(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】酵素を含む生分解性ポリエステル物品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20250129BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20250129BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20250129BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20250129BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08J3/22 CEP
C08J3/22 CFD
C08L5/00
C08L89/00
C08L101/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022212427
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2020512527の分割
【原出願日】2018-08-31
【審査請求日】2023-01-27
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520064573
【氏名又は名称】カルビオリス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOLICE
【住所又は居所原語表記】rue Andre Messager ZAC de la Graviere,63200 Riom France
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ダリベイ、メディハ
(72)【発明者】
【氏名】アルノー、クレモンティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】オークレール、ナディア
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/198650(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/198652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00
C08J 3/22
C08L 5/00
C08L 89/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリエステルと、プラスチック物品中に均一に分散された、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含むプラスチック物品の調製方法であって、当該方法は、(a)0.01重量%~10重量%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、少なくとも前記1種のポリエステルとを混合する工程と、(b)工程(a)の前記混合物をプラスチック物品に成形する工程とを含み、
工程(a)において、前記プラスチック物品中で前記生物学的物質を均一に分散させるために、前記生物学的物質を、前記生物学的物質と、天然ガムから選択される多糖類担体と、水とを含む液体組成物の形態で混合することを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも1種のポリエステルと、プラスチック物品中に均一に分散された、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含むプラスチック物品の調製方法であって、当該方法は、(a)0.01重量%~10重量%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、少なくとも前記1種のポリエステルとを混合する工程と、(b)工程(a)の前記混合物をプラスチック物品に成形する工程とを含み、
工程(a)において、前記プラスチック物品中で前記生物学的物質を均一に分散させるために、前記生物学的物質を、前記生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチの形態で混合し、かつ、前記生物学的物質は液体組成物の形態で提供され、
前記マスターバッチは、前記生物学的物質の液体組成物を前記担体ポリマーに導入することにより調製され、
前記生物学的物質の液体組成物は、天然ガムから選択される多糖類担体および水をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記混合工程(a)は、前記ポリエステルが部分的または完全な溶融状態にある温度で、および/または押出機内で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステルは140℃超の融解温度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルは、乳酸および/またはコハク酸および/またはテレフタル酸のコポリマーから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する
担体ポリマーは、ポリエステル、デンプン、EVAおよびこれらの混合物から選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)およびこれらの混合物から選択されるポリエステルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、PBAT、PLA、EVAおよびこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記天然ガムは、アラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、カラヤゴムおよびこれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種のポリエステルと、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、天然ガムから選択される多糖類担体と、場合により、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むプラスチック物品中の前記生物学的物質の分散均一性を向上させる方法であって、当該方法は、前記プラスチック物品の製造プロセスにおいて、前記生物学的物質と、前記多糖類担体と、水とを含む液体組成物の形態で、または、前記生物学的物質を含む液体組成物を、前記担体ポリマーに導入することにより調製されるマスターバッチの形態で、前記生物学的物質を導入することを含む、方法。
【請求項11】
前記天然ガムは、アラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、カラヤゴムおよびこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、天然ガムから選択される多糖類担体と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチであって、当該マスターバッチは、前記生物学的物質の液体組成物を前記担体ポリマーに導入することにより調製される、マスターバッチ。
【請求項13】
前記生物学的物質の液体組成物は、天然ガムから選択される多糖類担体および水性溶媒をさらに含む、請求項12に記載のマスターバッチ。
【請求項14】
前記液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01重量%~35重量%の生物学的物質と、
- 15重量%~95重量%の水性溶媒と、
- 3重量%~80重量%の天然ガムから選択される多糖類担体と
を含む、請求項13に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーは、ポリエステル、デンプン、EVAおよびこれらの混合物から選択される、請求項12~14のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項16】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有するポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)およびこれらの混合物から選択されるポリエステルである、請求項15に記載のマスターバッチ。
【請求項17】
前記140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有するポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、EVA、PBAT、PLAおよびこれらの混合物から選択される、請求項15に記載のマスターバッチ。
【請求項18】
マスターバッチの総重量に基づいて、50重量%~95重量%の、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーを含む、請求項12~17のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項19】
70重量%~90重量%の、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーを含む、請求項18に記載のマスターバッチ。
【請求項20】
前記生物学的物質は、ポリエステル分解活性を有する酵素を少なくとも含む、請求項12~19のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項21】
前記天然ガムは、アラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、カラヤゴムおよびこれらの混合物から選択される、請求項12~20のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルと、当該ポリエステルを分解可能な生物学的物質とを含む新規な生分解性プラスチック物品であって、前記生物学的物質が前記プラスチック物品中に均一に分散しているプラスチック物品に関する。本発明はまた、液体組成物中またはマスターバッチ中の生物学的物質および選択された担体をポリエステルと混合する工程を含む当該プラスチック物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの環境問題ならびに埋立地および自然生息地におけるプラスチック物品の蓄積を解決し、また特に短寿命製品(例えば袋、トレイ、容器、ボトルを含む包装、農業用フィルム等)に関する制限法を遵守するために、さまざまな生分解性プラスチック組成物が開発されてきた。
【0003】
これらのプラスチック組成物は、一般に、ポリエステル、多様な穀物由来の穀粉またはデンプンを含む(米国特許第5,739,244号;米国特許第6,176,915号;米国特許出願公開第2004/0167247号;国際公開第2004/113433号;仏国特許第2 903 042号;仏国特許第2 856 405号)。無機化学添加剤(国際公開第2010/041063号)によって、または、ポリエステルを分解可能な生物学的物質の包含(国際公開第2013/093355号;国際公開第2016/198652号;国際公開第2016/198650号;国際公開第2016/146540号;国際公開第2016/062695号)によって、これらのプラスチックの分解の制御を改善するためにさまざまな解決策が提案されてきた。得られたプラスチック物品は、ポリマー中に分散された生物学的物質、特に酵素を含み、そのような生物学的物質を含まないプラスチック物品と比較して改善された生分解性を有する。
【0004】
ポリエステルおよび酵素を含む物品の製造がすでに記述されている場合、その実施により得られる物品の均一性、表面粗さおよび機械的特性に関する技術的問題が生じる可能性がある。既知のまたは提案された製造方法は、酵素の凝集体を呈する不均一な物品をもたらす。プラスチック組成物中の酵素の分布の不均一性には、物理的特性および審美的な観点から多くの欠点がある。特に、薄膜を製造することはできない。いくつかの例において、生物学的物質の分解活性は、上述した従来の方法により影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、物品中の酵素の均一な分散を示し、期待される物理的性能をもたらす生分解性プラスチック物品を提供する。本発明はまた、改善された分解性を有するプラスチック物品を提供する。
【0006】
本発明は、少なくとも1種のポリエステルと、生物学的物質とを含み、期待される物理的性能および分解性能を示す新規な生分解性プラスチック物品を提供する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種のポリエステルと、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含む生分解性プラスチック物品であって、前記生物学的物質は、前記ポリエステルを分解でき、さらにプラスチック物品中に均一に分散している、生分解性プラスチック物品を提供することである。
【0008】
本発明は、少なくとも1種のポリエステルと、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含む生分解性プラスチック物品であって、多糖類、および場合により、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(担体ポリマー)、およびこれらの混合物から選択される担体を含み、前記生物学的物質は、前記ポリエステルを分解でき、かつプラスチック物品中に均一に分散している、生分解性プラスチック物品を提供する。
【0009】
特に、本発明は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%のポリ乳酸(PLA)と、
- 0~40%の多糖類と、
- 多糖類または担体ポリマーの一方が0%であり、かつ他方が0%でない場合、0~40%の担体ポリマーと、
- 0.01~10%の、プラスチック物品中に均一に分散した、PLA分解活性を有する生物学的物質と
を含むプラスチック物品を提供する。
【0010】
本発明はまた、少なくとも1種のポリエステルと、プラスチック物品中に均一に分散された、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含むプラスチック物品の調製方法であって、当該方法は、(a)0.01重量%~10重量%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、少なくとも前記1種のポリエステルとを混合する工程と、(b)工程(a)のプラスチック物品における前記混合物を成形する工程とを含み、
工程(a)において、前記生物学的物質を、
- 前記ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、担体と、水とを含む液体組成物、または
- 前記ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチ
から選択される、前記プラスチック物品中で前記生物学的物質を均一に分散させるのに適切な形態で混合することを特徴とする、方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、ポリエステルを含むプラスチック物品中の生物学的物質の分散均一性を向上させる方法であって、当該方法は、このようなプラスチック物品の製造方法において、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、担体と、水とを含む液体組成物の形態で、または、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチの形態で、生物学的物質を導入することを含む方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーと、場合により、多糖類とを含むマスターバッチを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、生物学的物質、特に酵素の均一な分散が改善された新規なプラスチック物品、およびその製造方法に関する。本発明は、活性のある生物学的物質を適切な分布率で有する物品が、使い捨ての短寿命プラスチック物品に期待される物理的特性および分解特性に応えるために特に価値があることを示す。
【0014】
定義
本開示は以下の定義を参照することにより、最も分かりやすく理解されるであろう。
【0015】
本発明において、用語「プラスチック物品」は、プラスチックシート、フィルム、チューブ、ロッド、プロファイル、シェイプ、塊状ブロック、繊維等、少なくとも1種のポリマーから作られた任意の物品を指す。好ましくは、プラスチック物品は、硬質または可撓性の包装、農業用フィルム、袋(バッグおよびサック)、使い捨て物品等の工業製品である。好ましくは、プラスチック物品は、半結晶性および/または非晶質ポリマー、あるいは半結晶性ポリマーと添加剤の混合物を含む。プラスチック物品は、可塑剤、無機または有機充填剤等の追加の物質または添加剤を含有していてもよい。本発明によれば、プラスチック物品は、プラスチックフィルムまたは硬質プラスチック物品から選択されてよい。
【0016】
本発明によれば、用語「プラスチックフィルム」は、250μm未満の厚みを有するプラスチック性の可撓性シート(すなわち、破損することなく屈曲可能である)を指す。薄いフィルムは、100μm未満、好ましくは50μm未満の厚みを有すると考えられ、好ましくはインフレーションフィルム押出により製造され、他方、厚いフィルムは100μmを超える厚みを有し、好ましくはキャストフィルム押出により製造される。プラスチックフィルムの例としては、農業用フィルム、ビニール袋(バッグまたはサック)、軟包装用フィルム、食品フィルム、郵送用フィルム、ライナーフィルム、マルチパックフィルム、工業用フィルム、パーソナルケアフィルム、ネット等が挙げられる。
【0017】
本発明によれば、用語「硬質プラスチック物品」は、フィルムではないプラスチック物品を指す。これらの物品は、好ましくは、カレンダー加工、射出成形、熱成形、ブロー成形によって、または回転式成形および3D印刷によって製造される。硬質プラスチック物品の例としては、食品および飲料包装等の薄肉包装、箱、トレイ、容器、フードサービス用品、電子機器ケーシング、化粧品ケース、ポット等の屋外園芸用品、硬質包装、容器、カード、綿棒、灌漑パイプ等が挙げられる。一部の硬質プラスチック物品は、厚み250μm以上のプラスチックシートを熱成形することにより製造でき、このようなプラスチックシートはフィルムキャスティングまたはカレンダー加工によって製造される。本発明によれば、硬質プラスチック物品は5mm未満、好ましくは3mm未満の厚みを有する。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「プラスチック組成物」は、プラスチック物品を製造するための任意の成形工程またはコンディショニング工程前の、ポリマーおよび生物学的物質、最終的には追加の化合物(例えば、添加剤、充填剤等)の混合物を指す。本発明の特定の実施形態において、プラスチック組成物は、ポリエステル系マトリックスに導入する前の、固体形態のマスターバッチである。
【0019】
「ポリエステル系マトリックス」とは、主成分として、1種またはそれ以上のポリエステルを含むマトリックスを指す。ポリエステル系マトリックスは、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60%または70%のポリマーを含む。ポリエステル系マトリックスは、添加剤等の追加の化合物をさらに含んでもよい。本発明によれば、ポリエステル系マトリックスは、生物学的物質を含まない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「マスターバッチ」は、選択された成分(例えば、生物学的物質、添加剤等)と、プラスチック物品または組成物に所望の特性を付与するために当該選択された成分を当該プラスチック物品または組成物に導入するために使用可能なポリマーとの濃縮混合物を指す。マスターバッチ組成物により、加工者はプラスチック製造する間選択された成分を経済的に導入できる。有利には、マスターバッチは、選択された成分が高濃度で組み込まれているポリマーで構成される。一般に、マスターバッチは、ポリエステルまたはポリエステル系マトリックスと混合されて、所望の量の選択された成分を含む最終プラスチックを製造するためのものである。マスターバッチは、無機または有機充填剤をさらに含んでもよい。本発明によれば、マスターバッチは、少なくとも5%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質の組成物を含む。本発明において、マスターバッチのポリマーは、好ましくは、140℃未満の融解温度(Tm)を有するポリマーから選択される。非晶質ポリマーに関し、Tmとは、非晶質ポリマーが押出により加工される(すなわち、ゴム状または軟化状態)のに十分流動性である変態温度を指す。
【0021】
「ポリマー」とは、その構造が共有化学結合によって連結された複数の繰り返し単位で構成される化合物または当該化合物の混合物を指す。本発明において、用語「ポリマー」は、単一の種類の繰り返し単位(すなわち、ホモポリマー)または異なる種類の繰り返し単位(すなわち、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマー)を含む天然または合成ポリマーを含む。一例として、合成ポリマーとして、石油から誘導されたポリマーまたはバイオ系ポリマー、例えば、ポリオレフィン、脂肪族または芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリ塩化ビニルが挙げられる。天然ポリマーとしては、リグニン、および多糖類、例えばセルロース、ヘミセルロース、デンプン、および可塑化されていてもされていなくてもよいそれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
本発明において、用語「ポリエステル」とは、その主鎖にエステル官能基を含むポリマーを指す。エステル官能基は、炭素と、3つの他の原子との結合(炭素への単結合、酸素への二重結合、および酸素への単結合)によって特徴付けられる。単結合した酸素は別の炭素に結合する。主鎖の組成に応じて、ポリエステルは脂肪族、芳香族または半芳香族であり得る。ポリエステルはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。一例として、ポリ乳酸は、1つのモノマーである乳酸から構成される脂肪族ホモポリマーであり、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸およびエチレングリコールの2つのモノマーで構成される脂肪族芳香族コポリマーである。そのようなポリエステルは、天然のものでも化学修飾されたものでもよい。本発明において、用語「充填剤」とは、プラスチック組成物および/またはプラスチック物品に組み込まれ、その費用を削減するか、または所望によりその物理的特性(例えば、その硬度、剛度または強度)を改善する物質を指す。充填剤は不活性(inactive)(すなわち、不活性(inert))または活性材料であってよく、プラスチック組成物または物品の成分と化学結合を形成し得る。充填剤は、天然、合成、または修飾された充填剤であってよい。充填剤は、無機または有機充填剤から選択できる。本発明の特定の実施形態において、無機充填剤は、カルサイト、炭酸塩または金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(または石灰岩)、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸亜鉛、炭酸銅、白亜、ドロマイト、ケイ酸塩、例えば含水ケイ酸マグネシウム、例えばタルクまたは石鹸石、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸アルミニウム(カオリン)、またはそれらの混合物、例えば、雲母、スメクタイト、例えば、モンモリロナイト、バーミキュライト、およびパリゴルスカイト-セピオライト、硫酸塩、例えば硫酸バリウム、または硫酸カルシウム(セッコウ)、雲母、水酸化物塩または金属水酸化物、例えば水酸化カルシウムまたは水酸化カリウム(カリ)、または水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムまたは水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、ハイドロタルサイト、金属酸化物または酸化物塩、例えばマグネシウムの酸化物またはカルシウムの酸化物またはアルミニウムの酸化物または酸化鉄または酸化銅、粘土、石綿、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、金属繊維または金属箔、ガラス繊維、磁性充填剤、アラミド繊維、セラミック繊維およびそれらの誘導体またはこれらの材料のブレンド/混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。あるいはまたは加えて、有機充填剤は、木粉、植物粉または野菜粉、例えば穀粉(トウモロコシ粉、小麦粉、米粉、ダイズ粉、堅果殻粉、クラムシェル粉、トウモロコシの穂軸、コルク粉、もみ殻粉);おがくず;植物繊維、例えば亜麻繊維、木繊維、麻繊維、竹繊維、鶏の羽毛およびそれらの誘導体、またはこれらの材料のブレンド/混合物からなる群から選択される。天然ポリマーは、有機充填剤、例えばリグニン、または多糖類、例えばセルロースまたはヘミセルロース、デンプン、キチン、キトサンおよびこれらの材料の誘導体またはブレンド/混合物としても使用できる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「生物学的物質」とは、活性酵素または酵素産生微生物、例えば胞子形成微生物、ならびにそれらの組み合わせを指す。本発明によれば、「生物学的物質」とは、好ましくは酵素を指す。生物学的物質は、固体(例えば、粉末)または液体の形態であり得る。
【0024】
本発明において、用語「液体組成物」とは、流体形態、すなわち組成物がその中に含まれている容器の形態をとる組成物に対応する。本発明において、組成物は、室温、および/または部分的もしくは完全に融解したポリマーに組み込む温度で液体形態である。本明細書で使用する場合、用語「多糖類」とは、グリコシド結合によって互いに結合された単糖類単位からなる長鎖で構成された分子を指す。多糖類の構造は、直鎖から高度に分岐していてもよい。例としては、デンプンおよびグリコーゲン等の貯蔵多糖類ならびにセルロースおよびキチン等の構造多糖類が挙げられる。多糖類としては、天然多糖類または架橋、酸化、アセチル化、部分加水分解等による化学修飾された多糖類が挙げられる。炭化水素ポリマーは、その供給源(海洋、植物、微生物または動物)、構造(直鎖、分岐)、および/または物理的挙動に応じて分類されてよい(例えば、ガムまたはヒドロコロイドとしての指定をいい、多糖類が熱水または冷水中で水和し、低濃度のガムまたはヒドロコロイドの粘稠溶液または分散液を形成する特性を指す)。本発明において、多糖類は、「Encapsulation Technologies for Active Food Ingredients and Food Processing -Chapter 3-Materials for Encapsulation- Christine Wandrey,Artur Bartkowiak,and Stephen E. Harding」に記載された分類に従って、
- デンプンおよび誘導体、例えばアミロース、アミロペクチン、マルトデキストリン、グルコースシロップ、デキストリン、シクロデキストリン、
- セルロースおよび誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース等、
- アラビアゴム(またはアカシアゴム)、トラガカントゴム、グアーガム、イナゴマメゴム、カラヤゴム、メスキートゴム、ガラクトマンナン、ペクチン、可溶性ダイズ多糖類を含むがこれらに限定されない、植物ガムまたは天然ガムとも呼ばれる植物の滲出液および抽出物、
- 海洋抽出物、例えばカラギーナンおよびアルギネート、
- 微生物および動物多糖類、例えばジェラン、デキストラン、キサンタンおよびキトサン
に分類されてよい。
【0025】
多糖類は、その水中での溶解度によってさらに分類できる。特に、セルロースは水に可溶性ではない。本発明によれば、多糖類は水に可溶性である能力を示す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「周囲温度」または「室温」は、10℃~30℃、特に20℃~25℃の温度を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「可溶性である」とは、溶質(すなわち、担体、酵素)の液体溶媒中に溶解する能力を指す。物質の溶解度は、溶質および溶媒双方の物理的および化学的特性、ならびに溶液の温度、圧力およびpHに依存し、IUPAC等の国際規格に従って定義されてよい。IUPACの定義によれば、溶解度は、指定された溶媒中の指定された溶質の割合として表される飽和溶液の分析組成である。溶解度は、モル濃度、質量モル濃度、モル分率、モル比、体積(溶媒)あたりの質量(溶質)およびその他の単位等、濃度のさまざまな単位で述べることができる。溶解度は、特定の温度および特定の大気圧で定義される。溶解度の程度は、水中のエタノール等無限に可溶性である(無制限)か、あるいは完全に混和性であるものから、水中の塩化銀等難溶性であるものまで幅広い。用語「不溶性」は多くの場合、溶けにくい溶質または非常に溶けにくい溶質に適用される。用語「最大溶解度」とは、溶媒中の溶質の飽和濃度を指し、追加量の溶質によって溶液の濃度は上がらず、過剰量の溶質は沈殿し始める。本発明によれば、最大溶解度とは、液体組成物中の担体の飽和濃度を指し、生物学的物質等の他の成分が溶質の溶解度に影響を与える可能性がある。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「重量基準」は、考慮される組成物または製品の総重量に基づく量を指す。
【0029】
本発明において、用語「約」は、±5%、好ましくは±1%のマージン、または適切な測定デバイスもしくは機器の許容誤差内を指す。
【0030】
プラスチック物品の均一性
本発明者らは、当該技術分野における生物学的物質の固体または液体組成物の使用と比較して、製造プロセスにおいて特定の多糖類担体を含む生物学的物質の液体組成物を使用することにより、ポリエステルおよびポリエステル分解活性を有する生物学的物質を含むプラスチック物品の分解性ならびに物理的および/または機械的特性を改善できることを示した。
【0031】
本発明者らは、固体組成物について激しくかつ費用のかかる粉砕操作を行うことなく、プラスチック物品の表面粗さ、および最終的には厚みを低減させる方法を見出した。さらに、液体組成物は、固体組成物と比較して、成分の粉砕(pulverence)が低減されるため、プラスチック物品の製造プロセスにおいて固体組成物の粒子を吸入するリスクが低減される。本発明者らは、好ましくは液体組成物の状態で、特定の担体とともに生物学的物質を用いてプラスチック物品を製造することは、当該技術分野における固体または液体形態の生物学的物質を用いて製造されたプラスチック物品と比較して、プラスチック物品中の生物学的物質の分散の均一性が高められたプラスチック物品をもたらし、それ故、物理的特性が向上したプラスチック物品をもたらすことを見出した。本発明者らはまた、製造プロセスにおいて生物学的物質を保護するために担体の選択が重要であり、期待される分解性能および技術的性能を有するプラスチック物品をもたらすことを見出した。
【0032】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種のポリエステルと、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含む生分解性プラスチック物品であって、前記生物学的物質は、前記ポリエステルを分解でき、かつ前記プラスチック物品中に均一に分散している生分解性プラスチック物品を提供することである。
【0033】
さらに、本発明の別の目的は、少なくとも1種のポリエステルと、ポリエステルを分解する生物学的物質とを含むプラスチック物品中の当該生物学的物質の分散を均一化するための方法であって、当該方法が、プラスチック物品の製造プロセスにおいて、特定の担体とともに生物学的物質を、好ましくは液体組成物の状態で、導入することを含む方法を提供することである。
【0034】
本発明のプラスチック物品中の生物学的物質の分散均一性は、当該技術分野においてそれ自体既知の方法に従って、当業者によって評価され得る。例えば、本発明において、プラスチック物品中の生物学的物質の分散均一性は、ヘイズ、表面粗さ、動摩擦係数、ヤング率、破断点伸び、破断点引張応力、最大応力、最大応力時ひずみ、衝撃強度および生分解性の特性のうち少なくとも1つの測定により評価され得る。
【0035】
ヘイズは、プラスチック物品を通って2.5°を超えて散乱する入射光の割合%として定義される。ヘイズは、プラスチック物品に含まれる不純物(物品内の小さな粒子の蓄積または表面上の非常に小さな欠陥等)またはその結晶化度によって生じる。ヘイズ値が低ければ低いほど、物品の透明度は高くなる。ヘイズは特定の単位を持たず、%で表される。ヘイズ値が30%より大きい場合、物品は拡散している。ヘイズメーターおよび分光光度計を使用して、ヘイズのレベルを測定できる。プラスチック物品のヘイズは、ASTM D1003またはNF EN2155-9に従って測定できる。本発明によれば、物品のへイズは、NF EN2155-9(1989年8月)に従って測定される。特に、生物学的物質の液体組成物から製造される本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも低いヘイズ値を示し得る。通常、本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物を用いて製造されるプラスチック物品のヘイズ値と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%またはそれ以上低いヘイズ値を示す。
【0036】
プラスチック物品のヤング率(弾性率または引張係数としても知られる)は、固体材料の剛性の尺度である。剛性は線形弾性固体材料の機械的特性である。剛性はある材料の応力(単位面積あたりの力)とひずみ(比例変形)との関係を定義する。結果はパスカルまたはメガパスカル(MPa)で表される。
【0037】
プラスチック物品の破断点伸びまたは破断点ひずみは、プラスチック物品が割れることなく形状の変化に抵抗する能力に関係する。破断点伸びは、破壊ひずみまたは破断点引張伸びとしても知られている。破断点伸びは%で測定され、プラスチック物品の破断点伸びをプラスチック物品の初期ゲージ長で除し、100を乗じることにより計算できる。
【0038】
プラスチック物品の破断点引張応力(破断点応力または破断点引張強度としても知られる)は、試験片が破断する時点での引張応力として定義される。極限引張応力または最大応力としても知られる引張応力は、引張試験中に試験片が保持する最大引張応力に相当する。結果は、単位面積あたりの力、通常メガパスカル(MPa)で表される。
【0039】
最大応力時ひずみまたは引張強度時引張ひずみは、引張強度に対応するポイントでの引張ひずみである。これは%で測定され、プラスチック物品の最大応力時伸びをプラスチック物品の初期ゲージ長で除し、100を乗じることにより計算できる。
【0040】
プラスチック物品のヤング率、破断点伸び、破断点引張応力、最大応力、最大応力時ひずみは、1mm未満の厚みを有するプラスチック物品に対してASTM D882-12またはNF EN ISO527-3に従って測定できる。これは、特に機械方向または横方向の2つの異なる方向で測定できる。厚み1mm~14mmのプラスチック物品に対するこれらの基準の決定は、ASTM D638-14またはNF EN ISO527-2を使用して行われる。
【0041】
特に、生物学的物質の液体組成物の使用により得られる本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも高い破断点伸びを示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品はプラスチックフィルムであり、機械方向または横方向から選択される少なくとも1つの方向において、生物学的物質の固体組成物を用いて製造されるプラスチック物品の破断点伸びよりも10%高い、好ましくは20%、50%、100%またはそれ以上高い破断点伸びを示す。
【0042】
特に、生物学的物質の液体組成物を用いて製造される本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも高い破断点引張応力を示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品はプラスチックフィルムであり、生物学的物質の固体組成物を用いて製造されるプラスチック物品の破断点引張応力よりも20%高い、好ましくは30%、40%、50%またはそれ以上高い破断点引張応力を示す。典型的には、本発明のプラスチック物品は、機械方向または横方向から選択される少なくとも1つの方向において、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチック物品の破断点引張応力よりも5MPa高い、好ましくは7MPa、10MPa、15MPaまたはそれ以上高い破断点引張応力を示す。
【0043】
特に、生物学的物質の液体組成物から製造される本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも高いヤング率を示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品はプラスチックフィルムであり、機械方向または横方向から選択される少なくとも1つの方向において、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチック物品のヤング率よりも約20%高い、好ましくは30%、40%、50%またはそれ以上高いヤング率を示す。典型的には、本発明のプラスチック物品はプラスチックフィルムであり、機械方向または横方向から選択される少なくとも1つの方向において、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチック物品のヤング率よりも約20MPa高い、好ましくは30MPa、50MPa、100MPaまたはそれ以上高いヤング率を示す。
【0044】
動摩擦係数または滑り摩擦係数または運動摩擦係数(μDとも略される)は、2つの物体が互いに対して移動し、(地面でのそりのように)互いを擦り合わせるときに発生する。本発明によれば、μDは、プラスチック物品が別の同じプラスチック物品の上を滑っているときに測定される。滑り摩擦係数は、プラスチック物品による動的摩擦力面(摩擦に打ち勝つために必要な力)と、両方のプラスチック物品に垂直に作用する垂直抗力Nとの比として定義される。この係数は単位を持たない。試験する表面は、平面的に接触させ、均一な接触圧力(垂直抗力N)で配置する。表面を互いに対して移動させるのに必要な力を記録する(動的摩擦力)。本発明によれば、μDは、0.5mm未満の厚みを有するプラスチックフィルムまたはプラスチックシートに適合する標準規格NF EN ISO-8295(2004年12月)に従って測定される。装置は、本発明のプラスチック物品が置かれる水平試験台と、押圧力(1.96N)を生じ、プラスチック物品が取り付けられる重り(mass)と、重りと試験台の間に相対運動を生じさせる牽引機構とを備える。本発明によれば、重りは試験台上で引っ張られ、動かされる(試験速度=500mm/分)。測定値は約0.01%の精度である。特に、生物学的物質の液体組成物から製造される本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも低い動摩擦係数を示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品はプラスチックフィルムであり、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチック物品の動摩擦係数よりも5%低い、好ましくは10%、15%、20%またはそれ以上低い動摩擦係数を示す。
【0045】
プラスチック物品の表面粗さは、ユーザのパネルの目視試験によって評価できる。本発明のプラスチック物品は、その表面に目に見える欠陥を示さず、滑らかである。固体組成物から製造されるプラスチック物品は、触って感じることができ、また肉眼で見ることができる粒子の凝集体により、表面に不規則性を示す。これは、ミツトヨシックネスゲージを使用した厚みの測定によっても評価され、プラスチック物品における凝集体の存在が実証される。
【0046】
衝撃強度は、高速で加えられる応力下における材料の破壊に対する抵抗として定義され、破壊前に吸収されるエネルギー量により定義される。硬質プラスチック物品の場合、衝撃強度は、当該プラスチック物品と同じ材料で製造される厚み4mm、全長80mmのプラスチック試験片を使用して、標準規格NF EN ISO179に従って測定できる。厚みが4mm未満の硬質プラスチック物品の衝撃強度の測定は、標準規格NF EN ISO6603-1に従って当該プラスチック物品を直接測定することもできる。特に、生物学的物質の液体組成物の使用により得られる本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも高い衝撃強度を示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチック物品の衝撃強度よりも約20%高い、好ましくは25%、30%、40%高い衝撃強度を示す。
【0047】
本発明者らは、本発明のプラスチック物品の製造プロセスにおいて、生物学的物質および選択された担体を含む液体または固体組成物による、好ましくは液体組成物による生物学的物質の導入が生物学的物質を含まないプラスチック物品と比較して、当該プラスチック物品の技術的性能に影響しないことも示した。
【0048】
本発明はまた、本発明のプラスチック物品の生分解性を向上させる方法であって、当該方法は、プラスチック物品の製造プロセスにおいて、選択された担体を含む生物学的物質の組成物を導入することを含む方法を提供する。生分解性は、プラスチック物品の製造プロセスにおいて、選択された担体を含む生物学的物質の液体組成物を導入することによりさらに向上する。プラスチック物品の生分解性は、水性条件下にて定義された期間にわたるモノマー、ダイマー、または水および二酸化炭素の遊離として定義される。特に、本発明によれば、PLAを含有するプラスチック物品の生分解性は、乳酸および乳酸のダイマーの放出に応じて測定される。特に、生物学的物質の液体組成物の使用により得られる本発明のプラスチック物品は、当該技術分野の生物学的物質の固体または液体組成物から製造される同じプラスチック物品よりも高い生分解性を示すことができる。典型的には、本発明のプラスチック物品は、2日後に、当該技術分野の生物学的物質の固体または液体組成物から製造されるプラスチック物品の生分解性よりも約100%高い、好ましくは25%、30%、40%高い生分解性を示す。
【0049】
特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、少なくとも1種のポリエステルと当該ポリエステルを分解できる生物学的物質とを含むプラスチックフィルムである。
【0050】
好ましい実施形態によれば、本発明のプラスチックフィルムは、100μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは30μm未満、さらにより好ましくは20μm未満の厚みを有するフィルムである。
【0051】
特に、本発明のプラスチックフィルムは、生物学的物質の固体組成物から製造されるプラスチックフィルムのヘイズ値と比較して、約3%、4%、5%またはそれ以上低いヘイズ値を示す。したがって、プラスチックフィルムのヘイズ値は、80%~95%、好ましくは85%~93%である。あるいは、プラスチックフィルムのヘイズ値は、30%超、好ましくは50%超、より好ましくは70%超、さらにより好ましくは85%超である。また、プラスチックフィルムのヘイズ値は、98%未満、好ましくは96%未満、より好ましくは95%未満、さらにより好ましくは94%未満である。別の実施形態において、プラスチックフィルムのヘイズ値は60%未満である。
【0052】
別の特定の実施形態において、フィルムのヤング率は、両方向(機械方向または横方向)において好ましくは200MPa超であり、および/または、フィルムの破断点引張応力は、両方向(機械方向または横方向)において好ましくは15MPa超であり、および/または、フィルムの破断点伸びは、好ましくは、機械方向において130%超、横方向において300%超である。別の特定の実施形態において、本発明によるフィルムは、高いPLA含量量を有しながら、EN ISO527-3に従って測定される長手方向における130%超、横方向における240%超の破断点伸び、および/またはEN ISO6383-1に従って測定されるフィルムの横方向における30N/mm超の引裂強度を有する。本発明によるフィルムはまた、EN ISO527-3に従って測定される長手方向における200MPa超、横方向における150MPa超の弾性率、および/またはEN ISO527-3に従って測定される長手方向における15MPa超、横方向における13MPa超の最大応力を有する。
【0053】
別の特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、少なくとも1種のポリエステルと当該ポリエステルを分解できる生物学的物質とを含む硬質プラスチック物品である。
【0054】
特定の実施形態において、本発明の硬質プラスチック物品は、NF EN ISO179に従って17kJ/m2超、好ましくは20kJ/m2超の衝撃強度を示す。別の特定の実施形態において、本発明の硬質プラスチック物品は、NF EN ISO527-2に従って、4GPa未満、好ましくは3GPa未満の引張係数(弾性率)を示し、破断点引張強度は40MPa超、好ましくは55MPa超である。
【0055】
特定の実施形態によれば、本発明の硬質プラスチック物品は、800μm未満、好ましくは450μm未満の厚みを有するシートである。本発明のシートは、NF EN ISO7765-1に従って、1J超、好ましくは1.5J超、より好ましくは2J超の衝撃強度を示す。シートの弾性率は、目的の用途に十分な剛性を維持しながら、両方向(機械方向および横方向)において2GPa未満であり、シートの最大応力時ひずみは両方向において3%超、好ましくは4%超である。
【0056】
別の特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、少なくとも1種のポリエステルと当該ポリエステルを分解できる生物学的物質とを含む不織布である。
【0057】
有利には、プラスチック物品は、標準規格EN13432、標準規格NFT51800、標準規格ASTM D6400、OK Biodegradation Soil(TUV Austriaラベル)、OK Biodegradation Water(TUV Austriaラベル)、OK Compost(TUV Austriaラベル)、OK Compost Home(TUV Austriaラベル)等の当業者に公知の関連する標準規格および/またはラベルのうち少なくとも1つに従った生分解性プラスチック物品である。
【0058】
生分解性プラスチック物品とは、環境条件下で、プラスチック物品の少なくとも1種のポリエステルのオリゴマーおよび/またはモノマー、水、二酸化炭素またはメタンおよびバイオマスに少なくとも部分的に変換されるプラスチックを指す。例えば、プラスチック物品は水中で生分解性である。好ましくは、プラスチック物品の約90重量%は、90日以内、より好ましくは60日以内、さらにより好ましくは30日以内に水中で生分解される。より好ましくは、プラスチック物品は、景観(landscape)で生じる湿潤および温度条件にさらされると生分解され得る。好ましくは、プラスチック物品の約90重量%が環境中で3年以内、より好ましくは2年以内、さらにより好ましくは1年以内で生分解される。あるいは、プラスチック物品は、温度が50℃超に維持される工業的な堆肥化条件下で生分解されてもよい。
【0059】
本発明はまた、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック物品の生分解性を向上させる方法を提供し、当該方法は、ポリエステルを、当該ポリエステルを分解するのに適した生物学的物質および耐酸充填剤の両方と混合してプラスチック組成物を得る工程と、当該プラスチック組成物を用いてプラスチック物品を製造する工程とを含む。
【0060】
プラスチック物品の構成成分
本発明の目的は、乳酸および/またはコハク酸および/またはテレフタル酸のコポリマーまたはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック物品を提供することである。
【0061】
有利には、プラスチック物品は、ポリ乳酸(PLA)(例えばポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)またはPLAステレオコンプレックス(scPLA))、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびそれらの誘導体またはブレンド/混合物から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む。好ましい実施形態において、プラスチック物品は、少なくともPLAおよび/またはPCLおよび/またはPBAT、より好ましくは少なくともPLAを含む。別の実施形態において、ポリエステルは、乳酸および/またはコハク酸および/またはテレフタル酸のコポリマーから選択される。
【0062】
好ましくは、ポリエステルは、140℃を超える融解温度を有する。
【0063】
別の特定の実施形態において、プラスチック物品は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびそれらの誘導体またはブレンド/混合物から選択される少なくとも2種のポリエステルを含む。好ましい実施形態において、プラスチック物品は、PLAおよび/またはPCLおよび/またはPBAT、より好ましくはPLAおよびPBAT、またはPLAおよびPCLから選択される少なくとも2種のポリエステルを含む。
【0064】
特定の実施形態において、プラスチック物品は、少なくとも1種の天然ポリマーをさらに含んでもよい。天然ポリマーは、リグニン、多糖類、例えばセルロースまたはヘミセルロース、デンプン、キチン、キトサン、およびそれらの誘導体またはブレンド/混合物の群から選択されてよい。特定の実施形態において、天然ポリマーは、マスターバッチ組成物の製造に使用する前に、(例えば、水またはグリセロール等の可塑剤により)可塑化される。このような可塑化工程は、天然ポリマーの化学構造を改変し、プラスチック製造プロセスで使用できるようにする。好ましくは、プラスチック物品は、セルロース、デンプン、穀粉、ガムおよび誘導体から選択される少なくとも1種の天然ポリマーをさらに含む。より好ましくは、本発明のプラスチック物品は、少なくともデンプンまたは穀粉、さらにより好ましくは可塑化されたデンプンまたは穀粉をさらに含む。特に、デンプンはグリセロールによって可塑化させた。
【0065】
本発明のプラスチック物品は、多糖類、および場合により140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマー、およびこれらの混合物から選択される担体をさらに含む。
【0066】
好ましくは、本発明のプラスチック物品は、多糖類担体、および場合により140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーをさらに含む。
【0067】
より好ましくは、本発明のプラスチック物品は、多糖類担体、および140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーをさらに含む。
【0068】
多糖類担体は、好ましくは、デンプン誘導体、天然ガム、海洋抽出物、微生物および動物多糖類から選択される。特に、そのような多糖類はデンプン誘導体であり、好ましくはマルトデキストリンである。あるいは、そのような多糖類は天然ガムであり、好ましくはアラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、カラヤゴムから選択され、さらにより好ましくはアラビアゴムから選択される。あるいは、そのような多糖類は海洋抽出物であり、好ましくはカラギーナンまたはアルギネートから選択される。あるいは、そのような多糖類は微生物多糖類であり、好ましくはキサンタンである。あるいは、そのような多糖類は動物多糖類であり、好ましくはキトサンである。
【0069】
特定の実施形態において、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーは、好ましくはポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、またはコポリマーから選択されるポリエステルである。別の特定の実施形態において、担体ポリマーは、好ましくはデンプンから選択される天然ポリマーである。別の特定の実施形態において、担体ポリマーは、「ユニバーサル」ポリマー、すなわち、コポリマー(例えば、エチレンビニルアセテートコポリマー、EVA)等の広範囲のポリマーと適合性のあるポリマーである。
【0070】
好ましくは、上記で定義された担体ポリマーは、120℃未満の融解温度および/または30℃未満のガラス転移温度を有する。例えば、そのような担体ポリマーは、PCL、PBAT、PLAおよびEVAからなる群から選択される。好ましくは、担体ポリマーは、PCL、PBATおよびPLAからなる群から選択される。そのような実施形態の利点は、マスターバッチ製造プロセス中の生物学的物質の加熱を低減することである。
【0071】
特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、PLAと、PBATおよび/またはPCLから選択される少なくとも1種の追加のポリエステルと、可塑化デンプンまたは穀粉から選択される少なくとも1種の天然ポリマーとを含む。
【0072】
別の特定の実施形態によれば、本発明のプラスチック物品は、1種またはそれ以上の充填剤をさらに含んでもよい。充填剤は、プラスチック業界で使用される任意の従来の充填剤から選択されてよい。充填剤は天然または合成のものであってよい。充填剤は、無機または有機充填剤から選択できる。好ましい実施形態において、無機充填剤は、カルサイト、炭酸塩または金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウム(または石灰岩)、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸亜鉛、炭酸銅、白亜、ドロマイト、ケイ酸塩、例えば含水ケイ酸マグネシウム、例えばタルクまたは石鹸石、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト)、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸アルミニウム(カオリン)、またはそれらの混合物、例えば雲母、スメクタイト、例えばモンモリロナイト、バーミキュライト、およびパリゴルスカイト-セピオライト、硫酸塩、例えば硫酸バリウム、または硫酸カルシウム(セッコウ)、雲母、水酸化物塩または金属水酸化物、例えば水酸化カルシウムまたは水酸化カリウム(カリ)、または水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムまたは水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、ハイドロタルサイト、金属酸化物または酸化物塩、例えばマグネシウムの酸化物またはカルシウムの酸化物またはアルミニウムの酸化物または酸化鉄または酸化銅、粘土、石綿、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、金属繊維または金属箔、ガラス繊維、磁性充填剤、アラミド繊維、セラミック繊維およびそれらの誘導体またはこれらの材料のブレンド/混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。別の好ましい実施形態において、有機充填剤は、木粉、植物粉または野菜粉、例えば穀粉(トウモロコシ粉、小麦粉、米粉、ダイズ粉、堅果殻粉、クラムシェル粉、トウモロコシの穂軸、コルク粉、もみ殻粉);おがくず;植物繊維、例えば亜麻繊維、木繊維、麻繊維、竹繊維、鶏の羽毛およびそれらの誘導体、またはこれらの材料のブレンド/混合物からなる群から選択される。天然ポリマーは、有機充填剤、例えばリグニン、または多糖類、例えばセルロースまたはヘミセルロース、デンプン、キチン、キトサンおよびこれらの材料の誘導体またはブレンド/混合物としても使用できる。充填剤の種類および正確な量は、プラスチック物品の種類に応じて、および本願で提供されるガイダンスに従って、当業者によって適合させることができる。有利には、プラスチック物品は、炭酸カルシウム、タルクまたはシリカから選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0073】
別の特定の実施形態によれば、本発明のプラスチック物品は、1種またはそれ以上の添加剤をさらに含んでもよい。一般的に言えば、添加剤は最終製品(すなわち、前記マスターバッチ組成物を用いて作製される最終プラスチック物品)の特定の特性を向上させるために使用される。例えば、添加剤は、可塑剤、着色剤、加工助剤、スリップ剤、レオロジー剤、静電防止剤、抗UV剤、強化剤、耐衝撃性改良剤、防曇剤、相溶化剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定化剤、脱酸素剤、インク、接着剤、肥料、および植物衛生製品からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。有利には、プラスチック物品は、可塑剤、スリップ剤および光安定化剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。有利には、プラスチック物品は、20重量%未満の添加剤、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、典型的には0.1~4重量%の添加剤を含む。
【0074】
有利には、本発明のプラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%の上記のポリエステル、特にポリ乳酸(PLA)と、
- 0.01~10%の上記の多糖類担体と、
- 0~30%の上記の140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーと、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0075】
好ましくは、プラスチック物品は、少なくとも3%の担体ポリマー、より好ましくは少なくとも4%の担体ポリマーを含む。別の好ましい実施形態において、プラスチック物品は、0.1%~1%の多糖類担体を含む。別の好ましい実施形態において、プラスチック物品は、1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは約0.25%のPLA分解活性を有する生物学的物質を含む。
【0076】
特定の実施形態において、プラスチック物品は、0.1~0.5%、好ましくは約0.25%のPLA分解活性を有する酵素を含む。
【0077】
特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~94%の上記のポリエステル、特にポリ乳酸(PLA)と、
- 0.1~5%の上記の多糖類担体と、
- 4~20%の上記の140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーと、
- 0.01~1%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0078】
本発明の他の組成物を以下に説明する。言及されていないが、他の組成物はすべて、5%未満の上記の多糖類担体、特に0.1~1%の多糖類担体を追加で含み、そして
第2のポリエステルおよび/または天然ポリマーが、担体ポリマーまたは追加のポリマーに対応できるという特徴を満たす。加えて、先に定義した担体ポリマーも含まれてよく、第2のポリエステルまたは第3のポリエステルと称することができる。
【0079】
特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%のPLAと、
- 0~70%の第2のポリエステルと、
- 0~40%の天然ポリマーと、
- 1~20%の添加剤と、
- 0~40%の少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と、
を含む。
【0080】
特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%のPLAと、
- 0~50%の、好ましくはPBATから選択される第2のポリエステルと、
- 0.1~10%の、好ましくは140℃未満の融解温度を有するポリマーから選択される第3のポリエステルと、
- 0~40%の天然ポリマーと、
- 1~20%の添加剤と、
- 0~40%の少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0081】
特定の実施形態において、プラスチック物品はプラスチックフィルムである。好ましくは、本発明のプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの総重量に基づいて、
- 10~60%、好ましくは20~40%のPLAと、
- 10~60%、好ましくは20~40%の、好ましくはPBATから選択される第2のポリエステルと、
- 0~40%、好ましくは0~30%の、好ましくはデンプンから選択される天然ポリマーと、
- 1~20%の、好ましくは可塑剤または相溶化剤から選択される添加剤と、
- 0.1~10%の、好ましくは炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0082】
別の特定の実施形態において、本発明のプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの総重量に基づいて、
- 10~60%、好ましくは20~40%のPLAと、
- 10~60%、好ましくは20~40%の、好ましくはPBATから選択される第2のポリエステルと、
- 1~20%の、好ましくは可塑剤または相溶化剤から選択される添加剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0083】
別の特定の実施形態において、本発明のプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの総重量に基づいて、
- 10~60%、好ましくは20~40%のPLAと、
- 10~60%、好ましくは20~40%の、好ましくはPBATから選択される第2のポリエステルと、
- 0~10%の第3のポリエステルと、
- 1~20%の、好ましくは可塑剤または相溶化剤から選択される添加剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0084】
別の特定の実施形態において、本発明のプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムの総重量に基づいて、
- 10~60%、好ましくは20~40%のPLAと、
- 10~60%、好ましくは20~40%の、好ましくはPBATから選択される第2のポリエステルと、
- 0~10%の、好ましくはPCLから選択される第3のポリエステルと、
- 1~40%、好ましくは10~30%の、好ましくはデンプンから選択される天然ポリマーと、
- 1~20%の、好ましくは可塑剤または相溶化剤から選択される添加剤と、
- 0.1~10%の、好ましくは炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0085】
特定の実施形態において、本発明のフィルムは、15μm~30μmの厚みを有し、プラスチックフィルムの総重量に基づいて、少なくとも10%~40%のPLA、5%~15%のPCL、40%~70%のPBATを含む。有利には、このようなフィルムは、その用途に関してはMDにおいて140%超の良好な破断点伸びを維持しながら、多糖類担体および/またはPCL等の担体ポリマーを含まないフィルムよりも高い解重合率を有する。
【0086】
特定の実施形態において、本発明の硬質プラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%のPLAと、
- 0~60%の第2のポリエステルと、
- 0~20%の添加剤と、
- 0~40%の少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と、
を含む。
【0087】
好ましい実施形態において、本発明のプラスチック物品は本発明の硬質プラスチックシートから製造される。好ましくは、本発明の硬質プラスチックシートは、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%、好ましくは50~95%のPLAと、
- 0~30%の、好ましくは衝撃強度を改善するPCLから選択される第2のポリエステルと、
- 0~20%の、好ましくは可塑剤、耐衝撃性改良剤および核剤から選択される添加剤と、
- 0~40%の、好ましくは炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と
を含む。
【0088】
特定の実施形態において、本発明の硬質プラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、
- 10~98%のPLAと、
- 0~50%の第2のポリエステルと、
- 0~20%の第3のポリエステルと、
- 0~40%の天然ポリマーと、
- 0~20%の添加剤と、
- 0~40%の少なくとも1種の充填剤と、
- 0.01~10%のPLA分解活性を有する生物学的物質と、
を含む。
【0089】
特定の実施形態において、本発明の硬質プラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて90%超のPLAを含み、1J超の衝撃強度を示す。別の特定の実施形態において、本発明のプラスチック物品は、生物学的物質の液体組成物の使用により、かつ80%のPCLを含むマスターバッチから得られる。したがって、このプラスチック物品は少なくとも4%のPCLを含み、その用途に関して1.6GPa超の良好な剛性を維持しながら、2J超の衝撃強度、および6%超、好ましくは15%超の破断点伸びを示す。
【0090】
生物学的物質
本発明によれば、プラスチック物品は、当該プラスチック物品に含まれる少なくとも1種のポリエステルを分解するのに適した生物学的物質を含む。別の特定の実施形態において、プラスチック物品は、当該プラスチック物品に含まれる少なくとも2種のポリエステルを分解するのに適した生物学的物質を含む。
【0091】
好ましい実施形態において、生物学的物質は、少なくともポリエステル分解活性を有する酵素および/または少なくともポリエステル分解活性を有する酵素を発現し、および場合により分泌する微生物を含む。好ましい実施形態において、生物学的物質は、少なくともポリエステル分解活性を有する酵素からなる。別の特定の実施形態において、生物学的物質は、ポリエステル分解活性を有する少なくとも2種の酵素を含むかまたはそれらからなる。本発明で使用するためのポリエステル分解活性を有する適切な酵素の例としては、デポリメラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、カルボキシルエステラーゼ、プロテアーゼ、またはポリエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、生物学的物質は、PLA分解活性を有する酵素を含むかまたはそれからなる。生物学的物質は、好ましくは、アミコラトプシス種、アミコラトプシスオリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)、トリチラチウムアルブム(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼK、アクチノマヅラケラチニリチカ(Actinomadura keratinilytica)、ラセイラサッカリ(Laceyella sacchari)LP175、サームス種、バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルステルモプロテオリチカス(Bacillus thermoproteolyticus)またはPLAを分解することが知られている任意の市販の酵素、例えばSavinase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Everlase(登録商標)、Protex(登録商標)、Optimase(登録商標)、Multifect(登録商標)、またはサブチリシンCAS9014-01-1ファミリーの任意の酵素もしくはその機能的変異体から選択されるプロテアーゼである。
【0092】
酵素は、純粋な形態もしくは濃縮された形態、または他の賦形剤もしくは希釈剤との混合物であってよい。酵素の組み合わせも同様に使用できる。
【0093】
代替的実施形態において、生物学的物質は、自然にまたは特定の操作(例えば、組換え微生物)の結果としてそのような酵素を産生する微生物を含む。適切な微生物の好ましい例としては、細菌、真菌および酵母が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態において、生物学的物質は、胞子形成微生物および/またはそれらの胞子を含む。
【0094】
特定の実施形態において、生物学的物質は、ナノカプセルにカプセル化された酵素、ケージ分子にカプセル化された酵素、および凝集した酵素を含む。用語「ケージ分子」とは、当該酵素の構造に挿入されて、それらを安定化し、また高温耐性にすることができる分子を指す。カプセル化技術は当業者に周知であり、例えばナノエマルジョンが挙げられる。
【0095】
特定の実施形態において、プラスチック物品は、プラスチック物品の総重量に基づいて、11重量%未満、好ましくは0.01重量%~10重量%の生物学的物質を含む。
【0096】
生物学的物質は、液体または固体の形態で供給されてよい。例えば、生物学的物質は粉末形態であってもよい。特定の実施形態において、プラスチック物品を調製するために使用される生物学的物質は、安定化および/または可溶化成分等の希釈剤または担体と混合された酵素および/または微生物の液体組成物である。例えば、組成物は、水中懸濁液中に酵素および/または微生物、および場合により追加の成分、例えばグリセロール、ソルビトール、デキストリン、デンプン、プロパンジオール等のグリコール、塩等を含む溶液であってよい。
【0097】
本発明によれば、プラスチック物品を調製するために使用される生物学的物質は、ポリエステル分解活性を有する当該生物学的物質、担体および水性溶媒を含む液体組成物の下で供給され、担体はデンプン誘導体、天然ガム、海洋抽出物、微生物および動物多糖類から選択される多糖類である。
【0098】
プラスチック物品の製造方法
本発明はまた、少なくとも1種のポリエステルと、プラスチック物品中に均一に分散された、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質とを含むプラスチック物品の調製方法であって、当該方法は、(a)0.01重量%~10重量%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、少なくとも前記1種のポリエステルとを混合する工程と、(b)プラスチック物品において工程(a)の前記混合物を成形する工程(b)とを含み、
工程(a)において、生物学的物質を、
- 前記ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、多糖類担体と、水とを含む液体組成物、または
- 前記ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチ
から選択される、前記プラスチック物品中で前記生物学的物質を均一に分散させるのに適切な形態で混合することを特徴とする、調製方法を提供する。
【0099】
好ましくは、混合工程(a)は、ポリエステルが部分的または完全な溶融状態にあり、および/または押出機内にある温度で実施される。
【0100】
ポリエステル、生物学的物質および担体、ならびにプラスチック物品中のそれらの比率は上記および実施例で定義されており、当業者は、上記の方法において使用される各成分の比率を調整し、最終比率を得ることができる。
【0101】
液体組成物
第1の実施形態において、生物学的物質は液体組成物の形態で提供される。
【0102】
好ましくは、液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01重量%~35重量%の生物学的物質と、
- 15重量%~95重量%の水性溶媒と、
- 3重量%~80重量%の多糖類担体と
を含む。
【0103】
特に、生物学的物質は、プラスチック組成物および/または最終プラスチック物品のポリエステル分解活性を保持している。
【0104】
液体組成物は、ポリマーとともに押し出されるのに適している。好ましくは、組成物は、合成ポリマー、例えばポリオレフィン、脂肪族または芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリ塩化ビニル、または天然ポリマー、例えばリグニンおよび多糖類、例えばセルロース、ヘミセルロース、デンプンおよびそれらの誘導体とともに押し出されるのに適している。好ましい実施形態において、組成物は、低い融解温度、すなわち融点(Tm)を有する、すなわち140℃未満のTmを有するポリマーとともに押し出されるのに適している。
【0105】
好ましい実施形態において、水性溶媒は水である。そのような実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、15%~95%の水、および5%~85%の他の成分、例えば少なくとも0.01%~35%の生物学的物質および3%~80%の担体を含む。
【0106】
特定の実施形態において、液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.3重量%~30重量%の生物学的物質と、
- 19重量%~85重量%の水性溶媒と、
- 4重量%~80重量%の多糖類担体と
を含む。
【0107】
好ましい実施形態において、液体組成物は35重量%未満の生物学的物質を含む。別の特定の実施形態において、組成物は30重量%未満の生物学的物質を含む。別の特定の実施形態において、組成物は20重量%未満の生物学的物質を含む。
【0108】
好ましい特定の実施形態において、液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、80重量%未満、好ましくは75重量%未満、70重量%未満、さらにより好ましくは60重量%未満の水性溶媒を含む。別の好ましい実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、20重量%超、好ましくは30重量%超かつ80重量%未満の水性溶媒を含む。別の特定の実施形態において、組成物は、20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~75重量%、より好ましくは40重量%~60重量%の水性溶媒を含む。別の特定の実施形態において、組成物は約50%の水性溶媒を含む。別の特定の実施形態において、組成物は約40%の水性溶媒を含む。好ましい実施形態において、水性溶媒は水である。好ましい実施形態において、液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、75重量%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満の水を含む。別の好ましい実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、20重量%超、好ましくは30%超かつ80%未満の水を含む。別の特定の実施形態において、組成物は、20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~75重量%、より好ましくは40重量%~60重量%の水を含む。別の特定の実施形態において、組成物は約50%の水を含む。別の特定の実施形態において、組成物は約40%の水を含む。
【0109】
好ましい特定の実施形態において、液体組成物は、5重量%超、好ましくは10重量%超、さらにより好ましくは15重量%超の多糖類担体を含む。
【0110】
したがって、好ましい実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.3重量%~30重量%の生物学的物質と、
- 19重量%~60重量%の水性溶媒と、
- 15重量%~70重量%の多糖類担体と
を含む。
【0111】
別の好ましい実施形態において、組成物は、70重量%未満、好ましくは60重量%未満の担体を含む。特定の実施形態において、組成物は、5%~70%、好ましくは10%~60%の担体を含む。別の特定の実施形態において、組成物は、10%~50%の担体を含む。
【0112】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%の生物学的物質と、
- 30~75%の水と、
- 10~69.99%の担体と
を含む。
【0113】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%の生物学的物質と、
- 30~60%の水と、
- 20~45%の担体と
を含む。
【0114】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%の生物学的物質と、
- 40~60%の水と、
- 20~45%の担体と
を含む。
【0115】
別の特定の実施形態において、組成物は、約50%の水、0.01%~35%の生物学的物質および20%~50%の担体を含む。
【0116】
別の特定の実施形態において、組成物は、約40%の水、0.01%~35%の生物学的物質および20%~60%の担体を含む。
【0117】
特定の実施形態において、多糖類担体/水性溶媒の重量比は4未満である。
【0118】
特定の実施形態において、組成物中の多糖類担体の量は、水性溶媒中の担体の最大溶解度の4%~100%、すなわち水性溶媒中の担体の飽和濃度の4%~100%である。
【0119】
あるいはまたは加えて、組成物中の多糖類担体の量は、組成物中の担体の最大溶解度の4%~100%、すなわち組成物中の担体の飽和濃度の4%~100%である。
【0120】
本発明によれば、組成物中の多糖類担体の存在により、組成物中だけでなく、組成物が部分的または完全に溶融ポリマーに導入される押出プロセス等の熱処理中にも、生物学的物質を保護および安定化することが可能になる。
【0121】
特定の実施形態において、担体は周囲温度で固体形態である。有利には、担体は周囲温度で水等の水性溶媒に可溶性である。好ましくは、担体は、少なくとも周囲温度で液体組成物に可溶性である。あるいはまたは加えて、担体は約100℃の温度で液体組成物に可溶性である。
【0122】
特定の実施形態において、担体はデンプン誘導体である。好ましくは、担体はマルトデキストリンである。そのような特定の実施形態において、マルトデキストリン/水性溶媒の重量比は、好ましくは3~4である。特定の実施形態において、組成物中のマルトデキストリンの量は、組成物中の最大溶解度の5~100%、好ましくは26~100%、より好ましくは39~100%である。したがって、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、4重量%超、好ましくは20重量%超、好ましくは30重量%超のマルトデキストリンを含む。
【0123】
特定の実施形態において、担体は天然ガムである。好ましくは、担体は、アラビアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、カラヤゴムから選択され、より好ましくは、担体はアラビアゴムである。特定の実施形態において、アラビアゴム/水性溶媒の重量比は、0.1~1、好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.35~0.6、さらにより好ましくは0.4~0.5である。別の好ましい実施形態において、アラビアゴム/水性溶媒の重量比は0.8超、好ましくは0.8~1である。特に、組成物中のアラビアゴムの量は、組成物中の最大溶解度の6%~100%、好ましくはその最大溶解度の40%~100%、好ましくはその最大溶解度の60%~100%である。別の特定の実施形態において、組成物は、4重量%超、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、さらにより好ましくは20%超のアラビアゴムを含む。別の好ましい実施形態において、組成物は、70重量%未満、好ましくは60重量%未満のアラビアゴムを含む。特定の実施形態において、組成物は、5%~70%、好ましくは10%~60%のアラビアゴムを含む。別の特定の実施形態において、組成物は、10%~50%のアラビアゴムを含む。
【0124】
特定の実施形態において、担体は海洋抽出物である。好ましくは、担体は、カラギーナンまたはアルギネートから選択される。
【0125】
別の特定の実施形態において、担体は微生物多糖類である。好ましくは、担体はキサンタンである。
【0126】
別の特定の実施形態において、担体は動物多糖類である。好ましくは、担体はキトサンである。
【0127】
特定の実施形態において、液体組成物は、デンプン誘導体、天然ガム、海洋抽出物、微生物および動物多糖類から選択される少なくとも2種の担体を含む。別の特定の実施形態において、担体/生物学的物質の比は0.8~1.2、好ましくは約1である。別の特定の実施形態において、担体/生物学的物質の比は1超、好ましくは2超である。本発明によれば、液体組成物は、当該組成物中の生物学的物質として使用されるポリエステル分解微生物の培養上清に由来する糖、タンパク質、脂質、有機酸、塩およびビタミンをさらに含んでもよい。このような上清は、酵素の濃度を増加させるため、および/またはDNAもしくは細胞破壊片等の他の成分を除去するために、(例えば、機械的または物理的または化学的に)事前に処理されてもよい。
【0128】
特定の実施形態において、組成物は、ポリオール、例えばグリセロール、ソルビトールまたはプロピレングリコールをさらに含んでもよい。これは、ポリオールを含む安定化溶液中で調整された市販の生物学的物質、好ましくは市販の酵素を用いて本発明の組成物を製造する場合に特に当てはまる。特定の実施形態によれば、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて最大10重量%、好ましくは最大5%のポリオールを含む。別の特定の実施形態によれば、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて10重量%~20重量%のポリオールを含む。
【0129】
特定の実施形態によれば、液体組成物は、粒径が20μm未満の不溶性成分を含んでもよい。
【0130】
あるいはまたは加えて、組成物は、炭酸カルシウム、塩化カルシウムまたは他のカルシウム鉱物等のいくつかの生物学的物質の熱安定性を高めることが知られているカルシウム成分等の無機成分をさらに含む。
【0131】
有利には、本発明の液体組成物は安定である、すなわち化学的および生物学的に安定である。本発明において、「化学的に安定」とは、生物学的物質が室温で、暗所において、所定の期間の間、活性の著しい損失を示さない組成物を指す。より具体的には、「化学的に安定」とは、生物学的物質の分解活性の損失が、少なくとも30日間、好ましくは少なくとも90日間、より好ましくは少なくとも1年間、組成物への導入前の当該生物学的物質の分解活性と比較して50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満である組成物を指す。本発明によれば、本発明の組成物は、4℃で少なくとも90日間化学的に安定である。特に、本発明の組成物中での生物学的物質の分解活性の損失は、少なくとも90日間、組成物への導入前の当該生物学的物質の分解活性と比較して10%未満である。本発明において、用語「生物学的に安定」とは、室温で、暗所において、少なくとも30日間、好ましくは少なくとも90日間、より好ましくは少なくとも1年間の所定の期間の間、細菌、酵母または真菌の増殖を示さない組成物を指す。特に、組成物は、抗真菌および/または抗菌成分、例えば、ソルビン酸および/またはその塩、安息香酸およびその塩、無水亜硫酸または亜硫酸塩、硝酸塩または亜硝酸塩、プロピオン酸、酪酸、ナタマイシン、パラベン、酢酸、クエン酸、ホウ酸、植物抽出物をさらに含む。
【0132】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%のPLA分解酵素と、
- 30~75%の水と、
- 10~69.99%のアラビアゴムと
を含む。
【0133】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%のPLA分解酵素と、
- 30~60%の水と、
- 20~45%のアラビアゴムと
を含む。
【0134】
別の特定の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 0.01~35%のPLA分解酵素と、
- 40~60%の水と、
- 20~45%のアラビアゴムと
を含む。
【0135】
別の特定の実施形態において、組成物は、約50%の水、0.01%~35%のPLA分解酵素および20%~50%のアラビアゴムを含む。
【0136】
別の特定の実施形態において、組成物は、約40%の水、0.01%~35%のPLA分解酵素および20%~60%のアラビアゴムを含む。
【0137】
上記組成物はすべて、場合により、好ましくはタンパク質、塩、ポリオールから選択される、0%~20%、好ましくは0%~5%の他の成分を含む。さらに、そのような組成物のPLA分解酵素は、好ましくはプロテアーゼから選択される。
【0138】
特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 20重量%~80重量%の水、好ましくは40重量%~60重量%の水と、
- 0.01重量%~30重量%のPLA分解酵素、好ましくは5重量%~30重量%のプロテアーゼと、
- 10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~35重量%のアラビアゴムと
を含む。
【0139】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 20重量%~80重量%の水、好ましくは40重量%~60重量%の水と、
- 0.01重量%~30重量%のPLA分解酵素、好ましくは5重量%~30重量%のプロテアーゼと、
- 10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~35重量%のアラビアゴムと、
- 0重量%~20重量%の、好ましくはタンパク質、塩、ポリオールから選択される他の成分と
を含む。
【0140】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 20重量%~80重量%の水、好ましくは40重量%~60重量%の水と、
- 0.01重量%~30重量%のPLA分解酵素、好ましくは5重量%~30重量%のプロテアーゼと、
- 10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~40重量%のマルトデキストリンと
を含む。
【0141】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、
- 20重量%~80重量%の水、好ましくは40重量%~60重量%の水と、
- 0.01重量%~30重量%のPLA分解酵素、好ましくは5重量%~20重量%のプロテアーゼと、
- 10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~40重量%のマルトデキストリンと
- 0重量%~20重量%の、好ましくはタンパク質、塩、ポリオールから選択される他の成分と
を含む。
【0142】
有利には、液体組成物は、少なくとも周囲温度で液体形態である。好ましくは、液体組成物は、部分的または完全な溶融状態にあるポリマーに当該組成物が導入される温度で液体形態である。
【0143】
有利には、上記の組成物すべてにおいて、担体および生物学的物質の量は乾燥物質、すなわち完全な脱水または水分蒸発または水分除去後の量として表される。
【0144】
マスターバッチ
特定の実施形態において、生物学的物質の液体組成物は、低い融点(140℃未満、好ましくは120℃未満)および/または低いガラス転移温度(70℃未満)を有する第1の担体ポリマー、例えばPCL、PBSA、PBATに導入され、マスターバッチを調製する。次に、得られたマスターバッチを、高い融点を有する第2のポリエステル、特にPLAに添加する。例えば、液体組成物を、部分的な溶融状態になるように約70℃に加熱されたPCLに添加される。次に、混合物を、部分的に溶融した状態になるように約150℃に加熱されたPLAに直接添加する。あるいは、混合物を冷却し、そして場合により、調整した後、少なくとも部分的に溶融している間に第2のポリエステルに添加してもよい。
【0145】
溶融形態または固体形態のマスターバッチも本発明の一部である。
【0146】
したがって、本発明は、ポリエステル分解活性を有する生物学的物質と、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する担体ポリマーとを含むマスターバッチを提供する。
【0147】
生物学的物質および担体ポリマーは上記および実施例で定義され、プラスチック物品に関して定義された上記成分の性質、組成および特性に関するすべての定義および精度は、マスターバッチの定義にも適用される。
【0148】
マスターバッチは特に、当該マスターバッチの総重量に基づいて、50重量%~95重量%の担体ポリマー、好ましくは70重量%~90重量%の担体ポリマーを含む。
【0149】
マスターバッチは有利には、当該マスターバッチの総重量に基づいて、5重量%~50重量%の生物学的物質組成物、10重量%~30重量%の生物学的物質組成物を含む。
【0150】
有利には、マスターバッチは、上記で定義された多糖類担体を含む生物学的物質の液体組成物を用いて調製される。
【0151】
したがって、本発明のマスターバッチは、上記で定義された多糖類担体も含む。特に、マスターバッチは、当該マスターバッチの総重量に基づいて、1%~30%、好ましくは1%~15%の多糖類担体を含む。
【0152】
有利には、100℃超の温度での担体ポリマー中の液体組成物、したがって生物学的物質の滞留時間は可能な限り短く、好ましくは5秒~10分、より好ましくは5分、3分、2分未満である。
【0153】
以下は、マスターバッチを使用して上記のプラスチック物品を調製する方法であって、本発明による物品の製造方法においてさらに使用するために調整される、マスターバッチが固体状態である工程を伴うかまたは伴わない方法の説明である。担体ポリマーは、「第1のポリマー」とも識別され得る。マスターバッチ、その調製および使用の説明において、担体ポリマーの定義、精度、特性は第1のポリマーと同一である。
【0154】
例えば、当該方法は、
a)ポリエステル分解生物学的物質および担体ポリマーを含むマスターバッチを、
(i)担体ポリマーを加熱すること;および
(ii)担体ポリマーの加熱中に、マスターバッチの総重量に基づいて5重量%~50重量%の生物学的物質を導入すること
により調製する工程と、
(b)プラスチック物品の製造中に、ポリエステル系マトリックスにマスターバッチを導入する工程と
を含み、
ここで、工程(a)は、担体ポリマーが部分的または完全な溶融状態である温度で実施され、また生物学的物質は、ポリエステル系マトリックスのポリエステルを分解し、工程(ii)の間に上記で定義された液体組成物の形態で導入され、さらに工程b)は、第1のポリマーおよびポリエステル系マトリックスのポリエステルの両方が部分的または完全な溶融状態である温度で実施される。
【0155】
したがって、マスターバッチを調製する工程(a)は、第1のポリマーの性質に応じて40℃以上、特に45℃、55℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃以上、または150℃超の温度で実施してよい。典型的には、この温度は300℃を超えない。より詳細には、温度は250℃を超えない。さらにより詳細には、温度は200℃を超えない。工程(a)は、低い融点、すなわち140℃未満の融点および/または低いガラス転移温度(70℃未満)を有する担体ポリマーを使用して実施される。例えば、工程(a)はPCL、PBAT、またはPBSAを使用して実施される。混合工程の温度は、マスターバッチの製造に使用されるポリマーおよび/または生物学的物質の種類に応じて、当業者により適合させることができる。特に、温度は、第1のポリマーの融点、すなわち融解温度に応じて選択される。特定の実施形態において、工程(a)は、第1のポリマーの融点で実施される。その場合、ポリマーは部分的または完全な溶融状態になる。別の実施形態において、工程(a)は、当該ポリマーのガラス転移温度より高い温度、特に当該ポリマーのガラス転移温度(Tg)と融解温度との間の温度で実施される。別の特定の実施形態において、混合工程(a)は、当該ポリマーの融解温度よりも高い温度で実施される。
【0156】
本発明によれば、担体ポリマーは140℃未満の温度で加熱され、生物学的物質は当該加熱工程中に第1のポリマーに導入される。より一般的に言えば、マスターバッチの調製工程(工程a)は、第1のポリマーが部分的または完全な溶融状態にある温度で実施されるため、押出中に生物学的物質が第1のポリマーに埋め込まれる。好ましくは、工程a)は押出により実施される。
【0157】
好ましい実施形態において、マスターバッチは、(i)140℃未満の融解温度を有する担体ポリマーを押し出すこと、および(ii)第1のポリマーの押出中に生物学的物質を導入することによって調製され、その後当該マスターバッチをポリエステル系マトリックスに導入し、プラスチック物品を調製する。
【0158】
特定の実施形態において、担体ポリマーは、好ましくはポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、またはコポリマーから選択されるポリエステルである。別の特定の実施形態において、第1のポリマーは、好ましくはデンプンから選択される天然ポリマーである。別の特定の実施形態において、マスターバッチは、「ユニバーサル」ポリマー、すなわち、コポリマー(例えば、エチレンビニルアセテートコポリマー、EVA)等の広範囲のポリマーと適合性のあるポリマーを含む。
【0159】
マスターバッチは、140℃未満の融解温度および/または70℃未満のガラス転移温度を有する第1のポリマーを含む。好ましくは、マスターバッチの第1のポリマーは、120℃未満の融解温度および/または30℃未満のガラス転移温度を有する。例えば、そのような第1のポリマーは、PCL、PBAT、PLAおよびEVAからなる群から選択される。好ましくは、そのような第1のポリマーは、PCL、PBATおよびPLAからなる群から選択される。そのような実施形態の利点は、マスターバッチ製造方法中の生物学的物質の加熱を低減することである。
【0160】
マスターバッチは、当該マスターバッチの総重量に基づいて5重量%~50重量%の生物学的物質を含み、生物学的物質は上記液体組成物の形態で供給される。好ましくは、生物学的物質は、当該マスターバッチの総重量に基づいて、10重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%に相当する。特定の実施形態において、マスターバッチは約20重量%の生物学的物質の組成物を含む。特定の実施形態において、ポリエステル分解生物学的物質は、第1のポリマーを分解できる。あるいはまたは加えて、ポリエステル分解生物体は、マスターバッチを組み込んだ最終プラスチック物品の少なくとも1種のポリエステルを分解できる。
【0161】
マスターバッチは1種または数種の追加の化合物をさらに含んでもよい。特に、マスターバッチは1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。一般的に言えば、添加剤は最終製品の特定の特性を向上させるために使用される。例えば、添加剤は、可塑剤、着色剤、加工助剤、レオロジー剤、静電防止剤、抗UV剤、強化剤、耐衝撃性改良剤、相溶化剤、スリップ剤、難燃剤、酸化防止剤、酸化促進剤、光安定化剤、脱酸素剤、接着剤、製品、賦形剤、スリップ剤からなる群から選択されてよいが、これらに限定されない。有利には、マスターバッチは、当該マスターバッチの総重量に基づいて、20重量%未満の添加剤、好ましくは10重量%未満、典型的には0.1~10重量%の添加剤を含む。好ましくは、マスターバッチは、可塑剤、スリップ剤および光安定化剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。特に、マスターバッチは、少なくとも1種の充填剤をさらに含んでよい。充填剤は、プラスチック業界で使用される任意の従来の充填剤から選択できる。充填剤の種類および正確な量は、マスターバッチ組成物の種類に応じて、当業者によって適合させることができる。有利には、マスターバッチは、炭酸カルシウム、タルクまたはシリカから選択される耐酸充填剤から選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0162】
特定の実施形態において、マスターバッチ組成物は、当該マスターバッチの総重量に基づいて、
- 50~95重量%の担体ポリマーと;
- 5~50重量%のポリエステル分解生物学的物質と;場合により、
- 少なくとも1種の添加剤と
を含む。
【0163】
別の特定の実施形態において、マスターバッチは、当該マスターバッチの総重量に基づいて、
- 70~90重量%の担体ポリマーと;
- 10~30重量%のポリエステル分解生物学的物質と;場合により、
- 少なくとも1種の添加剤と
を含む。
【0164】
特定の実施形態において、マスターバッチは、「コンパウンディング」と呼ばれるプロセス、通常、第1のポリマーが融解され、生物学的物質と混合される押出造粒プロセスにより製造される。コンパウンディングでは、マスターバッチの均一性、均質性および分散性を確保するために、加熱プロセス中に混合およびブレンドの技術を組み合わせる。コンパウンディングは当業者に公知の技術である。このようなコンパウンディングプロセスは、単軸スクリュー押出機、共回転または逆回転設計の多軸スクリュー押出機、分散型ニーダー、往復式単軸スクリュー押出機(コニーダー)等の押出機を用いて実施してよい。
【0165】
より一般的には、マスターバッチを調製する工程(a)は押出機を用いて実施することができ、第1のポリマーは加熱され、融解され、生物学的物質と混合される。第1のポリマーは、粉末または顆粒の形態、好ましくは顆粒の形態で押出機に導入されてよい。
【0166】
好ましい実施形態において、マスターバッチの製造工程(a)に使用される押出機は、多軸スクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機、より好ましくは共回転二軸スクリュー押出機である。特定の実施形態において、押出機は、スクリューの後に静的ミキサーをさらに備える。別の実施形態において、押出機は、穴が開けられたダイ、好ましくは少なくとも2つ穴のダイと共に使用される。当業者は、ダイの特性(例えば、穴の数およびサイズ等)を、意図する圧力、出力またはマスターバッチに容易に適合させるであろう。
【0167】
好ましい実施形態において、押出機内での第1のポリマーおよび薬物の混合物の滞留時間は5秒~3分であり、好ましくは2分未満である。マスターバッチが120℃未満の融解温度を有するポリマーを含む場合、押出機内の混合物の滞留時間は5秒~10分、好ましくは5分未満である。
【0168】
当業者は、押出機の特性(例えば、スクリューの長さおよび直径、スクリュープロファイル、脱気ゾーン等)および滞留時間を、第1のポリマー、生物学的物質、意図するマスターバッチの種類に容易に適合させるであろう。
【0169】
上記で開示したように、生物学的物質は、好ましくは、上記の液体組成物の形態で押出機に導入される。
【0170】
特に、このような押出機は、主要ホッパーおよびいくつかの連続した加熱ゾーンを含むことができ、温度は独立して制御および調整でき、プロセス中の異なる時点で追加の成分を追加してもよい。水等の揮発性生成物を除去するために、押出中に真空および自然脱気ゾーンが必要である。
【0171】
生物学的物質の液体組成物はポンプで導入される。特定の実施形態において、生物学的物質は、混合工程の後期段階(すなわち、最後の加熱ゾーン)で、より具体的には、第1のポリマーが部分的または完全な溶融状態であるときに導入される。したがって、高温への曝露が減少する。好ましくは、押出機内の組成物の滞留時間は、第1のポリマーの滞留時間の半分以下である。別の特定の実施形態において、生物学的物質は押出機内にポリマーの前に導入される。したがって、組成物とポリマーとの間の接触が増加する。
【0172】
本発明によれば、マスターバッチを調製する工程(a)の後、当該マスターバッチは、任意の適切な固体形態に調整され得る。この点に関しては、好ましい実施形態において、マスターバッチはダイを通してロッドに成形される。次いで、ロッドを冷却し、その後、マスターバッチの顆粒および/またはトローチの形に細断し、場合により乾燥させる。水中ペレタイザーを使用してもよい。さらなる実施形態において、マスターバッチの顆粒を粉砕または微粉化し、当該マスターバッチの粉末を製造してもよい。そうすると、工程(b)の前に混合物が部分的または完全な溶融状態になるように、好ましくは押出機内で、粉末を押出造粒プロセスにかけることが可能である。
【0173】
本発明の方法によれば、マスターバッチは、本発明のプラスチック物品を製造するために、工程(b)の間にポリエステル系マトリックスに導入される。マスターバッチをポリエステル系マトリックスに導入する工程は、第1のポリマーおよびポリエステル系マトリックスの少なくとも1種のポリエステルが部分的または完全な溶融状態である温度で実施される。工程(a)のマスターバッチおよびポリエステル系マトリックスが顆粒形態であるとき、マスターバッチをポリエステル系マトリックスに導入する工程(b)の前に、顆粒を乾式混合の工程にかけることが可能である。
【0174】
好ましくは、ポリエステル系マトリックスは、乳酸および/またはコハク酸および/またはテレフタル酸のコポリマーまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む。
【0175】
有利には、ポリエステル系マトリックスは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびそれらの誘導体またはブレンド/混合物から選択される少なくとも1種のポリエステルを含む。好ましい実施形態において、ポリエステル系マトリックスは、PLAおよび/またはPCLおよび/またはPBATから選択される少なくとも1種のポリエステル、より好ましくは少なくともPLAを含む。
【0176】
当業者は、最終プラスチック物品の性質に応じて、ポリエステル系マトリックスのポリエステルを選択できる。
【0177】
本発明によれば、ポリエステル系マトリックスは、少なくとも1種の天然ポリマーおよび/または少なくとも1種の充填剤および/または少なくとも1種の添加剤をさらに含んでもよい。
【0178】
天然ポリマーは、リグニン、多糖類、例えばセルロースまたはヘミセルロース、デンプン、キチン、キトサン、およびそれらの誘導体またはそれらのブレンド/混合物の群から選択されてよい。特定の実施形態において、天然ポリマーは、マスターバッチ組成物の製造に使用する前に、(例えば、水またはグリセロール等の可塑剤により)可塑化される。このような可塑化工程は、天然ポリマーの化学構造を改変し、プラスチック製造プロセスで使用できるようにする。
【0179】
充填剤は、プラスチック業界で使用される任意の従来の充填剤から選択できる。充填剤の種類および正確な量は、マスターバッチ組成物の種類に応じて、および本願で提供されるガイダンスに従って、当業者によって適合させることができる。有利には、プラスチック物品は、炭酸カルシウム、タルクまたはシリカから選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0180】
本発明の目的は、ポリエステル系マトリックスを大量の生物学的物質を含むマスターバッチと混合し、生物学的物質が正確に添加され、均一に分散されたプラスチック物品を実現する方法を提供することである。
【0181】
本発明によれば、混合工程(a)および場合により適切な固体形態の混合物の調整の後、(b)製造されたプラスチック組成物をプラスチック物品に成形する。
【0182】
特定の実施形態において、工程(b)は、高い融点、すなわち140℃超の融点を有するポリエステルを使用して実施される。例えば工程(b)はPLAを使用して実施される。
【0183】
有利には、工程(b)は、ポリエステル系マトリックスのポリエステルおよび第1のポリマーが部分的または完全な溶融状態にある温度で実施される。例えば、工程(b)は、ポリマーの性質に応じて40℃以上、特に45℃、55℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃以上、または150℃超の温度で実施してよい。典型的には、この温度は300℃を超えない。より詳細には、温度は250℃を超えない。さらにより詳細には、温度は200℃を超えない。工程(b)の温度は、マスターバッチおよびポリエステル系マトリックスの種類および/または意図するプラスチック物品の性質に応じて、当業者によって適合させることができる。特に、温度は、ポリエステル系マトリックスのポリエステルおよび第1のポリマーの融点、すなわち融解温度に応じて選択される。
【0184】
特定の実施形態において、工程(b)はポリエステル系マトリックスのポリエステルの融点で実施される。そうすると、ポリエステルは部分的または完全な溶融状態になる。別の実施形態において、工程(b)は当該ポリエステルのガラス転移温度(Tg)と融点との間の温度で実施される。別の特定の実施形態において、工程(b)は当該ポリエステルの融点よりも高い温度で実施される。
【0185】
典型的には、当該工程(b)は、押出、押出コンパウンディング、押出ブロー成形、インフレートフィルム押出、キャストフィルム押出、カレンダー加工および熱成形、射出成形、圧縮成形、押出膨潤、回転式成形、アイロニング、コーティング、層形成、膨張、引抜成形、圧縮造粒、または3D印刷によって実施されてよい。そのような操作は、意図するプラスチック物品の性質に応じてプロセス条件(例えば、温度、滞留時間等)を容易に適合させる当業者に周知である。一例として、インフレートフィルム押出は、プラスチックフィルムの製造に特に適している。別の例として、キャストフィルム押出はプラスチックシートの製造に特に適しており、射出成形、熱成形、ブロー成形、回転式成形または3D印刷は硬質プラスチック物品の製造に特に適している。
【0186】
特定の実施形態において、工程(b)は、粉末または顆粒の形態、好ましくは顆粒の形態の固体マスターバッチを用いて実施される。
【0187】
特定の実施形態において、プラスチック物品の総重量に基づいて、0.5~30重量%、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満、さらにより好ましくは10重量%未満のマスターバッチがポリエステル系マトリックスに添加される。特定の実施形態において、約5重量%のマスターバッチがポリエステル系マトリックスに導入される。
【0188】
別の特定の実施形態において、1重量%~5重量%のマスターバッチが、95重量%~99重量%の部分的または完全な溶融状態のポリエステル系マトリックスに組み込まれ、および/またはそれと混合される。
【0189】
別の特定の実施形態においては、本発明は、少なくともPLAを含むプラスチック物品の調製方法に関し、
a)PLA分解生物学的物質およびPCLを含むマスターバッチを、
(i)PCLを加熱すること;および
(ii)PCLの加熱中に、マスターバッチの総重量に基づいて5重量%~50重量%のPLA分解生物学的物質を導入すること
により調製する工程と、
(b)プラスチック物品の製造中に、PLA系マトリックスにマスターバッチを導入する工程と
を含み、
ここで、工程(a)は、PCLが部分的または完全な溶融状態である温度、好ましくは65℃超、より好ましくは約70℃超で実施され、また生物学的物質は、工程(ii)の間に液体組成物の形態で導入され、さらに工程b)は、PCLおよびPLAの両方が部分的または完全な溶融状態である温度、好ましくは120℃超、より好ましくは約155℃超で実施される。
【0190】
直接製造
別の実施形態において、生物学的物質の液体組成物は、プラスチック物品を構成するポリマーに直接導入される。
【0191】
本発明の目的はまた、下記工程を含む上記のプラスチック物品の調製方法を提供することである:
- (a)11重量%未満、特に0.1重量%~10重量%のポリエステル分解活性を有する生物学的物質を、少なくとも前記ポリエステルと混合する工程と、
- (b)工程(a)の前記混合物をプラスチック物品に成形する工程(b)と
を含み、ここで、工程(a)において、生物学的物質を、多糖類担体を含む液体組成物の形態で混合する。
【0192】
特定の実施形態において、前記方法は、工程(b)の前に、少なくとも1種の添加剤および/または少なくとも1種の第2のポリエステルおよび/または天然ポリマーを、ポリエステルおよび生物学的物質と混合する工程をさらに含む。あるいは、そのような添加剤および/またはポリエステルおよび/または天然ポリマーは、工程(a)においてポリエステルおよび生物学的物質と混合することができる。
【0193】
特定の実施形態において、工程(a)で使用されるポリエステルは顆粒形態である。別の実施形態において、当該ポリエステルは粉末形態である。この目的のために、混合工程(a)の前に、ポリエステルを機械的に前処理し、粉末形態にすることができる。特に、ポリエステルは粉砕してもよい。
【0194】
混合工程(a)は、ポリエステルが部分的または完全な溶融状態にある温度で実施される。したがって、混合工程(a)は、ポリエステルの性質に応じて40℃以上、特に45℃、55℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃以上、または150℃超の温度で実施してよい。典型的には、この温度は300℃を超えない。より詳細には、温度は250℃を超えない。混合工程の温度は、プラスチック物品の製造のために使用されるポリエステルおよび/または生物学的物質の種類に応じて、当業者により適合させることができる。特に、温度は、ポリエステルの融点、すなわち融解温度に応じて選択される。特定の実施形態において、混合工程(a)は、プラスチック物品のポリエステルの融点で実施される。そうすると、ポリエステルは部分的または完全な溶融状態になる。別の実施形態において、混合工程(a)は、ポリエステルのガラス転移温度より高い温度、特にポリエステルのガラス転移温度(Tg)と融解温度との間の温度で実施される。別の特定の実施形態において、混合工程(a)は、ポリエステルの融解温度よりも高い温度で実施される。
【0195】
特定の実施形態において、プラスチック組成物は、「コンパウンディング」と呼ばれるプロセス、通常、ポリエステルが融解され、生物学的物質と混合される押出造粒プロセスにより工程a)から製造され得る。コンパウンディングでは、最終コンパウンドの均一性、均質性および分散性を確保するために、加熱プロセス中に混合およびブレンドの技術を組み合わせる。コンパウンディングは当業者に公知の技術である。このようなコンパウンディングプロセスは、単軸スクリュー押出機、共回転または逆回転設計の多軸スクリュー押出機、分散型ニーダー、往復式単軸スクリュー押出機(コニーダー)等の押出機を用いて実施してよい。
【0196】
好ましくは、混合工程(a)は押出機を用いて実施することができ、ポリエステルは加熱され、融解され、生物学的物質と混合される。ポリエステルは、粉末または顆粒の形態、好ましくは顆粒の形態で押出機に導入されてよい。
【0197】
特定の実施形態によれば、混合工程(a)は、PCL、PBSA、PBAT等の低融点(140℃未満、好ましくは120℃未満)を有する第1のポリマーに生物学的物質を導入する第1の工程と;次に、PLA等の高融点を有する第2のポリエステルを含むポリエステル系マトリックスを、第1の工程で得られた混合物に添加する第2の工程とを含む。例えば、液体組成物を、部分的に溶融した状態になるように約70℃に加熱されたPCLに添加する。次に、約150℃に加熱され、部分的な溶融状態にあるPLAを混合物に直接添加する。
【0198】
好ましい実施形態において、プラスチック組成物の製造工程a)に使用される押出機は、多軸スクリュー押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機、より好ましくは共回転二軸スクリュー押出機である。特定の実施形態において、押出機は、スクリューの後に静的ミキサーをさらに備える。別の実施形態において、押出機は、穴が開けられたダイと共に使用される。
【0199】
好ましい実施形態において、押出機内での混合物の滞留時間は5秒~3分であり、好ましくは2分未満である。プラスチック組成物が120℃未満の融解温度を有するポリエステルを含む場合、押出機内の混合物の滞留時間は好ましくは5分未満である。
【0200】
当業者は、押出機の特性(例えば、スクリューの長さおよび直径、スクリュープロファイル、脱気ゾーン等)および滞留時間を、ポリエステル、生物学的物質、意図するプラスチック組成物の種類に容易に適合させるであろう。
【0201】
上記で開示したように、生物学的物質は、好ましくは、上記の液体組成物の形態で押出機に導入される。
【0202】
特に、このような押出機は、主要ホッパーおよびいくつかの連続した加熱ゾーンを含むことができ、温度は独立して制御および調整でき、プロセス中の異なる時点で追加の成分を追加してもよい。水等の揮発性生成物を除去するために、押出中に真空および自然脱気ゾーンが必要である。
【0203】
液体形態の生物学的物質は、ポンプで導入される。特定の実施形態において、生物学的物質は、混合工程の後期段階(すなわち、最後の加熱ゾーン)で、より具体的には、ポリエステルが部分的または完全な溶融状態にあるときに導入される。したがって、高温への曝露が減少する。好ましくは、押出機内の生物学的物質の滞留時間は、ポリエステルの滞留時間の半分以下である。別の特定の実施形態において、液体組成物は押出機内にポリエステルの前に導入される。したがって、組成物とポリエステルとの間の接触が増加する。
【0204】
特定の実施形態によれば、混合工程(a)は、2つの押出機、すなわち主要押出機および主要押出機に連結された第2の押出機を用いて実施され、生物学的物質は、第2の押出機内で、140℃未満の融解温度を有する第1のポリエステルと混合され、主要押出機内のポリエステル系マトリックスが既に部分的または完全な溶融状態にあるゾーンに導入される。このようなポリエステル系マトリックスは、少なくとも生物学的物質によって分解されるポリエステル、および最終的には可塑化デンプンから選択される天然ポリマーを含む。特定の実施形態によれば、主要押出機は、単軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機から選択され、第2の押出機は単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機またはサイドフィーダーから選択される。
【0205】
本発明によれば、混合工程(a)の後、混合物は任意の適切な固体形態に調整され得る。この点に関し、好ましい実施形態において、工程(a)の混合物はダイを通してロッドに成形される。次いで、ロッドを冷却し、場合により乾燥させて、プラスチック組成物の顆粒の形に細断する。さらなる実施形態において、プラスチック組成物の顆粒を粉砕または微粉化し、プラスチック組成物の粉末を製造してもよい。
【0206】
本発明によれば、混合工程(a)および場合により適切な固体形態の混合物の調整の後、(b)製造されたプラスチック組成物をプラスチック物品に成形する。
【0207】
有利には、工程(b)は、プラスチック組成物のポリエステルが部分的または完全な溶融状態にある温度で実施される。例えば、工程(b)は、プラスチック組成物中のポリエステルの性質に応じて40℃以上、特に45℃、55℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃以上、または150℃超の温度で実施してよい。典型的には、この温度は300℃を超えない。より詳細には、温度は250℃を超えない。工程(b)の温度は、プラスチック組成物およびプラスチック組成物が含むポリエステルの種類および/または意図するプラスチック物品の性質に応じて、当業者によって適合させることができる。特に、温度は、工程(a)で製造したプラスチック組成物のポリエステルの融点、すなわち融解温度に応じて選択される。
【0208】
特定の実施形態において、工程(b)は、プラスチック組成物のポリエステルの融点で実施される。そうすると、ポリエステルは部分的または完全な溶融状態になる。別の実施形態において、工程(b)は当該ポリエステルのガラス転移温度(Tg)と融点との間の温度で実施される。別の特定の実施形態において、工程(b)は当該ポリエステルの融点よりも高い温度で実施される。
【0209】
典型的には、当該工程(b)は、押出、押出コンパウンディング、押出ブロー成形、インフレートフィルム押出、キャストフィルム押出、カレンダー加工および熱成形、射出成形、圧縮成形、押出膨潤、回転式成形、アイロニング、コーティング、層形成、膨張、引抜成形、圧縮造粒、または3D印刷によって実施されてよい。そのような操作は、意図するプラスチック物品の性質に応じてプロセス条件(例えば、温度、滞留時間等)を容易に適合させる当業者に周知である。一例として、インフレートフィルム押出は、プラスチックフィルムの製造に特に適している。別の例として、キャストフィルム押出はプラスチックシートの製造に特に適しており、射出成形、熱成形、ブロー成形、回転式成形または3D印刷は硬質プラスチック物品の製造に特に適している。
【0210】
好ましい実施形態において、工程(b)は、粉末または顆粒の形態、好ましくは顆粒の形態の固体プラスチック組成物を用いて実施される。
【0211】
プラスチック物品は、当該プラスチック物品の総重量に基づいて0.1重量%~10重量%の液体組成物の形態の生物学的物質を含む。好ましくは、生物学的物質の液体組成物は、プラスチック物品の0.1%~5%、より好ましくは0.1%~3%に相当する。
【0212】
別の実施形態によれば、液体組成物の形態の生物学的物質は、プラスチック物品を成形する工程(b)において直接導入される。
【0213】
特定の実施形態において、本発明は、下記工程を含むプラスチック組成物の調製方法に関する:
- (a)プラスチック組成物の総重量に基づいて0.1重量%~10重量%のPLA分解活性を有するプロテアーゼを、PLAと混合する工程と、
- 工程(a)の前記混合物をプラスチック物品に成形する工程(b)と
を含み、ここで、混合工程(a)は、好ましくは150~180℃の温度で、および/または押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機、より好ましくは共回転二軸スクリュー押出機において行われる。
【0214】
本発明のさらなる目的は、本発明の液体組成物を第1のポリマーに導入して混合物を得る工程、および当該混合物を第1のポリマーとは異なる第2のポリマーに導入する工程を連続的に含む、生物学的物質を含むプラスチック物品の製造方法を提供することであり、第1のポリマーは140℃未満の融点を有し、第2のポリマーは140℃超の融点を有する。
【0215】
より一般的には、プラスチック物品は、当業者に公知の任意の技術により製造され得る。
【0216】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも1種のポリエステルおよびポリエステル分解生物学的物質を含むプラスチック物品中の当該生物学的物質の分散均一性を向上する方法を提供することであり、当該方法は、プラスチックの製造プロセスにおいて、液体組成物の形態の生物学的物質を導入することを含む。
【実施例】
【0217】
実施例1-PCLおよびPLAを含む本発明のフィルムを製造するための、生物学的物質を含む液体組成物の使用、ならびに本発明のフィルムの生分解性の評価
1.1-生物学的物質を含む液体組成物の調製
液体形態(液体組成物および水の総重量に基づいて50重量%を超えるポリオールを含む)で販売されている市販のプロテアーゼであるSavinase(登録商標)16L(Novozymes)を使用して、さまざまな液体組成物を調製した。そのような酵素は、そのポリ乳酸を分解する能力で知られている(Degradation of Polylactide by commercial proteases;Y.Oda、A.Yonetsu、T.Urakami and K.Tonomura;2000)。
【0218】
液体組成物A(LC-A)は、CaCl2 5mM(ダイアフィルトレーション係数約50)を使用した3.5Kd膜での市販のSavinase(登録商標)16Lの限外ろ過およびダイアフィルトレーションによって得られた。このような方法により、市販のSavinase(登録商標)に含まれるポリオールを除去できる。液体組成物Aには担体が添加されていないため、このような組成物を用いて製造されたフィルムは陰性対照に相当する。
【0219】
液体組成物BおよびC(LC-BおよびLC-C)もまた、CaCl2 5mM(ダイアフィルトレーション係数約50)を使用した3.5Kd膜での市販の液体形態のSavinase(登録商標)の限外ろ過およびダイアフィルトレーションによって得られた。マルトデキストリン(Maldex-TEREOS)およびアラビアゴム(INSTANT GUM AA-NEXIRA)それぞれを、これら2種の担体の保護効果を比較するために液体組成物の総重量に基づいて同じ割合、すなわち約23重量%で、粉末形態で、ろ液に添加した。さまざまな液体組成物の説明を第1表にまとめる。
【0220】
【0221】
1.2-上記1.1の組成物を使用したマスターバッチの調製
マスターバッチ組成物は、ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーのペレット(Perstorp社製Capa(商標)6500)および実施例1.1に記載の本発明の組成物から調製された。当該マスターバッチの酵素活性をさらに決定した。
【0222】
コンパウンディング機、すなわち共回転二軸スクリュー押出機を使用した(Leistritz ZSE 18MAXX)。このコンパウンディング機は、9つの連続する加熱ゾーンZ1~Z9を備え、温度は独立して制御および調整され得る。ゾーンZ9の後に追加のゾーンZ10があり、ゾーンZ9は同じく加熱部である二軸スクリュー(Z10)の頭部につながっている。本発明の液体組成物を溶融ポリマーと効率的に混合するために、適切なスクリュープロファイルを使用した。押出される各マスターバッチに使用されるパラメータを第2表にまとめる。
【0223】
溶融ポリマーは、1つの3.5mm穴を有するダイプレートを備えたスクリューZ10に到達し、水および砕いた氷の混合物で満たされた2m長の冷水浴に直ちに浸漬された。得られた押出物を、3mm未満の固形ペレットへと造粒した。
【0224】
この実験によれば、80重量%のPCLが20重量%の液体組成物とともに押し出された。
【0225】
【0226】
各マスターバッチの酵素活性は、以下に記述するプロトコルに従って決定した。
【0227】
50mLのFalconチューブ内で、50mgのペレットを10mLのジクロロメタン(Sigma Aldrich、CAS75-09-2)と混合した。コンパウンドが完全に溶解するまで、ボルテックス(Genie2-Scientific Industrie)を使用して溶液を混合した。次に、5mLの0.1Mトリス緩衝液(pH9.5)を添加した。エマルジョンを作るために各チューブを手で振盪した。次に、5分間10000Gで遠心分離することにより(Heraeus Multifuge X302-Thermoscientific)有機相と水相を分離した。水相は除去し、別々に保管した。別の5mLの0.1Mトリス緩衝液(pH9.5)を有機相に添加し、水相が除去されるまでプロトコルを繰り返した。両方の5mLの水相を混合する。10mLの水相中の微量のジクロロメタンを除去するために、20分間、試料に酸素を吹き込んだ。各試料のプロテアーゼ活性は比色試験を使用して決定した。正しい希釈度の試料20μLを180μLの5mM pNA溶液(N-サクシニル-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド、Sigma Aldrich-CAS52299-14-6)と混合した。光学密度は、吸収分光測光計(Clariostar-BMG Labtech)を使用して30℃-420nmで測定した。活性酵素の質量は検量線を用いて決定した。
【0228】
コンパウンド中の活性酵素の質量と理論上の酵素質量とを比較することにより、マスターバッチ中の残留活性の割合(%)を決定することが可能になった。
【0229】
製造された各マスターバッチの残留活性を第3表にまとめる。
【0230】
【0231】
液体組成物LC-BおよびLC-Cを用いて製造された各マスターバッチは、担体を含まない液体組成物(LC-A-陰性対照)を用いて製造されたマスターバッチと比較して高い残留活性を示し、押出プロセス中に酵素を高度に保護することを示す。アラビアゴムを含む組成物を用いて製造されたマスターバッチは、マルトデキストリンを含む組成物を用いて製造されたマスターバッチに比べてより優れた残留活性を示す。
【0232】
1.3-本発明の生分解性プラスチックフィルムの製造
実施例1.2の造粒されたマスターバッチ組成物を使用して、押出法により本発明の生分解性ポリ乳酸系プラスチック物品を製造した。当該プラスチック物品の生分解性をさらに試験した。
【0233】
PLA系マトリックスの調製
PLA系マトリックスは、実施例1.2に記載の二軸スクリュー押出機を使用して押し出した。このマトリックスの組成は、NatureWorks社製のPLA 4043Dが42.3重量%、NaturePlast社製のPBAT PBE006が51.7重量%、OMYA社製のCaCO3が6重量%である。
【0234】
すべての材料は押出前に乾燥させた。PLAおよびPBATは、それぞれ60℃および40℃のデシケータ内で約16時間乾燥させた。炭酸カルシウムには、16時間40℃-40mbの真空オーブンを使用した。
【0235】
押出機の10ゾーンの温度を185℃に設定した。スクリュー速度は175rpmであり、総インプット質量速度は約7kg/時であった。CaCO3を重量測定フィーダーを使用してゾーン7で溶融ポリマーに導入し、マトリックスを得た。得られた押出物を冷水浴で冷却してからペレットにした。
【0236】
マスターバッチ
実施例1.2に記載のマスターバッチMB1-MB2-MB3を使用して、本発明のプラスチックフィルムを製造する。
【0237】
フィルムブローイング工程
フィルムブローイング押出の前に、マスターバッチおよびPLA系マトリックスをデシケータ内で50℃で40時間乾燥させた。第4表によるマスターバッチの理論上の酵素質量に基づいて、すべてのフィルムに同量の酵素を導入するために、ブレンドを調製した。
【0238】
【0239】
20mmの30L/D押出機型式LBE20-30/Cを備えたLabTechコンパクトフィルムブローイングライン型式LF-250を使用してフィルムを製造した。スクリュー速度は50rpmであった。設定温度を第5表に詳述する。
【0240】
【0241】
1.4-生分解性の試験
下記プロトコルに従って、実施例1.3で製造したプラスチックフィルムを使用して生分解性の試験を行った。
【0242】
各フィルム100mgを秤量し、50mLの0.1Mトリス緩衝液(pH8)が入ったプラスチックボトルに入れた。Infors HT Multitron Proインキュベーションシェーカーにおいて各試料を28℃、150rpmでインキュベートすることにより、解重合を開始した。1mLの緩衝液のアリコートを定期的にサンプリングし、0.22μmシリンジフィルターでろ過し、試料を、Aminex HPX-87Hカラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、乳酸(LA)および乳酸ダイマーの遊離を監視した。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン、および220nmのUV検出器を備えたUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific,Inc.、米国マサチューセッツ州ウォルサム)であった。溶出液は5mMのH2SO4であった。注入したのは試料20μLであった。LAは、市販のLAから作成した標準曲線に従って測定した。
【0243】
遊離したLAおよびLAのダイマーに基づいてプラスチックフィルムの加水分解を計算した。フィルム中のPLAの割合(%)に関して分解割合(%)を計算する。
【0244】
2日後の本発明のフィルムの解重合の結果を第6表に示す。
【0245】
【0246】
本発明のフィルム(MB2/LC-BおよびMB3/LC-C)は、担体を含まない液体組成物(MB1/LC-A-陰性対象)を用いて製造された対照フィルムと比較して、高い残留活性故に、高い解重合率を示す。これらの結果は、担体を含む液体組成物の使用が、押出プロセス中の酵素のより高度な保護につながることを裏付ける。アラビアゴムを含む組成物を用いて製造されたフィルムは、マルトデキストリンを含む組成物を用いて製造されたフィルムに比べてより良好な分解性を示す。
【0247】
実施例2-液体組成物の調製、本発明のフィルムを製造するための当該組成物の使用、ならびに当該フィルムの機械的特性および分解特性の評価
2.1-生物学的物質を含む組成物の調製
液体組成物LCは、市販のプロテアーゼであるSavinase(登録商標)16L(Novozymes)から調製した。LCは、CaCl2 5mM(ダイアフィルトレーション係数約100)を使用し、3.5Kd膜で、市販のSavinase(登録商標)16Lを限外ろ過およびダイアフィルトレーションし、濃縮液体組成物を得て、市販の溶液中に存在するポリオールを除去することによって得た。次に、液体組成物の総重量に基づいて約23%のアラビアゴム(INSTANT GUM AA-NEXIRA)を、担体として、液体組成物(LC)に添加した。
【0248】
市販のプロテアーゼであるSavinase(登録商標)16Lを使用した同じプロトコルおよび上記のプロトコルに従って固体組成物も調製した。得られた液体組成物を濃縮し、次に凍結乾燥により乾燥させ、固体組成物(SC)を得た。
【0249】
さまざまな組成物の比較を第7表にまとめる。
【0250】
【0251】
2.2-マスターバッチの調製
マスターバッチは、実施例1.2と同じコンパウンディング機を使用して、ポリカプロラクトンポリマーのペレット(Perstorp社製PCL-Capa(商標)6500)および2.1の液体組成物または固体組成物を用いて調製した。
【0252】
より詳細には、PCLおよび実施例2.1の液体酵素組成物LCを含むマスターバッチを製造した。PCLおよびLCを、押出機の非加熱ゾーンである供給ゾーンに別々に導入した。供給のために、重量測定フィーダーをポリマーに使用し、ペリスタルティックポンプを液体組成物に使用した。得られたマスターバッチはMB-Lと称した。
【0253】
並行して、PCLおよび実施例2.1の固体酵素組成物SCを含むマスターバッチを製造した。SCを、粉末形態の固体を投与するのに適した重量測定フィーダーを使用してゾーン7に導入した。得られたマスターバッチはMB-Sと称した。
【0254】
マスターバッチの押し出しに使用されるパラメータを、第8表および第9表に詳述する。対応する組成物をポリマーと効率的に混合するために、適切なスクリュープロファイルを使用した。
【0255】
【0256】
【0257】
溶融ポリマーは、1つの3.5mm穴を有するダイプレートを備えたスクリューZ10に到達し、水および粉砕した氷の混合物で満たされた2m長の冷水浴に直ちに浸漬された。得られた押出物を、3mm未満の固形ペレットへと造粒した。
【0258】
2.3-本発明のフィルムの製造
A-PLA系マトリックスの調製
フィルムの製造には、3種の異なるマトリックス:すなわち、BASF製の2種の市販化合物ecovio(登録商標)F2332およびecovio(登録商標)F2223、ならびにマトリックス1と呼ばれるホームコンパウンデッドマトリックス(Home compounded matrix)を使用した。
【0259】
マトリックス1は、温度が独立して制御および調整される12のゾーンZ1~Z12を含む二軸スクリュー押出機CLEXTRAL EV25HTを使用して製造した。この化合物は、10重量%のトリブチルアセチルシトレート(Jungbunzlauer製のCITROFOL(登録商標)BII)を含む予め可塑化されたPLA33%、BASF社により提供されるPBAT Ecoflex C1200 32%、デンプンがRoquette社により提供される標準トウモロコシデンプン171111である熱可塑性デンプン30%、ならびにOMYA社製の炭酸カルシウム5%から構成される。デンプンをゾーン1に導入し、ポリマーをゾーン6に導入する。各ゾーンは第10表に従って加熱される。この化合物はマトリックス1と称する。
【0260】
【0261】
B-液体組成物(MB-L)を用いた本発明のフィルムの製造
フィルムブローイングには、20mmの30L/D押出機型式LBE20-30/Cを備えたLabTechコンパクトフィルムブローイングライン型式LF-250を使用した。使用したスクリュー速度は60rpmであった。フィルムのブロー比は17μmの対象物に対して約5であった。
【0262】
フィルムブローイングの前に、MB-L(実施例2.2)および異なるPLA系マトリックスをデシケータ内で50℃で40時間乾燥させた。次に、MB-Lを、PLAとマスターバッチとの重量比93/7で、PLA系マトリックスと混合した。
【0263】
PLA系マトリックスecovio(登録商標)F2332およびecovio(登録商標)F2223を用いて得られたフィルムを、それぞれフィルム1およびフィルム2と称し、第11表に押出に使用したパラメータを示す。
【0264】
【0265】
マトリックス1を用いた製造されたフィルムをフィルム3と称し、第12表に押出に使用したパラメータを示す。
【0266】
【0267】
C-固体組成物(MB-S)を用いた対照フィルムの製造
PLA系マトリックスecovio(登録商標)F2332およびecovioo(登録商標)F2223ならびにマトリックス1を使用し、さらに生物学的物質の固体組成物を含むマスターバッチを使用してフィルムを製造し、それぞれフィルム4、フィルム5およびフィルム6と称した。
【0268】
フィルムブローイングの前に、MB-SおよびPLA系マトリックスをデシケータ内で50℃で40時間乾燥させた。本発明のすべてのフィルムにおいて同じ生物学的物質濃度を得るために、70/30w/wでPCLおよびアラビアゴムのみを含む追加のマスターバッチをMB-S/PLA系マトリックス混合物に添加した。
【0269】
最後に、93重量%のPLA系マトリックスおよび7重量%の両方のマスターバッチ(MB-Sおよび追加のマスターバッチ)の混合物を使用してフィルムを作製した。
【0270】
フィルム1と4、フィルム2と5、フィルム3と6はそれぞれ同じ組成を有する。次に、MB-SをPLA系マトリックスと乾式混合し、フィルムブローイング押出機に導入した。
【0271】
第13表に示す温度プロファイル以外はフィルム1、2および3と同じプロセスを使用してフィルムを製造した。
【0272】
【0273】
2.4-本発明のプラスチックフィルムの機械的特性および生分解性の評価
実施例2.3の本発明のフィルムを、以下のパラメータに関して分析した。
A.ヘイズ
ヘイズは、NF EN 2155-9(1989年8月)に従った150mm積分球を備えた分光器UV-Visible Perkin Elmer 650Sを使用して決定する。値は50×30mm2の試料で決定する。各フィルムにおいて、測定はフィルムの3つの異なる部分で3回繰り返す。
【0274】
B.表面粗さ(動摩擦係数)
動摩擦係数(μD)は、0.5mm未満の厚みを有するプラスチックフィルムまたはプラスチックシートに適合する標準規格NF EN ISO-8295(2004年12月)に従って測定される。これは、20Nセンサ容量を備えたLloyd Instruments LS5試験機を使用して決定する。この装置は、第1の試料が置かれる水平試験台と、押圧力(1.96N)を生じ、第2の試料が取り付けられる重り(mass)と、重りと試験台の間に相対運動を生じさせる牽引機構とを備える。重りは試験台上で引っ張られ、動かされる(試験速度=500mm/分)。測定値は約0.01%の精度である。試料の寸法は80mm×200mmである。
【0275】
動摩擦力FDは、相対運動の最初の6cmの平均力である。
【0276】
C.機械的引張特性および厚み
ASTM D882-12標準規格(23℃および55%RH)に従った50Nセンサ容量を備えたZwick試験機を使用して、引張機械的特性(破断点伸び、破断点引張応力、ヤング率)を測定した。機械方向および横方向の2つのフィルム方向を、次のパラメータに従って分析した。
- ヤング率に対する掴み具の分離速度=10mm/分
- その他の特性に対する掴み具の分離速度=50mm/分
- 初期の掴み具の分離:100mm
- 試料寸法:150mm×15mm
- 平均厚:17μm
【0277】
引張分析に使用される厚みは、フィルムの重量、寸法および密度に基づいて決定した。この選択は、特に固体組成物を使用する場合に、フィルム表面に粒子の凝集体が存在することに起因する厚みの過大評価を克服するために行った。
【0278】
それにもかかわらず、厚みの測定は、凝集体を含むフィルムで観察される表面粗さを示すために、ミツトヨシックネスゲージを使用して行うことができる。
【0279】
D.解重合試験
プロトコルは、実施例1.4で使用したものと同じであった。
【0280】
E.結果および比較
液体組成物を用いて製造された本発明のフィルムについて得られた結果を、固体組成物を用いて製造されたフィルムについて得られた結果と比較した:フィルム1対フィルム4、フィルム2対フィルム5、およびフィルム3対フィルム6。
【0281】
- 機械的特性
第14表は、フィルム1、2、4および5で測定されたヘイズの結果を示す。本発明のフィルム1および2のヘイズ値は、それぞれフィルム4および5のヘイズ値よりも低い。ヘイズは、プラスチック物品に含まれる不純物(物品における小さな粒子の蓄積または表面上の非常に小さな欠陥等)によって引き起こされる。ヘイズ値が低ければ低いほど、物品の透明度は高くなる。したがって、液体組成物から製造された本発明のフィルムは、対照フィルムよりも低いヘイズを示し、それ故、生物学的物質の良好な分散を示す。
【0282】
【0283】
第15表および第16表は、2.3で製造したフィルムの動摩擦係数、引張特性、およびミツトヨシックネスゲージで測定した厚みを示す。「s」は、測定された特性と同じ単位の標準偏差に対応する。
【0284】
【0285】
第16表では、MB-Sから製造されたフィルムを基準として使用し、定義されたパラメータの100%とみなす。
【0286】
【0287】
摩擦係数は、接触している2つの表面の滑り力と保持力との比率である。この係数は、2つの材料が互いに摺動し合う困難度の特性を表す。この困難度は、表面が粗い場合に増加し得る。本発明のフィルム1、2および3の動摩擦係数値は、それぞれフィルム4、5および6の動摩擦係数値よりも低く、表面粗さがより低いことを示す。製造プロセスにおいて液体組成物を使用すると、動摩擦係数を減少させることができ、こうすることにより、生物学的物質の固体組成物を使用する場合と比較して表面粗さを減少させることができる。
【0288】
この特性は肉眼でも確認でき、フィルム4、5、6は、粒子の凝集による表面の不規則性を示す。
【0289】
ミツトヨシックネスゲージを使用した厚みの測定は、生物学的物質の固体組成物から製造されたフィルムについて観察されるこの表面粗さがフィルムにおける凝集体につながることも示す。
【0290】
本発明のフィルムについて測定されたヤング率、破断点ひずみおよび極限引張強度は、対照フィルムよりも著しく高い。液体組成物はより小さな粒径を有し、フィルムにおける粒子の微細かつ均一な分散をもたらし、その結果、機械的特性の改善をもたらする。
【0291】
- 解重合試験
解重合試験は、第17表(ecovio(登録商標)F2332由来のフィルム)、第18表(ecovio(登録商標)F2223由来のフィルム)および第19表(マトリックス1由来のフィルム)に示すように、本発明のフィルムが固体酵素組成物を用いて得られたフィルムと比較して、解重合率(%)が著しく高いことを示した。MB-Sから製造されたフィルムを基準として使用し、100とみなす。
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
2.5-硬質プラスチック物品の製造
硬質プラスチック物品の製造に射出成形機を使用した:MC6コンピュータコントローラーシステムを備えたKM50t/380 CX ClassiXタイプ。
【0296】
硬質プラスチック物品は、2種類のポリエステル系マトリックスに実施例2.2のマスターバッチMB-Lを組み込むことにより製造した。マトリックスは、2種のポリ乳酸ポリマーグレード(その特性を第20表に示す)から選択される。
【0297】
【0298】
乾式混合の前に、ポリエステル系マトリックスおよびマスターバッチをデシケータ内で50℃で40時間乾燥させた。次に、10%のMB-Lをポリエステル系マトリックスに追加した。比較のために、100%ポリエステル系マトリックスを用いた製品も製造した。
【0299】
厚み1mmの60mm×60mmの物品片を、射出成形法で製造した。パラメータは、使用するポリエステル系マトリックス酸のグレードに応じて設定した。
【0300】
射出成形用に設定されたパラメータを第21表にまとめる。
【0301】
【0302】
バレル内の組成物の総滞留時間を測定したところ、PA1およびPA2については約12分、PA3およびPA4については約13分である。
【0303】
製造された硬質物品を、実施例1.4に記載されたプロトコルに従って解重合試験に付した。結果を第22表に示す。PA1およびPA3を基準として使用し、100とみなす。結果は、本発明の組成物の使用により生分解性硬質プラスチック物品を製造できることを実証する。
【0304】
【0305】
【0306】
実施例3-液体組成物を使用したマスターバッチの調製、本発明のPLA系硬質物品の製造のための上記マスターバッチの使用、および上記物品の引張、衝撃および生分解特性の評価
3.1-液体組成物を使用したマスターバッチの調製
マスターバッチは、ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーのペレット(Perstorp社製Capa(商標)6500)、および第24表に記載の液体または固体の酵素組成物を使用して調製した。液体組成物LC-1および固体組成物SC-1は実施例2.1に詳述されたのと同じ方法で調製した。
【0307】
【0308】
PCLおよび液体組成物LC-1を含むマスターバッチMB-LC1は、温度が独立して制御および調整される12のゾーンZ1~Z12を含む二軸スクリュー押出機Clextral Evolum 25HTを使用して調製した。このプロセスに使用されるパラメータは次のとおりである:温度プロファイル65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃-50℃、押出機スクリュー速度450rpm、および総流量40kg/時。容積測定ポンプを使用して、PCLをゾーン1に32kg/時で導入し、液体組成物LC-1をゾーン5に8kg/時で導入する。押し出されるマスターバッチの総重量に基づいて20%の液体酵素組成物をPCLに導入した。
【0309】
並行して、PCLおよび固体組成物SC-1を含むマスターバッチMB-SC1を、次のパラメータ:70℃-70℃-70℃-70℃-70℃-65℃-65℃-65℃-65℃-65℃の温度プロファイル、スクリュー速度150rpm、および総流量2kg/時を備える共回転二軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE 18MAXX)で調製した。ゾーン7の重量測定フィーダーを使用して、マスターバッチの総重量に基づいて22%の固体酵素組成物をPCLに導入した。両マスターバッチの冷却および造粒システムは、実施例1.2で詳述したものと同じであった。
【0310】
したがって、両マスターバッチMB-LC1およびMB-SC1は同じ酵素濃度を含む。
【0311】
3.2-射出成形による本発明の硬質プラスチックの製造
射出成形機(KM 50t/380 CX ClassiX)を使用して、厚み4mm、全長170mmのプラスチックダンベルを製造した。
【0312】
ダンベルは、射出PLAグレードNatureWorks(登録商標)Ingeo(商標)3251Dおよび3.1に記載のマスターバッチMB-LC1から製造した。対照ダンベルは、同じPLAグレードおよび3.1に記載のマスターバッチMB-SC1から製造した。標準化された機械的特性評価のために、100%PLAダンベルも製造した。
【0313】
硬質物品を製造する前に、デシケータを使用してPLAおよびMB-LC1を50℃で40時間乾燥させ、MB-SC1を50℃の真空オーブン内で48時間乾燥させた。硬質プラスチック物品は、95重量%のPLA系マトリックスおよび5重量%のマスターバッチを使用して作製した。
【0314】
各物品の射出成形パラメータを第25表に詳述する。
【0315】
【0316】
3.3-プラスチック物品の引張および衝撃特性評価
本発明の硬質プラスチック物品および固体組成物から作製された対照プラスチック物品の引張特性および衝撃特性を評価した。
【0317】
- 引張試験
20kNの力センサを備えたZwick Roell試験機を使用して、引張試験を実施した。試験はISO527-1規格に従って実施し、試験の結果を第26表に示す。
【0318】
【0319】
液体組成物由来のマスターバッチから製造された硬質物品は、測定された機械的特性に有意な差を示さず、これは液体組成物の使用が本発明の硬質物品の弾性率、最大応力、最大応力時ひずみ、破断点応力、および破断点ひずみに何ら重大な影響を与えないことを示す。
【0320】
- シャルピー衝撃試験
Zwick振子型衝撃試験機を使用して、NF EN ISO179-1標準規格に従って試験を実施した。加熱されたペンチを使用して、射出された試料片から試験棒を切り取った。棒の寸法は4mm*10mm*80mmである。試験の結果を第27表に示す。
【0321】
【0322】
生物学的物質の液体組成物から製造された本発明の硬質物品は、固体生物学的物質組成物から製造された物品よりも優れた耐衝撃性を示す。これは間違いなく、プラスチック物品中の生物学的物質の微細な分散によるものである。
【0323】
3.4-解重合試験:
液体組成物から製造された射出硬質物品RA-LC1について、生分解性の試験を行った。まず、硬質物品を粗粉砕し、液体窒素に浸漬した後、500μmグリッドを備えたUltra-Centrifugal Mill ZM 200 RETSCHを使用して粉砕した。100mgのこの粉末を秤量し、透析チューブに入れ、閉じ込めた。このチューブを50mLの0.1Mトリス緩衝液(pH9.5)に入れた。Infors HT Multitron Proインキュベーションシェーカーにおいて各試料を45℃、150rpmでインキュベートすることにより、解重合を開始した。1mLの緩衝液のアリコートを定期的にサンプリングし、0.22μmシリンジフィルターでろ過し、試料を、Aminex HPX-87Hカラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、乳酸(LA)および乳酸ダイマーの遊離を監視した。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、50℃に温度調節されたカラムオーブン、および220nmのUV検出器を備えたUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific,Inc.、米国マサチューセッツ州ウォルサム)であった。
【0324】
溶出液は5mMのH2SO4であった。注入したのは試料20μLであった。LAは、市販のLAから作成した標準曲線に従って測定した。
【0325】
硬質物品の解重合レベルは48時間後に約10%に対し、これは生物学的物質が最終プラスチック物品のポリエステル分解活性を保持していることを示す。
【0326】
実施例4-液体組成物を使用したマスターバッチの調製、本発明の硬質シートの製造のための上記マスターバッチの使用、および上記シートの引張、衝撃および分解特性の評価
4.1-液体組成物を使用したマスターバッチの調製
マスターバッチ組成物は、ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーのペレット(Perstorp社製Capa(商標)6500)、および実施例3.1に記載の液体酵素組成物LC-1から調製された。マスターバッチは、温度が独立して制御および調整される12のゾーンZ1~Z12を含む共回転二軸スクリュー押出機CLEXTRAL EV25HTを使用して製造した。
【0327】
容積測定ポンプを使用して、PCLをゾーン1に16kg/時で導入し、液体組成物をゾーン5に4kg/時で導入する。各ゾーンは第27表に従って加熱する。マスターバッチの総重量に基づいて20%の液体組成物LCをPCLに導入した。このマスターバッチをMB-LC2と称する。
【0328】
【0329】
マスターバッチの酵素活性は、実施例1.2に記載のプロトコルに従って決定した。マスターバッチ中の活性酵素の質量と理論上の酵素質量とを比較することにより、マスターバッチ中の残留活性の割合(%)を決定することができた。
【0330】
4.2-本発明の生分解性プラスチックシートの製造
標準化された衝撃および引張特性評価および生分解性試験に供される450μm厚プラスチックシートをさらに製造するために熱成形PLAグレードTotal Corbion Luminy(登録商標)LX175を使用した。
【0331】
プラスチックシート製造のために、温度が独立して制御および調整される、直径45の4つのゾーンZ1~Z4、公称開口1.5mmで調整可能なリップを備えた220mmのフラットダイ、および3つのシリンダカレンダーを備えた押出機FAIREXを使用した。
【0332】
押出およびカレンダー加工の前に、MB-LC2およびPLAを乾燥させて、一緒に混合した。MB-LC2を真空オーブン内で40℃で20時間乾燥させ、PLAを乾燥機内で40℃で4時間乾燥させた。
【0333】
0%(陰性対照)、5%、または10%のMB-LC2を添加したPLAから得られたシートをそれぞれS0、S5、およびS10と称した。押出およびカレンダー加工のパラメータを第28表に詳述する。
【0334】
【0335】
4.3-プラスチックシートの生分解性の評価
プラスチックシートの生分解性を評価するために、実施例3.4に記載したプロトコルに従って解重合試験を行った。
【0336】
8日後、シートS0、S5およびS10の粉末は、それぞれ0.08%、0.77%および13.0%のPLAの解重合率を示し、これは生物学的物質が本発明の最終プラスチック物品(S5およびS10)においてポリエステル分解活性を保持していることを示す。
【0337】
4.4-プラスチックシートのダート試験の特性評価
衝撃試験は、ステップメソッドを用いて、NF EN ISO7765-1に従って実施した。この標準規格によると、試料はプラスチックシート上で直接切断される。試験はLabthink BMC-B1ダート試験機を使用して行われ、結果は第29表に示される。
【0338】
【0339】
衝撃試験の結果は、液体組成物から製造された本発明のシート(S5およびS10)が、100%PLAから作製された対照S0と比較して耐衝撃性の改善を示すことを示している。
【0340】
4.5-プラスチックシートの引張特性評価
20kNの力センサを備えたZwick Roell試験機を使用して、引張試験を実施した。試験は、標準規格NF EN ISO527-1に従って実施した。測定された引張特性を第30表に示す。
【0341】
【0342】
純粋なPLAシート(S0)と比較して、液体組成物およびPCLから製造されたマスターバッチ自体から製造されたシートは、PLA系シートへの当該マスターバッチの組み込みが増加することで、目的とする用途に必要とされる十分な剛性を維持しながら柔軟性の改善が示される。
【0343】
実施例5-液体組成物を使用したマスターバッチの調製、PCLおよびPLAを含む本発明のフィルムの製造のための上記マスターバッチの使用
5.1-液体組成物の調製
液体形態で販売されている市販のプロテアーゼであるSavinase(登録商標)16L(Novozymes)を使用して、さまざまな液体組成物を調製した。
【0344】
液体組成物D、E、FおよびGは、実施例1.1に記載の方法:3.5Kd膜での市販のSavinase(登録商標)16Lの限外ろ過およびダイアフィルトレーションに従って得られ、ここで、アラビアゴムが担体として添加される。液体形態で販売されている市販のSavinase(登録商標)16Lは、液体組成物Hに相当し、陰性対照として使用される。この組成物は、担体として、当該液体組成物および水の総重量に基づいて50重量%超のポリオールを含む。
【0345】
さまざまな液体組成物の説明を第31表にまとめる。
【0346】
【0347】
5.2-上記5.1の組成物を使用したマスターバッチの調製
マスターバッチ組成物は、実施例1.2と同じコンパウンディング機を用いて、ポリカプロラクトン(PCL)ポリマーのペレット(Perstorp社製Capa(商標)6500)および実施例3.1に記載の組成物から調製された。
【0348】
この実験によれば、80重量%のPCLが20重量%の液体組成物とともに押し出された。押出される各マスターバッチに使用されるパラメータを第32表にまとめる。
【0349】
【0350】
上記マスターバッチの酵素活性を実施例1.2に記載のプロトコルを使用してさらに決定した。マスターバッチ中の活性酵素の質量と理論上の酵素質量とを比較することにより、マスターバッチ中の残留活性の割合(%)を決定することができた。製造されたマスターバッチの残留活性を第33表にまとめる。
【0351】
【0352】
液体組成物(LC-D~LC-G)を用いて製造されたマスターバッチはすべて、高い残留活性を示す。一方、Savinase 16Lを含み、陰性対照に相当するMB8は残留活性を示さない。この結果は、先に記載の市販製剤と比較した、特定の担体を含む液体組成物の押出プロセスにおける価値を裏付けている。
【0353】
同様の水分含有量(または同様の乾燥物)を有するが、生物学的物質の含有量は異なるMB5およびMB7は、同等の残留活性を示す。この結果は、関与する生物学的物質の割合に関係なく、生物学的物質の保護が同等であることを示す傾向がある。
【0354】
さらに、MB5、MB6、またはMB7の製造に使用される組成物と比較して、最高量の水を含む組成物から製造されたMB4は最も低い残留活性を示す。この結果は、液体組成物中に導入される生物学的物質の量とは無関係に、水性溶媒の量が70%未満、好ましくは60%未満、および/または、乾燥物の量が30%超、好ましくは40%超である場合に、生物学的物質の保護が増大されることを示す傾向がある。
【0355】
5.3-本発明の生分解性プラスチックフィルムの製造
実施例5.2の造粒されたマスターバッチ組成物MB4、MB5およびMB6を使用して、押出法により本発明の生分解性ポリ乳酸系プラスチック物品を製造した。また、当該プラスチック物品の生分解性を試験した。
【0356】
PLA系マトリックスの調製
PLA系マトリックスは、実施例1.2に記載の二軸スクリュー押出機を使用して押し出した。このマトリックスの組成は、NatureWorks社製のPLA 4043Dが42.3重量%、NaturePlast社製のPBAT PBE006が51.7重量%、OMYA社製のCaCO3が6重量%である。すべての材料は押出前に乾燥させた。PLAおよびPBATは、それぞれ60℃および40℃のデシケータ内で約5時間乾燥させた。炭酸カルシウムには、16時間40℃-40mbの真空オーブンを使用した。
【0357】
押出機の10ゾーンの温度を185℃に設定した。スクリュー速度は175rpmであり、総インプット質量速度は約5kg/時であった。CaCO3を重量測定フィーダーを使用してゾーン7で溶融ポリマーに導入し、PLA系マトリックスを得た。得られた押出物を冷水浴で冷却してからペレットにした。
【0358】
マスターバッチ
実施例5.2に記載のマスターバッチMB4-MB5-MB6を使用して、本発明のプラスチックフィルムを製造する。
【0359】
フィルムブローイング工程
フィルムブローイング押出の前に、マスターバッチおよびPLA系マトリックスを真空オーブン内で50℃-40mbで15時間乾燥させた。第34表によるマスターバッチの理論上の酵素質量に基づいて、すべてのフィルムに同量の酵素を導入するために、ブレンドを調製した。フィルムEおよびFには、すべてのフィルムで同一の組成を得るためにPCL6500を添加する(さらに同じ条件に従って乾燥させる)必要があった。
【0360】
【0361】
ブローイングは、実施例1.3に記載したのと同じマシンおよびパラメータを使用して行った。
【0362】
5.4-生分解性の試験
実施例1.4に記載のプロトコルに従って、実施例5.3で製造したプラスチックフィルムについて生分解性の試験を行った。
【0363】
遊離したLAおよびLAのダイマーに基づいてプラスチックフィルムの加水分解を計算した。フィルム中のPLAの割合(%)に関して分解割合(%)を計算する。
【0364】
4日後のフィルムの解重合の結果を第35表に示す。
【0365】
【0366】
本発明のすべてのフィルムは高い解重合率を示し、活性酵素の存在を示している。液体調合物が乾燥物を多く含めば含むほど、本発明のフィルムではより高い分解収率が達成される。この結果は、本発明の組成物中の乾燥物が多いほど、両方の押出プロセス(マスターバッチ製造およびプラスチック物品製造)の間の生物学的物質のより高度な保護をもたらすことを裏付けている。
【0367】
実施例6-液体組成物を使用したマスターバッチの調製、PLAを含む本発明のフィルムの製造のための上記マスターバッチの使用
6.1-本発明の組成物およびPLAを使用したマスターバッチの調製、および上記マスターバッチの残留活性の評価
実施例3.1由来の液体組成物LC-1および2つのグレードのポリ乳酸(PLA)をマスターバッチの製造に使用した:Total Corbion社製の非晶質グレードLuminy LX930U(140℃未満の融解温度)およびNatureWorks社製の半結晶グレードIngeo(商標)Biopolymer 4043D(140℃超の融解温度)。
【0368】
MB-PLA1、MB-PLA2およびMB-PLA3と称するポリ乳酸系マスターバッチは、スクリュー速度150rpmおよび総流量2kg/時の共回転二軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE 18MAXX)で調製した。押出機の温度は下記第36表に詳述する。Brabenderポンプを使用して、PLAを非加熱供給ゾーン(Z0)に導入し、LC-1をZ6に導入した。両マスターバッチの冷却および造粒システムは、実施例1.2で詳述したものと同じであった。マスターバッチの組成も第36表に示す。
【0369】
【0370】
実施例3.4で設定したプロトコルに従って、上記で製造したマスターバッチを使用して生分解性の試験を行い、24時間後の解重合レベルを第37表に示す。
【0371】
【0372】
低い融点を有するPLA LX930Uをベースとするマスターバッチ(MB-PLA1およびMB-PLA2)は、(同等量の生物学的物質であっても)より高い押出温度が使用されるPLA4043DをベースとするMB-PLA3よりも高い解重合レベルを示した。したがって、液体組成物LC-1の酵素活性は、140℃未満の融解温度を有するPLAを使用して、より低いプロセス温度で著しく良好に維持される。
【0373】
6.2-フィルムの製造および生分解性の評価
MB-PLA1またはMB-PLA2、および実施例1.3由来のPLA系マトリックス(NatureWorks社製の42.3重量%のPLA 4043D、NaturePlast社製の51.7重量%のPBAT PBE006、およびOMYA社製の6重量%のCaCO3)をフィルムの製造に使用した。フィルムブローイング押出の前に、マスターバッチおよびPLA系マトリックスを60℃の真空オーブンで5時間乾燥させた。調製したブレンドの組成を第38表に示す。
【0374】
【0375】
使用したフィルムブローイングラインおよび設定温度は、実施例1.3と同じである。設定したスクリュー速度は60rpmであった。冷却空気の振幅および吸引速度を調整して、200mm幅の気泡、15~20μmのフィルム厚を得た。
【0376】
実施例1.4で設定したプロトコルに従って、上記で製造したフィルムについて生分解性の試験を行い、26日後の解重合レベルを第39表に示す。
【0377】
【0378】
140℃未満の融解温度を有するPLAを含むマスターバッチおよび本発明の組成物から製造されたフィルムはすべて、水性媒体中で分解を示した。フィルム7およびフィルム9は同量の生物学的物質を含むと想定されているが、最も濃縮されたマスターバッチ(20%のLC-1から製造されたMB-PLA1)をベースとするフィルム7は、10%のLC-1から製造されたMB-PLA2をベースとするフィルム9よりも高い分解レベルを示す。しかしながら、結果は、本発明の液体組成物が、140℃超の融点を有する部分的または完全に溶融したポリマーに導入されるのにも適していること、および生物学的物質がマスターバッチにおけるポリマー分解活性を依然として保持していることを示す。
【0379】
実施例7-PLAおよびPCLを含む本発明の硬質プラスチック物品の3D印刷による製造
7.1-液体組成物を使用したマスターバッチの調製、および上記マスターバッチの残留活性の評価
実施例3.1由来の液体組成物LC-1をマスターバッチの調製に使用した。実施例1.2と同じ押出機および同じパラメータを使用して、90%のPCL(Perstorp社製のCapa(商標)6500)および10%の液体組成物LC-1から構成される、MB9と称するマスターバッチを調製した(スクリュー速度150rpm、総流量2kg/時を設定した)。
【0380】
マスターバッチの酵素活性は実施例1.2に記載のプロトコルに従って決定した。MB9の残留活性は87%である。
【0381】
7.2 PLAおよびPCLを含む硬質プラスチック物品のフィラメント製造物および3D印刷物
PLA系フィラメントは、NatureWorks社製のIngeo(商標)Biopolymer 4043Dを使用して製造した。フィラメントを押し出す前に、マスターバッチMB9およびPLAを真空オーブン内で50℃で15時間乾燥させた。マスターバッチはPLAと重量比30%/70%で乾式混合された後、押出機の3ゾーンに設定された100℃-170℃-190℃、かつダイに設定された180℃にて単軸スクリュー押出機(Scamex-Rheoscam、φ20-11L/D)に押し出された。47rpmのスクリュー速度を用いた。押出物を加圧空気で冷却し、フィラメントの最終直径は約1.75mmであった。
【0382】
デカルト型プリンタを使用した。Neocoreモデルのこのプリンタには、最大200℃まで加熱できる30×30cmの玄武岩プラトー(plateau)と、最大400℃まで加熱できるBondTechフィラメントシステムを備えたシングルノズルE3Dを有する。3D印刷試験は、ISO537-2に従った5A引張試験片の形状を使用して実施した。3D印刷パラメータは第40表に詳述する。
【0383】
【0384】
7.3 解重合試験
解重合試験は、実施例3.4と同じプロトコルを使用して、100mgの微粉化5A引張試験片(1mmグリッド)について実施した。試験片の解重合は、8日後に45℃でpH9.5の緩衝液中で11%に達する(透析システム)。解重合の結果は、3D印刷中に高温で2回目の加熱を行った後でも、本発明の組成物から製造された3D印刷プラスチック物品において生物学的物質がポリマー分解活性を保持することを裏付ける。