前記内部空間に固定するキャップ部材と、を有し、前記弁体は、前記ハブの前記内部空間に固定された状態で、前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触する方向に圧縮されている、シースイントロデューサーと、ダイレーターと、を有し、前記ダイレーターは、前記キャップ部材の前記貫通孔を介して前記シースイントロデューサーの前記管状部材の前記内腔部に挿入可能なダイレーター本体と、前記ダイレーター本体の基端側に固定されるダイレーターハブと、を有し、前記被覆層は、前記ダイレーター本体が前記貫通孔を介して前記シースイントロデューサーの前記管状部材の前記内腔部に挿入されておらずかつ前記隙間を規定する前記挿入部の前記内面同士が接触した状態において、前記挿入部の前記内面の少なくとも一部に設けられることにより前記隙間が自己修復によって閉じられることを抑制する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弁体は、弁体の本体部が自己修復材料を含むため、弁体に形成された隙間を介して医療用長尺体を挿入する作業を複数回繰り返した際に弁体に損傷が発生したとしても、自己修復材料により弁体の損傷を修復できる。そのため、弁体は、弁体のシール性を維持することができる。また、本発明の弁体は、挿入部において、隙間を規定する内面に自己修復による内面同士の連結を抑制する被覆層が設けられているため、挿入部の内面同士が接触した状態であっても、自己修復材料によって隙間が閉じられてしまうことを抑制できる。そのため、本発明の弁体は、術者が弁体に形成された隙間に基づいて弁体の挿入部の位置を容易に把握することができ、かつ、術者が医療用長尺体を弁体に挿入する際の挿入抵抗が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るイントロデューサーを示す図である。
図2】実施形態に係るシースイントロデューサーの断面図である。
図3】実施形態に係る弁体の斜視図である。
図4】実施形態に係る弁体の上面図である。
図5図3に示す矢印5A-5A線に沿う弁体の断面図である。
図6図3に示す矢印6A-6A線に沿う弁体の断面図である。
図7】実施形態に係るシースイントロデューサーの使用例を説明するための断面図である。
図8】実施形態に係るシースイントロデューサーの使用例を説明するための断面図である。
図9】変形例1に係る弁体の分解斜視図である。
図10】変形例2に係る弁体の断面図である。
図11】他の実施形態に係るコネクタ部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図8を参照して本実施形態に係るイントロデューサー10、シースイントロデューサー100、弁体110を説明する。
【0011】
図1には、イントロデューサー10の全体構成を簡略化して示す。図2には、シースイントロデューサー100の軸方向に沿う断面を示し、図3図4には、弁体110を示し、図5図6には、弁体110の断面図を示し、図7図8には、シースイントロデューサー100の使用例を示す。
【0012】
本明細書では、シースイントロデューサー100においてハブ140が配置される側(図1の上側)を基端側と称する。シースイントロデューサー100において基端側とは反対側に位置し、生体内に導入される側(図1の下側)を先端側と称する。シースイントロデューサー100の管状部材130が延伸する方向(図1の上下方向)を軸方向と称する。
【0013】
イントロデューサー10は、図1に示すように、シースイントロデューサー100と、ダイレーター200と、を有する。
【0014】
シースイントロデューサー100は、管状部材130の内腔部131を介してカテーテルデバイス、ガイドワイヤー、ダイレーター200のダイレーター本体210等の医療用長尺体300(図8を参照)を血管内へ導入するために使用することができる。
【0015】
(弁体110)
本実施形態に係る弁体110は、図2に示すように、シースイントロデューサー100のハブ140の内部空間141に配置することができる。
【0016】
弁体110は、外部から管状部材130の内腔部131へ空気が流入するのを防止する機能や、管状部材130の内腔部131に流れ込んだ血液が外部へ漏洩するのを防止する機能を持つ。
【0017】
弁体110は、概説すると、図3図4図5図6に示すように、第1表面111と、第1表面111と対向する第2表面112と、第1表面111と第2表面112との間に延びる外周面113と、医療用長尺体300(図8を参照)の挿入を可能にする隙間121を規定する内面123を持ち、第1表面111に少なくとも形成された挿入部120と、を備える本体部115を有する。本体部115は、医療用長尺体300の接触に伴って形成される損傷を自己修復できる自己修復材料を含む。挿入部120の内面123の少なくとも一部には、挿入部120の内面123同士が接触した状態において、隙間121が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層125が設けられている。
【0018】
弁体110は、略円形の膜状(円盤状)に形成されている。弁体110は、図2に示すように、ハブ140に嵌合したキャップ部材150によりハブ140の内部空間141に固定されている。弁体110の形状は、ハブ140の内部空間141に配置することが可能な限り、特に限定されない。
【0019】
隙間121は、図3図5図6に示すように、例えば、本体部115に形成されたスリットで構成することができる。
【0020】
隙間121をなすスリットは、第1表面111側から本体部115の厚み方向(図5図6の上下方向)に延びる第1スリット部121aと、第2表面112側から本体部115の厚み方向に延びる第2スリット部121bと、を有する。第1スリット部121aと第2スリット部121bは、図5図6に示すように、本体部115の内部で交差している。被覆層125は、第1スリット部121aを規定する内面123の少なくとも一部に設けることができる。
【0021】
第1スリット部121aは、図5に示すように、第1表面111から本体部115の厚み方向の中心側に向けて凸状に湾曲した円弧形状を有する。第2スリット部121bは、第2表面112から本体部115の厚み方向の中心側に向けて凸状に湾曲した円弧形状を有する。
【0022】
本体部115の厚み方向の略中心に位置する第1スリット部121aの底部は、図5図6に示すように、本体部115の厚み方向の略中心に位置する第2スリット部121bの上端部と重なるように配置される。第1スリット部121aと第2スリット部121bは、図4に示すように、本体部115の平面視において、十字状に交差している。なお、第1スリット部121aと第2スリット部121bが交差する角度は特に限定されない。
【0023】
隙間121をなすスリットは、少なくとも第1表面111に形成されていることにより、第1表面111側から当該スリットを介して本体部115の内部へ医療用長尺体300を挿入することが可能な限り、具体的な形状等は限定されない。例えば、隙間121をなすスリットは、第1表面111側から本体部115の厚み方向に沿って略一定の深さで延びる直線形状を有していてもよい。また、隙間121をなすスリットは、第1スリット部121aと第2スリット部121bの形状が異なるものであってもよい。例えば、第1スリット部121aを円弧形状のスリットで形成し、第2スリット部121bを直線形状のスリットで形成してもよい。また、隙間121をなすスリットが第1スリット部121a及び第2スリット部121bのように複数のスリット部から構成される場合、各スリット部121a、121bは本体部115の内部で接触していなくてもよい。
【0024】
本体部115に含まれる自己修復材料としては、例えば、自己修復性ポリマーを用いることができる。
【0025】
自己修復ポリマーは、ポリマー片の切断面同士を接触させた際に切断面が再接着(再結合)する機能(自己修復能)を有する。ここで、自己修復ポリマーは、上記機能を有するものであれば特に制限されず、公知のポリマーが使用できる。具体的には、例えば、特開2017-71710号公報や国際公報第2017/159346号に記載されるような、ホスト基とゲスト基との相互作用(ホスト-ゲスト相互作用)により形成される結合を架橋点とするポリマーが使用できる。ここで、ホスト基は、ゲスト基との相互作用によりゲスト基を包接できるものであればよいが、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、カリックス[6]アレーンスルホン酸、カリックス[8]アレーンスルホン酸、12-クラウン-4、18-クラウン-6、[6]パラシクロファン、[2,2]パラシクロファン、ククルビット[6]ウリル及びククルビット[8]ウリル等の化合物(ホスト分子)由来の基がある。これらのうち、自己修復性(ゲスト基の包接性)などの観点から、ホスト基は、α-シクロデキストリン由来の基、β-シクロデキストリン由来の基、γ-シクロデキストリン由来の基であることが好ましく、γ-シクロデキストリン由来の基であることがより好ましい。また、ゲスト基は、ホスト基との相互作用によりホスト基に包接され得るものであればよいが、例えば、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の炭素数4~18の炭化水素基、上記炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ハロゲン原子、エステル基、アミド基等で置換された置換炭化水素基などが挙げられる。これらのうち、自己修復性(ホスト基による包接性)などの観点から、ゲスト基は、炭素数6~12の炭化水素基であることが好ましく、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、アダマンチル基、イソボルニル基であることが好ましく、n-オクチル基、n-ドデシル基、アダマンチル基、イソボルニル基であることがより好ましい。なお、上記ホスト基およびゲスト基は、それぞれ、1種を単独で使用してもまたは2種以上を組み合わせ使用してもよい。ここで、ホスト基とゲスト基との組み合わせは特に制限されない。自己修復性などの観点から、ホスト基とゲスト基との組み合わせ(ホスト基-ゲスト基)は、(α-シクロデキストリン由来の基-n-ブチル基)、(α-シクロデキストリン由来の基-n-ヘキシル基)、(α-シクロデキストリン由来の基-n-オクチル基)、(α-シクロデキストリン由来の基-n-ドデシル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-アダマンチル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-ヒドロキシル基置換アダマンチル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-エチル基置換アダマンチル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-イソボルニル基)、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-オクチル基)、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-ドデシル基)及び(γ-シクロデキストリン由来の基-シクロドデシル基)が好ましく、(α-シクロデキストリン由来の基-n-オクチル基)、(α-シクロデキストリン由来の基-n-ドデシル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-アダマンチル基)、(β-シクロデキストリン由来の基-イソボルニル基)、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-オクチル基)、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-ドデシル基)及び(γ-シクロデキストリン由来の基-シクロドデシル基)がより好ましく、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-オクチル基)、(γ-シクロデキストリン由来の基-n-ドデシル基)及び(γ-シクロデキストリン由来の基-シクロドデシル基)がさらに好ましい。
【0026】
本実施形態に係る自己修復ポリマーは、上記公報等に記載の方法によって合成されてもまたは市販品を使用してもよい。ここで、市販品としては、例えば、ウィザードゲル(登録商標)、ウィザードパック熱(ウィザードモノマーSMH,ウィザードプラスSW)、ウィザードパック光(ウィザードモノマーSMU,ウィザードプラスPKU)(いずれも、ユシロ化学工業株式会社製)がある。
【0027】
被覆層125としては、例えば、本体部115の自己修復材料が含まれる内面123同士が接触した状態において、隙間121を規定する内面123が自己修復により連結されることを抑制する自己修復阻害剤を用いることができる。
【0028】
自己修復阻害剤は、自己修復材料の再接着(再結合)の防止/抑制能(自己修復阻害能)を有する。ここで、自己修復阻害剤は、上記機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、自己修復材料に存在するゲスト基に対応するゲスト基を有する化合物が好ましく使用できる。このような化合物を隙間121を規定する内面123に塗布すると、本体部115の切断後に自己修復材料中のゲスト基がホスト基と再度相互作用する(ホスト基に再度包接される)前に、自己修復阻害剤中のゲスト基が自己修復材料のホスト基に包接される。これにより、切断の後の自己修復材料のゲスト基とホスト基との相互作用(包接)を抑制・防止して、切断面の再接着(再結合)を抑制・防止できる。自己修復阻害剤は、上記したようなゲスト基または上記ゲスト基と同じような大きさの構造を有する化合物が好ましく使用され、塗布容易性などの観点から、シリコーン化合物がより好ましく使用される。また、自己修復阻害剤は、自己修復材料に存在するゲスト基と同じ基を有することがより好ましい。これにより、自己修復材料のホスト-ゲスト相互作用をより有効に抑制・防止できる(切断面の再接着(再結合)をより有効に抑制・防止できる)。すなわち、本実施形態の特に好ましい形態では、自己修復阻害剤は、使用される自己修復材料に存在するゲスト基または上記ゲスト基と同じような大きさの構造を少なくとも1個有するシリコーン化合物(シリコーンオイル)である。特に、シリコーン化合物(シリコーンオイル)は、液状で流動性を有する。そのため、自己修復阻害剤がシリコーン化合物(シリコーンオイル)の場合、被覆層125は、本体部115の変形に追従しつつ、隙間121を規定する内面123に維持されるため、好適に自己修復材料の再接着(再結合)の防止/抑制能(自己修復阻害能)を発揮できる。また、隙間121をなすスリットを介して本体部115の内部へ医療用長尺体300を挿入する際、シリコーン化合物(シリコーンオイル)の被覆層125は、医療用長尺体300の挿入抵抗を軽減させることもできる。また、シリコーン化合物(シリコーンオイル)は、本体部115に被覆層125を形成する過程で、乾燥硬化の時間を必要としないため、簡単な作業で本体部115に被覆層125を形成できる。なお、自己修復阻害剤は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
弁体110の本体部115は、本体部115全体を自己修復材料で構成してもよいし、弁体110の第1表面111を形成する部分のみに自己修復材料が含まれるように構成してもよい。本体部115の一部を自己修復材料以外の材料で構成する場合、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等を用いることができる。
【0030】
(シースイントロデューサー100)
シースイントロデューサー100は、図1図2に示すように、前述した弁体110と、医療用長尺体300を挿通可能な内腔部131を備える管状部材130と、管状部材130の内腔部131と連通し、かつ、弁体110が配置される内部空間141を備え、管状部材130の基端側に固定されるハブ140と、医療用長尺体300を挿通可能な貫通孔151を備え、弁体110と当接して弁体110をハブ140の内部空間141に固定するキャップ部材150と、を有する。
【0031】
管状部材130の内腔部131は、管状部材130の基端側から先端側にかけて略直線状に延びている。管状部材130の基端には、ハブ140の内部空間141に連通される基端開口部が形成されている。管状部材130の先端には、管状部材130の先端側へ医療用長尺体300の導出を可能にする先端開口部が形成されている。なお、本実施形態では、医療用長尺体300としてダイレーター200のダイレーター本体210を例示する。
【0032】
ハブ140には、管状部材130の基端側の所定範囲を囲むストレインリリーフ160を接続している。また、ハブ140には、ハブ140の内部空間141と連通するサイドポート142を設けている。サイドポート142には、チューブ180(図1を参照)の一端部を接続することができる。チューブ180の他端部には、例えば、三方活栓170を接続することができる。
【0033】
弁体110は、図2図7に示すように、ハブ140の内部空間141に固定された状態で、隙間121を規定する挿入部120の内面123同士が接触する方向(図7図8の矢印A1で示す方向)に圧縮されている。
【0034】
キャップ部材150は、弁体110を管状部材130側(図7図8の矢印B1で示す方向)に向けて押圧する凸部152を有する。
【0035】
キャップ部材150は、ハブ140の基端に配置されている。キャップ部材150は、ハブ140の外周面の一部を囲むようにハブ140の基端に嵌合している。なお、キャップ部材150は、例えば、ハブ140の内側でハブ140に固定される構造を有していてもよい。また、ハブ140に対するキャップ部材150の固定は、嵌合のみに限定されず、例えば、ネジ込みや接着等であってもよい。
【0036】
ハブ140には、弁体110の外周を支持して弁体110を内部空間141内に保持する段差部143が形成されている。弁体110の第1表面111はキャップ部材150側に配置されている。弁体110の第2表面112は管状部材130側に配置されている。
【0037】
弁体110の中心部C(図4に示す平面視における中心部)は、図2図7に示すように、弁体110がハブ140の内部空間141に固定され、かつ、凸部152により押圧された状態で、管状部材130側に向けて凹んだ形状を呈する。この状態において、弁体110の第1表面111側は、隙間121を規定する挿入部120の内面123同士が接触する方向に圧縮されている。
【0038】
弁体110は、図2図7に示すように、ハブ140の内部空間141に固定された状態で圧縮されている。隙間121を規定する挿入部120の内面123に配置された被覆層125同士は、弁体110の圧縮に伴って互いに接触する。
【0039】
凸部152は、段差部143との間で弁体110の外周部分を挟み込む。凸部152は、ハブ140の内部空間141の中心側に位置するキャップ部材150の端部により構成されている。凸部152は、管状部材130に向けて傾斜した断面形状を有する。なお、凸部152は、ハブ140の内部空間141に固定された弁体110を管状部材130側に向けて押圧可能な限り、断面形状等は特に限定されない。
【0040】
管状部材130の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体など)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0041】
ハブ140およびキャップ部材150の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等を用いることができる。
【0042】
(ダイレーター200)
ダイレーター200は、図1に示すように、キャップ部材150の貫通孔151を介してシースイントロデューサー100の管状部材130の内腔部131に挿入可能なダイレーター本体210と、ダイレーター本体210の基端側に固定されるダイレーターハブ220と、を有する。
【0043】
ダイレーター200は、シースイントロデューサー100の管状部材130を血管内に挿入するときに、管状部材130の折れを防いだり、皮膚の穿孔を拡径したりするために用いることができる。
【0044】
ダイレーター本体210は、管状部材130の内腔部131に挿通されると、ダイレーター本体210の先端部が管状部材130の先端開口部から所定の長さだけ突出した状態となる。
【0045】
ダイレーター本体210の先端部は、先端側へ向けて先細るテーパー形状に形成されている。ダイレーター本体210の先端部よりも基端側に位置する部分は略一定の外径で軸方向に延びている。
【0046】
本実施形態では、弁体110の本体部の厚さt1(図3図5図6を参照)は、ダイレーター本体210の最大外径部の直径よりも小さい。ダイレーター本体210の最大外径部は、テーパー形状が付与されたダイレーター本体210の先端部よりも基端側に位置する任意の部分で定義することができる。ダイレーター本体210の最大外径部の直径は、例えば、1.0mm~6.0mmで形成することができる。弁体110の本体部の厚さt1は、例えば、1.2mm~10.0mmで形成することができる。
【0047】
ダイレーター本体210の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体など)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドのような高分子材料またはこれらの混合物等を用いることができる。
【0048】
ダイレーターハブ220の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等を用いることができる。
【0049】
術者は、図7に示すように、管状部材130の内腔部131へ医療用長尺体300を挿入する際、キャップ部材150の貫通孔151を介してハブ140の内部空間141内へ医療用長尺体300を挿入する。術者は、図8に示すように、医療用長尺体300をキャップ部材150の貫通孔151を通過させて、弁体110の内部へ導入する。弁体110は、弁体110の中心部Cが管状部材130側に凹状に湾曲した状態でハブ140に配置されている。そのため、術者は、弁体110の内部に医療用長尺体300を挿入する際、第1表面111側から弁体110の中心部Cへ医療用長尺体300を容易に案内することができる。
【0050】
術者が医療用長尺体300を弁体110の中心部C以外の部分に接触させた場合、弁体110に裂傷等の損傷が生じることがある。弁体110は、このような損傷が生じた場合においても、本体部115に含まれる自己修復材料により、損傷を修復することができる。また、挿入部120の内面123の少なくとも一部には、隙間(スリット)121が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層125が設けられている。そのため、弁体110は、製造時から術者によって使用されるまでの間、弁体110が手技で使用される前、手技の最中に医療用長尺体300を一旦抜去した後に異なる医療用長尺体300を弁体110に再度挿入するまでの間などに、第1表面111に形成された隙間121が閉じることを抑制できる。したがって、術者は、第1表面111に形成された隙間121を介して、弁体110の内部へ医療用長尺体300を容易に挿入することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る弁体110は、第1表面111と、第1表面111と対向する第2表面112と、第1表面111と第2表面112との間に延びる外周面113と、医療用長尺体300の挿入を可能にする隙間121を規定する内面123を持ち、第1表面111に少なくとも形成された挿入部120と、を備える本体部115を有する。本体部115は、医療用長尺体300の接触に伴って形成される損傷を自己修復できる自己修復材料を含む。挿入部120の内面123の少なくとも一部には、挿入部120の内面123同士が接触した状態において、隙間121が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層125が設けられている。
【0052】
上記のように構成された弁体110は、弁体110の本体部115が自己修復材料を含むため、弁体110に形成された隙間121を介して医療用長尺体300を挿入する作業を複数回繰り返した場合に弁体110に損傷が発生したとしても、自己修復材料により弁体110の損傷を修復できる。そのため、弁体110は、弁体110のシール性を維持することができる。また、弁体110は、挿入部120において、隙間121を規定する内面123に被覆層125が設けられているため、挿入部120の内面123同士が接触した状態であっても、弁体110が含む自己修復材料により、内面123同士が連結されて隙間121が閉じられてしまうことを抑制できる。そのため、弁体110は、術者が弁体110に形成された隙間121に基づいて弁体110の挿入部120の位置を容易に把握することができ、かつ、術者が医療用長尺体300を弁体110に挿入する際の挿入抵抗が増加することを抑制できる。
【0053】
また、隙間121は、少なくとも第1表面111に形成されたスリットである。術者は、弁体110の第1表面111に形成されたスリットを介して、弁体110の内部へ医療用長尺体300を円滑に挿入することができる。
【0054】
また、隙間121をなすスリットは、第1表面111側から本体部115の厚み方向に延びる第1スリット部121aと、第2表面112側から本体部115の厚み方向に延びる第2スリット部121bと、を有する。第1スリット部121aと第2スリット部121bは、本体部115の内部で交差している。被覆層125は、第1スリット部121aを規定する内面123に少なくとも設けられる。弁体110は、スリットが本体部115の内部で交差する第1スリット部121aおよび第2スリット部121bにより構成されているため、医療用長尺体300が弁体110を挿通する際の挿通抵抗を低減させることができる。また、弁体110は、被覆層125が第1スリット部121aを規定する内面123に設けられているため、第1表面111に形成された第1スリット部121aが内面123同士の接触により閉じられることを好適に防止することができる。
【0055】
また、自己修復材料は、ホスト基およびゲスト基の相互作用によって架橋された架橋結合を含む高分子材料で構成することができる。ホスト基はγ-シクロデキストリンで構成することができる。ゲスト基はアダマンチル基およびドデシル基の群から選ばれる少なくとも1種で構成することができる。弁体110は、本体部115に含まれる自己修復材料が上記材料で構成されることにより、医療用長尺体300の接触に伴って弁体110に形成された損傷をより確実に修復できる。
【0056】
本実施形態に係るシースイントロデューサー100は、弁体110と、医療用長尺体300を挿通可能な内腔部131を備える管状部材130と、管状部材130の内腔部131と連通し、かつ、弁体110が配置される内部空間141を備え、管状部材130の基端側に固定されるハブ140と、医療用長尺体300を挿通可能な貫通孔151を備え、弁体110と当接して弁体110をハブ140の内部空間141に固定するキャップ部材150と、を有する。弁体110は、ハブ140の内部空間141に固定された状態で、隙間121を規定する挿入部120の内面123同士が接触する方向に圧縮されている。
【0057】
上記のように構成されたシースイントロデューサー100は、弁体110がハブ140の内部空間141に固定された状態において、弁体110が隙間121を規定する挿入部120の内面123同士が接触する方向に圧縮されている。弁体110は、挿入部120の内面123の少なくとも一部に隙間121が自己修復によって閉じられることを抑制する被覆層125が設けられているため、弁体110がハブ140に圧縮されて固定された状態においても、隙間121が閉じられることを抑制できる。
【0058】
また、キャップ部材150は、弁体110を管状部材130側に向けて押圧する凸部152を有する。弁体110の中心部Cは、弁体110がハブ140の内部空間141に固定され、かつ、凸部152により押圧された状態で、管状部材130側に向けて凹んでいいる。弁体110の第1表面111側は、隙間121を規定する挿入部120の内面123同士が接触する方向に圧縮されている。弁体110は、ハブ140の内部空間141に固定された状態において、弁体110の中心部Cが管状部材130側に凹状に湾曲している。そのため、術者は、弁体110の内部に医療用長尺体300を挿入する際、第1表面111側から弁体110の中心部Cへ医療用長尺体300を容易に案内することができる。
【0059】
また、弁体110は、ハブ140の内部空間141に固定された状態で圧縮されている。弁体110は、弁体110の圧縮に伴って隙間121を規定する挿入部120の内面123に配置された被覆層125同士が接触している。したがって、弁体110は、弁体110がハブ140の内部空間141に固定された状態において、挿入部120の内面123に配置された被覆層125同士の物理的な密着状態を確保しつつ、挿入部120の内面123同士の化学的な再接着(再結合)を防止できる。そのため、弁体110は、弁体110がハブ140の内部空間141に固定された状態において、弁体110の挿入部120の内面123が閉じられることにより、血液の漏出を確実に防止できる。
【0060】
本実施形態に係るイントロデューサー10は、シースイントロデューサー100と、ダイレーター200と、を有する。ダイレーター200は、キャップ部材150の貫通孔151を介してシースイントロデューサー100の管状部材130の内腔部131に挿入可能なダイレーター本体210と、ダイレーター本体210の基端側に固定されるダイレーターハブ220と、を有する。弁体110の本体部115の厚さは、ダイレーター本体210の最大外径部の直径よりも小さい。本実施形態に係る弁体110によれば、本体部115に含まれる自己修復材料により、弁体110のシール性を向上させることができる。そのため、弁体110の厚さを小さくした場合においても、弁体110のシール性を良好に維持することができる。したがって、弁体110の厚さを、例えば、ダイレーター本体210の最大外径部の直径よりも小さくなるように形成することができる。これにより、弁体110の小型化を図ることができる。
【0061】
次に、変形例に係る弁体を説明する。変形例では既に説明した内容についての重複した説明を省略する。また、変形例において特に説明の無い内容については前述した実施形態と同様のものとすることができる。
【0062】
<変形例1>
図9には、変形例1に係る弁体110Aの斜視図を示す。
【0063】
弁体110Aは、例えば、第1本体部410と第2本体部420の二つの本体部で構成することができる。
【0064】
第1本体部410は、第1表面411と、第2表面412と、第1表面411と第2表面412の間に延びる外周面413と、を有する。
【0065】
第2本体部420は、第1表面421と、第2表面422と、第1表面421と第2表面422の間に延びる外周面423と、を有する。
【0066】
第1本体部410と第2本体部420は、ハブ140の内部空間141に重ね合わせて配置することができる。第1本体部410の第2表面412は、ハブ140の内部空間141において、第2本体部420の第1表面421に対向させて配置することができる。このように配置された二つの本体部410、420により、弁体110Aの本体部115を形成することができる。第1本体部410の第1表面411は、本体部115の第1表面111を形成する。第2本体部420の第2表面422は、本体部115の第2表面112を形成する。本体部115の外周面113は、重ねて合わせて配置された第1本体部410の外周面413と第2本体部420の外周面423により形成される。
【0067】
第1本体部410の第1表面411には、第1本体部410の厚み方向に延びる第1スリット部121aが形成されている。第1スリット部121aは、第1表面411から第2表面412に達する長さで延びている。第2本体部420の第2表面422には、第2本体部420の厚み方向に延びる第2スリット部121bが形成されている。第2スリット部121bは、第2表面422から第1表面411に達する長さで延びている。各スリット部121a、121bは、隙間121をなすスリットを構成する。
【0068】
変形例1に係る弁体110Aは、前述した弁体110と同様に、隙間121が自己修復材料によって閉じられることを抑制する被覆層が、弁体110Aの挿入部120の内面の少なくとも一部に設けられている。したがって、弁体110Aによれば、術者が弁体110Aに形成された隙間121に基づいて弁体110Aの挿入部120の位置を容易に把握することができ、かつ、術者が医療用長尺体300を弁体110Aに挿入する際の挿入抵抗が増加することを抑制できる。
【0069】
<変形例2>
図10には、変形例2に係る弁体110Bの断面図を示す。
【0070】
変形例2に係る弁体110Bは、隙間121が孔部で構成されている。隙間121をなす孔部は、弁体110Bの本体部115の厚み方向に沿って本体部115を貫通している。孔部を規定する挿入部120の内面123には被覆層125が設けられている。本変形例に示すように、隙間121は、弁体110Bの本体部115の内部へ医療用長尺体300を挿入可能に構成される限り、具体的な構造は特に限定されない。
【0071】
なお、隙間121をなす孔部は、弁体110Bがハブ140の内部空間141(図2を参照)に固定された状態において、弁体110Bの中心部C側に圧縮されることにより、孔部を規定する内面123同士が接触する。内面123に設けられた被覆層125は、孔部を規定する内面123が連結されて孔部が閉じられることを抑制できる。
【0072】
<他の変形例>
本発明に係る弁体は、弁体の第1表面(シースイントロデューサー100に適用された場合に、キャップ部材150側に配置される面)の少なくとも一部に隙間(例えば、スリットや孔部)を規定する内面を持つ挿入部が形成されていればよい。そのため、隙間は、弁体の厚み方向の全体に亘って形成されていなくてもよい。ただし、弁体に対する医療用長尺体300の挿通性が著しく低下することを抑制する観点より、隙間は、第1表面から本体部の厚みの半分以上の長さを有することが好ましい。
【0073】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態に係るコネクタ部材を説明する。本実施形態では既に説明した内容についての重複した説明を省略する。また、本実施形態において特に説明の無い内容については前述した実施形態や各変形例と同様のものとすることができる。
【0074】
図11には、弁体110を備えるコネクタ部材500を示す。コネクタ部材500は、例えば、弁体110が配置されていないハブを備えるカテーテル(例えば、ガイディングカテーテル)に接続して用いることができる。コネクタ部材500は、カテーテルの基端部に配置されたハブに接続されることにより、当該カテーテルと併用される医療用長尺体(ガイドワイヤーや他のカテーテルデバイス等)を弁体110に挿通した状態において、当該カテーテル内への空気の流入を防止でき、また当該カテーテルの基端からの血液のリークを軽減することができる。なお、コネクタ部材500が適用されるカテーテルの具体的な構造や品種等は特に限定されない。
【0075】
コネクタ部材500は、ハブ540を有する。ハブ540は、本体部540aと、コネクタ部540bと、を有する。
【0076】
本体部540aは、弁体110が配置された内部空間541を有する。内部空間541には弁体510を保持する段差部(図示省略)が設けられている。ハブ540には、弁体110を内部空間541に保持するキャップ部材550が取り付けられている。コネクタ部材500のハブ540の内部空間541の断面形状や構造、及びキャップ部材550の断面形状や構造等は、例えば、前述した実施形態に係るシースイントロデューサー100のハブ140やキャップ部材150(図2を参照)と同様のものとすることができる。
【0077】
本体部540aには、内部空間541と連通するサイドポート542が設けられている。サイドポート542には、チューブ180の一端部を接続することができる。チューブ180の他端部には、例えば、三方活栓170を接続することができる。なお、コネクタ部材500は、チューブ180及び三方活栓170を備えていなくてもよい。
【0078】
コネクタ部540bは、本体部540aから凸状に突出するオスコネクタ部545と、オスコネクタ部545に回転自在に保持されたスクリューアダプタ部546と、を有する。スクリューアダプタ部546は、オスコネクタ部545に対して抜け止めされた状態で接続されている。スクリューアダプタ部546は、オスコネクタ部545が延在する軸方向に沿って所定の距離だけ可動できる。術者は、カテーテルのハブにオスコネクタ部545を挿入した状態で、スクリューアダプタ部546を回転させつつ軸方向に移動させることにより、カテーテルのハブに対してコネクタ部材500を固定することができる。なお、カテーテルのハブに対してコネクタ部540bを固定するための具体的な構成は特に限定されない。
【0079】
本実施形態に係るコネクタ部材500は、弁体110の挿入部120において隙間121を規定する内面123に被覆層125が設けられているため、挿入部120の内面123同士が接触した状態であっても、弁体110が含む自己修復材料により、内面123同士が連結されて隙間121が閉じられてしまうことを抑制できる。そのため、弁体110は、術者が弁体110に形成された隙間121に基づいて弁体110の挿入部120の位置を容易に把握することができ、かつ、術者が医療用長尺体を弁体110に挿入する際の挿入抵抗が増加することを抑制できる。術者は、弁体110を備えないカテーテルに、コネクタ部材500を接続することにより、カテーテルの使用時に、当該カテーテル内への空気の流入を防止でき、また当該カテーテルの基端からの血液のリークを軽減することができる。
【0080】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る弁体、シースイントロデューサー、コネクタ部材を説明したが、本発明は説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0081】
明細書内において説明した各部の構造や部材の配置等は適宜変更することができ、また図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、その他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。
【0082】
本出願は、2019年11月29日に出願された日本国特許出願第2019-217241号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0083】
10 イントロデューサー
100 シースイントロデューサー
110、110A、110B 弁体
111 第1表面
112 第2表面
113 外周面
115 本体部
120 挿入部
121 隙間(スリット、孔部)
121a 第1スリット部
121b 第2スリット部
123 内面
125 被覆層
130 管状部材
131 内腔部
140 ハブ
141 内部空間
150 キャップ部材
151 貫通孔
152 凸部
200 ダイレーター
210 ダイレーター本体
220 ダイレーターハブ
300 医療用長尺体
410 第1本体部
420 第2本体部
500 コネクタ部材
C 弁体の中心部
t1 弁体の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11