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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/14 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
F01L1/14 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022006245
(22)【出願日】2022-01-19
(65)【公開番号】P2023105429
(43)【公開日】2023-07-31
【審査請求日】2024-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 典良
(72)【発明者】
【氏名】高橋 育朗
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256716(JP,A)
【文献】特開2017-53469(JP,A)
【文献】特開2020-176550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤の存在下で用いられる摺動部材であって、
母材で構成された摺動面と、
前記摺動面に設けられている凹部と、
を備え、
前記摺動面が下記式で表される条件を満たす、摺動部材。
2≦α/Ra≦100
式中、αは前記摺動面における前記凹部が形成されていない部分の面積に対する前記摺動面における前記凹部の総容積の比を示し、Raは前記摺動面における前記凹部が形成されていない部分における中心線平均粗さを示す。
【請求項2】
前記凹部が渦巻状の溝又は同心円の複数の溝である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記凹部が直線状に延びる溝である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記凹部が放射状に延びる複数の溝である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項5】
前記溝は、長さLと、平均幅Wとを有し、
前記平均幅Wに対する前記長さLの比L/Wが2以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項6】
前記溝は、平均幅Wと、平均深さDとを有し、
前記平均深さDに対する前記平均幅Wの比W/Dが1よりも大きい、請求項2~5のいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項7】
相手部材との相対滑り速度が1.4m/s以下の環境で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は潤滑剤存在下で使用される摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が備えるバルブ駆動機構において、バルブリフタ等の摺動部材が用いられている。バルブリフタは、カムシャフトのカムの外周面に対して摺接し、カムシャフトの回転をバルブの開閉に作用させる。摺動部材における摺動抵抗を低減するため、従来、種々の取り組みがなされている。例えば、特許文献1は、摺動面にダイヤモンドライクカーボン処理が施され且つ複数の微小凹部が形成された摺動部材を開示している。特許文献2は、摺動面となる硬質炭素皮膜と、摺動面における摺動方向と直交する方向の中心から端部方向へ深さ分布が油膜厚さ分布に応じて変化する凹部とを有する摺動部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-9080号公報
【文献】特開2004-278705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の摺動部材は、ダイヤモンドライクカーボン等の硬質皮膜を備えるため、耐摩耗性に優れ、流体潤滑領域での摩擦低減効果は良好であるが、境界潤滑領域のような低摺動速度(高荷重下)では、流体潤滑領域に比べると摩擦係数が高く、改善の余地があった。
【0005】
本開示は、ダイヤモンドライクカーボン皮膜が摺動面に設けられていない摺動部材であって、摺動速度が比較的低い条件下において優れた摩擦低減効果を達成できる摺動部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る摺動部材は、潤滑剤の存在下で用いられる摺動部材であって、母材で構成された摺動面と、当該摺動面に設けられている凹部とを備え、摺動面が下記式で表される条件を満たす。
2≦α/Ra≦100
式中、αは摺動面における凹部が形成されていない部分の面積に対する摺動面における凹部の総容積の比(凹部の総容積/凹部の形成されていない部分の面積)を示し、Raは摺動面における凹部が形成されていない部分における中心線平均粗さを示す。
【0007】
上記のとおり、摺動面が母材で構成されているということは、すなわち、摺動面に硬質皮膜が形成されていないことを意味する。硬質皮膜は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン皮膜、イオンプレーティング膜及び硬質メッキである。かかる摺動面が上記の条件を満たすことで、摺動速度が比較的低い条件下において優れた摩擦低減効果を達成できる。すなわち、摺動面に硬質皮膜を形成していない母材の凹部周辺部が弾性変形して凹溝内の潤滑剤を押し出すポンプ効果と、摺動面と相手部材との間に潤滑剤を引き込むくさび効果とにより、圧力発生域の摺動方向への油膜供給量が増大し、摺動部材間の潤滑状態が流体潤滑状態に近づき、摩擦低減効果が発現する。
【0008】
摺動面における凹部の形態は、例えば、溝(細長いくぼみ)である。平面視において、溝の長さをLとし、溝の平均幅をWとしたとき、平均幅Wに対する長さLの比L/Wは2以上であることが好ましい。溝は直線状に延びていてもよいし、渦巻状であってもよい。凹部は、放射状に延びる複数の溝であってもよいし、同心円の複数の溝であってもよい。凹部の形態が渦巻状の溝又は同心円の複数の溝である場合、摺動時において相手部材が平均的に摺動面における凹部の影響を受けるため、より効果的に摩擦低減効果を達成できる。なお、溝の平均幅Wは、溝の長さにもよるが、溝の延在方向に均等の間隔をあけた複数個所(例えば、5箇所)について幅を測定し、その平均値を意味する。
【0009】
溝の平均幅をWとし、溝の平均深さをDとしたとき、平均深さDに対する平均幅Wの比W/Dが1よりも大きいことが好ましい。かかる条件を満たすことで、十分な量の潤滑剤を蓄えることができ、また、摺動時に蓄えられた潤滑剤が凹部から掃き出されることで、凹部が形成されていない部分に十分な量の潤滑剤を供給することができる。なお、溝の平均深さDは、溝の長さにもよるが、溝の延在方向に均等の間隔をあけた複数個所(例えば、5箇所)について深さを測定し、その平均値を意味する。
【0010】
本開示における摺動部材は、相手部材との相対滑り速度が1.4m/s以下の環境で使用されてもよい。本開示における摺動部材が上記環境で使用される場合、相手部材との相対滑り速度が1.4m/s超の環境で使用される場合と比べて、より効果的に摩擦低減効果を達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ダイヤモンドライクカーボン皮膜が摺動面に設けられていない摺動部材であって、摺動速度が比較的低い条件下において優れた摩擦低減効果を達成できる摺動部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)及び図1(B)は、本開示の一実施形態に係る摺動部材が適用される内燃機関の動弁機構の一部を示す断面図である。
図2図2は、図1に示すバルブリフタを示す断面図である。
図3図3は、バルブリフタの摺動面に形成された溝の一態様を模式的に示す上面図である。
図4図4は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図5図5は、溝の他の態様を模式的に示すバルブリフタの上面図である。
図6図6は、相手部材との相対滑り速度が1.4m/sの環境で使用された場合の実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
<動弁機構>
図1は、本開示の一形態に係る摺動部材が適用される内燃機関の動弁機構の一部を示している。図1(A)は、バルブリフタが上昇しバルブが閉じた状態の断面であり、図1(B)は、バルブリフタが降下してバルブが開いた状態の断面図である。
【0015】
図1(A)に示すバルブリフタ10は、本実施形態に係る摺動部材に対応するものであって、シリンダヘッド20のボア22内に設けられている。カム24はバルブリフタ10の摺動面11に対する相手部材である。カム24はカムシャフトに取り付けられ、駆動系等によるカムシャフトの回転に伴って回転する。カム24は回転の中心から外周摺動面までの距離が一定でないカムプロフィールを有するため、カム24の回転によってバルブリフタ10の摺動面11を押す力が変化する。図1(A)及び図1(B)に示すように、カム24の回転に伴って、バルブリフタ10がボア22内を移動して、バルブリフタ10に対して接続されるバルブ26の開閉操作が行われる。バルブ26は、外周に配置されたバルブスプリング28によって図示の上方(カム側)に常時付勢されている。バルブ26の開動作(図1(B)参照)は、カム24の突出部が、摺動面11を押圧したときに行われる。カムシャフト側に設けられる潤滑油供給手段(不図示)から潤滑油が供給されて、カム24及びバルブリフタ10が潤滑される。カム24がバルブリフタ10を押圧する力は、摺動面11の中心領域近傍にカム24の突出先端部(カムノーズ)が到達したときに最大となる。なお、カムシャフトの回転数が高くなると、バルブリフタ10との摺動速度も高まる。
【0016】
<バルブリフタ>
図2は、バルブリフタ10の断面図であり、図3は、バルブリフタ10の上面図である。これらの図に示すように、バルブリフタ10は、一方が開口した円筒形をしており、具体的には、円筒形のスカート部12と、スカート部12の中心軸線X方向の一端側である上端部にスカート部12に対して一体的に形成された冠部13とを有する。冠部13の下面(スカート部12側の主面)の中央付近に、円形状のボス部14が設けられている。ボス部14はバルブ26の上端(バルブステム)に対して当接する。スカート部12と摺動面11の境界には、テーパ状の面取り部が形成されている。
【0017】
摺動面11は、例えば、図3に示すように円形状であってもよい。摺動面が円形状である場合、そのうちの一部の領域(図3に破線で示す摺動範囲Sa)をカム24が図3に示す矢印Sの方向に摺動する。すなわち、矢印Sはカム24の摺動方向を示したものであり、一方向に回転するカム24と摺動面11との接点は、矢印Sに沿った方向に往復動する。破線で示した摺動範囲Saは矢印Sに沿って摺動するカム24の移動範囲を示したものである。カム24との摺動時に、バルブリフタ10をボア22内でその中心軸に回転させる目的で、カム幅の中央位置をバルブリフタ冠面の中心軸から外周側に若干オフセットした位置とすることがあり、カムの摺動範囲Saは、オフセットを考慮してカム幅よりも若干大きくしてよい。摺動面11はカム24が接し得る領域を意味する。
【0018】
バルブリフタ10の本体部(摺動面11、スカート部12、冠部13及びボス部14)は、母材により構成されている。母材の材質は特に制限されないが、例えば、鉄鋼材に熱処理したものを用いることができ、他にも鉄鋼材に浸炭、窒化、浸硫等の処理をしたものを用いてもよい。
【0019】
バルブリフタ10は、潤滑剤の存在下で用いられる。潤滑剤としては、例えば、エンジンオイルを用いることができる。なお、内燃機関の部品以外に適用する場合には、潤滑剤として、例えば、マシン油等の潤滑油、グリス等を用いることができる。
【0020】
潤滑剤は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は特に制限されないが、モリブデン、リン、硫黄、亜鉛、及びカルシウムから少なくとも一つ以上の元素を含むものを用いることが好ましい。添加剤がモリブデン、リン、硫黄、亜鉛、及びカルシウムから少なくとも一つ以上の元素を含むものであることで、摺動時に摺動面と相手部材の間にトライボ膜が生じやすくなり、摩擦低減効果を達成しやすい。トライボ膜は、潤滑剤中に含まれる添加剤が摺動面における母材に吸着し、摺動によって生じる温度、圧力が駆動力となって母材の成分と添加剤の成分とが反応することにより生じるものである。添加剤は、モリブデン、リン、硫黄、及びカルシウムから一つ以上の元素を含むものがより好ましい。
【0021】
図3に示すように、摺動面11には溝16(凹部)が設けられている。溝16は、摺動面11の中心軸線X(以下、単に「軸線X」という。)を中心とする渦巻状であり、摺動面11の外周側の端部から中央部(軸線X付近)の端部まで連続的に形成されている。溝16は、摺動面11に対してレーザを照射する手法によって形成することができる。例えば、溝16を形成前のバルブリフタを、軸線Xを中心として回転させた状態で、摺動面11の外周側から中心部に向けて径方向にレーザを照射する。このとき、バルブリフタの回転速度、レーザの移動速度及びレーザの照射強度等を制御することで、図3に示す溝16を形成することができる。使用し得るレーザとして、超短パルスレーザ及び直線偏光レーザが挙げられる。これらのうち、溝16を形成するレーザとしてパルス間隔がピコ秒からフェムト秒の超短パルスレーザを採用することが好ましい。
【0022】
摺動面11は、下記式で表される条件を満たす。
2≦α/Ra≦100
αは摺動面11における溝16が形成されていない部分の面積に対する摺動面11における溝16の総容積の比(凹部の総容積/凹部の形成されていない部分の面積)を示し、Raは摺動面11における溝16が形成されていない部分における中心線平均粗さを示す。
【0023】
摺動面11における溝16が形成されていない部分の面積は、例えば、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密製SURFCOM1400D)によって、JIS B 0601-2001に準じて測定を行い、計算により算出することができる。また、画像処理により面積を求めてもよい。測定条件としては、例えば、カットオフ値を0.25mm、評価長さを1.25mm、測定速度を0.3mm/sとし、触針として先端半径が2μmの60度円錐型の触針を用いることができる。なお、摺動面11における溝16が形成されている部分の面積も、例えば、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密製SURFCOM1400D)によって、JIS B 601-2001に準じて測定を行い、計算により算出することができる。また、画像処理により面積を求めてもよい。
【0024】
平面視において、溝16の長さをLとし、溝16の平均幅をWとしたとき、平均幅Wに対する長さLの比L/Wは、2以上であることが好ましい。溝16の平均幅Wは、例えば、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密製SURFCOM1400D)によって測定することができる。また、画像処理により平均幅を求めてもよい。
【0025】
溝16の平均幅をWとし、溝16の平均深さをDとしたとき、平均深さDに対する平均幅Wの比W/Dは、好ましくは1よりも大きく、より好ましくは10以上である。溝16の平均深さDは、例えば、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密製SURFCOM1400D)によって測定することができる。W/Dの値が1よりも大きいことで溝16内の潤滑剤が摺動面に供給されやすく、他方、500以下であると、摺動面11における溝16が形成されていない部分の面積を確保しやすい。レーザ加工で溝16を形成する場合、溝16の深さは、例えば、100~400nmである。
【0026】
摺動面11における溝16の容積は、例えば、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密製SURFCOM1800D)によって測定を行い、溝16の平均深さと摺動面11における溝16が形成されている部分の面積から算出することができる。
【0027】
摺動面11における溝16が形成されていない部分における中心線平均粗さは、JISB-0601によって決定される中心線平均粗さ(Ra)で表す。Raとは、原子間力顕微鏡を使用して4μmの評価長に対して測定される表面プロファイルを分析することによって得られる。摺動面11における凹部が形成されていない部分における中心線平均粗さRaは、例えば、0.5μm以下であってもよい。
【0028】
摺動面11におけるα/Raの値は、例えば、2~100であり、2~50又は2~10であってもよい。α/Raの値が2以上であると、摺動面11の表面の粗さに起因する抵抗が抑制される、又は、潤滑剤を押し出すポンプ効果とくさび効果により摺動面11における凹部が形成されていない部分に供給される潤滑剤の量が調整されることで優れた摩擦低減効果を達成される等の効果を生じる。また、α/Raの値が100以下であると、摺動面11における溝16が形成されていない部分に供給される潤滑剤の量が過剰になることを防ぎ、潤滑剤に起因する摺動抵抗の上昇を抑制できる。
【0029】
バルブリフタ10は、相手部材との相対滑り速度が1.4m/s以下の環境で使用されてもよい。バルブリフタ10が上記環境で使用される場合、相手部材との相対滑り速度が1.4m/s超の環境で使用される場合と比べて、より効果的に摩擦低減効果を達成できる。
【0030】
溝16の断面形状は特に限定されない。例えば、側面及び底面が曲面状に連続した形状であってもよいし、側面と底面とが明確に区別されるような形状であってもよい。更に、溝16内が二面で形成される所謂V溝状であってもよい。
【0031】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、一方の端部から他方の端部まで連続的に形成されている渦巻き状の溝16を例示したが、摺動面11におけるα/Raの値が2~100の範囲内になるような態様であれば、溝16は断続的に形成されていてもよい。また、凹部の態様は渦巻き状でなくてもよく、例えば、図4に示すように、同心円の複数の溝17が摺動面11に形成されたものであってもよい。複数の円環状の溝17もそれぞれの周方向に連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。図5に示すように、複数の直線状の溝18が摺動面11に形成されたものであってもよい。複数の直線状の溝18もそれぞれ連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。
【0032】
上記実施形態においては、摺動部材としてバルブリフタを例示したが、本開示に係る摺動部材をシム、ロッカーアーム、フィンガーフォロア等の動弁部品の摺動部、あるいは、ギヤ、軸受等の摺動部に適用してもよい。
【実施例
【0033】
以下、本発明について実施例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
摺動面が図3に示した構成と同様のバルブリフタを作製した。本実施例に係るバルブリフタの態様は以下のとおりである。
・バルブリフタの材質:SCM420
・摺動面の直径:28.5mm
・溝の態様:連続した渦巻き状
・溝の平均深さD:0.254μm
・溝の平均幅W:105μm
・摺動面における凹部が形成されていない部分の面積A:432.34mm
・摺動面における凹部の総容積V:0.032mm
・摺動面における凹部が形成されていない部分の面積A(単位:mm)に対する摺動面における凹部の総容積V(単位:mm)の比(α=V/A):0.074μm
・摺動面における凹部が形成されていない部分における中心線平均粗さ(Ra):0.024μm
・α/Ra:3.1
・溝の加工法:レーザ加工
【0035】
<実施例2~5、比較例1~2>
摺動面における溝の平均深さ、溝の平均幅、摺動面における凹部が形成されていない部分の面積、摺動面における凹部の総容積、Raを下記表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~5、比較例1~2のバルブリフタを作製した。
【0036】
<比較例3~5>
ダイヤモンドライクカーボン皮膜が摺動面に設けられていること以外は、実施例1と同様にして比較例3~5のバルブリフタをそれぞれ作製した。測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
<摩擦低減効果の確認>
作製された実施例1~5、比較例1~5のバルブリフタについて、モーターリング試験機によりバルブリフタの摺動面に対して相手部材の外表面を摺動させ、相手部材との相対滑り速度を0.6、0.9、1.4又は1.7に変更した場合のそれぞれトルク値を測定した。比較例4のトルク値を1として、それぞれのトルクの相対値を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
相対滑り速度1.4m/sの場合の実施例1~5及び比較例1~5の測定結果を図6に示す。
【符号の説明】
【0041】
11…摺動面、16…渦巻き状の溝、17…円環状の溝、24…カム
図1
図2
図3
図4
図5
図6