(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置、及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20250129BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250129BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20250129BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20250129BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20250129BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 Y
H02J7/00 X
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022191255
(22)【出願日】2022-11-30
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161887(JP,A)
【文献】特開2022-044137(JP,A)
【文献】特開2021-044918(JP,A)
【文献】特開2016-126891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
G01R 31/382
G01R 31/385
G01R 31/392
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、
複数の前記蓄電池を所定の充電状態から所定の放電量だけ放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第1処理と、
前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を所定の放電状態まで放電させる第2処理と、
前記所定の放電状態まで放電した複数の前記蓄電池を所定の充電量だけ充電する第3処理と、
前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を前記所定の放電状態まで放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、
前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理と
を実行する蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記所定の放電量と前記所定の充電量とは、前記電圧推移情報における前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流に対応する範囲の一部と、前記電圧推移情報における前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流に対応する範囲の一部とが相互に重複するように設定されている請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記第3処理の実行時に前記蓄電池が前記バイパス回路により接続状態からバイパス状態に切り換えられた場合、当該蓄電池のバイパス状態を、前記第4処理においてバイパス状態の当該蓄電池と接続状態の前記蓄電池との放電容量が揃うまで維持する請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、
複数の前記蓄電池を所定の放電状態から所定の充電量だけ充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第1処理と、
前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を所定の充電状態まで充電する第2処理と、
前記所定の充電状態まで充電された複数の前記蓄電池を所定の放電量だけ放電させる第3処理と、
前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を前記所定の充電状態まで充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、
前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理と
を実行する蓄電池制御装置。
【請求項5】
前記所定の充電量と前記所定の放電量とは、前記電圧推移情報における前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流に対応する範囲の一部と、前記電圧推移情報における前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流に対応する範囲の一部とが相互に重複するように設定されている請求項4に記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
前記第3処理の実行時に前記蓄電池が前記バイパス回路により接続状態からバイパス状態に切り換えられた場合、当該蓄電池のバイパス状態を、前記第4処理においてバイパス状態の当該蓄電池と接続状態の前記蓄電池との充電容量が揃うまで維持する請求項4又は5に記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、
前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、
前記バイパス回路と前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置と
を備える蓄電システムであって、
前記蓄電池制御装置は、
複数の前記蓄電池を所定の充電状態から所定の放電量だけ放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流を記録する第1処理と、
前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を所定の放電状態まで放電させる第2処理と、
前記所定の放電状態まで放電した複数の前記蓄電池を所定の充電量だけ充電する第3処理と、
前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を前記所定の放電状態まで放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、
前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理と
を実行する蓄電システム。
【請求項8】
直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、
前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、
前記バイパス回路と前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置と
を備える蓄電システムであって、
前記蓄電池制御装置は、
複数の前記蓄電池を所定の放電状態から所定の充電量だけ充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流を記録する第1処理と、
前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を所定の充電状態まで充電する第2処理と、
前記所定の充電状態まで充電された複数の前記蓄電池を所定の放電量だけ放電させる第3処理と、
前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を前記所定の充電状態まで充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、
前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理と
を実行する蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御装置、及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池の健全度を示すSOH(State of Health)を推定するSOH推定装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載のSOH推定装置は、蓄電池の充電が終了すると、電圧検出部から蓄電池の電圧を取得すると共に、分極回復時間の計測を開始し、取得済みの電圧と再度取得される電圧との差分が所定電圧以上になると、分極回復時間の計測を終了する。そして、当該SOH推定装置は、計測した分極回復時間に基づいて、蓄電池のSOHを推定する。
【0003】
特許文献2に記載のSOH推定装置は、SOC(State of Charge)とOCV(Open Circuit Voltage)との相関関係を示すSOC-OCV曲線に基づいてSOCを特定し、特定したSOCに基づいて蓄電池のSOHを推定する。
【0004】
他方で、直列接続される複数の蓄電池毎にバイパス回路を備える蓄電システムが知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載の蓄電システムでは、蓄電池が全放電状態又は満充電状態に至った場合に、バイパス回路が、コントローラにより制御されて蓄電池を接続状態からバイパス状態に切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-148452号公報
【文献】特開2021-71320号公報
【文献】特開2022-29299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の蓄電システムにおいて、SOC-OCV曲線の取得を目的として蓄電池の放電を実施する場合を想定する。この想定において、複数の蓄電池の劣化状態に差がある場合、全ての蓄電池が全放電状態に至る途中で、劣化度がより高い蓄電池が先行して全放電状態に至り、当該蓄電池が接続状態からバイパス状態に切り換えられる。それにより、当該蓄電池についてのSOC-OCV曲線が、当該蓄電池の接続状態からバイパス状態への切り換えの時点で不連続になる。そのため、蓄電池毎にSOC-OCV曲線の取得を目的とした放電を行わなければならず、蓄電システムの運転の中断時間が長くなる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、蓄電池のバイパス状態と接続状態との切り換えが行われる蓄電池ストリングを備える蓄電システムにおいて、蓄電池の電圧推移情報を効率良く取得することができる蓄電池制御装置、及び蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電池制御装置は、直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、複数の前記蓄電池を所定の充電状態から所定の放電量だけ放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第1処理と、前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を所定の放電状態まで放電させる第2処理と、前記所定の放電状態まで放電した複数の前記蓄電池を所定の充電量だけ充電する第3処理と、前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を前記所定の放電状態まで放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理とを実行する。
【0009】
本発明の蓄電池制御装置は、直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、複数の前記蓄電池を所定の放電状態から所定の充電量だけ充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第1処理と、前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を所定の充電状態まで充電する第2処理と、前記所定の充電状態まで充電された複数の前記蓄電池を所定の放電量だけ放電させる第3処理と、前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を前記所定の充電状態まで充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理とを実行する。
【0010】
本発明の蓄電システムは、直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、前記バイパス回路と前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置とを備える蓄電システムであって、前記蓄電池制御装置は、複数の前記蓄電池を所定の充電状態から所定の放電量だけ放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流を記録する第1処理と、前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を所定の放電状態まで放電させる第2処理と、前記所定の放電状態まで放電した複数の前記蓄電池を所定の充電量だけ充電する第3処理と、前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を前記所定の放電状態まで放電させると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理とを実行する。
【0011】
本発明の蓄電システムは、直列に接続される複数の蓄電池と、前記蓄電池毎に設けられ前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備える蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、前記バイパス回路と前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置とを備える蓄電システムであって、前記蓄電池制御装置は、複数の前記蓄電池を所定の放電状態から所定の充電量だけ充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流を記録する第1処理と、前記所定の充電量だけ充電された複数の前記蓄電池を所定の充電状態まで充電する第2処理と、前記所定の充電状態まで充電された複数の前記蓄電池を所定の放電量だけ放電させる第3処理と、前記所定の放電量だけ放電した複数の前記蓄電池を前記所定の充電状態まで充電すると共に、前記蓄電池の電圧と前記蓄電池ストリングの電流とを記録する第4処理と、前記第1処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流と、前記第4処理で記録された前記蓄電池の電圧、及び前記蓄電池ストリングの電流とに基づいて、複数の前記蓄電池の充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する第5処理とを実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓄電池のバイパス状態と接続状態との切り換えが行われる蓄電池ストリングを備える蓄電システムにおいて、蓄電池の電圧推移情報を効率良く取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置を備える蓄電システムの概略を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すシステムコントローラが、蓄電池モジュールの放電容量と電圧との相関関係を示す放電容量-モジュール電圧曲線を取得する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールの放電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図2のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールの放電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図2のフローチャートに示す処理により生成した放電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図2のフローチャートに示す処理により生成した放電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【
図7】
図7は、
図2のフローチャートに示す処理により生成した放電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図1に示すシステムコントローラが、蓄電池モジュールの充電容量と電圧との相関関係を示す充電容量-モジュール電圧曲線を取得する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールの充電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図8のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールの充電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図8のフローチャートに示す処理により生成した充電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【
図12】
図12は、
図8のフローチャートに示す処理により生成した充電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【
図13】
図13は、
図8のフローチャートに示す処理により生成した充電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置100を備える蓄電システム1の概略を示す回路図である。この図に示すように、蓄電システム1は、m組(mは2以上の整数)の蓄電池ストリングSTR1~STRmと、ストリングバス3と、m個の電力変換器PC1~PCmと、蓄電池制御装置100とを備える。m組の蓄電池ストリングSTR1~STRmは、m個の電力変換器PC1~PCmとストリングバス3とを介して、相互に接続されると共に外部系統(図示省略)に接続されている。蓄電システム1は、定置用又は車載用の電源である。
【0016】
各蓄電池ストリングSTR1~STRmは、直列に接続されたn個(nは2以上の整数)の蓄電池モジュールM1~Mnを備える。特に限定するわけではないが、本実施形態の蓄電池モジュールM1~Mnは、中古の蓄電池を再生したものであり、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化状態に差がある。蓄電池モジュールM1~Mnは、例えば、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池である。
【0017】
蓄電池モジュールM1~Mnは、ストリングバス3及び電力変換器PC1~PCmを通じて外部系統から電力を供給されて充電され、充電された電力を、電力変換器PC1~PCm及びストリングバス3を通じて放電して外部系統に電力を供給する。
【0018】
外部系統は、負荷や発電機等を含む。蓄電システム1が定置用の場合には、家庭内の家電、商用電源系統等が負荷となり、太陽光発電システム等が発電機となる。他方で、蓄電システム1が車載用の場合には、駆動用モータ、エアコン、各種車載電装品等が負荷となる。なお、駆動用モータは負荷になり発電機にもなる。
【0019】
なお、蓄電池ストリングSTR1~STRmは、直列に接続されたn個の蓄電池モジュールM1~Mnに代えて、直列に接続されたn個の蓄電池セル又は蓄電池パックを備えてもよい。また、蓄電システム1は、各蓄電池セル又は各蓄電池パックをバイパスさせるバイパス回路を備えてもよい。
【0020】
電力変換器PC1~PCmは、DC/DCコンバータ又はDC/ACコンバータであり、ストリングバス3に接続されている。また、電力変換器PC1~PCmには、始端の蓄電池モジュールM1の正極と終端の蓄電池モジュールMnの負極とが接続されている。
【0021】
電力変換器PC1~PCmは、蓄電池ストリングSTR1~STRmの充電時に、ストリングバス3から入力された電圧を変換して複数の蓄電池モジュールM1~Mnに出力する。他方で、電力変換器PC1~PCmは、蓄電池ストリングSTR1~STRmの放電時に、複数の蓄電池モジュールM1~Mnから入力された電圧を変換してストリングバス3に出力する。なお、ストリングバス3を流れる電流が交流の場合には、電力変換器PC1~PCmは、瞬時値の変化に対して追従するための同期手段を備える。
【0022】
各蓄電池ストリングSTR1~STRmは、n個の電圧センサ12と、電流センサ13と、n個のバイパス回路B1~Bnとを備える。電圧センサ12は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正負極端子間に接続されている。この電圧センサ12は、各蓄電池モジュールM1~Mnの端子間電圧を測定する。
【0023】
電流センサ13は、蓄電池ストリングSTR1~STRmの電流経路に設けられている。この電流センサ13は、蓄電池ストリングSTR1~STRnの充放電電流(以下、ストリング電流という場合がある)を測定する。
【0024】
バイパス回路B1~Bnは、蓄電池モジュールM1~Mn毎に設けられている。バイパス回路B1~Bnは、バイパス線BLと、スイッチS1,S2とを備える。バイパス線BLは、各蓄電池モジュールM1~Mnをバイパスする電力線である。スイッチS1は、バイパス線BLに設けられている。このスイッチS1は、例えば半導体スイッチや機械式スイッチやリレーである。スイッチS2は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正極とバイパス線BLの一端との間に設けられている。このスイッチS2は、例えば半導体スイッチや機械式スイッチやリレーである。
【0025】
始端の蓄電池モジュールM1及び終端の蓄電池モジュールMnは、各電力変換器PC1~PCm及びストリングバス3を介して外部系統に接続されている。全てのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS1がオープンになりスイッチS2がクローズになった場合に、全ての蓄電池モジュールM1~Mnが外部系統に直列で接続される。他方で、何れかのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS2がオープンになり、スイッチS1がクローズになった場合に、当該バイパス回路B1~Bnに対応する蓄電池モジュールM1~Mnがバイパスされる。
【0026】
蓄電池制御装置100は、システムコントローラ101と、n個のストリングコントローラ102とを備える。システムコントローラ101は、電力変換器PC1~PCmを制御する。他方で、ストリングコントローラ102は、各バイパス回路B1~Bnを制御し、バイパス回路B1~Bnの状態(スイッチS1,S2のオープン/クローズ)についての情報をシステムコントローラ101に送信する。また、ストリングコントローラ102は、各電圧センサ12の検出信号と各電流センサ13の検出信号を受信してシステムコントローラ101に送信する。
【0027】
システムコントローラ101は、予め記憶したSOC-OCV曲線(後述の放電容量-モジュール電圧曲線、又は充電容量-モジュール電圧曲線)と、電圧センサ12及び電流センサ13の検出信号とに基づいて、蓄電池モジュールM1~MnのSOHやSOC等の電池状態の推定(以下、状態推定という)を実施する。特に、本実施形態では、システムコントローラ101が、SOHやSOC等の状態推定の基礎データとなるSOC-OCV曲線の取得を目的として、当該基礎データの取得が必要となる標的の蓄電池ストリングSTR1~STRmの放電処理又は充電処理を実行する。なお、システムコントローラ101は、放電容量-モジュール電圧曲線の取得を目的とした放電処理のみを実行してもよく、充電容量-モジュール電圧曲線の取得を目的とした充電処理のみを実行してもよい。また、システムコントローラ101は、放電容量-モジュール電圧曲線の取得を目的とした放電処理と、充電容量-モジュール電圧曲線の取得を目的とした充電処理との双方を実行してもよい。
【0028】
ここで、蓄電池モジュールM1~Mnの放電容量に対する所定の範囲をSOC=100%と定義する。SOCは、計測又は推定した蓄電池モジュールM1~Mnの電圧(OCVに相当する。以下、モジュール電圧という場合がある。)とSOC-OCV曲線とを照合することにより取得できる。
【0029】
現在の蓄電池モジュールM1~Mnの全容量は、SOC-OCV曲線の所定範囲の充放電容量をSOC=100%に換算することにより算出できる。また、SOHは、蓄電池モジュールM1~Mnの初期の全容量と現在の全容量との比を求めたり、初期と現在とでSOC-OCV曲線の所定範囲の容量の比を求めたりすることにより算出できる。なお、初期のSOC-OCV曲線と現在のSOC-OCV曲線との比較により、蓄電池モジュールM1~Mnの故障や実装の不具合等を判定することも可能である。
【0030】
図2は、
図1に示すシステムコントローラ101が、蓄電池モジュールM1~Mnの放電容量と電圧との相関関係を示す放電容量-モジュール電圧曲線(SOC-OCV曲線)を取得する処理を説明するためのフローチャートである。また、
図3及び
図4は、
図2のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールM1~Mnの放電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。さらに、
図5~
図7は、
図2のフローチャートに示す処理により生成した放電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【0031】
まず、
図2に示すステップS1において、システムコントローラ101は、SOHやSOC等の状態推定で用いる基礎データの更新が必要な標的の蓄電池ストリングSTR1~STRmを決定する。次に、ステップS2において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmに電力を入力する。この際、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnを満充電状態にする。また、ストリングコントローラ102は、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた充電終止電圧まで上昇する毎に、当該蓄電池モジュールM1~Mnに対応するバイパス回路B1~Bnにより当該蓄電池モジュールM1~Mnを接続状態からバイパス状態に切り換える。なお、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた充電終止電圧である状態が、
図3の(1)に示す状態、即ち、各蓄電池モジュールM1~Mnの満充電状態である。
【0032】
ここで、
図3に示すように、各蓄電池モジュールM1~Mnの放電容量には差がある。蓄電池モジュールM1~Mnは、劣化度が高いほど、放電容量が小さくなり、満充電状態から全放電状態までの時間が短くなる。
【0033】
次に、ステップS3において、システムコントローラ101は、ストリングコントローラ102に、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態から接続状態に切り換える指示を送信する。これにより、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnが直列接続された状態になる。
【0034】
次に、ステップS4において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録を開始する。ここで、ステップS5からステップS7までの間の電圧及び電流の記録を第1の記録と称する。他方で、ステップS12からステップS15までの間の電圧及び電流の記録を第2の記録と称する。
【0035】
次に、ステップS5において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流且つ低電流の放電を開始する。
【0036】
次に、ステップS6において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電量が所定の放電量に達したか否かを、電流センサ13により検出される放電電流の積算値に基づいて判定する。
図3の(2)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電量が所定の放電量に達した状態である。ステップS6で肯定判定がされた場合にはステップS7に移行し、ステップS6で否定判定がされた場合にはステップS6が繰り返される。
【0037】
ここで、「所定の放電量」は、第1の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線と、第2の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線とに重複する範囲が生じるように設定される。なお、「所定の放電量」の放電中に放電終止電圧に達した蓄電池モジュールM1~Mnは、バイパス回路B1~Bnにより接続状態からバイパス状態に切り換えられる。この場合、第1の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線と第2の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線とが不連続になる可能性がある。そのため、「所定の放電量」の放電中(第1の記録の実行中)に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生しないように、「所定の放電量」を設定することが好ましい。他方で、「所定の放電量」の放電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、スムージングや外挿等の処理が行われ、連続的な放電容量-モジュール電圧曲線が生成される。
【0038】
次に、ステップS7において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第1の記録)を停止する。
【0039】
次に、ステップS8において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~SRTmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnから電力を出力する。この際、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnを全放電状態にする。また、ストリングコントローラ102は、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた放電終止電圧まで低下する毎に、当該蓄電池モジュールM1~Mnに対応するバイパス回路B1~Bnにより当該蓄電池モジュールM1~Mnを接続状態からバイパス状態に切り換える。なお、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた放電終止電圧である状態が、
図3の(3)、及び
図4の(3)に示す状態、即ち、各蓄電池モジュールM1~Mnの全放電状態である。
【0040】
次に、ステップS9において、システムコントローラ101は、ストリングコントローラ102に、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態から接続状態に切り換える指示を送信する。これにより、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnが直列接続された状態になる。
【0041】
次に、ステップS10において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流の充電を開始する。
【0042】
次に、ステップS11において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの充電量が所定の充電量に達したか否かを、電流センサ13により検出される充電電流の積算値に基づいて判定する。
図4の(4)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの充電量が所定の充電量に達した状態である。
【0043】
ここで、「所定の充電量」は、第1の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線と、第2の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線とに重複する範囲が生じるように設定される。なお、「所定の充電量」の充電中に充電終止電圧に達した蓄電池モジュールM1~Mnは、バイパス回路B1~Bnにより接続状態からバイパス状態に切り換えられる。この場合、第1の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線と第2の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線とが不連続になる可能性がある。そのため、「所定の充電量」の充電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生しないように、「所定の充電量」を設定することが好ましい。他方で、「所定の充電量」の充電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、スムージングや外挿等の処理が行われ、連続的な放電容量-モジュール電圧曲線が生成される。
【0044】
ステップS11において肯定判定がされた場合にはステップS12に移行し、ステップS11において否定判定がされた場合にはステップS11が繰り返される。ステップS12において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第2の記録)を開始する。
【0045】
次に、ステップS13において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流且つ低電流の放電を開始する。ここで、システムコントローラ101は、ステップS11における充電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態を後述のステップS14の途中まで維持する。
【0046】
次に、ステップS14において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電が完了したか否かを、電流センサ13により検出される放電電流の積算値に基づいて判定する。
図4の(5)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの全放電状態である。
【0047】
ここで、システムコントローラ101は、ステップS11における充電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該蓄電池モジュールM1~Mnとその他の蓄電池モジュールM1~Mnとの残放電容量が揃うまでの間、当該蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態に維持する。
【0048】
ステップS14において肯定判定がされた場合にはステップS15に移行し、ステップS14において否定判定がされた場合にはステップS14が繰り返される。ステップS15において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第2の記録)を停止する。
【0049】
次に、ステップS16において、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnについての第1の記録と第2の記録とに基づいて、各蓄電池モジュールM1~Mnの放電容量-モジュール電圧曲線を生成する。具体的には、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnについての第1の記録に基づいて、高SOC領域の放電容量-モジュール電圧曲線を生成する。他方で、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnの第2の記録に基づいて、低SOC領域の放電容量-モジュール電圧曲線を生成する。そして、システムコントローラ101は、高SOC領域の放電容量-モジュール電圧曲線と低SOC領域の放電容量-モジュール電圧曲線とを合成することにより、満充電状態から全放電状態までの電圧の推移を示す放電容量-モジュール電圧曲線を生成する。
【0050】
ここで、上述したように、第1の記録又は第2の記録の実行中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生することも考えられる。この場合、システムコントローラ101は、放電容量-モジュール電圧曲線における第1の記録に対応する範囲と第2の記録に対応する範囲との境界に対してスムージングや外挿等の処理を実行し、
図5~
図7に示すような連続的な放電容量-モジュール電圧曲線を生成する。以上で、
図3のフローチャートに示す処理を終了する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の蓄電池制御装置100は、以下の第1~第5処理を実行する。
【0052】
(第1処理)
複数の蓄電池モジュールM1~Mnを満充電状態(所定の充電状態)から所定の放電量だけ放電させると共に、モジュール電圧とストリング電流とを記録する。
(第2処理)
上記所定の放電量だけ放電した複数の蓄電池モジュールM1~Mnを全放電状態(所定の放電状態)まで放電させる。
(第3処理)
全放電状態(所定の放電状態)まで放電した複数の蓄電池モジュールM1~Mnを所定の充電量だけ充電する。
(第4処理)
上記所定の充電量だけ充電された複数の蓄電池モジュールM1~Mnを全放電状態(所定の放電状態)まで放電させると共に、蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と蓄電池ストリングSTR1~STRmの電流とを記録する。
(第5処理)
上記第1処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流と、上記第4処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流とに基づいて、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する。
【0053】
これによって、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電時の電圧推移を示す電圧推移情報を取得するために実行する放電モードの途中で、蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生することを抑制できる。従って、蓄電池ストリングSTR1~STRm毎に、当該放電モードを実行する場合であっても、満充電状態(所定の充電状態)から全放電状態(所定の放電状態)までの電圧推移情報に不連続な範囲が生成されることを抑制できる。以上により、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電時の電圧推移情報を効率良く取得でき、蓄電システム1の運転の中断時間を短縮できる。
【0054】
また、上記所定の放電量と上記所定の充電量とは、放電時の電圧推移情報における上記第1処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流に対応する範囲(高SOC領域)の一部と、放電時の電圧推移情報における上記第4処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流に対応する範囲(低SOC領域)の一部とが相互に重複するように設定されている。
【0055】
これによって、第1処理の実行中に高SOC領域と低SOC領域との重複範囲に対応する放電容量で蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該重複範囲について、第4処理の記録情報を用いることができる。他方で、第3処理の実行中に高SOC領域と低SOC領域との重複領域に対応する放電容量で蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該重複範囲について、第1処理の記録情報を用いることができる。従って、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電時の電圧推移情報として、連続的な放電容量-モジュール電圧曲線を取得することができる。
【0056】
また、上記第3処理の実行時に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合、蓄電池制御装置100は、当該蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態を、上記第4処理においてバイパス状態の当該蓄電池モジュールM1~Mnと接続状態の他の蓄電池モジュールM1~Mnとの放電容量が揃うまで維持する。これによって、第4処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnを一斉に全放電状態(所定の放電状態)まで放電させることができる。
【0057】
図8は、
図1に示すシステムコントローラ101が、蓄電池モジュールM1~Mnの充電容量と電圧との相関関係を示す充電容量-モジュール電圧曲線(SOC-OCV曲線)を取得する処理を説明するためのフローチャートである。また、
図9及び
図10は、
図8のフローチャートに示す処理の実行中の蓄電池モジュールM1~Mnの充電容量と電圧との相関関係を示すグラフである。さらに、
図11~
図13は、
図8のフローチャートに示す処理により生成した充電容量-モジュール電圧曲線を示すグラフである。
【0058】
まず、ステップS21において、システムコントローラ101は、SOHやSOC等の状態推定で用いる基礎データの更新が必要な標的の蓄電池ストリングSTR1~STRmを決定する。次に、ステップS22において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmから電力を出力する。この際、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnを全放電状態にする。また、ストリングコントローラ102は、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた放電終止電圧まで上昇する毎に、当該蓄電池モジュールM1~Mnに対応するバイパス回路B1~Bnにより当該蓄電池モジュールM1~Mnを接続状態からバイパス状態に切り換える。なお、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた放電終止電圧である状態が、
図9の(1)に示す状態、即ち、各蓄電池モジュールM1~Mnの全放電状態である。
【0059】
ここで、
図9に示すように、各蓄電池モジュールM1~Mnの充電容量には差がある。蓄電池モジュールM1~Mnは、劣化度が高いほど、充電容量が小さくなり、全放電状態から満充電状態までの時間が短くなる。
【0060】
次に、ステップS23において、システムコントローラ101は、ストリングコントローラ102に、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態から接続状態に切り換える指示を送信する。これにより、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnが直列接続された状態になる。
【0061】
次に、ステップS24において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録を開始する。ここで、ステップS25からステップS27までの間の電圧及び電流の記録を第1の記録と称する。他方で、ステップS32からステップS35までの間の電圧及び電流の記録を第2の記録と称する。
【0062】
次に、ステップS25において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流且つ低電流の充電を開始する。
【0063】
次に、ステップS26において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの充電量が所定の充電量に達したか否かを、電流センサ13により検出される充電電流の積算値に基づいて判定する。
図9の(2)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの充電量が所定の充電量に達した状態である。ステップS26で肯定判定がされた場合にはステップS27に移行し、ステップS26で否定判定がされた場合にはステップS26が繰り返される。
【0064】
ここで、「所定の充電量」は、第1の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線と、第2の記録で得られる放電容量-モジュール電圧曲線とに重複する範囲が生じるように設定される。なお、「所定の充電量」の充電中に充電終止電圧に達した蓄電池モジュールM1~Mnは、バイパス回路B1~Bnにより接続状態からバイパス状態に切り換えられる。この場合、第1の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線と第2の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線とが不連続になる可能性がある。そのため、「所定の充電量」の充電中(第1の記録の実行中)に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生しないように、「所定の充電量」を設定することが好ましい。他方で、「所定の充電量」の充電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、スムージングや外挿等の処理が行われ、連続的な放電容量-モジュール電圧曲線が生成される。
【0065】
次に、ステップS27において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第1の記録)を停止する。
【0066】
次に、ステップS28において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~SRTmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnに電力を入力する。この際、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnを満充電状態にする。また、ストリングコントローラ102は、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた充電終止電圧まで上昇する毎に、当該蓄電池モジュールM1~Mnに対応するバイパス回路B1~Bnにより当該蓄電池モジュールM1~Mnを接続状態からバイパス状態に切り換える。なお、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が予め定められた充電終止電圧である状態が、
図9の(3)、及び
図10の(3)に示す状態、即ち、各蓄電池モジュールM1~Mnの満充電状態である。
【0067】
次に、ステップS29において、システムコントローラ101は、ストリングコントローラ102に、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態から接続状態に切り換える指示を送信する。これにより、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnが直列接続された状態になる。
【0068】
次に、ステップS30において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流の放電を開始する。
【0069】
次に、ステップS31において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電量が所定の放電量に達したか否かを、電流センサ13により検出される放電電流の積算値に基づいて判定する。
図10の(4)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電量が所定の放電量に達した状態である。
【0070】
ここで、「所定の放電量」は、第1の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線と、第2の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線とに重複する範囲が生じるように設定される。なお、「所定の放電量」の放電中に放電終止電圧に達した蓄電池モジュールM1~Mnは、バイパス回路B1~Bnにより接続状態からバイパス状態に切り換えられる。この場合、第1の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線と第2の記録で得られる充電容量-モジュール電圧曲線とが不連続になる可能性がある。そのため、「所定の放電量」の放電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生しないように、「所定の放電量」を設定することが好ましい。他方で、「所定の放電量」の放電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、スムージングや外挿等の処理が行われ、連続的な充電容量-モジュール電圧曲線が生成される。
【0071】
ステップS31において肯定判定がされた場合にはステップS32に移行し、ステップS31において否定判定がされた場合にはステップS31が繰り返される。ステップS32において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第2の記録)を開始する。
【0072】
次に、ステップS33において、システムコントローラ101は、対応する電力変換器PC1~PCmを制御し、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの定電流且つ低電流の充電を開始する。ここで、システムコントローラ101は、ステップS31における放電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態を後述のステップS34の途中まで維持する。
【0073】
次に、ステップS34において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの全ての蓄電池モジュールM1~Mnの充電が完了したか否かを、電流センサ13により検出される充電電流の積算値に基づいて判定する。
図10の(5)に示す状態が、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの満充電状態である。
【0074】
ここで、システムコントローラ101は、ステップS31における放電中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該蓄電池モジュールM1~Mnとその他の蓄電池モジュールM1~Mnとの残充電容量が揃うまでの間、当該蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態に維持する。
【0075】
ステップS34において肯定判定がされた場合にはステップS35に移行し、ステップS34において否定判定がされた場合にはステップS34が繰り返される。ステップS35において、システムコントローラ101は、対象の蓄電池ストリングSTR1~STRmの電圧センサ12により検出される蓄電池モジュールM1~Mnの電圧と、電流センサ13により検出される電流との記録(第2の記録)を停止する。
【0076】
次に、ステップS36において、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnについての第1の記録と第2の記録とに基づいて、各蓄電池モジュールM1~Mnの充電容量-モジュール電圧曲線を生成する。具体的には、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnについての第1の記録に基づいて、低SOC領域の充電容量-モジュール電圧曲線を生成する。他方で、システムコントローラ101は、各蓄電池モジュールM1~Mnの第2の記録に基づいて、高SOC領域の充電容量-モジュール電圧曲線を生成する。そして、システムコントローラ101は、低SOC領域の充電容量-モジュール電圧曲線と高SOC領域の充電容量-モジュール電圧曲線とを合成することにより、全放電状態から満充電状態までの電圧の推移を示す充電容量-モジュール電圧曲線を生成する。
【0077】
ここで、上述したように、第1の記録又は第2の記録の実行中に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生することも考えられる。この場合、システムコントローラ101は、充電容量-モジュール電圧曲線における第1の記録に対応する範囲と第2の記録に対応する範囲との境界に対してスムージングや外挿等の処理を実行し、
図11~
図13に示すような連続的な充電容量-モジュール電圧曲線を生成する。以上で、
図8のフローチャートに示す処理を終了する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の蓄電池制御装置100は、以下の第1~第5処理を実行する。
【0079】
(第1処理)
複数の蓄電池モジュールM1~Mnを全放電状態(所定の放電状態)から所定の充電量だけ充電すると共に、モジュール電圧とストリング電流とを記録する。
(第2処理)
上記所定の充電量だけ充電された複数の蓄電池モジュールM1~Mnを満充電状態(所定の充電状態)まで充電する。
(第3処理)
満充電状態(所定の充電状態)まで充電された複数の蓄電池モジュールM1~Mnを所定の放電量だけ放電させる。
(第4処理)
上記所定の放電量だけ放電した複数の蓄電池モジュールM1~Mnを満充電状態(所定の充電状態)まで充電すると共に、モジュール電圧とストリング電流とを記録する。
(第5処理)
上記第1処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流と、上記第4処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流とに基づいて、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を生成する。
【0080】
これによって、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの充電時の電圧推移を示す電圧推移情報を取得するために実行する充電モードの途中で、蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生することを抑制できる。従って、蓄電池ストリングSTR1~STRm毎に、当該充電モードを実行する場合であっても、全放電状態(所定の放電状態)から満充電状態(所定の充電状態)までの電圧推移情報に不連続な範囲が生成されることを抑制できる。以上により、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの充電時の電圧推移情報を効率良く取得でき、蓄電システム1の運転の中断時間を短縮できる。
【0081】
また、上記所定の充電量と上記所定の放電量とは、充電時の電圧推移情報における上記第1処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流に対応する範囲(低SOC領域)の一部と、充電時の電圧推移情報における上記第4処理で記録されたモジュール電圧、及びストリング電流に対応する範囲(高SOC領域)の一部とが相互に重複するように設定されている。
【0082】
これによって、第1処理の実行中に低SOC領域と高SOC領域との重複範囲に対応する充電容量で蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該重複範囲について、第4処理の記録情報を用いることができる。他方で、第3処理の実行中に低SOC領域と高SOC領域との重複範囲に対応する充電容量で蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合には、当該重複範囲について、第1処理の記録情報を用いることができる。従って、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの充電時の電圧推移情報として、連続的な充電容量-モジュール電圧曲線を取得することができる。
【0083】
また、上記第3処理の実行時に蓄電池モジュールM1~Mnの接続状態からバイパス状態への切り換えが発生した場合、蓄電池制御装置100は、当該蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態を、上記第4処理においてバイパス状態の当該蓄電池モジュールM1~Mnと接続状態の他の蓄電池モジュールM1~Mnとの充電容量が揃うまで維持する。これによって、第4処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnを一斉に満充電状態(所定の充電状態)まで充電することができる。
【0084】
以上、上述の実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0085】
例えば、上述の実施形態では、特許請求の範囲に記載の「所定の充電状態」を「満充電状態」とした。しかしながら、「所定の充電状態」は、「満充電状態」に限定されるわけではなく、「残充電容量が少量で満充電に近い状態」、「残充電容量が少量の範囲を超えて満充電には遠い状態」等を含む。また、上述の実施形態では、特許請求の範囲の「所定の放電状態」を「全放電状態」とした。しかしながら、「所定の放電状態」は、「全放電状態」に限定されるわけではなく、「残放電容量が少量で全放電に近い状態」、「残放電容量が少量の範囲を超えて全放電には遠い状態」等を含む。
【符号の説明】
【0086】
1 :蓄電システム
100 :蓄電池制御装置
B1~Bn :バイパス回路
M1~Mn :蓄電池モジュール(蓄電池)
PC1~PCm :電力変換器
STR1~STRm:蓄電池ストリング