(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】運動システム
(51)【国際特許分類】
A63B 22/06 20060101AFI20250129BHJP
【FI】
A63B22/06 G
(21)【出願番号】P 2023156478
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502136780
【氏名又は名称】中津川 重一
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中津川 重一
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3161873(JP,U)
【文献】特開2010-220723(JP,A)
【文献】特開2007-330513(JP,A)
【文献】特開2001-321457(JP,A)
【文献】特開平05-228116(JP,A)
【文献】特開2003-129684(JP,A)
【文献】米国特許第05690588(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が充填される貯留容器と、
前記貯留容器内に設置される運動器具と、
前記貯留容器内の水温を変化させる温度調整機構と、
利用者が前記運動器具により運動する力を補助するための補助力を発生させる補助機構とを具備し、
前記温度調整機構は、前記運動器具での運動中に前記利用者から連続的に検出される生体情報に応じて前記水温を変化させ、
前記補助機構は、前記生体情報に応じて、前記補助力の大きさを変化させ、
前記温度調整機構は、前記利用者に関する利用者情報と前記利用者が所在する環境に関する環境情報とを第1生成モデルに入力した結果に応じて、前記水温を変化させ、
前記補助機構は、前記利用者情報と前記環境情報とを第2生成モデルに入力した結果に応じて、前記補助力の大きさを変化させ、
前記第1生成モデルは、前記水温と、前記利用者情報および前記環境情報との関係を学習したモデルであり、
前記第2生成モデルは、前記補助力と、前記利用者情報および前記環境情報との関係を学習したモデルであり、
前記利用者情報は、入浴中における身体に関するトラブルの有無、過去の病歴、治療履歴、および、心身の状態であり、
前記環境情報は、前記利用者が所在する地域の温度、湿度、高度、季節および気候である
運動システム。
【請求項2】
前記運動器具は、ペダルを含む自転車型の器具であり、
前記補助機構は、前記利用者が前記ペダルを踏む力を補助するための前記補助力を発生させる
請求項1の運動システム。
【請求項3】
前記生体情報は、体温、血圧、呼吸数、脈拍数、呼気中酸素濃度、呼気中二酸化炭素濃度、動脈血酸素分圧、および、発汗量のうち少なくとも1つを示す情報を含む
請求項1の運動システム。
【請求項4】
前記生体情報は、前記体温に関する情報を含み、
前記温度調整機構は、前記生体情報が示す体温が上昇した場合における当該体温の変化量に応じて、前記水温を低下させ、
前記補助機構は、前記体温の変化量に応じて、前記補助力を増加させる
請求項3の運動システム。
【請求項5】
前記生体情報は、前記血圧に関する情報を含み、
前記温度調整機構は、前記生体情報が示す血圧が上昇した場合における当該血圧の変化量に応じて、前記水温を低下させ、
前記補助機構は、前記血圧の変化量に応じて、前記補助力を増加させる
請求項3の運動システム。
【請求項6】
前記温度調整機構は、前記利用者による運動システムでの運動の状況を示す運動情報に応じて、前記水温を変化させ、
前記補助機構は、前記運動情報に応じて前記補助力の大きさを変化させる
請求項1の運動システム。
【請求項7】
前記生体情報と前記利用者情報と前記環境情報とを第3生成モデルに入力した結果に応じて、前記利用者に目標とする運動時間を提示する提示部を具備し、
前記第3生成モデルは、前記生体情報、前記利用者情報および前記環境情報と、前記運動時間との関係を学習した生成モデルであり、
前記生体情報は、体温、血圧、呼吸数、脈拍数、呼気中酸素濃度、呼気中二酸化炭素濃度、酸素飽和度、動脈血酸素分圧、および、発汗量のうち少なくとも1つを示す情報を含
む
請求項
1の運動システム。
【請求項8】
前記提示部は、前記生体情報と前記利用者情報と前記環境情報とを第4生成モデルに入力した結果に応じて、前記利用者に目標とする運動強度を提示し、
前記第4生成モデルは、前記生体情報、前記利用者情報および前記環境情報と、前記運動強度との関係を学習した生成モデルである
請求項
7の運動システム。
【請求項9】
前記生体情報に応じて、前記貯留容器内の水量を変化させる水量調整機構を具備する
請求項1の運動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康の維持および増進を目的とした身体運動のための運動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近頃、健康を守る上で、欠かせないとされる歩行だが、歩行自体が難しい、運動そのものが困難という人口が徐々に増えてきている。特に先進国での高齢化が深刻化するとともに、歩行が困難である人口が増加している。以上のような歩行が困難である者のリハビリとして、温水プールや温泉などの施設において水中での歩行が推奨されている。水中でのリハビリを行うことで、浮力による負担軽減や温水による疼痛軽減が可能であり、身体を楽に動かせるという利点がある。
【0003】
しかし、そもそも歩行が困難である利用者が水中リハビリ施設に出向くことが容易ではないとう問題や、施設の維持管理の負担が大きいという問題に加えて、利用者一人一人の安全(不整脈、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などの予防・早期発見など)を管理するためのスタッフの確保にも負担が大きいという問題もある。したがって、施設で行う水中でのリハビリは、必ずしも一般化できていない。
【0004】
一方で、一般の家庭でも使用可能な自転車型の運動器具(フィットネスバイク)が従来から提案されている(例えば特許文献1)。近年では、このような自転車型の運動器具を通常のプール内に設置した施設も少なからずある。たしかに、プール内に自転車型の運動器具を設置して運動を行うことで、上述したような水中での運動によるメリットは得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、施設におけるプールの水温は、当該プールが大人数で使用することが前提となっていることから、施設の管理者により管理されているにすぎず、利用者毎に適切な温度(利用者毎の個別の事情を考慮した温度)になっているわけでない。運動中に利用者の身体の生体情報(例えば体温、呼吸数、血圧など)は経時的に変化するため、利用者毎に適切な水温に設定することはさらに困難である。例えば、水温が低すぎると筋肉の緊張緩和などによる疼痛軽減の効果が得られなくなる一方で、高すぎると身体への負担(特に心臓への負担)が大きくなり、熱中症といった障害や、循環器系の疾病(不整脈,狭心症,心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞,脳出血)といった疾患を発生しやすいという問題がある。
【0007】
さらには、水中での運動は、浮力が作用するものの、水の負荷(水圧)がかかることから地上での運動よりも運動負荷が大きく、循環関連で歩行が困難である高齢者等にとっては運動負荷が必要以上に大きくなってしまう場合も想定される。運動負荷が必要以上に大きいと、やはり、身体(循環器など)への負担が大きく、上記のような障害や疾患を発生しやすいという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明では、水中で運動が可能である運動器具において、利用者毎に水温と運動負荷とを適切に設定することを目的とする。ひいては、身体への負担を低減して運動することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]水が充填される貯留容器と、前記貯留容器内に設置される運動器具と、前記貯留容器内の水温を変化させる温度調整機構と、利用者が前記運動器具により運動する力を補助するための補助力を発生させる補助機構とを具備し、前記温度調整機構は、利用者の生体情報に応じて前記水温を変化させ、前記補助機構は、前記生体情報に応じて前記補助力の大きさを変化させる運動システム。
【0009】
[2]前記運動器具は、ペダルを含む自転車型の器具であり、前記補助機構は、前記利用者が前記ペダルを踏む力を補助するための前記補助力を発生させる[1]の運動システム。
【0010】
[3]前記生体情報は、体温、血圧、呼吸数、脈拍数、呼気中酸素濃度、呼気中二酸化炭素濃度、動脈血酸素分圧、および、発汗量のうち少なくとも1つを示す情報を含む[1]または[2]の運動システム。
【0011】
[4]前記生体情報は、体温に関する情報を含み、前記温度調整機構は、前記生体情報が占めす体温が上昇した場合における当該体温の変化量に応じて、前記水温を低下させ、前記補助機構は、前記体温の変化量に応じて、前記補助力を増加させる[1]から[3]の運動システム。
【0012】
[5]前記生体情報は、血圧に関する情報を含み、前記温度調整機構は、前記生体情報が占めす血圧が上昇した場合における当該血圧の変化量に応じて、前記水温を低下させ、
前記補助機構は、前記血圧の変化量に応じて、前記補助力を増加させる[1]から[3]の運動システム。
【0013】
[6]前記温度調整機構は、前記利用者による運動システムでの運動の状況を示す運動情報に応じて、前記水温を変化させ、前記温度調整機構は、前記運動情報に応じて前記補助力の大きさを変化させる[1]から[5]の何れかの運動システム。
【0014】
[7]前記温度調整機構は、前記利用者に関する利用者情報と前記利用者が所在する環境に関する環境情報とに応じて、前記水温を変化させ、前記補助機構は、前記利用者情報と前記環境情報とに応じて、前記補助力の大きさを変化させる[1]から[6]の何れかの運動システム。
【0015】
[8]前記生体情報と前記利用者情報と前記環境情報とに応じて、前記利用者に目標とする運動時間を提示する提示部を具備する[7]の運動システム。
【0016】
[9]前記提示部は、前記生体情報と前記利用者情報と前記環境情報とに応じて、前記利用者に目標とする運動強度を提示する[8]の運動システム。
【0017】
[10]前記生体情報に応じて、前記貯留容器内の水量を変化させる水量調整機構を具備する[1]から[8]の運動システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明の好適な態様に係る運動システムによれば、利用者の生体情報に応じて水温と補助力の大きさとが変化するから、利用者毎に水温と運動負荷とを適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る運動システムの側面図である。
【
図2】実施形態に係る制御ユニットの機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図3】変形例に係る制御ユニットの機能的な構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施形態に係る運動システム100の構成を例示する側面図である。本実施形態の運動システムは、水中において運動を可能にするシステムである。
【0021】
図1に例示される通り、運動システム100は、例えば、貯留容器10と筐体部20と運動器具40と温度調整機構60と補助機構70と制御ユニット80と表示操作ユニット90とを具備する。本実施形態の運動器具40は、利用者Uが着席した姿勢で両脚を交互に屈伸することでペダルを回転させる運動が可能な自転車型の器具(フィットネスバイク)である。運動器具40は、サドル41と手摺部43とペダル機構45とを具備する。
【0022】
なお、以下の説明で、「右方向」と表記する場合には、運動システム100の使用時(サドル41に座った状態の時)に利用者Uの右足がある方向であり、「左方向」と表記する場合には、運動システム100の使用時(サドル41に座った状態の時)に利用者Uの左足がある方向であり、右方向とは反対側の方向である。なお、
図1は、右方向からみたときの側面図である。
【0023】
本実施形態において、運動時の利用者Uは、利用者Uの各種の生体情報を取得するためのセンサユニットGを装着する。本実施形態のセンサユニットGは、利用者Uの生体情報を検出するためのセンサ機器である。例えば、ウェアラブル型のセンサ機器が好適に利用される。本実施形態では、生体情報は、補助機構70と温度調整機構60との制御に用いられる。生体情報は、生体情報の時間変化も確認できるように、連続的に検出される。
【0024】
本実施形態の生体情報は、例えば、体温を示す情報(以下「体温情報」という)と、呼吸数(例えば1分間あたりの呼吸数)を示す情報(以下「呼吸情報」)とを含む。
【0025】
センサユニットGは、体温を検出するセンサと、呼吸数を検出できるセンサとを含む。なお、体温を検出するセンサと、呼吸数を検出するセンサとは、それぞれ公知の任意のセンサが利用され、侵襲/非侵襲を問わない。なお、呼吸数を検出するセンサには、呼吸気の流れや胸の動きにより呼吸数を検出するセンサが適宜に用いられる。
図1では、便宜的にセンサユニットGを腕に装着している場合を例示したが、センサユニットGが検出対象とする生体情報の種類に応じて装着する場所や設置する場所は適宜に相違する。
【0026】
貯留容器10は、内部に水を貯留可能な容器である。以下、貯留容器10内に充填される水を「貯留水W」と表記する。具体的には、貯留容器10は、底部と側壁部とを含む。貯留容器10の上部(側部とは反対側)には、利用者Uが貯留容器10内に出入りするための開口Oが設けられている。貯留容器10の深さは、運動システム100を使用する際に利用者U(サドル41に座った状態の利用者U)の下半身(足先から股関節および腸骨あたり)まで貯留水につかる程度あることが好適である。なお、貯留容器10には水を充填するための給水口H1や貯留水Wを排出するための排水口H2を設けてもよい。給水口H1と排水口H2とは、例えば、開閉弁により開閉される。運動器具40は、貯留容器10内に設置される。なお、運動器具40の全体が貯留容器10内に設置される必要はなく、利用者Uが運動する際に動かす部分(本実施形態ではペダル機構45)が少なくとも貯留容器10内に設置されればよい。
【0027】
手摺部43は、利用者Uが使用時に握るためのハンドルである。手摺部43の形状は、特に限定されず、貯留容器10の内部に設けてもよいし、貯留容器10の外部に設けてもよい。
【0028】
表示操作ユニット90は、各種の情報を表示する表示機器(例えば液晶表示パネル)と、利用者Uが操作する複数の操作子とを含んで構成される。貯留容器10の外部に表示操作ユニット90が設けられる。
【0029】
筐体部20は、中空の構造体であり、貯留容器10の内側において底部に設けられる。
【0030】
サドル41は、利用者Uが着席するシートであり、貯留容器10の内側に設けられる。サドル41を貯留容器10内に設置する方法は、任意であるが、例えば筐体部20に設けられた支持軸(サドルポスト)の先端部にサドル41が設置される。
【0031】
ペダル機構45は、2個のクランク(右クランク,左クランク)451と回転軸(クランクシャフト)452と2個のペダル(右ペダル,左ペダル)453とを具備する。
【0032】
回転軸452は、筐体部20を貫通し、左右方向に延在するように設けられる。回転軸452の右方向の端部(右端部)に一方のクランク(右クランク)451が設けられ、回転軸452の左方向の端部(左端部)に他方のクランク(左クランク)451が設けられる。回転軸452の右端部および左端部のそれぞれにペダル(右ペダル,左ペダル)453が設けられる。なお、
図1は、右方向からみたときの側面図であるため、他方のクランク(左クランク)451と他方のペダル(左ペダル)453との図示は省略する。ペダル453とクランク451とは、貯留容器10の内部において筐体部20の外部に位置する。すなわち、使用時において水中に位置する。
【0033】
サドル41に着席した利用者Uは、両脚を各ペダル453に乗せた状態で、両脚を交互に屈伸することにより回転軸452を回転させる。回転軸452は、回転可能なように筐体部20に軸支されている。なお、回転軸452は、当該回転軸452が挿通される軸受部(図示略)を介して筐体部20に支持されていてもよい。例えば玉軸受を円筒体の内側に設置することで軸受部が構成される。
【0034】
補助機構70は、運動器具40による運動を補助するための機構である。具体的には、補助機構70は、利用者Uが運動器具40により運動する力を補助するための補助力を発生させる。筐体部20の内部に補助機構70が設けられる。本実施形態の補助機構70は、利用者Uがペダル453を踏む力を補助するための補助力(いわゆるアシストトルク)を発生させる。本実施形態の補助機構70は、例えば、補助力を発生させるモータを具備する。モータは、外部電源や補助機構70に内蔵されるバッテリから供給される電力で駆動する。モータに供給される電流が大きいほど、発生する補助力も大きくなる。モータが発生させた補助力が回転軸452に付与され、当該回転軸452を回転させることで、利用者Uによるペダル453を踏む力を補助することが可能になる。
【0035】
ただし、補助力を発生させることが可能であれば、補助機構70の具体的な構成は以上の例示には限定されない。例えば、補助機構70が回転軸452に直接的または間接的に接続された回転体をさらに具備し、当該回転体をモータにより回転させることで、回転軸452に補助力を付与する構成も採用される。同様に、ペダル機構45は、補助機構70からの補助力が伝達され、ペダル453を踏む力が補助されれば、以上の構成には例示されない。
【0036】
本実施形態の補助機構70は、生体情報に応じて補助力の大きさを変化させる。補助機構70(モータ)は、制御ユニット80により制御されることで、補助力の大きさを変化させる。補助機構70の具体的な制御の方法は、後述する。
【0037】
温度調整機構60は、貯留容器10内の貯留水Wの水温を調整する機構である。温度調整機構60は、例えば循環式の温度調整機器が用いられる。具体的には、温度調整機構60は、例えば、貯留水Wを搬送するためのポンプ、貯留水Wを冷却可能な冷却部と、貯留水Wを加熱可能な加温部とを含む。冷却部と加温部とは、一体の装置でも別体の装置でもよく、公知の任意の装置(例えば熱交換器、チラー、ヒーター、ヒートポンプ)が適宜に使用される。温度調整機構60と貯留容器10の内部とは、例えば搬送管Tを介して接続される。
【0038】
貯留容器10内の貯留水Wは、温度調整機構60に供給され、当該温度調整機構60で水温が調整された後に、再び貯留容器10内に戻るように循環される。なお、温度調整機構60と貯留容器10とが一体であってもよい。ただし、貯留水Wの水温を調整可能であれば、温度調整機構60の具体的な構成は以上の例示には限定されない。温度調整機構60は、制御ユニット80により制御される。
【0039】
温度調整機構60は、運動中に筋肉から発生する熱で利用者Uの体温が上昇することを踏まえて、運動開始時点においては、例えば所定の範囲(例えば25℃~32℃)内で貯留水Wの水温を維持する。
【0040】
本実施形態の温度調整機構60は、さらに、利用者Uが運動を開始すると、利用者Uの生体情報に応じて貯留水Wの水温を変化させる。温度調整機構60は、制御ユニット80による制御のもとで、貯留水Wの水温を変化させる。
【0041】
制御ユニット80は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の単数または複数の処理回路で構成され、運動システム100の各要素を統括的に制御する。制御ユニット80が実行するプログラムと制御ユニット80が使用する各種のデータとは、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成された単数または複数のメモリである記憶装置(図示略)に記憶される。
【0042】
図2は、制御ユニット80の機能的な構成を例示するブロック図である。制御ユニット80は、例えば、第1制御部81および第2制御部82として機能する。なお、制御ユニット80を設置する場所は、任意であり、運動システム100と一体であっても別体であってもよい。運動システム100と別体である場合には、例えばスマートフォン、タブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の情報端末により制御ユニット80を実現してもよい。
【0043】
ここで、利用者U(特に高齢者)にとって水温や運動負荷(ペダルの回転運動による運動負荷)が大きすぎると、身体への負担が大きく、熱中症といった障害や、循環器系の疾病(不整脈,狭心症,心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞,脳出血)といった疾患を発生しやすいという事情がある。以上の事情を考慮して、本実施形態では、貯留水Wの水温と補助力とを制御することで、利用者に適切な水温と運動負荷とが設定できる。利用者Uの体温と呼吸数とが上昇した場合には、運動負荷が大きいことが推定される。したがって、体温と呼吸数とが上昇した場合に、貯留水Wの水温を低下させる。以下、貯留水Wの水温と補助力とを制御する具体的な方法について例示する。
【0044】
第1制御部81は、生体情報(体温情報,呼吸情報)Sに応じて温度調整機構60を制御することで、当該温度調整機構60に貯留水Wの水温を変化させる。
【0045】
第1に、本実施形態の第1制御部81は、体温情報が示す体温(利用者Uの体温)が上昇した場合における当該体温の変化量(以下「体温変化量」という)に応じて、貯留水Wの水温が低下するように温度調整機構60を制御する。体温変化量は、例えば運動開始時点から現時点までの体温の変化量(現時点の体温-運動開始時点の体温)である。具体的には、第1制御部81は、利用者Uの体温変化量が所定の第1閾値(例えば2~5℃の範囲内の値)を上回った場合に、貯留水Wの水温を所定の変化量(以下「目的水温変化量」)で低下させる。目的水温変化量は、例えば2~4℃が想定される。以上の説明から理解される通り、利用者Uの体温が上昇しすぎないように、貯留水Wの水温が制御される。
【0046】
第2に、本実施形態の第1制御部81は、呼吸情報が示す呼吸数(利用者Uの呼吸数)が上昇した場合における当該呼吸数の変化量(以下「呼吸変化量」という)に応じて、貯留水Wの水温が低下するように温度調整機構60を制御する。呼吸変化量は、例えば運動開始時点から現時点までの呼吸数の変化量(現時点の呼吸数-運動開始時点の呼吸数)である。具体的には、第1制御部81は、利用者Uの呼吸変化量が所定の第2閾値(例えば5回以上の値)を上回った場合に、貯留水Wの水温を目的水温変化量で低下させる。以上の説明から理解される通り、利用者Uの呼吸数が増加しすぎないように、貯留水Wの水温が制御される。なお、体温情報を用いて水温を制御する場合の目的水温変化量と、呼吸情報を用いて水温を制御する場合の目的水温変化量との異同は問わない。
【0047】
第1制御部81が貯留水Wの水温を制御する方法は以上の例示には限定されない。例えば第1制御部81は、体温情報が示す利用者Uの体温が所定の閾値(例えば37℃)を上回った場合に、貯留水Wの温度を低下させてもよい。同様に、第1制御部81は、呼吸情報が示す利用者Uの呼吸数が所定の閾値(例えば25回)を上回った場合に、貯留水Wの温度を低下さてもよい。すなわち、生体情報Sが示す値(例えば体温,呼吸数)の変化量に応じて貯留水Wの水温を制御することは必須ではない。
【0048】
第2制御部82は、生体情報(体温情報,呼吸情報)に応じて、補助機構70(モータ)が発生する補助力を変化させる。本実施形態の第2制御部82は、体温変化量と呼吸変化量とに応じて、補助力を変化させる。
【0049】
第1に、本実施形態の第2制御部82は、利用者Uの体温変化量が第3閾値(例えば2~5℃の範囲内の値)を上回った場合に、補助力を所定の変化量(以下「目的トルク変化量」)で増加させる。すなわち、利用者Uによるペダル453を踏む力を補助するための補助力が大きくなる。以上の説明から理解される通り、利用者Uの体温が上昇しすぎないように、補助力が制御される。なお、貯留水Wの水温の制御に用いられる第1閾値と、補助力の制御に用いられる第3閾値との異同は問わない。
【0050】
第2に、本実施形態の第2制御部82は、利用者Uの呼吸変化量が第4閾値(例えば5回以上の値)を上回った場合に、補助力を目的トルク変化量で増加させる。なわち、利用者Uによるペダル453を踏む力を補助するための補助力が大きくなる。以上の説明から理解される通り、利用者Uの呼吸数が増加しすぎないように、補助力が制御される。なお、貯留水Wの水温の制御に用いられる第2閾値と、補助力の制御に用いられる第4閾値との異同は問わない。また、体温情報を用いて補助力を制御する場合の目的トルク変化量と、呼吸情報を用いて補助力を制御する場合の目的トルク変化量との異同は問わない。
【0051】
第2制御部82が補助力を制御する方法は以上の例示には限定されない。例えば第1制御部81は、体温情報が示す利用者Uの体温が第3閾値を上回った場合に、補助力を増加させてもよい。同様に、第2制御部82は、呼吸情報が示す利用者Uの呼吸数が第4閾値を上回った場合に、貯留水Wの温度を低下さてもよい。すなわち、生体情報が示す値(例えば体温,呼吸数)の変化量に応じて貯留水Wの水温を制御することは必須ではない。
【0052】
本実施形態では、第1制御部81による貯留水Wの水温の制御と、第2制御部82による補助力の制御とは、利用者Uが運動をしている間において所定の期間(例えば5秒~1分)毎に連続して行う構成が好適である。生体情報は運動中に連続的に検出されるから、経時的に変化する生体情報を踏まえて、適切に水温と補助力とを設定することが可能である。
【0053】
以上の説明から理解される通り、利用者Uの生体情報Sに応じて貯留水Wの水温と補助力が制御されるから、利用者U毎に適切に水温と補助力を設定できる(すなわち個別最適化できる)。したがって、運動時における利用者Uの身体への負担を軽減することができる。
【0054】
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。前述の形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0055】
(1)前述の形態では、生体情報が体温情報や呼吸情報である構成を例示したが、生体情報は体温に関する情報には限定されない。生体情報は、体温、血圧、呼吸数、脈拍数、呼気中酸素濃度、呼気中二酸化炭素濃度、酸素飽和度、動脈血酸素分圧、および、発汗量のうち少なくとも1つに関する情報を含めば任意である。生体情報に含まれる情報の種類に関わらず、身体への負担が大きくなったことを当該生体情報の変化から確認した場合に、貯留水Wの水温や補助力が低下するように、温度調整機構60と補助機構70とが制御される。例えば体温、血圧、呼吸数、脈拍数、呼気中二酸化炭素濃度および発汗量は上昇した場合に、呼気中酸素濃度および動脈血酸素分圧は低下した場合に、身体への負担が大きくなったことが確認される。温度調整機構60は、生体情報に応じて水温を変化させる要素であり、補助機構70は、生体情報に応じて補助力の大きさを変化させる要素である。生体情報が血圧に関する情報を含む場合には、例えば、温度調整機構60は、生体情報が示す血圧(利用者Uの血圧)が上昇した場合における当該血圧の変化量に応じて、貯留水Wの水温を低下させ、補助機構70は、当該血圧の変化量に応じて、補助力を増加させる。
【0056】
運動システム100(制御ユニット80)は、センサユニットGにより検出された生体情報から特定された所定の障害や疾患の恐れがあるか否かを推定してもよい。運動システム100は、障害や疾患の恐れがあると推定した場合には、直ちに運動を中止するように警告(例えば表示や発音により警告)をすることや貯留水Wを全て排出することが好ましい。なお、生体情報から推定できる障害や疾患としては、例えば熱中症、不整脈、心疾患、脳疾患などが例示される。なお、センサユニットGとして、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを用いてもよい。また、制御ユニット80は、動機や息切れなどの自覚症状に応じて温度調整機構60および補助機構70を制御してもよい。自覚症状は、利用者による操作子(図示略)に対する操作で運動システム100に入力される。
【0057】
(2)前述の形態において、第1制御部81は、体温変化量が所定の閾値(第1閾値より低い値)を上回らない場合に、貯留水Wの水温を上昇させてもよい。同様に、第2制御部82は、呼吸変化量が所定の閾値(第2閾値より低い値)を上回らない場合に、貯留水Wの水温を上昇させてもよい。
【0058】
また、前述の形態において、第2制御部82は、体温変化量が所定の閾値(第3閾値より低い値)を上回らない場合に、補助力を小さくしてもよい(すなわち運動負荷を大きくしてもよい)。同様に、第2制御部82は、呼吸変化量が所定の閾値(第4閾値より低い値)を上回らない場合に、補助力を小さくしてもよい(すなわち運動負荷を大きくしてもよい)。以上の説明から理解される通り、生体情報に応じて(例えば生体情報の変化量に応じて)、水温を上昇させ、補助力を低下させる構成も採用される。
【0059】
(3)温度調整機構60は、利用者Uによる運動システム100での運動の状況を示す運動情報に応じて、貯留水Wの温度を変化させてもよい。同様に、補助機構70は、利用者Uによる運動システム100での運動の状況を示す運動情報に応じて、補助力を変化させてもよい。運動情報は、例えば運動期間(運動開始時点からの時間)を示す情報である。運動システム100は、運動情報を取得するための取得部を具備する。取得部は、運動情報の種類に応じて適宜に変更し得る。例えば、運動情報が運動期間を示す情報である場合には、利用者Uからの運動開始の指示を契機として時間を計測するタイマーや、ペダル453の回転を開始した時点から時間を計測するタイマーが取得部として例示される。
【0060】
第1制御部81は、例えば、運動期間が所定の閾値を上回った場合に、貯留水Wの水温を低下させる(例えば目的水温変化量で低下させる)ように温度調整機構60を制御する。同様に、第2制御部82は、例えば、運動期間が所定の閾値を上回った場合に、補助力を増加させる(例えば目的補助力変化量で増加させる)ように補助機構70を制御する。運動期間が長時間にわたる場合は、利用者Uへの身体の負担が高くなる。したがって、運動情報に応じて、貯留水Wの水温と補助力とを制御することで、利用者Uの身体への負荷が高くなりすぎることを抑制できる。以上の説明から理解される通り、利用者Uの運動情報に応じて、利用者Uに適切に貯留水Wの水温と補助力とを制御することができる。なお、第1制御部81と第2制御部82とは、生体情報と運動情報との双方に応じて、温度調整機構60と補助機構70とをそれぞれ制御することが好ましい。なお、運動情報は、運動期間を示す情報には限定されず、例えば運動強度(メッツ)を示す情報や現時点における補助力の値であってもよい。
【0061】
(4)前述の形態において、利用者Uがペダル453を踏む力に応じたトルクを検出するトルクセンサを補助機構70が具備してもよい。第2制御部82は、トルクセンサが検出したトルクに応じて、補助機構70を制御してもよい。例えば、トルクセンサが検出したトルクが大きいほど、補助機構70が発生させる補助力(アシストトルク)を増加させる構成が採用される。
【0062】
(5)前述の形態において、第1制御部81は、生体情報と貯留水Wの水温との関係を学習した第1生成モデルを利用して、温度調整機構60を制御してもよい。
【0063】
なお、生成モデルとは、機械学習により生成された統計的推定モデルである。例えば深層ニューラルネットワークで生成モデルが構成される。第1生成モデルは、生体情報に対して統計的に妥当な貯留水Wの水温を出力する。具体的には、生成モデルは、生体情報から貯留水Wの水温を生成する演算を制御ユニット80に実行させるプログラムと、当該演算に適用される複数の変数との組合せで実現される。複数の変数の各々の数値は、機械学習により事前に設定される。同様に、第2制御部82は、生体情報と補助力との関係を学習した第2生成モデルを利用して、補助機構70を制御してもよい。
【0064】
また、利用者Uの運動時における生体情報と、当該生体情報を取得した時点における貯留水Wの水温とを対応付けた教師データにより、第1生成モデルの複数の変数を更新するようにしてもよい。同様に、運動時における生体情報と、当該生体情報を取得した時点における補助力とを対応付けた教師データにより、第2生成モデルの複数の変数を更新するようにしてもよい。なお、運動開始時点から所定の期間経過後(例えば30分経過後)までの間の生体情報と貯留水Wの水温または補助力とを教師データとしてもよい。以上の説明から理解される通り、運動の度に第1生成モデルと第2生成モデルが更新されるから、次回の運動時に直近で運動した際の生体情報を加味して、貯留水Wの水温と補助力とを設定することができる。
【0065】
なお、前回の運動時における生体情報を第1生成モデルに入力することで出力された水温を、運動開始時における初期値として設定してもよい。また、前回の運動時における生体情報を第2生成モデルに入力することで出力された補助力を、運動開始時における初期値として設定してもよい。各運動時における生体情報は、制御装置に記憶しておく。
【0066】
(6)第1生成モデルは、さらに利用者Uに関する各種の情報(「利用者情報」という)や利用者Uが所在する環境に関する情報(以下「環境情報」という)を加味して、貯留水Wの水温を設定してもよい。具体的には、第1生成モデルは、貯留水Wの水温と、生体情報、環境情報および利用者情報との関係を学習した生成モデルを利用する。同様に、第2生成モデルは、さらに利用者情報と環境情報とを加味して、補助力を設定してもよい。具体的には、第2生成モデルは、補助力と、生体情報、環境情報および利用者情報との関係を学習した生成モデルを利用する。
【0067】
利用者情報は、例えば、温泉利用時や入浴中の動悸や息切れ(不整脈の場合もあり)などのトラブルの有無、過去の病歴、治療履歴、心身の状態などの情報である。環境情報は、例えば、利用者Uが所在(居住)する地域の温度、湿度、高度、季節、気候などの情報である。利用者情報と環境情報とは、利用者Uにより運動開始前に事前に入力される。なお、第1生成モデルにより水温を特定する際と第2生成モデルとにより補助力を特定する際とにおいて、利用者情報と環境情報とは利用者Uから更新されない限り、直近に入力されたものが使用される。
【0068】
なお、第1生成モデルと第2生成モデルとは、運動時における生体情報の時間変化を加味して、貯留水Wの水温と補助力とをそれぞれ出力してもよい。生体情報の時間変化を加味する場合には、生成モデルとしてリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いることが好ましい。
【0069】
なお、温度調整機構60が生体情報と利用者情報と環境情報とに応じて、水温を変化させることが可能であれば、第1生成モデルを使用することは必須ではない。同様に、補助機構70が生体情報と利用者情報と環境情報とに応じて、補助力を変化させることが可能であれば、第2生成モデルを使用することは必須ではない
【0070】
(7)制御ユニット80は、利用者Uの最適な運動時間(ひいては運動量)を提示する提示部を具備してもよい。例えば、運動時間は、利用者Uが実際に運動を行う際に目標とする運動時間であり、例えば、生体情報、利用者情報および環境情報に応じて設定される。例えば、生体情報、利用者情報および環境情報と、運動時間との関係を学習した第3生成モデルが利用される。制御ユニット80は、例えば、利用者Uから運動をすることを支持されると、生体情報、利用者情報およびを生成モデルに入力することで、運動時間を特定する。なお、生体情報は、前回の運動時における生体情報を用いて第3生成モデルから出力された運動時間を、運動開始時における初期値として用いてもよい。運動時間は、例えば表示操作ユニット90に表示されることで、利用者Uに提示される。ただし、運動時間の特定において、第3生成モデルと用いることは必須ではない。また、提示部は、運動時間と同様に、生体情報、利用者情報および環境情報に応じて運動強度(例えばメッツまたはメッツに応じた指標など)を提示してもよい。
【0071】
(8)運動時における貯留水Wの水温および補助力と、運動時間とを、運動中または運動後の利用者Uの感想(運動がつらいや楽など)とともに記憶装置に記憶して、次回の運動時おいて、当該感想を踏まえて貯留水Wの水温と補助力と運動時間とを設定してもよい。
【0072】
(9)前述の形態において、ペダル453の回転に負荷を付与する負荷機構を運動システム100が具備してもよい。ペダル機構45は、例えば、クランク451の回転(すなわち2個のペダル453の回転)を負荷機構に伝達するためのプーリーをさら具備する。そして、負荷機構は、例えば、回転可能に筐体部20に軸支された円板状の回転体(フライホイール)と、回転体の回転抵抗を例えば磁気的に調整する調整機構(図示略)とを含む。制御ユニット80は、調整機構を制御することで、回転体の回転抵抗を変更する。制御ユニット80は、例えば、生体情報や運動情報に応じて調整機構を制御する。例えば、利用者Uの生体情報や運動情報に応じて調整機構が制御される。例えば、生体情報や運動情報により利用者Uの運動負荷を上げても問題ないような場合(例えば体温が上昇した場合の温度変化が小さい場合や運動時間が短い場合など)に、回転抵抗を大きくする。
【0073】
負荷機構の回転体とペダル機構45のプーリーとの間には環状の伝動ベルトが架設される。したがって、クランク451の回転がプーリーと伝動ベルトとを介して負荷機構の回転体に伝達される。すなわち、クランク451の回転軸452の回転に連動して回転体が回転する。以上の説明から理解される通り、負荷機構は、クランク451の回転に対して可変の負荷を付与する機構である。回転体の回転抵抗が大きいと、クランク451の回転に作用する負荷が大きい(すなわち利用者Uの運動負荷が高くなる)。一方で、回転体の回転抵抗が小さいと、クランク451の回転に作用する負荷は小さい(すなわち利用者Uの運動負荷が低くなる)。
【0074】
(10)本発明の一例に係る運動システム100では、貯留水Wの水温と補助機構70による補助力とが、利用者Uの生体情報に応じて制御されるから、利用者Uに最適な水温と補助力とに設定することができる。具体的には、利用者Uの身体の負担が大きくなりすぎないように、貯留水Wの水温と補助力とが制御される。特に、高齢者は、過剰な運動負荷が原因で、熱中症、循環器系の疾病(不整脈,狭心症,心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞,脳出血)を発生しやすいという問題がある。本発明の運動システム100によれば、高齢者における以上の問題が発生することを低減することができる。また、通常のプールにおける運動と比較して、溺れる危険性も低い。
【0075】
(11)運動システム100は、例えば、通信装置(図示略)が生体情報と運動情報とを、例えば、利用者Uと離れた場所に所在する医療従事者(例えば医師)の情報端末に送信し、医療従事者が随時確認できるようにすることが好ましい。そして、送信された生体情報と運動情報とをもとに医療従事者が貯留水Wの水温や補助力を変更すべきと判断したときには、水温や補助力を変更する指示を運動システム100に送信して、当該指示に応じて第1制御部81と第2制御部82とがそれぞれ水温と補助力を変化させてもよい。すなわち、生体情報と運動情報とを医療従事者の情報端末に送信することで、遠隔医療でのリハビリも可能になる。
【0076】
特に、生体情報から利用者Uの異変が確認できた場合には、医療従事者の指示のもと、水温を低下させると共に、補助力を一気に軽くすることが好ましい。ただ、急に運動を止めることは、却って心臓に負担を招くことがある。したがって、激しい頭痛・胸部痛、意識消失発作、全身痙攣、心房細動や心室細動などの緊急時を除いては、補助力を一気に軽くして、運動は継続させることが好ましい。
【0077】
(12)運動システム100を使用する際は、AEDを付近に置き、医療従事者が待機することが望ましい。ただし、上記の緊急時を確認した場合には、直ちに、温水槽から急速排水装置を作動し、水圧および水温の影響を排除し、警報を流して周囲に知らせるようにする。
【0078】
運動開始時に、十分な時間を掛けた問診や準備運動の中で、何らかの違和感や体調の変化がある場合には、運動は行わず、体調の回復があった場合でも、利用者Uの運動負荷が極めてかるくなるように、貯留水Wの水温や補助力を設定する。また、運動時間も短く設定して、体調の変化を見極める。
【0079】
(13)運動システム100を構成する要素のうち水に接触する可能性がある要素(例えば貯留容器10、筐体部20やサドル41)は、例えば硬性プラスチックや強化プラスチックなどで形成され、水圧に十分耐える厚みがあることが好ましい。運動システム100のうち貯留容器10内の水と直接的に接触する可能性がある要素(筐体部20,支持軸,サドル41,手摺部43)は、硬性プラスチックや強化プラスチックなどで形成することが好ましい。特に、運動時の音や振動を低減するために、また、水垢や錆を防ぐために、抗菌剤を含んだ硬質プラスチックが望ましい。
【0080】
(14)貯留水Wは、風呂の湯でも利用可能であるが、水垢、微生物の繁殖を防ぐ為にも、利用は推奨されず、むしろ控える方が良い。また、ジムや老人施設、リハビリ施設などで運動システム100を使用する場合には、白癬やヘルペスなど皮膚病の方の使用は防げないので、抗菌剤或いは塩化ジアゼパムなど抗ウイルス剤を貯留水Wに添加することが好ましい。ただし、加温されて、水蒸気中などに不快な臭気或いは毒性のガスが出るものは避ける。
【0081】
(15)貯留容器10の上部の開口Oを、利用者Uが貯留容器10何に入った後に利用者Uと開口Oとの隙間を塞ぐように蓋部を貯留容器10が具備してもよい。利用者Uが肥満体系である場合にも入りやすくするために貯留容器10の開口Oは広めにし、サドル41に座った状態で開口Oを蓋部で塞ぐことができるようにする。蓋部は、ペダル453を回転する運動により、水面が激しく上下することによる水の飛散を防ぐために貯留容器10が具備することが好ましい。利用者Uの呼吸を妨げないように、利用者Uの上腹部に対応する位置において、比較的柔らかいプラスチック材質により蓋部を設ける構成が好適である。
【0082】
(16)制御ユニット80は、表示操作ユニット90による操作における利用者Uからの指示に応じて、温度調整機構60と補助機構70とを制御してもよい。したがって、利用者Uは何らかの自覚症状を感じた場合には、貯留水Wの水温を低下させることや補助力を大きくすることができる。
【0083】
(17)本発明の一例に係る運動システム100では、足から股関節および腸骨に至るまでを温水で浸せるため、比較的に少ない水量で、溺れる可能性も十分に低減しつつ、浮力を確保するだけでなく、心臓を温めず、心臓への圧力や温度上昇が避けられる。また、運動システム100に補助機構70を設けることで、運動負荷が高くなることを避けることができ、疼痛を避けながら、個別最適化した運動負荷や運動時間の設定が可能となる。そして、生体情報から利用者Uの身体に起きている変化を観測することができるから、より安全に運動を行うことができる。
【0084】
(18)搬送管T(チューブ)と貯留容器10内の開口(取水口,排出口)の接続部は、漏出を塞ぐための継手構造を採用する。運動システム100において、角張った部分は、外傷を招くこともあり、可能な範囲で、丸みを持たせる。貯留容器10の底部は、広くし、貯留容器10の上部は、重さを軽くする為にも狭くする。
【0085】
(19)現状、軽い心不全だけでなく、心臓手術後であっても、リハビリが勧められている。また、整形外科的な運動不全などでも温水プールや温泉での運動が勧めれているが、運動負荷や運動時間などの調節が難しい。本発明の一例に係る運動システム100は、補助力の大きさや貯留水Wの水温を制御することで運動負荷の調整が可能であり、運動時間も利用者U毎に設定することが可能になる。さらに、生体情報や運動情報を医療従事者の端末装置に送信することで、遠隔医療にもなる。また、貯留水Wが影響する範囲を主に下半身として、浮力および水温と、補助機構70による補助により、疼痛が緩和される。さらに、音楽を聴きながらなど運動を楽しく継続できるので、筋肉の育成および痩身などの目的を実現することが他の運動方法よりも確実性が高い。
【0086】
(20)関節軟骨は血流がないこともあり、運動すればするほど、また激しい運動をすればするほど、磨耗し再生しないことである。また、関節軟骨の摩耗が関節痛の原因ともなる。さらに、関節軟骨の一部挫滅が、特に運動時の疼痛の原因になる。運動時に疼痛がするようになると、疼痛を軽減する為の無理な姿勢や体位により、新たな関節軟骨の摩耗を来すという悪循環が始まる。この点でも、本発明の運動システム100によれば、関節軟骨の挫滅を遅延させ、別の関節への負荷を軽減でき、運動可能期間の延長を図れるという利点もある。
【0087】
特に、激しい運動時には、下肢など関節部への負荷は体重の5倍に達するとも言われ、これが関節軟骨の摩耗や循環器系への負荷に繋がると推察される。そこで、今回、温水中での浮力、筋肉の弛緩作用、血流改善作用以外に、補助機構70を導入することで、下肢関節部での体重負荷を1.5倍以下に、上肢関節部での体重負荷を0.5倍以下に留めることで、関節軟骨や循環器系への負荷を減ずることを目指す。ひいては、不整脈、心不全や関節部の疼痛を予防しながら、生命へのリスクを感じることなしで、無理なく運動を続けることで、体重の増加を防ぎながら、運動習慣を身につけることが可能となる。
【0088】
(21)前述の形態では、運動器具40として自転車型の器具を例示したが、運動器具40は以上の例示には限定されない。運動器具40には、一般的なスポーツジムで設置されている各種の器具が採用される。例えば、ステッパー、ローイングマシン、クロストレーナー、ランニングマシン、踏み台昇降マシンなどが運動器具40として例示される。補助機構70の具体的な構成は、運動器具40による運動を補助するための補助力を発生させることが可能であれば任意であり、運動器具40の種類に応じて適宜に異なる。例えば、運動器具40がステッパーであれば、利用者がステッパーを踏む力を補助するため補助力を発生することが可能な補助機構70が採用される。
【0089】
ただ、股関節部と心臓部位との高さの差異が小さく、温水の循環器への負担は比較的大きくなるが、関節軟骨への負担軽減は可能となると考える。なお、トルク感受部位での負荷が過大となった場合には、直ちに回転運動をピストン運動に変換することで、関節軟骨の摩耗、疼痛を防ぐための補助機構を自転車型以外の運動器具40にも導入が可能となる。
【0090】
(22)
図3は、変形例に係る制御ユニット80の機能的な構成を例示するブロック図である。変形例に係る運動システム100は、生体情報Sに応じて、貯留水Wの水量を変化させる水量調整機構を具備してもよい。例えば、貯留容器10内に水を供給する給水口H1を開閉するための開閉弁V1と、貯留容器10内から水を排出する排水口H2を開閉するための開閉弁V2とが水量調整機構の例示である。
図3に例示される通り、変形例に係る制御ユニット80は、第1制御部81と第2制御部82とに加えて、第3制御部83を具備する。第3制御部83が開閉弁V1,V2の開閉を制御することで、貯留水Wの水量を変化させる。例えば、生体情報Sが身体への負担が大きいことを示す場合(例えば生体情報Sが血圧の場合には血圧が所定の閾値を上回る場合)には、貯留水Wの水量を低下させる。すなわち、開閉弁V2を開状態にして排水口H2から貯留水Wを排出させる。一方で、生体情報Sが身体への負担が小さいことを示す場合(例えば生体情報Sが血圧の場合には血圧が所定の閾値を下回る場合)には、貯留水Wの水量を上昇させる。すなわち、開閉弁V1を開状態にして給水口H1から貯留容器10に水を供給する。なお、給水口H1から供給する水量および排水口H2から排出する水量は、生体情報Sの変化量に応じて設定してもよい。
【0091】
(23)前述の形態において、温度調整機構60と補助機構70と水量調整機構50とは、運動中に検出される生体情報Sだけではなく、運動開始前においても生体情報Sを検出して、当該運動開始前から運動中に検出する生体情報Sを加味して、温度調整機構60が貯留水Wの温度を変化させ、補助機構70が補助力を変化させ、水量調整機構50が水量を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 :貯留容器
20 :筐体部
40 :運動器具
41 :サドル
43 :手摺部
45 :ペダル機構
451 :クランク
452 :回転軸
453 :ペダル
50 :水量調整機構
60 :温度調整機構
70 :補助機構
80 :制御ユニット
81 :第1制御部
82 :第2制御部
83 :第3制御部
90 :表示操作ユニット
100 :運動システム
G :センサユニット
O :開口
S :生体情報
T :搬送管
U :利用者
W :貯留水
H1 :給水口
H2 :排出口
【要約】
【課題】利用者毎に水温と運動負荷とを適切に設定する。
【解決手段】水が充填される貯留容器10と、貯留容器内10に設置される運動機構40と、貯留容器10内の水温を変化させる温度調整機構60と、利用者Uが運動器具により運動する力を補助するための補助力を発生させる補助機構70とを具備し、温度調整機構60は、利用者の生体情報に応じて水温を変化させ、補助機構70は、前記生体情報に応じて補助力の大きさを変化させる運動システム100。
【選択図】
図1