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特許7627231無人飛行機の飛行制御システム及び地形計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】無人飛行機の飛行制御システム及び地形計測システム
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/20 20060101AFI20250129BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20250129BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20250129BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20250129BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20250129BHJP
   G01C 7/04 20060101ALI20250129BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20250129BHJP
   B64U 10/10 20230101ALI20250129BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20250129BHJP
【FI】
B64C13/20 Z
B64C27/04
B64C39/02
B64D47/08
G01C15/00 103A
G01C15/00 103E
G01C15/00 102C
G01C7/04
G05D1/46
B64U10/10
B64U20/80
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021562703
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020044963
(87)【国際公開番号】W WO2021112158
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019220422
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド ロティ
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053003(JP,A)
【文献】特開2019-119221(JP,A)
【文献】特開2017-151008(JP,A)
【文献】特開2018-044913(JP,A)
【文献】特開2018-138923(JP,A)
【文献】特開2019-039868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/20
B64C 27/04
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 47/08
B64U 10/10
B64U 20/80
G01C 15/00
G01C 7/04
G05D 1/10
G05D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射体を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する無人飛行機の飛行制御システムであって、
前記トータルステーションは
パルス光の測距光を前記反射体に射出し、パルス光毎に該反射体で反射された測距光を受光して前記反射体の測距を行い測定データを取得する測距部と、
該測距部の光軸と平行、或は略平行な追尾光軸を有し、前記反射体を追尾する追尾部と、
前記追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、
TS-演算制御部とを具備し、
前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、
前記TS-演算制御部は、パルス光毎に取得した前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記受光信号から前記測定データを分離し、前記無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで取得する様構成し
前記追尾部が前記TS-データ伝送部と兼用され、前記追尾部は、追尾光を前記測距光と同サイクルでパルス発光し、パルス光とパルス光との発光間隔内で、追尾光を追加発光させ、追加発光の追尾光に前記測定データを重畳させて前記TS-データ伝送光とした無人飛行機の飛行制御システム。
【請求項2】
前記UAV-演算制御部は前記測定データに含まれる3次元座標に基づき無人飛行体の飛行を制御する様構成された請求項1の無人飛行機の飛行制御システム。
【請求項3】
前記受光器は、前記反射体を含み、該反射体の反射面に形成され光の一部を透過する反射膜と、該反射膜を介して前記TS-データ伝送光を受光する受光素子を有する請求項1又は請求項2の無人飛行機の飛行制御システム。
【請求項4】
反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する地形計測システムであって、
前記トータルステーションはパルス光の測距光を前記反射体に射出し、パルス光毎に該反射体で反射された測距光を受光して前記反射体の測距を行い測定データを取得する測距部と、
該測距部の光軸と平行、或は略平行な追尾光軸を有し、前記反射体を追尾する追尾部と、該追尾部の追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記TS-演算制御部は、パルス光毎に取得した前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、又前記UAV-演算制御部は前記受光信号から測定データを分離し、前記形状測定器の位置をリアルタイムで取得し、前記形状測定器の位置と前記形状データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成され
前記追尾部が前記TS-データ伝送部と兼用され、前記追尾部は、追尾光を前記測距光と同サイクルでパルス発光し、パルス光とパルス光との発光間隔内で、追尾光を追加発光させ、追加発光の追尾光に前記測定データを重畳させて前記TS-データ伝送光とした地形計測システム。
【請求項5】
前記UAV-演算制御部は前記測定データに含まれる3次元座標に基づき無人飛行体の飛行を制御する様構成された請求項4の地形計測システム。
【請求項6】
前記受光器は、前記反射体を含み、該反射体の反射面に形成され光の一部を透過する反射膜と、該反射膜を介して前記TS-データ伝送光を受光する受光素子を有する請求項4又は請求項5の地形計測システム。
【請求項7】
前記トータルステーションがTS-GNSS装置を有し、前記無人飛行機がUAV-GNSS装置を有し、前記TS-演算制御部は、前記TS-GNSS装置より測定データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を測定データと関連付ける様構成され、前記UAV-演算制御部は、前記UAV-GNSS装置により形状データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を前記形状データと関連付け、前記測定データと前記形状データとを前記GNSS時間を介して関連付ける様構成された請求項4の地形計測システム。
【請求項8】
前記形状測定器は地表を撮影するカメラであり、前記UAV-演算制御部は前記カメラで取得される画像データと前記TS-データ伝送光から得られる画像取得時の前記カメラの3次元座標から写真測量を行う請求項4又は請求項7の地形計測システム。
【請求項9】
前記形状測定器は地表の点群データを取得するレーザスキャナであり、前記UAV-演算制御部は前記レーザスキャナで取得される点群データと前記TS-データ伝送光から得られる点群データ取得時の前記レーザスキャナの3次元座標から前記点群データを地表系の3次元データに変換する請求項4又は請求項7の地形計測システム。
【請求項10】
反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する地形計測システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、データ伝送光受光部と、
TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、UAV-データ伝送光を発するUAV-データ伝送部と、前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、該形状データを前記UAV-データ伝送光に重畳し、
前記TS-演算制御部は、前記データ伝送光受光部で受光した前記UAV-データ伝送光より前記形状データを取得し、該形状データと測定データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成され
前記UAV-データ伝送部は、前記反射体の中心に設けられた発光素子を有し、該発光素子により前記UAV-データ伝送光を発する様構成された地形計測システム。
【請求項11】
前記トータルステーションがTS-GNSS装置を有し、前記無人飛行機がUAV-GNSS装置を有し、前記UAV-演算制御部は、前記UAV-GNSS装置により形状データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を前記形状データと関連付ける様構成され、前記TS-演算制御部は、前記TS-GNSS装置より測定データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を測定データと関連付け、前記測定データと前記形状データとを前記GNSS時間を介して関連付ける様構成された請求項10の地形計測システム。
【請求項12】
前記形状測定器は地表を撮影するカメラであり、前記TS-演算制御部は前記測定データに基づき画像取得時の前記カメラの3次元座標を取得し、画像データ及び前記3次元座標から写真測量を行う請求項10の地形計測システム。
【請求項13】
前記形状測定器は地表の点群データを取得するレーザスキャナであり、前記TS-演算制御部は前記点群データと前記測定データから得られる点群データ取得時の前記レーザスキャナの3次元座標から前記点群データを地表系の3次元データに変換する請求項10の地形計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで無人飛行機に伝送する無人飛行機の飛行制御システム及び無人飛行機に形状測定器を搭載し、上空から地形計測を行う地形計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無人飛行機が普及発達し、無人飛行機を利用した写真撮影、小型貨物の運搬等が行われている。無人飛行機は、目視できる状態で遠隔操作されるか、或はGPSを利用して無人飛行機の位置が取得され設定されたプログラムに従って無人飛行が行われている。この場合、無人飛行機のリアルタイムでの飛行位置は高精度に要求されることはない。
【0003】
更に、地形の測定に航空写真に基づく写真測量が広く行われている。又、近年、無人飛行機にカメラを搭載し、上空から地上をカメラで撮影し、航空写真を取得する方法が普及している。
【0004】
又、無人飛行機にカメラを搭載し、上空からカメラで地上を撮影する場合に、無人飛行機に反射体を取付け、この反射体をトータルステーションにより追尾し、無人飛行機の位置を測定し、測定結果に基づき無人飛行機の撮影位置を特定し、撮影位置と画像に基づき地形計測をする方法がある。
【0005】
従来、無人飛行機の位置データはトータルステーションに保存され、測定終了後に、無人飛行機の撮影データと位置データとが付き合わされることで地形計測結果が演算されていた。従って、計測データはリアルタイムに見ることはできず、測定状態の判断は無人飛行機による写真撮影完了後、トータルステーションによる位置測定後となる。この為、測定状態が不充分と判断され、再測定となった場合、測定作業を再度最初から実行しなければならず、時間を大きくロスしていた。
【0006】
又、従来無人飛行機の位置データはトータルステーションに保存される為、無人飛行機が自身の飛行位置をリアルタイムで知る為には、別途位置測定器を必要とし、システムも構成が複雑になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-1450号公報
【文献】特開2015-145784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、トータルステーション、無人飛行機を用いた無人飛行機の飛行制御システム又は地形計測システムに於いて、トータルステーションで測定した無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで無人飛行体に伝送可能としたシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、反射体を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーション(TS)とを具備する無人飛行機の飛行制御システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、該追尾部の追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記TS-演算制御部は、前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記受光信号から測定データを分離し、前記無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで取得する様構成した無人飛行機の飛行制御システムに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記UAV-演算制御部は前記測定データに含まれる3次元座標に基づき無人飛行体の飛行を制御する様構成された無人飛行機の飛行制御システムに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記追尾部は、追尾光を所定サイクルでパルス発光し、発光間隔の時間区分内で前記TS-データ伝送光は追尾光及び反射追尾光と干渉しない様に発光される無人飛行機の飛行制御システムに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記追尾部が前記TS-データ伝送部と兼用され、前記追尾部は、発光間隔の時間区分内で前記TS-データ伝送光として追尾光を発光する無人飛行機の飛行制御システムに係るものである。
【0013】
又本発明は、前記受光器は、前記反射体を含み、該反射体の反射面に形成され光の一部を透過する反射膜と、該反射膜を介して前記TS-データ伝送光を受光する受光素子を有する無人飛行機の飛行制御システムに係るものである。
【0014】
又本発明は、反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーション(TS)とを具備する地形計測システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、該追尾部の追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記TS-演算制御部は、前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、又前記UAV-演算制御部は前記受光信号から測定データを分離し、前記形状測定器の位置をリアルタイムで取得し、前記形状測定器の位置と前記形状データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成された地形計測システムに係るものである。
【0015】
又本発明は、前記UAV-演算制御部は前記測定データに含まれる3次元座標に基づき無人飛行体の飛行を制御する様構成された地形計測システムに係るものである。
【0016】
又本発明は、前記追尾部は、追尾光を所定サイクルでパルス発光し、発光間隔の時間区分内で前記TS-データ伝送光は追尾光及び反射追尾光と干渉しない様に発光される地形計測システムに係るものである。
【0017】
又本発明は、前記追尾部が前記TS-データ伝送部と兼用され、前記追尾部は、発光間隔の時間区分内で前記TS-データ伝送光として追尾光を発光する地形計測システムに係るものである。
【0018】
又本発明は、前記受光器は、前記反射体を含み、該反射体の反射面に形成され光の一部を透過する反射膜と、該反射膜を介して前記TS-データ伝送光を受光する受光素子を有する地形計測システムに係るものである。
【0019】
又本発明は、前記トータルステーションがTS-GNSS装置を有し、前記無人飛行機がUAV-GNSS装置を有し、前記TS-演算制御部は、前記TS-GNSS装置より測定データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を測定データと関連付ける様構成され、前記UAV-演算制御部は、前記UAV-GNSS装置により形状データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を前記形状データと関連付け、前記測定データと前記形状データとを前記GNSS時間を介して関連付ける様構成された地形計測システムに係るものである。
【0020】
又本発明は、前記形状測定器は地表を撮影するカメラであり、前記UAV-演算制御部は前記カメラで取得される画像データと前記TS-データ伝送光から得られる画像取得時の前記カメラの3次元座標から写真測量を行う地形計測システムに係るものである。
【0021】
又本発明は、前記形状測定器は地表の点群データを取得するレーザスキャナであり、前記UAV-演算制御部は前記レーザスキャナで取得される点群データと前記TS-データ伝送光から得られる点群データ取得時の前記レーザスキャナの3次元座標から前記点群データを地表系の3次元データに変換する地形計測システムに係るものである。
【0022】
又本発明は、反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する地形計測システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、UAV-データ伝送光を発するUAV-データ伝送部と、前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、該形状データを前記UAV-データ伝送光に重畳し、前記TS-演算制御部は、前記UAV-データ伝送光より前記形状データを取得し、該形状データと測定データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成された地形計測システムに係るものである。
【0023】
又本発明は、前記トータルステーションがTS-GNSS装置を有し、前記無人飛行機がUAV-GNSS装置を有し、前記UAV-演算制御部は、前記UAV-GNSS装置により形状データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を前記形状データと関連付ける様構成され、前記TS-演算制御部は、前記TS-GNSS装置より測定データ取得時のGNSS時間を取得し、該GNSS時間を測定データと関連付け、前記測定データと前記形状データとを前記GNSS時間を介して関連付ける様構成された地形計測システムに係るものである。
【0024】
又本発明は、前記形状測定器は地表を撮影するカメラであり、前記TS-演算制御部は前記測定データに基づき画像取得時の前記カメラの3次元座標を取得し、画像データ及び前記3次元座標から写真測量を行う地形計測システムに係るものである。
【0025】
又本発明は、前記形状測定器は地表の点群データを取得するレーザスキャナであり、前記TS-演算制御部は前記点群データと前記測定データから得られる点群データ取得時の前記レーザスキャナの3次元座標から前記点群データを地表系の3次元データに変換する地形計測システムに係るものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、反射体を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する無人飛行機の飛行制御システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、該追尾部の追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記TS-演算制御部は、前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記受光信号から測定データを分離し、前記無人飛行機の飛行位置をリアルタイムで取得する様構成したので、前記無人飛行機は飛行中前記トータルステーションで測定した高精度の位置情報に基づき飛行を行うことができる。
【0027】
又本発明によれば、反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する地形計測システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、該追尾部の追尾光軸と平行又は略平行な光軸を有し、TS-データ伝送光を発するTS-データ伝送部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、前記TS-データ伝送光を受光し、受光信号を発する受光器と前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記TS-演算制御部は、前記測定データを前記TS-データ伝送光に重畳し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、又前記UAV-演算制御部は前記受光信号から測定データを分離し、前記形状測定器の位置をリアルタイムで取得し、前記形状測定器の位置と前記形状データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成されたので、前記無人飛行機は飛行中前記トータルステーションで測定した高精度の位置情報を取得でき、この位置情報に基づき高精度で地形計測を行うことができる。
【0028】
又本発明によれば、反射体及び該反射体と既知の位置に設けられた形状測定器を搭載した無人飛行機と該反射体を追尾し、該反射体の3次元座標を含む測定データを取得するトータルステーションとを具備する地形計測システムであって、前記トータルステーションは前記反射体を追尾する追尾部と、TS-演算制御部とを具備し、前記無人飛行機は、UAV-データ伝送光を発するUAV-データ伝送部と、前記無人飛行機の飛行を制御するUAV-演算制御部とを有し、前記UAV-演算制御部は前記形状測定器により形状データを取得し、該形状データを前記UAV-データ伝送光に重畳し、前記TS-演算制御部は、前記UAV-データ伝送光より前記形状データを取得し、該形状データと測定データとを関連付け、形状データ取得時の前記形状測定器の3次元座標を取得する様構成されたので、前記TS側で、前記形状測定器による測定結果を順次確認でき、再測定の判断ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施例の概略構成図である。
図2】本第1の実施例に用いられるトータルステーションの概略構成図である。
図3】本第1の実施例に用いられるUAVの概略構成図である。
図4】受光器の一例の構成図である。
図5】測距光、追尾光、TS-データ伝送光の発光タイミング、受光シャッタの作動タイミング、受光器の受光タイミングを示す説明図である。
図6】第2の実施例に用いられるトータルステーションの概略構成図である。
図7】第2の実施例に用いられるUAVの概略構成図である。
図8】第2の実施例に於けるUAVの光学系の概略図である。
図9】第2の実施例に於けるトータルステーションの光学系の概略図である。
図10】第2の実施例に於ける受光器の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0031】
図1は、第1の実施例に於ける本発明のデータ伝送方法を用いた航空写真測量システムの概略図である。
【0032】
航空写真測量システム1は、追尾機能を有する測量装置と無人飛行機(UAV3)によって構成されている。
【0033】
以下の説明では、追尾機能を有する測量装置2としてトータルステーションが用いられている。
【0034】
トータルステーション2は既知点(3次元座標が既知な点)に設けられる。該トータルステーション2は水平方向及び鉛直方向に回転可能な望遠鏡部5を有し、測定対象を視準し光波距離測定が可能となっている。又前記望遠鏡部5の鉛直角、水平角はそれぞれ鉛直角検出器、水平角検出器によって検出され、検出された鉛直角、水平角及び測距結果に基づき測定対象の3次元座標を測定可能となっている。
【0035】
又、前記望遠鏡部5は追尾機能を有し、再帰反射特性を有する測定対象(例えば、プリズム7)を追尾しつつ測定対象の測定が可能である。更に、測定対象を前記トータルステーション2で測定するので、得られる測定結果(3次元座標)は高精度である。
【0036】
前記UAV3は、遠隔操作による飛行、或は無人飛行(自律飛行)が可能であり、写真測量を行う為のカメラ6を有している。この場合、該カメラ6は形状測定器として機能し、該カメラ6が取得する画像(画像データ)は形状データに該当する。前記UAV3が自律飛行する為に必要なUAV3の位置データとしてはトータルステーションによるUAV3の測定結果(後述)或はUAV-GNSS装置27(後述)が取得した位置データを使用することができる。
【0037】
前記カメラ6は、前記UAV3が水平姿勢で鉛直となる撮像光軸を有する。或は前記カメラ6はジンバル機構を介して前記UAV3に設けられ、前記UAV3の姿勢に拘らず撮像光軸が常に鉛直となる様に設定されている。前記カメラ6としてはデジタル画像を取得可能な、カメラ或はビデオカメラが用いられ、該カメラ6は静止画像、連続画像が取得可能である。
【0038】
又、前記UAV3は、下面に測定対象として再帰反射特性を有する反射体が設けられる。該反射体としては、好ましくは全周プリズム7が用いられる。該プリズム7の光学基準位置と前記カメラ6の光学基準位置との関係は固定であり、位置関係は既知となっている。又、前記プリズム7の基準光軸は、前記カメラ6の撮像光軸と平行となっている。
【0039】
図2に於いて、前記トータルステーション2の概略を説明する。
【0040】
該トータルステーション2は、主にTS-演算制御部11、TS-記憶部12、測距部13、追尾部14、TS-データ伝送部15、測角部16、TS-GNSS装置17を具備している。
【0041】
前記測距部13は、光波距離計として機能し、測距光21を測定対象に向けて射出し、測定対象で反射された測距光21を受光し、射出タイミングと受光タイミングとの時間差と光速に基づき測定対象迄の距離を測定する。又、前記測距部13は前記TS-演算制御部11によって制御され、前記測距部13で取得された測定結果は前記TS-演算制御部11に入力される。尚、測距光21としてはパルス光が用いられる。
【0042】
該TS-演算制御部11としては、本装置に特化されたCPU、汎用CPU或は埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられる。前記TS-演算制御部11には前記TS-GNSS装置17から受信信号が入力され、前記TS-演算制御部11は受信信号から時刻信号(GNSS時間)を取得する。更に、該TS-演算制御部11は測距結果と測距時のGNSS時間とを関連付ける。
【0043】
前記追尾部14は、前記測距部13の光軸(測距光軸)と平行、或は略平行な光軸(追尾光軸)を有し、測距光21を照射するタイミングと同一、或は略同一なタイミングで追尾光22を追尾対象(即ち測定対象)に照射する。尚、追尾光22としてはパルス光が用いられる。
【0044】
又、前記追尾部14は追尾対象で反射された追尾光22を受光する受光部(図示せず)を有する。該受光部は反射追尾光の受光を制限或は禁止する追尾受光シャッタ(図示せず)を有する。又、前記受光部は、反射追尾光の受光部上での位置に基づき、受光部の基準位置からの偏差が求められ、受光部の受光結果は、前記TS-演算制御部11に入力され、該TS-演算制御部11は受光位置が基準位置に合致する様に前記望遠鏡部5の鉛直角、水平角を制御する。
【0045】
又、前記測距部13の受光部の受光信号及び、前記追尾部14の受光信号は相互に干渉しない様、波長を変更して光学的に分離されている。例えば、前記測距光21として赤色光が用いられ、前記追尾光22として赤外光が用いられる等、前記測距光21と前記追尾光22とで波長の異なる光が用いられ、波長選択膜、波長選択フィルタによって前記測距光21と前記追尾光22とが分離される。
【0046】
前記TS-データ伝送部15は、前記測距光軸或は追尾光軸と平行或は略平行な光軸(伝送光軸)を有し、前記追尾光22が発せられていない時間区分にTS-データ伝送光23を発光し、該TS-データ伝送光23を伝送光軸上に照射する。即ち、前記追尾光22、該追尾光22の反射光と前記TS-データ伝送光23とが時間的に干渉しない様に、追尾受光シャッタにより、前記追尾部14の受光部が受光を制限或は禁止されている時間区分に前記TS-データ伝送光23を発光する。
【0047】
前記TS-演算制御部11は、前記トータルステーション2で測定した測定データを前記TS-データ伝送光23に重畳する様、前記TS-データ伝送光23の発光を制御する。測定データを前記TS-データ伝送光23に重畳する方法としては、前記TS-データ伝送光23を光変調する、或は前記TS-データ伝送光23をパルス発光させ、パルス光のON/OFF制御で測定データを重畳する。
【0048】
尚、前記TS-データ伝送光23に重畳される測定データにはGNSS時間が関連付けられている。
【0049】
前記測角部16は鉛直角検出器18、水平角検出器19を有し、前記望遠鏡部5の視準方向、即ち測距光軸の鉛直角、水平角を検出する。尚、鉛直角、水平角の合成角を測距光軸の方向を示す方向角と称する。
【0050】
鉛直角、水平角は前記TS-演算制御部11に入力され、該TS-演算制御部11は鉛直角、水平角と前記測距部13の測距結果に基づき測定対象、或は測定点の3次元座標を測定する。
【0051】
前記TS-記憶部12としては、RAM、ROM、Flash ROM、DRAM、メモリカード、USBメモリ等の半導体記憶装置等が用いられる。
【0052】
前記TS-記憶部12には各種プログラムが格納されている。該プログラムには、前記測距部13、前記追尾部14、前記TS-データ伝送部15をそれぞれ制御する為、或は前記測距部13、前記追尾部14、前記TS-データ伝送部15間の同期制御する為の制御プログラムが含まれ、又、前記測距部13に測距を実行させる為の測距プログラム、前記追尾部14に追尾を実行させる為の追尾プログラム、前記TS-データ伝送部15にデータ伝送させる為のデータ伝送プログラム、前記測角部16に測角を実行させる為の測角プログラム、前記測距部13で得られる測距データ、前記測角部16で得られる測角データに基づき3次元座標を演算する演算プログラム、測距データ、測角データと前記TS-GNSS装置17から取得されるGNSS時間とを関連付けるプログラム等が含まれている。
【0053】
又、前記TS-記憶部12には、前記測距部13で得られる測距データ、前記測角部16で得られる測角データ、更に測定点或は測定対象の3次元データが保存される。以下、測距データ、測角データ、3次元座標データを総称して測定データとする。従って、測定データは、GNSS時間と関連付けられている。
【0054】
図3は、前記UAV3の概略を示している。
【0055】
該UAV3は、主にUAV-演算制御部25、UAV-記憶部26、UAV-GNSS装置27、受光器28、飛行制御部29、撮像制御部30を具備する。
【0056】
更に、前記UAV3は、前記飛行制御部29によって制御される所要数の飛行モータ31(図示では4個の飛行モータ31a,31b,31c,31dが示されている)、該飛行モータ31によって回転されるプロペラ32とを有する。又、前記UAV3は、前記撮像制御部30によって撮影が制御される前記カメラ6を有する。
【0057】
前記UAV-演算制御部25としては、本装置に特化されたCPU、汎用CPU、或は埋込みCPU、マイクロプロセッサ等が用いられ、該UAV-演算制御部25は前記UAV-記憶部26に格納された各種プログラムを実行し、各種演算を行い、或は前記飛行制御部29、前記撮像制御部30の統合制御を行う。
【0058】
尚、前記UAV-演算制御部25の機能の一部を前記飛行制御部29、前記撮像制御部30に割当ててもよい。
【0059】
前記UAV-記憶部26としては、RAM、ROM、Flash ROM、DRAM、メモリカード、USBメモリ等の半導体記憶装置等が用いられる。
【0060】
前記UAV-記憶部26には、各種プログラムが格納されている。該プログラムには、飛行を制御する為の飛行制御プログラム、自律飛行させる為の飛行計画プログラム、写真測量実行する為の演算プログラム、前記撮像制御部30を制御する為の撮像制御プログラム、前記UAV-GNSS装置27からGNSS時間を取得し、前記カメラ6の撮影画像にGNSS時間による撮影時刻を付加するプログラムと、前記TS-データ伝送部15より送信される測定データを前記カメラ6で取得した画像データとGNSS時間に基づき関連付けるプログラム、画像データ、測定データに基づき写真測量を行い、地形の測定を行うプログラム等が含まれる。
【0061】
図4を参照して、前記受光器28を説明する。
【0062】
該受光器28は主に、プリズムモジュール35と増幅器36とを有する。
【0063】
前記プリズムモジュール35は、入射する光線を再帰反射するプリズム7と該プリズム7の反射面に設けられた受光素子37とを有する。前記プリズム7は複数の反射面を有し、入射した光線は通常複数の反射面で複数回反射される。図示の例では、入射する光線は2つの反射面で2回反射されて、再帰反射される状態を示している。更に、図示の例では2つの前記反射面にそれぞれ一部透過の反射膜38が形成され、各反射面にそれぞれ前記受光素子37が設けられている。該反射膜38は、入射する光線の大部分を反射し、極一部を透過する光学特性であり、例えば、追尾光に於いては、入射する追尾光の10%を透過し、入射する追尾光の90%を反射する光学特性を有している。又、反射膜38は測距光に於いては、100%反射する特性を有し、TS-データ伝送光23の10%を透過する特性を有する。
【0064】
従って、前記プリズムモジュール35に追尾光が入射すると、追尾光の90%が再帰反射され、光線の10%が前記反射膜38を透過し、前記受光素子37によって検知される。該受光素子37は受光信号を出力し、受光信号は前記増幅器36によって増幅され、前記UAV-演算制御部25に入力される。尚、受光信号の増幅は、前記UAV-演算制御部25内で行ってもよい。尚、プリズムを複数個、水平に且つ放射状に並べて360度どの方向からでも検出可能となる様にしてもよい。
【0065】
以下、図5を参照して作用について説明する。
【0066】
前記望遠鏡部5で前記プリズム7を視準し、前記測距光21が照射され、該測距光21は前記プリズム7によって再帰反射され、反射測距光は前記測距部13で受光され、測距、測角が実行される。又、前記追尾光22、前記TS-データ伝送光23が照射される。前記追尾光22、前記TS-データ伝送光23と前記測距光21とは、同一光軸、或は略同一光軸であるので、前記追尾光22、前記TS-データ伝送光23は共に前記プリズム7に入射する。
【0067】
前記追尾光22は、前記プリズム7によって再帰反射され、反射追尾光は前記追尾部14で受光され、前記プリズム7を追尾、即ち前記UAV3を追尾する。
【0068】
図5に示される様に、前記測距光21、前記追尾光22は共にパルス光であり、又同一タイミングで発光される。パルス光の発光サイクルは、例えば、50Hzである。又、前記追尾部14に設けられたシャッタが、前記追尾光22の発光のタイミングから所定時間t1だけ開放され、前記追尾部14の受光部は、前記追尾光22の反射光を受光できる。前記測距光21は、波長が違う為前記追尾光22とは干渉せず、前記測距光21のタイミングから所定時間後、前記測距部13に受光される。上記した様に、前記測距光21、前記追尾光22の反射光は光学的に分離されるので、同一タイミングで反射光が受光されても支障ない。
【0069】
前記所定時間t1は、前記追尾光22が発光され、前記プリズム7(測定対象)で反射され戻ってくる迄の往復時間より長く設定される。
【0070】
発光のタイミングからt2(>t1)時間経過後から、次にパルス発光される迄の時間区分にTS-データ伝送光23が発光される。このTS-データ伝送光23には、前の時間区分で測定された測定データが重畳される。例えば、図5に於けるP2区分で発光される前記TS-データ伝送光23にはP1区分で発光された測距光により測定された測定データが重畳される。
【0071】
尚、パルス光の発光サイクルは、受光素子の処理速度(反応速度)で決定される。例えば前記追尾部14について、該追尾部14の受光部に用いられている受光素子としては、画素の集合であるCCD、CMOSが用いられるが、反射追尾光の検出では、画素1つ1つの出力を順番にチェックするので、全ての画素についてチェックが完了する迄、次のパルス光の受光ができない。従って、受光素子の応答性能によって、パルス光の発光サイクルが決定される。市販のデジタルカメラ、ビデオカメラに用いられている一般の受光センサを用いると、パルス光の発光サイクルは50Hz程度となる。尚、本実施例では50Hz程度の発光サイクルで充分な効果が得られる。
【0072】
前記TS-データ伝送光23は、シャッタが閉じられた時間区分に発光されるので、前記プリズム7により反射された反射データ伝送光が前記追尾部14に入射したとしても追尾受光信号に干渉することはない。
【0073】
前記プリズム7に入射した前記TS-データ伝送光23の一部は、前記反射膜38を透過して、前記受光素子37に受光される。該受光素子37から出力される受光信号は、前記増幅器36で増幅され、前記UAV-演算制御部25に入力される。
【0074】
ここで、前記受光素子37には前記測距光21、前記追尾光22も入射するが、前記受光素子37が出力する受光信号の波形が、前記測距光21、前記追尾光22と前記TS-データ伝送光23とは波長が異なっているので、容易に識別することができる。
【0075】
前記UAV-演算制御部25は、受光信号から重畳された測定データを分離する。測定データは、前記プリズム7、即ち前記カメラ6の3次元座標のデータであり、又GNSS時間と関連付けられている。又、前記UAV-演算制御部25は分離された測定データに基づき前記UAV3の飛行を制御する。更に、分離された測定データは、前記UAV-記憶部26に格納される。
【0076】
前記撮像制御部30は、前記UAV3の飛行中、所定時間間隔で前記カメラ6により地上の画像データを取得する。又、前記UAV-演算制御部25は、画像を取得した時のGNSS時間を前記UAV-GNSS装置27から取得し、前記カメラ6の撮像時の時間をGNSS時間で特定し、取得画像データとGNSS時間とを関連付ける。又、前記トータルステーション2で測定された前記プリズム7の3次元座標、即ち前記UAV3の3次元座標は、略リアルタイムで前記UAV3に送信され、且つ3次元座標とGNSS時間により紐付け(関連付け)されている。
【0077】
GNSS時間に関連付けられた画像データは前記UAV-記憶部26に格納される。前記UAV-演算制御部25は、前記UAV-記憶部26に格納された画像データ、測定データ及び前記トータルステーション2から送信された位置データに基づき写真測量を実行する。
【0078】
前記UAV-演算制御部25は、前記画像データが取得されたGNSS時間に基づき該GNSS時間に合致するトータルステーションから送信された位置データを検索又は内挿することにより、画像データが取得された3次元座標を特定する。而して、各画像データは3次元座標付きデータとなり、前記UAV-演算制御部25は、画像データに基づき写真測量を実行する。写真測量の結果は前記UAV-記憶部26に格納される。
【0079】
前記UAV-演算制御部25は写真測量を実行中、写真測量の結果の異常の有無の判断も並行して行う。従って、写真測量の異常の判断をフライト中に行うことができる。
【0080】
写真測量の結果の異常が判断された場合は、異常が判断された部分(領域)について、再度写真の取得、前記トータルステーション2による測定を実行する。従って、再測定は最小限の時間で行うことができる。
【0081】
又、飛行中に写真測量が実行されるので、前記UAV3が予定の飛行を終了した時点で必要なデータの取得は完了しており、測定は効率よく行える。
【0082】
又、前記トータルステーション2で測定された前記プリズム7の3次元座標、即ち前記UAV3の3次元座標は、略リアルタイムで前記UAV3に送信されるので、該UAV3は自身の飛行位置を略リアルタイムで認識できる。
【0083】
従って、飛行計画、測量計画等を予め前記UAV-記憶部26に格納しておけば、前記UAV-演算制御部25は、飛行制御プログラム、飛行計画プログラム及び前記トータルステーションから送信されたUAV3の3次元座標に基づき飛行計画、測量計画に沿って前記UAV3の高精度な自律飛行を可能とする。自律飛行により、遠隔操作をすることなく、測量を行うことができる。
【0084】
上記実施例では、前記受光器28はプリズムモジュール35と増幅器36とを有し、該プリズムモジュール35がプリズム7と該プリズム7の反射面に設けた反射膜38、受光素子37で構成されたが、前記TS-データ伝送光23の光路中に該TS-データ伝送光23の一部を反射する一部反射ミラーを設け、該反射ミラーで反射された反射光を受光素子で検出する様にしてもよい。
【0085】
更に、前記受光器28を前記プリズム7と分離した構成としてもよい。即ち、前記TS-データ伝送光23のみを受光する光学系を設け、該光学系を介して前記受光素子37で前記TS-データ伝送光23を受光する様にしてもよい。
【0086】
又上記実施例では、前記追尾部14とは別に前記TS-データ伝送部15を設けたが、前記追尾部14にデータ伝送の機能を付加し、前記TS-データ伝送部15を兼用させ該TS-データ伝送部15を省略してもよい。
【0087】
追尾に必要な追尾光は、所定サイクルで発光されるパルス光でよいので、パルス光とパルス光との間の時間区分中、追尾光を追加発光させ、追尾光に測定データを重畳させる。即ち、上記したデータ伝送光が発せられる時間区分に測定データを重畳させた追尾光を発光させ、追尾光をデータ伝送光として使用する。
【0088】
更に、上記実施例では、地上の形状を測定する形状測定器としてカメラを用いたが、カメラの代りに形状測定器としてレーザスキャナを用いてもよい。レーザスキャナを用いた場合、地上の形状を測定するデータとして点群データ(スキャナデータ)が取得される。
【0089】
該点群データ取得時の前記レーザスキャナの位置を前記データ伝送光から取得することで、点群データを地表系の(前記トータルステーション2を基準とした)3次元座標に変換することができる。
【0090】
更に又、本実施例では、前記形状測定器を省略し、トータルステーションで測定した正確なUAV3の飛行位置を、略リアルタイムでトータルステーションからUAV3に伝送し、前記UAV3の自律飛行を可能としたシステムとして構成してもよい。
【0091】
この場合、光が到達する距離は1km以上であり、広範囲での自律飛行が可能となる。更に、データ伝送に必要な構成は、トータルステーションが具備している構成を利用でき、システム構成が簡単である。
【0092】
図6図9を参照して、第2の実施例について説明する。
【0093】
上記実施例では、UAV3に伝送された測定データと該UAV3で取得した画像データとを該UAV3のUAV-演算制御部25で関連付け、UAV-記憶部26に格納したが、前記UAV3で取得した画像データをトータルステーション2に伝送し、該トータルステーション2で画像データと測定データとを関連付けTS-記憶部12に格納する様にしてもよい。
【0094】
尚、図6図7中、図2図3中で示したものと同一、同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
又、前記トータルステーション2でUAV3の再帰反射体を追尾し、前記UAV3の飛行位置を取得することは第1の実施例と同様である。
【0096】
前記トータルステーション2は前記UAV3からのUAV-データ伝送光39(後述)を受光する受光センサ41、及び該受光センサ41から出力される受光信号を復調し、重畳された信号を分離する復調器42を有する。該復調器42で分離された信号はTS-演算制御部11に入力され、更に前記TS-記憶部12に格納される。尚、重畳された信号は、後述する様にカメラ6が取得した画像データ又はスキャナデータ(形状データ)である。
【0097】
前記TS-記憶部12には、上記した各種プログラムが格納される。更に、前記TS-記憶部12には、前記復調器42で検出された信号と前記トータルステーション2で取得した測定データとをGNSS時間に基づき関連付ける為のデータ処理プログラム、画像データ、測定データに基づき写真測量を行い、更に地形の測定を行うプログラムが格納されている。
【0098】
前記UAV3は前記UAV-データ伝送光39を発するUAV-データ伝送部43を有する。該UAV-データ伝送部43は発光部44及び変調器47を有し、前記発光部44は更に、発光素子45、該発光素子45を駆動する為のドライバ46を含んでいる。
【0099】
前記発光部44には前記UAV-演算制御部25によって制御される前記変調器47からの変調信号が入力される。前記ドライバ46が変調信号に基づき前記発光素子45を発光させることで前記発光部44は光変調され、前記UAV-データ伝送部43からはデータが重畳されたUAV-データ伝送光39が発せられる。
【0100】
前記UAV-データ伝送光39に重畳されるデータは、前記カメラ6で取得された画像データであり、更にUAV-GNSS装置27から取得したGNSS時間が関連付けられた画像データである。
【0101】
写真測量を行う為に、画像データには撮像時の位置データ(3次元座標データ)が関連付けられるが、画像データと位置データとの関連付けは前記トータルステーション2の前記TS-演算制御部11で行われる。
【0102】
前記TS-演算制御部11は、前記UAV-データ伝送光39よりGNSS時間に関連付けられた画像データを分離し、該画像データ及び測定データを前記TS-記憶部12に格納する。
【0103】
前記TS-演算制御部11は、前記TS-記憶部12に格納された画像データ、前記トータルステーション2で取得した測定データをGNSS時間に基づき抽出し、特定された画像データ、測定データに基づき写真測量を実行する。写真測量の結果は前記TS-記憶部12に格納される。
【0104】
又、前記TS-演算制御部11は写真測量を実行中、写真測量の結果の異常の有無の判断も並行して行う。従って、写真測量の異常の判断を略リアルタイムで行うことができる。
【0105】
又、飛行中に写真測量が実行されるので、前記UAV3が予定の飛行を終了した時点で必要なデータの取得は完了しており、測定は効率よく行える。
【0106】
第2の実施例では、写真測量、画像、測定のデータ処理等が前記トータルステーション2で実行されるので、作業者はより簡便に測定状態、測定結果をリアルタイムで観察することができる。
【0107】
図8図9は第2の実施例に於ける光学系の概略を示している。
【0108】
図8は、前記UAV3に設けられるUAV-データ伝送部43、受光器28を示している。該受光器28については、図4で示した受光器28と同一の構成となっている。
【0109】
前記UAV-データ伝送部43の光軸とプリズムモジュール35の光軸とは、平行又は略平行となっている。
【0110】
前記UAV-データ伝送部43に設けられる前記発光素子45は、前記変調器47からの変調信号に基づき前記ドライバ46によって駆動され、UAV-データ伝送光39が発せられる。該UAV-データ伝送光39は集光レンズ48によって追尾光の光束と略同じ広がりを持った光束(約2度)とされ、前記トータルステーション2に向って射出される。
【0111】
図9は、前記トータルステーション2の望遠鏡部5(図1参照)の光学系を示している。
【0112】
測距光源51から発せられた測距光はレンズ52、ミラー53,54を経て測定対象に射出され、追尾光源55から発せられた追尾光はミラー56,54を経て測定対象に射出される。測距光と追尾光は同一光軸上に射出され、又測距光と追尾光は相互に干渉しない様に波長が異なっている。
【0113】
測定対象で反射された反射測距光、反射追尾光は集光レンズ57に入射し、該集光レンズ57によって集光される。反射測距光、反射追尾光はダイクロイックミラー58によって反射測距光、反射追尾光に分離され、反射測距光は受光素子60によって受光され、反射追尾光は受光素子61よって受光される様になっている。
【0114】
上記測距・追尾光学系とは別にデータ伝送光受光部63が設けられている。
【0115】
該データ伝送光受光部63は前記測距・追尾光学系の光軸と平行、或は略平行な光軸を有し、該光軸上に受光レンズ65、バンドパスフィルタ66、受光センサ41(図6参照)が配設されている。
【0116】
UAV-データ伝送光39は前記受光レンズ65から入射し、前記バンドパスフィルタ66は前記UAV-データ伝送光39から変調成分を分離し、変調成分は前記受光センサ41に入射する。該受光センサ41は受光信号を発し、復調器42に入力する(図6参照)。
【0117】
該復調器42での信号処理等については上記実施例と同様であるので省略する。
【0118】
而して、前記UAV3からの画像信号が前記トータルステーション2に伝送される。
【0119】
図10は、発光素子45、受光器28を一体化した実施例を示している。
【0120】
尚、図10中、図4中で示したものと同一、同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0121】
プリズム7の中心に、図示では反射面の境界位置に発光素子45を設ける。該発光素子45の発光面の位置は、前記反射面により反射されるTS-データ伝送光23を遮らない様に、前記反射面より後退しているか、或は前記反射面の境界位置より後退していることが望ましい。
【0122】
前記発光素子45はドライバ46によって駆動され、光変調されたUAV-データ伝送光39を発光する。
【0123】
又、前記プリズム7は反射体として、測距光、追尾光を再帰反射すると共に追尾光に重畳された測定データを検出する。
【0124】
本実施例では、測定対象としてのプリズム7と、受光部、発光部44とが前記プリズム7に集約され、一体化されるので極めて小型化、軽量化されるという利点がある。
【符号の説明】
【0125】
1 航空写真測量システム
2 トータルステーション
3 UAV
5 望遠鏡部
6 カメラ
7 プリズム
11 TS-演算制御部
13 測距部
14 追尾部
15 TS-データ伝送部
16 測角部
17 TS-GNSS装置
21 測距光
22 追尾光
23 TS-データ伝送光
25 UAV-演算制御部
27 UAV-GNSS装置
28 受光器
29 飛行制御部
30 撮像制御部
37 受光素子
39 UAV-データ伝送光
41 受光センサ
42 復調器
43 UAV-データ伝送部
44 発光部
45 発光素子
47 変調器
51 測距光源
55 追尾光源
58 ダイクロイックミラー
63 データ伝送光受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10