(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】透明静電気拡散性PC樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20250129BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20250129BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20250129BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20250129BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20250129BHJP
C08L 55/00 20060101ALI20250129BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20250129BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/057
C08K5/098
C08K5/42
C08L51/00
C08L55/00
C08L77/00
C08J3/22 CFD
(21)【出願番号】P 2022558433
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2021073272
(87)【国際公開番号】W WO2021218246
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】202010367711.8
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513014536
【氏名又は名称】上海錦湖日麗塑料有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522378111
【氏名又は名称】上海金山錦湖日麗塑料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KUMHOSUNNY (JINSHAN) PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1223, Huatong Road, Jinshan District Shanghai 201512 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】査 超
(72)【発明者】
【氏名】周 霆
(72)【発明者】
【氏名】辛 敏▲き▼
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-010989(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104693745(CN,A)
【文献】特開2005-154728(JP,A)
【文献】特開2005-097598(JP,A)
【文献】特開2016-166332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、
ポリカーボネート樹脂 70~95部、
帯電防止剤マスターバッチ 5~30部、
エステル交換阻害剤 0.5~1.5部、
の原料成分を含み、
前記帯電防止剤マスターバッチは、質量分率で、
帯電防止剤 40~60%、
エステル交換促進剤 0.5~1.6%、
補助架橋剤 1~3%、
残量はポリカーボネート樹脂、
の原料成分を含み、
前記帯電防止剤は、ポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体類の有機高分子帯電防止剤である、透明静電気拡散性PC樹脂組成物。
【請求項2】
前記エステル交換促進剤は、オルトチタン酸テトラブチル、p-トルエンスルホン酸、オクタン酸第一スズから選択されるいずれか1種または複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物。
【請求項3】
前記補助架橋剤は、スチレン-アクリロニトリルグラフト無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト無水マレイン酸樹脂、スチレン-アクリロニトリルグラフトグリシジルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフトグリシジルメタクリレート樹脂、またはポリスチレングラフト無水マレイン酸樹脂から選択されるいずれか1種または複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物。
【請求項4】
前記透明静電気拡散性PC樹脂組成物において、帯電防止剤の質量分率が3~12%である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物。
【請求項5】
前記帯電防止剤マスターバッチの調製方法は、
(1)帯電防止剤マスターバッチの原料成分の配合に従って材料を調製し、各原料成分を均一に混合してプレミックスを得ることと、
(2)プレミックスを二軸押出機に投入し、溶融押出し、冷却、ペレット化して前記帯電防止剤マスターバッチを得ること、ここで、前記二軸押出機の押出温度は250~280℃であり、スクリュー回転数は200~500回転/分であることと、
のステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記エステル交換阻害剤は、オルトケイ酸テトラエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸ジイソオクチルから選択されるいずれか1種または複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明静電気
拡散性PC樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造方法であって、
(I)透明静電気拡散性PC樹脂組成物の原料成分の配合に従って材料を調製し、各原料成分を均一に混合してプレミックスを得ることと、
(II)プレミックスを二軸押出機に投入し、溶融押出し、冷却、ペレット化して目的の製品を得ることと、
のステップを含む、ことを特徴とする透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
二軸押出機の押出温度は240~260℃であり、スクリュー回転数は200~500回転/分である、ことを特徴とする請求項7に記載の透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC樹脂組成物およびその製造方法に関し、特に透明静電気拡散性PC樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電気拡散性材料とは、表面抵抗値が106~1012Ωの材料である。表面抵抗値が1010~1012Ωの材料は静電気の局部的な蓄積を防ぐ効果があり、その主な応用シーンは静電気によるホコリの付着を防止できる家電および電子製品の筐体である。表面抵抗値が106~109Ωの材料は静電気を素早く拡散させる効果があり、主に静電気放電による半導体の故障防止、防爆、防火などの用途で使用される。場合によって、たとえば、半導体ケース、掃除機の集塵ボックスなどの場合には、透明度の高い静電気拡散性材料が求められている。
【0003】
現在、屈折率が1.49の有機高分子帯電防止剤が市販されており、それをPMMAと混合して帯電防止透明材料を得ることができる。また、基材の複合化により帯電防止剤と同じ屈折率の樹脂組成物を得ることができ、対応する帯電防止剤と混合することにより透明製品が得られる。
【0004】
PC材料は、優れた透明性、強靭性、耐熱性を有することにより、ほかの材料では代替できない材料となっている。透明PC材料を使用し、静電気拡散特性が必要な場合、業界で最も一般的な方法は、PCの表面に透明帯電防止コーティング層を塗布することであるが、このような方法で得られた製品の表面の帯電防止コーティング層は、こすったり洗い流したりしやすいため、このような静電気拡散性は短時間効果であって、またコストが高い傾向がある。
【0005】
PCと有機高分子帯電防止剤とを組み合わせることで、静電気拡散性のPC材料を得ることができる。しかしながら、このような製品には大きく分けて以下の3つの技術的な問題がある。
【0006】
(1)有機高分子の帯電防止剤であるポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体の屈折率範囲は一般的に1.48~1.52であり、PCの屈折率は1.58であるため、両者の屈折率が一致せず、単純にブレンドするだけでは透明な製品を得ることは困難である。
【0007】
(2)PCとPMMAのような屈折率の低い樹脂とを混合し、帯電防止剤と屈折率が同じになるようにPCとPMMAとの比率を調整し、相溶性の問題を解決できた場合、透明で帯電防止PC/PMMAは得られるが、PCの耐熱性と衝撃性能は大幅に低下させられ、製品の応用が制限される。
【0008】
(3)有機高分子帯電防止剤とその他のポリマーの温度による屈折率変化が異なるため、室温やある一定の温度では透明性に優れていても、温度を上げたり下げたりすると、製品の透明性は大幅に低下する。
【0009】
CN101845212Bは、透明PC帯電防止樹脂フィルムを開示し、PCと高分子帯電防止剤を混合して、厚さ1mmのフィルムで88%を超える透過率を有する帯電防止PC樹脂が得られた。しかし、これはサンプルが薄いため高い透過率が得られているに過ぎない。また、この特許は異なる温度での透明度の変化の問題を解決していない。
【0010】
CN107163537BおよびCN110452514Aは、透明帯電防止ポリカーボネートの製造方法を開示している。PCを小分子帯電防止剤(イオン液体)と混合して、1010~1012Ωの材料が得られた。しかしながら、このような低分子型の帯電防止剤は析出しやすく、帯電防止不良の原因となり、短時間効用の帯電防止製品である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術に存在する不十分な静電気拡散性、透明性および温度による透明性への影響の問題点に鑑みてなされたものであり、透明静電気拡散性PC樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る透明静電気拡散性PC樹脂組成物は、重量部で、
ポリカーボネート樹脂(PC樹脂) 70~95部、
帯電防止剤マスターバッチ 5~30部、
エステル交換阻害剤 0.5~1.5部、
の原料成分を含む。
【0013】
上記帯電防止剤マスターバッチは、質量分率で、
帯電防止剤 40~60%、
エステル交換促進剤 0.5~1.6%、
補助架橋剤 1~3%、
残りはポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、
の原材料成分を含む。
【0014】
上記帯電防止剤は、ポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体種類の有機高分子帯電防止剤である。
【0015】
上記エステル交換促進剤は、オルトチタン酸テトラブチル、p-トルエンスルホン酸およびオクタン酸第一スズから選択されるいずれか1種または複数種である。
【0016】
前記補助架橋剤は、スチレン-アクリロニトリルグラフト無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト無水マレイン酸樹脂、スチレン-アクリロニトリルグラフトグリシジルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフトグリシジルメタクリレート樹脂、またはポリスチレングラフト無水マレイン酸樹脂から選択される1種または複数種である。
【0017】
前記透明静電気拡散性PC樹脂組成物において、帯電防止剤の質量分率は3~12%である。
【0018】
前記帯電防止剤マスターバッチの調製方法は、
(1)帯電防止剤マスターバッチの原料成分の配合に従って材料を調製し、各原料成分を均一に混合してプレミックスを得ることと、
(2)プレミックスを二軸押出機に投入し、溶融押出し、冷却、ペレット化して帯電防止剤マスターバッチを得ること、ここで、二軸押出機の押出温度は250~280℃であり、スクリュー回転速度は200~500回転/分であることと、
のステップを含む。
【0019】
前記エステル交換阻害剤は、オルトケイ酸テトラエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸二水素ナトリウム、またはリン酸ジイソオクチルから選択されるいずれか1種または複数種である。
【0020】
また、上記目的を達成するための本発明に係る透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造方法は、
(I)透明静電気拡散性PC樹脂組成物の原料成分の配合に従って材料を調製し、各原料成分を均一に混合してプレミックスを得ることと、
(II)プレミックスを二軸押出機に投入し、溶融押出し、冷却、ペレット化して目的の製品を得ることと、
のステップを含む。
【0021】
二軸押出機の押出温度は240~260℃であり、スクリュー速度は200~500回転/分である。
【発明の効果】
【0022】
従来技術に比べて、本発明は以下のような効果を奏する。
(1)本発明によって得られる透明静電気拡散性PC樹脂組成物は、優れた静電気拡散性能と透明性を有するだけでなく、表面抵抗値が107~1010Ωに達し、かつPCの優れた透明性、強靭性および耐熱性も有し、透過率は85%を超え、さらに異なる温度でも透明度は安定している。
【0023】
(2) 帯電防止剤とPCの相溶性を向上させて透明な製品が得られた。PCと有機高分子帯電防止剤、エステル交換促進剤と架橋促進剤を混合し、PCと帯電防止剤中のポリアミド鎖部分をエステル交換反応させ、同時に、PCとポリアミドは、架橋剤の作用によりミクロ架橋が起こり、ポリエーテルとPA/PCのブロック共重合体帯電防止剤マスターバッチが得られ、帯電防止剤とPC樹脂の相溶性が効果的に改善された。PCに帯電防止剤を配合し、相溶性が大幅に改善されたため、帯電防止剤の分散相サイズが著しく小さくなり、分散相サイズが可視光の波長の半分以下になると、ブレンド物は透明性が得られる。
【0024】
(3)本発明は、帯電防止剤の添加量を大幅に削減し、導電性が効果的に改善された。従来の帯電防止製品では、有機高分子帯電防止剤の添加量はしばしば10%を超え、抵抗値は一般的に109Ωを超える。しかし、本発明における帯電防止剤の最低添加量はわずか3%である。これは、帯電防止剤の分散相のサイズが著しく減少し、アスペクト比が増加し、導電パスがさらに容易に形成されるためである。
【0025】
(4)本発明によって得られる静電気拡散性PC材料の透明性は、異なる温度で一定に保たれる。従来の帯電防止製品の場合、基材樹脂中の高分子帯電防止剤のサイズは3~800μmであり、温度が変化すると、基材樹脂と帯電防止剤の屈折率変化の傾向が違うため、材料の透明度が大きく変化する。本発明で開示する透明静電気拡散性PC樹脂組成物では、帯電防止剤の分散相のサイズが可視光の波長より小さいため、PCと帯電防止剤の屈折率の差が異なる温度で増加しても、樹脂組成物の透明性は変わらない。これは、温度が変化する環境下で動作する静電気拡散性製品に最適である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。以下の実施形態は、当業者が本発明をさらに理解するのに役立つが、何ら本発明を限定するものでない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの修正および改良を行うことができることに留意されたい。これらはすべて本発明の保護範囲に属する。
【0027】
透明静電気拡散性PC樹脂組成物は、製造方法として、2段階法で製造される。製造工程は次のとおりである。
【0028】
(1)帯電防止剤マスターバッチの調製
(1-1)帯電防止剤マスターバッチの原料成分の配合に従って材料を準備する。帯電防止剤は質量分率が40~60%、エステル交換促進剤は質量分率が0.5~1.6%、補助架橋剤は質量分率が1~3%、残りはPC樹脂であって、すべての原料成分を均一に混合してプレミックスを得る。
【0029】
(1-2)プレミックスを二軸押出機に投入し、溶融押出し、冷却、ペレット化して帯電防止剤マスターバッチを得る。二軸押出機の押出温度は250~280℃であり、スクリュー回転速度は200~500回転/分である。
【0030】
(2)透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造
(2-1)透明静電気拡散性PC樹脂組成物の原料成分の配合に従って材料を準備する。ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)が70~95部、帯電防止剤マスターバッチが5~30部、エステル交換阻害剤が0.5~1.5部であって、各原料成分を均一に混合してプレミックスを得る。
【0031】
(II)プレミックスを二軸押出機に加え、溶融押出し、冷却し、ペレット化して目的の製品を得る。二軸押出機の押出温度は240~260℃であり、スクリュー回転速度は200~500回転/分である。得られた静電気拡散性PC樹脂組成物において、有機高分子帯電防止剤の質量分率は3~12%である。
【0032】
本実施形態で使用する各原料成分について以下に説明する。
帯電防止剤は、ポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体タイプの有機高分子帯電防止剤である。このような帯電防止剤は、市場で容易に入手でき、例としては、Arkema(アルケマ)社製のMH1657、IonPhasE社製のIonphase U1が挙げられる。
【0033】
エステル交換促進剤は、オルトチタン酸テトラブチル、p-トルエンスルホン酸、およびオクタン酸第一スズであってもよい。
【0034】
補助架橋剤は、スチレン-アクリロニトリルグラフト無水マレイン酸樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフト無水マレイン酸樹脂、スチレン-アクリロニトリルグラフトグリシジルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレングラフトグリシジルメタクリレート樹脂、またはポリスチレングラフト無水マレイン酸樹脂であってもよい。
【0035】
エステル交換阻害剤は、オルトケイ酸テトラエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸ジイソオクチルであってもよい。
【0036】
添加剤がPC樹脂組成物の透明性および静電気拡散性に悪影響を及ぼさないという条件下で、開示された組成物は、樹脂組成物の製造を含む用途で従来から使用されている1つまたは複数の添加剤を任意にさらに含んでもよい。たとえば、開示された樹脂組成物は、他の樹脂、安定剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、着色剤、離型剤のうちの1種または複数種を含んでもよい。
【0037】
以下は、本発明の具体的な実施工程であり、各実施形態および比較例に含まれる帯電防止剤等の情報は以下の通りである。
帯電防止剤 AS-1:アルケマ社製のMH1657、表面抵抗値が109Ω
帯電防止剤 AS-2:IonPhasE社製のIonphase U1、表面抵抗値が107Ω。
エステル交換促進剤 ZJH-1:オルトチタン酸テトラブチル、市販
エステル交換促進剤 ZJH-2:p-トルエンスルホン酸、市販
エステル交換促進剤 ZJH-3:オクタン酸第一スズ、市販
補助架橋剤 ZJL-1: スチレン-アクリロニトリルグラフト無水マレイン酸樹脂、市販
補助架橋剤 ZJL-2: スチレン-アクリロニトリルグラフトグリシジルメタクリレート樹脂、市販
エステル交換阻害剤 YZZ-1:オルトケイ酸テトラエチル、市販
エステル交換阻害剤 YZZ-3: リン酸二水素ナトリウム、市販
【0038】
本発明の実施例及び比較例における帯電防止剤マスターバッチの配合を表1に示し、各成分の添加量は質量分率である。
【表1】
【0039】
上記の帯電防止剤マスターバッチ1~8♯は、次の方法に従って調製される。
(1)表1に記載の重量部に従って秤量し、よく混合してプレミックスを得る。
(2)プレミックスを二軸押出機に投入し、260℃で溶融押出し、冷却造粒する。
【0040】
(実施例1~8)
実施例1~8は透明静電気拡散性PC樹脂組成物であり、配合は表2に示し、各成分の添加量は重量部である。
【表2】
【0041】
(比較例1~8)
比較例1~8は透明静電気拡散性PC樹脂組成物であり、配合は表3に示し、各成分の添加量は重量含有量である。
【表3】
【0042】
実施例1~8及び比較例1~8の樹脂組成物の調製方法は以下の通りである。
実施例1~8及び比較例1~8の原料を高速混合機に投入し、均一に予備混合してプレミックスを得た。得られたプレミックスを二軸押出機で押出温度250℃であり、スクリュー回転速度350回転/分で溶融押出し、冷却、ペレット化して最終製品を得る。
【0043】
ここで、比較例4は、帯電防止マスターバッチを個別に調製せず、実施例5と同じ組成に従って、帯電防止剤、エステル交換剤、補助架橋剤、エステル交換阻害剤およびPC樹脂を一段階で押し出すことによって得た。比較例8はPCと帯電防止剤を直接混合したものである。
【0044】
実施例1~8および比較例1~8から調製された樹脂組成物は、機械的特性を測定した。
Charpyノッチ付き衝撃強度:ISO179-1:2010(E)規格に従って測定し、衝撃エネルギーは4Jであった。
曲げ弾性率:ISO178:2010(E)規格に従って測定し、試験速度は2mm/分であった。
抵抗値の評価:ASTM D257を採用して、パネルの表面抵抗値を測定した。
光透過率測定:GB/T 2410-2008に従って、厚み3mmのサンプルの光透過率を25℃および80℃の二つの環境温度下で測定した。
【0045】
実施例1~8の試験結果を表4に、比較例1~8の試験結果を表5に示す。
【表4】
【表5】
【0046】
実施例と比較例4の比較を通じて、最初に帯電防止マスターバッチを調製し、次に帯電防止マスターバッチを他の成分と混合すること、すなわち、二段階法による透明静電気拡散性PC樹脂組成物の製造は非常に重要です。一段階製造法を使用すると、抵抗値が大幅に増加し、光透過率が大幅に低下する。PC樹脂と帯電防止剤を直接混合された場合は、透過率はわずか約10%であった。実施例では、23℃と80℃での光透過率はあまり変わらないが、一方、比較例では異なる温度での光透過率は大きく異なっている。本発明の光透過率は温度の影響を受けないことが示されている。
【0047】
以上、本発明の特定の実施形態について説明した。本発明は、上記の特定の実施形態に限定されず、当業者は、特許請求の範囲内で、本発明の本質的な内容に影響を及ぼさない様々な変更または修正を行うことができることを理解されたい。