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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】与信審査結果推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20240101AFI20250129BHJP
   G06Q 20/40 20120101ALI20250129BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250129BHJP
【FI】
G06Q50/16
G06Q20/40
G06N20/00 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022016962
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023114573
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】512177207
【氏名又は名称】全保連株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】中村 比呂記
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伊達 悌洋
(72)【発明者】
【氏名】大河原 由衣
【審査官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-193490(JP,A)
【文献】特開2020-160913(JP,A)
【文献】特開2018-151773(JP,A)
【文献】特開2019-185595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
賃貸借契約における申請者の審査申込データを取得する取得手段と、
賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第1学習モデルを記憶する記憶手段と、
前記第1学習モデルを用いて、前記取得手段が取得した申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する第1与信審査結果が承認であるか否決であるかを推定する推定手段と、を有
前記記憶手段は、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の中長期滞納実績データ、貸倒・訴訟退去実績データと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第2学習モデルを記憶し、
前記推定手段は、前記第2学習モデルを用いて、前記推定手段によって第1与信審査結果が承認と推定された申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する最終的な第2与信審査結果を推定する、
与信審査結果推定システム。
【請求項2】
前記第2学習モデルによって出力される審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、アラートを出力するアラート手段をさらに有し、
前記推定手段は、前記アラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とする、
請求項に記載の与信審査結果推定システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の滞納実績データ、短期完済実績データと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第3学習モデルを記憶し、
前記推定手段は、前記第3学習モデルを用いて、前記推定手段によって第1与信審査結果が否決と推定された申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する最終的な第2与信審査結果を推定する、
請求項1または2に記載の与信審査結果推定システム。
【請求項4】
前記第3学習モデルによって出力される審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、アラートを出力するアラート手段をさらに有し、
前記推定手段は、前記アラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とする、
請求項に記載の与信審査結果推定システム。
【請求項5】
前記推定手段の判断において、判定に寄与したパラメータ、影響度を含む判定理由を出力する判定理由提示手段をさらに有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の与信審査結果推定システム。
【請求項6】
前記取得手段が取得した申請者の審査申込データと、当該申請者に対する最終的な与信審査結果である教師データとを含む学習データの集合に基づいて、前記第1学習モデルを再学習して、前記記憶手段に記憶させる再学習手段と、をさらに有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の与信審査結果推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、与信審査結果推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人や企業の社会的な信用度をスコアとして数値化するスコアリングシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、与信申請者の年齢、勤め先および年収等の信用度パラメータ、およびスコア算出式にしたがって、信用度を示すスコアを算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6561360号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、与信判定の精度を高めるためには、申請ノウハウに基づいて、総合的に与信審査を行うシステムの実現が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、与信審査を高精度かつ容易に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、賃貸借契約における申請者の審査申込データを取得する取得手段と、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第1学習モデルを記憶する記憶手段と、前記第1学習モデルを用いて、前記取得手段が取得した申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する第1与信審査結果が承認であるか否決であるかを推定する推定手段と、を有する与信審査結果推定システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、与信審査を高精度かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】与信結果推定における概要を示す図である。
図2】システムの構成の概略を示す図である。
図3】学習装置および推定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】学習装置および推定装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】与信結果推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
<概要>
以下、本実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る推定装置(与信結果推定装置、情報処理装置)が適用される与信結果推定の事例を示す図である。本実施形態では、通常の審査とリスクコントロールの2段階で与信審査を行う例について説明する。
通常の審査とは、従前、審査担当者が行ってきた与信審査を模した審査処理である。リスクコントロールとは、通常の審査結果に応じて、これまで看過していた非優良顧客や、取りこぼしていた優良顧客を抽出するための処理である。
【0010】
図1の例では、賃貸借契約等における与信申請者の審査申込データCDが入力されると、否決・承認スクリーニングCSがルールベースで行われる。否決・承認スクリーニングCSでは、過去の滞納歴や優良顧客情報等を参照して、ルールベースで否決か否かを判断する。当該スクリーニングにおいて、滞納歴に基づく否決の判断、また、優良顧客情報に基づく承認の判断がなされなかった場合に、次の審査工程が行われる。審査工程では、承認/否決判断CE1が行われ、判断の結果、承認CE2であるか否決CE3であるか判断される。審査工程では、判断の結果とともにスコア(例えば、0から100)が出力されるものとする。この際、判断理由提示CE4が行われる。判断理由としては、例えば、判断に寄与したパラメータや、当該パラメータの寄与度等が出力される。本実施形態における承認/否決判断CE1では、AI・機械学習により生成した分類器(第1学習モデル)、および審査申込データCDに基づいて判断される。
【0011】
さらに、リスクコントロール工程では、上述の審査工程において承認CE2と判断された場合は、非優良顧客判断RC1が行われ、判断の結果、承認RC3であるか否決RC4であるか判断される。非優良顧客判断RC1は、審査工程で承認された場合に、これまで看過していた非優良顧客を、与信申請データに加え、過去の契約後における実績データに基づいて判断する。本実施形態では、非優良顧客判断RC1では、AI・機械学習により生成した分類器(第2学習モデル)を用いて、審査申込データCDに基づいて判断される。
【0012】
また、リスクコントロール工程では、上述の審査工程において否決CE3と判断された場合は、優良顧客判断RC2が行われ、判断の結果、承認RC3であるか否決RC4であるか判断される。優良顧客判断RC2は、審査工程で否決された場合に、これまで取りこぼしていた優良顧客を、与信申請データに加え、過去の契約後における実績データに基づいて判断する。本実施形態では、優良顧客判断RC2では、AI・機械学習により生成した分類器(第3学習モデル)を用いて、審査申込データCDに基づいて判断される。
【0013】
なお、リスクコントロール工程において、承認RC3であるか否決RC4であるかは、非優良顧客判断RC1または優良顧客判断RC2において出力されるスコアと、所定の閾値Th1(例えば、70)とに応じて決定されるものとするが、当該スコアが所定の閾値Th1近辺である場合は、グレーゾーン抽出GEによって抽出され、与信審査の判断は、従前通り審査担当者による判断AJに委ねられる。グレーゾーン抽出GEは、与信審査の判断が自動的に判断しかねる場合に、審査担当者にアラートを行っていると捉えることもできる。審査担当者による承認または否決の判断結果は、リスクコントロール工程の結果として、出力される。なお、リスクコントロール工程においても、判断の結果とともにスコア(例えば、0から100)が出力されるものとする。また、この際にも上述の判断理由提示CE4と同様に、判断理由提示RC5が行われるものとする。
【0014】
リスクコントロール工程によって、承認または否決かが出力されると、審査回答書ERが作成および出力される。審査回答書ERには、与信申請者の情報や、与信工程またはリスクコントロール工程における与信結果、スコア、および判断理由等が示されるものとする。審査担当者は、審査回答書ERを参照して、与信申請者と契約COを行うか否かを判断する。以下、本実施形態における与信審査推定システムについて詳細に説明する。
【0015】
<システム構成>
図2は、本実施形態に係る与信審査結果推定システムのシステム構成の概要を示す図である。本実施形態に係る与信審査結果推定システムは、与信結果推定において用いる学習モデルの学習を行う学習装置1と、学習モデルを記憶するモデルDB2と、与信結果を推定する推定装置3(与信結果推定装置)とが、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続されることで構成される。
【0016】
<ハードウェア構成>
図3は、本実施形態に係る学習装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。学習装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0017】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。
【0018】
入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報を入力する。記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置との間で通信を行う。
【0019】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。なお、図示はしないが、推定装置3は、図3に示すハードウェア構成を有する。
【0020】
<機能構成>
図4は、本実施形態に係る学習装置1、モデルDB2、および推定装置3における機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0021】
≪学習装置1≫
学習装置1のCPU11においては、動作する際に、取得部111、前処理部112、学習部113、再学習部114等が機能する。
【0022】
取得部111は、AI・機械学習のための教師データ501を取得する。取得した教師データは、例えば、記憶部18に記録される。教師データ501には、図1に示す審査工程の承認/否決判断CE1において用いられる第1学習モデル、非優良顧客判断RC1において用いられる第2学習モデル、優良顧客判断RC2において用いられる第3学習モデルのそれぞれにおける学習を行うためのデータが含まれる。
【0023】
例えば、第1学習モデルの学習を行うための教師データとしては、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータと、当該申請者に対する与信審査結果とが挙げられる。審査申込時のデータとしては、申請者の国籍、性別、家賃、雇用形態、年収、生年月日等、および(賃貸借契約の対称に関する)地域性や立地に関するオープンデータ(一般に利用することが技術的に困難な社外のオープンデータ)が一例として挙げられる。与信審査結果としては、本実施形態では、承認および否決のいずれかが挙げられる。
【0024】
また、例えば、第2学習モデルの学習を行うための教師データとしては、上述の審査申込時のデータ、オープンデータに加えて、当該申請者における契約後の中長期滞納実績データ、貸倒・訴訟退去実績データ(中期滞納、貸倒、訴訟退去となるかどうかの契約後の入居者の履歴)と、当該申請者に対する与信審査結果とが含まれる。中長期滞納実績データは、例えば、申請者が賃貸契約を結んだ後における、家賃等の滞納に関するデータであって、特に中期または長期に渡り、家賃等の滞納を行った実績に関するデータである。貸倒・訴訟退去実績データは、例えば、申請者が賃貸契約を結んだ後における、家賃等の貸し倒しの有無や、回数、期間、および訴訟の末退去となった実績に関するデータである。
【0025】
また、例えば、第3学習モデルの学習を行うための教師データとしては、上述の審査申込時のデータ、オープンデータに加えて、当該申請者における契約後の滞納実績データ、短期完済実績データ(契約後の入居者の履歴)と、当該申請者に対する与信審査結果とが含まれる。滞納実績データは、例えば、申請者が賃貸契約を結んだ後における、家賃等の滞納の有無に関するデータである。短期完済実績データは、例えば、申請者が賃貸契約を結んだ後における、家賃等の滞納があった場合に、短期(所定の期間内に)完済したか否かに関するデータである。
【0026】
前処理部112は、学習のための教師データに対して、種々の前処理を行う。例えば、前処理の一例として、元データ(教師データ)に種々の処理を施して教師データの数を増やす処理(データ増強)が挙げられる。なお、前処理は行われなくてもよい。
【0027】
学習部113は、本実施形態では、上述の教師データを用いて、上述の第1学習モデル、第2学習モデル、第3学習モデルそれぞれの学習処理を行う。第1学習モデル、第2学習モデル、第3学習モデルは、上述の審査申込時のデータ等に基づいて、与信審査の結果を回帰により推定する推定エンジンである。第1学習モデル、第2学習モデル、第3学習モデルは、任意の教師あり学習アルゴリズムにより学習することができる。本実施形態では、学習アルゴリズムとして、勾配ブースティング(GBM)やディープニューラルネットワークなどを組み合わせたアンサンブル学習採用するものとするが、その他、サポート・ベクター・マシン(SVM)、Light GBM、ニューラルネットワーク等の種々の学習アルゴリズムを採用することができる。学習アルゴリズムの複数を組み合わせて一つの学習モデルを作成するアンサンブル学習では、自動的に最適なモデルが使用される。
【0028】
学習部113による学習処理の結果、上述の審査申込時のデータを入力として受け付け、申請者における与信審査の結果を推定する第1学習モデル、第2学習モデル、第3学習モデルが生成される。第1学習モデル、第2学習モデル、第3学習モデルは、与信審査の結果とともに、その信頼度(スコア)を出力するように構成されてもよい。
【0029】
再学習部114は、上述の審査申込時のデータ、および図1に示すリスクコントロールの結果出力された審査結果を教師データとして、第1学習モデルを所定の期間ごとに(例えば、月次)再学習する。これにより、世の中の動向に合わせて、学習モデル(第1学習モデル)における出力(審査結果)の精度を向上させることができる。なお、リスクコントロールの結果出力された審査結果(判定結果のフィードバック)は、取得部111によって取得されるものとする。再学習部114は、取得部111が取得した申請者の審査申込データと、当該申請者に対する最終的な与信審査結果である教師データとを含む学習データの集合に基づいて、第1学習モデルを再学習して、モデルDB2に記憶させると捉えることもできる。
【0030】
≪モデルDB2≫
モデルDB2は、上述の各学習モデルを記憶する学習モデルDB201が含まれる。なお、学習モデルは、学習装置1または推定装置3における記憶部に記憶されていてもよい。
【0031】
≪推定装置3≫
推定装置3のCPU31においては、動作する際に、取得部311、前処理部312、推定部313、判定理由提示部314、グレーゾーン抽出部315(アラート手段)、出力部316等が機能する。
【0032】
取得部311は、賃貸借契約における申請者の審査申込データ(与信審査データ、審査申込時のデータ)を取得する。取得した与信審査データは、推定装置3における不図示の記憶部に格納されるものとする。
【0033】
前処理部312は、取得部311が取得した申請者の審査申込データに対して、前処理を行う。例えば、前処理部312は、ルールベースで、申請者における過去の滞納歴に関するデータに基づいて、否決スクリーニングを行う。また、例えば、前処理部312は、ルールベースで、優良顧客リストに基づいて、承認スクリーニングを行う。
【0034】
推定部313は、モデルDB2の第1学習モデルを用いて、取得部311が取得した申請者の審査申込データに基づいて、申請者に対する与信審査結果(以下、第1与信審査結果と称する。)が承認であるか否決であるかを推定する。また、推定部313は、モデルDB2の第2学習モデルを用いて、第1与信審査結果が承認と推定された申請者の審査申込データに基づいて、申請者に対する最終的な与信審査結果(以下、第2与信審査結果と称する)を推定する。また、推定部313は、モデルDB2の第3学習モデルを用いて、第1与信審査結果が否決と推定された申請者の審査申込データに基づいて、申請者に対する最終的な第2与信審査結果を推定する。なお、推定部313は、与信審査結果、信頼度、および上述の与信審査において、判定に寄与したパラメータ(例えば、年収)と、当該パラメータにおける影響度(寄与度;例えば、40%)とを出力するものとする。
【0035】
判定理由提示部314は、推定部313の各与信審査結果において、判定に寄与したパラメータ、および影響度を含む判定理由を出力する。与信審査において、年収および雇用形態の寄与度がそれぞれ20%、40%である場合、その旨を判定理由として出力(提示)する。
【0036】
グレーゾーン抽出部315は、上述の第2学習モデルまたは第3学習モデルによって出力される審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、アラートを出力する。例えば、所定の範囲内としては、所定の閾値の前後数%の範囲(例えば、所定の閾値が70の場合、スコアが69~71の範囲)が挙げられる。上述のアラートは、例えば、与信審査の担当者端末(不図示)に出力され、その後の与信審査は、当該担当者によって行われるものとする。そして、推定部313は、上述のアラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とするとよい。
【0037】
出力部316は、推定部313によって出力される最終的な第2与信審査結果を、上述の学習装置1に対して出力する。学習装置1では、出力されたデータに基づいて、上述の再学習が行われる。
【0038】
<処理内容>
図5は、本実施形態に係る与信結果推定処理の一例を示す図である。
ステップS1において、取得部311は、審査申込データを取得する。
ステップS2において、前処理部312は、審査申込データに基づいて、上述の否決・承認スクリーニングを行う。これにより、過去の滞納歴等に応じて、特定の条件(例えば、いわゆるブラックリストや特定優良顧客等)に照らし合わせて、ルールベースによる否決(または承認)の判断ができるため、迅速に否決の判断を行うことができる。
【0039】
ステップS3において、推定部313は、第1学習モデルを用いて、上述の与信審査における承認/否決判断を行う(第1学習モデルの出力結果を取得する)。ステップS3における審査工程は、従前、与信担当者が行ってきた審査を自動化したものと捉えることもできる。すなわち、与信担当者によって長年蓄積されたノウハウに基づいてAI・機械学習を行った第1学習モデルによって、与信担当者による審査に近い結果を出力する。また、ステップS3において、判定理由提示部314は、与信審査結果において、判定に寄与したパラメータ、および影響度を含む判定理由を出力する。
【0040】
ステップS4において、推定部313は、ステップS3における与信審査の結果が承認であるか否決であるかを判断する。承認である場合は、ステップS5に進み、否決である場合は、ステップS6に進む。
【0041】
ステップS5において、推定部313は、第2学習モデルを用いて、上述の与信審査における承認/否決判断を行う(第2学習モデルの出力結果を取得する)。ステップS5におけるリスクコントロール工程では、ステップS3によって承認と判断された申請者のうち、従前看過ごされていた非優良顧客を判断するものと捉えることもできる。すなわち、審査申込データに基づくスコアは高いものの、過去の実績データに基づいて、中長期滞納や、貸倒、訴訟退去のリスクがある顧客を抽出する。
【0042】
ステップS6において、推定部313は、第3学習モデルを用いて、上述の与信審査における承認/否決判断を行う(第3学習モデルの出力結果を取得する)。ステップS6におけるリスクコントロール工程では、ステップS3によって否決と判断された申請者のうち、従前取りこぼしていた優良顧客を判断するものと捉えることもできる。すなわち、審査申込データに基づくスコアは低いものの、過去の実績データに基づいて、滞納しない、または滞納しても短期で完済する見込みのある顧客を抽出する。
【0043】
ステップS7において、グレーゾーン抽出部315は、ステップS5またはS6における審査結果の信頼度が所定の範囲内であるか否かを判断する。信頼度が所定の範囲内である場合は、ステップS8に進み、そうでない場合は、ステップS10に進む。
ステップS8において、グレーゾーン抽出部315は、ステップS5またはS6における審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、与信担当者端末に対してアラートを出力する。
ステップS9において、取得部311は、上述のアラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を取得する。
【0044】
ステップS10において、出力部316は、推定部313によって出力される最終的な第2与信審査結果を、上述の学習装置1に対して出力する。なお、推定部313は、上述のアラートに応じて、担当者が判断した場合、当該担当者の与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とするものとする。また、ステップS10において、判定理由提示部314は、与信審査結果において、判定に寄与したパラメータ、および影響度を含む判定理由を出力する。
【0045】
<本実施形態の有利な効果>
上述の実施形態によれば、過去の与信審査業務を運営する中で得られた大量のデータとノウハウ(与信審査結果)に基づいて学習した学習モデルを用いることで、精度の高い与信審査を、容易にかつ迅速に行うことができる。
また、上述の実施形態によれば、リスクコントロール工程として、過去の契約後における実績データに基づいて学習した学習モデルを用いることで、従前看過していた非優良顧客や、従前取りこぼしていた優良顧客を抽出することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0047】
(その他)
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、上述の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に上述の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、図4に特に限定されず、任意でよい。例えば、推定装置(サーバ)の機能ブロックを他の装置等に移譲させてもよい。逆に他の装置の機能ブロックを推定装置等に移譲させてもよい。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0048】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0049】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザ等にプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザ等に提供される記録媒体等で構成される。プログラムはネットワークを介して配信可能であることから、記録媒体は、ネットワークに接続された、或いは接続可能なコンピュータに搭載、或いはアクセス可能なものであってもよい。
【0050】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0051】
換言すると、本発明が適用される与信審査結果推定システムは、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
すなわち、賃貸借契約における申請者の審査申込データを取得する取得手段(例えば、取得部311)と、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第1学習モデルを記憶する記憶手段(例えば、学習モデルDB201)と、前記第1学習モデルを用いて、前記取得手段が取得した申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する第1与信審査結果が承認であるか否決であるかを推定する推定手段(例えば、推定部313)と、を有する与信審査結果推定システムである。これにより、与信担当者によって長年蓄積されたノウハウに基づいてAI・機械学習を行った第1学習モデルによって、与信担当者による審査に近い結果を出力することができる。
【0052】
また、前記記憶手段は、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の中長期滞納実績データ、貸倒・訴訟退去実績データと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第2学習モデルを記憶し、前記推定手段は、前記第2学習モデルを用いて、前記推定手段によって第1与信審査結果が承認と推定された申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する最終的な第2与信審査結果を推定するとよい。これにより、従前看過していた非優良顧客を抽出することができる。
【0053】
また、前記第2学習モデルによって出力される審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、アラートを出力するアラート手段(例えば、グレーゾーン抽出部315)をさらに有し、前記推定手段は、前記アラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とするとよい。これにより、最終的な第2与信審査結果として出力されるスコアが、閾値近辺である場合(自動化によって判断しかねる場合)に、与信担当者に判断を委ねることができる。
【0054】
また、前記第2学習モデルは、前記賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の中長期滞納実績データ、貸倒・訴訟退去実績データ、および一般に利用することが技術的に困難な社外のオープンデータと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された学習モデルであるとよい。これにより、与信担当者によって長年蓄積されたノウハウにより近い教師データに基づいてAI・機械学習を行った第2学習モデルによって、与信担当者による審査により近い結果を出力することができる。
【0055】
また、前記記憶手段は、賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の滞納実績データ、短期完済実績データと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された第3学習モデルを記憶し、前記推定手段は、前記第3学習モデルを用いて、前記推定手段によって第1与信審査結果が否決と推定された申請者の審査申込データに基づいて、前記申請者に対する最終的な第2与信審査結果を推定するとよい。これにより、従前取りこぼしていた優良顧客を抽出することができる。
【0056】
また、前記第3学習モデルによって出力される審査結果の信頼度が所定の範囲内である場合に、アラートを出力するアラート手段をさらに有し、前記推定手段は、前記アラートに応じて、担当者が判断した与信審査結果を、最終的な第2与信審査結果とするとよい。
請求項5に記載の与信審査結果推定システム。これにより、最終的な第2与信審査結果として出力されるスコアが、閾値近辺である場合(自動化によって判断しかねる場合)に、与信担当者に判断を委ねることができる。
【0057】
また、前記第3学習モデルは、前記賃貸借契約における過去の与信審査における申請者の審査申込時のデータ、当該申請者における契約後の滞納実績データ、短期完済実績データ、および一般に利用することが技術的に困難な社外のオープンデータと、当該申請者に対する与信審査結果とを教師データとしたAI・機械学習により予め生成された学習モデルであるとよい。これにより、与信担当者によって長年蓄積されたノウハウにより近い教師データに基づいてAI・機械学習を行った第3学習モデルによって、与信担当者による審査により近い結果を出力することができる。
【0058】
また、前記推定手段の判断において、判定に寄与したパラメータ、影響度を含む判定理由を出力する判定理由提示手段(例えば、判定理由提示部314)をさらに有するとよい。これにより、自動で行われる与信審査結果において、どのパラメータがどれほど結果に影響しているかを示すことができる。また、これにより、従前の与信担当者が、自己の判断において寄与したパラメータおよび寄与度と近いか否かを検証することができる。
【0059】
また、前記取得手段が取得した申請者の審査申込データと、当該申請者に対する最終的な与信審査結果である教師データとを含む学習データの集合に基づいて、前記第1学習モデルを再学習して、前記記憶手段に記憶させる再学習手段(例えば、再学習部114)と、をさらに有するとよい。これにより、世の中の動向に合わせて、学習モデル(第1学習モデル)における出力(審査結果)の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
3:推定装置 31:CPU 32:通信部
201:第1学習モデル 311:取得部 313:推定部
図1
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図3
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図5